説明

連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造

【課題】高い光線透過性及び敷設容易性を保持しつつ、優れた耐候性を有する連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の連棟ハウス谷間用シートはメタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンを主ポリマーとして含有している。本発明の連棟ハウス谷間用シートは、分岐状低密度ポリエチレンを副ポリマーとして含有するとよい。本発明の連棟ハウス谷間用シートは、耐候剤を含むとよい。本発明の連棟ハウス谷間用シートは、平均厚さが500μm以上1200μm以下であるとよい。本発明の連棟ハウス谷間用シートは、少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上0.2μm以下であるとよい。本発明の敷設構造は、当該連棟ハウス谷間用シートを固定部材を用いて連棟ハウスに敷設する敷設構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の栽培用ハウス等として用いられる連棟ハウスの谷間に敷設される連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、果実、野菜、花等の促進栽培用として、骨組み用のフレームを有し、フレームをガラス板やビニール等で覆って内部の温度を高めた農業用ハウスが用いられている。かかる農業用ハウスは、ある程度の強度を確保しつつ専有面積を広くするため、一般的には、比較的長い単一棟のハウスを並列に隣接させて連棟ハウスとする場合が多い。
【0003】
このような連棟ハウスの各棟間の谷間には、通常、降雨により流れ込んでくる雨水を排出するための排水用樋が設けられている。かかる樋としては、従来から、ブリキやトタン製のものが使用されている。しかし、このような樋によると、樋によって太陽光が遮られた部分に影ができ、ハウス内に満遍なく太陽光を取り込むことができなかった。また、このような樋を設置するための取付け作業も容易ではなかった。
【0004】
かかる弊害を回避するため、現在では、エチレン−酢酸ビニルコポリマーよりなるシート材等が発案されている(実公昭62−9795号公報参照)。
【0005】
このようなシート材は、谷間の一端から他端にかけて敷設することにより、このシート材上に流れ込んでくる雨水を両端から好適に排水することができる。また、かかるシート材は、高い光線透過性を有しているので太陽光を十分に透過させることができ、ひいてはハウス内に満遍なく太陽光を取り込むことができる。さらに、かかるシート材は、谷間に容易に敷設することができる。しかしながら、このようなシート材は、3〜5年程度使用すると経年劣化により破れ等が生じる場合があり、耐候性として不十分な面があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭62−9795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、高い光線透過性、敷設容易性等の基本性能を保持しつつ、優れた耐候性を有する連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンを主ポリマーとして含有する連棟ハウス谷間用シートである。
【0009】
当該連棟ハウス谷間用シートは、谷間に展開して所定の固定具で固定することで容易に連棟ハウスに敷設することができる。また、当該連棟ハウス谷間用シートは、高い光線透過性を有しているので、太陽光を効率的にハウス内に取り込むことができる。さらに、当該連棟ハウス谷間用シートは、優れた耐候性を有しているので、経年劣化による破れ、破損等を抑制することができ、長く使用することができるとともに、取替え、補修回数等を減らすことによりかかる作業に必要とされる労力を低減させることができる。
【0010】
当該連棟ハウス谷間用シートは、分岐状低密度ポリエチレンを副ポリマーとして含有するとよい。これにより、成形性を向上させることができる。また、当該連棟ハウス谷間用シートは、柔軟性を高めることができ、復元力を向上させることができる。その結果、当該連棟ハウス谷間用シートは、釘やネジなどを挿通させて連棟ハウスに固定した場合であっても、挿通孔から水漏れを生じるおそれを低減することができる。
【0011】
当該連棟ハウス谷間用シートは、耐候剤を含んでいるとよい。これにより、耐候性をさらに向上させることができる。
【0012】
当該連棟ハウス谷間用シートは、平均厚さが500μm以上1200μm以下であるとよい。当該連棟ハウス谷間用シートの平均厚さが上記範囲より小さい場合は、シート強度、耐候性、施工性が劣る場合がある。また、当該連棟ハウス谷間用シートの平均厚さが上記範囲より大きい場合には、コストが上昇するとともに、柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0013】
