説明

連結具

【課題】 雌型連結部材内に分割された雌型係止部材を配置し、雄型連結部材の雄型係止部材を雌型係止部材内へ挿入することにより連結させるものにおいて、連結時における雄型係止部材と雌型係止部材との噛合量を多くして連結強度を高める。
【解決手段】 雌型連結部材1の収納室3にテーパ穴4を形成する。該テーパ穴4内に周方向に複数に分割された雌型係止部材9を、軸方向に摺動可能に設ける。各雌型係止部材9をバネ15で先方へ付勢する。雄型連結部材20に雄型係止部材24を突設して、これを雌型係止部材内へ挿入することにより、雌ねじ11が雄ねじ25に噛合して連結する。前記雄ねじ25を、のこぎり刃で螺旋状に形成する。前記雌ねじを、のこぎり刃で螺旋の一部で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材相互の連結具として図13に示すように、内部にテーパ穴101を形成するとともに、そのテーパ穴101の内面に軸方向に沿った摺動案内突条102を周方向に分割して複数形成したケーシング103と、外面を前記テーパ穴101に沿うテーパ面に形成するとともに内面に雌ねじ104を形成した楔ナット105と、この楔ナット105を押圧する圧縮バネ106とで構成されたナット107と、該ナット107に連結するボルト108とからなる連結具が知られている。そして、該連結具における連結に際しては、そのナット107を回転することなく該ナット107に前記ボルト108を挿通することにより、分割された楔ナット105の雌ねじ104がボルト108の雄ねじ109に係合してその楔ナット105が圧縮バネ106に抗して大径側へ押され、複数個の楔ナット105で形成される雌ねじ孔の内径が拡径してナット107をボルト108の所定位置まで挿通でき、その挿通が終ると、圧縮バネ106の付勢力によって楔ナット105の雌ねじ104がボルト108の雄ねじ109に噛合し、ナット107とボルト108の連結が行われるようになっている。
【0003】
このような楔ナット105の雌ねじ104とボルト108の雄ねじ109の軸方向の断面は、図14に示すように、軸方向X−Xのねじ山の両面121と122を軸方向X−Xに対して同角度で反対側に傾斜した面に形成して二等辺三角形状に形成されている。また、この雌ねじ104と雄ねじ109は、JISで規定されている並目ねじか或いは細目ねじで形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のように構成された連結具を用いて、例えばコンクリート製のシールドセグメント相互を連結する要望がある。この場合、図15に示すように、前記連結具のナット107を一方のシールドセグメント110に設け、ボルト108を他方のシールドセグメント111に設ける。そして、連結に際してはナット107をボルト108に挿通した状態で一方のシールドセグメント110を他方のシールドセグメント111に当接するまで移動して連結するが、ナット107における楔ナット105の雌ねじ104が、ボルト108における雄ねじ109の最終的に噛合すべきねじ山を乗り越えることができず、一方のシールドセグメント110の接合端面112と他方のシールドセグメント111の接合端面113との間に隙間D1が発生する。この隙間D1は可能な限り小さいことが要求される。また、雌ねじ104と雄ねじ109の軸方向の面が共に傾斜しているため、雄ねじ109の先端部のねじ山が雌ねじ104のねじ山をわずかに乗り越えた場合には係止力が小さく、1山もどってしまうおそれがある。
【0005】
また、前記従来のように、楔ナット105とボルト108のねじがJISで規定されている並目ねじか或いは細目ねじで形成されているものにおいては、比較的大きな隙間を生じる。
【0006】
例えば、呼び径M24の場合において、JISに規定するメートル並目ねじの場合にはねじピッチが3mmであるため、隙間D1が約1.5〜6mmとなり、メートル細目ねじの場合にはねじピッチが2mm又は1.5mm又は1mmであるため、隙間D1が1〜4mm又は0.75〜3mm又は0.5〜2mmとなる。
【0007】
また、呼び径M30の場合において、JISに規定するメートル並目ねじの場合にはねじピッチが3.5mmであるため、隙間D1が約1.75mm〜7mmとなり、メートル細目ねじの場合にはねじピッチが3mm又は2mm又は1.5mm又は1mmであるため隙間D1はそれぞれの半分〜2倍の寸法となる。
【0008】
前記のように隙間D1が大きくなると、シールドセグメント110,111の接合間での水もれが発生しやすくなる問題がある。
【0009】
