連結基板の製造方法
【課題】分割溝を形成する際の素子基板の変形や位置ずれを抑制できる連結基板の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】複数の素子基板3となる未焼成の連結基板1の第1の主面1bに0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シート7aを貼り合わせた後、前記第1の主面1bとは反対側の第2の主面1aに前記複数の素子基板3を分割するための分割溝5を形成する工程と、前記第1の主面1bから前記粘着シート7aを剥離した後、前記未焼成の連結基板1を焼成する工程とを有する連結基板の製造方法。
【解決手段】複数の素子基板3となる未焼成の連結基板1の第1の主面1bに0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シート7aを貼り合わせた後、前記第1の主面1bとは反対側の第2の主面1aに前記複数の素子基板3を分割するための分割溝5を形成する工程と、前記第1の主面1bから前記粘着シート7aを剥離した後、前記未焼成の連結基板1を焼成する工程とを有する連結基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載するための素子基板が複数連結して形成されるとともに、各素子基板間に分割のための分割溝を有する連結基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子等の発光素子を有する発光装置の高輝度および白色化に伴い、携帯電話、液晶TV、液晶ディスプレイのバックライト等に発光素子を有する発光装置が使用されている。発光素子を有する発光装置は、例えば、発光ダイオード素子等の発光素子と、この発光素子を搭載する素子基板とから構成され、従来、素子基板として樹脂材料からなるものが用いられている。しかし、発光素子の高輝度化に伴って発熱量が増加し、耐熱性に優れ、かつ発光素子から発生する熱を速やかに放散して十分な発光輝度を得られる素子基板が求められている。
【0003】
耐熱性の高い素子基板として、アルミナ基板が知られている。また、アルミナ基板に比べて高い反射率が得られる素子基板として、低温同時焼成セラミックス基板(Low Temperature Co-fired Ceramics)が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、低温同時焼成セラミックス基板をLTCC基板と記す。
【0004】
LTCC基板は、ガラスとアルミナ粉末のようなセラミックス粉末とからなり、ガラスとセラミックスとの屈折率差が大きく、光の入射方向に面する両者の界面の占める割合が多く、かつセラミックス粉末の粒径が使用波長より大きいことから、高い反射率が得られる。これにより、発光素子からの光を効率よく利用でき、発熱量を低減できる。また、無機酸化物からなるために光源による劣化が少なく、長期間に亘って基板の色調を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/128354号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発光装置等に対する小型化の要求から、素子基板についても小型化が求められている。小型の素子基板を作製する場合、取扱い性を向上させる観点から、まず複数の素子基板が連結して形成されるとともに、各素子基板間に分割溝が形成された連結基板を製造し、めっき処理や発光素子の実装を行った後、分割溝を利用して個々の素子基板に分割することが好ましい。
【0007】
連結基板は、例えば、分割溝の形成されていない未焼成の連結基板を製造し、この未焼成の連結基板における素子基板間にセラミックグリーンシート積層体切断機等を用いて分割溝を形成した後、焼成等を行って製造される。
【0008】
また、分割溝は、例えば、未焼成の連結基板の表面にセラミックグリーンシート積層体切断機等の切断刃を押し付けることにより形成され、具体的には、未焼成の連結基板の表面における縦横方向のうち、まず一方向において端部から順に1本ずつ形成した後、これと交差する他方向において端部から順に1本ずつ形成される。
【0009】
しかしながら、切断刃を押し付けて分割溝を形成する場合、切断刃の押し付けにより未焼成の連結基板に水平方向の外力が加わり、全体が外側に広がるように変形し、素子基板に変形や位置ずれが発生しやすい。例えば、素子基板には位置合わせのためのアライメントマークが形成されるが、アライメントマークの位置が本来の位置からずれることにより、分割溝の形成位置、素子基板における電極等の各種導体の相対的な位置等にバラツキが発生し、発光装置等としたときに実装位置の精度等が低下しやすい。特に、未焼成の連結基板には多数の素子基板が形成されることから、素子基板における変形や位置ずれが大きくなりやすい。
【0010】
