説明

連結クリップ、嵌合用構造体及び隅部構造

【課題】引き出しや扉の隅部に装着される化粧用の嵌合用樹脂体に対して使用される連結クリップであって、隅部に対して確実に装着できるとともに、作業時間(組み込み)の短縮化が図れる構造を得る。
【課題手段】金属片を折曲することで正面基部11とその両側にそれぞれ拡開された側面部12とが一体的に形成された連結クリップ10であって、前記正面基部11及び両側側面部12,12を連続するように開口された一対の切り欠き部13を形成し、前記正面基部11の中央において前記切り欠き部13,13間を開口させる孔部14を形成し、前記正面基部11の側面部12が形成されていない側の一方面に対して折曲して係止片15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等に使用されるステンレス素材で形成される引き出しや扉の隅部に装着される化粧用の嵌合用樹脂体に対して使用される連結クリップ、これら嵌合用樹脂体及び連結クリップで構成される嵌合用構造体、及び、この嵌合用構造体を使用した隅部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス素材で形成された引き出し部は、例えば図7に示すように、把持部101が装着された前面蓋体100を有して構成されているが、この前面蓋体100は、図8及び図9に示されるように、直角を有する平面板110の前記直角部を挟んだ各辺111が折曲されて構成される表蓋部120に裏蓋部130を装着して形成されている。
そして、前面蓋体100内には、強度を出すために樹脂製枠体140が配置される。また、表蓋部120の隅部は、直角部を挟んだ各辺111が折曲されるという構造上隙間が生じるので、この部分には化粧用部材200が装着されている。
【0003】
すなわち、化粧用部材200は、図10に示すような中央に溝部202が形成された樹脂製のコーナー体201と、図11に示すような金属色で塗布された樹脂から成り前記溝部202に嵌合可能な形状のL字型の化粧片210とを使用して構成され、表蓋部120の隅部内の空間において両者が嵌合して装着されることで、化粧片210の棒状部211が表蓋部120の隅部の隙間(四隅)に外側から見える状態で配置される(図8)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造によれば、コーナー体201及び化粧片210をそれぞれ装着するときは、先ず、先端がコ字型(又はU字型)に折曲された各片111の折り返し辺111aにコーナー体201の溝部203を表蓋部120の内側からはめ込み、上に押し上げた状態(図12(a)(b))を維持し、この状態で表蓋部120の外側から化粧片210をコーナー体201の溝部202に嵌合するようにスライドさせて装着する(図12(c)(d))。
装着後、コーナー体201は化粧片210に押し上げられた状態で固定される(図12(e)(f))。
その後、樹脂製枠体140を設置して裏蓋部130を装着するという手順が必要であり(図8)、作業が煩雑且つ裏蓋部130の装着後には化粧片210が装着できないので作業工程の自由度がないという欠点があった。
【0005】
また、樹脂製枠体140には、四隅にコーナー体201を装着させる空間が必要であるため、図13に示すように、一対の樹脂製枠体140の枠体隅部141を切断しておく必要があり、煩雑であるという問題点もあった。
更に、作業者の化粧部材210の表蓋部120への押し込み不足や経時変化により表蓋部120と化粧部材210との間に隙間が生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、表蓋部の隅部に対して確実に装着できるとともに、作業時間(組み込み)の短縮化が図れる隅部構造及び隅部に装着される嵌合用構造体、更には嵌合用構造体に使用される連結クリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、金属片を折曲することで正面基部11とその両側にそれぞれ拡開された側面部12とが一体的に形成された連結クリップ10であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記正面基部11及び両側側面部12,12を連続するように開口された一対の切り欠き部13を形成する。
前記正面基部11の中央において前記切り欠き部13,13間を開口させる孔部14を形成する。
前記正面基部11の側面部12が形成されていない側の一方面に対して折曲して係止片15を形成する。
【0008】