当該連棟ハウス谷間用シートは、少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上0.2μm以下であるとよい。当該連棟ハウス谷間用シートは、通常、非敷設時にはロール状に巻かれた巻回体として保持され、敷設時にこの巻回体を展開させて取り付けられる。当該連棟ハウス谷間用シートは、表面粗さ(Ra)が上記範囲であることにより、巻回体を端部から剥がして展開する際の剥離性を向上させることができ、ひいては敷設容易性をさらに向上させることができる。
【0014】
当該連棟ハウス谷間用シートは、全光線透過率(Tt)が85%以上で、ヘイズ値が50%以下であるとよい。当該連棟ハウス谷間用シートは、連棟ハウスの谷間に敷設されるものであり、特に雨が降った後等には雨跡が残ることがあり、また夏場等には小さな虫の死骸等が溜まることもある。当該連棟ハウス谷間用シートは、全光線透過率(Tt)及びヘイズ値が上記範囲であることにより、太陽光を効率的にハウス内に取り込みつつも、ハウス外部から付着した汚れ等の視認性を低下することができる。
【0015】
当該連棟ハウス谷間用シートは、曲げ弾性率が、100MPa以上150MPa以下であるとよい。これにより、敷設容易性及び敷設時の安定性を向上させることができる。
【0016】
当該連棟ハウス谷間用シートは、上記直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.90g/cm3以上0.94g/cm3以下であるとよい。これにより、耐衝撃性を向上させるとともに十分な水蒸気バリア性を得ることができる。
【0017】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
当該連棟ハウス谷間用シートを固定部材を用いて連棟ハウスに敷設する連棟ハウス谷間用シート敷設構造である。
【0018】
当該敷設構造によると、連棟ハウス谷間用シートを容易に敷設することができる。当該敷設構造は、連棟ハウス谷間用シートが高い光線透過性を有しているので、太陽光を効率的にハウス内部に取り込むことができる。さらに、当該敷設構造は、連棟ハウス谷間用シートが優れた耐候性を有しているので、経年劣化による破れ、破損等を抑制することができ、この連棟ハウス谷間用シートを長く使用することができる。また、当該敷設構造によると、連棟ハウス谷間用シートの取替え、補修回数等を減らすことができ、かかる作業に必要とされる労力を低減させることができる。
【0019】
なお、本発明において、「表面粗さ(Ra)」は算術平均粗さを意味し、「表面粗さ(Ry)」は最大粗さを意味し、「表面粗さ(Rz)」は十点平均粗さを意味する。また、「表面粗さ(Ra)」、「表面粗さ(Ry)」及び「表面粗さ(Ra)」は、JIS B 0601−1994に準じた値である。「全光線透過率(Tt)」は、JIS K 7361−1に準じた値である。「ヘイズ値」は、JIS K 7136、JIS K 7361−1に準じた値である。「曲げ弾性率」は、JIS K 7171に準じた値である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の連棟ハウス谷間用シートは、連棟ハウスの谷間に容易に敷設することができる。また、本発明の連棟ハウス谷間用シートは、長く使用することができるとともに、取替え、補修回数等を減らすことができ、かかる作業に必要とされる労力を低減させることができる。さらに、本発明の連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造は、太陽光を効率的にハウス内に取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る連棟ハウス谷間用シートの敷設状態を示す模式的斜視図である。
【図2】図1の連棟ハウス谷間用シートの敷設構造を示す部分拡大図である。
【図3】実施例の連棟ハウス谷間用シートの光線透過率と時間の関係を示すグラフである。
【図4】比較例の連棟ハウス谷間用シートの光線透過率と時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0023】
図1の連棟ハウス1は、複数の農業用ハウス2を並列に隣接させて連棟ハウスとしたものである。連棟ハウス1の隣接される農業用ハウス2の谷間には、谷間用シート3が敷設されている。連棟ハウス1は、必ずしも一対の農業用ハウス2を隣接させて構成されている必要はなく、3つ又はそれ以上の農業用ハウス2を隣接させて構成されていてもよい。
【0024】
農業用ハウス2は、複数のフレーム(図示せず)が連結固定されることにより骨組みが形成さる単棟である。農業用ハウス2は、この骨組みの外部をガラス板やビニール等で覆われている。農業用ハウス2は、このようにガラス板やビニール等で覆われていることで内部の温度を一定に高めることができる。