そこで本発明は、連結される部材間の隙間をできる限り小さくし、かつ、連結強度も高くする連結具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、雌型連結部材内に、周方向に複数に分割した楔状の雌型係止部材を設けるとともに該雌型係止部材の内面に雌ねじを刻設し、雄ねじ体を前記雌型係止部材間に挿入することにより、各雌型係止部材が後退して拡径した後、付勢手段により前進して各雌型係止部材の雌ねじが前記雄ねじ体の雄ねじに噛合するようにした連結具であって、
前記雄ねじを、のこぎり刃状で、螺旋状に形成し、前記各雌ねじを、のこぎり刃状で、螺旋の一部で形成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、ケーシング内に先方が開口する収納室を設け、該収納室に、先方が縮径するテーパ面を有するテーパ穴を形成し、該テーパ穴内に、周方向に複数に分割された楔状の雌型係止部材を軸方向に摺動可能に配置するとともに該雌型係止部材の内面に雌ねじを刻設し、該雌型係止部材を付勢手段で先方へ付勢した雌型連結部材と、外周に雄ねじを形成した雄型係止部材を先部に突設した雄型連結部材とからなり、前記雄型係止部材を前記雌型連結部材に開口した挿入口から挿入することにより、前記各雌型係止部材が拡径し、雄型係止部材の挿入停止により雌型係止部材の雌ねじが雄型係止部材の雄ねじに噛合するようにした連結具であって、
前記雄ねじを、のこぎり刃状で、螺旋状に形成し、前記各雌ねじを、のこぎり刃状で、螺旋の一部で形成したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、 前記雌型係止部材の雌ねじの軸方向断面形状は、前記雄型係止部を挿入する挿入口側から奥部側に向って縮径する傾斜面と、雌型係止部材の軸方向と直交して、該雌側傾斜面の内径端から外側に向って垂直に形成した雌側垂直面とで構成されるのこぎり刃状に形成され、
前記雄型係止部材の雄ねじの軸方向断面形状は、先端側から後側に向って拡径する雄側傾斜面と、雄型係止部材の軸方向と直交して、該雄側傾斜面の外径端から内側に向って垂直に形成した雄側垂直面とで構成されるのこぎり刃状に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記雌ねじと、前記雄ねじにおける呼び径に対するねじピッチを、JISに規定する細目ねじの呼び径に対するねじピッチよりも小さく設定したものである。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記雌型連結部材における前記雌型係止部材を2個対向して設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記雌型連結部材における前記雌型係止部材の厚みを、前記雄型係止部材の外径よりも小さくしたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記雌型係止部材を拡径させて、該雌型係止部材の雌ねじと前記雄型係止部材の雄ねじとの噛合を解除する解除手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、雄ねじと雌ねじを、のこぎり刃状に形成したので、従来のような軸方向の断面における両面が傾斜するねじに比べて、雄ねじと雌ねじが相互に嵌合する際の両者の噛合が早く、かつ、大きく噛み合い、かつ、連結される部材間の隙間を小さくすることができる。
【0018】
更に、雌型係止部材を分割して周方向に配置するようにしたので、多数製造された雌型係止部材の中からランダムに雌型係止部材を取り出して使用することにより、その使用した複数個の雌型係止部材のねじ山は、1つの螺旋上に位置することなく、1つの螺旋上から相互に軸方向にずれる確率が極めて高く、このねじ山のずれにより、噛合が早く、かつ、噛合量を多くすることができる。
【0019】
更に、雄ねじと雌ねじとの噛合状態でのガタつき量も少なくなる。
したがって、のこぎり刃形状と螺旋形状とが相まって、早く、かつ、強固な連結が可能となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、更に、雌型係止部材を2個対向して設けたのみなので、雌型連結部材を薄く形成することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、更に、雌型係止部材を雄型係止部材の外径よりも薄く設定することで、雌型連結部材をより薄く形成することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、更に、解除手段を設けたことで、容易に雄型連結部材と雌型連結部材の連結を解除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態を図1乃至図12に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1乃至図8は実施例1を示す。