請求項2の発明は、平面板110の直角部を挟んだ各辺111が折曲されることで前記直角部に生じた隙間を無くすために装着する嵌合用構造体30であって、前記隙間に嵌合する形状に樹脂で形成された棒状部21と、前記隙間に嵌合した際に棒状部21の内側となる部分に形成された方形凸部23と、該方形凸部23に形成された突起部27とを具備した嵌合用樹脂体20に対し、請求項1の連結クリップ10の各側面部12が前記方形凸部23を挟むとともに、前記突起部27に前記連結クリップ10の孔部14が嵌合することで連結クリップ10が装着されたことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、表蓋部120と裏蓋部130から成り前記表蓋部120を構成する平面板110の直角部を挟んだ各辺111が折曲されることで前記直角部に生じた隙間を無くすために嵌合用構造体30が装着される隅部構造であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記嵌合用構造体30は、前記隙間に嵌合する形状に樹脂で形成された棒状部21と、前記隙間に嵌合した際に棒状部21の内側となる部分に形成された方形凸部23と、該方形凸部23に形成された突起部27とを具備する嵌合用樹脂体20に対して、請求項1の連結クリップ10の各側面部12が前記方形凸部23を挟むとともに、前記突起部27に前記連結クリップ10の孔部14が嵌合することで連結クリップ10を装着して構成されている。
そして、前記嵌合用構造体30の連結クリップ10の係止部15が前記裏蓋部130の折曲辺131の先端部に当接して位置するように前記隙間に固定して成る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、嵌合用樹脂体20を形成する棒状部21、方形凸部23、突起部27に対して、方形凸部23を連結クリップ10の各側面部12で挟むとともに、突起部27に連結クリップ10の孔部14が嵌合することで棒状部21に対して連結クリップ10が装着された嵌合用構造体30が構成される。
【0011】
そして、この嵌合用構造体30を表蓋部120と裏蓋部130で構成される前面蓋体100の直角部に外側から装着し、連結クリップ10の各側面部12の先端部が各辺111に当接することで直角部(隅部)に連結クリップ10を確実に固定することができ、直角部(隅部)に棒状部21の表面(円弧面22)が現れるように嵌合用構造体30を嵌合させて隙間を塞ぐことができる。
【0012】
また、連結クリップ10の係止片15が裏蓋部130の折曲辺131の先端に当接するように位置させることで嵌合用構造体30の上下のズレを吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態の一例としての連結クリップについて、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は連結クリップ10の斜視説明図、図2(a)(b)(c)はそれぞれ連結クリップ10の正面説明図、側面説明図、裏面説明図を示している。
【0014】
実施の形態の一例に係る連結クリップ10は、金属片を折曲することで正面基部11とその両側にそれぞれ拡開された側面部12,12とが一体的に形成されている。各側面部12は、正面基部11に対して110度程度の角度をもって折曲されている。
正面基部11及び両側側面部12,12には、それぞれを連続するように互に平行に位置する一対の切り欠き部13,13が開口されている。そして、正面基部11には、その中央において前記切り欠き線13,13間を開口させる方形状の孔部14が形成されている。
【0015】
正面基部11の側面部12が形成されていない側の一方面(図1及び図2における下側)には、正面基部11に対して側面部12と同じ側に折曲する方形状の係止片15が形成されている。正面基部11に対する係止片15の折曲角度は約45度となっている。
【0016】
次に、上述した連結クリップ10が装着される嵌合用樹脂体20について、図3を参照しながら説明する。
嵌合用樹脂体20は、図7に示したような蓋体部120の隅部の隙間を埋めるためのものであり、全体が金属色で塗布され、隅部に装着される際に表面側に現れる棒状部21と、棒状部21の内側となる部分に前記隙間に埋め込まれるような形状に形成された方形凸部23と、方形凸部23の上面に形成された方形状の突起部27とを具備して構成されている。
突起部27の幅は連結クリップ10の孔部14の横幅L1より広く形成されるとともに、その縦幅は一対の切り欠き部13の外側端同士の距離L2より僅かに狭く形成されている。
【0017】
