説明

造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤

【課題】 高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有し、コーティング精度に優れた造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤を提供することである。
【解決手段】 本発明は、水の添加により粘着性を有する成分を含有する内層と、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する最外層とを有する層状粒子と水を含む原料を混合する工程と、機械的圧力により造粒する工程を有することを特徴とする造粒粒子の製造方法である。また、本発明は、前記造粒粒子の製造方法により製造される造粒粒子である。さらに、本発明は、前記造粒粒子を配合して成形されている固形製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
内服錠のような生理活性成分等を含む造粒粒子は、当該生理活性成分等の安定性確保、矯味・矯臭などを目的として、外部との接触を遮蔽するために造粒粒子表面にコーティング処理が行われる。
このコーティング処理により形成されるコーティング膜は、外部との接触を遮蔽し、かつ薄い膜厚のコーティング膜であることが望ましい。
しかし、造粒粒子によってはコーティング精度が悪く、多量のコーティング剤を必要とするものがあり、厚い膜厚の被膜にしなければならない場合がある。
【0003】
一般に、コーティング精度に影響を与える造粒粒子の物性としては、粒子強度、粒度分布、粒子形状(表面のなめらかさ)等が挙げられる。
造粒粒子の強度が低い場合には、コーティング処理中に造粒粒子が崩壊し、微粉等が発生する。そして、当該微粉がコーティング膜へ混入し、コーティング効果が低下してしまう。
また、造粒粒子の粒度分布が広い場合には、各造粒粒子の表面積が著しく異なることとなり、造粒粒子に対して均一な膜厚のコーティング膜を形成することが困難となる。
また、造粒粒子が多くの角を有するような不定形の形状であれば、その一部がコーティング膜より突出することが起こり、コーティング効果が著しく低下してしまう。そして、これを防止するためには、厚い膜厚のコーティング膜が必要となる。
したがって、造粒粒子には、高いコーティング精度が得られる被コーティング粒子として優れた物性を有することが求められる。
【0004】
上記被コーティング粒子として優れた物性を得る有効な方法として、従来、原料粉末に機械的圧力をかけて密な状態に加工できる造粒方法が用いられている。
特に、押出し造粒法が前記目的に適っており、造粒後にさらに整粒処理することで真球度が高い造粒粒子を得ることが可能である。
また、押出し造粒の際に用いられる賦形剤の使用量を低減するため、液体の添加により糊状無粘着状態になる粉状物質の均質混合物を押出し造粒する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、水を加えることにより粘着状態となるα化デンプンを配合した混合物を撹拌造粒する方法等が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、不快な味を有する成分を水難溶性高分子物質にて押出し造粒して味をマスキングする方法等が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特表2002−502809号公報
【特許文献2】特開平5−105636号公報
【特許文献3】特開2000−7557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、押出し造粒法の場合、原料の混合時の流動性を確保するために混合原料の可塑性をコントロールしなければならない。また、一般的に、流動層造粒法等と比較して多量の賦形剤を必要とし、造粒粒子中の生理活性成分等の有効成分含量が低下する問題がある。
さらに、造粒粒子の強度を高めるためには、更なる賦形剤の増量や、結合剤の増量が必要となる。
結合剤を使用する場合は、一般的に結合剤を水に溶解し、粉体と混合し造粒を行う。
よって、造粒粒子の強度を上げるために結合剤を増量することは、結合剤水溶液の添加量を増量することであり、同時に賦形剤量の増加を伴い、造粒粒子中の有効成分含量の更なる低下を招いてしまう。このとき、生理活性成分等の有効成分が水溶性の場合は、有効成分自体が結合剤水溶液に溶解するため、さらに多量の賦形剤が必要となる。
【0008】
また、特許文献1の提案では、粉状物質の均質混合物が糊状となることから、混合装置への付着等により製造性(作業性及び収率等)が低下し、さらに混合物が無粘着状態であることから、造粒粒子の強度も問題となる。
【0009】
また、特許文献2の提案では、高い粒子強度は得られるものの、造粒方法が撹拌造粒であるため、粒度の均一性が問題となる。
【0010】
また、特許文献3の提案では、生理活性成分等の有効成分が充分にコーティングされず、造粒粒子の表面に有効成分が露出していることから味のマスキングが不完全である。
特に、不快な味を有する有効成分が高い水溶性を有する場合には、充分にコーティングできずに有効成分が溶出してしまい、有効成分の効果が著しく減弱する等の問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有し、コーティング精度に優れた造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決するために本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水の添加により粘着性を有する成分を含有する内層と、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する最外層とを有する層状粒子と水を含む原料を混合する工程と、機械的圧力により造粒する工程を有することを特徴とする造粒粒子の製造方法である。