また、分割溝の形成は、分割溝を形成する表面とは反対側の表面を真空吸着により固定して行うが、素子基板の各角部に分割を容易にするための貫通孔である分割孔が形成される場合、この分割孔のために真空吸着が不十分のため十分に固定できない。また、素子基板の中央部に発光素子等を搭載するための凹部が形成される場合、この凹部の開口部側を真空吸着すると、凹部の底部が開口部側に凸状に変形しやすい。いずれの場合についても、素子基板における変形や位置ずれが発生しやすく、発光装置等としたときに実装位置の精度等が低下しやすい。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、分割溝を形成する際の素子基板の変形や位置ずれを抑制できる連結基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の連結基板の他の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離するとともに、前記第1の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第2の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分割溝の形成時、分割溝を形成する主面とは反対側の主面に所定の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせることで、各素子基板となる部分を粘着シートによって拘束でき、その変形や位置ずれを抑制できる。結果として、発光装置等としたときの実装位置の精度等を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の製造方法により製造される連結基板の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1に示す連結基板の断面図。
【図3】素子基板の一実施形態を示す平面図。
【図4】図3に示す素子基板の断面図。
【図5】発光装置の一実施形態を示す平面図。
【図6】図5に示す発光装置の断面図。
【図7】未焼成導体が形成された上層用グリーンシートの平面図。
【図8】未焼成導体が形成された中層用グリーンシートの平面図。
【図9】未焼成導体が形成された下層用グリーンシートの平面図。
【図10】粘着シートを用いた分割溝の形成方法を説明する説明図。
【図11】粘着シートを用いた分割溝の形成方法を説明する説明図。
【図12】実施例の未焼成の連結基板を模式的に示す平面図。
【図13】位置ずれの評価点を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、連結基板の製造方法について詳細に説明する。
連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面とは反対側の第2の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第1の主面から粘着シートを剥離した後、未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
他の連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面とは反対側の第2の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面から粘着シートを剥離するとともに、第1の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第2の主面から粘着シートを剥離した後、未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
上記各製造方法によれば、未焼成の連結基板の分割溝を形成する主面とは反対側の主面に粘着シートを貼り合わせ、この粘着シートが貼り合わされた状態で未焼成の連結基板に分割溝を形成することで、各素子基板となる部分を粘着シートによって拘束でき、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を抑制できる。結果として、発光装置等としたときの実装位置の精度等を向上できる。特に、未焼成の連結基板における素子基板の形成数が0.25pcs/mm2以上の場合に、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を顕著に抑制できる。なお、素子基板の形成数の上限は、特に限定されないが、通常1.0pcs/mm2以下である。例えば、連結基板のサイズが170mm×170mmの場合、素子基板の形成数が2000個以上となると、変形や位置ずれ等を抑制する効果が顕著となる。
【0019】
また、粘着シートを貼り合わせることで、各素子基板となる部分の角部に分割を容易にするための分割孔が設けられる場合であっても、分割孔を粘着シートにより塞ぐことができ、真空吸着による固定を確実に行うことができる。さらに、各素子基板となる部分の中央部に発光素子等を搭載するための凹部が設けられる場合であっても、その開口部側に粘着シートを貼り合わせることで、開口部を粘着シートにより塞ぐことができ、真空吸着により開口部とは反対側に位置する底部が開口部側に引き寄せられることによる変形を抑制できる。
【0020】
特に、粘着シートの粘着力、より具体的には初期粘着力を0.09N/20mm以上とすることで、分割溝の形成時における各素子基板となる部分の固定を確実にし、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を抑制できる。さらに、粘着シートの粘着力、より具体的には剥離時の粘着力を0.51N/20mm以下とすることで、粘着シートの剥離時、素子基板となる部分の表面に形成された形成物、例えば、位置合わせのためのアライメントマークや未焼成外部電極端子等の剥離等による損傷を抑制できる。
【0021】
上記粘着力を有する粘着シートとしては、例えば、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあり、剥離時に粘着力を低下させるための処理を必要としないもの、また初期粘着力が0.51N/20mmを超え、剥離時に粘着力を低下させるための処理が必要となるものが挙げられるが、いずれであってもよい。粘着力を低下させる処理としては、加熱または放射線の照射が挙げられる。なお、加熱または放射線の照射により粘着力が低下するものであっても、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあるものについては、剥離時に加熱または放射線の照射を行わずに使用できる。