雌型連結部材1を構成するケーシング2は、筒状、例えば円筒状に形成され、その内部に収納室3が形成されている。該収納室3の先部には、その内周面を先端側から後方(奥部)にかけて内径が徐々に拡大するテーパ面にしてなるテーパ穴4が形成され、収納室3の中間部は付勢手段収納部5に形成され、収納室3の後部内周には雌ねじ6が刻設されている。前記のテーパ穴4より先部には挿入口7が開口形成されている。
【0025】
前記テーパ穴4の内面には、ケーシング2の軸方向に沿った摺動案内突条8が、図2に示すように周方向に分割して複数、実施例においては3個形成されている。なお、この摺動案内突条8は無くてもよい。
【0026】
また、前記テーパ穴4内には、図2に示すように、周方向に複数、例えば3分割してなる楔状の雌型係止部材9A,9B,9Cが、前記摺動案内突条8相互間においてケーシング2の軸方向に摺動可能に配設されている。更に、該楔状の雌型係止部材9A〜9Cの外面は前記テーパ穴4のテーパ面に沿った、すなわち、先端側から後方にかけて外径が徐々に拡大するテーパ面10が形成されている。更に、各雌型係止部材9A〜9Cの内周面には、のこぎり刃状の雌ねじ11が刻設されている。また、該雌ねじ11は、ケーシング2の軸心に沿って形成されている。なお、本実施例において、雌型係止部材9A〜9Cを以下楔ナット9A〜9Cという。また、3個の楔ナット9A〜9Cを代表して楔ナット9ともいう。
【0027】
以上により、複数個の楔ナット9によって図2に示すように雌ねじ穴9Eが形成され、各楔ナット9がテーパ面に沿って後退することにより、その雌ねじ穴9Eが拡径され、先方へ移動することにより、その雌ねじ穴9Eが縮径するようになっている。
【0028】
前記楔ナット9の後端には、各楔ナット9に共通して係合する付勢手段受け12が配置されている。
【0029】
前記ケーシング2の後部の雌ねじ6には、中心部にねじ穴13を設けた蓋板14が螺着されている。前記付勢手段収納部5内には付勢手段であるバネ15が、前記付勢手段受け12と蓋板14間に圧縮した状態で介在され、該バネ15の付勢力により各楔ナット9を常時先方へ付勢している。なお、付勢手段15は、コイルバネ、ゴム、樹脂、ウレタンなどの弾性部材で形成される。
【0030】
前記蓋板14にはアンカーバー16が螺着して固設されている。
前記の雌型連結部材1とアンカーバー16は、一方の連結部材、例えば図4に示すような一方のコンクリート部材であるシールドセグメント17に、ケーシング2の前端面がシールドセグメント17の接合面17aと面一になるように埋設して固設される。
【0031】
20は雄型連結部材で、円筒状のケーシング21内に、内周に雌ねじ22を刻設した連結体23を固設し、該連結体23の先部に雄型係止部材を形成する雄ねじ体24の基部を螺着して構成されている。該雄ねじ体24は、ケーシング21及び連結体23の先端面よりも先部へ突出している。また、該雄ねじ体24の外周に形成した雄ねじ25の直径は、前記各楔ナット9が最前進した場合におけるこれらで形成される雌ねじ穴9Eの直径よりも若干大径に設定されている。
【0032】
前記連結体23の後部にはアンカーバー26が螺着して固設されている。
前記の雄型連結部材20とアンカーバー26は、他方の連結部材、例えば図4に示すような他方のコンクリート部材であるシールドセグメント27に、ケーシング21と連結体23の前端面がシールドセグメント27の接合面27aと面一になるように埋設して固設される。
【0033】
前記一方のシールドセグメント17における接合面17aにはシール材28が突出して設けられ、他方のシールドセグメント27における接合面27aにはシール材29が突出して設けられている。
【0034】
次に、前記本発明の実施例1における楔ナット9の雌ねじ11と、雄ねじ体24の雄ねじ25について説明する。
【0035】
前記雄ねじ体24の雄ねじ25は、図5乃至図8に示すように、その雄ねじ体24の軸方向X‐Xの断面を、のこぎり刃状にして形成されている。
【0036】
より詳しくは、ねじ山25aの軸方向X‐Xの断面は、雄ねじ体24の挿入側である先端側Aから後側Bに向って拡径する傾斜面25bと、該傾斜面25bの外径端(頂部)25cから内側に向って前記軸方向X‐Xと直交して垂直に形成した垂直面25dとによって、のこぎり刃状に形成されている。