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記原料が水溶性生理活性成分を含むことが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記層状粒子が、前記層状粒子が、水溶性糊料を含有する内層と、水難溶性又は不溶性の高分子、炭素数12〜38の高級脂肪酸又はその塩もしくはその誘導体、炭素数12〜38の高級アルコール、融点35℃以上の固体状ワックス、及び水難溶性又は不溶性の無機粉体から選ばれる1種以上を含有する最外層とを有することが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記水溶性糊料が、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースナトリウム、グァーガム、キサンタンガム、コポリピドン、白糖、糖アルコール類、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、メチルセルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸部分中和物から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記最外層に含有される成分が、デンプン(水不溶性)、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖ステアリン酸エステル、セタノール、ステアリルアルコール、カルナバロウ、マイクロクリスタリンワックス、軽質無水ケイ酸、二酸化ケイ素、タルク、酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアセテート、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記層状粒子が、α化デンプンを含有する内層と、デンプン(水不溶性)を含有する最外層とを有することが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、前記機械的圧力により造粒する工程において押出し造粒法を用いることが好ましい。
また、本発明の造粒粒子の製造方法において、さらにコーティング剤で造粒粒子をコーティングする工程を有することが好ましい。
本発明は、前記造粒粒子の製造方法により製造される造粒粒子である。
また、本発明の造粒粒子において、前記水溶性生理活性成分の含有量が、造粒粒子の総質量に対して1〜99質量%であることが好ましい。
本発明は、前記造粒粒子を配合して成形されている固形製剤である。
また、本発明の固形製剤は、チュアブル錠であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有し、コーティング精度に優れた造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
≪造粒粒子の製造方法≫
本発明の造粒粒子の製造方法は、特定の層状粒子と水を含む原料を混合する工程と、機械的圧力により造粒する工程を有する。
好ましくは、前記機械的圧力により造粒する工程で得られた造粒粒子を整粒する工程を有する。
好ましくは、前記機械的圧力により造粒する工程で得られた造粒粒子を乾燥する工程を有する。
好ましくは、さらにコーティング剤で造粒粒子をコーティングする工程を有する。
以下、工程ごとに好適な具体例を示して詳述する。
【0015】
<原料を混合する工程>
本工程では、特定の層状粒子と水を含む原料を混合する。
【0016】
撹拌混合機内に、後述する特定の層状粒子と水を含む原料を投入し、撹拌混合する。
原料としては、少なくとも特定の層状粒子と水を用いる。また、好ましくは生理活性成分(特に水溶性生理活性成分)を用い、必要に応じてその他の成分を用いる。
好ましくは、撹拌混合機内に、特定の層状粒子と、好ましくは生理活性成分(特に水溶性生理活性成分)と、必要に応じてその他の成分を含む原料を投入し、水を加えずに撹拌混合した後、撹拌しながら水を添加して混合する。このとき、水を添加する前の原料は粉体状である。これにより、投入した原料がダマ状になりにくく、充分に混合される。また、より均一な混合物が調製されることから、混合物の粘着性がより低減し、流動性が良好となり、製造性が向上する。特に、水溶性生理活性成分を含む原料の場合でも、該水溶性生理活性成分を含む原料がダマ状になりにくく、均一な混合物が調製でき、原料混合物の粘着性をより低減できる。
水の添加方法は、特に限定されず、滴下、噴霧などによって添加することができる。
水の添加量は、原料の固形分100質量部に対して1〜90質量部が好ましく、1〜8
0質量部がより好ましい。該範囲の下限値以上であることより、充分に原料が混合され、高い粒子強度の造粒粒子が得られる。また、上限値以下であることより、乾燥等の製造性が向上する。
撹拌混合機は、ハイスピードミキサー(商品名、深江工業株式会社製)、バーチカルグラニュレーター(商品名、(株)パウレック製)等が挙げられる。
撹拌速度としては、周速を基準として、好ましくは63〜630m/s、より好ましくは126〜440m/sである。該範囲であれば、層状粒子が崩壊することなく、均一な混合物が調製できる。なお、前記撹拌速度(周速)は、一例として撹拌ハネの直径20cmの場合のものである。
【0017】
(層状粒子)
前記特定の層状粒子は、水の添加により粘着性を有する成分を含有する内層と、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する最外層とを有する。
ここで「粘着性を有する」とは、水を加えた際に増粘し、糊状となることをいい、「粘着性を有しない」とは、水を加えた際に糊状とならないことをいう。
【0018】
前記内層は、水の添加により粘着性を有する成分(以下、内層成分ということがある。)を含有し、該成分が吸水することにより層状粒子の内部が粘着状態となる。
ここで「内層」とは、層状粒子の内部にあり、層状粒子の最外層を含まず、粒子表面に露出していない部分をいう。また、内層は、単層であっても、複数の層であってもよい。
前記内層に含有される水の添加により粘着性を有する成分としては、水溶液にした場合に粘ちょう性を有する成分、例えば水溶性糊剤が好ましく用いられる。
