説明

造血機能におけるアルファ1プロテイナーゼインヒビターの治療的使用

以前は認識されていなかったα1PIの基本的な特性は、造血幹細胞由来の循環及び組織関連細胞の表現型組成を制御することである。本発明は、HIV-1感染、微生物感染、白血病、固形腫瘍癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫、幹細胞移植、臓器移植及び免疫系の細胞によって影響を受ける疾病に伴う、骨髄系またはリンパ系の細胞数の異常の治療において有用である種々の未改変及び改変α1PIのスクリーニングを含む。α1PIとその受容体、HIECS及びLRPとの相互作用は、様々な系の細胞のレベルに影響を与える。α1PIの遺伝子的及びタンパク質分解的な改変をこれらの受容体を標的にするために使用して、様々な疾病状態において、必要に応じて特定の細胞集団を増大または減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造血幹細胞由来の循環細胞及び組織関連細胞の表現型組成を制御するためのα1PI及び改変α1PIの使用を対象とする。様々な改変α1PIも提供する。血液細胞の表現型プロフィールにおける異常のスクリーニング方法及び治療も提供する。そのような異常は、例えばHIV-1感染、微生物感染、白血病、固形腫瘍癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫、幹細胞移植、臓器移植及び免疫系の細胞によって影響を受ける他の疾病に関連する。本発明は、部分的には、造血幹細胞由来の循環及び組織関連の細胞の表現型組成を制御するα1PIの、以前は認められていなかった基本的な特性に基づいている。
【背景技術】
【0002】
全長活性型α1プロテイナーゼインヒビター(α1PI、α1アンチトリプシン)は、完全にグリコシル化されると約55kDaの質量を有する394アミノ酸(aa)で構成される(Berninger、1985年)。肝細胞が、α1PIの主な供給源であり、健常人において循環しているα1PIの範囲は、5から95パーセンタイルの間で20〜53μMである(Brantlyら、1991年;Bristowら、1998年)。しかし、炎症応答の急性期においてα1PIは、4倍程度の200μMに増大する場合がある(Kushner、1982年)。α1PIには4個の一般的な対立遺伝子があり、これらは主に肝細胞において合成及び分泌される(OMIM、2000年)。しかし、100を超える遺伝子変異体があり、そのいくつかは分泌を妨げる分子を生成し、罹患した個体は、血中α1PIが正常レベルの10〜15%を呈する(Berninger、1985年)。このα1PI欠乏の遺伝形態を有する個体、特に男性は、顕著に呼吸器感染症及び気腫に罹患し易く、成人後、40歳代から60歳代の間で80%が呼吸器不全で死亡する(Berninger、1985年)。有病率は0.03%であり、罹患した個体におけるα1PI付加療法が、α1PIの唯一の認可された治療への適用である(OMIM、2000年)。
【0003】
伝統的にα1PIは、可溶性顆粒球放出エラスターゼ(HLEG)に最も高い親和性を有するプロテイナーゼインヒビターとして特徴付けられてきた。現在証拠は、α1PIが細胞表面HLE(HLECS)とも相互作用することを示唆している(Bristowら、2003年;Tavor.S.ら、2005年)。HLECSとHLEGは、どちらも単一分子のタンパク質として合成及びプロセスされるが、しかしHLEは、個体発生の早期には細胞表面を、個体発生の後期には顆粒の区画化を排他的に標的にする(Gullbergら、1995;Garwiczら、2005年)。HLEの発現の減少を生じるHLEをコードする遺伝子中の突然変異は、好中球と反対の相にある単球に影響を与える造血機能における周期性をもたらす(Horwitzら、1999年;Horwitzら、2004年)。HLEの増大を生じる突然変異は、循環CD4+及びCD8+リンパ球の絶対数を2分の1にし、単球細胞を7倍増加させる(Personら、2003年)。
【0004】
細胞の運動性及び造血機能を制御するプロテイナーゼ及びプロテイナーゼインヒビターは、マウスではヒトとは異なる機能様式に進化しているが、多くの類似点がある。例えばマウスにおいて、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が誘導した幹細胞の動員に続いて骨髄に高濃度のHLEが蓄積することが示されている(Winklerら、2005年)。この蓄積は、α1PI発現の下方制御から生じることが見出された。ヒトにおいては、肝臓がα1PI及び幹細胞の両方の主な供給源である。HLEGの酵素活性を阻害する機能とは反対に、HLECSと結合しているα1PIは、酵素活性によるものではないと思われる方法で細胞の遊走を誘導する(Wolfら、2003年)。細胞の運動性についてのα1PIの効果は、幹細胞及び初期の前駆細胞の遊走において特に難解である。造血機能は、胎児肝臓から末梢を通じて造血組織のストローマ領域への幹細胞の遊走、保持、分化及び成熟前駆細胞が末梢へ戻る放出で始まる。骨髄への幹細胞の遊走及び骨髄からの骨髄系に方向付けられた前駆細胞の遊走は、HLECS、ケモカインストローマ細胞由来因子-1(SDF-1)及びSDF-1受容体CXCR4によって制御されている(Tavor.S.ら、2005年;Lapidot及びPetit2002年)。細胞遊走は、細胞の先導端での突起形成へのHLECSの局在に依存しており(Tavor.S.ら、2005年;Cepinskasら、1999年)、突起形成は、HLECSのCD4及びCXCR4との共局在化を含む方法での活性型α1PIのHLECSへの結合によって誘導される(Bristowら、2003年)。骨髄からの骨髄系に方向付けられた前駆細胞の治療用の動員のための現在の方法は、G-CSFの作用によるものであり、G-CSFがCXCR4及びHLECSのアンタゴニストとなることによりこの活性を制御していることが示されている(Lapidot及びPetit、2002年)。造血組織からリンパ系に方向付けられた前駆細胞を動員する分子機構は、未知である。今回本出願に記載の証拠は、活性型α1PIがこの活性を制御していることを示唆している(以下の実施例1〜3)。動物モデルにおいてα1PIで処置した後、移植したヒト白血病細胞の循環への遊走は減少するが、幹細胞の造血組織への遊走は増加する(Tavor.S.ら、2005年)。これらの結果は、細胞の分化の段階に部分的に依存して細胞の循環への及び循環からの遊走にα1PIが影響していることを示唆している。
【0005】
骨髄由来赤血球前駆細胞(赤芽球バースト形成細胞)をα1PIとin vitroでインキュベートすると、未熟細胞の増殖は著しく抑制される(42.5%±5.5%)(Graziadeiら、1994年)。対照的に成熟細胞の増殖は、α1PIによって影響されない(3.6%±3.4%)。これらの結果は、骨髄系及びリンパ系に方向付けられた前駆細胞に加えて、赤血球に方向付けられた前駆細胞の生成に、その分化の段階に依存してα1PIが影響を与えることを示している。
【0006】
以前のα1PIの治療への適用は、遺伝性α1PI欠乏と診断された患者における、気腫及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで生じる呼吸困難の改善の目的での付加に制限されてきた。組換えα1PIを生成することへの重大な関心により、細菌及び植物細胞での発現並びにウイルスベクター及び経口送達を含むいくつかの成功した発現系が開発されている(Chowanadisaiら、2003年;Luisetti及びTravis、1996年)。組換えα1PIは、遺伝性α1PI欠乏症の個体での付加については臨床試験の第I相にあり(Flotteら、2004年)、アトピー性皮膚炎の治療については臨床試験の第II相にある。組換えα1PIは、遺伝的に素因のあるマウスにおけるI型糖尿病の発症の予防について試験されている(Songら、2004年)。しかし、リンパ系または骨髄系の成熟細胞のいずれかを動員するためのコンフォメーション依存的機能を十分に配慮した、組換えα1PIを開発する必要性が当分野にある。本明細書において発明者により認識される通り、α1PIは、活性型またはタンパク質分解的に改変されたコンフォメーションに依存して細胞運動性を誘導することから、様々な活性型及び改変α1PIは、組織を通じた標的細胞サブセットを動員するための新規で強力な治療を提供する。
【特許文献1】米国特許第6887678号
【特許文献2】米国特許第6858400号
【非特許文献1】Current Protocols in Molecular Biology、2002年
【非特許文献2】Methods in Enzymology、1970年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、造血幹細胞由来の循環細胞及び組織関連細胞の表現型組成を制御するためのα1PI及び改変α1PIの使用を対象とする。様々な改変α1PIも提供する。血液細胞の表現型プロフィールにおける異常のスクリーニング方法及び治療も提供する。そのような異常は、例えばHIV-1感染、微生物感染、白血病、固形腫瘍癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫、幹細胞移植、臓器移植及び免疫系の細胞によって影響を受ける他の疾病に関連する。本発明は、部分的には、造血幹細胞由来の循環及び組織関連の細胞の表現型組成を制御するα1PIの、以前は認められていなかった基本的な特性に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って本発明は、対象における疾病、障害または状態の治療への使用に適する改変α1PIを同定するための方法であって、(a)改変α1PIを生成するステップと、(b)対象における疾病、障害または状態の治療による効果を予測するための生物学的アッセイにおいて改変α1PIの生物学的活性を測定するステップとを含み、野生型α1PIで測定される対照活性と比較した生物学的活性の変化から、改変α1PIが疾病、障害または状態の治療に適すると同定される方法を提供する。一実施形態において、改変α1PIは、部位特異的突然変異誘発、タンパク質分解またはその両方によって生成される。他の実施形態において、疾病、障害または状態は、HIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される。他の実施形態において、幹細胞移植は、自己幹細胞移植である。
【0009】
他の実施形態において、生物学的アッセイは、エラスターゼ阻害アッセイ、受容体co-キャッピングアッセイ、細胞運動性アッセイ、リンパ球に方向付けられた前駆細胞の動員アッセイ、HIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイ、及びHIV-1感染力促進アッセイから成る群から選択される。他の実施形態において、対象は、ヒトまたはヒト以外の動物である。他の実施形態において、タンパク質分解は、野生型または組換えα1PIを、エラスターゼ、ストロメライシン-3、マトリックスメタロプロテイナーゼ、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ペプシン、プラスミン、ウロキナーゼ、キモトリプシン、トロンビン、CD26、補体成分C1及び補体成分C3から成る群から選択されるプロテアーゼと接触させることを含む。
【0010】
他の実施形態において、部位特異的突然変異誘発は、残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸残基の少なくとも2箇所を非野生型残基に変更することを含み、変更された残基の1箇所は385番目である。他の実施形態において、残基370〜374及び385から成る群から選択される少なくとも1箇所のアミノ酸は、野生型からグリシン、トレオニンまたは疎水性アミノ酸に変更される。他の実施形態において、疎水性アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン及びバリンから成る群から選択される。
【0011】