【0025】
谷間用シート3は、連棟ハウス1の隣接される農業用ハウス2の谷間に敷設される。谷間用シート3は、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンを主ポリマーとして形成されている。この直鎖状低密度ポリエチレンは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。直鎖状低密度ポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、かつコモノマーの分布が均一であるという特徴を有している。従って、かかる直鎖状低密度ポリエチレンは、分子量分布が狭く、密度が小さい樹脂とすることができ、谷間用シート3に適度な柔軟性を与えることができる。直鎖状低密度ポリエチレンの密度としては、特に限定されないが、0.90g/cm3以上0.94g/cm3以下であることが好ましく、0.93g/cm3以上0.94g/cm3以下であることがさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度が上記範囲であることにより、耐衝撃性を向上させるとともに十分な水蒸気バリア性を得ることができる。
【0026】
谷間用シート3は、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン単体から形成されたものであってもよく、また適宜他の熱可塑性樹脂を混合して形成されたものであってもよい。
【0027】
谷間用シート3に混合される熱可塑性樹脂としては、例えば、分岐状低密度ポリプロピレン等の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメチルメタクリルレート共重合体、エチレンアクリル共重合体、各種熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。なかでも、谷間用シート3に混合される熱可塑性樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0028】
当該谷間用シート3は、分岐状低密度ポリエチレンを副ポリマーとして含有することにより、押出機等により製造する場合の成形性を高めることができる。また、当該谷間用シート3は、柔軟性を高めることができ、復元力を向上させることができる。その結果、当該谷間用シート3は、釘やネジなどを挿通させて連棟ハウス1に固定した場合であっても、挿通孔から水漏れを生じるおそれを低減することができる。
【0029】
分岐状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)(JIS K 7210準拠 190℃、21.18N)としては、特に限定されないが、成形性向上の点から、0.2g/10分以上4.5g/10分以下であることが好ましく、0.4g/10分以上3.5g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0030】
また、分岐状低密度ポリエチレンの密度としては、特に限定されないが、0.90g/cm3以上0.94g/cm3以下であることが好ましく、0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下であることがさらに好ましい。分岐状低密度ポリエチレンの密度が上記範囲であることによって、ドローダウン性、延伸性等の成形性を安定的に保持することができる。
【0031】
谷間用シート3に他の熱可塑性樹脂を混合する場合の混合比は、特に限定されないが、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンの特性を維持するためには、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンの混合比が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
谷間用シート3には、必要に応じて各種添加剤が添加されてもよい。かかる添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤や光安定剤等の安定剤、顔料や染料等の着色剤、滑剤、耐電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・防カビ剤、紫外線遮蔽剤等を挙げることができる。
【0033】
谷間用シート3は、添加剤として、安定剤や紫外線遮蔽剤等の耐候剤を含んでいることが好ましい。かかる安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を用いることができる。また、紫外線遮蔽剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を用いることができる。当該谷間用シート3は、かかる耐候剤を含有することにより、さらに耐候性を高めることができ、その結果、交換、補修等の作業を削減することができる。従って、当該谷間用シート3は、交換、補修等の作業に必要とされる労力を削減することによるコスト削減効果を得ることができる。