具体的な成分としては、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースナトリウム、グァーガム、キサンタンガム、コポリピドン、白糖、糖アルコール類、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、メチルセルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸部分中和物が挙げられる。中でも、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メチルセルロースが好ましく、その中でも、α化デンプンが最も好ましい。
α化デンプンとしては、α化度50%以上のものが好ましく、α化度70%以上のものがより好ましい。
これらの内層成分を使用すると、下記に説明する造粒する工程において原料を充分に混練することができる。
これら成分は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記水の添加により粘着性を有する成分の含有量は、内層を構成する成分中、10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。該範囲であれば、本発明の効果が特に優れた造粒粒子を得ることができる。
内層を構成する成分は、前記水の添加により粘着性を有する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を含有することができる。例えば、生理活性成分、賦形剤、香料、色素等が挙げられる。
【0019】
一方、前記最外層は、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する。そのため、水が添加されても層状粒子の表面の粘着性が高くなりにくく、混合時の流動性が良好である。
水の添加により粘着性を有しない成分としては、水不溶性又は難溶性成分が好ましく用いられる。例えば、水難溶性又は不溶性の高分子、炭素数12〜38の高級脂肪酸又はその塩(好ましくは2価又は3価の金属塩であり、より好ましくはマグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩である。)もしくはその誘導体(好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基が結合したエステル、炭素数1〜20の炭化水素基がエーテル結合したもの等)、炭素数12〜38の高級アルコール、融点35℃以上(好ましくは50℃以上)の固体状ワックス、水難溶性又は不溶性の無機粉体が挙げられる。
具体的な成分としては、水難溶性又は不溶性の高分子であるデンプン(水不溶性)、ヒドロキシプロピルスターチ、セルロース(結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム;炭素数12〜38の高級脂肪酸又はその塩もしくはそのエステルであるステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖ステアリン酸エステル;炭素数12〜38の高級アルコールであるセタノール、ステアリルアルコール;融点35℃以上の固体状ワックスであるカルナバロウ、マイクロクリスタリンワックス;水難溶性又は不溶性の無機粉体である軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアセテート、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。中でも、デンプン(水不溶性)、ヒドロキシプロピルスターチ、セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、酸化ケイ素、酸化チタンが好ましく、その中でも、デンプン(水不溶性)が最も好ましい。
デンプン(水不溶性)は、冷水、好ましくは15℃冷水に対して不溶性のデンプンであり、好ましくはα化度が10%以下、より好ましくは5%以下のものが特に好ましい。
該範囲であれば、原料を混合する工程において良好な混合時の流動性が得られ、均一な原料混合物が得られる。
なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにおける「低置換度」とは、セルロースに対する酸化プロピレン付加モル数が小さいことを示し、ヒドロキシプロポキシル基の含量が20%以下であることをいう。
これら成分は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記水の添加により粘着性を有しない成分の含有量は、最外層を構成する成分中、10〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。該範囲であれば、本発明の効果が特に優れた造粒粒子を得ることができる。
最外層を構成する成分は、前記水の添加により粘着性を有しない成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を含有することができる。例えば、生理活性成分、賦形剤、香料、色素等が挙げられる。
【0020】
本発明における層状粒子の内層と最外層との組合せとして、最も好ましくは、α化デンプンを含有する内層と、デンプン(水不溶性)を含有する最外層とを有するものである。
【0021】
また、内層と最外層との質量比は、99:1〜20:80が好ましく、99:1〜50:50がより好ましい。該範囲であれば、均一な原料混合物が調製できるとともに、充分に原料混合物が混練され、内層と最外層のそれぞれの効果が良好に発揮される。
【0022】
層状粒子の製造方法は、特に限定されず、以下の方法等により製造される。
例えば、内層成分を含有する粒子表面を、(1)最外層成分を散布する、(2)最外層成分の分散液または溶液を噴霧して乾燥する、(3)物理的圧力により粒子を被覆する(ハイブリダイゼーションシステム)等の方法により最外層成分で被覆し、層状粒子を得ることができる。
また、内層成分を含有する粒子表面に、最外層を構成する粒子状の原料を噴霧等して最外層を形成することもできる。そのとき、最外層成分粒子の粒子径(d)は、内層粒子径(d)に比べて短いことが好ましい。