本発明は、残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸残基の変更を含む改変ヒトα1PIを提供する。一実施形態において、遺伝子改変α1PIは、タンパク質分解による改変をさらに含む。他の実施形態において、野生型アミノ酸残基は、グリシン、トレオニンまたは疎水性アミノ酸に変更される。他の実施形態において、疎水性アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン及びバリンから成る群から選択される。他の実施形態において、改変ヒトα1PIは、385番目の変更及び370〜374番目から成る群から選択される位置での変更を含む、野生型アミノ酸残基の少なくとも2箇所の変更を含む。他の実施形態において、385番目のメチオニンは、メチオニン以外のアミノ酸に変更される。他の実施形態において、メチオニン以外のアミノ酸は、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びバリンから成る群から選択される。他の実施形態において、改変ヒトα1PIは、野生型α1PIと比較してHIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイにおける結合活性が低下し得る。他の実施形態において、改変ヒトα1PIにおける残基の変更は、以下の3箇所のアミノ酸置換:Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valを含む。他の実施形態において、改変ヒトα1PIにおける残基の変更は、以下の3箇所のアミノ酸置換:Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valから成る。
【0012】
本発明は、治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、有効量の未改変または改変α1PIを対象に投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態において、改変α1PIは、部位特異的突然変異誘発、タンパク質分解またはその両方によって生成される。他の実施形態において、疾病、障害または状態は、HIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される。他の実施形態において、対象は、ヒトまたはヒト以外の動物である。他の実施形態において、改変α1PIは、残基370〜374から成る群から選択される野生型アミノ酸残基の変更を含み、かつ385番目のメチオニンの変更をさらに含む。他の実施形態において、385番目のメチオニンは、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びバリンから成る群から選択されるメチオニン以外のアミノ酸に変更される。他の実施形態において、改変α1PIは、野生型α1PIと比較してHIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイにおける結合活性が低下し得る。他の実施形態において、改変α1PIにおけるアミノ酸の変更は、以下の3箇所のアミノ酸置換:Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valを含む。他の実施形態において、改変α1PIにおけるアミノ酸の変更は、以下の3箇所のアミノ酸置換:Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valから成る。他の実施形態において、治療法は、HIV-1抗レトロウイルス剤療法を投与するステップをさらに含む。他の実施形態において、改変α1PIの有効量は、約42mg/kgの活性型野生型α1PIと等価な投与量である。
【0013】
本発明は、治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、活性型α1PIの有効量を対象に投与するステップを含み、疾病、障害または状態が、HIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される方法を提供する。一実施形態において、幹細胞移植は、自己幹細胞移植である。
【0014】
本発明は、治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、活性型α1PIの有効量を対象に投与するステップを含み、対象が異常なまたは無効性の数のリンパ球、単球もしくは樹状細胞を有することを特徴とする方法を提供する。
【0015】
本発明は、治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、不活性型α1PIの有効量を対象に投与するステップを含み、疾病、障害または状態が細菌感染、好中球減少症及び免疫抑制から成る群から選択される方法を提供する。
【0016】
本発明は、治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、不活性型α1PIの有効量を対象に投与するステップを含み、対象が異常なまたは無効性の数の顆粒球、単球、樹状細胞、好酸球もしくは好塩基球を有することを特徴とする方法を提供する。一実施形態において、対象は、ヒトまたはヒト以外の動物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[定義]
ヒトα1PI
アルファ1-プロテイナーゼインヒビター(ヒト)は、アルファ1-アンチトリプシンとしても周知で、ヒト血漿由来で高度に精製されたヒトアルファ1-プロテイナーゼインヒビター(α1PI)の滅菌、安定、凍結乾燥調製物である。治療用に現在FDAが認可しているアルファ1-プロテイナーゼインヒビター(ヒト)の3種類の製品がある。Talecris Biotherapeutics (www.talecris.com)によって製造されるProlastin(登録商標)(www.prolastin.com)、ZLB Behring(www.zlbbehring.com)によって製造されるZemaira(登録商標)(www.zemaira.com)及びBaxter Healthcare Corp.によって製造されるAralast(商標)(www.aralast .com)。
【0018】
活性型α1PI
エラスターゼ活性を阻害する能力を有する血漿または他の液体中のα1PI画分。
【0019】
不活性型α1PI
エラスターゼ活性を阻害する能力を有さない血漿または他の液体中のα1PI画分。活性型α1PIは、タンパク質分解、プロテイナーゼ複合体形成、抗体複合体形成または酸化によって失活され得る。
【0020】
遺伝子改変α1PI
部位特異的突然変異誘発によって改変されているヒトα1PIをコードするcDNAから合成される活性型α1PI。FDAが現在治療用に認可している組換え製品は無い。
【0021】
タンパク質分解改変α1PI
断片を生成するために限定加水分解によってさらに改変されている活性または遺伝子改変ヒトα1PI。タンパク質分解による改変は、α1PIを不活性化する。
【0022】
医薬組成物
医薬組成物に処方される場合、本発明の治療用化合物は薬学的に許容される担体または賦形剤と混合できる。用語「薬学的に許容される」は、「一般的に安全であるとみなされる」例えば、生理学的に耐性があり、かつヒトに投与された場合典型的にはアレルギーまたは、胃の不調、めまいなどの同様の好ましくない反応を生じさせない、分子自体及び組成物を意味する。好ましくは、本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、連邦政府の規制機関もしくは州政府によって認可されることまたは動物さらに具体的にはヒトにおける使用について米国薬局方もしくは一般に認知されている他の薬局方に記載されることを意味する。用語「担体」は、化合物と共に投与する希釈剤、補助剤、賦形剤または媒体を意味する。そのような医薬用担体は、水及び、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来の油を含む油などの滅菌液であり得る。水または水性溶液、食塩溶液並びに水性ブドウ糖及びグリセロール溶液は、好ましくは担体として、特に注射用溶液として使用される。別法として担体は、1つまたは複数の結合剤(圧縮錠剤用に)、滑剤、被包性剤、香剤及び着色剤を非限定的に含む固体投与形態担体であり得る。適切な医薬用担体は、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0023】
1. 治療集団:活性型α1PIは、リンパ球及びHLECSを発現している単球細胞の遊走を促進する(Bristowら、2003年)(下記実施例1〜3)。不活性型α1PIは、好中球及びLDL受容体関連タンパク質、LRPを発現している細胞の遊走を促進する(Kounnasら、1996年;Weaverら、1997年)。活性型ヒトα1PIでの治療は、HIV-1疾病、幹細胞移植、臓器移植、自己免疫の増悪、糖尿病、白血病、リンパ腫、固形腫瘍及びアテローム性動脈硬化症などにおける、機能するリンパ球、単球細胞または樹状細胞の数の異常を明らかに示す個体において必要を示される。不活性型ヒトα1PIによる治療は、微生物感染、好中球減少症及び免疫抑制患者などにおける、機能する顆粒細胞、単球細胞、樹状細胞、好酸細胞または好塩基細胞の数の異常を明らかに示す個体において必要を示される。治療の結果は、詳細な記載の7章において以下に記載する通り決定される。
【0024】
2. 治療法:Prolastin(登録商標)製品モノグラフ(www.prolastin.com/pdf/prolastin monograph.pdf)、Zemaira(登録商標)処方情報文献及びAralast(商標)処方情報によると、α1PIの推奨される投与量は、血清中の歴史的な目標閾値11μMα1PIに至る、60mg/kgを1分間に0.08ml/kgの速度での1週間ごとの輸液である。理想的な血中閾は、35μM α1PIであるが、このレベルは治療においては達成されていない。送達は伝統的には輸液によるが、組換えα1PIは、経口摂取用にも生成されている(Chowanadisaiら、2003年)。
【0025】
具体的な活性をパッケージ挿入物に記載された通りのブタ膵臓エラスターゼ(PPE)の阻害として定義すると、Zemaira(登録商標)の具体的な活性は、70%であり、Prolastin(登録商標)は、35%であり、Aralast(商標)は、55%である。従って、Zemaira(登録商標)α1PIの推奨投与量は活性型α1PI 42mg/kgと、Prolastin(登録商標)は21mg/kgと、及びAralast(商標)は活性型α1PI 33mg/kgと示し得る。逆に、Zemaira(登録商標)の不活性画分は、30%または18mg/kgであり、Prolastin(登録商標)では65%または39mg/kgであり、Aralastでは45%または27mg/kgである。
【0026】
遺伝子改変α1PIの投与量は、詳細な記載の6章において記載される通り、そのPPE阻害活性によって決定される(米国特許第6887678号も参照)。野生型α1PIを使用した推奨される治療法に従って、対象は遺伝子改変α1PIを、35μM遺伝子改変α1PIの目標血中閾値で、活性型α1PIを1から420mg/kgの範囲の投与量で輸液される。いくつかの場合においては、活性型または遺伝子改変α1PIのいずれかは、骨髄系細胞で走化性のある断片を生成するために限定加水分解切断によってさらに改変される。例えば、好中球減少症を伴う微生物感染においては、タンパク質分解改変α1PIが感染組織に好中球を補充するために使用される。この場合、個体はタンパク質分解改変α1PIを、不活性型α1PIの39mg/kgと等しい濃度で輸液される。PPE阻害活性の測定に加えて、タンパク質分解改変α1PIは、詳細な記載の3.2章に記載の通り受容体キャッピング及び好中球などの骨髄系血液細胞の細胞運動性を誘導する能力によってスクリーニングされる。
【0027】
3. 組換えα1PI:血漿由来α1PIに加えて、組換えα1PIも前駆細胞を動員する能力を有している。α1PIの生物工学化された形態は、2個の切断断片に分割されることが示されており(Jeanら、1998年)、α1PI-インスリン様成長因子キメラは、走化性を誘導することが示されている(Sandovalら、2003年)。組換えα1PIの改変は、特定の前駆細胞の動員についてHIV-1及び他の疾病に特異的な改善を提供する。
【0028】
3.1 α1PIの構造特性:以下は、24aaシグナルペプチドを含むα1PI(アクセッション番号#K01396)の全長アミノ酸配列を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
既知のAsn結合カルボキシル化部位(太字下線付き文字で表示)は、aa46、83及び247に見出される(Nukiwaら、1986年;Jeppssonら、1985年)。各部位でのオリゴ糖構造は、トリアンテナリーまたはバイアンテナリーのいずれかであり、様々な組合せは、4種の一般的遺伝子型対立遺伝子、M1A、M1V、M2及びM3の表現型サブタイプとして表される特徴的な電気泳動的電荷をタンパク質に与える。
【0031】