棒状部21は、図3(c)に示されるように、蓋体部120の隅部に装着した際に外側に露出する円弧面22を有している。また、方形凸部は23、棒状部21の上方位置に形成される。方形凸部23の側面最上部の四隅には、突起部側に連結クリップの傾き(片寄り)防止となる支持部25がそれぞれ形成されている。
突起部27は、その頂上側が幅狭になるように周囲にそれぞれテーパー面28が形成され、下側の側面位置に溝部29が形成されている。
【0018】
続いて、上述の嵌合用樹脂体20に連結クリップ10が装着されて隅部構造に使用される嵌合用構造体30が形成された状態について、図4を参照しながら説明する。
連結クリップ10の係止片15が嵌合用樹脂体20の内側に位置する状態で、嵌合用樹脂体20の突起部27に連結クリップ10の孔部14を挿入する。孔部14に対して両側に位置する支持片12は、突起部27のテーパー面28で押し拡がって後に溝部29に嵌ることで、連結クリップ10が方形凸部23に固定される。この時、連結クリップ10の各側面部12は、図4(c)に示されるように、その内側を支持部25に当接して側面部12の裏側と方形凸部23の側面との間に左右バランス良く空間が形成される。
【0019】
次に、嵌合用樹脂体20に連結クリップ10を装着した化粧用の嵌合用構造体30を前面蓋体100に装着して隅部構造を得る手順について、図5(a)(b)(c)を参照しながら説明する。
前面蓋体は、図7及び図8に示したものと同様に、表蓋部120と裏蓋部130とから構成されているが、上述の嵌合用構造体30を使用する場合、まず表蓋部120の隅部外側より嵌合用構造体30を挿入する(図5(a))。
挿入に際しては、連結クリップ10の係止片15が折り返し辺111a側(図5における上側)にくる状態で、表蓋部120の隅部の隙間に対して突起部27側から嵌合用構造体30を嵌め込む。
【0020】
嵌め込むに際しては、連結クリップ10の両側面部12の支持部25より先方に位置する部分が隙間部により縮められ(図5(b)の12aの状態)、棒状部21の内側直角部21aが表蓋部120の隙間部の直角部分に当接した段階で両側面部12は隙間部を完全に乗り越える。
その後、両側面部12は隙間部幅より拡がって表蓋部120の内壁120aに当ること(図5(c)の状態)で抜け防止構造となるとともに、左右方向のガタつきを防止する。
【0021】
その後、樹脂製枠体140を配置した状態で裏蓋部130を嵌合させる。
この時、連結クリップ10の係止部15が裏蓋部130の折曲辺131の先端で押圧され、係止片15の折曲角度を変形(係止片15aの状態から係止片15bの状態に変化する)させて確実に固定され、上下方向のガタつきを防止する。
【0022】
このとき枠体140は、図13に示した従来構造と異なり、表蓋部120の隅部に空間を必要としないので、枠体隅部141を切断したものを使用する必要がない。
【0023】
上記した前面蓋体100における隅部構造であると、従来構造に比較して以下のような効果を奏することができる。
従来構造であると、コーナー体201の溝に表蓋部120をあてがいながら化粧片210を装着し、四隅に装着後、樹脂製枠体140を配置して裏蓋部130を嵌合させる手順が必要であり、組み込みにくく作業時間を要したが、上記構造では外側から嵌合用構造体30を挿入するという単純な作業で済ませることができ、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0024】
また、従来構造であると裏蓋部130を装着した後に隅部の隙間を埋めることができないが、上記構造では裏蓋部130装着後に埋め込み作業を行うことができ、作業手順の自由度が向上する。
【0025】
更に、上記構造では連結クリップ10の側面部12及び係止片15が隅部構造においてばね作用を発揮しているため、組み込み後の据付がよくなり、装着時に際して節度感を有することができる。
【0026】
なお、通常の使用状態では嵌合用構造体30が容易に蓋体部120から外れることはないが、廃棄を行うときは表蓋部120と裏蓋部130分離後、蓋体部120の内部より連結クリップ10の両側面部12を縮めることで取外すことが可能であり、嵌合用構造体30自身も嵌合用樹脂体20に嵌っている連結クリップ10の支持片12を広げることで連結クリップ10と嵌合用樹脂体20を分離させることができるため、素材(材料)別に分別することが容易になっており、リサイクル性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施の形態の一例としての連結クリップを示す斜視説明図である。
