説明

連結具の変位量表示装置

【課題】連結部同士が相対離隔変位が最大許容変位量を超えたか否かを、確実に表示することができる連結具の連結具変位量検出装置を提供する。
【解決手段】連結具変位量検出装置10を、ゴム体13の表面に貼り付けられ、もしくは、一部を埋設して取り付けられた低伸長性紐状体1で構成し、この低伸長性紐状体1を、連結具20の初期状態においてチェーン12の長さ方向に沿ってU字状に延在させるとともに、連結部11A相互間の離隔距離が初期状態に対して前記最大許容変位量以下の予め定められた量だけ相対離隔変位したとき破断するよう配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端部分を含む平面上に、概ねU字状に張り渡されたチェーンの長さ方向中央部分をゴム体中に埋設固定してなり、これらの両端部分のそれぞれに設けられた連結部で一対の連結対象物のそれぞれを連結し、それらの連結部の、相対接近変位と最大許容変位量以下の相対離隔変位とを許容する条件下でそれらの連結対象を連結する連結具の、前記連結部相互の相対変位量を検出する装置に関し、特に、この相対変形量が、予め定められた上限値を超えたが否かを、正確に表示できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
橋等の固定構造物を構成する橋脚、橋台、橋桁等は、いわゆるゴム支承やゴム被覆チェーン等の連結構造を使用して、地盤にあるいは固定構造物同士が連結される。このような連結構造を採用することで、例えば、地震等が発生した場合でも、この相対移動のエネルギーをゴム(弾性部材)の変形によって吸収し、固定構造物の落下等を防止することができる。
【0003】
ところで、このように弾性変形する連結具では、例えば大地震の後などには、大きな変形を受けているにも関わらずその形状が変形前のものに復帰して形状等の変化が認められないため、どの程度変形したかを外観で認識することが困難だった。したがって、例えば、個々の連結構造の変形量が許容範囲内であったのか否か(換言すれば、許容範囲を超えた変形をしていたのか否か)を簡単に知ることが難しく、個々の連結構造の交換が必要であるか否かの判断も難しかった。
【0004】
このような問題に対する対応策として、図1に示すように、連結具20の両端に配置された、連結対象物との連結部21、22のそれぞれに設けられた調整リングを固定点23a、23bとして、固定点の一方23aに固定された線状の可撓性部材91と、固定点の他方23bに取り付けられ、可撓性部材91を部分的に保持可能な保持部材92と、これらの固定点23a、23bの相互の離隔変位による可撓性部材91の保持部材92に対する相対移動は許容し、固定点23a、23bの相互の接近変位による可撓性部材91の保持部材82に対する相対移動を制限する制限手段とを具えたものが提案されていて(特許文献1参照。)、例えば、このような可撓性部材91として有機繊維よりなるロープを用い、保持部材92としては、ロープを通過させる穴を有する金具を用い、ロープを、その自重だけでは穴に対して移動できないようロープの外径が穴の内径よりわずか太くしておくことにより、初期状態として図1(a)に示すようにセットされた固定点23a、23bが、相互に離隔変位した場合には、ロープはほとんど伸びないので、図1(b)に示すようにロープと穴とは相対変位し、そのあと、固定点23a、23bが相互に接近変位した場合には、図1(c)に示すように、ロープがたるみ、穴には、ロープの自重だけの引き抜き力しかかからないため、この相対変位を制限することができるとしている。
【特許文献1】特開2002−267404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可撓性部材91であるロープは保持部材92の穴に摩擦力によって保持されているだけであり、この摩擦力が減少すれば保持部材92は可撓性部材91を、これらが離隔変位する以外の期間において保持することがむつかしく、また、この摩擦力が増加すれば、これらが離隔変位したとき、ロープが穴内で滑ることができず、ロープが切れてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、連結部同士が相対離隔変位が最大許容変位量を超えたか否かを、確実に表示することができる連結具の連結具変位量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、両端部分を含む平面上に、概ねU字状に張り渡されたチェーンの長さ方向中央部分をゴム体中に埋設固定してなり、これらの両端部分のそれぞれに設けられた連結部で一対の連結対象物のそれぞれを連結し、それらの連結部の、相対接近変位と最大許容変位量以下の相対離隔変位とを許容する条件下でそれらの連結対象を連結する連結具の、前記連結部相互の相対変位量を検出する装置において、