粒子径(d)と粒子径(d)との比率は、1:10000〜1:10が好ましく、1
:10000〜1:20がより好ましい。該範囲であれば、前記水の添加により粘着性を有しない成分により、前記水の添加により粘着性を有する成分を充分に被覆することができる。
あるいは、最外層成分からなる粒子の内部、又は内層成分からなる粒子の表面に加工を施す等により、本発明に用いる層状粒子を得ることができる。
具体的には、デンプン粒子の内部を加工して、粒子内部のみがα化されてなるα化デンプンなどが好ましく挙げられる。このα化デンプンの市販品としては、例えば「PCS」(商品名、内層:α化デンプン/外層:デンプン(水不溶性)、旭化成工業株式会社製)が好ましく用いられる。
層状粒子としての粒子径は、1〜1000μm程度である。
また、層状粒子の配合量は、造粒粒子全体に対して1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。該範囲の下限値以上であれば、充分に原料が混合され、良好な混合時の流動性が得られるとともに、本発明の効果に優れた造粒粒子を製造することができる。上限値以下であれば、生理活性成分等の有効成分含量を高くすることができる。
【0023】
(生理活性成分)
本発明における原料には、少なくとも特定の層状粒子と水が含まれ、好ましくは生理活性成分(特に水溶性生理活性成分)が含まれる。
生理活性成分としては、例えば、催眠鎮静剤、睡眠導入剤、抗不安剤、抗てんかん剤、抗うつ薬、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、中枢神経系用薬、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自律神経剤、解熱鎮痛消炎剤、鎮けい剤、鎮暈剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、循環器官用薬、高脂血症用剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、去たん剤、鎮該去たん剤、気管支拡張剤、止しゃ剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤、利胆剤、消化器官用薬、副腎ホルモン剤、ホルモン剤、泌尿器官用剤、ビタミン剤、止血剤、肝臓疾患用剤、痛風治療剤、糖尿病用剤、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗菌剤、抗抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、総合感冒剤、滋養強壮保健薬、骨粗しょう症薬等が挙げられる。
具体的には、d−マレイン酸クロルフェニラミン、アミノ酸類、アスコルビン酸類、アスピリン、アセトアミノフェン、アミノフィリン、アラセプリル、アンレキサノクス、イブジラスト、イブプロフェン、ウルソデオキシコール酸、エテンザミド、エノキサシン、エリスロマイシン、オキサトミド、オキセサゼイン、オクトチアミン、オフロキサシン、カフェイン、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸、グアヤコールスルホン酸カリウム、クエン酸鉄アンモニウム、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、グルクロン酸クロルヘキシジン、クロモグリク酸ナトリウムまたはその塩類、クロラムフェニコール、クロルプロマジン、ケトプロフェン、ケノデオキシコール酸、コデイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、サリチル酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ナトリウム、ジアゼパム、シアノコバラミン、ジギトキシン、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、シコチアミン、L−システイン、塩酸L-システイン、ジフェニルピラリンまたはその塩類、ジフェンヒドラミンその塩類、ジベンゾイルチアミン、シメチジン、ジメモルファン、ジメンヒドリナート、ステアリン酸エリスロマイシン、スピロノラクトン、スルピリン、セラペプターゼ、タザノラスト、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、チアミンピロリン酸、テガフール、トシル酸スプラタスト、トラニラスト、トラネキサム酸、トルメチンナトリウム、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニザチジン、ノスカピン、バルプロ酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、ヒドロキソコバラミン、ピロミド酸三水和物、ファモチジン、フィトナジオン、フェノバルビタール、フマル酸エメダスチン、フマル酸クレマスチン、フマル酸第一鉄、フルスルチアミン、フルフェナム酸、プロスルチアミン、ブロムワレリル尿素、ペミロラストまたはその塩類、ベラドンナ(総)アルカロイド、ベンフォチアミン、ホパテン酸カルシウム、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ジメチデン、メキタジン、メナテトレノン、ヨウ化イソプロパミド、酪酸リボフラビン、リボフラビン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、リン酸リボフラビンナトリウム、リン酸ピリドキサール、レピリナスト、ローヤルゼリー、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化リゾチーム、塩酸アゼラスチン、塩酸アルプレノロール、塩酸イソチペンジル、塩酸イプロヘプチン、塩酸エチレフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オザグレル、塩酸ジセチアミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジルチアゼム、塩酸チアミン、塩酸トリプロリジン、塩酸ノルトリプチリン、塩酸ヒドロキソコバラミン、塩酸ビフェメランリドカイン、塩酸ピリドキシン、塩酸ピレンゼピン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸フルスルチアミン、塩酸プロプラノロール、塩酸ブロムヘキシン、塩酸プロメタジン、塩酸ベンジダミン、塩酸ホモクロルシクリジン、塩酸メクロフェノキサート、塩酸メチルエフェドリン(d体,dl体を含む)、塩酸メトクロプラミド、塩酸ラニチジン、塩酸ロキサチジンアセタート、塩酸ロペラミド、臭化ブチルスコポラミン、臭化水素酸デキストロメトルファン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、無水カフェイン等のほか、アロエ、インヨウカク、ウイキョウ、ウコン、ウヤク、エンゴサク、エイジツ、オウギ、オウセイ、オンジ、ガラナ、クコシ、ジオウ、トウキ、トチュウ、ニンジン、アマロゲンチン、オウゴン、オウバク、オウレン、ガジュツ、カスカラサグラダ、カッコウ、カスカリラノキ、カノコ草、カロウコン、キキョウ、キジツ、キョウニン、キハダ、クコ、クジン、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ケンゴシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウジン、コウブシ、コウボク、ゴオウ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、コロンボ、コンズランゴ、サイコ、サンザシ、サンシシ、サフラン、サンズコン、ジオウ、シコン、シソシ、シャクヤク、シャジン(ツリガネニンジン)、シャゼン(オオバコ)、ジャ香、ショウキョウ、ショウマ、セイヒ、セキショウコン、センキュウ、センコツ、センタウリウム草、センブリ、センボウ、センソ、センナ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、竹節人参、チモ、チレッタ草、チンピ、トウヒ、トウニン、トコン、ニガキ、ニンジン、ビャクシャク、ビャクジュツ、ベラドンナコン、ヤクチ、ユウタン、ヨモギ、ニガヨモギ、ジシュユ、ホップ、ホミカ、ボウイ、マオウ、モクツウ、モッコウ、リュウタン、リンドウ、ルソンカ、レンギョウ等の生薬末及びそのエキス等が挙げられる。
上記の中でも、水溶性生理活性成分が好ましく、具体的には、硝酸チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、塩酸シアノコバラミン、ニコチン酸アミド等の水溶性ビタミン類、L−システイン等のアミノ酸類、グルクロノラクトン、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、塩酸ジフェンヒドラミンが好ましく用いられる。
生理活性成分の配合量は、造粒粒子全体に対して1〜99質量%が好ましく、10〜
99質量%がより好ましく、30〜99質量%がさらに好ましく、50〜99質量%が最も好ましい。
本発明では、上記層状粒子を用いることにより、賦形剤(本発明においては層状粒子)の使用量を少なくすることができる。これにより、造粒粒子中の生理活性成分の含有量を上記配合量の範囲のように高くすることができる。特に、水溶性生理活性成分を用いても原料混合物を充分に混練することができ、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ造粒粒子を得ることができる。
【0024】
(その他の成分)
その他の成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲において、通常用いられる添加剤が使用できる。
例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体、乳糖、マンニトール等の糖および糖アルコール類等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン等の結合剤、クロスポピドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等の崩壊剤、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム等の矯味剤等が挙げられる。中でも、造粒粒子中で吸水性を有する成分である結晶セルロース、クロスポピドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチが好ましく、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
【0025】
<造粒する工程>
本工程では、前記原料を混合する工程で調製した原料混合物を、機械的圧力により造粒する。
すなわち、造粒機内に、前記原料を混合する工程で調製した原料混合物を投入し、造粒する。
機械的圧力により造粒する方法は湿式造粒であり、例えば押出し造粒法、圧縮造粒法等が挙げられる。中でも、特に狭い粒度分布及びなめらかな表面形状が得られることから、押出し造粒法が好ましく、スクリュー型押出し造粒法が特に好ましい。
押出し造粒法においては、一例として押出造粒機を用いた場合、原料混合物はニーダー等で混練され、この混練物は、当該押出造粒機に設けられている押出しスクリーンを通過し、例えば円柱の形状となって押し出される。そして、所定の形状となるように、押し出された混練物がカッティングされることにより造粒粒子が得られる。
押出しスクリーン径は、200〜1000μm程度である。
押出造粒機は、ドームグランDG−1(商品名、不二パウダル株式会社製)、ファインリューザー(商品名、不二パウダル株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、前記造粒する工程で得られた造粒粒子を、整粒機により整粒するこ
とが好ましい。整粒することにより、造粒する工程で得られた造粒粒子の球形度を高める
ことができ、よりなめらかな表面形状の造粒粒子が得られる。