【0037】
更に、前記ねじ山25aと、これにより形成される谷部は、雄ねじ体24の軸心X−Xを中心とする螺旋状に形成され、そのねじピッチPは後述するように設定されている。
【0038】
次に、楔ナット9の雌ねじ11について説明する。
前記楔ナット9の雌ねじ11は図5乃至図8に示すように、前記ケーシング2の軸方向、すなわち、楔ナット9が進退する方向(雌ねじ穴5Eの軸方向)X−Xにおける断面を、のこぎり刃状にして形成されている。
【0039】
より詳しくは、ねじ山9aのX−X方向の断面は、雄ねじ25を挿入する挿入口側Cから奥部D側に向って縮径する傾斜面9bと、該傾斜面9bの内径端(頂部)9cから、前記軸方向X‐Xと直交して外側に向って垂直に形成した垂直面9dとによって、のこぎり刃状に形成されている。
【0040】
そして、この各楔ナット9で形成された雌ねじ穴9Eに前記雄ねじ体24が挿入された場合に、各楔ナット9のねじ山9aが、挿入された雄ねじ体24の隣接するねじ山25a間(谷部)に嵌合するように、各楔ナット9のねじ山9aと谷は、前記雄ねじ体24のねじ山25aと谷の螺旋と同一の螺旋上に配置されるように形成されている。
【0041】
また、前記楔ナット9は、次のように製造される。
前記のようにX‐X方向の断面の肉厚が楔状に形成され、その内周に前記のような、のこぎり刃状で、かつ螺旋状の雌ねじ11を刻設した1個の円筒体(周方向に連続した一体状の筒)を、周方向の等間隔、例えば3等分間隔の位置で、軸方向に切断して、前記の楔ナット9を複数、例えば3個製造する。これにより、3個の楔ナットの雌ねじ11は、螺旋の一部で形成される。このように製造された3個の楔ナットは、そのねじ山が1つの螺旋上に位置する。
【0042】
そして、このように製造されて貯蔵された多数の楔ナット9の中から、選択することなくランダムに必要な数、例えば実施例では3個の楔ナット9A〜9Cを取り出し、前記のようにケーシング2内へ挿入する。
【0043】
ここで、前記のように、螺旋状の雌ねじ11を刻設した1個の円筒体を3分割し、この3分割されたその楔ナット9自体をそのままケーシング2内へ挿入すると、図5において第2の楔ナット9Bのねじ山9aは、第1の楔ナット9Aのねじ山9aにおける頂点の螺旋の延長線上、すなわち、図5の鎖線で示す延長線上の点Fに形成される。
【0044】
しかし、前記のように、楔ナット9A〜9Cを、多数貯蔵された中から、ランダムに取出して使用することにより、図5に示すように、第2の楔ナット9Bとして、そのねじ山9aの頂点が前記F点より軸方向X‐Xにずれたねじ山9aを有する楔ナット9Bが使用される確率が極めて高い。また、第3の楔ナット9Cも、そのねじ山9aが、第1及び第2の楔ナット9A,9Bのねじ山に対して前記のようにずれる確率が極めて高い。
【0045】
次に前記楔ナット9の雌ねじ11と、前記雄ねじ体24の雄ねじ25のねじピッチPについて説明する。
【0046】
前記楔ナット9の雌ねじ11と、前記雄ねじ体24の雄ねじ25のねじピッチP(図5及び図8参照)は所望に形成するもので、JISに規定する細目ねじの呼び径に対するねじピッチとしてもよく、また、JISに規定する細目ねじの呼び径に対するねじピッチよりも小さくしてもよい。
【0047】
例として、呼び径がM24(mm)の場合には、前記JIS B 0207のメートル細目ねじではねじピッチPを2mm又は1.5mm又は1mmに形成するが、本発明では、ねじピッチPを0.3mm〜0.8mm、望ましくは0.5mmに設定する。
【0048】
また、呼び径がM30(mm)の場合もねじピッチPを0.3mm〜0.8mm、望ましくは0.5mmに設定する。
【0049】
次に、本発明をシールドセグメントに適用した例に基づいて連結操作を説明する。
先ず、図4に示すように、雌型連結部材1の挿入口7と雄型連結部材20の雄ねじ体24を略同軸上に対向配置した状態で、一方のシールドセグメント17と他方のシールドセグメント27を相対的に接近させる。
【0050】
これにより、雄ねじ体24が、雌型連結部材1における挿入口7から進入し、その後、雄ねじ体24が各楔ナット9A〜9Cをバネ15の付勢力に抗して後退させて各楔ナット9A〜9Cで形成されるねじ穴9Eを拡径し、各楔ナット9A〜9Cのねじ山を乗り越えつつ挿入する。
【0051】