【0034】
谷間用シート3の平均厚さとしては、特に限定されないが、500μm以上1200μm以下であることが好ましく、700μm以上1100μm以下であることがさらに好ましい。当該谷間用シート3の平均厚さが上記範囲より小さい場合は、シート強度、耐候性、施工性が劣る場合がある。また、当該谷間用シート3の平均厚さが上記範囲より大きい場合は、コストが上昇するとともに、柔軟性が損なわれるおそれがある。一方、当該谷間用シート3の平均厚さが上記範囲である場合には、必要な強度を保つことができる。また、当該谷間用シート3は、このような平均厚さに形成されることにより、適度な柔軟性を有し、敷設容易性及び敷設後の安定性を共に向上させることができる。
【0035】
谷間用シート3の表面粗さ(Ra)としては、特に限定されないが、少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上0.2μm以下であることが好ましい。当該谷間用シート3は、通常、非敷設時にはロール状に巻かれた巻回体として保持され、敷設時にこの巻回体を展開させて取り付けられる。当該谷間用シート3は、表面粗さ(Ra)が上記範囲であることにより、巻回体を端部から剥がして展開する際の剥離性を向上させることができ、ひいては敷設容易性をさらに向上させることができる。
【0036】
谷間用シート3の表面粗さ(Rz)としては、特に限定されないが、少なくとも一方の面の表面粗さ(Rz)が、0.6以上であることが好ましい。当該谷間用シート3は、表面粗さ(Rz)が上記範囲であることによっても、巻回体を端部から剥がして展開する際の剥離性を向上させることができ、敷設容易性をさらに向上させることができる。
【0037】
谷間用シート3の全光線透過率(Tt)としては、特に限定されないが、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、谷間用シート3のヘイズ値としては、特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。当該谷間用シート3は、連棟ハウス1の谷間に敷設されるものであり、特に雨が降った後等には雨跡が残ることがあり、また夏場等には小さな虫の死骸等が溜まることもある。当該谷間用シート3は、全光線透過率(Tt)及びヘイズ値が上記範囲であることにより、太陽光を効率的にハウス内に取り込みつつも、ハウス外部から付着した汚れ等の視認性を低下することができる。
【0038】
谷間用シート3の曲げ弾性率としては、特に限定されないが、100MPa以上150MPa以下であることが好ましく、110MPa以上140MPa以下であることがさらに好ましい。当該谷間用シート3は、曲げ弾性率が上記範囲であることにより敷設容易性及び敷設時の安定性を向上させることができる。
【0039】
当該谷間用シート3は、谷間に展開して所定の固定具で連棟ハウス1に固定することにより容易に敷設することができる。また、当該谷間用シート3は、高い光線透過性を有しているので、太陽光を効率的にハウス内に取り込むことができる。さらに、当該谷間用シート3は、優れた耐候性を有しているので、経年劣化による破れ、破損等を抑制することができ、長く使用することができる。従って、当該谷間用シート3は、取替え、補修回数等を減らすことができ、かかる作業に必要とされる労力を低減させることができる。
【0040】
次に、谷間用シート3の製造方法について説明する。谷間用シート3の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンとを押出機に供給する工程及びかかる直鎖状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンとを溶融混練して押出機から押し出す工程を経て製造する空冷インフレーション成型法によることができる。
【0041】
続いて、図2を参照して、谷間用シート3を連棟ハウス1に敷設する手順について説明する。
【0042】
まず、谷間用シート3を連棟ハウス1に敷設する際に用いられる部材について説明する。
【0043】
アーチ用フレーム4は、連棟ハウス1を構成する各単棟である農業用ハウス2の骨組みとして用いられるパイプ材である。アーチ用フレーム4は、農業用ハウス2の屋根の軒棟方向に掛け渡され、軒側端部において接続フレーム5に嵌合される。
【0044】
接続フレーム5は、底部が直線形状に形成された略U状のパイプ材である。接続フレーム5は、隣接する農業用ハウス2のアーチ用フレーム4に両端を嵌合することにより、これらのアーチ用フレーム4を連結する。