米国白色人種におけるM1A、M1V、M2及びM3の頻度は、それぞれ0.20〜0.23、0.44〜0.49、0.1〜0.11、及び0.14〜0.19であり、人口の95%を占める(Jeppssonら、1985年)。M1Aは、最も古い変異体であると考えられており、M1Vは位置213にAlaからValへの1箇所のaa置換を有する。M3対立遺伝子は位置376にGluからAspへの、M1Vとは1箇所の相違を有する。M2対立遺伝子は位置101にArgからHisへの、M3とは1箇所の相違を有する
【0032】
100を超える遺伝子型対立遺伝子が同定されているが、S及びZ対立遺伝子を除いて、それらのほとんどは極めて稀である(OMIM、2000年)。頻度0.02〜0.04のS対立遺伝子は位置264にGluからValへの1箇所のaa置換を有しており、この対立遺伝子ついてホモである個体は、正常の60%の血中α1PIレベルを示すが、Z対立遺伝子との組合せである場合を除いて気腫または他の既知の疾病へのリスクは無い(Brantlyら、1991年;Sifersら、1988年)。頻度0.01〜0.02のZ対立遺伝子は位置342にGluからLysへの1箇所のaa置換を有し、この対立遺伝子についてホモである個体は、正常の10%の血中α1PIレベルを示し、気腫及び自己免疫のリスクにある。
【0033】
3.2 α1PIの機能特性:本明細書においてaa357〜394、
PMSI PPEVKFNKPF VFLMIEQNTK SPLFMGKVVN PTQK
と定義する、α1PIのC末端領域中の部位によって決定されるα1PIの3種の異なる活性がある。
【0034】
活性型α1PIについての結晶構造(1HP7、NIH NCBI Molecular Modeling DataBase mmdbId:15959)を、Met(aa358)及びMet(aa385)を示して図3に表す。α1PIのC末端領域(aa369〜394)のβシート構造を示す。2箇所のαヘリックスドメイン(aa27〜44及び257〜280)がβシートドメインを、主要組織適合性複合体の抗原結合クレフトと同様の方法で覆っている。
【0035】
α1PIの第一の活性は、活性で切断されていないα1PIだけの特性である、十分に特性が明らかなプロテイナーゼ阻害である。この活性の反応部位は、ドメインPro-Met-Ser-Ile-Pro(PMSIP、aa357〜361)中に含まれているMet(aa358)である。活性型α1PIは、プロテイナーゼとの複合体形成、切断、またはMet(358)の酸化によって失活され得る。切断され易い結合Met-Ser(aa358〜359)における相互作用は、HLEGを含む多数のプロテイナーゼによって制御され得る。α1PIの2つの切断産物は、ある条件下で解離する場合があるけれども、不可逆的にHLEGは取り込み得るが、例えば金属プロテイナーゼなどの他のプロテイナーゼは取り込み得ない新たな、再構成した配置で会合し続ける場合もある(Perkinsら、1992年)。
【0036】
再構成したα1PI配置の三次構造は、解明されていない(Melletら、1998年);しかし、切断されたα1PIのX線回折及び動力学的分析は、SIPPEVKFNKP鎖(aa359〜369)がその元の位置から70Å離れており、プロテイナーゼ及び受容体の認識を著しく変化させるように、分子の反対側のβシート(βシートA)構造中に侵入し得ること、を示唆している(Elliottら、2000年)。従って、α1PIのC末端領域の4種の配置が生じると考えられている(表1)。
【0037】
【表2】

【0038】
α1PIの切断された配置は、プロテイナーゼ阻害活性が無いことから、活性型α1PIが不十分な濃度であると、その結果は特定の環境要因、煙草の煙、微生物要因及び活性型α1PIの十分な生成を妨げる遺伝的突然変異の存在によって促進される気腫及び呼吸器関連感染である。
【0039】
α1PIの2番目の活性は、細胞遊走の刺激であり、この活性は切断された及び切断されていないα1PIの両方の特性である。切断されたα1PIは、LRPによって認識され、好中球及び単球細胞を含む骨髄系細胞の遊走を刺激する(Joslinら、1992年)。活性で、切断されていないα1PIは、HLECSによって認識され、リンパ系細胞及び骨髄系に方向付けられた前駆細胞の遊走を刺激する(Bristowら、2003年)。細胞遊走は、α1PIが誘導するHLECS、CXCR4及びCD4などの受容体の突起形成へのco-キャッピングによって開始する(Cepinskasら、1999年;Bandaら、1988年)。細胞遊走中の突起形成の参入に加えて、この配置は、HIV-1での好ましい結合部位でもある(Bristowら、2003年)。この活性のα1PIの反応部位は、Phe-Val-Phe-Leu-Met(FVFLM、aa370〜374)である。
【0040】
α1PIの3番目の非生理学的活性は、HIV-1エンベロープタンパク質gp120と反応する抗体との結合であり、この活性は、α1PIを失活させ、上記の他の2種の活性を妨げる結果になる。抗gp120モノクローナル抗体1C1(Repligen、Inc.、Cambridge、マサチューセッツ州)及び3F5(ハイブリドーマ培養上清、0085-P3F5-D5-F8、Dr.Larry Arthur、NCI-Frederick)は、gp120 C5ドメインの近傍のエピトープと反応することが以前示された(Mooreら、1994年)。ヒトα1PIの抗体交差反応部位はドメイン、Phe-Leu-Met-Ile-Glu-Gln-Asn-Thr-Lys-Ser-Pro-Leu-Phe-Met-Gly-Lys-Val-Val(FLMIEQNTKSPLFMGKVV、aa372〜389)に含まれる(Bristowら、2001年)。ヒトα1PIから1個のアミノ酸Val(aa385)によって異なるチンパンジーα1PIは、抗gp120と結合せず、HIV-1感染を解決し、正常CD4+リンパ球レベルを回復するチンパンジーの能力と整合する。これは、ヒトα1PIにおける抗gp120交差反応部位が主にMet残基(aa385)によって決定されていることを示唆している。
【0041】
3.3 組換えα1PIの発現:当業者に既知の任意の方法を本発明による遺伝子改変α1PIを生成するために使用できる。2つの好ましい方法を、そのような組換えα1PIを生成するために以下に簡単に記載する:1つの方法は、イネ細胞中でのα1PIの発現を可能にし、他方は細菌での発現を可能にする。ヒトα1PIをコードするcDNAは、先に記載(Courtneyら、1984年;Terashimaら、1999年;Jeanら、1998年)の通り、2個のPCRプライマー:N-末端プライマー5'GAGGATCCCCAGGGAGATGCTGCCCAGAA3'及びC末端プライマー5'CGCGCTCGAGTTATTTTTGGGTGGGATTCACCAC3'を使用してアクセッション番号K01396中の断片の増幅によってヒトcDNA bankから得る。
【0042】
イネ細胞での発現のために、発現カセットをp1AS1.5由来の1.1kb NheI-PstI断片を使用して調製し、pGEM5zf-(3D/NheI-PstI)を形成するためにベクターpGEM5zf-(Promega,Madison,WI):ApaI、AatII、SphI、NcoI、SstII、EcoRV、SpeI、NotI、PstI、SalI、NdeI、SacI、MluI、NsiIのSpeI及びPstI部位に、クローニングする。GEM5zf-(3D/NheI-PstI)をPstI及びSacIで消化し、相補配列、5'GCTTG ACCTG TAACT CGGGC CAGGC GAGCT3'及び5'CGCCT AGCCC GAGTT ACAGG TCAAG CAGCT3'と共に2つのキナーゼ処理していない30mer中にp3DProSigを形成するために連結する。ラムダクローンλOSg1 A由来5-kb BamHI-KpnI断片をターミネーターとして使用する。ハイグロマイシン耐性は、プラスミドpMON410の35Sプロモーター-Hph-NOSを含む3-kb BamHI断片から得る。
【0043】
微粒子銃をジャポニカイネ変種TP309を形質転換するために適用する。衝突を受けたカルスは、次いでハイグロマイシン50mg/lを含むNB培地に移し、暗所、25℃で10±14日間インキュベートする。イネ細胞は、AA(+ショ糖)培地中で回転速度115rpmの震盪器を使用して28℃(暗所)で培養する。細胞系を維持するために、培地を5日ごとに交換する。α1PIの発現のためにはAA(-ショ糖)を使用する。バイオリアクターを2Lスケールの培養に使用する。リアクターは、28℃(暗所)で、撹拌速度30±50rpm、エアレーション速度100ml/分で運転する。増殖期(10日間)において培地のpHは、pH5.7に制御され、生成期にはpHは5.7±6.3になる(制御しない)。
【0044】
組換えα1PIは、ゲル1ml当たり1.5mgの濃度でCNBr活性化Sepharose 4Bに固定したポリクローナル抗ヒトα1PI抗体(Enzyme Research Laboratolies、South Bend、インディアナ州)を使用して精製される。ゲル(3.5ml)を、カラム(内径1.26cm)に詰め、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.6)で平衡化する。培地原液を1.0ml/分でカラムにかける。280nmでの吸光度をカラムの出口でモニターする。平衡化緩衝液で洗浄後、α1PIを0.1N HCl溶液で溶出する。ピーク画分を回収し、そのpHを1M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)でただちに調整する。これらの方法で乾燥細胞1g当たり5.7mgのα1PIが得られると見積もられる。
【0045】
別法として、α1PIcDNAは、pDS56α1PI/hf(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア州)で形質転換した大腸菌(Escherichia coli)BL21株で発現される。タンパク質の発現は、1mMイソプロピルb-D-チオガラクトシドの添加によって誘導され、培養物を31℃で一晩増殖させる。細胞を金属キレートクロマトグラフィー結合緩衝液(5mMイミダゾール/0.5M NaCl/20mM Tris、pH7.9)を使用して洗浄し、キャビテーションで破砕する。可溶性α1PI変異体を含む清澄させて、ろ過した培養上清を、Ni2+アガロースカラムにかけ、結合したタンパク質を100mM EDTAで溶出する。溶出液は3.5M NaClに調整し、phenyl-Sepharoseカラムにかける。結合したα1PI/hfを20mM Bis-Tris、pH7.0で溶出し、同緩衝液中でダイアフィルトレーションによって濃縮する(最終4mg/ml)。
【0046】
4. 活性型α1PIの遺伝子的改変:組換え活性型α1PIは、詳細な記載の3章に記載の手順によって発現される。野生型ヒトα1PIは、配列特異的反応部位を減少させるまたは強化するために遺伝子的に改変される。例えばHIV-1疾患において、治療用α1PI変異体は、可溶性HLEGの阻害及び細胞遊走の誘導を維持しているが、HIV-1侵入を促進しかつHIV-1と反応する抗体と結合する能力は減少している。
【0047】
目的とする遺伝子改変は、詳細な記載の4.1章に記載されている。活性型α1PIの部位特異的突然変異誘発は、当業者に周知の標準的手順を使用して実施する(例えば、Parfreyら、2003年;Current Protocols in Molecular Biology、2002年)。例えば、pDS56α1PI/hf中にヒトα1PIシグナルペプチドをコードしているDNA配列をアニーリングした相補的オリゴ
5'CTAGAGGATCCCATGGACTACAAGGACGACGATGACAAGGAA3'及び
5'GATCTTCCTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCCATGGGATCCT3'の挿入によってエピトープ(FLAG)-タグをコードする配列で置換する。得られたcDNAをpDS56α1PI/hfを生成するためにpDS56-6Hisにサブクローンする。アミノ酸置換を有するpDS56α1PI/hfを生成するために、野生型アミノ酸をコードするDNA配列を詳細な記載の4.1章に記載するアミノ酸をコードする相補オリゴで置換する。得られたORFは、Metから開始し、His及びFLAGタグ並びに変異体α1PIの成熟配列が続く組換えタンパク質の細胞質での発現を対象としている。
【0048】
4.1 細胞遊走を決定するドメイン中の遺伝子改変(FVFLM、aa370〜374)は、特定のアミノ酸の部位特異的突然変異誘発によって調製される。
【0049】
4.1.1 Phe(aa 370)からIle、Leu、Val、Tyr、またはGlyへ。
【0050】
4.1.2 Val(aa 371)からPhe、Leu、Ile、またはGlyへ。
【0051】
4.1.3 Phe(aa 372)からIle、Leu、Val、TyrまたはGlyへ。
【0052】
4.1.4 Leu(aa 373)からIle、Val、Phe、またはGlyへ。