雌型連結部材1におけるケーシング2の先端面、すなわち、一方のシールドセグメント17の接合面17aと、雄型連結部材20におけるケーシング21の先端面、すなわち他方のシールドセグメント27の接合面27aが近接して雄ねじ体24の挿入が停止されると、各楔ナット9はバネ15の付勢力によって先方へ押し戻されるとともにテーパ面4,10によって各楔ナット9で形成される雌ねじ穴9Eの径が縮径し、各楔ナット9の雌ねじ11が雄ねじ体24の雄ねじ25に噛合する。これによって、図3に示すように、雌型連結部材1と雄型連結部材20が連結され、両シールドセグメント17,27は相互に連結される。
【0052】
この連結状態において、楔ナット9の雌ねじ11と雄ねじ体24の雄ねじ25は前記のような、のこぎり刃状に形成されているため、次のような作用、効果を発揮する。
【0053】
前記図14に示すような、ねじ山の両面121と122が軸方向に対して傾斜したものにおいては、連結時において、ボルト108のねじ山が楔ナット105のねじ山をわずかに乗り越えた状態では、ねじ山の相互の噛み込みが少なくなる。
【0054】
これに対し、本発明のように、雌ねじ11と雄ねじ25をのこぎり刃状に形成すると、雄ねじ25のねじ山25aが雌ねじ11のねじ山9aを乗り越えると、雄ねじ25の垂直面25dと雌ねじ11の垂直面9dが速やかに、かつ、大きく噛み合い、かつ、シールドセグメント間の隙間を小さくすることができる。
【0055】
更に、前記のような、のこぎり刃状の雌ねじ11と、のこぎり刃状の雄ねじ25を螺旋状に形成した効果について説明する。
【0056】
例えば、仮に、図16及び図17に示すように、雄ねじ200のねじ山201,202をのこぎり刃状で、かつ、軸心X−Xに対して直交する方向に形成し、更に、これら複数のねじ山201,202を平行に形成し、また、雌ねじ203のねじ山204,205をのこぎり刃状で、かつ、前記雄ねじ200のねじ山201,202と同様に平行に形成した場合には、図17に示すように、雄ねじ200の先端のねじ山201が雌ねじ203における隣接するねじ山204,205間に位置した場合、その先端のねじ山201は、奥部のねじ山205には係止せず入口側のねじ山204に係止することになる。
【0057】
これに対し、本発明においては、図5及び図6で説明したように、第1〜第3の楔ナット9A〜9Cにおける各ねじ山9aが形成する螺旋が軸方向X‐Xに相対的にずれているため、図6に示すように、雄ねじ25の先端のねじ山25gが第1の楔ナット9Aにおける隣接するねじ山9h,9k間に位置しても、ねじ山25gが第2又は第3の楔ナット9A,9Bにおける前記ねじ山9hより奥部に位置するねじ山9nに係止する。なお、図6の場合は、雄ねじ25のねじ山25gは、第1の楔ナット9Aのねじ山9hに噛合する。
【0058】
したがって、本発明においては、雄ねじ25と雌ねじ11との噛合量が、前記図16に示すような、のこぎり刃を平行に形成したものに比べて多く(実施例では楔ナット9の1個分又は2個分多く)なり、連結強度が大きくなる。
【0059】
更に、連結時における噛合が早くなり、更に、連結状態での両ケーシング2,21との隙間D2(図3参照)、すなわち、両シールドセグメント17,27間の隙間も小さくすることができる。
【0060】
次に、本発明は、前記の雌ねじ11と雄ねじ25のねじピッチPを所望に設定するものであるが、前記のように、通常使用されているJIS規定の細目ねじのピッチよりも小さく形成すると次のような効果を発揮できる。
【0061】
連結時において、各楔ナット9は、最終的に噛合すべき雄ねじ体24のねじ山を乗り越えることができない場合もあり、この場合には、雄ねじ体24には、その軸方向へのガタつきが生じ、両ケーシング2,21の相互間、すなわち、両シールドセグメント17,27の接合面17a,27a相互間に図3に示すように隙間D2が生じる。
【0062】
しかし、楔ナット9の雌ねじ11と雄ねじ体24の雄ねじ25のねじピッチPが、前記のように、通常使用されているJIS規定の細目ねじのピッチよりも小さく形成されているので、前記のガタつきは極めて小さくなる。
【0063】
例えば、呼び径がM24(mm)の場合において、ねじピッチPが従来のJIS B 0207の細目ねじのように2mmであると、前記のように隙間D1が1〜4mmになるのに対し、本発明の前記実施例のように呼び径がM24(mm)の場合にねじピッチPを0.5mmに設定すると前記の隙間D2は0.25〜1mmとなる。
【0064】
このように、隙間が小さくなることは、両シールドセグメント17,27間での水もれを防止を高めることができる。更に、シールドセグメント17,27にシール材28,29を設ける場合においても、このシール材28,29を小さなものにしてコスト低減を図ることができる。