【0022】
連結基板の製造に用いられる粘着シートは、通常、基材と、この基材上に形成された粘着剤層とから構成される
【0023】
基材としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプ ロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素 樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。基材の厚さは、例えば、5〜200μmが好ましい。
【0024】
粘着剤層の構成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーやゴム系ポリマー等を含む公知の粘着剤が挙げられる。粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プルピル基、イソプルピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、及びドデシル基等の炭素数30以下、好ましくは炭素数4〜18の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記以外のモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸等の酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。これらモノマー成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋処理等を目的に多官能モノマー等も必要に応じて共重合モノマー成分として使用できる。
【0028】
多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
多官能モノマーの使用量は、粘着特性等の観点より全モノマー成分の30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーの調製は、例えば1種または2種以上のモノマー成分を含む混合物を溶液重合方式、乳化重合方式、塊状重合方式、または懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。
【0031】
重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物系が挙げられる。単独で用いるのが望ましいが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト塩等のイオン化の塩、トリエタノールアミン等のアミン類、アルドース、ケトース等の還元糖等を挙げることができる。また、アゾ化合物も好ましい重合開始剤であり、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオアミジン酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド等を使用できる。また、上記重合開始剤を2種以上の併用もできる。
【0032】
反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜8時間程度とされる。また、前記製造法のなかでも溶液重合法が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20〜80質量%程度とされる。
【0033】
粘着剤には、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるため、架橋剤を適宜に加えることもできる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等があげられる。架橋剤を使用する場合、その使用量は引き剥がし粘着力が下がり過ぎないことを考慮し、一般的には、上記ベースポリマー100質量部に対して、0.01〜5質量部程度配合するのが好ましい。粘着剤には、必要により、上記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有できる。
【0034】
粘着剤は、紫外線、電子線等の放射線により硬化して粘着力が低下する放射線硬化型粘着剤としてもよい。放射線硬化型粘着剤を用いた場合、放射線、例えば、紫外線の照射によって粘着力が低下することから、粘着シートの剥離が容易となる。
【0035】
放射線硬化型粘着剤としては、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0036】
配合する放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、特に制限されるものではないが、粘着性を考慮すると、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、5〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは60〜150質量部である。
【0038】
また、放射線硬化型粘着剤としては、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを使用できる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。この場合においては、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を特に加えなくてもよく、その使用は任意である。