【図2】連結クリップの一例を示すもので、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図、(c)は底面説明図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の一例としての化粧用隅部構造に使用される樹脂体を示すもので、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図、(c)は底面説明図である。
【図4】図3の樹脂体に図1の連結クリップを装着した状態を示すもので、(a)は正面説明図、(b)は側面説明図、(c)は底面説明図である。
【図5】(a)(b)(c)は、本発明に係る実施の形態の一例としての化粧用隅部構造を得る手順を示す一部平面説明図である。
【図6】図5(c)に対応する化粧用隅部構造の一部側面説明図である。
【図7】前面蓋体から構成される引き出し部の斜視説明図である
【図8】前面蓋体の内部構成を示す斜視説明図である。
【図9】前面蓋体の一部断面説明図である。
【図10】(a)乃至(e)は、従来の蓋体隅部に使用されているコーナ−体を示すもので、(a)は側面説明図、(b)は平面説明図、(c)は正面説明図、(d)は裏面説明図、(e)は(a)においてA方向からの観た場合の側面説明図である。
【図11】(a)及び(b)は従来の蓋体隅部に使用されている化粧片を示すもので、(a)は平面説明図、(b)は側面説明図である。
【図12】(a)(b)(c)は、従来例の蓋体角部における化粧構造を得る手順を示す一部平面説明図である。
【図13】表蓋体に装着される枠体を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 連結クリップ
11 正面基部
12 側面部
13 切り欠き部
14 孔部
15 係止片
20 嵌合用樹脂体
21 棒状部
22 円弧面
23 方形凸部
25 支持部
27 突起部
28 テーパー面
29 溝部
30 嵌合用構造体
100 前面蓋体
111 辺
111a 折り返し辺
120 表蓋部
130 裏蓋部
131 折曲辺
140 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属片を折曲することで正面基部とその両側にそれぞれ拡開された側面部とが一体的に形成された連結クリップであって、
前記正面基部及び両側側面部を連続するように開口された一対の切り欠き部と、
前記正面基部の中央において前記切り欠き線間を開口させる孔部と、
前記正面基部の側面部が形成されていない側の一方面に対して折曲して形成された係止片と
を具備することを特徴とする連結クリップ。
【請求項2】
平面板の直角部を挟んだ各辺が折曲されることで前記直角部に生じた隙間を無くすために装着する嵌合用構造体であって、
前記隙間に嵌合する形状に樹脂で形成された棒状部と、
前記隙間に嵌合した際に棒状部の内側となる部分に形成された方形凸部と、
該方形凸部に形成された突起部とを具備した嵌合用樹脂体に対し、
請求項1の連結クリップの各側面部が前記方形凸部を挟むとともに、前記突起部に前記連結クリップの孔部が嵌合することで連結クリップが装着された
ことを特徴とする嵌合用構造体。
【請求項3】
表蓋部と裏蓋部から成り前記表蓋部を構成する平面板の直角部を挟んだ各辺が折曲されることで前記直角部に生じた隙間を無くすために嵌合用構造体が装着される隅部構造であって、
前記嵌合用構造体は、
前記隙間に嵌合する形状に樹脂で形成された棒状部と、前記隙間に嵌合した際に棒状部の内側となる部分に形成された方形凸部と、該方形凸部に形成された突起部とを具備する嵌合用樹脂体に対して、
請求項1の連結クリップの各側面部が前記方形凸部を挟むとともに、前記突起部に前記連結クリップの孔部が嵌合することで連結クリップを装着して構成される一方、
前記嵌合用構造体の連結クリップの係止部が前記表蓋部若しくは裏蓋部の一部分に当接して位置するように前記隙間に固定して成ることを特徴とする隅部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−207736(P2006−207736A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22264(P2005−22264)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(591042171)株式会社オチアイ (8)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【出願人】(000222990)東洋物産株式会社 (11)
【Fターム(参考)】