造血幹細胞の生着手順を強化するための材料および方法
この開示は、造血幹細胞(HSPC)および造血幹細胞前駆細胞(HSPC)の生着手順を強化する方法を対象とする。PGE2生合成を減少させる化合物またはPGE2受容体アンタゴニストを、単独または他の造血動員剤、例えばAMD3100およびG−CSFと併用して用いたHSPCドナーのin vivo処置により、利用可能なHSPCの循環が増加する。PGE2の細胞合成を減少させる化合物は、非ステロイド系抗炎症性化合物、例えばインドメタシンを含む。有効量のPGE2またはその誘導体の少なくとも1種、例えば、16,16−ジメチルプロスタグランジンE2(dmPGE2)を用いたHSPCのex vivo処置は、HSPCの生着を促進する。同様の方法を使用し、HSPCへのウィルス媒介遺伝子形質導入の効率を増加することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年11月6日提出の米国仮特許出願第61/112,018号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する記述
本発明の開発の一部は、助成金番号HL069669、HL079654およびDK07519の下にNIHから政府の援助を受けてなされたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の分野
本明細書に開示の態様および実施形態は、造血幹細胞および前駆細胞の生着を強化するための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
造血幹細胞および前駆細胞(hematopoietic stem and progenitor cell, HSPC)の移植は特定の悪性および非悪性の血液疾患および代謝障害の治療のための確立された療法である。移植用HSPCの供給源は、骨髄、動員された末梢血および臍帯血(UCB)を含む(GoldmanおよびHorowitz、2002年;FruehaufおよびSeggawiss、2003年:Broxmeyerら、2006年)。医師は、骨髄、動員された末梢血幹細胞および臍帯血の移植を日常的に実施している。これらの手順は、健康で正常なドナーから、または所与の病態を発症する前もしくは緩解にある間の患者から採取された十分な数の造血幹および前駆細胞を必要とする。採取した材料は、後に、造血系およびおそらくその疾患または奇形の組織および細胞が根絶された患者に投与される。移植後、移植された幹細胞は、適切な骨髄微小環境ニッチへ移行または「ホーミング」し、このようなニッチ内へ定着し、新しい幹細胞を増殖および産生し、このプロセスは自己再生と呼ばれる(Porechaら、2006年;Broxmeyer、2006年;Hallら、2006年)。これらの細胞は、系統が制限された前駆細胞および成熟細胞に分化もし、そうして、レシピエントの健康にとって必要な造血系を形成する血液を復元する。前駆細胞は、普通、移植された材料の中に存在し、成熟細胞を産生するためにこれらの生着を必要とすると思われる。しかし、前駆細胞は幹細胞ではなく、自己再生できないので、それらは限られた期間だけしか移植療法に参加できない。
【0005】
移植手順は移植された材料にストレスをかけるので、移植の成功には手順の間に死亡するまたは損傷する細胞を計上した十分な細胞が移植されることを必要とする。このことは、臍帯血の移植体は非常に限られた数の幹細胞しか含まないので、臍帯血移植体の移植に大きな問題を提示する。この理由から、普通は臍帯血移植体を使用して成人移植を成功させることはできない。同様に、患者および正常なドナーの10〜25%は、移植手順における使用のための十分な細胞を動員することができない。患者集団の一部において、特にいくつかの化学療法薬を用いて処置された患者集団において、動員の失敗は患者の50%以上において見られる。一般に、移植できる細胞が多いほど、移植が成功する可能性は大きくなり、例えば、最新の最も優れた実務では、末梢血幹細胞移植手順が、レシピエント患者の体重1キログラムあたり最少でもおよそ200万のCD34+細胞の投与を通常必要とし、獲得でき、その後移植できるCD34+細胞が多いほど、患者の転帰はよくなると推奨している(Pulsipher、2009年)。
【0006】
不十分な幹細胞数、適切な骨髄ニッチへの遊走/ホーミングできないこと、または造血幹細胞および前駆細胞の生着効率および自己再生が弱いことにより、再構築(repopulation)の多段階プロセスにより測定した移植結果に悪影響を与える可能性がある。単離された移植体内のヒト造血幹細胞および前駆細胞の数をex vivo設定で試み増加させようとする多くの取組みがなされてきたが、成功は限定的である。HSPCの移植効率を改善する戦略が、医療専門家が直面する挑戦を克服するために必要である。本明細書に開示する、本発明のいくつかの態様および実施形態は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞および前駆細胞の採取および/または生着の強化を対象とし、これらの態様のいくつかは、限定するものではないが、造血幹細胞および前駆細胞療法の成功率を増加させるための、ex vivoの生存、自己再生および適切な骨髄ニッチへのホーミングを含む。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、ドナーから採取した、長期再構築能力を有する造血幹細胞および前駆細胞の数の増加を対象とする方法を含む。これらの方法のいくつかは、プロスタグランジン、例えばプロスタグランジンEの生合成を阻害する化合物またはプロスタグランジン応答に関与する少なくとも1種のプロスタグランジン受容体と拮抗する化合物を特定するステップ、ならびにドナーの末梢血または骨髄から造血幹細胞および前駆細胞を採取する前に、医薬有効量のこの化合物(複数可)をドナーに提供するステップを含む。一実施形態において、プロスタグランジンE生合成阻害剤および/またはプロスタグランジンEの受容体アンタゴニストの適用は、1種または複数種の、臨床的に承認された造血幹細胞および前駆細胞の動員剤、例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)と組み合わせ、造血移植体移植のためのアフェレーシスにより回収され得る造血幹細胞および前駆細胞の数を増加させる。一実施形態において、この化合物は、例えば、インドメタシン(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸)または医薬として許容可能なその塩を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤から選択される。さらに他の実施形態において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブ、バルデコキシブ、ナプロキセン、ジクロフェナク、リコフェロン、エトドラク、ケトロラクまたは医薬として許容可能なそれらの塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤はCOX−1およびCOX−2の両方に対して作用し、多くの場合COX−2を好む。いくつかの実施形態において、使用可能なさらに別の化合物はメロキシカムである。
【0009】
本開示の他の態様は、レシピエントにおいて、採取した造血幹細胞および/または前駆細胞の移植体の長期再構築能力を強化する方法を含む。これは、レシピエントが造血系に障害を有する状況において特に有用であり得る。この方法は、a)プロスタグランジンE2の生合成を阻害する化合物および/またはプロスタグランジンE2受容体のアンタゴニストの有効量を用いてドナーを処置し、ドナーから移植体を採取するステップ、b)移植体と、有効量のプロスタグランジンE2または1種もしくは複数種のその誘導体とを、ex vivoにおいて接触させるステップ、およびc)処置された移植体をレシピエントに適用するステップを含む。一実施形態において、この方法は、有効量のプロスタグランジンE2もしくはその誘導体の1種またはPGE2活性を有する任意の分子を、移植体材料のそれらの適切な治療的ニッチへのホーミングを強化するために、移植レシピエントに対して供給するステップをさらに含む。
【0010】
本開示の他の態様は、幹細胞においてウィルス導入(viral transduction)効率を強化する方法を含む。これらの方法のいくつかは、形質導入(transduction)のための少なくとも1種の対象遺伝子を含有するウィルスベクターを提供するステップ、有効量のプロスタグランジンE2またはその誘導体によってex vivoにおいて処置された少なくとも1種の幹細胞を提供するステップ、およびウィルスベクターを、PGE2またはその誘導体によって処置された幹細胞にトランスフェクションするステップを含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態は、造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源を特定するステップ、PGE2の生合成および/または活性を減少させる化合物を提供するステップ、ならびに造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源と、該細胞のPGE2の生合成および/または活性を減少させる有効量の前記化合物とを接触させるステップを含む、造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法を含む。いくつかの実施形態において、PGE2活性を減少させる化合物は、非ステロイド系抗炎症性化合物であり、この非ステロイド系抗炎症性化合物はシクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2の両方に対して作用する。いくつかの実施形態において、この非ステロイド系抗炎症性化合物は、主にシクロオキシゲナーゼ−2に対して作用する。いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、エトドラク、ケトロラクおよびリコフェロンからなる群から選択される。さらに他の実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物はインドメタシンであり、さらに他の実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物はメロキシカムである。
【0012】
いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する少なくとも1種の追加の化合物との同時処置で、オーバーラップした期間患者に投与される。いくつかの実施形態において、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する化合物は、G−CSFおよびプレリキサフォルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、少なくとも3日間患者に投与される。
【0013】
さらに他の実施形態は、少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストである化合物を提供するステップ、ならびにドナーから造血幹細胞または前駆細胞を採取する前に、有効量の前記化合物を造血幹細胞または前駆細胞ドナーに投与するステップを含む、ドナー由来の造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストは、N−[[4’−[[3−ブチル−1,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル]メチル][1,1’−ビフェニル]−2−イル]スルホニル]−3−メチル−2−チオフェンカルボキシアミド(L−161,982)および4−(4,9−ジエトキシ−1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−ベンズ[f]イソインドール−2−イル)−N−(フェニルスルホニル)−ベンゼンアセトアミド(GW627368X)からなる群から選択される。
【0014】
さらに別の実施形態は、供給源においてPGE2の生合成および/または活性を減少させる少なくとも1種の化合物を用いて処置された、当該供給源由来の造血幹細胞および前駆細胞を含む細胞の群を採取するステップ、造血幹細胞のセットと、PGE2活性を有する化合物とをex vivoにおいて接触させるステップ、およびex vivoにおいてPGE2活性を増加させる前記化合物と接触させた、前記造血幹細胞および前駆細胞をレシピエント内に移植するステップを含む、レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞を生着させることを含む。いくつかの実施形態において、造血幹細胞は、骨髄ドナーから取り出される。一方、さらに他の実施形態において、造血幹細胞は血液ドナーから取り出された血液試料から採取される。そして、さらに他の実施形態において、細胞は、臍帯または胎盤から取り出される。
【0015】
いくつかの実施形態は、PGE2活性を有する化合物を提供するステップ、ならびにPGE2活性を有する化合物と、造血幹細胞および/または前駆細胞の集団をex vivoで接触させるステップを含む、造血幹細胞および/または前駆細胞の生着率を増加させる方法を含む。いくつかの実施形態において、PGE2活性を有する化合物は、任意のEシリーズのプロスタグランジンまたはEシリーズのプロスタグランジンの任意の誘導体、例えばPGE1、PGE2、PGE3または例えばジメチル16,16−ジメチルPGE2を含む、PGE1、PGE2、PGE3のジメチル誘導体などからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PGE2活性を有する化合物は、造血幹細胞および/または前駆細胞集団と少なくとも1時間接触する。いくつかの実施形態は、PGE2活性を有する化合物と接触させた造血幹細胞および/または前駆細胞を、実質的にPGE2活性を有さない緩衝液を用いて、少なくとも1回洗浄するステップを含む。一方、さらに他の実施形態は、PGE2活性を有する化合物と接触させた造血幹細胞および/または前駆細胞を、患者内に導入するステップをさらに含む。
【0016】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および有利性は、以下の限定されない図面、説明および特許請求の範囲を参照してさらによく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】造血幹細胞の生着を強化するPGE2の効果を試験するための実験の概要(上段パネル);CD45.1およびCD45.2細胞の集団を例示する代表的なフロープロット(下段パネル)を示す図である。
【図1B】陰性細胞のパーセント対移植細胞の数のグラフ(上段パネル);キメラ現象のパーセント対競合率の散布図(下段左パネル);ならびに様々な条件下で測定したCRU/100K細胞の棒グラフ(下段右パネル)である。
【図1C】dmPGE2を用いて処置した細胞、および処置しなかった細胞に関する20週にわたってプロットした、細胞の再構築頻度を要約する表である。
【図1D】多系統の再構築の代表的FACSプロット(骨髄、Bリンパ球およびTリンパ球、上段左パネル)。数/CD3プロット(上段右パネル)。一次レシピエントにおいて32週目に測定した合計WBC(中段左パネル)および二次レシピエントにおいて12週目に測定した合計WBC(中段右パネル)のパーセントの棒グラフ。一次レシピエントにおいて20週目に測定したキメラ現象のパーセントのプロットおよび二次レシピエントにおいて12週目に測定したキメラ現象のパーセントのプロット(下段パネル)である。
【図2A】Linnegゲーティングされた細胞のc−kit+およびSca−1+ゲーティングを示す、MACSマイクロビーズにより枯渇させたLinneg骨髄の代表的FACSゲーティング(左パネル)。様々なEP受容体に関してプロットしたカウント(中央パネル)および様々な受容体に関してプロットしたmRNA対周期数の変化(右パネル)を示す図である。
【図2B】SSC対CD34の代表的FACS(左パネル);様々なEP受容体に関してプロットしたカウント(中央パネル)、および様々な受容体に関するサイクル数に対してプロットしたmRNAの変化(右パネル)を示す図である。
【図3A】実験の概要(上段);様々な処置に関してプロットしたCFSE+の%(下のパネル)を示す図である。
【図3B】実験のプロトコルを例示する略図であり;ホーミング効率のパーセント(下左パネル)ならびに16,16−ジメチルプロスタグランジンE2(dmPGE2)および様々な対照に曝露後に測定した倍数変化(下右パネル)を示す図である。
【図3C】実験の概要(左パネル);様々な処置に関するCD45.2対CD45.1のFACSプロット(中央パネル);様々な処置に関してプロットしたホーミング効率のパーセント(右パネル)を示す図である。
【図4A】灰色で示したCXCR4受容体発現のアイソタイプ対照の代表的フロープロット(上段);CXCR4の発現に関して、マウスおよびヒトのHSPCをPGE2にパルス曝露した結果を示す、CXCR4の変化が様々な条件に関してプロットされた棒グラフである(下段)。
【図4B】様々な処置に関するホーミング効率のパーセントの棒グラフである。
【図5A】dmPGE2濃度の関数としてプロットしたアネキシンV+SKLのパーセントを示す図である。
【図5B】様々な条件に関してプロットした、サバイビンにおける倍数増加を示す図である。
【図5C】dmPGE2に対する様々な時間の曝露に関してプロットした、対照の活性に対して正規化した変化のパーセントを示す図である。
【図6A】ゲーティングされたSKL細胞のDNA含有量(7AAD染色)、S+G2M期におけるSKLのパーセントおよびdmPGE2により処置されたSKLの循環における倍数増加を示す代表的フロープロット(左のパネル);3つの実験によるデータを組み合わせて示すチャート(右のパネル)である。
【図6B】実験の概略図および様々な処置を施して測定した、S+G2/M期のホーミングしたSKL細胞における倍数増加をプロットした棒グラフである。漫画は、実験プロトコルを示し(左パネル)、棒グラフはdmPGE2を用いて、または用いずに測定した、S+G2/M期の倍数増加を示す。
【図7A】様々な処置後に測定したCFU−GM/血液mLをプロットした棒グラフである。
【図7B】様々な処置後に測定したCFU−GM/血液mLをプロットした棒グラフである。
【図8】PGE2が、SLAM SKLの循環をもたらすことを例示するデータを要約した表である。
【図9】対照およびdmPGE2処置細胞の遊走対SDF−1濃度のグラフである。
【図10】CD34+細胞の遊走パーセント対SDF−1濃度および/または商品名Mozobil(登録商標)で市販されているAMD3100(1,1’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン]オクト臭化水素酸二水和物)のグラフである。
【図11】SKL細胞のホーミング効率のパーセント対dmPGE2および/またはAMD3100を用いた処置および様々な対照の棒グラフである。
【図12】dmPGE2を用いて、または用いずに測定した、SKL循環における倍数変化を例示する、FACSプロット(左パネル);および棒グラフ(右パネル)である。
【図13】実験プロトコルの概略図(左パネル);dmPGE2を加えて、および加えずに測定した、S+G2/M期における増加を示す棒グラフである。
【図14】dmPGE2(四角)または対照(ビヒクル、ひし形)に初期曝露後、連続移植において継時的に測定したキメラ現象のパーセントを示すグラフである。
【図15】ビヒクル(明るい灰色)、インドメタシン(暗い灰色)またはバイカレイン(灰色)を用いて測定したCFU−GM/血液mlの棒グラフ(左パネル);G−CSF(明るい灰色);G−CSF+インドメタシン(灰色のハッチング)またはG−CSF+バイカレイン(灰色)を用いて収集したデータのグラフである。
【図16】G−CSFおよびG−CSF+インドメタシンを用いて測定した、G−CSFに対するCFU/血液mlの倍数増加の棒グラフである。
【図17】G−CSFまたはG−CSF+インドメタシンのどちらかを用いて処置した後に測定した、SKL細胞(左側)またはSLAM SKL細胞(右側)のどちらかの動員細胞の表現型分析の棒グラフである。
【図18】ビヒクルもしくはインドメタシン(左パネル);またはAMD3100もしくはAMD3100+インドメタシン(右パネル)のどちらかを用いてプロットしたCFU−GM/血液mlの棒グラフである。
【図19】ビヒクル、インドメタシン、AMD3100;G−CSF;AMD3100+GROベータ;AMD3100+インドメタシンまたはG−CSF+インドメタシンを用いて処置した後に測定し、プロットした、CFU−GM/末梢血mlの棒グラフである。
【図20】ビヒクル(白抜き)、G−CSF(黒)、G−CSF+メロキシカム((8E)−8−[ヒドロキシ−[(5−メチル−1,3−チアゾール−2−イル)アミノ]メチリデン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−アザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン)(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)を用いて処置した後のCFU−GM/血液mlの棒グラフである。
【図21】G−CSF(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)のどちらかを用いて測定した競合再構築単位の棒グラフ(左パネル);およびビヒクル、G−CSF;時間差無し(no Stagger)、1日の時間差、または2日の時間差で測定した、SKL細胞に関するMFICXCR4の棒グラフ(右パネル)である。
【図22】G−CSF(ひし形)またはG−CSF+インドメタシン(四角)のどちらかを用いて測定したキメラ現象のパーセント対PBMC:BM比のグラフ(左パネル);G−CSF(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)のどちらかを用いて測定した200万PBMCに対して調整したCRUを示すグラフである。
【図23】PMN対G−CSF(ひし形)またはG−CSF+Metacam(メロキシカム)(四角)によって動員されたPBMCの移植後の日数のグラフである。
【図24】PLT対G−CSF(ひし形)またはG−CSF+Metacam(メロキシカム)(四角)によって動員されたPBMCの移植後の日数のグラフである。
【図25】G−CSF単独またはG−CSF+メロキシカムのどちらかを用いてヒヒを処置することの効果を試験するために設計された実験を要約した漫画である。
【図26】G−CSFまたはG−CSF+メロキシカムのどちらかを用いて処置された4匹の異なるヒヒから採取したCD34+細胞(左側)またはCFU−GM(右側)/血液mLのプロットである。
【図27】COX−1またはCOX−2のどちらかに関するそれらの選択性の点で異なる、様々な化合物を使用して試験したCFU−GM/血液mLの棒グラフである。
【図28】G−CSFまたはG−CSF+様々な量のアスピリンもしくはイブプロフェンのどちらかを用いて処置後試験した、G−CSFに対するCFU−GM/血液mLの倍数変化の棒グラフである。
【図29】G−CSFまたは様々なレベルのメロキシカムのどちらかを用いて処置後の末梢血において測定したCFU−GM/血液mLの棒グラフである。
【図30】G−CSFまたは様々なレベルのメロキシカムのどちらかを用いて処置後の骨髄において測定したCFU−GM/大腿骨の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
新規な技術の原理の理解を促進する目的の為に、それらの好ましい実施形態をここに参照するものでありそれらを説明するために特化された言語を使用する。それにもかかわらず、新規な技術の範囲は、その結果限定されないものとして意図され、新規な技術の原理のこのような変更、改良およびさらなる応用は、新規な技術が関連する分野の技術者が通常思いつくものとして企図されると理解されるものである。
【0019】