【0065】
また、ねじピッチPを従来のものよりも小さくすることによって、楔ナット9及び雄ねじ体24の径方向の寸法を従来のものよりも小さくすることができ、これにより、連結具全体を小型化し、シールドセグメントの厚さを薄くすることができ、かつ連結具及びシールドセグメントのコスト低減を図ることができる。
【0066】
また、バネ15の付勢力によって楔ナット9の雌ねじ11が雄ねじ体24の雄ねじ25へ食い込むように作用し、かつ、雄ねじ体24に抜け方向への力が作用すると楔ナット9が食い込むため、ねじピッチPが小さくても強固な連結状態が確保される。
【0067】
なお、前記実施例のように摺動案内突条8を設けた場合には、雌型連結部材1又は雄型連結部材20のいずれかを回転することにより、これらを分離できるが、このような分離が不要或いは不可にする場合には摺動案内突条8を設けない。
【実施例2】
【0068】
図9乃至図12は実施例2を示す。
雌型連結部材31は、図12に示すように、各平板材を積層して板状に形成されており、その構成する部品である裏カバー32は金属の平板で形成されている。
【0069】
前記裏カバー32の表面には一対の裏スペーサ33、34が、同一平面内において、雄型係止部材35を挿通する軸X−Xを挟んで左右に所定の隙間D3を有して、図12に示すように、平行に配置され、これらの裏スペーサ33、34間の隙間が、収納室36の一部を形成している。
【0070】
前記一対の裏スペーサ33、34の表面側には一対のケース板37、38が、前記雄型係止部材35が挿通される軸X−Xを挟んで所定の隙間を有して平行に配置され、これら一対のケース板37、38間の隙間が収納室36の一部を形成している。該一対のケース板37、38の夫々の内側面には、挿入側から奥方に向かうに従い外側へ拡がるテーパ面39、40が形成されている。テーパ面39、40は、テーパ穴36aの一部を形成している。
【0071】
前記一対のケース板37、38の夫々の内側には楔型の2個の雌型係止部材41、42が図10に示すように、挿入口36b面における一方向において、すなわち、挿入口36bから見て長方形に形成された雌型連結部材31の長手方向に、対向して配置されている。該雌型係止部材41、42は板状に形成され、その内側面には前記雄型係止部材35の挿通方向(軸X−X)に沿って雌ねじ41a、42aが刻設されている。また、該雌型係止部材41、42の外側面は前記テーパ面39、40に沿ったテーパ面41b、42bに形成されている。更に、雌型係止部材41、42の表面側には夫々案内ピン43、44が上方へ突設されている。
【0072】
前記一対のケース板37、38の表面には金属の平板からなる一対の表スペーサ45、46が、前記一対の裏スペーサ33、34と同様の隙間を有して平行に配置されている。該一対の表スペーサ45、46には、前記雌型係止部材41、42の案内ピン43、44が摺動可能に嵌合する案内長孔47、48が表裏方向に貫通して形成されている。該案内長孔47、48には前記テーパ面39、40に沿って、すなわち、後方が外側へ拡がるように傾斜して形成されている。また、案内長孔47、48の前側にはストッパ面47a、48aが形成されている。
【0073】
また、雌型連結部材41、42の雌ねじ41a、42aは、前記実施例1の楔ナット9の雌ねじ11と同様の、のこぎり刃状のねじ山形状を有し、かつ、螺旋状の一部に形成されている。またねじピッチPについても同様に設定する。
【0074】
また、前記ケース板37、38には、雌型係止部材41、42の後部に付勢手段収納室49、50が形成されており、該収納室49、50内に前記実施例1と同様の付勢手段51、52が収納されている。前記裏スペーサ33、34と表スペーサ45、46で付勢手段51、52の外脱が阻止されている。そして、該付勢手段51、52により前記雌型係止部材41、42を常時挿入側方向へ付勢している。
【0075】
前記一対の表スペーサ35、36の表面側には、これらの間にわたる1枚の表カバー53が配置されている。該表カバー53には、前記案内長孔47、48と同一位置において、かつ、同一方向に傾斜する一対の案内長孔54、55が形成されている。該一対の案内長孔54、55は表カバー53の表裏方向に貫通している。
【0076】
裏カバー32、裏スペーサ33、34、ケース板37、38、表スペーサ45、46及び、表カバー53によりケーシング56が形成されている。
【0077】
また、収納室36は、裏カバー32、裏スペーサ33、34、ケース板37、38、表スペーサ45、46及び、表カバー53により形成された空間であり、雄型係止部材35の挿入側の開口部は、挿入口36bを形成している。また、裏カバー32、裏スペーサ33、34、テーパ面39、40によりテーパ穴36aが形成されている。