【0053】
4.1.5 Met(aa 374)からPhe、Thr、Ile、Leu、Val、またはGlyへ。
【0054】
4.2 HIV-1 gp120抗体認識を決定するドメイン中の改変は、Met(aa385)のPhe、Thr、Ile、Leu、ValまたはGlyへの部位特異的突然変異誘発によって調製される。
【0055】
5. 活性型または組換えα1PIのタンパク質分解改変:補体、トロンビン及びα1PIなどの走化性分子のタンパク質分解断片は、細胞応答のクラス分離を生じさせる免疫クリアランス調節因子の最初のシステムを与える。様々な走化性分子の出現は、各病原体に特異的なプロテアーゼの直接的機能としての病原体応答性免疫細胞の迅速な補給に効果がある。治療への適用のためにこのシステムを複製するために、活性型または組換えα1PIは、コンフォメーション特異的反応部位を減少させるかまたは強化するためにタンパク質分解的に改変される。
【0056】
不活性型α1PIを生成するα1PIの切断は、恐らく様々なプロテイナーゼを使用して実施される。エラスターゼによる切断は、Met-Ser(aa358〜359)の間であり(Berninger、1985年)、ストロメライシン-3、ストローマ細胞由来マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、Ala-Met(aa350〜351)の間である(Peiら、1994年)。好中球コラゲナーゼまたはゼラチナーゼによるα1PIの切断は、不活性型α1PIを生成するPhe-Leu(aaa352〜353)の間である(Desrochersら、1992年)。他のMMPもα1PIを切断することが示されている(Mastら、1991年)。重要なことには、α1PIは、シュードモナスエラスターゼなどの病原性生物由来のプロテアーゼによって切断される(Barbey-Morel及びPerlmutter、1991年)。
【0057】
C末端α1PIタンパク質分解断片は、好中球の走化性、単球へのLDL結合の増加、LDL受容体の上方制御、サイトカイン生成の増加及びα1PI合成を生じさせる方法で(Bandaら、1988年;Janciauskieneら、1999年;Janciauskieneら、1999年)、LDL受容体関連タンパク質(LRP)(Pollerら、1995年)及びペンタペプチド配列FVFLM(aa370〜374)を認識する他の受容体(Joslinら、1992年)との相互作用を可能にする特性を与える。α1PIのC末端断片の繊維状凝集物が、肝芽腫細胞系HepG2でのLRPによるLDLの取込みを促進し(Janciauskiene及びLindgren、1999年)、これらの断片がアテローム性動脈硬化症に関与することが示されている(Dichtlら、2000年)。
【0058】
具体的には活性型または組換えα1PIを、1つまたは組合せでのペプシン、プラスミン、ウロキナーゼ、キモトリプシン、トロンビン、CD26、マトリックスメタロプロテイナーゼ、補体成分C1もしくはC3及びα1PIの走化性断片の生成を促進する他のプロテイナーゼと、それぞれの最適条件でインキュベートする(Methods in Enzymology、1970年;Hooper、2002年)。次いで、プロテイナーゼ混合物に最適な条件をプロテイナーゼ活性を阻害する条件、例えば極端な温度またはpHに変更することによりα1PIの切断は、終止される(Methods in Enzymology、1970年;Hooper、2002年)。
【0059】
6. 活性型、遺伝子改変、及びタンパク質分解改変α1PIの機能的能力:様々な未改変及び改変α1PIをスクリーニングし、特定の疾病の治療における使用のために、in vitro及び/またはin vivoで以下のアッセイで以下の機能を示す能力を決定することにより選択する:
【0060】
6.1 エラスターゼ阻害:可溶性型のブタ膵臓エラスターゼ(PPE)またはHLEGを阻害するα1PIの能力を測定するための手順は十分に確立されている(米国特許第6887678号)(Bristowら、1998年)。簡単にはPPEをα1PIと2分間インキュベートし、混合液にエラスターゼの基質、スクシニル-L-Ala-L-Ala-p-ニトロアニリド(SA3NA)を添加する。結果は405nmでの色の変化を測定することによって検出する。
【0061】
複合体混合物において、α1PIは、PPEへの結合を混合液中に存在する他のプロテイナーゼインヒビターまたはリガンドと競合する。例えばPPEは、α2マクログロブリン(α2M)にα1PIよりも高い親和性を有し、α2Mと複合体形成してもPPEは低分子基質を切断する能力を保持する。α2Mの存在下で、PPEはα2Mに結合し、α1PIによる阻害から保護されており、PPEとα2Mとの複合体形成は、SA3NAを使用するPPEの活性を検出することによって測定できる。血清などの複合混合物中でのα1PIの阻害能力を測定するために、血清の2倍系列希釈物を一定の、飽和濃度のPPEとインキュベートする。加えたPPEは、希釈血清中でα2M及びα1PIとそれぞれの濃度に依存して結合し、血清濃度が高ければα2M及びα1PIの濃度も高い。血清中ではα2Mよりもα1PIが多いことから、血清が希釈されるとα2Mは希釈除去され、α2Mの欠乏下でPPEはα1PIによって結合及び阻害される。PPEとα1PIの複合体形成はSA3NAを使用するPPEの活性の消失を検出することによって測定できる。血清をさらに希釈すると、α1PIも希釈除去され、PPEとα1PIの複合体形成による消失をSA3NAを使用するPPEの活性の増加を検出することによって測定できる。血清希釈に対するPPE活性のプロットは、V形曲線を形成し、PPE活性は、血清を希釈するとまず減少し、次いでさらに血清を希釈すると増加する。PPE活性の最下点を混合物中の活性型α1PIの正確な濃度を算出するために使用する(Bristowら、1998年)。
【0062】
6.2 受容体co-キャッピング及び細胞運動性の誘導:受容体キャッピングを誘導するための手順は記載されている(Bristowら、2003年)。目的の細胞(単球、リンパ球、好中球または白血病性細胞などの他の血液細胞)を血液または組織から標準的技術(Messmerら、2002年)を使用して単離し、α1PIとの反応性を検討する。
【0063】
受容体キャッピングを検討するために、細胞を活性型または改変α1PIと加湿した5%CO2中、37℃で15分間インキュベートする。細胞をサイトスピン装置(Shandon Inc.Pittsburgh、ペンシルバニア州)の試料チャンバーに入れ、スライドを3分間、850rpmで遠心分離する。10%ホルマリン50μlをサイトスピン装置の試料チャンバーに添加し、続いて5分間、850rpmでさらに遠心分離することによりスライドを固定する。スライドを目的受容体に特異性を有する蛍光標識モノクローナル抗体と共に20℃で、90分間インキュベートし、顕微鏡で検討する。
【0064】
受容体の活性化及び不活性化によって生じる選択的並びに連続した付着及び放出(Wright及びMeyer、1986年:Aliら、1996年)、結果として生じる関連する膜タンパク質の先導端またはトレイリングユーロポッドへの極分離、さらに細胞内の別の位置から開始する時計回り及び反時計回りのCa++波の伝播(Kindzelskii及びPetty、2003)から細胞運動性が生じる。従って、複合体プロセスのいくつかの態様が定量できる。細胞運動性を定量するための最も直接的で、かつ最も解釈が容易な方法は、α1PIなどの走化性物質への応答における付着細胞の計数である。
【0065】
付着を検出するために、滅菌カバースリップを無エンドトキシン水で洗浄し、各カバースリップに活性型または改変α1PIの種々の希釈物を置いた。次に細胞をカバースリップに置き、α1PIと均一に混合し、加湿した5%CO2中、37℃で30分間乾燥させること無くインキュベートする。非付着細胞が無いようにカバースリップを厳密に十分に洗浄後、核染色蛍光染料、2.5μMアクリジンオレンジ(3,6-ビス[ジメチルアミノ]アクリジン)を含む4%パラホルムアルデヒドで付着細胞を20℃、10分間インキュベートすることによって固定する。スライドを顕微鏡で検討し、平均及び標準偏差を、少なくとも1つのカバースリップ当たり3つの領域中の付着細胞数を数えることにより決定する。
【0066】
6.3 リンパ球に方向付けられた前駆細胞の動員:非肥満性糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)モデルマウスにおいて、骨髄融合ヒト細胞は、G-CSFによって動員できる(Petitら、2002年)。このモデルは、ヒトリンパ系または骨髄系細胞をそれぞれ動員する、活性型または改変α1PIの能力を評価するために採用される。
【0067】
NOD/SCIDマウスは、個別に換気した(HEPAフィルターろ過空気)滅菌ミクロアイソレーターケージ内で規定のフローラ条件下で飼育する。ヒトキメラマウスは、致死量以下の照射(67cGy/分で375cGy)及び2×107個のヒト臍帯血単核細胞の注入によって得る。移植4から5週間後、G-CSFまたはα1PIのいずれかの適用によって動員が実施される。骨髄系に方向付けられた前駆体の動員のために、マウスは、4〜5日間、毎日、0.9% NaCl、5%牛胎児血清、250μl中のG-CSF(Filgrastim、Neupogen(登録商標)またはNeulasta(登録商標)、Amgen、Inc.)300μg/kgの皮下注射を受ける。別法としてマウスは、1週間に2回、尾の背部の血管を通じて、不活性型または改変α1PI(39mg/kg)を1分間に0.08ml/kgの速度で輸液される。リンパ球系に方向付けられた前駆体の動員のためにマウスは、1週間に2回、尾の背部の血管を通じて、活性型または改変α1PI(42mg/kg)を1分間に0.08ml/kgの速度で輸液される。マウスをドライアイスで窒息させ、末梢血をヘパリン処理したチューブへ心臓吸引によって回収し、骨髄を採取し、細胞を大腿及び脛骨から単一細胞懸濁液に流す。末梢血及び骨髄細胞を、CD34、CD38、CD10、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD19、CD3、CD4、CD8、CD45、CD184(CXCR4)、CD66、及びHLECSを含む骨髄系及びリンパ系マーカーの存在についてフローサイトメトリーによって分析する(米国特許第6858400号)。
【0068】
6.4 抗HIV-1 gp120の結合:活性型または改変α1PIをHIV-1 gp120と反応するモノクローナル抗体と液相でインキュベートする。抗gp120モノクローナル抗体3F5(ハイブリドーマ培養上清、0085-P3F5-D5-F8)は、gp120 C5ドメイン近傍のエピトープと反応する(Mooreら、1994年)。クローンα70(ICN Biochemicals、Aurora、オハイオ州)は、、HLEリガンド、インターα-トリプシンインヒビターと同じドメインでgp120のV3ループと反応する(Prattら、1987年)。免疫複合体は、ニワトリ抗ヒトα1PI IgGでプレコートしたマイクロタイタープレートのウェル中での混合物のインキュベートによって捕らえられる。結合は、西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ウサギ抗マウスIgG、次いで基質、オルトフェニレンジアミンHClを使用して検出する。
【0069】
6.5 HIV-1感染力の促進:プライマリー非シンシチウム誘導HIV-1臨床分離体(Advanced Biotechnologies、Rivers Park、イリノイ州)を、96ウェル組織培養プレートのウェルで20%自己血清及び10% IL-2(Cellular Products、Buffalo、ニューヨーク州)を含むRPMI-1640中に1ml当たり細胞2×106個で維持している末梢血単核細胞に感染させるために使用する。HIV-1を加える前に細胞は、活性型または改変α1PIと37℃、5%CO2で0分間または60分間インキュベートする。In vitro感染力結果を3回反復で、p24の蓄積またはRT活性によって先に記載の通り決定する(Bristowら、2001年)。細胞数及び生存率を最終時点で決定する。
【0070】
7. 治療結果の測定
7.1 エラスターゼ阻害活能力についての治療の効果を決定するために、個体を活性型及び不活性型α1PI血中レベルについて1週間ごとにモニターする(Bristowら、1998年)(米国特許第6887678号)。簡潔には、活性部位を滴定した一定量のPPEを血清の系列希釈液と37℃で、2分間インキュベートし、その後PPE基質を添加する。残存、未阻害PPEによって切断された基質分子の測定を血中の活性型及び不活性型α1PIの分子を算出するために使用する。
【0071】