プロスタグランジンE2(PGE2)は、潤沢な生理学的エイコサノイドであり、がん、炎症および他の多数の生理学系の公知のメディエーターである。造血におけるPGE2の役割は、様々な研究チームにより探求されているが、結果の調整は困難である。例えば、in vitroおよびin vivoの研究により、PGE2は骨髄造血を負に制御できること、すなわちPGE2は、BFU−EおよびCFU−GEMMのコロニー形成を促進し、CFU−SおよびCFU−GMの増殖を強化することが実証されている。他方、PGE2は、HSPCを刺激でき、造血に関して二相効果を有する。すなわち短期ex vivoにおいて、骨髄細胞のPGE2処置は、休止細胞、おそらく幹細胞またはより未発達な前駆細胞の集団から循環ヒトCFU−GMの産生を刺激することが示された。さらに近年、16,16−ジメチルPGE2に対するex vivoの曝露が、マウス骨髄細胞の再構築能力およびゼブラフィッシュの腎臓における髄の回復を増加させることが示された(Northら、2007年)。これらの研究は、造血の制御におけるPGE2に関係するが、PGE2と造血幹細胞のホーミングとを関連付けることはできない。むしろ、先の研究は、PGE2がHSPCの分化の調節に関与し、PGE2は細胞のホーミングに関して直接効果を有さないことを示す傾向がある。
【0020】
本明細書において実証されるように、PGE2は、HSPCの長期再構築に関して直接の安定化効果を有し、自己再生HSPCの生存、ホーミングおよび増殖を強化することによって、生着を容易にする。
【0021】
本明細書に開示した一態様は、造血幹細胞および前駆細胞の末梢血系における循環の頻度を増加するシクロオキシゲナーゼの活性の阻害である。限定されない一実施例において、造血ドナーが一用量の動員剤を投与される1日前および毎日、造血ドナーに経口経路または全身経路によってシクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、50マイクログラムのインドメタシンを毎日投与することは、末梢において幹細胞および前駆細胞の動員を強化する。シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばインドメタシンと、臨床的に承認された動員剤、例えばG−CSFとの同時使用は、前駆細胞の動員に対して相乗効果を生み出す。
【0022】
造血幹細胞および前駆細胞の動員は、ドナーに有効量のプロスタグランジンE受容体アンタゴニストを提供することによっても達成できる。
【0023】
開示したいくつかの態様は、PGE2に対するex vivoの曝露は移植後のHSPC頻度を強化し、PGE2処置HSPCに競合的有利性を提供することを示す。骨髄幹細胞をex vivoにおいてPGE2で処置することは、マウスにおいて生着する幹細胞の合計を強化し、幹細胞の生存を強化し、幹細胞のホーミング効率を増加させ、幹細胞の自己再生を増加させる。dmPGE2によって誘導されたHSPCの頻度の強化は、同じ動物内の直接一対一分析において対照およびdmPGE2処置細胞の生着を比較する、限界希釈競合的移植モデルを使用することによって実証された。例えば、未処置造血移植体または精製造血幹細胞集団(例えば、マウス中のSKL細胞またはヒト中のCD34+細胞)と、真のPGE2またはより安定な類似体の16,16−ジメチルPGE2(または任意のさらなる活性PGE類似体)とを、1mlの培養培地、例えば、IMDM中、100万から1000万細胞あたり0.001〜10マイクロモル濃度(Molar)のPGE2の濃度で、1〜6時間、氷上でインキュベートした。インキュベート後、細胞を滅菌生理食塩水で3回洗浄し、レシピエントに静脈内投与した。この方法により、Poisson統計および競合的再構築単位(CRU)の分析によるHSPC頻度の計算に基づき、PGE2をパルスしたHSPCの約4倍の競合的有利性を実証した。頻度分析により、対照細胞に対して1/4の数のPGE2処置細胞を使用して同等の再構成が実証されている。加えて、対照細胞またはPGE2処置細胞のどちらかを使用する、二次移植レシピエントにおいて、全造血再構成が観察され、HSPC自己再生についてPGE2の悪影響はないことが示された。実際、LTRC活性の増加傾向が見られ、段階移植の前に細胞または動物にさらなる処置は実施していないので、一次移植において観察された、HSPCに関する短期PGE2曝露の強化効果が長続きすることが示された。PGE2処置細胞の生着の強化は、28週間にわたって安定であった。移植後90日の、二次移植動物における分析により、完全な多系統の再構成が実証され、より高いHSPC頻度が続き、長期再構築HSPCに関する短期PGE2処置の安定した効果が示された。
【0024】
生着の強化は、HSPCの頻度、ホーミング、生存および/または増殖の変化によりもたらされ得る。PGE2は、HSPCのホーミングに影響を与えないことが、Northらによって示唆されたが、彼らの研究は、HSPCを明確に評価していなかった。本明細書において実証されたように、予想外に、PGE2により誘導されたHSPC頻度の強化は、20週間を超えて安定であり、二次移植において維持された。競合的移植モデルにおける直接比較は、HSPCをPGE2に対して短期曝露することにより、約4倍の競合的有利性がもたらされることを示した。合計移植細胞は、対照とPGE2処置細胞との間にホーミング効率の差はなかったが、PGE2処置され、分類されたSKL細胞のホーミング効率の強化が観察され、PGE2が、HSPCのホーミングに直接効果を有することが強く示唆された。
【0025】
これらの結果は、先行する研究により提唱された短期だけの効果より優れた、HSPCまたはHSPCの長期再構築能に対するPGE2の効果を示唆する。
【0026】
説明の目的で提示される、限定されない1つの可能性は、HSPCの機能に対するPGE2の効果がアルファケモカイン受容体のCXCR4ケモカイン受容体の上方制御を介して仲介されると思われ、HSPCのホーミングおよび自己再生ならびにHSPCの生存および増殖を制御する、アポトーシス阻害剤タンパク質である、サバイビンに関与することである。
【0027】
フローサイトメトリおよびQRT−PCRは、Sca−1+、c−kit+、Lineageneg(SKL)マウス骨髄細胞および受容体サブタイプの発現において明白な差のないCD34+ヒト臍帯血細胞(UCB)において、4種のPGE2受容体(EP1〜EP4)すべての発現を示す。HSPC機能に関するいくつかの機能特性を分析した場合、SKL(26.8%)およびCD34+UCB(17.3%)の両方におけるCXCR4の発現の有意な増加が、PGE2曝露後に見られ、曝露後6時間においてCXCR4 mRNAの有意な上方制御が見られた。CXCR4の増加は、PGE2処置移植体のin vivoの骨髄ホーミング効率の約2倍の増加と完全に一致し、操作していない骨髄(p<0.001、3実験、n=6マウス/群/実験、個別にアッセイ)および同じ動物中の1対1競合で精製SKL細胞(p<0.001、2実験、n=5マウス/群/実験、個別にアッセイ)において観察され、HSPCに関するPGE2の直接効果を示唆した。ホーミング効率の増加は、選択的CXCR4アンタゴニストのAMD3100を用いて処置することによって有意に減少した。
【0028】
PGE2処置は、SKL細胞のCXCR4 mRNAおよび表面発現を増加させた。加えて、CXCR4アンタゴニストのAMD3100は、ホーミングに対するPGE2の効果の強化を有意に減少させ、CXCR4発現の強化および骨髄SDF−1に対する化学誘引は、ホーミングの強化に大いに関与するが、接着分子の発現または機能に対するさらなる効果は排除され得ないことを示唆している。
【0029】
本明細書に開示した一態様は、レシピエントのPGE2処置により、レシピエントに移植された幹細胞の生存がin vivoで強化されることである。PGE2または活性類似体のレシピエントに対する、移植時の非経口投与および幹細胞の強化のための毎日の投与を続けることは、移植されたHSPCの生存を増加させ得る。例えば、PGE2またはその活性類似体は、0.0001〜10マイクロモル濃度で、造血移植体の供与直前およびその後毎日患者に投与できる。
【0030】
in vitroのPGE2処置は、細胞周期において活性なSKL細胞の集団において、処置後24時間以内に増加をもたらす。加えて、BrdU処置レシピエントマウスにおけるPGE2処置細胞の移植は、ビヒクルだけをパルスした移植細胞と比較して、細胞周期のS+G2/M期において約2倍を超えるドナーSKL細胞を示した。
【0031】
サバイビンは、HSPCが細胞周期に進入し、進行するために必要と考えられており、コンディショナルノックアウトマウスにおけるサバイビンの欠損は、HSPCの維持にサバイビンが必要であることを示す。本明細書に記載の研究は、PGE2処置SKL細胞においてmRNAおよびサバイビンのタンパク質レベルの上昇、同時に起こる、アポトーシスを仲介するプロテアーゼである、活性カスパーゼ−3の減少を見出した。生存アッセイは、PGE2が、in vitroでSKL細胞のアポトーシスを用量依存的に減少させること、同時に起こる、サバイビンのタンパク質発現の1.7倍の増加および活性カスパーゼ−3の減少(23〜59%の減少;曝露後24〜72時間)を示した。
【0032】
サバイビンにより仲介されたHSPCの生存の強化は、生着の強化に寄与する可能性が高い。PGE2に対するパルス曝露は、細胞周期においてHSPCの割合を約2倍増加し、BrdU+SKL細胞のHSPC頻度、CRUおよびホーミングを増加し、一次および二次移植においてHSPC頻度の強化を維持する。これらの結果の限定されない1つの説明は、PGE2のパルス曝露が、HSPCの自己再生の単一ラウンドを開始できることである。例えば、EP2およびEP4の受容体の活性化は、グリコーゲン合成キナーゼ−3(GSK−3)のリン酸化に関与し、β−カテニンのシグナル伝達を増加させ(Hullら、2004年;Regan、2003年)、これはWnt経路の下流であり、HSPCの生存および自己再生に関係している(Flemingら、2008年;KhanおよびBendall、2006年)。PGE2によるシグナル伝達は、おそらくEP4を介するが、EP4が直接β−カテニンを増加させ得ることを排他的に限定するものではない。COX−2およびWnt経路との間の相乗的クロストークが示唆されている(Wangら、2004年)。
【0033】
サバイビンはさらに、p21WAF1/CDKN1を介してHSPCの細胞循環を促進し(Fukudaら、2004年)、HSPC機能に関与し(Chengら、2000年)、カスパーゼ−3活性をブロックする(Liら、1998年;Tammら、1998年)ことが公知である。近年、p21は、HSPCの自己再生に関係する(Janzenら、2008年)。本明細書に報告した研究から引き出された1つの発見は、PGE2がサバイビンを上方制御し、カスパーゼ−3を減少させることであり、サバイビン経路が、自己再生の増加に関するPGE2の効果に関係し得ることを示唆している。サバイビン(Pengら、2006年)およびCXCR4(Stallerら、2003年;Zagzagら、2005年)の転写が、転写因子の低酸素誘導因子−1アルファ(HIF−1アルファ)により上方制御され、低酸素誘導因子−1アルファは、PGE2によって安定化され得(Liuら、2002年;Piccoliら、2007年)、おそらくいくつかのPGE2応答経路と、HSPCの細胞生存、ホーミングおよび増殖/自己再生がリンクしていることに留意するとさらに興味深い。
【0034】
これらの研究は、PGE2処置後に観察されるHSPC頻度の約4倍の増加が、約2倍またはそれを超えるHSPCのレシピエント骨髄へのホーミングおよびHSPCの自己再生の約2倍の増大によって生じることを示唆している。これらの結果は、それによってPGE2がHSPCの機能を強化する作用の新規な機序を規定する役に立つことができ、これらの結果は、造血移植、特に限定された細胞数が生着の乏しい見込みにつながる造血移植体を容易にするための予期せぬ治療的取組みを示唆する。
【0035】
本明細書に開示の一態様は、幹細胞遺伝子療法におけるウィルス導入効率を強化する方法である。幹細胞のex vivoのPGE2処置は、自己再生分裂およびこのような細胞の生存を増加し、これは、ウィルスベクターにより仲介される遺伝子組み込みの成功にとって重要な因子である。PGE2により促進された幹細胞の自己再生分裂/生存は、最新の幹細胞形質導入プロトコルに組み込むことができ、したがって、幹細胞遺伝子療法における遺伝子形質導入効率全体を増加する。
【0036】
本明細書において、HSPC生着を強化するためのいくつかのPGE2の使用方法、ドナー細胞の動員、HSPCの維持およびレシピエントの体内におけるHSPCのホーミングを含む多段階方法を報告する。いくつかの条件下で、これらの方法は、HSPC頻度において4倍の増加をもたらし、生着は、おそらく、例えば、HSPCのホーミングにおける約2倍の増加およびPGE2の直接影響下のHSPCの細胞周期活性における2倍の増加の累積効果に起因する。正確なシグナル伝達経路がさらに決定されるべきであるが、この効果の限定されない1つの説明は、生着の強化は、CXCR4およびサバイビンなどの因子の上方制御によることである。
【0037】
HSPCのホーミングならびに生存および/または増殖を改善するPGE2の能力は、特にHSPCの数が限定されている状況、例えば、UCBおよびいくつかの動員されたPB産物において、または幹細胞遺伝子療法におけるウィルス遺伝子形質導入を設定するのに臨床的に有意であり得る。本発明者らの限界希釈移植研究は、同等の生着結果を、PGE2処置されていない対照と比較して、PGE2処置細胞が1/4の数で達成し得ることを例示する。これらの結果は、HSPCの数が限定されている条件下でPGE2を使用することの有用性を実証する。4種のEP受容体サブタイプすべてが、HSPCにおいて発現されると思われるが、これらの受容体のどれ(または4種すべて)が生着機能に関係しているかは明らかでない。生着/回復の強化が、in vivoにおいてPGE2を投与することによって、またはin vivoで使用されるPGE2が、ex vivoでPGE2に曝露されたHSPCの生着をさらに容易にできる場合に得られることは、これらの結果と一致する。
【0038】
材料および方法
材料
マウス C57B1/6マウスは、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME、USA)から購入した。B6.SJL−PtrcAPep3B/BoyJ(BOYJ)およびF1 C57B1/6/BOYJハイブリッドを、研究所内で繁殖させた。すべての動物を、食物および酸性化水を連続提供されるマイクロアイソレーターケージにおいて飼育した。移植研究に使用するマウスは、放射時、および移植後30日の間、ドキシサイクリンの供給を受けた。The Animal Care and Use Committee of Indiana University School of Medicineは、すべての動物プロトコルを承認した。
【0039】
フローサイトメトリ すべての抗体は、特に明記していない限り、BD Biosciencesから購入した。マウスKLおよびSKL細胞の検出および選別のために、PE−Cy7と結合したストレプトアビジン(ビオチン化MACS系統抗体の染色用(Miltenyi Biotech、Auburn、CA))、c−kit−APC、Sca−1−PEまたはAPC−Cy7、CD45.1−PEおよびCD45.2−FITCを使用した。UCB CD34+細胞は、抗ヒト−CD34−APCを使用して検出した。多系列分析のために、APC−Cy7−Mac−1、PE−Cy7−B−220およびAPC−CD3を使用した。EP受容体は、抗EP1、EP2、EP3およびEP4ウサギIgG(Cayman Chemicals)を用いて検出し、FITC−ヤギ−抗−ウサギIgG(Southern Biotech、Birmingham、AL)を用いて二次染色した。CXCR4の発現は、ストレプトアビジン−PECy7、c−kit−APC、Sca−l−APC−Cy7およびCXCR4−PEを使用して分析した。アポトーシスは、FITC−アネキシン−Vを用いて測定した。サバイビンおよび活性カスパーゼ−3の検出のために、細胞を透過処理し、CytoFix/CytoPerm kit(BD)を使用して固定し、抗活性カスパーゼ−3−FITC Flow Kit(BD)またはサバイビン−PE(R&D Systems)を用いて染色した。
【0040】
細胞周期分析のために、細胞を、7AAD またはFITC−BrdU Flow Kit(BD)を用いて染色した。すべての分析はLSRIIにおいて実施し、選別は、FACSAriaソーターまたはFACSVantageソーター(BD)のどちらかにおいて実施した。Cell Quest ProおよびDiva software(BD)を、データの収集および分析に使用した。
【0041】
方法
限界希釈競合的および非競合的移植
WBM細胞(CD45.2)を、1マイクロモル濃度のdmPGE2(Cayman Chemical、Ann Arbor、MI)/1×106細胞または滅菌、非発熱性PBS中0.01%のETOHのどちらかを用いて、氷上において2時間処置した。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、2×105のコンジェニックCD45.1競合骨髄細胞と、0.075:1、0.25:1、1:1および2.5:1の割合で混合し、致死的に放射線(1100−cGy分割線量)を浴びたCD45.1マウスに、尾静脈注射により移植した(5マウス/希釈)。PB中のCD45.1およびCD45.2細胞を、フローサイトメトリによって、月1回決定した。1対1競合移植のために、CD45.1マウスおよびCD45.2マウス由来のWBMを、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置しCD45.1/CD45.2マウス由来の2×105の競合骨髄細胞と、0.075:1、0.25:1、1:1および2.5:1の割合で混合し、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに移植した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の一部(proportion)を、月1回決定した。HSPCの頻度を、L−CALCソフトウェア(Stem Cell Technologies、Vancouver BC、Canada)を使用して、Poisson統計によって定量化し、キメラ現象に対する寄与は<5%であり、陰性レシピエントと考えられる。競合的再構築単位(CRU)を、記載のように(Harrison、1980)計算した。二次移植のために、移植後20週に、すでに移植を受けた1:1比のF1ハイブリッドマウス由来の2×106のWBMを、致死的に放射線を浴びたF1ハイブリッドマウスに非競合的様式で注射し、PBのキメラ現象および三血球系の再構成を月1回評価した。
【0042】
in vivoのHSPCの骨髄へのホーミングの分析 CD45.2WBMを、CFSE(Molecular Probes、Eugene、OR)を用いて標識し、洗浄し、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて氷上で処置した。処置後、細胞を洗浄し、2×107の細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。16時間後、大腿骨および脛骨を洗い流し、マウス骨髄Lin+細胞の一部を、MACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して枯渇させ、ビオチン(系統)、c−kit(K)およびSca−1(S)に特異的な蛍光色素標識抗体を用いて染色し、CFSE+WBM(非系統枯渇)、KLおよびSKL細胞の合計数を決定した。コンジェニックホーミング研究のために、Linneg CD45.1細胞を、1マイクロモル濃度のdmPGE2、ビヒクルまたはPBSを用いて、氷上で処置した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、2×106の細胞をCD45.2マウスに移植した。16時間後、レシピエントの骨髄を採取し、系統を枯渇し、染色し、ドナーのCD45.1SKL細胞を決定した。選別されたSKL細胞を使用する競合的1対1ホーミングの研究では、CD45.2およびCD45.1マウス由来のLinneg細胞をFACS選別し、細胞を、dmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、3×104のCD45.1(ビヒクルまたはdmPGE2処置)+3×104のCD45.2(dmPGE2またはビヒクル処置)SKL細胞を、致死的に放射線を浴びたF1ハイブリッドマウスに移植した。ホーミング研究においてCXCR4の役割を評価するために、Linneg CD45.2細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2+10マイクロモル濃度のAMD3100(AnorMed Inc.、Vancouver、BC、Canada)を用いて氷上で処置し、2×106の処置細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.1マウスに注射した。移植後16時間で、ホーミングしたSKL細胞を分析した。
【0043】
EP受容体、CXCR4およびサバイビンの発現 CD45.2マウス由来の複製Linneg細胞試料を、SKLについて染色し、KLおよびSKL細胞における個々のEP受容体および表面受容体の発現を、FACSによって決定した。ヒトEP受容体のために、UCBを、Institutional Review Boardの承認によりWishard Hospital、Indianapolis、INから入手した。単核細胞を、Ficoll−Paque(商標)Plus(Amersham Biosciences)において単離し、CD34+細胞を、MACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を用いて正に選択した(FukudaおよびPelus、2001年)。複製細胞を、CD34に対して染色し、個々のEP受容体および表面発現を、FACSによって決定した。CXCR4、サバイビンおよび活性カスパーゼ−3を評価するために、Linneg細胞またはCD34+UCBを、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照を用いて、氷上で2時間処置し、洗浄し、次いでRPMI−1640+10%FBS中で、37℃において24時間培養した。細胞を、上記のように、SKL(マウス細胞)およびCXCR4、サバイビンおよび/または活性カスパーゼ−3に対して染色し、FACSによって分析した。
【0044】
細胞周期分析 in vitroの細胞周期分析のために、Linneg細胞を、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、Stem Cell Pro Media(Stem Cell Technologies)中で、rmSCF(50ng/ml)(R&D Systems、Minneapolis、MN)、rhFlt−3およびrhTPO(それぞれ100ng/ml)(Immunex、Seattle、WA)と一緒に培養した。20時間後、細胞を、SKLを用いて染色し、固定し、透過処理し、7AAD(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて染色した。S+G2/M期のSKL細胞の一部をFACSによりDNA含有量を測定することによって決定した。in vivoの細胞周期分析のために、CD45.2マウスに致死的に放射線を浴びせ、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置したCD45.1マウス由来の、5×106のLinneg細胞を移植した。移植時に、レシピエントマウスに、飲料水中1ミリグラム/mLのBrdU(Sigma Aldrich、St. Louis、MO)および1mg/マウスのBrdU I.Pを与えた。16時間後、レシピエントの骨髄を単離し、系統を枯渇させ、CD45.1、SKLおよびBrdUに対して染色した。BrdU+である、ホーミングした(CD45.1+)SKL細胞の一部を、個々のマウスにおいてFACSによって決定した。
【0045】
アポトーシスアッセイ Linneg細胞を、0.1ナノモル濃度から1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照を用いて、氷上で処置し、洗浄し、成長因子を含まずに、37℃においてRPMI−1640+2%FBS中でインキュベートし、アポトーシスを誘導した。24時間後、細胞を、SKLおよびアネキシンVに対して染色し、アネキシンV+SKL細胞の一部をFACSにより決定した。
【0046】