【0078】
前記表カバー53の表面側には、抜き治具57が前後方向に摺動可能に配置されている。
【0079】
前記抜き治具57は、後部に幅の広い係止部58を有する金属の平板で形成され、該係止部58に前端係止面58aと後端係止面58bが形成されている。更に、該抜き治具57の裏側には、前記両案内ピン43、44が夫々嵌合する凹部59、60が形成されている。該凹部59、60の前後方向長は案内ピン43、54の前後方向長と略同長に形成され、左右方向長は案内ピン43、54の左右方向長よりも長く形成されている。更に、抜き治具57の表面には、係止部58の左右幅より短い幅の操作部61が一体に突設されている。
【0080】
前記抜き治具57の表側にはカバー62が配置されている。
該表カバー62の裏側には裏面が開口する案内凹部63が形成されており、該案内凹部63内に前記抜き治具57が前後方向に移動可能に嵌合される。更に、該案内凹部63の前端は前記抜き治具57の前端係止面58aが当たる前端規制面63aとなっており、後端は抜き治具57の後端係止面58bが当たる後端規制面63bになっている。更に、カバー62の中央部には前記操作部61が前後方向に移動可能に嵌合する窓64が形成されている。
【0081】
前記案内ピン43、44、案内長孔47、48、抜き治具57、操作部61などにより解除手段65を形成している。
【0082】
前記各部材には共通する位置に取付用穴66が形成され、該各取付用穴66にビス67などの連結部材を挿通して各部材を一体的に連結し、雌型連結部材31を構成している。
【0083】
雄型係止部材35は、前記実施例1の雄型係止部材20の雄ねじ体(雄型係止部材)24と同様の構造を有し、前記実施例1と同様ののこぎり刃状で、かつ、螺旋状に形成された雄ねじが刻設されている。またねじピッチPについても同様に設定する。
【0084】
前記雌型連結部材31は、例えば、図9に示すような一方のパネル71の連結側端面71aに雌型連結部材31の収納室36の挿入側端が位置するように一方のパネル71に適宜手段で固定して備え、また、雄型係止部材35は、その先部が、例えば図9に示すような他方のパネル72の連結側端面72aより突出させて適宜手段により他方のパネル72に固定して備えられている。
【0085】
前記雌型連結部材31と雄型係止部材35の連結方法は、雄型係止部材35を雌型連結部材31の収納室36内へ挿入することにより、前記実施例1と同様に、雌型係止部材41、42の雌ねじ41a、42aが雄型係止部材35の雄ねじ35aに噛合して連結される。
【0086】
次に、前記の連結状態から両パネル71、72を分離する場合には、カバー62に露出した操作部61の先端を手操作で後方へ移動させて雌型係止部材41、42を後方へ移動させる。これにより、雌型係止部材41、42が案内長孔47、48により外側へ移動し、雌型係止部材41、42で形成される雌ねじ穴が拡径するため、雄型係止部材35を抜き外すことができ、この雄型係止部材35を抜き外すことにより両パネル71、72を分離することができる。
【0087】
また、本実施例2においても、雄ねじ35aと雌ねじ41aを前記実施例1と同様な、のこぎり刃状に形成したので、前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0088】
更に、本実施例2においては、雄型係止部材35を挿入する挿入口36bから見て長方形の偏平状に形成された雌型連結部材31において、その長手方向に対向して雌型係止部材41、42を2個のみ設けたので、実施例1の図2に示すような、周方向全体に雌型係止部材を配置したものに比べて、雌型係止部材を板状に薄く形成して、薄型の雌型連結部材に本発明を適用することができる。更に、雌型係止部材41、42の(図10の上下方向の)厚みは、雄型係止部材35の外径よりも小さく設定することで、雌型連結部材31の厚みをより薄くすることができ、厚みの薄い連結部材(例えば、シールドセグメント、パネル等)相互の連結に特に有効である。
【0089】
更に、部品のほとんどを平板で形成できるため、プレスや鍛造で部品を製造でき、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例1を示すもので、雄型連結部材と雌型連結部材を分離した側断面図。
【図2】図1におけるP−P線断面図。
【図3】図1の雄型連結部材と雌型連結部材を連結した側断面図
【図4】図1の雄型連結部材と雌型連結部材をシールドセグメントに設けた実施例を示す図。