7.2 標的血液細胞集団のレベルの変化の誘導についての治療効果を決定するために、治療を受けた個体を、全血球数及び分化の変化について並びにCD4+細胞及びHLECS+細胞などの血液細胞の特定のサブセットの変化についてフローサイトメトリーを使用して1週間ごとにモニターする(Bristowら、2001年;Bristow、2001年)(米国特許第6858400号)。簡潔には、全血100μlを、医学診断用にFDAによって認可されている蛍光標識モノクローナル抗体パネルとインキュベートする。これらの抗体を、目的の細胞集団を特異的に同定する細胞受容体を特異的に認識するように選択する。モノクローナル抗体に結合する血中細胞の同定及び計数は、フローサイトメトリーを使用して実施する。
【0072】
7.3 疾病の進行における治療の影響を決定するために、例えば幹細胞移植、臓器移植、自己免疫、糖尿病、白血病、癌、HIV-1感染、アテローム性動脈硬化症及び血液細胞によって影響を受ける他の疾病における様々な指標について当業者に十分に周知である疾病の特異的な病原体決定について個体を観察する。例えば、HIV-1疾患において個体は、CD4+リンパ球レベル及びHIVレベルの変化についてモニターされる(Bristowら、2001年;Bristow、2001年)。白血病または癌において個体は、白血病性細胞または癌細胞の存在の変化についてモニターされる(Tavor.S.ら、2005年)。幹細胞移植において個体は、正常血液細胞の変化についてモニターされる(Jansenら、2005年)。臓器移植において個体は、臓器拒絶反応についてモニターされる(Kirschfink、2002年)。自己免疫において個体は、自己抗体の存在及び罹患している臓器の具体的な機能についてモニターされる(Marinakiら、2005年)。糖尿病及びアテローム性動脈硬化症において個体は、総コレステロール、LDL、HDL及びトリグリセリドレベルの変化についてモニターされる(Talmudら、2003年)。
【実施例】
【0073】
<実施例1>
健康な個体では、CD4+リンパ球の増大は、α1PIの増大及びHLECS+リンパ球の減少と相関する。健康な個体において、循環しているα1PIは、5から95パーセンタイルで18〜53μMの範囲であり、このタンパク質の90〜100%は、ブタ膵臓エラスターゼの阻害によって決定される活性型である(Bristowら、2001年)。活性型α1PI、HLECS+及びCD4+リンパ球の関係を調査するために、6名の健康なHIV血清陰性成人、男性3名及び女性3名をα1PIの広いスペクトラム(1.9〜61.5μM)を表すように特に選択した。対象をCD4、CXCR4、CCR5、HLECS、活性型及び不活性型α1PIレベル並びにα2マクログロブリン(α2M)について測定した。活性型α1PI、HLECS+リンパ球、α2M、CXCR4+リンパ球、またはCCR5+リンパ球は、それぞれCD4+リンパ球と相関しなかった。しかし、多重線形回帰分析によって、CD4+リンパ球の数(リンパ球%)が多いと、2種のカウンターバランス変数、多い活性型α1PI(p=0.008)及び少ないHLECS+(p=0.034)と相関すること(r2=0.937)が見出された(図1a)。
【0074】
一般集団におけるCD4+リンパ球レベルを調査するために、CD4、CXCR4、CCR5、SDF-1、活性型及び不活性型α1PIレベルを測定したさらに18名の健康で、HIV-1血清陰性成人、男性9名及び女性9名から血液を採取した。HLECSをこの内16名の個体において測定した。これらの志願者における活性型α1PI値(19〜37μM)及びSDF-1レベル(191〜359pM)値は、正常範囲内であることが見出された。再び、CD4+リンパ球(%)が多いと多い活性型α1PI(p<0.007)及び少ないHLECS+リンパ球(p<0.001)と相関すること(r2=0.803)が見出された(図1b)。活性型α1PI及びHLECS+リンパ球と共に、低いSDF-1濃度(p=0.02)も有意に多いCD4+リンパ球の予測に寄与する(r2=0.875)。CXCR4+リンパ球は、CD4+リンパ球に有意には相関しないが、個々の細胞におけるCXCR4の活性型及び不活性型配置の両方の検出を反映できる(Percherancierら、2005年)。
【0075】
図1a及び1bにおいて活性型α1PIレベル(中央値は、それぞれ23及び24)及びCD4+リンパ球(平均は、それぞれ48%及び45%)において志願者間に統計的差異はなかった;しかし、図1aに示した志願者では範囲が広く(1.9〜61.5μM)、標準偏差が大きい(s=24)が、図1bに示した志願者では活性型α1PIの範囲が狭く(19〜37μM)、標準偏差が小さい(s=6)、これは、CD4+リンパ球レベルがα1PIレベルの小差に敏感であることを示唆している。α1PIレベルへのCD4+リンパ球レベルの感受性は、他は健康であった一志願者における腸感染症の急性期においてさらに例示される(図1c)。この個体において、総リンパ球(1.15倍)及びCD4+リンパ球(1.2倍)の増大が、総α1PIの増大(2.7倍)、活性型α1PIの増大(1.5倍)及びHLECSの減少(2.9倍)と関係して生じることが見出された。
【0076】
<実施例2>
抗gp120モノクローナルはヒトα1PIには結合するが、チンパンジーα1PIには結合しない。gp120のC5ドメイン近傍のコンフォメーションにより決定されるエピトープに結合する2つのモノクローナル抗体(1C1及び3F5)(Mooreら、1994年)は、ヒトα1PIにも結合することが見出された(Bristowら、2001年)。抗gp120が調節する活性型α1PIの減少は、HIV-1 AIDSにおいて特徴的であり得ると仮定された。真実であれば、HIV-1感染チンパンジーが感染症を生き残り、CD4+リンパ球が正常レベルに回復することから(Rutjensら、2003年)、チンパンジーα1PIは、ヒトα1PIと異なっていなければならない。配列の比較から、1個のヌクレオチドの変化(NCBIアクセッション番号BT019455及びXP_522938)によって生じる1個のアミノ酸(aa385)によってヒトα1PIは、チンパンジーα1PIとは異なり、このaaの差異はα1PIのgp120相同領域に存在することが明らかになった。この配列の差異がα1PIへの抗gp120の結合に影響を与えているかどうかを決定するために、ヒト20名及びチンパンジー20匹の血清を比較した。1C1(データは未記載)及び3F5の両方が、6回反復測定でチンパンジーα1PIよりもヒトα1PIに対して8から14倍高い結合を示した(p<0.001)(図2a)。gp120のV3ループと反応するネガティブコントロールのモノクローナル抗体α70は、以前の知見(Bristowら、2001年)と一致してヒトα1PIに結合しなかった(データ未記載)。ヒト対象2名の血清α1PIは、3F5について他の対象より高い親和性を示し、これは、3F5が認識するα1PIのエピトープが表現型的に決定できることを示唆している。これら2名の対象を比較から省いた場合、3F5のヒトまたはチンパンジーα1PIへの結合の間の統計的差異は維持される(p<0.001)。
【0077】
HIV-1疾患での低いCD4+リンパ球レベルと低い活性型α1PIレベルとの間の関連を検討するために、HIV-1感染患者38名の血液を分析した。この38名で、29%は検出可能なIgG-α1PI免疫複合体を有し、89%は抗レトロウイルス治療を受けており、60%は1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数は<500であった(図2b)。本研究において検出可能なIgG-α1PI免疫複合体を示す患者数は、60%が検出可能なIgG-α1PI免疫複合体を有しており、53%は抗レトロウイルス治療(AZTのみ)を受けており16%が1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500であったHIV-1患者68名での以前の研究(Bristowら、2001年)とは異なる。この差異の理由は、今日の改善された抗レトロウイルス治療に関連づけることができる。
【0078】
健康なチンパンジー由来の血清またはHIV-1接種後のチンパンジー2匹から採取した血清は、検出可能なIgG-α1PI免疫複合体の証拠を有さなかった。HIV-1を接種されたチンパンジーは、HIV-1に感染したことを確認されているが、正常CD4+リンパ球を有していた(Girard、1998年)。加えて、抗gp120が存在するにもかかわらず、我々は、サル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV 89.6)gp120またはgp140で免疫化した後のアカゲザル(rhesus macques)10匹において、またはSHIVに感染させたアカゲザル3匹においてIgG-α1PI免疫複合体の証拠を見出せなかった(データは未記載)。広範なin vitro分析で、gp120とα1PIの2分子複合体を示すことができず(データは未記載)、HIV-1感染チンパンジー由来の血清中にIgG-α1PI免疫複合体を検出できなかったことは、gp120及びα1PIは血清中で凝集によって会合しているのではないことを示唆する。これらの結果は、IgG-α1PI免疫複合体がヒトにおけるHIV-1疾患に特有であることを示唆している。
【0079】
以前の患者での研究からの証拠と一致して、HIV-1感染患者での活性型α1PIは、正常を有意に下回り(中央値17μM、p<0.001)(図2c)、不活性型α1PIは、正常を有意に上回る(中央値19μM、p<0.001)(図2d)(Bristowら、2001年)。ヒトとは対照的に、HIV-1接種(39μM)後のチンパンンジー2匹から採取した血清中の活性型α1PIレベルは、正常チンパンジー及びヒト血清と差異がなかった(p=0.810)(図2c)。
【0080】
3F5抗gp120モノクローナル抗体と複合体形成した後にα1PIが失活するかどうかを決定するために、3F5を健康な個体5名由来の血清試料とインキュベートした。未処置の血清とは対照的に、α1PI活性が、全ての血清において同程度、有意に減少した(平均差異=5.8±0.5μM、p<0.001)(図2e)。
【0081】
1C1及び3F5によって認識されるgp120エピトープは、コンフォメーション依存性であると考えられている(Mooreら、1994年)。1C1及び3F5を得るために使用するgp120ペプチド免疫原(aa300〜321、GGGDMRDNWRSELYKYKVVK)(Ratnerら、1985年)は、α-ヘリックス(aa306〜313)及び直鎖(aa314〜321)の両方を含むが(図3a、b)、抗体の他のエピトープ決定基は未知である。ヒトα1PIにおいて(図3c、d)、gp120相同配列(aa369〜389、PFVFLMIDQNTKSPLFMGKVV)は、小さいが、MHCの抗原結合クレフト(深さ10Å、長さ25Å、幅10Å)と同様の配置でクレフト(深さ4Å、長さ20Å、幅5Å)の底に位置し、2本のα-へリックス(aa28〜47及び259〜277)に覆われた2本鎖逆平行βシートを形成するように折りたたまれている(Bjorkmanら、1987年)。これらのα-ヘリックス第一鎖の両端は、α1PI(aa46)に構造的多型性を付与するN-結合型マンノース含有オリゴ糖である(Jeppssonら、1985年)。クレフトに位置するβシートの中央は、ヒトα1PIをチンパンジーα1PI(V-385)から区別するM-385である。このクレフトの機能は未知であるが、βシート構造の中央の配列(aa370〜374、FVFLM)は、HIV-1 gp41の融合ドメインと相同であり、この配列はHLECS結合に関連しており(Bristowら、1995年;Bristowら、2003年)、細胞運動性を刺激する(Joslinら、1991年)。
【0082】
α1PIにおいて配列GKVV(aa386〜389)は、M-385、N-46及びN-結合型オリゴ糖の5Å以内に、5Å×5Å×5Åのスペースを占めて位置している。gp120においてα1PI内と同じ相対的方向で、配列YKVV(aa315〜318)は、M-17の5Å以内並びにN-92及びN-結合型マンノース含有オリゴ糖の8Å以内に(Leonardら、1987年)、5Å×5Å×8Åのスペースを占めて位置している。α1PI多型が3F5結合に影響を与え得ることの証拠(図2a)は、多型性決定N-46オリゴ糖がα1PIの3F5認識に関与していることを示唆している。従って、3F5コンホメーショナルエピトープは、これらの分析からKVV、M、N及びN-結合型オリゴ糖を含む5Å×5Å×8Åのスペースを占めていると示唆される。提案されたこのコンホメーショナルエピトープは、オリゴ糖決定部位を含む以前に特徴付けられた抗原配置(Cyglerら、1991年)及びgp120 N-92が不変であることを示した結果(Weiら、2003年)と一致する。
【0083】
<実施例3>