逆転写およびQRT−PCR トータルRNAを、完全RNA精製キット(Stratagene、La Jolla、CA)を使用して得た。一定量のRNAを、(FukudaおよびPelus、2001年)に記載のように、1ミリモル濃度のdNTPおよびRNase阻害剤を含む50マイクロリットルの体積中でランダムプライマー(Promega、Madison、WI)およびMMLV逆転写酵素(Promega)を用いて逆転写した。DNaseおよびRNase非含有水(Ambion、Austin、TX)を加え、10ナノグラムのRNA/マクロリットルと同等の最終濃度を得、5マイクロリットルをQRT−PCRのために使用した。SYBR Green QRTPCRのためのプライマーを設計し、75〜150bpのサイズの増幅産物を作製した。QRT−PCRを、Platinum SYBR Green qPCR supermix UDG with Rox(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、合計容量30マイクロリットルで、ABI−7000(Applied Biosystems、Carlsbad、CA)において、活性化ステップが50℃で2分間、変性が95℃で2分間および増幅が95℃で15秒、50℃で30秒、72℃で30秒を45サイクルで実施し、その後解離によって唯一の産物が選られたことを確認した。
【0047】
本発明のいくつかの態様の実践に使用できる非ステロイド系抗炎症性化合物は、限定するものではないが、商品名Celebrex(登録商標)の名前で販売されているセレコキシブ(4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド);商品名Vioxx(登録商標)の名前で販売されているロフェコキシブ(4−(4−メチルスルホニルフェニル)−3−フェニル−5H−フラン−2−オン);アスピリン(2−アセトキシ安息香酸);エトリコキシブ(5−クロロ−6’−メチル−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2,3’−ビピリジン);商品名Bextra(登録商標)の名前で販売されているバルデコキシブ(4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド);イブプロフェン((RS)−2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸);ナプロキセン((+)−(S)−2−(6−メトキシナフタレン−2−イル)プロパン酸);商品名Voltaren(登録商標)の名前で市販されているジクロフェナク(2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸);リコフェロン([6−(4−クロロフェニル)−2,2−ジメチル−7−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−5−イル]酢酸);インドメタシン(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸);商品名Metacamの名前で販売されているメロキシカム((8E)−8−[ヒドロキシ−[(5−メチル−1,3−チアゾール−2−イル)アミノ]メチリデン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−アザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン);エトドラク(2−(1,8−ジエチル−4,9−ジヒドロ−3H−ピラノ[3,4−b]インドール−1−イル)酢酸);商品名Toradolの名前で市販されているケトロラク((±)−5−ベンゾイル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−1−カルボン酸,2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)などの化合物を含む。
【0048】
少なくとも1種のPGE2受容体に対してアンタゴニストとして作用する化合物は、限定するものではないが、Cayman Chemical Company (Ann Arbor、MI、U.S.A.)または化学品供給会社によって維持/販売される他のリストから利用可能な化合物を含む。
【0049】
統計解析 プールしたすべての値は、平均±SEMで表す。統計的有意差は、必要に応じて、Microsoft Excel(Microsoft Corp、Seattle、WA)の対応のある、または対応のない両側t検定関数を使用して決定した。本明細書において使用する場合、特にいくつかの図において、「dmPGE2」と「dmPGE」という用語は交換可能に使用される。
【実施例】
【0050】
[実施例1.PGE2は、長期再構築HSPCの頻度および生着を増加させる。]
CD45.1/CD45.2ハイブリッドマウスに移植されたCD45.2およびCD45.1のコンジェニック移植体を利用する限界希釈競合移植モデルの使用により、HSPCをPGE2に短期曝露することが、HSPCおよび競合的再構築単位(CRU)の頻度の長期強化を生み出すことが実証された。ここで図1Aを参照すると、CD45.1またはCD45.2マウス由来の骨髄は、それぞれ、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置された。CD45.1/CD45.2ハイブリッド骨髄細胞を競合相手として使用した。限界希釈を、致死的に放射線(1100cGys、分割線量)を浴びたCD45.1/CD45.2ハイブリッドマウスに移植し、PB中のキメラ現象を20週間にわたって分析した。個々の細胞集団を検出する代表的フロープロットを示す(下段パネル)。
【0051】
ここで図1Bを参照すると、12週目にPoisson統計によって決定された、ビヒクル(赤色)またはdmPGE2(青色)をパルスした細胞に関する頻度分析(上段)は、;P0=85,560(ビヒクル)およびP0=23,911(dmPGE2処置)。PBおよびCRUの分析におけるキメラ現象を、12週において示す(平均±SEM)。データは2つのプールされた実験を表す、n=5マウス/群/実験であり、それぞれ個別にアッセイした。
【0052】
ここで図1Cを参照すると、ビヒクルまたは20週にわたってPGE2処置した骨髄のレシピエントにおけるHSPCの頻度分析である。倍数変化は、ビヒクルと比較したdmPGE2−パルスした細胞の生着頻度において増加を示す。
【0053】
ここで図1Dを参照すると、多系統再構成(骨髄、BおよびTリンパ球)の代表的FACSプロットである。ここで図1Dを参照すると、中央のパネルは、一次移植のための多系統分析(32週、左パネル)および一次移植されたマウスから20週目に移植を受けた4マウスを、12週間後に分析したコホート(右パネル)である。ビヒクルに対するdmPGE2処置細胞のキメラ現象の増加は、一次移植に関して20週目(二次移植の時)および二次移植の12週目に示される(下パネル)。20週目の一次移植に関するデータは、2つのプールされた実験からであり、n=5マウス/群/実験、それぞれ個別にアッセイした。12週目の二次移植に関するデータは、n=4マウス/群、それぞれ個別にアッセイした。
【0054】
さらに、図1Dを参照すると、段階移植により、移植された造血移植体中の自己再生およびHSPCの拡大を評価している。ex vivoでdmPGE2およびビヒクルへの曝露された長期再構築細胞(LTRC)の拡大を調査するために、骨髄を、一次移植された動物から移植後20週目に採取し、二次レシピエントに移植した。二次移植後12週目のPBの分析により、移植を受けたすべてのマウスに由来する細胞により多系統の再構成が示され、一次移植されたLTRCの自己再生を示した。一次移植ドナーにおいて見られる、dmPGE2への曝露からもたらされるキメラ現象の増加は、任意の追加の処置をしなくても二次移植においても見られた。さらに、dmPGE2を用いてすでに処置されたHSPCの競合力が増加する傾向が二次移植において観察され、骨髄細胞系列の再構成に対してわずかにバイアスがあった。
【0055】
このモデルは、生着および同じ動物内における対照とdmPGE2処置群とに由来するHSPCの競合力(図1A),ならびに宿主細胞の内因性再構成の定量的比較を可能にする。移植12週後に、末梢血(PB)の分析により、ビヒクル処置細胞と比較して、dmPGE2処置細胞にキメラ現象の増加が示され、HSPC頻度および競合的再構成単位(CRU)が約4倍増加し、長期再構成能力の測定が認識された(図1B)。移植後に続く20週間を通して、HSPCの頻度は約4倍の増加を維持し、dmPGE2のパルス曝露の効果は安定であった(図1C)。移植後32週目に、PB中のBリンパ系列およびTリンパ系列ならびに骨髄系列に関して再構成が見られ、未処置の競合細胞、dmPGE2処置細胞またはビヒクル処置細胞の間に認識可能な差はなかった(図1D)。
【0056】
[実施例2.マウスおよびヒトの造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)は、PGE2受容体を発現する。]
伝えられるところでは、PGE2は、4種の特異的な、高度に保存されたGタンパク質共役受容体;EP1〜EP4と相互作用する(SugimotoおよびNarumiya、2007年;Tsuboiら、2002年)。EP受容体のレパートリーは、多重の、時としてPGE2に起因する逆の応答の原因となる(Breyerら、2001年)。HSPCにおけるPGE2受容体サブタイプの発現は今まで知られていない。ここで図2Aを参照すると、造血前駆細胞(HPC)に富んだc−kit+Linneg(KL)細胞およびHSPCに富んだSca−1+c−kit+Linneg(SKL)細胞におけるEP受容体の分析は、4種すべてのEP受容体(EP3+、EP2、EP1およびEP4)が発現されたことを示した。さらにここで図2A(右パネル)を参照すると、QRT−PCRによりFACSにより選別されたKLおよびSKL細胞中に、4種すべてのEP受容体に関するmRNAが検出されていた。ここで図2A(中央パネル)を参照すると、EP3に関する解離曲線はいくつかのピークを示し、EP3の公知の多重スプライス変異体と一致する(Nambaら、1993年)。KLまたはSKL細胞に関して、任意のEP受容体サブタイプの表面発現またはmRNAレベルの間に、有意な定量的差異は見られなかった。ここで図2Bを参照すると、ヒトCD34+UCB細胞の表面において、マウス細胞の類似体(右パネル)は4種すべての受容体サブタイプを発現し、QRT−PCR分析により、4種すべてのEP受容体のmRNAが検出されていた(図2B)。
【0057】
[実施例3.短期PGE2曝露はHSPCのホーミング効率を増加させる。]
PGE2に対するパルス曝露において観察されるHSPCの生着の強化は、HSPCの数および/または細胞の促進をもたらす、または宿主の骨髄におけるHSPCのホーミングもしくは増殖をもたらす細胞周期状態に起因すると思われる。その原因と無関係に、骨髄ニッチはHSPCにとって自己再生および増殖に必要であり、これらのニッチへのHSPCのホーミングだけが長期再構築を提供し得る可能性が非常に高い。さらにここで図3Aを参照すると、HSPCのホーミングを評価するために、CFSE標識された全骨髄(WBM)CD45.2細胞は、dmPGE2またはビヒクルを氷上で2時間パルスされ、洗浄され、致死的に放射線を浴びたCD45.2宿主にIV注射された。16時間後、骨髄にホーミングするCFSE+細胞の合計およびKLおよびSKL細胞集団内のホーミング事象の数を定量した。総WBM細胞を評価した場合、骨髄へのCFSE+細胞のホーミングのパーセントにおいて、dmPGE2処置細胞およびビヒクル処置細胞の間に差異は観察されなかったが、対照よりも有意に多くのSKL細胞が骨髄にホーミングした。ここで図3Bを参照すると、ビヒクル処置細胞または未操作細胞と比較して、コンジェニックモデルにおいて、dmPGE2処置細胞に関してSKL細胞の有意により大きなパーセントが観察された。未処置細胞およびビヒクル−処置細胞の間にホーミング効率の差は見られなかった。
【0058】
ここで図3Cを参照すると、SKL細胞のホーミングに対するdmPGE2の強化効果が直接であったか間接であったかを決定するために、1対1移植モデルにおける豊富なHSPCのホーミングが他の細胞と比較された。CD45.2およびCD45.1マウスの両方から高度に精製されたSKL細胞を、FACS選別によって単離し、dmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、3×104のビヒクル処置CD45.1細胞+3×104のdmPGEa処置CD45.2細胞を、CD45.1/CD45.2マウスに移植した。さらなるコホートに、コンジェニック系を同時に移植し、処置群を交換し、系統のホーミングにおける任意のバイアスを試験した。WBMを使用した研究と同様に、精製SKL細胞のdmPGE2パルス曝露は、それらのホーミング効率を2倍増加させ、HSPCに対するPGE2の直接効果を強く示唆する。SKL細胞は、均質なHSPC集団ではないが、SKL細胞は、LTRCに高度に富んでいる(Okadaら、1992年;SpangrudeおよびScollay、1990年)。
【0059】
[実施例4.PGE2はHSPC CXCR4を増加させ、CXCR4アンタゴニストAMD3100は、ホーミングの強化をブロックする。]
ここで図4Aを参照すると、ストロマ細胞由来因子−1アルファ(SDF−1a)/CXCR4軸は、HSPCの輸送およびホーミングと関係している。本研究は、dmPGE2処置HSPCのホーミングの改善は、SDF−1a/CXCR4のシグナル伝達の増加の結果であったかどうかを評価した。Linneg細胞のdmPGE2に対するパルス曝露は、KLおよびSKL細胞におけるCXCR4の発現を増加させ(図4A);同様に、dmPGE2のパルス曝露は、予想通りCD34+UCB細胞におけるCXCR4の発現を増加させた。QRT−PCRは、ビヒクルと比較してdmPGE2処置細胞においてCXCR4 mRNAレベルが上昇し、最大の上昇は6時間目に観察されたことを実証した(データ非掲載)。
【0060】
ここで図4Bを参照すると、CXCR4の上方制御が、PGE2処置後に観察されるホーミングの強化において役割を果たすかどうか決定するために、SDF−1へのin vitroの遊走およびin vivoのHSPCのホーミングを阻害する選択的CXCR4アンタゴニストAMD3100が使用された。PGE2のパルス曝露は、SKL細胞のホーミングを約2倍増加させ、ビヒクルまたはdmPGE2をパルスされた細胞をAMD3100と一緒にインキュベートすることによりSKL細胞のホーミングは減少し、dmPGE2パルス細胞のホーミング効率の改善は抑制された。
【0061】
[実施例5.サバイビンの増加と一致して、PGE2はHSPCのアポトーシスを減少させる。]
PGE2処置は、HSPCの頻度およびCRUを4倍増加させる(図1)が、ホーミングはわずか2倍強化され(図3)、他の事象が生着の強化に関与していることを示唆する。アポトーシスは、正常な造血または悪性の造血において重要な制御過程であり、PGE2は抗アポトーシスシグナル伝達に関係している。さらに、EP受容体の下流シグナル伝達分子であるcAMPの活性化は、CD34+細胞においてアポトーシスを阻害する。これらの結果に一致する1つの仮説は、dmPGE2処置が、HSPCの生存および/または増殖に影響を与え、生着の強化に寄与するというものである。HSPCの生存に対するdmPGE2の効果を評価するために、Linneg細胞に、0.1ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルをパルスし、成長因子を含まない低血清培養培地において培養した。dmPGE2に対するパルス曝露は、用量依存性様式でSKL細胞においてアポトーシスを低下させ(図5A)1マイクロモル濃度で約65%の阻害に達した。
【0062】
アポトーシスタンパク質の阻害剤であるサバイビンは、正常造血細胞および悪性造血細胞の両方において、アポトーシスおよび増殖の重要な制御因子である。ここで図5Bを参照すると、これらの結果が、PGE2がHSPCにおいてサバイビンに影響を与えたことを実証している。dmPGE2のパルス24時間後、細胞内サバイビンレベルは、対照と比較して、マウスのSKL細胞およびCD34+UCB細胞の両方において有意に高く(それぞれ1.7および2.4倍)、QRT−PCR分析により、対照と比較してサバイビンmRNAの上昇が示された。
【0063】
ここで図5Cを参照すると、サバイビンの増加と一致する、対照と比較した活性カスパーゼ−3の減少が、SKL細胞をdmPGE2に曝露後24、48および72時間において見られた。
【0064】
[実施例6.PGE2処置がHSPCの増殖を増加させる。]
サバイビンは、HSPCが細胞周期に進入し、進行することを制御する。さらに、HSPCの増殖および自己再生に関係するβ−カテニンは、EP受容体経路の下流に位置する。これらの細胞周期制御因子を調節するPGE2の能力は、HSPCの自己再生および増殖における増加が、dmPGE2をパルスされた細胞の生着の強化に寄与しうることを示唆している。この仮説を試験するために、in vitroでdmPGE2またはビヒクルをパルスされたSKL細胞の細胞周期状態を分析した。ここで図6Aを参照すると、dmPGE2に対するパルス曝露が、細胞循環の増加の指標である、SKL細胞中のDNA含有量を増加させた(左パネル、右上の象限)。3つの実験において、対照と比較してdmPGE2処置後に60%を超えるSKL細胞が細胞周期のS+G2/M期にあった(図6A、右パネル)。KLまたはLinneg細胞の細胞周期速度に関して有意な効果は見られず(非掲載)、dmPGE2が初期HSPCのサイクル状態を選択的に増加させることを示唆している。
【0065】
in vitroで観察されたHSPCの細胞周期の強化に対するdmPGE2の効果を確認するために、骨髄細胞にdmPGE2をパルスし、移植後BrdUを用いて処置したコンジェニックマウスに注射し、16時間後、ドナーのBrdU+SKL細胞の一部を決定した。ここで図6Bを参照すると、S+G2/M期にあるホーミングしたSKL細胞の一部において約2倍の増加が、移植前dmPGE2をパルスした細胞に関して観察され、HSPCのdmPGE2に対する短期曝露が、in vivoでHSPCが細胞周期に進入し、進行することを刺激することが確認された。
【0066】
[実施例7.COX1/COX2二重阻害剤のインドメタシンがHSPCを動員することによる、PGE2の内因性生合成の阻害]
PGE2は、CXCR4受容体の発現を増加させるので、骨髄において、SDF−1/CXCR4のシグナル伝達はHSPCの輸送および保有にとって重要である。これらの結果と一致する1つの仮説は、COX1/COX2二重阻害剤のインドメタシンによるPGE2の内因性生合成の阻害もまたHSPCを動員することである。ここで図7Aおよび7Bを参照すると、図7Aおよび7Bは、150μg/kgのインドメタシンまたは150ug/kgのバイカレインを単独で(図7A)またはG−CSFと一緒に(図7B)4日間、毎日SC投与することによる、CFU−GMの動員に関する効果を示す。ここで図7Aを参照すると、150μg/kgのインドメタシンをSCで1日1回4日間の投与することにより、動員される前駆細胞の数が4倍増加した。ここで図7Bを参照すると、インドメタシンとG−CSFとを同時投与することにより、末梢血幹細胞の動員において高度に相乗的な増加が起こった。リポキシゲナーゼの阻害剤であるバイカレインは、ベースラインまたはG−CSF誘導性CFU−GM動員に関して効果を有さず、観察された効果が、シクロオキシゲナーゼ経路の阻害に特異的であったことを示唆する。データは、それぞれ個別にアッセイしたN=3マウスに関する、動員されたCFU−GM/血液mlの平均±SEMを表す。
【0067】
[実施例8.マウスおよびヒトのHSPCをPGE2にパルス曝露することにより、CXCR4の発現が増加する。]
CXCR4を評価するために、Lineagenegマウスの骨髄細胞またはCD34+UCBを、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照のどちらかを用いて2時間氷上で処置し、洗浄し、次いでRPMI−1640/10%HI−FBS中で37℃において24時間培養し、SKL(マウス細胞)またはCD34(ヒト)およびCXCR4に関して染色し、FACSにより分析した。ここで図4Aを参照すると、dmPGE2を用いて処置後24時間のKLおよびSKL細胞ならびにヒトCD34+UCB細胞におけるCXCR4の発現である。データは、dmPGE2またはビヒクルを用いた処置による、CXCR4の平均蛍光強度(MFI)の変化の平均±SEMで表す(n=3)。QRT−PCRによる分析で、CXCR4mRNAの2.65倍の増加が実証される。
【0068】
[実施例9.マウスSKL細胞をPGE2にパルス曝露することは、SDF−1αへの遊走を増加させる。]
新たに単離されたLineagenegマウス骨髄細胞に、dmPGE2またはビヒクルを2時間パルスし、洗浄し、10%HI−FCSを含む培地に再懸濁し、37℃において16時間培養した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、RPMI/0.5%BSAに再懸濁し、トランスウェルにおいてrmSDF−1αに4時間遊走させた。細胞遊走の合計を、フローサイトメトリにより測定した。ここで図9を参照すると、SKL細胞遊走の合計は、dmPGE2をパルスした細胞がより高かった。データは、3つの実験に関する遊走パーセントの平均±SEMである。ビヒクルを用いて処置した細胞と比較したdmPGE2処置細胞に関して、†P<0.05。
【0069】
[実施例10.ヒトCD34+細胞をPGE2にパルス曝露することは、SDF−1αへの遊走を増加させる。]
新たに単離されたUCB CD34+細胞に、dmPGE2またはビヒクルを2時間パルスし、洗浄し、10%HI−FCSを含む培地に再懸濁し、37℃において16時間培養した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、RPMI/0.5%BSAに再懸濁し、rhSDF−1への遊走をフローサイトメトリにより測定した。遊走アッセイの前に、CXCR4受容体をブロックするために、複製細胞を、5マイクログラム/mlのAMD3100と共に30分間インキュベートした。ここで図10を参照すると、データは、3つの実験に関する遊走パーセントの平均±SEMである。
【0070】
[実施例11.CXCR4受容体をブロックすることにより、SKL細胞のホーミングのPGE2による強化がブロックされる。]
ホーミングにおけるCXCR4の役割を評価するために、LineagenegCD45.2細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2+10マイクロモル濃度のAMD3100を用いて処置し、2×106の処置細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.1マウスに注射し、移植後16時間でホーミングしたSKL細胞を回収しFACSにより分析した。ここで図11を参照すると、10マイクロモル濃度のAMD3100不在下または存在下の、ビヒクルおよびdmPGE2処置細胞の骨髄へのホーミング効率である。ホーミングアッセイの前に、細胞を、AMD3100と共に30分間インキュベートした。
【0071】
[実施例12.PGE2は、in vitroでマウスSKL細胞の細胞周期速度を増加させる。]
Lineageneg細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2どちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、rmSCF、rhFlt3およびrhTpoを含む培地において培養した。20時間後、細胞を、SKLおよびHoechst−33342およびPyronin−Yに対して染色した。細胞周期におけるSKL細胞の割合を、FACSにより測定した。ここで図12を参照すると、ゲーティングされたSKL細胞の細胞周期分布を示す代表的フロープロットであり、それぞれ個別にアッセイした平均±SEM、n=9マウスの3つの実験による、ビヒクル対照と比較した、dmPGE2処置細胞に関する細胞周期における倍数増加を組み合わせたデータである。細胞周期におけるSKL細胞の割合を、FACSにより測定した。ゲーティングされたSKL細胞の細胞周期分布を示す代表的フロープロットであり、それぞれ個別にアッセイした平均±SEM、n=9マウスの3つの実験による、ビヒクル対照と比較した、dmPGE2処置細胞に関する細胞周期における倍数増加を組み合わせたデータである。
【0072】
[実施例13.PGE2は、in vitroの高度に精製されたCD150+48−(SLAM)SKL細胞の細胞周期速度を増加させる。]