【0045】
台座6は、断面略コ字状の板状部材である。台座6は、接続フレーム5の底部上に、谷間の稜線方向と平行に設置される。台座6の長さは、谷間の長さとほぼ同程度とされている。
【0046】
金具7は、略U字状の板状部材である。金具7は、台座6の上面側に配設される。金具7は、台座6の長手方向に略等間隔で複数固定される。台座6及び金具7の固定は、台座6が有する挿通孔(図示せず)と金具7が有する挿通孔(図示せず)とを重ね合わせた状態で、これらの挿通孔に固定部材(ボルト)8を挿通し、さらに固定部材9の先端からナットを螺入して固定部材9と螺合させることによって行われる。
【0047】
一対の支持パイプ8は、金具7の上面に配設される。一対の支持パイプ8は、谷間の稜線方向と平行に配設される。一対の支持パイプ8の長さは、谷間の長さとほぼ同程度とされている。一対の支持パイプ8は、谷間の一端から他端にかけて、金具7に略等間隔で固定される。
【0048】
谷間用シート3を連棟ハウス1に敷設する手順としては、まず、台座6に金具7が固定されていない状態で、谷間用シート3を台座6の上面に谷間の稜線方向と平行になるように展開する。次に、金具7を谷間用シート3の上に、台座6の長手方向と金具7の長手方向とが垂直になるように重ね合わせる。そして、固定部材9を金具7の挿通孔、谷間用シート3の挿通孔(図示せず)及び台座6の挿通孔に挿通させ、さらに固定部材9の先端(下方先端)からナットを螺入して固定部材9と螺合させる。また、金具7、谷間用シート3及びアーチ用フレーム4をこの順で重ね合わせ、固定部材9を金具7の端部付近に設けられる挿通孔(図示せず)、谷間用シート3の挿通孔(図示せず)及びアーチ用フレーム4の挿通孔(図示せず)に挿通させ、さらに固定部材9の先端(下方先端)からナットを螺入して固定部材9と螺合させる。そして最後に、金具7の上面に一対の支持パイプ8を配設する。
【0049】
なお、アーチ用フレーム4、台座6及び金具7の挿通孔については、通常、予め設けられているが、谷間用シート3の挿通孔については、予め設けられていてもよく、また固定部材9を挿通させる際に穿たれてもよい。
【0050】
当該谷間用シート3は、固定部材9を挿通させ、さらに固定部材9とアーチ用フレーム4及び固定部材9と台座6とを連結することにより連棟ハウス1に敷設される。
【0051】
従って、このような敷設構造によると、谷間用シート3を容易に敷設することができる。当該敷設構造によると、谷間用シート3が高い光線透過性を有しているので、太陽光を効率的にハウス内部に取り込むことができる。さらに、当該敷設構造によると、谷間用シート3が優れた耐候性を有しているので、経年劣化による破れ、破損等を抑制することができ、谷間用シート3を長く使用することができる。また、当該敷設構造によると、谷間用シート3の取替え、補修回数等を減らすことができ、かかる作業に必要とされる労力を低減させることができる。加えて、谷間シート3が副ポリマーとして分岐状低密度ポリエチレンを有している場合、当該敷設構造によると、挿通孔から水漏れを生じるおそれを低減することができる。
【0052】
なお、本発明の連棟ハウス谷間用シート及び敷設構造は、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、当該連棟ハウス谷間用シートは、必ずしも農業用ハウス用として用いられる必要はない。また、当該連棟ハウス谷間用シートは、必ずしも単層シートとして形成される必要はなく、多層構造体として形成されてもよい。当該連棟ハウス谷間用シートが多層構造体として形成される場合、メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンを主ポリマーとする層の他、エチレン−酢酸ビニルコポリマーを主ポリマーとする層等を有していてもよい。
【0053】
本発明の敷設構造は、必ずしも連棟ハウス谷間用シートを台座及び金具によって挟持する必要はなく、直接連棟ハウス谷間用シートに釘やネジ等を挿入して連棟ハウスに敷設してもよい。また、本発明の敷設構造は、必ずしも連棟ハウス谷間用シートに所定の挿通孔を設けたうえで固定するものでなくてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0055】
[実施例]
主ポリマーとしてメタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製「エボリュー SP0540」)75部に対して、副ポリマーとして分岐状低密度ポリエチレン(住友化学(株)製「スミカセン F200」)25部、ヒンダードアミン系光安定剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる耐候剤(大日精化工業(株)製「MB耐候剤 PE−H1−6401(D)N」5部を添加して押出機に供給し、溶融混練して押出しを行うことで谷間用シートを得た。
【0056】