得られる造粒粒子の球形度は、アスペクト比が、好ましくは2.5未満、より好ましくは2.0未満、さらに好ましくは1.5未満である。また、粒度の均一性の指標であるD75/D25の値が、好ましくは2以下、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.4以下である。なお、アスペクト比とは粒子の長径と短径との比をいう。長径と短径は、粒子を顕微鏡観察等することにより各長さが測定される。D75/D25の値は、累積粒度25%(D25)の粒子径に対する累積粒度75%(D75)の比であり、該比が1に近いほど粒度の均一性が高いことを表す。粒度は、例えば振動ふるい機等により測定される。
整粒方法としては、特に限定されず、例えば整粒機等が用いられる。整粒機としては、
球形整粒機マルメライザー(商品名、不二パウダル株式会社製)等が好ましく用いられる。
【0027】
<乾燥する工程>
本発明においては、前記造粒する工程で得られた造粒粒子を乾燥する工程を行うことが好ましい。乾燥することにより、より高い粒子強度、なめらかな表面形状が得られ、コーティング精度がさらに向上した造粒粒子が得られる。
乾燥方法としては、特に限定されず、例えば棚式乾燥機や流動層による乾燥などが挙げられ、流動層による乾燥が好ましく用いられる。
【0028】
<コーティングする工程>
本発明においては、上記工程で得られた造粒粒子をコーティングするため、コーティング剤で造粒粒子をコーティングする工程を行うことが好ましい。
コーティング方法としては、特に限定されず、例えばコーティング装置等が挙げられ、コーティング装置としては、流動コーティング装置 MP−01(商品名、株式会社パウレック製)等が好ましく用いられる。
【0029】
(コーティング剤)
コーティング剤は、特に限定されず、例えば高分子等が含有される。
高分子の具体例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルセルロース、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ゼラチン等が挙げられる。中でも、水不溶性高分子が好ましい。
より具体的には、例えばアミノアルキルメタアクリレートポリマーの市販品として、オイドラギッドRS、オイドラギッドRL、オイドラギッドE(以上、商品名、ローム ファーマ社製)等が挙げられる。また、エチルセルロースの市販品として、アクアコート(商品名、FMC社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明によれば、原料を混合する工程と造粒する工程により、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有する造粒粒子が得られる。この理由は、次のように推測される。
本発明では、水の添加により粘着性を有する成分を含有する内層と、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する最外層とを有する層状粒子を用いる。
当該層状粒子は、原料を混合する工程において水が添加されると、内層は吸水して粘着性が増すが、最外層は粘着性が高くなりにくいため、層状粒子自体の流動性は損なわれない。
そして、原料を混合する工程において、層状粒子は層状構造を保ち、当該層状粒子の最外層が他の原料と接触しながら混合される。このとき、最外層の粘着性は高くないことにより、ダマの発生などが起こりにくく、良好な流動性が得られるため、均一な混合物が調製されると考えられる。
次の造粒する工程において、層状粒子を含む原料混合物は、例えば押出造粒機の中で機械的圧力により混練される。そして、層状粒子は混練によるせん断力で粒子が崩壊し、内層に含有される水の添加により粘着性を有する成分が、水や他の原料と接触しながら混練される。このとき、内層の成分が有する粘着性により、原料どうしが充分に混練されることで、密な状態の造粒粒子が形成されるため、高い粒子強度をもつ造粒粒子が得られると考えられる。
さらに、機械的圧力により造粒することにより、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ造粒粒子が得られる。また、粒子強度が高いため、加工中に粒子が崩壊することが少なく、狭い粒度分布が維持されると考えられる。
また、本発明では前記層状粒子を用いることにより、賦形剤の使用量を少なくすることができ、生理活性成分等の有効成分含量の高い造粒粒子が得られる。
【0031】
≪造粒粒子≫
本発明の造粒粒子は、前記本発明の造粒粒子の製造方法により製造されるものである。
本発明の造粒粒子において、水溶性生理活性成分の含有量は、造粒粒子の総質量に対して1〜99質量%であり、10〜99質量%であることが好ましく、30〜99質量%であることがより好ましく、50〜99質量%であることがさらに好ましい。
前記本発明の造粒粒子の製造方法によれば、特定の層状粒子を用いることにより、従来の押出し造粒法の課題であった賦形剤の使用量を少なくすることができる。これにより、特に造粒方法の中で好ましい押出し造粒法において困難であった造粒粒子中の水溶性生理活性成分の含有量を高いものとすることができる。
また、本発明の造粒粒子は、それ単独もしくは必要に応じて他の添加剤と混合し、成形することにより粒剤等の製剤とすることができる。
【0032】
≪固形製剤≫
本発明の固形製剤は、前記本発明の造粒粒子を配合して成形されているものである。
前記固形製剤には、前記本発明の造粒粒子とともに、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤等が挙げられる。
具体的には、賦形剤としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース及びその誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等のスターチ及びその誘導体;乳糖、白糖、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の糖および糖アルコール類等を用いることができる。
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、デンプン等を用いることができる。
崩壊剤としては、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等を用いることができる。