ここで図8を参照すると、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2どちらかを用いて2時間処置し、成長因子(50ng/mlのrmSCF、それぞれ100ng/mlのrhFlt−3およびrhTPO)の存在下で20時間培養し、SLAM SKL、Hoechst−33342およびPyronin−Yに対して染色し、細胞周期のG0、G1、SおよびG2/M期にあるSLAM SKL細胞の割合を、FACSによるDNAおよびRNA含有量の定量化によって決定したLinneg骨髄細胞を使用して収集したデータを要約した表である。データは、それぞれ個別にアッセイしたn=9マウスに関する平均±SEMである。(b)G1+S+G2Mにある細胞のパーセント;n=9マウスに関する組み合わせデータ。(*)ビヒクル対照と比較してP<0.05。
【0073】
[実施例14.PGE2へのパルス曝露は、in vivoでホーミングしたSKL細胞の増殖および細胞周期速度を増加させる。]
CD45.1Lineageneg骨髄細胞を、dmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。移植直後、BrdUを飲料水中に提供し、IP注射によって投与した。16時間後骨髄を分析し、BrdU+であったCD45.1+、SKL細胞の割合を、FACS分析により分析した。ここで図13を参照すると、CD45.1Linneg骨髄細胞をdmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。移植直後、BrdUを飲料水中に提供し、IP注射によって投与した。16時間後骨髄を分析し、BrdU+であったCD45.1+、SKL細胞の割合を、FACS分析により分析した。PGE2を用いて処置したSKL細胞がより高い割合で骨髄にホーミングした。データは、平均±SEM、n=5/マウス/群であり、それぞれ個別にアッセイした。
【0074】
[実施例15.幹細胞の長期再構築活性は、PGE2のパルス曝露後に維持される。]
1対1競合分析のために、CD45.1およびCD45.2マウス由来のWBMを、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置し、様々な割合で2×105のCD45.1/CD45.2マウス由来の競合骨髄細胞と混合し、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに移植した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の割合を、月1回決定した。二次、三次および四次移植のために、1:1比ですでに移植されたCD45.1/CD45.2マウス由来の2×106のWBMを、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに非競合的様式で注射した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の割合を、月1回決定した。ここで図14を参照すると、一次移植の20週目(二次移植の時)およびサブコホートにおける32週目(二次移植の12週目分析の時)、二次移植の12週および24週目、三次および四次移植も同様にそれぞれ12週目に関する、dmPGE2処置細胞対ビヒクルのキメラ現象の増加である。20週の一次移植に関するデータは、それぞれ個別にアッセイした、n=5マウス/群/実験の2つのプールした実験からである。二次、三次および四次移植に関するデータは、それぞれ個別にアッセイした、n=5マウス/群からである。
【0075】
[実施例16.インドメタシンおよびG−CSFに関する末梢血幹細胞(PBSC)の動員レジメン。]
マウスに、ゼラチン中の150マイクログラム/kgのインドメタシンまたは150マイクログラム/kgのバイカレイン(リポキシゲナーゼ阻害剤)を、G−CSFと共に、または無しで48時間ごとに4日間のSC処置を与えた。CFU−GMの動員を、すでに記載のように決定した(Pelusら、Experimental Hematology33巻(2005年)295〜307頁)。ここで図7Aおよび7Bを参照すると、シクロオキシゲナーゼ二重阻害剤のインドメタシンおよびG−CSFの併用は、マウスHSPCを相乗的に動員している。150μg/kgインドメタシンまたは150ug/kgのバイカレイン(リポキシゲナーゼ阻害剤)を単独で(図7A)、またはG−CSFと一緒に(図7B)4日間、毎日SC投与することによるCFU−GMの動員に関する効果である。データは、それぞれアッセイした、N=3マウスの動員されたCFU−GM/血液mlの平均±SEMとして表す。
【0076】
ここで図16を参照すると、マウスは、G−CSF(1マイクログラム/マウス)またはG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス)を4日間、1日2回の(bid)SC注射で毎日与えられた。CFU−GMの動員を記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。併用して処置されたマウスは、G−CSFだけで処置された動物よりもCFU−GM/単位においてより大きな倍数増加を実証した。
【0077】
上記のレジメンにより動員されたマウスの末梢血に由来する低密度の単核細胞を、FACS分析によりHSPCに関して分析した。SKLおよびSLAM−SKLの検出のために、細胞を、Sca−1−PE−Cy7、c−kit−APC、CD150−PECy5、CD48−FITC、Lineage Cocktail−Biotinを用いて染色し、ストレプトアビジン−APC−Cy7を用いて二次染色した。ここで図17を参照すると、分析は、BD−LSRIIにおいて実施された。G−CSFまたはG−CSFおよびインドメタシンの併用により処置されたマウスの末梢血において、表現型的に規定されたHSPCのフローサイトメトリ分析である。それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群。
【0078】
[実施例17.インドメタシン+AMD3100による併用動員がHSPCを動員する。]
マウスに、ビヒクルまたはインドメタシン(50マイクログラム/マウス)を、4日間毎日、1日2回(bid)SC注射した。5日目に、マウスに、ビヒクルまたはAMD3100(5mg/kg)のどちらかを与えた。1時間後、マウスを犠牲にし、CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図18を参照すると、ビヒクルまたはインドメタシン処置単独によるCFU−GMの動員である(左パネル)。AMD3100またはインドメタシン処置+AMD3100の単回投与によるCFU−GMの動員のグラフである(右パネル)。データは、それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0079】
[実施例18.インドメタシンを、様々な動員レジメンと併用して用いた動員効率の比較]
マウスを、ビヒクル、インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回SC、4日間)、AMD3100(5mg/kg、5日目)、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回SC、4日間)、AMD3100+GROβ(それぞれ、5ミリグラム/kgおよび20ミリグラム/kg、5日目)、AMD3100+インドメタシン(インドメタシン50マイクログラム/マウス、1日2回4日間;AMD3100 5ミリグラム/kg 5日目)またはG−CSF+インドメタシン(それぞれ、1マイクログラムおよび50マイクログラム、1日2回SC、4日間)により処置した。CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図19を参照すると、上に要約した様々な処置レジメンに関してプロットしたCFU−GM/末梢血mLである。
【0080】
マウスを、ビヒクル、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回 SC、4日間)、G−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回 SC、4日間)またはG−CSF+メロキシカム(0.3mg/kg、1日2回 SC、4日間)により処置した。CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、 Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図20を参照すると、インドメタシン+G−CSFおよび同様に作用するNSAIDのメロキシカム+G−CSFにより誘導される動員の比較を例示する棒グラフである。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0081】
[実施例19.NSAIDを時間差投与(staggered dosing)することにより、HSPCにおけるCXCR4の発現の回復が可能になる。]
CD45.1マウスを、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)またはG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)を用いて動員し、末梢血単核細胞(PBMC)を5日目に採取した。PBMCを、様々な比率でCD45.2骨髄と混合し、致死的に放射線を浴びた(1100cGy、分割線量)CD45.2マウスに移植した。ここで図21を参照すると、移植後12週目の競合的再構築単位を示す(左パネル)。データは、それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群/実験の2つの実験から、平均±SEMとして表す。G−CSF単独と比較して、インドメタシンとG−CSFとの同時投与により動員されたPBMCの生着に改善がなかったので、ホーミングの欠損は、CXCR4受容体の発現の減少の結果として起こると思われ、これは、インドメタシン処置とG−CSF処置とに時間差を与えることによって緩和できるという仮説を立てた。CD45.2マウスを、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)、時間差無しのG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)、1日の時間差のG−CSF+インドメタシン(インドメタシンを1日目に開始し4日間与え、G−CSFをインドメタシン処置の2日目から開始して4日間与え、PBMSの採取前に、G−CSFを与えるが、インドメタシンは与えない日を1日作る)または2日の時間差のG−CSF+インドメタシン(インドメタシンを1日目に開始し4日間与え、G−CSFをインドメタシン処置の3日目から開始して4日間与え、PBMSの採取前に、G−CSFを与えるが、インドメタシンは与えない日を2日作る)により動員した。ここで図21を参照すると(右パネル)、SKL細胞におけるCXCR4の発現を示す。データは、それぞれ個別にアッセイされた、N=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0082】
[実施例20.G−CSF+NSAID処置マウス由来の動員PBSCは、G−CSF単独により動員されたPBSCと比較して、有意に強化された長期幹細胞機能を示す。]
CD45.1マウスを、G−CSFまたはG−CSF+インドメタシン(1日ずらして)を用いて動員し、PBMCを、CD45.2競合骨髄細胞と共に致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。ここで図22を参照すると、移植後12週目における、複数ドナーのキメラ現象:競合相手の比(左パネル)および競合的再構築単位(右パネル)を示す。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0083】
[実施例21.G−CSF+NSAIDにより動員されたマウス由来のPBSCは、致死的に放射線を浴びたマウスに移植した場合、G−CSF単独により動員されたPBSCと比較して、末梢血好中球のカウントがより早く復元される。]
マウスを、G−CSFまたはG−CSF+メロキシカム(1日ずらして)を用いて動員し、2×106のPBMCを、致死的に放射線を浴びたレシピエントに移植した。血中好中球を、Hemavet950FS(Drew Scientific)により、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えた。血中血小板を、Hemavet950FS(Drew Scientific)により、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えた。ここで図23を参照すると、末梢血(PB)中の好中球は、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えられた。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=10マウス/群の平均±SEMとして表す。ここで図24を参照すると、末梢血(PB)中の血小板は(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えられた。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=10マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0084】
[実施例22.G−CSFおよびメロキシカムの、ヒヒにおける細胞動員に関する効果の決定]
ここで図25を参照すると、ヒヒの第1群を、以下の10ug/体重kgのG−CSFの投与レジメン処置を用いて動員し、次いで2週間の洗い流し期間後に、動物を、10ug/kgのG−CSF+0.1mg/kgのメロキシカムを用いて処置した。ヒヒの第2群を、以下の10ug/kgのG−CSF+0.1mg/kgのメロキシカムのレジメンを用いて動員し、2週間の洗い流し期間後、10ug/kgのG−CSFを用いる期間であった。ここで図26を参照すると、PB中のCD34+細胞がFACS分析により決定され、先に記載のようにCFU−GM/血液mlを決定した。G−CSFとメロキシカムとの同時投与は、CD34+細胞の動員を増加させ(左パネル)、取り出した血液単位当たりのCFU−GMを測定した。
【0085】
[実施例23.マウスにおけるPBSC動員の最適な強化は、COX1およびCOX2の酵素両方の阻害を必要とする。]
マウスを、G−CSF用いて動員し、PB中のCFU−GMを、G−CSFおよび様々なNSAIDS(アスピリン[COX−1およびCOX−2];リコフェロン[COX−2および5−LOX];SC−560[COX1];サリチル酸バレリル[COX−1];バルデコキシブ[COX−2];NS−398[COX−2])との併用による動員レジメンと比較した。ここで図27を参照すると、これら試験の結果が要約されており、これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=4マウス/群の平均±SEMとして表される。COX1および2の両方を阻害することが公知である化合物は、2種のアイソザイムの1種だけに対して高度に選択性であると思われる化合物より、コロニー形成細胞の動員においてより優れていた。2種の一般的に使用されるCOX阻害剤の効率を試験するために、マウスを、G−CSFまたはG−CSFと、アスピリンまたはイブプロフェンとの併用により動員した(PO、1日2回、4日間)。CFU−GMを先に記載のように決定した。ここで図28を参照すると、G−CSF+アスピリンおよびG−CSF+イブプロフェンによる、CFU−GMの末梢血への動員の用量反応分析は、G−CSFだけで処置したマウスの対照群;G−CSF+10、20または40ミリグラム/kgのアスピリンを用いて処置したマウス;およびG−CSF+10、20または40ミリグラム/kgのイブプロフェンを用いて処置したマウスに関して棒グラフの形態で提示される。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=4マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0086】
[実施例24.マウスにおけるCFUに対するメロキシカムの用量依存性効果の測定]
マウスを、G−CSFおよび以下のメロキシカム用量、メロキシカムに対して0.0(対照)、0.02、0.2、0.5、1.5および3ミリグラム/体重kgを用いて動員し(1日2回、SC、4日間)、CFU−GMを先に記載のように決定した。ここで図29を参照するとHSPCに対するメロキシカムの用量反応は、動物の末梢血、または動物の骨髄において測定された(図30)。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=3マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0087】
図面および前述の説明において、新規な技術を例示し、詳細に説明したが、それらは例示として考えるべきであり、特徴を限定するものではなく、好ましい実施形態が示され説明されただけで、新規の技術の精神の範囲内で思いつくすべての変更および改良は、保護されることが望ましいと理解されるべきである。同様に、新規の技術を、特定の実施例、理論的議論、根拠および図解を使用して例示したが、これらの例示および添付の考察は、決して技術を限定するように解釈されない。本出願において参照したすべての特許、特許出願およびテキスト、科学論文、刊行物に対する参考文献などは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2008年11月6日提出の米国仮特許出願第61/112,018号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する記述
本発明の開発の一部は、助成金番号HL069669、HL079654およびDK07519の下にNIHから政府の援助を受けてなされたものである。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の分野
本明細書に開示の態様および実施形態は、造血幹細胞および前駆細胞の生着を強化するための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
造血幹細胞および前駆細胞(hematopoietic stem and progenitor cell, HSPC)の移植は特定の悪性および非悪性の血液疾患および代謝障害の治療のための確立された療法である。移植用HSPCの供給源は、骨髄、動員された末梢血および臍帯血(UCB)を含む(GoldmanおよびHorowitz、2002年;FruehaufおよびSeggawiss、2003年:Broxmeyerら、2006年)。医師は、骨髄、動員された末梢血幹細胞および臍帯血の移植を日常的に実施している。これらの手順は、健康で正常なドナーから、または所与の病態を発症する前もしくは緩解にある間の患者から採取された十分な数の造血幹および前駆細胞を必要とする。採取した材料は、後に、造血系およびおそらくその疾患または奇形の組織および細胞が根絶された患者に投与される。移植後、移植された幹細胞は、適切な骨髄微小環境ニッチへ移行または「ホーミング」し、このようなニッチ内へ定着し、新しい幹細胞を増殖および産生し、このプロセスは自己再生と呼ばれる(Porechaら、2006年;Broxmeyer、2006年;Hallら、2006年)。これらの細胞は、系統が制限された前駆細胞および成熟細胞に分化もし、そうして、レシピエントの健康にとって必要な造血系を形成する血液を復元する。前駆細胞は、普通、移植された材料の中に存在し、成熟細胞を産生するためにこれらの生着を必要とすると思われる。しかし、前駆細胞は幹細胞ではなく、自己再生できないので、それらは限られた期間だけしか移植療法に参加できない。
【0005】
移植手順は移植された材料にストレスをかけるので、移植の成功には手順の間に死亡するまたは損傷する細胞を計上した十分な細胞が移植されることを必要とする。このことは、臍帯血の移植体は非常に限られた数の幹細胞しか含まないので、臍帯血移植体の移植に大きな問題を提示する。この理由から、普通は臍帯血移植体を使用して成人移植を成功させることはできない。同様に、患者および正常なドナーの10〜25%は、移植手順における使用のための十分な細胞を動員することができない。患者集団の一部において、特にいくつかの化学療法薬を用いて処置された患者集団において、動員の失敗は患者の50%以上において見られる。一般に、移植できる細胞が多いほど、移植が成功する可能性は大きくなり、例えば、最新の最も優れた実務では、末梢血幹細胞移植手順が、レシピエント患者の体重1キログラムあたり最少でもおよそ200万のCD34+細胞の投与を通常必要とし、獲得でき、その後移植できるCD34+細胞が多いほど、患者の転帰はよくなると推奨している(Pulsipher、2009年)。
【0006】
不十分な幹細胞数、適切な骨髄ニッチへの遊走/ホーミングできないこと、または造血幹細胞および前駆細胞の生着効率および自己再生が弱いことにより、再構築(repopulation)の多段階プロセスにより測定した移植結果に悪影響を与える可能性がある。単離された移植体内のヒト造血幹細胞および前駆細胞の数をex vivo設定で試み増加させようとする多くの取組みがなされてきたが、成功は限定的である。HSPCの移植効率を改善する戦略が、医療専門家が直面する挑戦を克服するために必要である。本明細書に開示する、本発明のいくつかの態様および実施形態は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、造血幹細胞および前駆細胞の採取および/または生着の強化を対象とし、これらの態様のいくつかは、限定するものではないが、造血幹細胞および前駆細胞療法の成功率を増加させるための、ex vivoの生存、自己再生および適切な骨髄ニッチへのホーミングを含む。
【0008】
本開示のいくつかの態様は、ドナーから採取した、長期再構築能力を有する造血幹細胞および前駆細胞の数の増加を対象とする方法を含む。これらの方法のいくつかは、プロスタグランジン、例えばプロスタグランジンEの生合成を阻害する化合物またはプロスタグランジン応答に関与する少なくとも1種のプロスタグランジン受容体と拮抗する化合物を特定するステップ、ならびにドナーの末梢血または骨髄から造血幹細胞および前駆細胞を採取する前に、医薬有効量のこの化合物(複数可)をドナーに提供するステップを含む。一実施形態において、プロスタグランジンE生合成阻害剤および/またはプロスタグランジンEの受容体アンタゴニストの適用は、1種または複数種の、臨床的に承認された造血幹細胞および前駆細胞の動員剤、例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)と組み合わせ、造血移植体移植のためのアフェレーシスにより回収され得る造血幹細胞および前駆細胞の数を増加させる。一実施形態において、この化合物は、例えば、インドメタシン(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸)または医薬として許容可能なその塩を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤から選択される。さらに他の実施形態において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、エトリコキシブ、バルデコキシブ、ナプロキセン、ジクロフェナク、リコフェロン、エトドラク、ケトロラクまたは医薬として許容可能なそれらの塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤はCOX−1およびCOX−2の両方に対して作用し、多くの場合COX−2を好む。いくつかの実施形態において、使用可能なさらに別の化合物はメロキシカムである。
【0009】
本開示の他の態様は、レシピエントにおいて、採取した造血幹細胞および/または前駆細胞の移植体の長期再構築能力を強化する方法を含む。これは、レシピエントが造血系に障害を有する状況において特に有用であり得る。この方法は、a)プロスタグランジンE2の生合成を阻害する化合物および/またはプロスタグランジンE2受容体のアンタゴニストの有効量を用いてドナーを処置し、ドナーから移植体を採取するステップ、b)移植体と、有効量のプロスタグランジンE2または1種もしくは複数種のその誘導体とを、ex vivoにおいて接触させるステップ、およびc)処置された移植体をレシピエントに適用するステップを含む。一実施形態において、この方法は、有効量のプロスタグランジンE2もしくはその誘導体の1種またはPGE2活性を有する任意の分子を、移植体材料のそれらの適切な治療的ニッチへのホーミングを強化するために、移植レシピエントに対して供給するステップをさらに含む。