低伸長性紐状体を、前記ゴム体の表面に貼り付け、もしくは、その一部を前記ゴム体中に埋設してなり、この低伸長性紐状体を、前記連結具の初期状態において前記チェーンの長さ方向に沿ってU字状に延在するよう配置するとともに、前記連結部相互間の離隔距離が初期状態に対して前記最大許容変位量以下の予め定められた量を越えて相対離隔変位したとき破断するよう構成してなる連結具変位量検出装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載したところにおいて、前記ゴム体を、前記チェーンの中心線を含む平面に直交する平面をチェーン中心線よりU字の外側に有するように構成し、前記非伸張性紐状体1をこの平面に貼り付けてなる請求項1に記載の連結具変位量検出装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載したところにおいて、前記非伸張性紐状体を、前記チェーンの中心線よりU字の内側に配置してなる連結具変位量検出装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載したところにおいて、互いに破断伸度の異なる複数本の非伸張性紐状体を、並列配置してなる連結具変位量検出装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載したところにおいて、前記非伸張性紐状体を導電性材料で構成してなる連結具変位量検出装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、低伸長性紐状体を、前記ゴム体の表面に貼り付け、もしくは、その一部を前記ゴム体中に埋設してなり、この低伸長性紐状体を、前記連結具の初期状態において前記チェーンの長さ方向に沿ってU字状に延在するよう配置するとともに、前記連結部相互間の離隔距離が初期状態に対して前記最大許容変位量以下の予め定められた量を越えて相対離隔変位したとき破断するよう構成したので、両連結部の相対離隔変位量が最大許容変位量を超えたときには、低伸長性紐状体は破断してしまい、連結具が仮に元の初期状態に復元嫉妬しても、低伸長性紐状体が破断していることを目視で知ることができ、よって、両連結部の相対離隔変位量が最大許容変位量を超えたか否かをチェックすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記ゴム体を、前記チェーンの中心線を含む平面に直交する平面をチェーン中心線よりU字の外側に有するように構成し、前記非伸張性紐状体1をこの平面に貼り付けたので、詳細を後述するように、ゴム体の変形量を忠実に非伸張性紐状体の変形量として反映させることができ、連結具の異常変形を確実に検出することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記非伸張性紐状体を、前記チェーンの中心線よりU字の内側に配置したので、破断伸度の大きな材料を用いることができ、紐状体の選択の幅を広げることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、互いに破断伸度の異なる複数本の非伸張性紐状体を、並列配置したので、詳細を後述するように、連結具の変形の度合いをより定量的に表示することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記非伸張性紐状体を導電性材料で構成したので、電気抵抗の有無で、前記非伸張性紐状体が切断したか否かをチェックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について図を参照して説明する。図2は、この実施形態の連結具変位量検出装置を、初期状態の連結具へ取り付けた状態において示す正面図、図3は図2のA−A矢視に対応する断面図、また、図4は、図3のB−B矢視に対応する断面図であり、連結具20は、例えば橋桁と橋脚とよりなる一対の連結対象を連結するものであり、その両端部分を含む平面上に、概ねU字状に張り渡されたチェーン12の長さ方向中央部分をその長さ方向に沿ってゴム体13中に埋設固定させて構成されている。チェーン12は複数のリング11をリンクさせて構成され、両端のリング11aは、連結具20の両端部分を構成するとともに、これらの両端リング11Aに、それぞれ連結対象を連結部として機能する。