矯味剤としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム等を用いることができる。
【0033】
本発明によれば、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有し、コーティング精度に優れた造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに当該造粒粒子を成形した固形製剤を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、造粒粒子にコーティングする場合に、コーティング膜厚の薄化が可能となり、機能向上や製造コストの低減等が実現する。さらに、コーティング精度に優れることから、味マスキングの効果が良好である。
また、本発明によれば、従来、押出し造粒法において造粒化が困難であった水溶性生理活性成分を用いても、コーティング精度に優れた造粒粒子が提供できる。さらに、賦形剤の使用量を少なくできることから、造粒粒子中の生理活性成分等の有効成分含量を高く設定することができる。
また、本発明によれば、原料の混合時において、原料混合物が粘着性を示さないことから、撹拌混合機の内壁等への原料混合物の付着がなく作業性に優れる。これにより、簡便かつ短時間に製造可能となり、さらに回収率等の向上が可能である。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、水を除いた固形分であり、それぞれ質量部および質量%を示す。
【0036】
(1) 賦形剤
造粒粒子の賦形剤として以下のものを用いた。
【0037】
賦形剤A:層状粒子 軽質無水ケイ酸被覆α化デンプン
Starch1500(商品名、α化デンプン、カラコン社製)1部を、ハイブリダイゼーションシステムNHS−O型(商品名、株式会社奈良機械製作所製)により、サイリシア320(商品名、軽質無水ケイ酸、富士シリシア化学株式会社製)1部で被覆処理を行い、形質無水ケイ酸被覆α化デンプンを調製した。
なお、「Starch1500」は、デンプン粒子がランダムにα化された部分的α化デンプンである。α化デンプンが粒子表面に一部露出しているため、水の添加により最外層が粘着性を有し、「Starch1500」単独品は本発明の層状粒子とは異なるものである。
【0038】
賦形剤B:層状粒子「PCS」(商品名、内層:α化デンプン/外層:デンプン(水不溶性)、旭化成工業株式会社製)
質量比は、内層:最外層が約90:10である。
層状粒子の数平均粒子径は、約70μmである。
なお、「PCS」は、デンプン粒子の内部のみが選択的にα化された部分的α化デンプンであり(外側はβ)、吸水しても粒子表面は粘着性を示さない。
【0039】
賦形剤C:「Starch1500」(商品名、カラコン社製)
賦形剤D:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
賦形剤E:結晶セルロース
【0040】
(2) 造粒粒子の製造
表1に示す組成(質量%)からなる各例300gを、撹拌混合機ハイスピードミキサー(商品名、深江工業株式会社製)に投入し、撹拌しながら水を滴下し、均一な混合物を調製した。その際、混合時の流動性を下記方法により評価した。
調製した混合物を、押出造粒機ドームグランDG−1(商品名、不二パウダル株式会社製)を用い、押出しスクリーン径600μmで押出し造粒を行った。
次いで、得られた押出造粒物に対して、整粒機マルメライザーQ−23T(商品名、不二パウダル株式会社製)を用いて整粒を行った。
その後、整粒を行った造粒粒子を、流動層装置MP−01(商品名、株式会社パウレック製)にて、吸気温度80℃で排気温度55℃まで乾燥を行った。その際、粉化性を下記方法により評価した。
以上により製造された造粒粒子について、粒度の均一性を下記方法により評価した。
【0041】
<評価方法>
上記造粒粒子の製造において、混合時の流動性、粉化性、粒度の均一性の評価を下記方法および基準にて行った。結果を表1に示す。
ここで、粉化性は、粒子強度及び粒子の表面形状のなめらかさを評価するものであり、粉化性が抑制されていることは、粒子強度が高く、粒子の表面形状がなめらかであることを表す。また、粒度の均一性は、粒子強度及び粒度分布を評価するものであり、粒度の均一性が良好であることは、粒子強度が高く、粒度分布が狭いことを表す。
なお、混合時の流動性は、製造性を評価するものであり、混合時の流動性が良好であることは、製造性が良好であることを表す。
【0042】
(混合時の流動性)
混合時の流動性の状況を目視により観察した。
○:粉体に粘着性がなく、流動性が良好。
△:粉体に若干粘着性があり、流動性が低下。
×:粉体の粘着性が強く、装置内への付着が認められる。
【0043】
(粉化性)
流動層での乾燥時の状況を目視により観察した。
◎:ほぼ粉化なし。
○:若干粉化あり。
△:かなり粉化あり。
×:激しく粉化あり。
【0044】
(粒度の均一性)
造粒粒子の粒度分布は、振動ふるい(商品名:ミクロ形電磁振動ふるい器 M−2型、筒井理化器機株式会社製)を用いて測定した。
測定条件は、試料10gに付き、篩目開き1000、850、710、500、355、250、150μm、振動ふるい目盛り5、振動時間5分で行った。
そして、D75及びD25を算出し、D75/D25を粒度の均一性の指標とし、評価を行った。ここで、D75は累積粒度75%の粒子径を表し、D25は累積粒度25%の粒子径を表す。D75/D25の値が1に近いほど粒度の均一性が高いことを表す。
◎:D75/D25≦1.4。
○:1.4<D75/D25≦1.7。
△:1.7<D75/D25≦2。
×:2<D75/D25。
【0045】
【表1】

【0046】
(3)コーティング処理
上記実施例5と比較例2の造粒粒子に対して、流動コーティング装置 MP−01(商品名、株式会社パウレック製)にて、以下のコーティング剤によるコーティングを表2に示す組成にて行った。
コーティング剤:アクアコート(商品名、エチルセルロース、FMC社製)16質量%(固形分濃度)、トリアセチン 4質量%、精製水 80質量%
【0047】