【0010】
本開示の他の態様は、幹細胞においてウィルス導入(viral transduction)効率を強化する方法を含む。これらの方法のいくつかは、形質導入(transduction)のための少なくとも1種の対象遺伝子を含有するウィルスベクターを提供するステップ、有効量のプロスタグランジンE2またはその誘導体によってex vivoにおいて処置された少なくとも1種の幹細胞を提供するステップ、およびウィルスベクターを、PGE2またはその誘導体によって処置された幹細胞にトランスフェクションするステップを含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態は、造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源を特定するステップ、PGE2の生合成および/または活性を減少させる化合物を提供するステップ、ならびに造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源と、該細胞のPGE2の生合成および/または活性を減少させる有効量の前記化合物とを接触させるステップを含む、造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法を含む。いくつかの実施形態において、PGE2活性を減少させる化合物は、非ステロイド系抗炎症性化合物であり、この非ステロイド系抗炎症性化合物はシクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2の両方に対して作用する。いくつかの実施形態において、この非ステロイド系抗炎症性化合物は、主にシクロオキシゲナーゼ−2に対して作用する。いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、エトドラク、ケトロラクおよびリコフェロンからなる群から選択される。さらに他の実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物はインドメタシンであり、さらに他の実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物はメロキシカムである。
【0012】
いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する少なくとも1種の追加の化合物との同時処置で、オーバーラップした期間患者に投与される。いくつかの実施形態において、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する化合物は、G−CSFおよびプレリキサフォルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、非ステロイド系抗炎症性化合物は、少なくとも3日間患者に投与される。
【0013】
さらに他の実施形態は、少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストである化合物を提供するステップ、ならびにドナーから造血幹細胞または前駆細胞を採取する前に、有効量の前記化合物を造血幹細胞または前駆細胞ドナーに投与するステップを含む、ドナー由来の造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストは、N−[[4’−[[3−ブチル−1,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル]メチル][1,1’−ビフェニル]−2−イル]スルホニル]−3−メチル−2−チオフェンカルボキシアミド(L−161,982)および4−(4,9−ジエトキシ−1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−ベンズ[f]イソインドール−2−イル)−N−(フェニルスルホニル)−ベンゼンアセトアミド(GW627368X)からなる群から選択される。
【0014】
さらに別の実施形態は、供給源においてPGE2の生合成および/または活性を減少させる少なくとも1種の化合物を用いて処置された、当該供給源由来の造血幹細胞および前駆細胞を含む細胞の群を採取するステップ、造血幹細胞のセットと、PGE2活性を有する化合物とをex vivoにおいて接触させるステップ、およびex vivoにおいてPGE2活性を増加させる前記化合物と接触させた、前記造血幹細胞および前駆細胞をレシピエント内に移植するステップを含む、レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞を生着させることを含む。いくつかの実施形態において、造血幹細胞は、骨髄ドナーから取り出される。一方、さらに他の実施形態において、造血幹細胞は血液ドナーから取り出された血液試料から採取される。そして、さらに他の実施形態において、細胞は、臍帯または胎盤から取り出される。
【0015】
いくつかの実施形態は、PGE2活性を有する化合物を提供するステップ、ならびにPGE2活性を有する化合物と、造血幹細胞および/または前駆細胞の集団をex vivoで接触させるステップを含む、造血幹細胞および/または前駆細胞の生着率を増加させる方法を含む。いくつかの実施形態において、PGE2活性を有する化合物は、任意のEシリーズのプロスタグランジンまたはEシリーズのプロスタグランジンの任意の誘導体、例えばPGE1、PGE2、PGE3または例えばジメチル16,16−ジメチルPGE2を含む、PGE1、PGE2、PGE3のジメチル誘導体などからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PGE2活性を有する化合物は、造血幹細胞および/または前駆細胞集団と少なくとも1時間接触する。いくつかの実施形態は、PGE2活性を有する化合物と接触させた造血幹細胞および/または前駆細胞を、実質的にPGE2活性を有さない緩衝液を用いて、少なくとも1回洗浄するステップを含む。一方、さらに他の実施形態は、PGE2活性を有する化合物と接触させた造血幹細胞および/または前駆細胞を、患者内に導入するステップをさらに含む。
【0016】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および有利性は、以下の限定されない図面、説明および特許請求の範囲を参照してさらによく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】造血幹細胞の生着を強化するPGE2の効果を試験するための実験の概要(上段パネル);CD45.1およびCD45.2細胞の集団を例示する代表的なフロープロット(下段パネル)を示す図である。
【図1B】陰性細胞のパーセント対移植細胞の数のグラフ(上段パネル);キメラ現象のパーセント対競合率の散布図(下段左パネル);ならびに様々な条件下で測定したCRU/100K細胞の棒グラフ(下段右パネル)である。
【図1C】dmPGE2を用いて処置した細胞、および処置しなかった細胞に関する20週にわたってプロットした、細胞の再構築頻度を要約する表である。
【図1D】多系統の再構築の代表的FACSプロット(骨髄、Bリンパ球およびTリンパ球、上段左パネル)。数/CD3プロット(上段右パネル)。一次レシピエントにおいて32週目に測定した合計WBC(中段左パネル)および二次レシピエントにおいて12週目に測定した合計WBC(中段右パネル)のパーセントの棒グラフ。一次レシピエントにおいて20週目に測定したキメラ現象のパーセントのプロットおよび二次レシピエントにおいて12週目に測定したキメラ現象のパーセントのプロット(下段パネル)である。
【図2A】Linnegゲーティングされた細胞のc−kit+およびSca−1+ゲーティングを示す、MACSマイクロビーズにより枯渇させたLinneg骨髄の代表的FACSゲーティング(左パネル)。様々なEP受容体に関してプロットしたカウント(中央パネル)および様々な受容体に関してプロットしたmRNA対周期数の変化(右パネル)を示す図である。
【図2B】SSC対CD34の代表的FACS(左パネル);様々なEP受容体に関してプロットしたカウント(中央パネル)、および様々な受容体に関するサイクル数に対してプロットしたmRNAの変化(右パネル)を示す図である。
【図3A】実験の概要(上段);様々な処置に関してプロットしたCFSE+の%(下のパネル)を示す図である。
【図3B】実験のプロトコルを例示する略図であり;ホーミング効率のパーセント(下左パネル)ならびに16,16−ジメチルプロスタグランジンE2(dmPGE2)および様々な対照に曝露後に測定した倍数変化(下右パネル)を示す図である。
【図3C】実験の概要(左パネル);様々な処置に関するCD45.2対CD45.1のFACSプロット(中央パネル);様々な処置に関してプロットしたホーミング効率のパーセント(右パネル)を示す図である。
【図4A】灰色で示したCXCR4受容体発現のアイソタイプ対照の代表的フロープロット(上段);CXCR4の発現に関して、マウスおよびヒトのHSPCをPGE2にパルス曝露した結果を示す、CXCR4の変化が様々な条件に関してプロットされた棒グラフである(下段)。
【図4B】様々な処置に関するホーミング効率のパーセントの棒グラフである。
【図5A】dmPGE2濃度の関数としてプロットしたアネキシンV+SKLのパーセントを示す図である。
【図5B】様々な条件に関してプロットした、サバイビンにおける倍数増加を示す図である。
【図5C】dmPGE2に対する様々な時間の曝露に関してプロットした、対照の活性に対して正規化した変化のパーセントを示す図である。
【図6A】ゲーティングされたSKL細胞のDNA含有量(7AAD染色)、S+G2M期におけるSKLのパーセントおよびdmPGE2により処置されたSKLの循環における倍数増加を示す代表的フロープロット(左のパネル);3つの実験によるデータを組み合わせて示すチャート(右のパネル)である。
【図6B】実験の概略図および様々な処置を施して測定した、S+G2/M期のホーミングしたSKL細胞における倍数増加をプロットした棒グラフである。漫画は、実験プロトコルを示し(左パネル)、棒グラフはdmPGE2を用いて、または用いずに測定した、S+G2/M期の倍数増加を示す。
【図7A】様々な処置後に測定したCFU−GM/血液mLをプロットした棒グラフである。
【図7B】様々な処置後に測定したCFU−GM/血液mLをプロットした棒グラフである。
【図8】PGE2が、SLAM SKLの循環をもたらすことを例示するデータを要約した表である。
【図9】対照およびdmPGE2処置細胞の遊走対SDF−1濃度のグラフである。
【図10】CD34+細胞の遊走パーセント対SDF−1濃度および/または商品名Mozobil(登録商標)で市販されているAMD3100(1,1’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン]オクト臭化水素酸二水和物)のグラフである。
【図11】SKL細胞のホーミング効率のパーセント対dmPGE2および/またはAMD3100を用いた処置および様々な対照の棒グラフである。
【図12】dmPGE2を用いて、または用いずに測定した、SKL循環における倍数変化を例示する、FACSプロット(左パネル);および棒グラフ(右パネル)である。
【図13】実験プロトコルの概略図(左パネル);dmPGE2を加えて、および加えずに測定した、S+G2/M期における増加を示す棒グラフである。
【図14】dmPGE2(四角)または対照(ビヒクル、ひし形)に初期曝露後、連続移植において継時的に測定したキメラ現象のパーセントを示すグラフである。
【図15】ビヒクル(明るい灰色)、インドメタシン(暗い灰色)またはバイカレイン(灰色)を用いて測定したCFU−GM/血液mlの棒グラフ(左パネル);G−CSF(明るい灰色);G−CSF+インドメタシン(灰色のハッチング)またはG−CSF+バイカレイン(灰色)を用いて収集したデータのグラフである。
【図16】G−CSFおよびG−CSF+インドメタシンを用いて測定した、G−CSFに対するCFU/血液mlの倍数増加の棒グラフである。
【図17】G−CSFまたはG−CSF+インドメタシンのどちらかを用いて処置した後に測定した、SKL細胞(左側)またはSLAM SKL細胞(右側)のどちらかの動員細胞の表現型分析の棒グラフである。
【図18】ビヒクルもしくはインドメタシン(左パネル);またはAMD3100もしくはAMD3100+インドメタシン(右パネル)のどちらかを用いてプロットしたCFU−GM/血液mlの棒グラフである。
【図19】ビヒクル、インドメタシン、AMD3100;G−CSF;AMD3100+GROベータ;AMD3100+インドメタシンまたはG−CSF+インドメタシンを用いて処置した後に測定し、プロットした、CFU−GM/末梢血mlの棒グラフである。
【図20】ビヒクル(白抜き)、G−CSF(黒)、G−CSF+メロキシカム((8E)−8−[ヒドロキシ−[(5−メチル−1,3−チアゾール−2−イル)アミノ]メチリデン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−アザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン)(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)を用いて処置した後のCFU−GM/血液mlの棒グラフである。
【図21】G−CSF(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)のどちらかを用いて測定した競合再構築単位の棒グラフ(左パネル);およびビヒクル、G−CSF;時間差無し(no Stagger)、1日の時間差、または2日の時間差で測定した、SKL細胞に関するMFICXCR4の棒グラフ(右パネル)である。
【図22】G−CSF(ひし形)またはG−CSF+インドメタシン(四角)のどちらかを用いて測定したキメラ現象のパーセント対PBMC:BM比のグラフ(左パネル);G−CSF(明るい灰色)またはG−CSF+インドメタシン(灰色)のどちらかを用いて測定した200万PBMCに対して調整したCRUを示すグラフである。
【図23】PMN対G−CSF(ひし形)またはG−CSF+Metacam(メロキシカム)(四角)によって動員されたPBMCの移植後の日数のグラフである。
【図24】PLT対G−CSF(ひし形)またはG−CSF+Metacam(メロキシカム)(四角)によって動員されたPBMCの移植後の日数のグラフである。
【図25】G−CSF単独またはG−CSF+メロキシカムのどちらかを用いてヒヒを処置することの効果を試験するために設計された実験を要約した漫画である。
【図26】G−CSFまたはG−CSF+メロキシカムのどちらかを用いて処置された4匹の異なるヒヒから採取したCD34+細胞(左側)またはCFU−GM(右側)/血液mLのプロットである。
【図27】COX−1またはCOX−2のどちらかに関するそれらの選択性の点で異なる、様々な化合物を使用して試験したCFU−GM/血液mLの棒グラフである。
【図28】G−CSFまたはG−CSF+様々な量のアスピリンもしくはイブプロフェンのどちらかを用いて処置後試験した、G−CSFに対するCFU−GM/血液mLの倍数変化の棒グラフである。
【図29】G−CSFまたは様々なレベルのメロキシカムのどちらかを用いて処置後の末梢血において測定したCFU−GM/血液mLの棒グラフである。
【図30】G−CSFまたは様々なレベルのメロキシカムのどちらかを用いて処置後の骨髄において測定したCFU−GM/大腿骨の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
新規な技術の原理の理解を促進する目的の為に、それらの好ましい実施形態をここに参照するものでありそれらを説明するために特化された言語を使用する。それにもかかわらず、新規な技術の範囲は、その結果限定されないものとして意図され、新規な技術の原理のこのような変更、改良およびさらなる応用は、新規な技術が関連する分野の技術者が通常思いつくものとして企図されると理解されるものである。
【0019】
プロスタグランジンE2(PGE2)は、潤沢な生理学的エイコサノイドであり、がん、炎症および他の多数の生理学系の公知のメディエーターである。造血におけるPGE2の役割は、様々な研究チームにより探求されているが、結果の調整は困難である。例えば、in vitroおよびin vivoの研究により、PGE2は骨髄造血を負に制御できること、すなわちPGE2は、BFU−EおよびCFU−GEMMのコロニー形成を促進し、CFU−SおよびCFU−GMの増殖を強化することが実証されている。他方、PGE2は、HSPCを刺激でき、造血に関して二相効果を有する。すなわち短期ex vivoにおいて、骨髄細胞のPGE2処置は、休止細胞、おそらく幹細胞またはより未発達な前駆細胞の集団から循環ヒトCFU−GMの産生を刺激することが示された。さらに近年、16,16−ジメチルPGE2に対するex vivoの曝露が、マウス骨髄細胞の再構築能力およびゼブラフィッシュの腎臓における髄の回復を増加させることが示された(Northら、2007年)。これらの研究は、造血の制御におけるPGE2に関係するが、PGE2と造血幹細胞のホーミングとを関連付けることはできない。むしろ、先の研究は、PGE2がHSPCの分化の調節に関与し、PGE2は細胞のホーミングに関して直接効果を有さないことを示す傾向がある。
【0020】
本明細書において実証されるように、PGE2は、HSPCの長期再構築に関して直接の安定化効果を有し、自己再生HSPCの生存、ホーミングおよび増殖を強化することによって、生着を容易にする。
【0021】
本明細書に開示した一態様は、造血幹細胞および前駆細胞の末梢血系における循環の頻度を増加するシクロオキシゲナーゼの活性の阻害である。限定されない一実施例において、造血ドナーが一用量の動員剤を投与される1日前および毎日、造血ドナーに経口経路または全身経路によってシクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、50マイクログラムのインドメタシンを毎日投与することは、末梢において幹細胞および前駆細胞の動員を強化する。シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばインドメタシンと、臨床的に承認された動員剤、例えばG−CSFとの同時使用は、前駆細胞の動員に対して相乗効果を生み出す。
【0022】
造血幹細胞および前駆細胞の動員は、ドナーに有効量のプロスタグランジンE受容体アンタゴニストを提供することによっても達成できる。
【0023】
開示したいくつかの態様は、PGE2に対するex vivoの曝露は移植後のHSPC頻度を強化し、PGE2処置HSPCに競合的有利性を提供することを示す。骨髄幹細胞をex vivoにおいてPGE2で処置することは、マウスにおいて生着する幹細胞の合計を強化し、幹細胞の生存を強化し、幹細胞のホーミング効率を増加させ、幹細胞の自己再生を増加させる。dmPGE2によって誘導されたHSPCの頻度の強化は、同じ動物内の直接一対一分析において対照およびdmPGE2処置細胞の生着を比較する、限界希釈競合的移植モデルを使用することによって実証された。例えば、未処置造血移植体または精製造血幹細胞集団(例えば、マウス中のSKL細胞またはヒト中のCD34+細胞)と、真のPGE2またはより安定な類似体の16,16−ジメチルPGE2(または任意のさらなる活性PGE類似体)とを、1mlの培養培地、例えば、IMDM中、100万から1000万細胞あたり0.001〜10マイクロモル濃度(Molar)のPGE2の濃度で、1〜6時間、氷上でインキュベートした。インキュベート後、細胞を滅菌生理食塩水で3回洗浄し、レシピエントに静脈内投与した。この方法により、Poisson統計および競合的再構築単位(CRU)の分析によるHSPC頻度の計算に基づき、PGE2をパルスしたHSPCの約4倍の競合的有利性を実証した。頻度分析により、対照細胞に対して1/4の数のPGE2処置細胞を使用して同等の再構成が実証されている。加えて、対照細胞またはPGE2処置細胞のどちらかを使用する、二次移植レシピエントにおいて、全造血再構成が観察され、HSPC自己再生についてPGE2の悪影響はないことが示された。実際、LTRC活性の増加傾向が見られ、段階移植の前に細胞または動物にさらなる処置は実施していないので、一次移植において観察された、HSPCに関する短期PGE2曝露の強化効果が長続きすることが示された。PGE2処置細胞の生着の強化は、28週間にわたって安定であった。移植後90日の、二次移植動物における分析により、完全な多系統の再構成が実証され、より高いHSPC頻度が続き、長期再構築HSPCに関する短期PGE2処置の安定した効果が示された。
【0024】
生着の強化は、HSPCの頻度、ホーミング、生存および/または増殖の変化によりもたらされ得る。PGE2は、HSPCのホーミングに影響を与えないことが、Northらによって示唆されたが、彼らの研究は、HSPCを明確に評価していなかった。本明細書において実証されたように、予想外に、PGE2により誘導されたHSPC頻度の強化は、20週間を超えて安定であり、二次移植において維持された。競合的移植モデルにおける直接比較は、HSPCをPGE2に対して短期曝露することにより、約4倍の競合的有利性がもたらされることを示した。合計移植細胞は、対照とPGE2処置細胞との間にホーミング効率の差はなかったが、PGE2処置され、分類されたSKL細胞のホーミング効率の強化が観察され、PGE2が、HSPCのホーミングに直接効果を有することが強く示唆された。
【0025】
これらの結果は、先行する研究により提唱された短期だけの効果より優れた、HSPCまたはHSPCの長期再構築能に対するPGE2の効果を示唆する。
【0026】
説明の目的で提示される、限定されない1つの可能性は、HSPCの機能に対するPGE2の効果がアルファケモカイン受容体のCXCR4ケモカイン受容体の上方制御を介して仲介されると思われ、HSPCのホーミングおよび自己再生ならびにHSPCの生存および増殖を制御する、アポトーシス阻害剤タンパク質である、サバイビンに関与することである。
【0027】
フローサイトメトリおよびQRT−PCRは、Sca−1+、c−kit+、Lineageneg(SKL)マウス骨髄細胞および受容体サブタイプの発現において明白な差のないCD34+ヒト臍帯血細胞(UCB)において、4種のPGE2受容体(EP1〜EP4)すべての発現を示す。HSPC機能に関するいくつかの機能特性を分析した場合、SKL(26.8%)およびCD34+UCB(17.3%)の両方におけるCXCR4の発現の有意な増加が、PGE2曝露後に見られ、曝露後6時間においてCXCR4 mRNAの有意な上方制御が見られた。CXCR4の増加は、PGE2処置移植体のin vivoの骨髄ホーミング効率の約2倍の増加と完全に一致し、操作していない骨髄(p<0.001、3実験、n=6マウス/群/実験、個別にアッセイ)および同じ動物中の1対1競合で精製SKL細胞(p<0.001、2実験、n=5マウス/群/実験、個別にアッセイ)において観察され、HSPCに関するPGE2の直接効果を示唆した。ホーミング効率の増加は、選択的CXCR4アンタゴニストのAMD3100を用いて処置することによって有意に減少した。
【0028】
PGE2処置は、SKL細胞のCXCR4 mRNAおよび表面発現を増加させた。加えて、CXCR4アンタゴニストのAMD3100は、ホーミングに対するPGE2の効果の強化を有意に減少させ、CXCR4発現の強化および骨髄SDF−1に対する化学誘引は、ホーミングの強化に大いに関与するが、接着分子の発現または機能に対するさらなる効果は排除され得ないことを示唆している。
【0029】
本明細書に開示した一態様は、レシピエントのPGE2処置により、レシピエントに移植された幹細胞の生存がin vivoで強化されることである。PGE2または活性類似体のレシピエントに対する、移植時の非経口投与および幹細胞の強化のための毎日の投与を続けることは、移植されたHSPCの生存を増加させ得る。例えば、PGE2またはその活性類似体は、0.0001〜10マイクロモル濃度で、造血移植体の供与直前およびその後毎日患者に投与できる。
【0030】
in vitroのPGE2処置は、細胞周期において活性なSKL細胞の集団において、処置後24時間以内に増加をもたらす。加えて、BrdU処置レシピエントマウスにおけるPGE2処置細胞の移植は、ビヒクルだけをパルスした移植細胞と比較して、細胞周期のS+G2/M期において約2倍を超えるドナーSKL細胞を示した。