【0018】
そして、連結部をなすこれらの両端リング11aの相互間の距離xは、連携具10の初期状態においては、x=x0であるが、地震等により、連結対象相互の位置関係が変化することにより変化するが、このとき、チェーン12およびその中央部分を埋設するゴム体13の形状が変化することにより、連結対象相互の位置関係の変化およびこれらに作用するエネルギーを吸収することができるよう構成されている。
【0019】
しかしながら、その吸収量には当然ながら限度があり、連結部をなす一対の両端リング11a相互の相対接近変位と最大許容変位量dmax(=xmax−x0)以下の相対離隔変位とだけが許容されるよう構成されていて、両端リング11aの相互間の距離xがxmaxを超えると、ゴム体13が正常に機能しなくなる可能性が高くなり、そのため、両端リング11aの相互間の距離xが、一旦、xmaxを超えたあと、xmax以内に減少したとしたも、一時的にでも距離xがxmaxを超えた場合にはそのことを表示して取替の必要性を表す装置が必要であり、そのために、連結具変位量検出装置10として機能する非伸張性紐状体1が、初期状態においてU字状をなすゴム体13の表面に貼り付けられている。
【0020】
非伸張性紐状体1としては、有機繊維、スチールワイヤやコードを用いることができ、その太さは、例えば、0.5〜2mm程度とするのが好ましい。
【0021】
ここで、U字状をなすゴム体13の外表面を、図4に示すように、チェーン12の中心線Cを含む平面pluに直交する平面plxをチェーン中心線CよりU字の外側に有するように構成し、非伸張性紐状体1をこの面に貼り付けられる。非伸張性紐状体1が貼り付けられているゴム体部分の総長さは、yは、初期状態においてy0であり、このとき、非伸張性紐状体1の総長さもy0である。
【0022】
図5は、連結具20を、その連結部が相互に離隔変位してその離隔距離xがxmaxが超えた状態において示す平面図であり、初期状態においてU字状をしていたチェーン12は、図5に示した状態においては、直線に近い状態に形状変化するとともに、チェーン12を構成する各リング11は、相互に離隔するよう移動する。このとき、ゴム体の表面に貼り付けられた非伸張性紐状体1も、ゴム体の変形に合わせて変形するが、非伸張性紐状体1の破断時における伸度をm%とすると、連結具20が変形して距離xがxmaxになった状態において、非伸張性紐状体1が貼り付けられているゴム体部分の総長さがその初期状態におけるy=y0から、ymax=(y0・m)/100+y0となるよう設定されている。
【0023】
非伸張性紐状体1は、これがU字に沿って貼り付けられていさえすればどの位置に配置してもよいが、図4に示すように、ゴム体13のU字の外側に位置する、チェーン12の中心線Cを含む平面pluに直交する平面plxに貼り付けるのが好ましく、この場合、仮に、ゴム体13と非伸張性紐状体1とが部分的に剥離したとしても、非伸張性紐状体1は、常にゴム体13よりU字の外側に接触しているので、ゴム体1が伸長した分だけ非伸張性紐状体も伸長し、ゴム体部分の総長さがymaxを超えたとき、正確に非伸張性紐状体1は破断する。
【0024】
一方、紐状体1L、もしくは1S、を図6に示すように、U字を含む平面と平行な面上に延在させて貼り付けることもでき、この場合、チェーン12の中心線のU字の外側に配置すると伸びが小さく内側に張り付けるとゴム部分の伸びは大きいので、これに合わせて、U字の外側に配置する非伸張性紐状体1Lとしては破断伸度の小さい材料のものを、また、U字の内側に配置する非伸張性紐状体1Sとしては破断伸度の大きい材料のものを、それぞれ選定するのがよい。
【0025】
また、図7にゴム体のチェーン12の長さ方向に直交する断面図で示すように、非伸張性紐状体1は接着剤等により、ゴム体13の表面に貼り付けることもできるが、非伸張性紐状体1の一部をゴム体13中に埋設するようにすると、確実にゴム体と非伸張性紐状体1とを一体的に変形させることができて好ましい。
【0026】
ここで、非伸張性紐状体1は、離隔距離xがxmaxより小さな値を超えたときに破断するように設定されていてもよく、この場合、離隔距離xが限界値xmaxに達しない変位量であっても連結具20を交換することになるので、安全に対する余裕を高めることができる。