[比較例]
ポリマーとしてエチレン−酢酸ビニルコポリマー(日本ユニカー(株)「NUCコポリマー FVZH−073」)を使用した以外は実施例と同様にして谷間用シートを得た。
【0057】
得られた実施例及び比較例の谷間用シートの引張強度を測定評価した。その結果を下記表1に示す。引張強度の測定は、サンシャインW−O−M(BP温度63℃、スプレーサイクル12/60分)にて照射後の引張強度を測定することにより行った。また、引張強度試験は、JIS K6781に準拠して行った。なお、表1において「h」は「時間」を意味し、具体的には、谷間用シート製造後の経過時間を意味する。
【0058】
【表1】

【0059】
上記表1に示すように、比較例の谷間用シートの引張強度は、0hを基準とした場合、破断(Mpa)、伸び(%)及び伸び残率(%)ともに、比較的顕著に低下している。一方、実施例の谷間用シートの引張強度については、時間の経過とともに低下するという明確な兆候は見られなかった。このことからも、実施例の谷間用シートが優れた耐候性を備えていることが解る。
【0060】
また、図3及び図4に示すように、実施例及び比較例の谷間用シートは、ともに高い光線透過性を有していることが解る。また、実施例及び比較例の谷間用シートは、高い光線透過性を有するとともに、優れた紫外線遮蔽性を有していることが解る。なお、図3及び図4における横軸は波長を示し、縦軸は光線透過率を示している。また、図3及び図4における「h」は「時間」を意味し、具体的には、谷間用シート製造後の経過時間を意味する。
【0061】
実施例及び比較例の谷間用シートの表面粗さ及び濡れ性を測定評価した結果を下記表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
上記表2に示すように、実施例の谷間用シートは、比較例の谷間用シートと比べて表面粗さが粗くなっている。このことから実施例の谷間用シートは、比較例の谷間用シートよりもロール状に巻かれた巻回体から展開する場合の展開容易性が向上されていることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明の連棟ハウス谷間用シートは、敷設容易性、高い光線透過性及び優れた耐候性を有しており、例えば、農作物の栽培用ハウス等として用いられる連棟ハウスの谷間に設置するのに適している。
【符号の説明】
【0065】
1 連棟ハウス
2 農業用ハウス
3 谷間用シート
4 アーチ用フレーム
5 接続フレーム
6 台座
7 金具
8 支持パイプ
9 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒によって重合された直鎖状低密度ポリエチレンを主ポリマーとして含有する連棟ハウス谷間用シート。
【請求項2】
分岐状低密度ポリエチレンを副ポリマーとして含有する請求項1に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項3】
耐候剤を含む請求項1又は請求項2に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項4】
平均厚さが500μm以上1200μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項5】
少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上0.2μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項6】
全光線透過率(Tt)が85%以上で、ヘイズ値が50%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項7】
曲げ弾性率が100MPa以上150MPa以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項8】
上記直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.90g/cm3以上0.94g/cm3以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の連棟ハウス谷間用シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の連棟ハウス谷間用シートを固定部材を用いて連棟ハウスに敷設する連棟ハウス谷間用シート敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217425(P2012−217425A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88700(P2011−88700)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】