【0031】
サバイビンは、HSPCが細胞周期に進入し、進行するために必要と考えられており、コンディショナルノックアウトマウスにおけるサバイビンの欠損は、HSPCの維持にサバイビンが必要であることを示す。本明細書に記載の研究は、PGE2処置SKL細胞においてmRNAおよびサバイビンのタンパク質レベルの上昇、同時に起こる、アポトーシスを仲介するプロテアーゼである、活性カスパーゼ−3の減少を見出した。生存アッセイは、PGE2が、in vitroでSKL細胞のアポトーシスを用量依存的に減少させること、同時に起こる、サバイビンのタンパク質発現の1.7倍の増加および活性カスパーゼ−3の減少(23〜59%の減少;曝露後24〜72時間)を示した。
【0032】
サバイビンにより仲介されたHSPCの生存の強化は、生着の強化に寄与する可能性が高い。PGE2に対するパルス曝露は、細胞周期においてHSPCの割合を約2倍増加し、BrdU+SKL細胞のHSPC頻度、CRUおよびホーミングを増加し、一次および二次移植においてHSPC頻度の強化を維持する。これらの結果の限定されない1つの説明は、PGE2のパルス曝露が、HSPCの自己再生の単一ラウンドを開始できることである。例えば、EP2およびEP4の受容体の活性化は、グリコーゲン合成キナーゼ−3(GSK−3)のリン酸化に関与し、β−カテニンのシグナル伝達を増加させ(Hullら、2004年;Regan、2003年)、これはWnt経路の下流であり、HSPCの生存および自己再生に関係している(Flemingら、2008年;KhanおよびBendall、2006年)。PGE2によるシグナル伝達は、おそらくEP4を介するが、EP4が直接β−カテニンを増加させ得ることを排他的に限定するものではない。COX−2およびWnt経路との間の相乗的クロストークが示唆されている(Wangら、2004年)。
【0033】
サバイビンはさらに、p21WAF1/CDKN1を介してHSPCの細胞循環を促進し(Fukudaら、2004年)、HSPC機能に関与し(Chengら、2000年)、カスパーゼ−3活性をブロックする(Liら、1998年;Tammら、1998年)ことが公知である。近年、p21は、HSPCの自己再生に関係する(Janzenら、2008年)。本明細書に報告した研究から引き出された1つの発見は、PGE2がサバイビンを上方制御し、カスパーゼ−3を減少させることであり、サバイビン経路が、自己再生の増加に関するPGE2の効果に関係し得ることを示唆している。サバイビン(Pengら、2006年)およびCXCR4(Stallerら、2003年;Zagzagら、2005年)の転写が、転写因子の低酸素誘導因子−1アルファ(HIF−1アルファ)により上方制御され、低酸素誘導因子−1アルファは、PGE2によって安定化され得(Liuら、2002年;Piccoliら、2007年)、おそらくいくつかのPGE2応答経路と、HSPCの細胞生存、ホーミングおよび増殖/自己再生がリンクしていることに留意するとさらに興味深い。
【0034】
これらの研究は、PGE2処置後に観察されるHSPC頻度の約4倍の増加が、約2倍またはそれを超えるHSPCのレシピエント骨髄へのホーミングおよびHSPCの自己再生の約2倍の増大によって生じることを示唆している。これらの結果は、それによってPGE2がHSPCの機能を強化する作用の新規な機序を規定する役に立つことができ、これらの結果は、造血移植、特に限定された細胞数が生着の乏しい見込みにつながる造血移植体を容易にするための予期せぬ治療的取組みを示唆する。
【0035】
本明細書に開示の一態様は、幹細胞遺伝子療法におけるウィルス導入効率を強化する方法である。幹細胞のex vivoのPGE2処置は、自己再生分裂およびこのような細胞の生存を増加し、これは、ウィルスベクターにより仲介される遺伝子組み込みの成功にとって重要な因子である。PGE2により促進された幹細胞の自己再生分裂/生存は、最新の幹細胞形質導入プロトコルに組み込むことができ、したがって、幹細胞遺伝子療法における遺伝子形質導入効率全体を増加する。
【0036】
本明細書において、HSPC生着を強化するためのいくつかのPGE2の使用方法、ドナー細胞の動員、HSPCの維持およびレシピエントの体内におけるHSPCのホーミングを含む多段階方法を報告する。いくつかの条件下で、これらの方法は、HSPC頻度において4倍の増加をもたらし、生着は、おそらく、例えば、HSPCのホーミングにおける約2倍の増加およびPGE2の直接影響下のHSPCの細胞周期活性における2倍の増加の累積効果に起因する。正確なシグナル伝達経路がさらに決定されるべきであるが、この効果の限定されない1つの説明は、生着の強化は、CXCR4およびサバイビンなどの因子の上方制御によることである。
【0037】
HSPCのホーミングならびに生存および/または増殖を改善するPGE2の能力は、特にHSPCの数が限定されている状況、例えば、UCBおよびいくつかの動員されたPB産物において、または幹細胞遺伝子療法におけるウィルス遺伝子形質導入を設定するのに臨床的に有意であり得る。本発明者らの限界希釈移植研究は、同等の生着結果を、PGE2処置されていない対照と比較して、PGE2処置細胞が1/4の数で達成し得ることを例示する。これらの結果は、HSPCの数が限定されている条件下でPGE2を使用することの有用性を実証する。4種のEP受容体サブタイプすべてが、HSPCにおいて発現されると思われるが、これらの受容体のどれ(または4種すべて)が生着機能に関係しているかは明らかでない。生着/回復の強化が、in vivoにおいてPGE2を投与することによって、またはin vivoで使用されるPGE2が、ex vivoでPGE2に曝露されたHSPCの生着をさらに容易にできる場合に得られることは、これらの結果と一致する。
【0038】
材料および方法
材料
マウス C57B1/6マウスは、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME、USA)から購入した。B6.SJL−PtrcAPep3B/BoyJ(BOYJ)およびF1 C57B1/6/BOYJハイブリッドを、研究所内で繁殖させた。すべての動物を、食物および酸性化水を連続提供されるマイクロアイソレーターケージにおいて飼育した。移植研究に使用するマウスは、放射時、および移植後30日の間、ドキシサイクリンの供給を受けた。The Animal Care and Use Committee of Indiana University School of Medicineは、すべての動物プロトコルを承認した。
【0039】
フローサイトメトリ すべての抗体は、特に明記していない限り、BD Biosciencesから購入した。マウスKLおよびSKL細胞の検出および選別のために、PE−Cy7と結合したストレプトアビジン(ビオチン化MACS系統抗体の染色用(Miltenyi Biotech、Auburn、CA))、c−kit−APC、Sca−1−PEまたはAPC−Cy7、CD45.1−PEおよびCD45.2−FITCを使用した。UCB CD34+細胞は、抗ヒト−CD34−APCを使用して検出した。多系列分析のために、APC−Cy7−Mac−1、PE−Cy7−B−220およびAPC−CD3を使用した。EP受容体は、抗EP1、EP2、EP3およびEP4ウサギIgG(Cayman Chemicals)を用いて検出し、FITC−ヤギ−抗−ウサギIgG(Southern Biotech、Birmingham、AL)を用いて二次染色した。CXCR4の発現は、ストレプトアビジン−PECy7、c−kit−APC、Sca−l−APC−Cy7およびCXCR4−PEを使用して分析した。アポトーシスは、FITC−アネキシン−Vを用いて測定した。サバイビンおよび活性カスパーゼ−3の検出のために、細胞を透過処理し、CytoFix/CytoPerm kit(BD)を使用して固定し、抗活性カスパーゼ−3−FITC Flow Kit(BD)またはサバイビン−PE(R&D Systems)を用いて染色した。
【0040】
細胞周期分析のために、細胞を、7AAD またはFITC−BrdU Flow Kit(BD)を用いて染色した。すべての分析はLSRIIにおいて実施し、選別は、FACSAriaソーターまたはFACSVantageソーター(BD)のどちらかにおいて実施した。Cell Quest ProおよびDiva software(BD)を、データの収集および分析に使用した。
【0041】
方法
限界希釈競合的および非競合的移植
WBM細胞(CD45.2)を、1マイクロモル濃度のdmPGE2(Cayman Chemical、Ann Arbor、MI)/1×106細胞または滅菌、非発熱性PBS中0.01%のETOHのどちらかを用いて、氷上において2時間処置した。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、2×105のコンジェニックCD45.1競合骨髄細胞と、0.075:1、0.25:1、1:1および2.5:1の割合で混合し、致死的に放射線(1100−cGy分割線量)を浴びたCD45.1マウスに、尾静脈注射により移植した(5マウス/希釈)。PB中のCD45.1およびCD45.2細胞を、フローサイトメトリによって、月1回決定した。1対1競合移植のために、CD45.1マウスおよびCD45.2マウス由来のWBMを、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置しCD45.1/CD45.2マウス由来の2×105の競合骨髄細胞と、0.075:1、0.25:1、1:1および2.5:1の割合で混合し、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに移植した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の一部(proportion)を、月1回決定した。HSPCの頻度を、L−CALCソフトウェア(Stem Cell Technologies、Vancouver BC、Canada)を使用して、Poisson統計によって定量化し、キメラ現象に対する寄与は<5%であり、陰性レシピエントと考えられる。競合的再構築単位(CRU)を、記載のように(Harrison、1980)計算した。二次移植のために、移植後20週に、すでに移植を受けた1:1比のF1ハイブリッドマウス由来の2×106のWBMを、致死的に放射線を浴びたF1ハイブリッドマウスに非競合的様式で注射し、PBのキメラ現象および三血球系の再構成を月1回評価した。
【0042】
in vivoのHSPCの骨髄へのホーミングの分析 CD45.2WBMを、CFSE(Molecular Probes、Eugene、OR)を用いて標識し、洗浄し、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて氷上で処置した。処置後、細胞を洗浄し、2×107の細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。16時間後、大腿骨および脛骨を洗い流し、マウス骨髄Lin+細胞の一部を、MACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して枯渇させ、ビオチン(系統)、c−kit(K)およびSca−1(S)に特異的な蛍光色素標識抗体を用いて染色し、CFSE+WBM(非系統枯渇)、KLおよびSKL細胞の合計数を決定した。コンジェニックホーミング研究のために、Linneg CD45.1細胞を、1マイクロモル濃度のdmPGE2、ビヒクルまたはPBSを用いて、氷上で処置した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、2×106の細胞をCD45.2マウスに移植した。16時間後、レシピエントの骨髄を採取し、系統を枯渇し、染色し、ドナーのCD45.1SKL細胞を決定した。選別されたSKL細胞を使用する競合的1対1ホーミングの研究では、CD45.2およびCD45.1マウス由来のLinneg細胞をFACS選別し、細胞を、dmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、3×104のCD45.1(ビヒクルまたはdmPGE2処置)+3×104のCD45.2(dmPGE2またはビヒクル処置)SKL細胞を、致死的に放射線を浴びたF1ハイブリッドマウスに移植した。ホーミング研究においてCXCR4の役割を評価するために、Linneg CD45.2細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2+10マイクロモル濃度のAMD3100(AnorMed Inc.、Vancouver、BC、Canada)を用いて氷上で処置し、2×106の処置細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.1マウスに注射した。移植後16時間で、ホーミングしたSKL細胞を分析した。
【0043】
EP受容体、CXCR4およびサバイビンの発現 CD45.2マウス由来の複製Linneg細胞試料を、SKLについて染色し、KLおよびSKL細胞における個々のEP受容体および表面受容体の発現を、FACSによって決定した。ヒトEP受容体のために、UCBを、Institutional Review Boardの承認によりWishard Hospital、Indianapolis、INから入手した。単核細胞を、Ficoll−Paque(商標)Plus(Amersham Biosciences)において単離し、CD34+細胞を、MACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を用いて正に選択した(FukudaおよびPelus、2001年)。複製細胞を、CD34に対して染色し、個々のEP受容体および表面発現を、FACSによって決定した。CXCR4、サバイビンおよび活性カスパーゼ−3を評価するために、Linneg細胞またはCD34+UCBを、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照を用いて、氷上で2時間処置し、洗浄し、次いでRPMI−1640+10%FBS中で、37℃において24時間培養した。細胞を、上記のように、SKL(マウス細胞)およびCXCR4、サバイビンおよび/または活性カスパーゼ−3に対して染色し、FACSによって分析した。
【0044】
細胞周期分析 in vitroの細胞周期分析のために、Linneg細胞を、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、Stem Cell Pro Media(Stem Cell Technologies)中で、rmSCF(50ng/ml)(R&D Systems、Minneapolis、MN)、rhFlt−3およびrhTPO(それぞれ100ng/ml)(Immunex、Seattle、WA)と一緒に培養した。20時間後、細胞を、SKLを用いて染色し、固定し、透過処理し、7AAD(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて染色した。S+G2/M期のSKL細胞の一部をFACSによりDNA含有量を測定することによって決定した。in vivoの細胞周期分析のために、CD45.2マウスに致死的に放射線を浴びせ、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルのどちらかを用いて2時間処置したCD45.1マウス由来の、5×106のLinneg細胞を移植した。移植時に、レシピエントマウスに、飲料水中1ミリグラム/mLのBrdU(Sigma Aldrich、St. Louis、MO)および1mg/マウスのBrdU I.Pを与えた。16時間後、レシピエントの骨髄を単離し、系統を枯渇させ、CD45.1、SKLおよびBrdUに対して染色した。BrdU+である、ホーミングした(CD45.1+)SKL細胞の一部を、個々のマウスにおいてFACSによって決定した。
【0045】
アポトーシスアッセイ Linneg細胞を、0.1ナノモル濃度から1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照を用いて、氷上で処置し、洗浄し、成長因子を含まずに、37℃においてRPMI−1640+2%FBS中でインキュベートし、アポトーシスを誘導した。24時間後、細胞を、SKLおよびアネキシンVに対して染色し、アネキシンV+SKL細胞の一部をFACSにより決定した。
【0046】
逆転写およびQRT−PCR トータルRNAを、完全RNA精製キット(Stratagene、La Jolla、CA)を使用して得た。一定量のRNAを、(FukudaおよびPelus、2001年)に記載のように、1ミリモル濃度のdNTPおよびRNase阻害剤を含む50マイクロリットルの体積中でランダムプライマー(Promega、Madison、WI)およびMMLV逆転写酵素(Promega)を用いて逆転写した。DNaseおよびRNase非含有水(Ambion、Austin、TX)を加え、10ナノグラムのRNA/マクロリットルと同等の最終濃度を得、5マイクロリットルをQRT−PCRのために使用した。SYBR Green QRTPCRのためのプライマーを設計し、75〜150bpのサイズの増幅産物を作製した。QRT−PCRを、Platinum SYBR Green qPCR supermix UDG with Rox(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、合計容量30マイクロリットルで、ABI−7000(Applied Biosystems、Carlsbad、CA)において、活性化ステップが50℃で2分間、変性が95℃で2分間および増幅が95℃で15秒、50℃で30秒、72℃で30秒を45サイクルで実施し、その後解離によって唯一の産物が選られたことを確認した。
【0047】
本発明のいくつかの態様の実践に使用できる非ステロイド系抗炎症性化合物は、限定するものではないが、商品名Celebrex(登録商標)の名前で販売されているセレコキシブ(4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド);商品名Vioxx(登録商標)の名前で販売されているロフェコキシブ(4−(4−メチルスルホニルフェニル)−3−フェニル−5H−フラン−2−オン);アスピリン(2−アセトキシ安息香酸);エトリコキシブ(5−クロロ−6’−メチル−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2,3’−ビピリジン);商品名Bextra(登録商標)の名前で販売されているバルデコキシブ(4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル)ベンゼンスルホンアミド);イブプロフェン((RS)−2−(4−イソブチルフェニル)プロパン酸);ナプロキセン((+)−(S)−2−(6−メトキシナフタレン−2−イル)プロパン酸);商品名Voltaren(登録商標)の名前で市販されているジクロフェナク(2−(2−(2,6−ジクロロフェニルアミノ)フェニル)酢酸);リコフェロン([6−(4−クロロフェニル)−2,2−ジメチル−7−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−5−イル]酢酸);インドメタシン(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸);商品名Metacamの名前で販売されているメロキシカム((8E)−8−[ヒドロキシ−[(5−メチル−1,3−チアゾール−2−イル)アミノ]メチリデン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−アザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン);エトドラク(2−(1,8−ジエチル−4,9−ジヒドロ−3H−ピラノ[3,4−b]インドール−1−イル)酢酸);商品名Toradolの名前で市販されているケトロラク((±)−5−ベンゾイル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−1−カルボン酸,2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)などの化合物を含む。
【0048】
少なくとも1種のPGE2受容体に対してアンタゴニストとして作用する化合物は、限定するものではないが、Cayman Chemical Company (Ann Arbor、MI、U.S.A.)または化学品供給会社によって維持/販売される他のリストから利用可能な化合物を含む。
【0049】
統計解析 プールしたすべての値は、平均±SEMで表す。統計的有意差は、必要に応じて、Microsoft Excel(Microsoft Corp、Seattle、WA)の対応のある、または対応のない両側t検定関数を使用して決定した。本明細書において使用する場合、特にいくつかの図において、「dmPGE2」と「dmPGE」という用語は交換可能に使用される。
【実施例】
【0050】
[実施例1.PGE2は、長期再構築HSPCの頻度および生着を増加させる。]
CD45.1/CD45.2ハイブリッドマウスに移植されたCD45.2およびCD45.1のコンジェニック移植体を利用する限界希釈競合移植モデルの使用により、HSPCをPGE2に短期曝露することが、HSPCおよび競合的再構築単位(CRU)の頻度の長期強化を生み出すことが実証された。ここで図1Aを参照すると、CD45.1またはCD45.2マウス由来の骨髄は、それぞれ、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置された。CD45.1/CD45.2ハイブリッド骨髄細胞を競合相手として使用した。限界希釈を、致死的に放射線(1100cGys、分割線量)を浴びたCD45.1/CD45.2ハイブリッドマウスに移植し、PB中のキメラ現象を20週間にわたって分析した。個々の細胞集団を検出する代表的フロープロットを示す(下段パネル)。
【0051】
ここで図1Bを参照すると、12週目にPoisson統計によって決定された、ビヒクル(赤色)またはdmPGE2(青色)をパルスした細胞に関する頻度分析(上段)は、;P0=85,560(ビヒクル)およびP0=23,911(dmPGE2処置)。PBおよびCRUの分析におけるキメラ現象を、12週において示す(平均±SEM)。データは2つのプールされた実験を表す、n=5マウス/群/実験であり、それぞれ個別にアッセイした。
【0052】
ここで図1Cを参照すると、ビヒクルまたは20週にわたってPGE2処置した骨髄のレシピエントにおけるHSPCの頻度分析である。倍数変化は、ビヒクルと比較したdmPGE2−パルスした細胞の生着頻度において増加を示す。
【0053】
ここで図1Dを参照すると、多系統再構成(骨髄、BおよびTリンパ球)の代表的FACSプロットである。ここで図1Dを参照すると、中央のパネルは、一次移植のための多系統分析(32週、左パネル)および一次移植されたマウスから20週目に移植を受けた4マウスを、12週間後に分析したコホート(右パネル)である。ビヒクルに対するdmPGE2処置細胞のキメラ現象の増加は、一次移植に関して20週目(二次移植の時)および二次移植の12週目に示される(下パネル)。20週目の一次移植に関するデータは、2つのプールされた実験からであり、n=5マウス/群/実験、それぞれ個別にアッセイした。12週目の二次移植に関するデータは、n=4マウス/群、それぞれ個別にアッセイした。
【0054】
さらに、図1Dを参照すると、段階移植により、移植された造血移植体中の自己再生およびHSPCの拡大を評価している。ex vivoでdmPGE2およびビヒクルへの曝露された長期再構築細胞(LTRC)の拡大を調査するために、骨髄を、一次移植された動物から移植後20週目に採取し、二次レシピエントに移植した。二次移植後12週目のPBの分析により、移植を受けたすべてのマウスに由来する細胞により多系統の再構成が示され、一次移植されたLTRCの自己再生を示した。一次移植ドナーにおいて見られる、dmPGE2への曝露からもたらされるキメラ現象の増加は、任意の追加の処置をしなくても二次移植においても見られた。さらに、dmPGE2を用いてすでに処置されたHSPCの競合力が増加する傾向が二次移植において観察され、骨髄細胞系列の再構成に対してわずかにバイアスがあった。
【0055】