活性型α1PIは、HIV-1疾患においてCD4+リンパ球について律速である。研究用集団に含まれる患者36名の内23名は、採血時に1ml当たりのHIV RNAのコピー数が500を下回り、13名は500を超えていた。全ての患者のCD4、CXCR4、CCR5、SDF-1レベル、活性型及び不活性型α1PIを測定した。これらの患者の内28名だけは、さらにHLECSについて測定した。CXCR4またはCCR5のどちらも、これらの患者において調査した疾病の任意のパラメーターと、個々にまたは組合せでも相関していなかった。HIV-1患者38名の内11名は、検出可能なB型もしくはC型肝炎または肝臓酵素の上昇によって定義される進行性肝臓疾患を有していた。肝疾患を有するHIV-1患者は、活性型α1PI(p=0.95)、総α1PI(p=0.79)、CXCR4(p=0.63)またはCCR5(p=0.9)においては肝疾患を有さない患者と異ならなかったが、有意に高いSDF-1(p<0.001)、HLECS+リンパ球(p<0.001)及びCD4+リンパ球(p=0.04)を示した。
【0084】
1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500である患者23名において、高いCD4+リンパ球レベルは、活性型α1PIの高い濃度(r2=0.927)及び不活性型α1PIの低い濃度(r2=0.946)と相関していた(図4)。活性型α1PIレベルからのCD4レベルの予測は、95%の信頼度で1μl当たり細胞151個の標準誤差を有し、不活性型α1PIレベルからの予測は、95%の信頼度で1μl当たり細胞105個の標準誤差を有していた。これらの患者23名において16名だけは、さらにHLECSについて測定した。健康な個体と同様に(図1)、低いHLECS+リンパ球それ自体は、高いCD4+リンパ球と相関しなかったが、高い活性型α1PIとの組合せにおいては、有意に相関した(p=0.01)。ウイルス負荷を制御している患者においてCD4+リンパ球レベルを活性型α1PIだけからこのように高い精度で予測できたことは、正常集団とは異なり、HIV-1疾患において活性型α1PIがCD4+リンパ球レベルの律速であることを示唆している。1ml当たりのHIV RNAのコピー数が>500である患者においてCD4+リンパ球レベルと活性型または不活性型α1PIの間に関連はなく(図4)、HIV-1自体または他の宿主プロセスがCD4+リンパ球レベルの制御の破壊に関与していることを示唆している。
【0085】
<実施例4>
HIV-1感染患者におけるα1PI付加療法。1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500である患者におけるCD4+T細胞リンパ球の数は、循環しているα1PIの濃度によって制御される(実施例2)。これらの患者では、循環しているα1PIが正常レベルより低い(Bristowら、2001年)。ニューヨーク市で受診している、1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500である患者の約10%が、1μl当たり<200のCD4細胞も有しており、これらの患者は、CD4+Tリンパ球の数の増加によってα1PI付加から恩恵を受けている。HIV-1感染患者のα1PI付加治療は、現在周知である4種のクラス、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、HIV-1アスパルチルプロテアーゼインヒビター、融合阻害剤を1つまたは組合せで同時に投与されている患者において必要である。
【0086】
抗レトロウイルス療法を受けていて、1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500であり、1μl当たりのCD4細胞数が<200である患者をZemaira(登録商標)α1PIを使用して治療する。患者は、詳細な記載の2章に記載の通り1週間ごとに60mg/kgのZemaira(登録商標)で輸液を受ける。治療の結果は、詳細な記載の7.3章に記載の通りモニターする。具体的には、Zemaira(登録商標)を投与されている患者を、活性型及び不活性型α1PIレベルの変化及びCD4+Tリンパ球並びに循環している血液細胞の他のサブセットについて1週間ごとにモニターする。1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数、LDL、HDL、コレステロール、トリグリセリド及びHIV-1疾患の進行の指標としてCDCによって示されている感染症の発症についても患者をモニターする(Castroら、1992年)。免疫複合疾患に可能性のある副作用を決定するために、個体を、α1PIと反応する抗体の存在及びたんぱく尿または血清クレアチニンレベルのいずれかを測定することにより糸球体腎炎の発症についてモニターする(Bristowら、2001年;Virellaら、1981年)。
【0087】
<実施例5>
HIV-1感染患者における遺伝子改変α1PIを使用するα1PI付加療法。HIV-1を認識する抗体は、感染力の診断用マーカーにすぎない。α1PIにも結合する抗gp120抗体の存在は、ほとんどのHIV-1感染個体において検出されており(Bristowら、2001年)、この抗体はα1PIを失活させ、α1PIレベルの減少を生じさせる。抗gp120は、ヒトα1PIと1アミノ酸(aa385)異なるチンパンジーα1PIには結合しない(実施例2)。HIV-1感染個体にα1PIを治療的に付加にするために、Met(aa385)の位置に異なるアミノ酸が置換されている遺伝的改変α1PIを使用することは望ましい。さらに、Met(aa385)近傍の疎水性ドメイン(aa370〜374)がHIV-1の侵入を促進することが示されている(Bristowら、2001年)。従って、HIV-1疾患の治療のためにこの疎水性ドメイン中のaaの1つまたは複数を変更することは望ましい。
【0088】
α1PIは、詳細な記載の4章に記載の通り、aa385(MetからVal)、aa372(PheからGly)及びaa373(LeuからGly)の3個の置換で遺伝子的に改変され、α1PI. β.F372G.L373G.M385V(α1PI. β)と表す。aa変更を太字下線付き文字で示すα1PI. β配列は、以下の通り:
【0089】
【表3】

【0090】
表2に示すα1PI. βの機能的能力は、詳細な記載の6章に記載の通り決定される。
【0091】
【表4】

【0092】
α1PIの推奨される投与量は、60mg/kgである。具体的な活性がPPEの阻害として定義される場合、Zemaira(登録商標)の具体的な活性は70%である(Bristowら、1998年)。従って、Zemaira(登録商標)α1PIの推奨される投与量は、42mg/kg活性型α1PIであると言える。Zemaira(登録商標)の推奨される治療法に従って、抗レトロウイルス治療を受けており、1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数が<500であり、1μl当たりのCD4細胞数が<200であるHIV-1患者に、目標血中閾値35μM α1PI. β.で1から420mg/kg活性型α1PIの範囲の濃度のα1PI. βを輸液する。α1PI. βでのHIV-1感染患者の治療は、現在周知の4種のクラス、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤、HIV-1アスパルチルプロテアーゼインヒビター、及び融合阻害剤を1つまたは組合せで同時に投与されている患者に必要である。治療の結果は、詳細な記載の7.3章に記載の通りモニターする。具体的には、α1PI. βを投与されている患者を、活性型及び不活性型α1PIレベルの変化及びCD4+Tリンパ球並びに循環している血液細胞の他のサブセットについて1週間ごとにモニターする。1ml当たりのHIV-1 RNAのコピー数の変化、LDL、HDL、コレステロール、トリグリセリド及びHIV-1疾患の進行の指標としてCDCによって示されている感染症の発症についても患者をモニターする(Castroら、1992年)。免疫複合疾患に可能性のある副作用を決定するために、個体は、α1PIと反応する抗体の存在及び、たんぱく尿または血清クレアチニンレベルのいずれかを測定することにより糸球体腎炎の発症についてモニターする(Bristowら、2001年;Virellaら、1981年)。
【0093】
<実施例6>
α1PIは、SDF-1が誘導するヒト白血病細胞の遊走を阻害するが、ヒト幹細胞の遊走を促進する。ヒト急性骨髄性白血病細胞(AML)は、HLEGを分泌するだけでなく、CXCR4/SDF-1系によって制御されている方法で細胞表面にHLECSを恒常的に発現している(Tavor.S.ら、2005年)。AML細胞のα1PIとのプレインキュベートは、in vitroトランスウェルアッセイを使用して調べた全てのAML細胞においてそのSDF-1依存性遊走を著しく減少させた。(Tavorら、2005年)。さらにモデルマウスにおいてα1PIが、移植されたヒト幹細胞の骨髄へのホーミング及び移植されたAML細胞の骨髄からの移動を阻害したことが見出された。α1PIの影響は、そのHLECSへの作用によって生じることが示された。AML細胞をα1PIで処置すると、SDF-1が誘導する仮足形成が妨げられた。これらの結果は、SDF-1での前処理によってα1PIが誘導する仮足形成が妨げられたU937前単核細胞系を使用した以前の結果と対照的であり(Bristowら、2003年)、この差異は、分化の時期に依存する様々な細胞の細胞遊走の促進におけるα1PI及びSDF-1の重要性を強調する。活性型及び改変α1PIの付加は、白血病及びリンパ腫細胞の増殖及び伝播を制御するために治療用に使用される。活性型α1PIは、SDF-1によって引き起こされる白血病及びリンパ腫の細胞の増殖及び伝播を妨げるために使用される。不活性型α1PIは、活性型α1PIによって引き起こされる白血病及びリンパ腫の細胞の増殖及び伝播を妨げるために使用される。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型または改変α1PIの治療用の付加を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル及びフローサイトメトリーを使用して循環しているAML細胞数の変化についてモニターされる。
【0094】
<実施例7>
微生物感染の患者におけるα1PI付加療法。高レベルの好中球及びHLEGは、膿胞性線維症患者の呼吸器分泌物中に存在する。この炎症状態の主な原因は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び他の細菌の慢性感染である。これらの患者では豊富なα1PIが存在するが、HLEG及び緑膿菌エラスターゼによって顕著に失活させられている(Barbey-Morel及びPerlmutter、1991年)。Prolastin(登録商標)は、モデルラットにおいてエラスターゼ活性、好中球数及び細菌コロニーを減少させることによる改善を示している(Cantin及びWoods、1999年)。不活性型α1PIは、好中球の化学誘因物質である(Joslinら、1992年)。微生物感染の炎症の続発症に関与する上昇したエラスターゼレベルを阻害する治療上の利点に加えて、活性型α1PIの付加は失活したα1PIが誘導する浸潤好中球を減少させる。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びにフローサイトメトリーを使用して循環している好中球数の変化及び感染が引き起こす炎症の変化についてモニターされる。
【0095】
<実施例8>
好中球減少症のためのα1PI付加療法。重症先天性好中球減少症の患者の大部分において、HLEをコードする遺伝子またはG-CSFの受容体をコードする遺伝子において変異が見出される(Horwitzら、1999年;Bensonら、2003年)。形質膜への局在を妨げるHLE変異は、周期性好中球減少症を引き起こし、形質膜への排他的局在を生じる変異は、前白血病性障害、重症先天性好中球減少症を引き起こす(Bensonら、2003年)。不活性型α1PIが好中球を動員することから(Joslinら、1992年)、不活性型α1PIの付加は、循環している好中球数を増加させる目的で治療用に使用される。患者は、39mg/kg不活性型α1PIを目標に不活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びにフローサイトメトリーを使用して循環している好中球数の変化についてモニターされる。
【0096】
<実施例9>
固体腫瘍のためのα1PI付加療法。腫瘍細胞系及び生検標本は、α1PIとメタロプロテイナーゼMMP-26の逆相関関係を示す(Liら、2004年)。エストロゲン依存性新生物におけるMMP-26の発現は、基質の破壊及び悪性の進行を促進するα1PIの失活に寄与するようである。さらに証拠は、α1PIが腫瘍細胞遊走に関与していることを示唆している(Nejjariら、2004年)。