得られたコーティング粒子に対して、味マスキング性の評価を下記方法および評価基準にて行った。結果を表2に示す。
ここで、味マスキング性は粒子の表面形状のなめらかさ及びコーティング精度を評価するものであり、味マスキング性が良好であることは、造粒粒子がなめらかな表面形状であり、コーティング精度が高いことを表す。
【0048】
(味マスキング性)
パネラー6名により味の評価を行った。
各コーティング粒子0.5g(錠剤の場合は1錠)を口中にて溶かし、味の評価を下記基準にて行った。このときのパネラー6名の評価点数の平均点を算出し、下記のように判定した。
評価基準
3点:苦味を感じない。
2点:やや苦味を感じる。
1点:苦味を感じる。
判定
◎:平均点2.5以上。
○:平均点2.0以上2.5未満。
△:平均点1.5以上2.0未満。
×:平均点1.5未満。
【0049】
【表2】

【0050】
(4)成形(チュアブル錠剤の調製)
上記で得られたコーティング粒子 50質量%と、直打用マンニトール ペアリトール200SD(商品名、D−マンニトール、ロケット社製)35質量%と、クロスポビドンXL(商品名、3次元架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、ISP社製)15質量%とを均一に混合した後、ステアリン酸マグネシウム 0.2質量%を加えて混合した。その後、打錠機L−41(商品名、ハタ製作所製)を用いて打錠を行い、チュアブル錠剤を調製した。
得られたチュアブル錠剤に対して、味マスキング性の評価を上記方法および基準にて行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
以上の結果から、特定の層状粒子を用いた実施例は、混合時の流動性、粉化性、粒度の均一性が良好であった。また、得られた造粒粒子は、コーティング粒子における味マスキング性、および錠剤における味マスキング性も良好であった。
一方、特定の層状粒子を用いていない比較例は、混合時の流動性、粉化性、粒度の均一性が悪く、コーティング粒子における味マスキング性、および錠剤における味マスキング性も悪かった。
よって本発明によれば、高い粒子強度、狭い粒度分布及びなめらかな表面形状をもつ、被コーティング粒子として優れた物性を有し、コーティング精度に優れた造粒粒子の製造方法およびその造粒粒子、並びに固形製剤を提供できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の添加により粘着性を有する成分を含有する内層と、水の添加により粘着性を有しない成分を含有する最外層とを有する層状粒子と水を含む原料を混合する工程と、機械的圧力により造粒する工程を有することを特徴とする造粒粒子の製造方法。
【請求項2】
前記原料が水溶性生理活性成分を含む請求項1記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項3】
前記層状粒子が、水溶性糊料を含有する内層と、水難溶性又は不溶性の高分子、炭素数12〜38の高級脂肪酸又はその塩もしくはその誘導体、炭素数12〜38の高級アルコール、融点35℃以上の固体状ワックス、及び水難溶性又は不溶性の無機粉体から選ばれる1種以上を含有する最外層とを有する請求項1又は2記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性糊料が、α化デンプン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカリウム、カルメロースナトリウム、グァーガム、キサンタンガム、コポリピドン、白糖、糖アルコール類、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、メチルセルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸部分中和物から選ばれる1種以上である請求項3記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項5】
前記最外層に含有される成分が、デンプン(水不溶性)、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖ステアリン酸エステル、セタノール、ステアリルアルコール、カルナバロウ、マイクロクリスタリンワックス、軽質無水ケイ酸、二酸化ケイ素、タルク、酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアセテート、水酸化アルミニウムマグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種以上である請求項3又は4記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項6】
前記層状粒子が、α化デンプンを含有する内層と、デンプン(水不溶性)を含有する最外層とを有する請求項4又は5記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項7】
前記機械的圧力により造粒する工程において押出し造粒法を用いる請求項1〜6のいずれか一項に記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項8】
さらにコーティング剤で造粒粒子をコーティングする工程を有する請求項7記載の造粒粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の造粒粒子の製造方法により製造される造粒粒子。
【請求項10】
前記水溶性生理活性成分の含有量が、造粒粒子の総質量に対して1〜99質量%である請求項9記載の造粒粒子。
【請求項11】
請求項9又は10記載の造粒粒子を配合して成形されている固形製剤。
【請求項12】
チュアブル錠である請求項11記載の固形製剤。

【公開番号】特開2007−8872(P2007−8872A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192249(P2005−192249)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】