このモデルは、生着および同じ動物内における対照とdmPGE2処置群とに由来するHSPCの競合力(図1A),ならびに宿主細胞の内因性再構成の定量的比較を可能にする。移植12週後に、末梢血(PB)の分析により、ビヒクル処置細胞と比較して、dmPGE2処置細胞にキメラ現象の増加が示され、HSPC頻度および競合的再構成単位(CRU)が約4倍増加し、長期再構成能力の測定が認識された(図1B)。移植後に続く20週間を通して、HSPCの頻度は約4倍の増加を維持し、dmPGE2のパルス曝露の効果は安定であった(図1C)。移植後32週目に、PB中のBリンパ系列およびTリンパ系列ならびに骨髄系列に関して再構成が見られ、未処置の競合細胞、dmPGE2処置細胞またはビヒクル処置細胞の間に認識可能な差はなかった(図1D)。
【0056】
[実施例2.マウスおよびヒトの造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)は、PGE2受容体を発現する。]
伝えられるところでは、PGE2は、4種の特異的な、高度に保存されたGタンパク質共役受容体;EP1〜EP4と相互作用する(SugimotoおよびNarumiya、2007年;Tsuboiら、2002年)。EP受容体のレパートリーは、多重の、時としてPGE2に起因する逆の応答の原因となる(Breyerら、2001年)。HSPCにおけるPGE2受容体サブタイプの発現は今まで知られていない。ここで図2Aを参照すると、造血前駆細胞(HPC)に富んだc−kit+Linneg(KL)細胞およびHSPCに富んだSca−1+c−kit+Linneg(SKL)細胞におけるEP受容体の分析は、4種すべてのEP受容体(EP3+、EP2、EP1およびEP4)が発現されたことを示した。さらにここで図2A(右パネル)を参照すると、QRT−PCRによりFACSにより選別されたKLおよびSKL細胞中に、4種すべてのEP受容体に関するmRNAが検出されていた。ここで図2A(中央パネル)を参照すると、EP3に関する解離曲線はいくつかのピークを示し、EP3の公知の多重スプライス変異体と一致する(Nambaら、1993年)。KLまたはSKL細胞に関して、任意のEP受容体サブタイプの表面発現またはmRNAレベルの間に、有意な定量的差異は見られなかった。ここで図2Bを参照すると、ヒトCD34+UCB細胞の表面において、マウス細胞の類似体(右パネル)は4種すべての受容体サブタイプを発現し、QRT−PCR分析により、4種すべてのEP受容体のmRNAが検出されていた(図2B)。
【0057】
[実施例3.短期PGE2曝露はHSPCのホーミング効率を増加させる。]
PGE2に対するパルス曝露において観察されるHSPCの生着の強化は、HSPCの数および/または細胞の促進をもたらす、または宿主の骨髄におけるHSPCのホーミングもしくは増殖をもたらす細胞周期状態に起因すると思われる。その原因と無関係に、骨髄ニッチはHSPCにとって自己再生および増殖に必要であり、これらのニッチへのHSPCのホーミングだけが長期再構築を提供し得る可能性が非常に高い。さらにここで図3Aを参照すると、HSPCのホーミングを評価するために、CFSE標識された全骨髄(WBM)CD45.2細胞は、dmPGE2またはビヒクルを氷上で2時間パルスされ、洗浄され、致死的に放射線を浴びたCD45.2宿主にIV注射された。16時間後、骨髄にホーミングするCFSE+細胞の合計およびKLおよびSKL細胞集団内のホーミング事象の数を定量した。総WBM細胞を評価した場合、骨髄へのCFSE+細胞のホーミングのパーセントにおいて、dmPGE2処置細胞およびビヒクル処置細胞の間に差異は観察されなかったが、対照よりも有意に多くのSKL細胞が骨髄にホーミングした。ここで図3Bを参照すると、ビヒクル処置細胞または未操作細胞と比較して、コンジェニックモデルにおいて、dmPGE2処置細胞に関してSKL細胞の有意により大きなパーセントが観察された。未処置細胞およびビヒクル−処置細胞の間にホーミング効率の差は見られなかった。
【0058】
ここで図3Cを参照すると、SKL細胞のホーミングに対するdmPGE2の強化効果が直接であったか間接であったかを決定するために、1対1移植モデルにおける豊富なHSPCのホーミングが他の細胞と比較された。CD45.2およびCD45.1マウスの両方から高度に精製されたSKL細胞を、FACS選別によって単離し、dmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、3×104のビヒクル処置CD45.1細胞+3×104のdmPGEa処置CD45.2細胞を、CD45.1/CD45.2マウスに移植した。さらなるコホートに、コンジェニック系を同時に移植し、処置群を交換し、系統のホーミングにおける任意のバイアスを試験した。WBMを使用した研究と同様に、精製SKL細胞のdmPGE2パルス曝露は、それらのホーミング効率を2倍増加させ、HSPCに対するPGE2の直接効果を強く示唆する。SKL細胞は、均質なHSPC集団ではないが、SKL細胞は、LTRCに高度に富んでいる(Okadaら、1992年;SpangrudeおよびScollay、1990年)。
【0059】
[実施例4.PGE2はHSPC CXCR4を増加させ、CXCR4アンタゴニストAMD3100は、ホーミングの強化をブロックする。]
ここで図4Aを参照すると、ストロマ細胞由来因子−1アルファ(SDF−1a)/CXCR4軸は、HSPCの輸送およびホーミングと関係している。本研究は、dmPGE2処置HSPCのホーミングの改善は、SDF−1a/CXCR4のシグナル伝達の増加の結果であったかどうかを評価した。Linneg細胞のdmPGE2に対するパルス曝露は、KLおよびSKL細胞におけるCXCR4の発現を増加させ(図4A);同様に、dmPGE2のパルス曝露は、予想通りCD34+UCB細胞におけるCXCR4の発現を増加させた。QRT−PCRは、ビヒクルと比較してdmPGE2処置細胞においてCXCR4 mRNAレベルが上昇し、最大の上昇は6時間目に観察されたことを実証した(データ非掲載)。
【0060】
ここで図4Bを参照すると、CXCR4の上方制御が、PGE2処置後に観察されるホーミングの強化において役割を果たすかどうか決定するために、SDF−1へのin vitroの遊走およびin vivoのHSPCのホーミングを阻害する選択的CXCR4アンタゴニストAMD3100が使用された。PGE2のパルス曝露は、SKL細胞のホーミングを約2倍増加させ、ビヒクルまたはdmPGE2をパルスされた細胞をAMD3100と一緒にインキュベートすることによりSKL細胞のホーミングは減少し、dmPGE2パルス細胞のホーミング効率の改善は抑制された。
【0061】
[実施例5.サバイビンの増加と一致して、PGE2はHSPCのアポトーシスを減少させる。]
PGE2処置は、HSPCの頻度およびCRUを4倍増加させる(図1)が、ホーミングはわずか2倍強化され(図3)、他の事象が生着の強化に関与していることを示唆する。アポトーシスは、正常な造血または悪性の造血において重要な制御過程であり、PGE2は抗アポトーシスシグナル伝達に関係している。さらに、EP受容体の下流シグナル伝達分子であるcAMPの活性化は、CD34+細胞においてアポトーシスを阻害する。これらの結果に一致する1つの仮説は、dmPGE2処置が、HSPCの生存および/または増殖に影響を与え、生着の強化に寄与するというものである。HSPCの生存に対するdmPGE2の効果を評価するために、Linneg細胞に、0.1ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクルをパルスし、成長因子を含まない低血清培養培地において培養した。dmPGE2に対するパルス曝露は、用量依存性様式でSKL細胞においてアポトーシスを低下させ(図5A)1マイクロモル濃度で約65%の阻害に達した。
【0062】
アポトーシスタンパク質の阻害剤であるサバイビンは、正常造血細胞および悪性造血細胞の両方において、アポトーシスおよび増殖の重要な制御因子である。ここで図5Bを参照すると、これらの結果が、PGE2がHSPCにおいてサバイビンに影響を与えたことを実証している。dmPGE2のパルス24時間後、細胞内サバイビンレベルは、対照と比較して、マウスのSKL細胞およびCD34+UCB細胞の両方において有意に高く(それぞれ1.7および2.4倍)、QRT−PCR分析により、対照と比較してサバイビンmRNAの上昇が示された。
【0063】
ここで図5Cを参照すると、サバイビンの増加と一致する、対照と比較した活性カスパーゼ−3の減少が、SKL細胞をdmPGE2に曝露後24、48および72時間において見られた。
【0064】
[実施例6.PGE2処置がHSPCの増殖を増加させる。]
サバイビンは、HSPCが細胞周期に進入し、進行することを制御する。さらに、HSPCの増殖および自己再生に関係するβ−カテニンは、EP受容体経路の下流に位置する。これらの細胞周期制御因子を調節するPGE2の能力は、HSPCの自己再生および増殖における増加が、dmPGE2をパルスされた細胞の生着の強化に寄与しうることを示唆している。この仮説を試験するために、in vitroでdmPGE2またはビヒクルをパルスされたSKL細胞の細胞周期状態を分析した。ここで図6Aを参照すると、dmPGE2に対するパルス曝露が、細胞循環の増加の指標である、SKL細胞中のDNA含有量を増加させた(左パネル、右上の象限)。3つの実験において、対照と比較してdmPGE2処置後に60%を超えるSKL細胞が細胞周期のS+G2/M期にあった(図6A、右パネル)。KLまたはLinneg細胞の細胞周期速度に関して有意な効果は見られず(非掲載)、dmPGE2が初期HSPCのサイクル状態を選択的に増加させることを示唆している。
【0065】
in vitroで観察されたHSPCの細胞周期の強化に対するdmPGE2の効果を確認するために、骨髄細胞にdmPGE2をパルスし、移植後BrdUを用いて処置したコンジェニックマウスに注射し、16時間後、ドナーのBrdU+SKL細胞の一部を決定した。ここで図6Bを参照すると、S+G2/M期にあるホーミングしたSKL細胞の一部において約2倍の増加が、移植前dmPGE2をパルスした細胞に関して観察され、HSPCのdmPGE2に対する短期曝露が、in vivoでHSPCが細胞周期に進入し、進行することを刺激することが確認された。
【0066】
[実施例7.COX1/COX2二重阻害剤のインドメタシンがHSPCを動員することによる、PGE2の内因性生合成の阻害]
PGE2は、CXCR4受容体の発現を増加させるので、骨髄において、SDF−1/CXCR4のシグナル伝達はHSPCの輸送および保有にとって重要である。これらの結果と一致する1つの仮説は、COX1/COX2二重阻害剤のインドメタシンによるPGE2の内因性生合成の阻害もまたHSPCを動員することである。ここで図7Aおよび7Bを参照すると、図7Aおよび7Bは、150μg/kgのインドメタシンまたは150ug/kgのバイカレインを単独で(図7A)またはG−CSFと一緒に(図7B)4日間、毎日SC投与することによる、CFU−GMの動員に関する効果を示す。ここで図7Aを参照すると、150μg/kgのインドメタシンをSCで1日1回4日間の投与することにより、動員される前駆細胞の数が4倍増加した。ここで図7Bを参照すると、インドメタシンとG−CSFとを同時投与することにより、末梢血幹細胞の動員において高度に相乗的な増加が起こった。リポキシゲナーゼの阻害剤であるバイカレインは、ベースラインまたはG−CSF誘導性CFU−GM動員に関して効果を有さず、観察された効果が、シクロオキシゲナーゼ経路の阻害に特異的であったことを示唆する。データは、それぞれ個別にアッセイしたN=3マウスに関する、動員されたCFU−GM/血液mlの平均±SEMを表す。
【0067】
[実施例8.マウスおよびヒトのHSPCをPGE2にパルス曝露することにより、CXCR4の発現が増加する。]
CXCR4を評価するために、Lineagenegマウスの骨髄細胞またはCD34+UCBを、1マイクロモル濃度のdmPGE2またはビヒクル対照のどちらかを用いて2時間氷上で処置し、洗浄し、次いでRPMI−1640/10%HI−FBS中で37℃において24時間培養し、SKL(マウス細胞)またはCD34(ヒト)およびCXCR4に関して染色し、FACSにより分析した。ここで図4Aを参照すると、dmPGE2を用いて処置後24時間のKLおよびSKL細胞ならびにヒトCD34+UCB細胞におけるCXCR4の発現である。データは、dmPGE2またはビヒクルを用いた処置による、CXCR4の平均蛍光強度(MFI)の変化の平均±SEMで表す(n=3)。QRT−PCRによる分析で、CXCR4mRNAの2.65倍の増加が実証される。
【0068】
[実施例9.マウスSKL細胞をPGE2にパルス曝露することは、SDF−1αへの遊走を増加させる。]
新たに単離されたLineagenegマウス骨髄細胞に、dmPGE2またはビヒクルを2時間パルスし、洗浄し、10%HI−FCSを含む培地に再懸濁し、37℃において16時間培養した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、RPMI/0.5%BSAに再懸濁し、トランスウェルにおいてrmSDF−1αに4時間遊走させた。細胞遊走の合計を、フローサイトメトリにより測定した。ここで図9を参照すると、SKL細胞遊走の合計は、dmPGE2をパルスした細胞がより高かった。データは、3つの実験に関する遊走パーセントの平均±SEMである。ビヒクルを用いて処置した細胞と比較したdmPGE2処置細胞に関して、†P<0.05。
【0069】
[実施例10.ヒトCD34+細胞をPGE2にパルス曝露することは、SDF−1αへの遊走を増加させる。]
新たに単離されたUCB CD34+細胞に、dmPGE2またはビヒクルを2時間パルスし、洗浄し、10%HI−FCSを含む培地に再懸濁し、37℃において16時間培養した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、RPMI/0.5%BSAに再懸濁し、rhSDF−1への遊走をフローサイトメトリにより測定した。遊走アッセイの前に、CXCR4受容体をブロックするために、複製細胞を、5マイクログラム/mlのAMD3100と共に30分間インキュベートした。ここで図10を参照すると、データは、3つの実験に関する遊走パーセントの平均±SEMである。
【0070】
[実施例11.CXCR4受容体をブロックすることにより、SKL細胞のホーミングのPGE2による強化がブロックされる。]
ホーミングにおけるCXCR4の役割を評価するために、LineagenegCD45.2細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2+10マイクロモル濃度のAMD3100を用いて処置し、2×106の処置細胞を、致死的に放射線を浴びたCD45.1マウスに注射し、移植後16時間でホーミングしたSKL細胞を回収しFACSにより分析した。ここで図11を参照すると、10マイクロモル濃度のAMD3100不在下または存在下の、ビヒクルおよびdmPGE2処置細胞の骨髄へのホーミング効率である。ホーミングアッセイの前に、細胞を、AMD3100と共に30分間インキュベートした。
【0071】
[実施例12.PGE2は、in vitroでマウスSKL細胞の細胞周期速度を増加させる。]
Lineageneg細胞を、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2どちらかを用いて2時間処置し、洗浄し、rmSCF、rhFlt3およびrhTpoを含む培地において培養した。20時間後、細胞を、SKLおよびHoechst−33342およびPyronin−Yに対して染色した。細胞周期におけるSKL細胞の割合を、FACSにより測定した。ここで図12を参照すると、ゲーティングされたSKL細胞の細胞周期分布を示す代表的フロープロットであり、それぞれ個別にアッセイした平均±SEM、n=9マウスの3つの実験による、ビヒクル対照と比較した、dmPGE2処置細胞に関する細胞周期における倍数増加を組み合わせたデータである。細胞周期におけるSKL細胞の割合を、FACSにより測定した。ゲーティングされたSKL細胞の細胞周期分布を示す代表的フロープロットであり、それぞれ個別にアッセイした平均±SEM、n=9マウスの3つの実験による、ビヒクル対照と比較した、dmPGE2処置細胞に関する細胞周期における倍数増加を組み合わせたデータである。
【0072】
[実施例13.PGE2は、in vitroの高度に精製されたCD150+48−(SLAM)SKL細胞の細胞周期速度を増加させる。]
ここで図8を参照すると、ビヒクルまたは1マイクロモル濃度のdmPGE2どちらかを用いて2時間処置し、成長因子(50ng/mlのrmSCF、それぞれ100ng/mlのrhFlt−3およびrhTPO)の存在下で20時間培養し、SLAM SKL、Hoechst−33342およびPyronin−Yに対して染色し、細胞周期のG0、G1、SおよびG2/M期にあるSLAM SKL細胞の割合を、FACSによるDNAおよびRNA含有量の定量化によって決定したLinneg骨髄細胞を使用して収集したデータを要約した表である。データは、それぞれ個別にアッセイしたn=9マウスに関する平均±SEMである。(b)G1+S+G2Mにある細胞のパーセント;n=9マウスに関する組み合わせデータ。(*)ビヒクル対照と比較してP<0.05。
【0073】
[実施例14.PGE2へのパルス曝露は、in vivoでホーミングしたSKL細胞の増殖および細胞周期速度を増加させる。]
CD45.1Lineageneg骨髄細胞を、dmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。移植直後、BrdUを飲料水中に提供し、IP注射によって投与した。16時間後骨髄を分析し、BrdU+であったCD45.1+、SKL細胞の割合を、FACS分析により分析した。ここで図13を参照すると、CD45.1Linneg骨髄細胞をdmPGE2またはビヒクルを用いて処置し、致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。移植直後、BrdUを飲料水中に提供し、IP注射によって投与した。16時間後骨髄を分析し、BrdU+であったCD45.1+、SKL細胞の割合を、FACS分析により分析した。PGE2を用いて処置したSKL細胞がより高い割合で骨髄にホーミングした。データは、平均±SEM、n=5/マウス/群であり、それぞれ個別にアッセイした。
【0074】
[実施例15.幹細胞の長期再構築活性は、PGE2のパルス曝露後に維持される。]
1対1競合分析のために、CD45.1およびCD45.2マウス由来のWBMを、ビヒクルまたはdmPGE2を用いて処置し、様々な割合で2×105のCD45.1/CD45.2マウス由来の競合骨髄細胞と混合し、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに移植した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の割合を、月1回決定した。二次、三次および四次移植のために、1:1比ですでに移植されたCD45.1/CD45.2マウス由来の2×106のWBMを、致死的に放射線を浴びたCD45.1/CD45.2マウスに非競合的様式で注射した。PB中のCD45.1、CD45.2およびCD45.1/CD45.2細胞の割合を、月1回決定した。ここで図14を参照すると、一次移植の20週目(二次移植の時)およびサブコホートにおける32週目(二次移植の12週目分析の時)、二次移植の12週および24週目、三次および四次移植も同様にそれぞれ12週目に関する、dmPGE2処置細胞対ビヒクルのキメラ現象の増加である。20週の一次移植に関するデータは、それぞれ個別にアッセイした、n=5マウス/群/実験の2つのプールした実験からである。二次、三次および四次移植に関するデータは、それぞれ個別にアッセイした、n=5マウス/群からである。
【0075】
[実施例16.インドメタシンおよびG−CSFに関する末梢血幹細胞(PBSC)の動員レジメン。]
マウスに、ゼラチン中の150マイクログラム/kgのインドメタシンまたは150マイクログラム/kgのバイカレイン(リポキシゲナーゼ阻害剤)を、G−CSFと共に、または無しで48時間ごとに4日間のSC処置を与えた。CFU−GMの動員を、すでに記載のように決定した(Pelusら、Experimental Hematology33巻(2005年)295〜307頁)。ここで図7Aおよび7Bを参照すると、シクロオキシゲナーゼ二重阻害剤のインドメタシンおよびG−CSFの併用は、マウスHSPCを相乗的に動員している。150μg/kgインドメタシンまたは150ug/kgのバイカレイン(リポキシゲナーゼ阻害剤)を単独で(図7A)、またはG−CSFと一緒に(図7B)4日間、毎日SC投与することによるCFU−GMの動員に関する効果である。データは、それぞれアッセイした、N=3マウスの動員されたCFU−GM/血液mlの平均±SEMとして表す。
【0076】
ここで図16を参照すると、マウスは、G−CSF(1マイクログラム/マウス)またはG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス)を4日間、1日2回の(bid)SC注射で毎日与えられた。CFU−GMの動員を記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。併用して処置されたマウスは、G−CSFだけで処置された動物よりもCFU−GM/単位においてより大きな倍数増加を実証した。
【0077】
上記のレジメンにより動員されたマウスの末梢血に由来する低密度の単核細胞を、FACS分析によりHSPCに関して分析した。SKLおよびSLAM−SKLの検出のために、細胞を、Sca−1−PE−Cy7、c−kit−APC、CD150−PECy5、CD48−FITC、Lineage Cocktail−Biotinを用いて染色し、ストレプトアビジン−APC−Cy7を用いて二次染色した。ここで図17を参照すると、分析は、BD−LSRIIにおいて実施された。G−CSFまたはG−CSFおよびインドメタシンの併用により処置されたマウスの末梢血において、表現型的に規定されたHSPCのフローサイトメトリ分析である。それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群。
【0078】
[実施例17.インドメタシン+AMD3100による併用動員がHSPCを動員する。]
マウスに、ビヒクルまたはインドメタシン(50マイクログラム/マウス)を、4日間毎日、1日2回(bid)SC注射した。5日目に、マウスに、ビヒクルまたはAMD3100(5mg/kg)のどちらかを与えた。1時間後、マウスを犠牲にし、CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図18を参照すると、ビヒクルまたはインドメタシン処置単独によるCFU−GMの動員である(左パネル)。AMD3100またはインドメタシン処置+AMD3100の単回投与によるCFU−GMの動員のグラフである(右パネル)。データは、それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0079】
[実施例18.インドメタシンを、様々な動員レジメンと併用して用いた動員効率の比較]
マウスを、ビヒクル、インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回SC、4日間)、AMD3100(5mg/kg、5日目)、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回SC、4日間)、AMD3100+GROβ(それぞれ、5ミリグラム/kgおよび20ミリグラム/kg、5日目)、AMD3100+インドメタシン(インドメタシン50マイクログラム/マウス、1日2回4日間;AMD3100 5ミリグラム/kg 5日目)またはG−CSF+インドメタシン(それぞれ、1マイクログラムおよび50マイクログラム、1日2回SC、4日間)により処置した。CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図19を参照すると、上に要約した様々な処置レジメンに関してプロットしたCFU−GM/末梢血mLである。
【0080】