【0039】
放射線硬化型粘着剤には、紫外線線等により硬化させる場合、光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α−メチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニゾインメチルエーテルの如きベンゾインエーテル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピルフェノン等のα−ケトール系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部程度が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0041】
また、粘着剤は、加熱により粘着力が低下する熱剥離型粘着剤、具体的には発泡剤を含有する加熱発泡剥離型粘着剤であってもよい。加熱発泡剥離型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに発泡剤を含有させたものが挙げられる。
【0042】
発泡剤としては、特に制限されないが、熱膨張性微小球を好適に使用できる。発泡剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。熱膨張性微小球としては、公知の熱膨張性微小球から適宜選択できる。熱膨張性微小球としては、マイクロカプセル化されている発泡剤を好適に使用できる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。
【0043】
殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造できる。
【0044】
発泡剤としては、熱膨張性微小球以外の発泡剤も使用できる。このような発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤等の各種発泡剤を適宜選択して使用できる。無機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、水;トリクロロモノフル オロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシ レート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼン スルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス (ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合 物;N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド等のN−ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0045】
発泡剤(熱膨張性微小球等)の配合量は、熱剥離型粘着剤の膨張倍率や粘着力の低下性等に応じて適宜選択できるが、一般にはベースポリマー100質量部に対して、1〜150質量部が好ましく、より好ましくは10〜130質量部、さらに好ましくは25〜100質量部である。
【0046】
粘着剤層の形成は、上記した各粘着剤を必要に応じて溶媒やその他の添加剤等と混合して、シート状の層に形成する慣用の方法により行うことができる。具体的には、上記粘着剤を含む混合物を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化させる方法、また適当なセパレータ(剥離紙等)上に上記混合物を塗布して粘着剤層を形成し、これを基材上に転写させる方法等が挙げられる。
【0047】
粘着剤層の厚さは、粘着剤の種類、必要とされる粘着力等に応じて適宜選択できるが、熱剥離型粘着剤以外のものについては、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μmであり、熱剥離型粘着剤については、5〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。粘着剤層が薄すぎると、十分な粘着力が得られないおそれがある。また、粘着剤層が厚すぎると、粘着力が過度に高くなり、粘着シートの剥離が困難となるおそれがある。
【0048】
粘着シートの貼り合わせは、例えば、未焼成の連結基板に粘着シートを重ね合わせた後、これらの表面をハンディーローラー等で一方の端部から他方の端部にかけて押圧する方法等、公知の方法を適用して行うことができる。
【0049】
一方、粘着シートの剥離は、粘着剤の種類に応じて以下に示すように行うことができる。
【0050】
放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤以外の粘着剤の場合、粘着力を低下させる特別な処理を行うことなく、そのまま未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。
【0051】
放射線硬化型粘着剤の場合、放射線、例えば、紫外線を照射し、粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。紫外線の照射は、粘着力を0.51N/20mm以下に低下させることが好ましく、30mJ/cm2以上の紫外線照射積算光量が好ましい。紫外線照射積算光量を30mJ/cm2以上とすることにより、粘着剤を十分に硬化させ、粘着力を低下できる。通常、紫外線照射積算光量は1000mJ/cm2以下が好ましい。
【0052】