【0097】
固体腫瘍に対する骨髄抑制化学療法の重大な副作用は、好中球減少症である。G-CSF(Filgrastim、Neupogen(登録商標)またはNeulasta(登録商標)、Amgen、Inc.)が、骨髄抑制性化学療法中の患者において好中球を動員するために現在使用されている。G-CSFとの組合せで、骨髄抑制化学療法を受けている患者におけるリンパ球系細胞を動員するために活性型α1PIを治療用に使用することは、腫瘍転移の制御に追加的恩恵を与える。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びにフローサイトメトリーを使用して循環している骨髄系細胞、リンパ球系細胞及び腫瘍細胞の数の変化についてモニターされる。
【0098】
<実施例10>
アテローム性動脈硬化症におけるα1PI付加療法。活性型α1PIの減少は、アテローム発生を促進する(Talmudら、2003年)。酸化されたα1PIは、プロテイナーゼ阻害活性を有さず、代わりにin vivoでLDLと会合する(Mashibaら、2001年)。α1PIのC末端断片は動脈硬化巣に存在している(Dichtlら、2000年)。酸化及びタンパク質分解によるα1PIの失活は、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)などの細菌による動脈内膜の不顕性の感染の結果であると考えられている(Brodalaら、2005年;Beckら、2005年)。活性型α1PIの付加は、感染組織に感染の制御及び除去の目的でリンパ系細胞を動員するために治療用に使用する。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びに開始時の内膜壁の厚み及び動脈硬化巣の形成についてモニターされる。
【0099】
<実施例11>
インスリン依存性糖尿病におけるα1PI付加療法。不顕性感染症(Bristowら、1998年;Sandlerら、1988年)及び高血糖症(Sandlerら、1988年)の存在によりインスリン依存性糖尿病において不活性型α1PIの増大が存在している。モデルネズミにおける組換えアデノ随伴ウイルス介在α1PI遺伝子治療は、インスリン自己抗体のレベル及び明白な糖尿病の頻度を減少させる(Songら、2004年)。活性型α1PIの付加は、感染組織に感染の制御及び除去の目的でリンパ系細胞を遊走させるため並びに糖尿病における自己抗体の出現率の改善のために治療用に使用される。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びに抗インスリン抗体の存在についてモニターされる。
【0100】
<実施例12>
自己免疫疾患におけるα1PI付加療法。自己免疫疾患の発症に素因を与える条件は、ホメオスタシスに必要とされるプロテイナーゼまたはプロテイナーゼインヒビターの先天的欠乏である。ヴェーゲナー肉芽腫症は、α1PIリガンド、プロテイナーゼ3への自己免疫によって生じる(Pendergraftら、2003年;Csernokら、1990年)。活性型α1PIは、ヴェーゲナー肉芽腫症の自己免疫病原性を改善する(Rooneyら、2001年)。全身性エリテマトーデスが、補体欠乏またはα1PI欠乏を有する患者において発症する場合がある(Sinicoら、2005年)。HLEG活性の上昇が、慢性関節リューマチの患者において検出される(Adeyemiら、1986年)。これらの患者は、活性型α1PIの付加から恩恵を受ける。患者は、目標血中閾値35μM活性型α1PIで活性型α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びに自己免疫性炎症についてモニターされる。
【0101】
<実施例13>
固形臓器移植におけるα1PI付加療法。プロテイナーゼカスケード系の過剰な活性化が、移植後の炎症障害及び臓器拒絶に関連している(Kirschfink、2002年)。活性型α1PIの付加は、移植後の炎症を減少させるが、しかしこの療法は、臓器拒絶を促進する可能性があるリンパ系細胞及び骨髄系細胞の両方を動員する。この副作用を克服するために、受容体との相互作用を妨げ、かつ細胞運動性の刺激を妨げるようにα1PIを遺伝子的に改変する(実施例5参照)。炎症を減少させ、かつ移植物への炎症性血液細胞及びその生成物の補充を妨げるために、遺伝子改変α1PI付加を治療用に使用する。患者は、目標血中閾値35μM遺伝子改変α1PIで遺伝子改変α1PIの投与を受け、活性型及び不活性型α1PIレベル並びに臓器拒絶のマーカーについてモニターされる。
【0102】
<実施例14>
幹細胞移植におけるにおけるα1PI付加療法。幹細胞の骨髄への及び前駆細胞の骨髄からの遊走は、HLECS、SDF-1、CXCR4(Tavor.S.ら、2005年;Lapidot及びPetit、2002年)及びα1PI(本明細書、実施例1〜3)によって制御されている。活性型α1PIは、リンパ球系細胞を動員し、不活性型α1PIは、骨髄系細胞を動員する。活性型及び改変α1PIは、幹細胞移植において幹細胞を造血組織に及び前駆細胞を造血組織から動員するために治療用に使用される。
【0103】
幹細胞移植を受けている患者は、前駆細胞を循環中に動員するためにG-CSF(Filgrastim、Neupogen(登録商標)またはNeulasta(登録商標)、Amgen、Inc.)で治療される、これらは第一に骨髄に方向付けられた前駆細胞である(Cottler-Foxら、2003年)。前駆細胞を、血液から採取し、移植前の増殖のためにin vitroで培養する。増殖及び分化は、フローサイトメトリーを使用してモニターする。循環中にリンパ系細胞を動員するために目標血中閾値200μM活性型α1PIで、活性型α1PIを治療のために投与する。動員されたリンパ系に方向付けられた前駆細胞を血液から採取し、移植前の増殖のためにin vitroで培養する。活性型α1PIで動員治療を受けている患者は、活性型及び不活性型α1PIレベルをモニターされる。採取したリンパ系に方向付けられた前駆細胞は、再注入の前にフローサイトメトリーを使用して増殖及び分化についてモニターされる。
【0104】
<実施例15>
樹状細胞に基づくワクチン製造におけるα1PI。自己幹細胞移植は、循環からの幹細胞の採取、増殖のためのin vitro細胞培養及び患者への再注入の過程を含む。この同じ原理を自己樹状細胞に基づくワクチンの製造に使用する。樹状細胞を、そこでのTリンパ球との相互作用が、選択した免疫原への免疫応答を開始するリンパ節へ選択した免疫原を送達するためのベクターとして使用する。樹状細胞に基づくワクチンは、現在、腫瘍抗原への免疫を誘導するために使用されている(Schulerら、2003年)。単球またはリンパ球細胞を癌、例えば悪性黒色腫の患者の血液から採取する。使用するサイトカインの組合せに依存して単球由来樹状細胞または形質細胞様樹状細胞のいずれかへの分化を誘導するG-CSF及びGM-CSFを含むサイトカインカクテルの存在下で、採取した細胞をin vitro培養する(Messmerら、2002年)。樹状細胞を抗原、例えば黒色腫ペプチドと混ぜ、患者に再投与する(Paluckaら、2005年;Schulerら、2003年)。患者を黒色腫特異的リンパ球の存在についてモニターする。
【0105】
活性型α1PIをリンパ系及び骨髄系血液細胞の樹状細胞へのin vitroでの分化を刺激するために使用する。樹状細胞の分化及び機能を、既に報告されている通りフローサイトメトリー及びサイトカインの分泌を使用してモニターする(Messemerら、2002年)。樹状細胞は、抗原とパルスされ、患者に再注入される。α1PI誘導樹状細胞を投与される患者は、免疫原特異的リンパ球の存在についてモニターされる。
【0106】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲を限定されない。実際は、本明細書の記載に加えて本発明の様々な変更が、前述の記載及び添付の図から当業者に明らかである。
【0107】
特許、特許出願、公開、製品の記載及び手順は、本出願全体に亘って引用され、その開示は、参考としてその全体が全ての目的について本明細書に援用される。
【0108】
(参考文献)









【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】健康な個体におけるCD4リンパ球レベルと活性型α1PI、HLECS及びSDF-1の相関関係を示すグラフである。(a)広範囲のα1PI濃度を表すように特に選択した健康な対象において、活性型α1PIの増大及びHLECS+リンパ球の減少はCD4+リンパ球の増大を予測する。CD4+リンパ球(%)=50.48+0.27*活性型α1PI(μM)-2.67*HLECS+リンパ球(%)(r2=0.937、p<0.05、n=6)。(b)一般的な集団を代表する健康な対象において活性型α1PIの増大及びHLECS+リンパ球の減少は、CD4+リンパ球の増大を予測する。CD4+リンパ球(%)=37.80+0.43*活性型α1PI(μM)-1.56*HLECS+リンパ球(%)(r2=0.803、p<0.05、n=16)。SDF-1をモデルに含む場合は、CD4+リンパ球(%)=44.46+0.54*活性型α1PI(μM)-1.65*HLECS+リンパ球(%)-0.03*SDF-1(pM)(r2=0.875、p<0.05、n=16)。(c)他は健康であった志願者の腸感染症の急性期において活性型α1PI(黒四角)及びCD4+リンパ球(黒丸)が比例して増大する。
【図2】抗gp120抗体はヒトα1PIへ結合するが、チンバンジーα1PIへは結合しないことを示すグラフである。(a)健康なヒト18名及び健康なチンパンジー20匹由来の血清中のα1PIへのモノクローナル抗体3F5の結合をELISAで測定する。抗体の結合(A490nm)を各標本中の血清α1PI濃度について標準化し、A490nm1PI(μM)として表す。3F5の結合はチンパンジーα1PIへの結合よりもヒトα1PIへの結合が8から14倍大きかった(p<0.001)。測定は3F5を使用して6回反復し、モノクローナル抗体1C1を使用して1回実施した。代表的な測定値を示す。バーは平均値を示す。(b)HIV-1感染患者38名の内11名において血清中にIgG-α1PI免疫複合体の存在が検出されたが(A490nm)、健康な個体9名、健康なチンパンジー20匹及びHIV-1接種後42ヵ月のチンパンジー2匹由来の血清中には検出されなかった。緩衝液の不適合から、凝固活性化剤を含むチューブに回収した健康な志願者由来の血清は、免疫複合体分析からは排除した。測定は少なくとも3回反復した。代表的データを示す。バーは平均値を示す。(c)HIV-1感染患者における活性型α1PI濃度(中央値17μM)は、正常者より有意に低かった(中央値26μM、p<0.001)。20匹の健康なチンパンジー由来の血清中の活性型α1PI(中央値35μM)及びHIV-1接種後のチンパンジー2匹の中央値(39μM)は、ヒト18名の血清(中央値26μM)より有意に大きかった(p<0.02)。各血清試料の8系列希釈において活性型α1PIを測定した。(d)HIV-1感染患者での不活性型α1PI濃度(中央値19μM)は、正常を上回る(中央値4μM、p<0.001)。(e)健康な個体5名由来の血清をモノクローナル抗体3F5とインキュベートした後に、活性型α1PI(12±7μM)は、培地のみとインキュベートした対照血清よりも有意に低かった(18±7μM、p<0.001)。バーは平均値を示す。
【図3】α1PI及びCD4複合HIV-1 gp120における3F5認識ドメインでの対応するコンフォメーションを示す図である。NCBI Molecular Modeling DataBase(MMDB)由来のヒトα1PI(1HP7)及びCD4複合HIV-1 gp120(1RZJ)をCn3Dソフトウェア(www.ncbi.nlm.nih.gov/Structuer/CN3D/cn3d.shtml)を使用して分析した。小さな炭化水素構造は、MMDBにおいて既に1RZJに会合しており、1HP7と会合する3個をAdobe Photoshopを使用して加えた。HIV-1 gp120を、強調した2つのαヘリックス(aa21〜39及び306〜313)と共に2つの透視図(a、b)により示す。1C1及び3F5を生じさせるために使用したgp120ペプチド免疫原(aa300〜321)は、gp120のC末端に位置し、M-17及びオリゴ糖結合NGT(aa92〜94)と共に直鎖セグメントYKVV(aa315〜318)は、コンホメーショナルエピトープの8Å以内にある。α1PI中のgp120相同ドメインもタンパク質のC末端に位置し、それをクレフトの底にある強調した逆平行βシート鎖(aa369〜389)、並びにクレフトの口を形成するα-ヘリックス(aa28〜44及び259〜277)と共に2種の透視図(c、d)により示す。チンパンジーα1PIとヒトα1PIを区別するM-385をGKVV(aa386〜389)、オリゴ糖及びオリゴ糖結合NST(aa46〜48)と共に示す。プロテイナーゼ反応部位M-358を参考のために示す。