【0027】
さらに、図8にゴム体のチェーン12の長さ方向に直交する断面図で示すように、複数本の互いに破断伸度の異なる複数本の非伸張性紐状体を並列配置することにより、離隔距離xが所定の値を超えたか否かだけではなく、離隔距離xの最大値がどの範囲であったかを知ることができ、例えば、4本の非伸張性紐状体1A、1B、1C、1Dはこの順に破断伸度が小さいものとして、これらの非伸張性紐状体1A、1B、1C、1Dを並列配置し、例えば、非伸張性紐状体1A、1Bはともに切断し、非伸張性紐状体1A、1Bはともに切断していなかったとすると、その時の連結具20の連結部間の距離xは、非伸張性紐状体1Bでは切断するが非伸長性紐状体1Cでは切断しない変形に相当するものであったと判定することができる。
【0028】
非伸張性紐状体1は、ゴム体1と色を異ならせるのがよく、このことによって切断したか否かを判定しやすくなる。さらに、非伸張性紐状体1を導電性のもので構成することにより、目視ではなく、電流抵抗の有無を測定することにより、非伸張性紐状体1が破断しているか否かを、判定することができ、正確な判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の連結具の変位量表示装置を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の連結具変位量検出装置をその初期状態において示す正面図である。
【図3】図2にA−A矢視に対応する矢視図である。示した変位量表示装置を拡大して示す部分断面図である。
【図4】図2にB−B矢視に対応する矢視図である。示した変位量表示装置を拡大して示す部分断面図である。
【図5】連結具を、その連結部が相互に離隔変位してその離隔距離xがxmaxが超えた状態において示す平面図である。
【図6】他の取り付け態様の連結具変位量検出装置を示す平面図である。
【図7】他の取り付け態様の連結具変位量検出装置を示す断面図である。
【図8】他の態様の連結具変位量検出装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、1A、1B、1C、1D、1L、1S 非伸張性紐状体
10 連結具変位量検出装置
11 リング
11A 両端のリング
12 チェーン
13 ゴム体
20 連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部分を含む平面上に、概ねU字状に張り渡されたチェーンの長さ方向中央部分をゴム体中に埋設固定してなり、これらの両端部分のそれぞれに設けられた連結部で一対の連結対象物のそれぞれを連結し、それらの連結部の、相対接近変位と最大許容変位量以下の相対離隔変位とを許容する条件下でそれらの連結対象を連結する連結具の、前記連結部相互の相対変位量を検出する装置において、
低伸長性紐状体を、前記ゴム体の表面に貼り付け、もしくは、その一部を前記ゴム体中に埋設してなり、この低伸長性紐状体を、前記連結具の初期状態において前記チェーンの長さ方向に沿ってU字状に延在するよう配置するとともに、前記連結部相互間の離隔距離が初期状態に対して前記最大許容変位量以下の予め定められた量を越えて相対離隔変位したとき破断するよう構成してなる連結具変位量検出装置。
【請求項2】
前記ゴム体を、前記チェーンの中心線を含む平面に直交する平面をチェーン中心線よりU字の外側に有するように構成し、前記非伸張性紐状体1をこの平面に貼り付けてなる請求項1に記載の連結具変位量検出装置。
【請求項3】
前記非伸張性紐状体を、前記チェーンの中心線よりU字の内側に配置してなる請求項1に記載の連結具変位量検出装置。
【請求項4】
互いに破断伸度の異なる複数本の非伸張性紐状体を、並列配置してなる請求項1〜3のいずれかに記載の連結具変位量検出装置。
【請求項5】
前記非伸張性紐状体を導電性材料で構成してなる請求項1〜4のいずれかに記載の連結具変位量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−85598(P2009−85598A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251624(P2007−251624)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】