マウスを、ビヒクル、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回 SC、4日間)、G−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回 SC、4日間)またはG−CSF+メロキシカム(0.3mg/kg、1日2回 SC、4日間)により処置した。CFU−GMの動員を、先に記載(Pelusら、 Experimental Hematology 33巻(2005年)295〜307頁)のように決定した。ここで図20を参照すると、インドメタシン+G−CSFおよび同様に作用するNSAIDのメロキシカム+G−CSFにより誘導される動員の比較を例示する棒グラフである。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0081】
[実施例19.NSAIDを時間差投与(staggered dosing)することにより、HSPCにおけるCXCR4の発現の回復が可能になる。]
CD45.1マウスを、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)またはG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)を用いて動員し、末梢血単核細胞(PBMC)を5日目に採取した。PBMCを、様々な比率でCD45.2骨髄と混合し、致死的に放射線を浴びた(1100cGy、分割線量)CD45.2マウスに移植した。ここで図21を参照すると、移植後12週目の競合的再構築単位を示す(左パネル)。データは、それぞれ個別にアッセイされたN=5マウス/群/実験の2つの実験から、平均±SEMとして表す。G−CSF単独と比較して、インドメタシンとG−CSFとの同時投与により動員されたPBMCの生着に改善がなかったので、ホーミングの欠損は、CXCR4受容体の発現の減少の結果として起こると思われ、これは、インドメタシン処置とG−CSF処置とに時間差を与えることによって緩和できるという仮説を立てた。CD45.2マウスを、G−CSF(1マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)、時間差無しのG−CSF+インドメタシン(50マイクログラム/マウス、1日2回、SC、4日間)、1日の時間差のG−CSF+インドメタシン(インドメタシンを1日目に開始し4日間与え、G−CSFをインドメタシン処置の2日目から開始して4日間与え、PBMSの採取前に、G−CSFを与えるが、インドメタシンは与えない日を1日作る)または2日の時間差のG−CSF+インドメタシン(インドメタシンを1日目に開始し4日間与え、G−CSFをインドメタシン処置の3日目から開始して4日間与え、PBMSの採取前に、G−CSFを与えるが、インドメタシンは与えない日を2日作る)により動員した。ここで図21を参照すると(右パネル)、SKL細胞におけるCXCR4の発現を示す。データは、それぞれ個別にアッセイされた、N=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0082】
[実施例20.G−CSF+NSAID処置マウス由来の動員PBSCは、G−CSF単独により動員されたPBSCと比較して、有意に強化された長期幹細胞機能を示す。]
CD45.1マウスを、G−CSFまたはG−CSF+インドメタシン(1日ずらして)を用いて動員し、PBMCを、CD45.2競合骨髄細胞と共に致死的に放射線を浴びたCD45.2マウスに移植した。ここで図22を参照すると、移植後12週目における、複数ドナーのキメラ現象:競合相手の比(左パネル)および競合的再構築単位(右パネル)を示す。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=5マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0083】
[実施例21.G−CSF+NSAIDにより動員されたマウス由来のPBSCは、致死的に放射線を浴びたマウスに移植した場合、G−CSF単独により動員されたPBSCと比較して、末梢血好中球のカウントがより早く復元される。]
マウスを、G−CSFまたはG−CSF+メロキシカム(1日ずらして)を用いて動員し、2×106のPBMCを、致死的に放射線を浴びたレシピエントに移植した。血中好中球を、Hemavet950FS(Drew Scientific)により、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えた。血中血小板を、Hemavet950FS(Drew Scientific)により、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えた。ここで図23を参照すると、末梢血(PB)中の好中球は、(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えられた。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=10マウス/群の平均±SEMとして表す。ここで図24を参照すると、末梢血(PB)中の血小板は(対照のサブセットと比較して)完全に回復するまで1日おきに数えられた。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=10マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0084】
[実施例22.G−CSFおよびメロキシカムの、ヒヒにおける細胞動員に関する効果の決定]
ここで図25を参照すると、ヒヒの第1群を、以下の10ug/体重kgのG−CSFの投与レジメン処置を用いて動員し、次いで2週間の洗い流し期間後に、動物を、10ug/kgのG−CSF+0.1mg/kgのメロキシカムを用いて処置した。ヒヒの第2群を、以下の10ug/kgのG−CSF+0.1mg/kgのメロキシカムのレジメンを用いて動員し、2週間の洗い流し期間後、10ug/kgのG−CSFを用いる期間であった。ここで図26を参照すると、PB中のCD34+細胞がFACS分析により決定され、先に記載のようにCFU−GM/血液mlを決定した。G−CSFとメロキシカムとの同時投与は、CD34+細胞の動員を増加させ(左パネル)、取り出した血液単位当たりのCFU−GMを測定した。
【0085】
[実施例23.マウスにおけるPBSC動員の最適な強化は、COX1およびCOX2の酵素両方の阻害を必要とする。]
マウスを、G−CSF用いて動員し、PB中のCFU−GMを、G−CSFおよび様々なNSAIDS(アスピリン[COX−1およびCOX−2];リコフェロン[COX−2および5−LOX];SC−560[COX1];サリチル酸バレリル[COX−1];バルデコキシブ[COX−2];NS−398[COX−2])との併用による動員レジメンと比較した。ここで図27を参照すると、これら試験の結果が要約されており、これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=4マウス/群の平均±SEMとして表される。COX1および2の両方を阻害することが公知である化合物は、2種のアイソザイムの1種だけに対して高度に選択性であると思われる化合物より、コロニー形成細胞の動員においてより優れていた。2種の一般的に使用されるCOX阻害剤の効率を試験するために、マウスを、G−CSFまたはG−CSFと、アスピリンまたはイブプロフェンとの併用により動員した(PO、1日2回、4日間)。CFU−GMを先に記載のように決定した。ここで図28を参照すると、G−CSF+アスピリンおよびG−CSF+イブプロフェンによる、CFU−GMの末梢血への動員の用量反応分析は、G−CSFだけで処置したマウスの対照群;G−CSF+10、20または40ミリグラム/kgのアスピリンを用いて処置したマウス;およびG−CSF+10、20または40ミリグラム/kgのイブプロフェンを用いて処置したマウスに関して棒グラフの形態で提示される。データは、それぞれ個別にアッセイされた、n=4マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0086】
[実施例24.マウスにおけるCFUに対するメロキシカムの用量依存性効果の測定]
マウスを、G−CSFおよび以下のメロキシカム用量、メロキシカムに対して0.0(対照)、0.02、0.2、0.5、1.5および3ミリグラム/体重kgを用いて動員し(1日2回、SC、4日間)、CFU−GMを先に記載のように決定した。ここで図29を参照するとHSPCに対するメロキシカムの用量反応は、動物の末梢血、または動物の骨髄において測定された(図30)。これらのデータは、それぞれ個別にアッセイされた、n=3マウス/群の平均±SEMとして表す。
【0087】
図面および前述の説明において、新規な技術を例示し、詳細に説明したが、それらは例示として考えるべきであり、特徴を限定するものではなく、好ましい実施形態が示され説明されただけで、新規の技術の精神の範囲内で思いつくすべての変更および改良は、保護されることが望ましいと理解されるべきである。同様に、新規の技術を、特定の実施例、理論的議論、根拠および図解を使用して例示したが、これらの例示および添付の考察は、決して技術を限定するように解釈されない。本出願において参照したすべての特許、特許出願およびテキスト、科学論文、刊行物に対する参考文献などは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源を特定するステップ、
PGE2の活性を減少させる化合物を提供するステップ、ならびに
造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源と、前記細胞および周辺のPGE2活性を減少させる有効量の前記化合物とを接触させるステップ、
を含む、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する方法。
【請求項2】
PGE2活性を減少させる化合物が非ステロイド系抗炎症性化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2の両方に作用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、主にシクロオキシゲナーゼ−2に作用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、エトドラク、ケトロラクおよびリコフェロンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
非ステロイド系抗炎症性化合物がインドメタシンである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
非ステロイド系抗炎症性化合物がメロキシカムある、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する少なくとも1種の追加の化合物との同時処置で、オーバーラップした期間患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する追加の化合物が、G−CSFおよびプレリキサフォルからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非ステロイド系抗炎症性化合物が少なくとも3日間患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストである化合物を提供するステップ、ならびに
ドナーから造血幹細胞および前駆細胞を採取する前に、有効量の前記化合物を造血幹細胞および/または前駆細胞ドナーに投与するステップ、
を含む、ドナー由来の造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法。
【請求項12】
少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストが、N−[[4’−[[3−ブチル−1,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル]メチル][1,1’−ビフェニル]−2−イル]スルホニル]−3−メチル−2−チオフェンカルボキシアミドおよび4−(4,9−ジエトキシ−1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−ベンズ[f]イソインドール−2−イル)−N−(フェニルスルホニル)−ベンゼンアセトアミドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
供給源においてPGE2活性を減少させる少なくとも1種の化合物を用いて処置された、当該供給源由来の造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞の群を採取するステップ、
造血幹細胞および前駆細胞のセットと、PGE2活性とをex vivoにおいて接触させるステップ、および
in vivoにおいてPGE2活性を有する前記化合物と接触させた、前記造血幹細胞および前駆細胞をレシピエント内に移植するステップ、
を含む、レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞の生着を強化する方法。
【請求項14】
造血幹細胞および前駆細胞の供給源が、骨髄ドナーから取り出される骨髄の試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
造血幹細胞および前駆細胞の供給源が、血液ドナーから取り出される血液の試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞の供給源が、臍帯または胎盤である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
PGE2活性を有する化合物を提供するステップ、ならびに
PGE2活性を有する化合物と、造血幹細胞および前駆細胞の集団をex vivoで接触させるステップ、
を含む、造血幹細胞および前駆細胞の生着率を増加させる方法。
【請求項18】
PGE2活性を有する化合物が、PGE2またはdmPGE2からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PGE2活性を有する化合物が、細胞集団と少なくとも1時間接触する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
PGE2活性を有する化合物と接触させた細胞集団の少なくとも一部を、実質的にPGE2活性を有さない緩衝液を用いて、少なくとも1回洗浄するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
PGE2活性を有する化合物と接触させた細胞集団の少なくとも一部を、患者内に導入するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
形質導入のための少なくとも1種の対象遺伝子を含有するウィルスベクターを提供するステップ、
有効量の、PGE2活性を有する分子によってex vivoにおいて処置された少なくとも1種の幹細胞を供給するステップ、および
ウィルスベクターで、PGE2活性を有する分子によって処置された幹細胞をトランスフェクションするステップ、
を含む、幹細胞におけるウィルス導入効率を強化する方法。
【請求項23】
PGE2活性を有する分子が、EシリーズのプロスタグランジンおよびEシリーズのプロスタグランジンのジメチル誘導体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
PGE2活性を有する分子が、PGE2およびdmPGE2からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
PGE2活性を有する分子を提供するステップ、
造血幹細胞または前駆細胞の移植レシピエントを特定するステップ、および
治療有効量の、PGE2を有する分子を、移植レシピエントに投与するステップ、
を含む、移植レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞の生存を強化する方法。
【請求項26】
PGE2活性を有する分子が、EシリーズのプロスタグランジンおよびEシリーズのプロスタグランジンのジメチル誘導体からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
PGE2活性を有する分子が、PGE2およびdmPGE2からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源を特定するステップ、
PGE2の活性を減少させる化合物を提供するステップ、ならびに
造血幹細胞および/または前駆細胞の供給源と、前記細胞および周辺のPGE2活性を減少させる有効量の前記化合物とを接触させるステップ、
を含む、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する方法。
【請求項2】
PGE2活性を減少させる化合物が非ステロイド系抗炎症性化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、シクロオキシゲナーゼ−1およびシクロオキシゲナーゼ−2の両方に作用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、主にシクロオキシゲナーゼ−2に作用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、アスピリン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、エトドラク、ケトロラクおよびリコフェロンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
非ステロイド系抗炎症性化合物がインドメタシンである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
非ステロイド系抗炎症性化合物がメロキシカムある、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
非ステロイド系抗炎症性化合物が、造血幹細胞および前駆細胞の動員を強化する少なくとも1種の追加の化合物との同時処置で、オーバーラップした期間患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する追加の化合物が、G−CSFおよびプレリキサフォルからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非ステロイド系抗炎症性化合物が少なくとも3日間患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストである化合物を提供するステップ、ならびに
ドナーから造血幹細胞および前駆細胞を採取する前に、有効量の前記化合物を造血幹細胞および/または前駆細胞ドナーに投与するステップ、
を含む、ドナー由来の造血幹細胞および/または前駆細胞の動員を強化する方法。
【請求項12】
少なくとも1種のPGE2受容体のアンタゴニストが、N−[[4’−[[3−ブチル−1,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル]メチル][1,1’−ビフェニル]−2−イル]スルホニル]−3−メチル−2−チオフェンカルボキシアミドおよび4−(4,9−ジエトキシ−1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−ベンズ[f]イソインドール−2−イル)−N−(フェニルスルホニル)−ベンゼンアセトアミドからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
供給源においてPGE2活性を減少させる少なくとも1種の化合物を用いて処置された、当該供給源由来の造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞の群を採取するステップ、
造血幹細胞および前駆細胞のセットと、PGE2活性とをex vivoにおいて接触させるステップ、および
in vivoにおいてPGE2活性を有する前記化合物と接触させた、前記造血幹細胞および前駆細胞をレシピエント内に移植するステップ、
を含む、レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞の生着を強化する方法。
【請求項14】
造血幹細胞および前駆細胞の供給源が、骨髄ドナーから取り出される骨髄の試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
造血幹細胞および前駆細胞の供給源が、血液ドナーから取り出される血液の試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
細胞の供給源が、臍帯または胎盤である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
PGE2活性を有する化合物を提供するステップ、ならびに
PGE2活性を有する化合物と、造血幹細胞および前駆細胞の集団をex vivoで接触させるステップ、
を含む、造血幹細胞および前駆細胞の生着率を増加させる方法。
【請求項18】
PGE2活性を有する化合物が、PGE2またはdmPGE2からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PGE2活性を有する化合物が、細胞集団と少なくとも1時間接触する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
PGE2活性を有する化合物と接触させた細胞集団の少なくとも一部を、実質的にPGE2活性を有さない緩衝液を用いて、少なくとも1回洗浄するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
PGE2活性を有する化合物と接触させた細胞集団の少なくとも一部を、患者内に導入するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
形質導入のための少なくとも1種の対象遺伝子を含有するウィルスベクターを提供するステップ、
有効量の、PGE2活性を有する分子によってex vivoにおいて処置された少なくとも1種の幹細胞を供給するステップ、および
ウィルスベクターで、PGE2活性を有する分子によって処置された幹細胞をトランスフェクションするステップ、
を含む、幹細胞におけるウィルス導入効率を強化する方法。
【請求項23】
PGE2活性を有する分子が、EシリーズのプロスタグランジンおよびEシリーズのプロスタグランジンのジメチル誘導体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
PGE2活性を有する分子が、PGE2およびdmPGE2からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
PGE2活性を有する分子を提供するステップ、
造血幹細胞または前駆細胞の移植レシピエントを特定するステップ、および
治療有効量の、PGE2を有する分子を、移植レシピエントに投与するステップ、
を含む、移植レシピエントにおいて造血幹細胞および/または前駆細胞の生存を強化する方法。
【請求項26】
PGE2活性を有する分子が、EシリーズのプロスタグランジンおよびEシリーズのプロスタグランジンのジメチル誘導体からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
PGE2活性を有する分子が、PGE2およびdmPGE2からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2012−508185(P2012−508185A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534934(P2011−534934)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063654
【国際公開番号】WO2010/054271
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063654
【国際公開番号】WO2010/054271
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(301046787)インディアナ・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・テクノロジー・コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
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