【図4】HIV-1感染患者におけるCD4+リンパ球及び活性型α1PIレベルの相関関係を示すグラフである。1ml当たりのHIV RNAのコピー数が<500である23名の患者において、CD4+リンパ球レベルは、活性型α1PIレベルと相関する。3パラメーターのシグモイド回帰は、CD4(細胞数/μl)=1211/(1+e-(活性型α1PI(μM)-25)/11)、r2=0.927、n=23を得て、CD4+リンパ球レベルは不活性型α1PIとも相関する。2パラメーターの指数減少回帰は、CD4(細胞数/μl)=834*e-0.034不活性型α1PI(μM)、r2=0.906、n=23であった。プロテアーゼインヒビター療法を受けている患者は四角で表す。他の全ての患者を円で表す。1ml当たりのHIV RNAのコピー数が>500 RNAである患者13名においては、CD4+リンパ球レベルと活性型α1PIの間に相関関係がないことが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における疾病、障害または状態の治療における使用に適した改変α1プロテイナーゼインヒビターの同定方法であって、
(a)改変α1プロテイナーゼインヒビターを生成するステップと、
(b)対象における疾病、障害または状態の治療による効果を予測するための生物学的アッセイにおいて改変α1プロテイナーゼインヒビターの生物学的活性を測定するステップと
を含み、野生型α1プロテイナーゼインヒビターで測定される対照活性と比較した生物学的活性の変化から、改変α1プロテイナーゼインヒビターが疾病、障害または状態の治療に適するものとして同定される方法。
【請求項2】
改変α1プロテイナーゼインヒビターが部位特異的突然変異誘発、タンパク質分解またはその両方によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾病、障害または状態が、HIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生物学的アッセイが、エラスターゼ阻害アッセイ、受容体co-キャッピングアッセイ、細胞運動性アッセイ、リンパ球に方向付けられた前駆細胞の動員アッセイ、HIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイ及びHIV-1感染力促進アッセイから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
対象がヒトまたはヒト以外の動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質分解が、野生型または組換えα1プロテイナーゼインヒビターを、エラスターゼ、ストロメライシン-3、マトリックスメタロプロテイナーゼ、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ペプシン、プラスミン、ウロキナーゼ、キモトリプシン、トロンビン、CD26、補体成分C1及び補体成分C3から成る群から選択されるプロテアーゼと接触させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
部位特異的突然変異誘発が残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸を非野生型残基に変更することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
残基370〜374及び385から成る群から選択される少なくとも1個のアミノ酸が、野生型からグリシン、トレオニンまたは疎水性アミノ酸に変更される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
疎水性アミノ酸が、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン及びバリンから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸残基の変更を含む、改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項11】
改変がタンパク質分解をさらに含む、請求項10に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項12】
変更がグリシン、トレオニンまたは疎水性アミノ酸への変更である、請求項10に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項13】
疎水性アミノ酸がイソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン及びバリンから成る群から選択される、請求項12に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項14】
残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸残基における少なくとも2箇所の変更を含む、請求項10に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項15】
385番目のメチオニンがメチオニン以外のアミノ酸に変更される、請求項14に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項16】
メチオニン以外のアミノ酸が、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項15に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項17】
野生型α1プロテイナーゼインヒビターと比較して、HIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイにおける結合活性が低下し得る、請求項16に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項18】
以下の3箇所のアミノ酸の置換、Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valを含む、請求項10に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項19】
以下の3箇所のアミノ酸の置換、Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valから成る、請求項10に記載の改変ヒトα1プロテイナーゼインヒビター。
【請求項20】
治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、前記疾病、障害または状態を治療するのに有効な量の改変α1プロテイナーゼインヒビターを対象に投与するステップを含む方法。
【請求項21】
改変α1プロテイナーゼインヒビターが、部位特異的突然変異誘発、タンパク質分解またはその両方によって生成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
疾病、障害または状態が、HIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象がヒトまたはヒト以外の動物である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
改変α1プロテイナーゼインヒビターが、残基370〜374及び385から成る群から選択される野生型アミノ酸残基の変更を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
野生型385番目のメチオニンがメチオニン以外のアミノ酸に変更されており、メチオニン以外のアミノ酸がグリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びバリンから成る群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
野生型α1プロテイナーゼインヒビターと比較して、HIV-1 gp120抗体交差反応性アッセイにおける改変α1プロテイナーゼインヒビターの結合活性が低下し得る、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
改変α1プロテイナーゼインヒビターが、以下の3箇所のアミノ酸置換Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
改変α1プロテイナーゼインヒビターが、以下の3箇所のアミノ酸置換、Phe372Gly、Leu373Gly及びMet385Valから成る、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
抗レトロウイルス治療を投与するステップをさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
改変α1プロテイナーゼインヒビターの有効量が、約42mg/kgの活性型野生型α1プロテイナーゼインヒビターと等価な投与量である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
幹細胞移植が自己移植である、請求項3に記載の方法。
【請求項32】
治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、前記疾病、障害または状態を治療するのに有効な量の活性型α1プロテイナーゼインヒビターを対象に投与するステップを含み、疾病、障害または状態がHIV-1感染、細菌感染、白血病、固形腫瘍、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、臓器移植及び幹細胞移植から成る群から選択される方法。
【請求項33】
幹細胞移植が自己移植である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、前記疾病、障害または状態を治療するのに有効な量の活性型α1プロテイナーゼインヒビターを対象に投与するステップを含み、対象が異常な数のリンパ球、単球または樹状細胞を有することを特徴とする方法。
【請求項35】
治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、前記疾病、障害または状態を治療するのに有効な量の不活性型α1プロテイナーゼインヒビターを対象に投与するステップを含み、疾病、障害または状態が細菌感染、好中球減少症及び免疫抑制から成る群から選択される方法。
【請求項36】
治療を必要とする対象において疾病、障害または状態を治療する方法であって、前記疾病、障害または状態を治療するのに有効な量の不活性型α1プロテイナーゼインヒビターを対象に投与するステップを含み、対象が異常な数の顆粒球、単球、樹状細胞、好酸球または好塩基球を有することを特徴とする方法。
【請求項37】
対象がヒトまたはヒト以外の動物である、請求項32から35または36に記載の方法。
【請求項38】
HIV-1感染、微生物感染、白血病、固形腫瘍癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫、幹細胞移植または臓器移植に伴う骨髄またはリンパ系細胞の細胞数の異常に罹患している対象を治療するための方法であって、治療を必要とする対象に、前記対象を治療するのに有効な量のα1プロテイナーゼインヒビターを投与するステップを含む方法。
【請求項39】
対象がヒトまたはヒト以外の動物である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
幹細胞移植が自己移植である、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−518445(P2009−518445A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544632(P2008−544632)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/061640
【国際公開番号】WO2007/067905
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508170450)
【Fターム(参考)】