【図5】本発明の雄ねじ体と楔ナットを示す図。
【図6】図5の雄ねじ体と楔ナットとの噛合を説明する図。
【図7】図6の噛合状態を示す図。
【図8】本発明の雄ねじと雌ねじを示す断面図。
【図9】本発明の実施例2を示す斜視図。
【図10】図9における雌型連結部材の正面図。
【図11】図9におけるQ−Q線断面図。
【図12】図9における部品を分離した斜視図。
【図13】従来の連結具を示す側断面図。
【図14】従来の雄ねじと雌ねじを示す側断面図。
【図15】図13の連結具の連結状態を示す側断面図。
【図16】本発明を説明するための仮想の雄ねじと雌ねじを示す図。
【図17】図16のねじの噛合状態を示す図。
【符号の説明】
【0091】
1、31 雌型連結部材
2、56 ケーシング
3、36 収納室
4、36a テーパ穴
7、36b 挿入口
9、41、42 雄型係止部材である楔ナット
10、41b、42b テーパ面
11、41a、42a 雌ねじ
15、51、52 付勢手段
17、27、71、72 シールドセグメント
20 雄型連結部材
24、35 雌型係止部材である雄ねじ体
P ねじピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型連結部材内に、周方向に複数に分割した楔状の雌型係止部材を設けるとともに該雌型係止部材の内面に雌ねじを刻設し、雄ねじ体を前記雌型係止部材間に挿入することにより、各雌型係止部材が後退して拡径した後、付勢手段により前進して各雌型係止部材の雌ねじが前記雄ねじ体の雄ねじに噛合するようにした連結具であって、
前記雄ねじを、のこぎり刃状で、螺旋状に形成し、前記各雌ねじを、のこぎり刃状で、螺旋の一部で形成したことを特徴とする連結具。
【請求項2】
ケーシング内に先方が開口する収納室を設け、該収納室に、先方が縮径するテーパ面を有するテーパ穴を形成し、該テーパ穴内に、周方向に複数に分割された楔状の雌型係止部材を軸方向に摺動可能に配置するとともに該雌型係止部材の内面に雌ねじを刻設し、該雌型係止部材を付勢手段で先方へ付勢した雌型連結部材と、外周に雄ねじを形成した雄型係止部材を先部に突設した雄型連結部材とからなり、前記雄型係止部材を前記雌型連結部材に開口した挿入口から挿入することにより、前記各雌型係止部材が拡径し、雄型係止部材の挿入停止により雌型係止部材の雌ねじが雄型係止部材の雄ねじに噛合するようにした連結具であって、
前記雄ねじを、のこぎり刃状で、螺旋状に形成し、前記各雌ねじを、のこぎり刃状で、螺旋の一部で形成したことを特徴とする連結具。
【請求項3】
前記雌型係止部材の雌ねじの軸方向断面形状は、前記雄型係止部を挿入する挿入口側から奥部側に向って縮径する傾斜面と、雌型係止部材の軸方向と直交して、該雌側傾斜面の内径端から外側に向って垂直に形成した雌側垂直面とで構成されるのこぎり刃状に形成され、
前記雄型係止部材の雄ねじの軸方向断面形状は、先端側から後側に向って拡径する雄側傾斜面と、雄型係止部材の軸方向と直交して、該雄側傾斜面の外径端から内側に向って垂直に形成した雄側垂直面とで構成されるのこぎり刃状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の連結具。
【請求項4】
前記雌ねじと、前記雄ねじにおける呼び径に対するねじピッチを、JISに規定する細目ねじの呼び径に対するねじピッチよりも小さく設定した請求項1又は2又は3記載の連結具。
【請求項5】
前記雌型連結部材における前記雌型係止部材を2個対向して設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の連結具。
【請求項6】
前記雌型連結部材における前記雌型係止部材の厚みを、前記雄型係止部材の外径よりも小さくしたことを特徴とする請求項5記載の連結具。
【請求項7】
前記雌型係止部材を拡径させて、該雌型係止部材の雌ねじと前記雄型係止部材の雄ねじとの噛合を解除する解除手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の連結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−145023(P2006−145023A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373034(P2004−373034)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000144016)株式会社三ツ知 (11)
【Fターム(参考)】