熱剥離型粘着剤の場合、加熱によって粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。加熱温度は、粘着力を0.51N/20mm以下に低下させるものが好ましく、70〜120℃が好ましい。加熱温度を70℃以上とすることにより、粘着力を効果的に低下できる。また、120℃以下とすることにより、基材の変形等を抑制できる。加熱時間は、粘着剤自体が70〜120℃に達すればよく、特に限定されない。
【0053】
以下、発光素子を搭載するための素子基板の連結基板を例に挙げて具体的に説明する。まず、連結基板、および発光装置について説明する。なお、以下では、連結基板、および発光装置における同一部分について、同一の符号を付して説明する。
【0054】
図1は、連結基板の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す連結基板のA−A’線断面図である。
【0055】
連結基板1は、主として無機絶縁材料からなる略板状であって、中央部に素子基板群2が形成されるとともに、この素子基板群2に、縦3列、横3行、合計9個の素子基板となる構成単位である素子基板3が互いに隣接して配列される。9個の素子基板3の外側には、これを囲むようにして余剰部4が設けられる。ここで、略板状とは、目視レベルで全体が板状に見えるものであり、以後、略とは目視レベルでそのように見えるものを指す。
【0056】
連結基板1の上面1aには、隣接する素子基板3の境界線、余剰部4と素子基板3との境界線、およびこれらの境界線の延長線に、分割溝5が設けられる。図2に示すように、連結基板1の下面1bについても、上面1aの分割溝5に対応する位置に分割溝5が設けられる。
【0057】
連結基板1は、最終的に、分割溝5に応力を負荷する等により分割されて、独立した9個の素子基板3となる。また、分割による欠け等の不具合発生を防止するために、各素子基板3の4隅には、上面1aから下面1bに貫通するように分割孔6が形成される。
【0058】
連結基板1を構成する無機絶縁材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス(LTCC)等が挙げられる。無機絶縁材料としては、高反射性、製造の容易性、易加工性、経済性等の観点から、LTCCが好ましい。
【0059】
分割溝5の上面1aおよび下面1bに開口する開口部の幅は1〜50μmが好ましい。開口部の幅が1μm未満であると、連結基板1の分割精度が低下し、分割後の素子基板3にバリや欠けが発生しやすい。一方、開口部の幅が50μmを超えると、例えば、連結基板1の表面を平滑化するブラスト処理において、ブラスト処理に用いる研磨粒子が内部に侵入しやすい。
【0060】
分割溝5の深さは、100〜400μmが好ましい。深さが100μm未満であると、十分な分割精度を得られない。一方、深さが400μmを超えると、連結基板1の製造時の成形性が低下する。分割溝5の深さは、より好ましくは200〜300μmである。
【0061】
分割溝5の断面形状は、図2に示すようなV字形状が好ましいが、必ずしもこのような形状に限定されず、長方形状もしくはU字形状でもよい。なお、図2に示す連結基板1では、上面1aおよび下面1bの両面に分割溝5を設けたが、必ずしも両主面に分割溝5を設ける必要はなく、上面1aまたは下面1bの一方のみに分割溝5を設けてもよい。
【0062】
図3は、素子基板3の平面図であり、図4は、図3に示す素子基板3のB−B’線断面図である。
【0063】
素子基板3は、2ワイヤタイプの発光素子が8個搭載されるとともに、これらが電気的に並列接続されるものである。素子基板3は、略板状の本体部31を有し、この本体部31の上部に枠部32が形成される。枠部32の表面には、例えば、位置合わせ等に利用されるアライメントマーク321が形成される。本体部31の上面のうち、枠部32で囲まれた領域は発光素子の搭載される搭載面33となり、また枠部32の内部は発光素子の搭載後にシリコーン樹脂等の封止材が注入されて封止される。
【0064】
搭載面33には、発光素子と電気的に接続される配線導体34が設けられる。配線導体34は、第1の電極34aおよび第2の電極34bを有する。第1の電極34aは、搭載面33の中央に配設された1個のアノード側またはカソード側電極である。第2の電極34bは、搭載面33の外周部付近に配設された、第1の電極と反対極側の複数の電極である。第2の電極34bは、搭載される発光素子と同数形成され、それぞれ第1の電極34aを囲む円周上に略等間隔で配設される。ここで、第1の電極34aと第2の電極34bとの間の円周上の部分に、実際に発光素子が搭載される搭載部Tが設けられる。
【0065】
第2の電極34bの個数は、搭載される発光素子の個数と同数の8個であるが、それ以外に必要とする電極等があれば、必要に応じて形成できる。すなわち、配線導体34を構成する第1の電極34aの形状および位置、第2の電極34bの形状および個数等は、必ずしも限定されない。また、配線導体34の構成材料は、通常の発光素子基板に用いられる配線導体層と同様のものであれば特に制限されない。配線導体34の厚さは5〜15μmが好ましい。
【0066】
下面1bには、アノード側およびカソード側に対応する一対の外部電極端子35が設けられる。一対の外部電極端子35は、それぞれ本体部31の内部に形成された接続ビア36を介して、第1の電極34a、第2の電極34bと電気的に接続される。外部電極端子35および接続ビア36の形状や構成材料は、通常の発光素子基板と同様にできる。また、外部電極端子35および接続ビア36の配置については、第1の電極34aおよび第2の電極34bを介して発光素子を電気的に並列接続できれば特に限定されない。
【0067】
また、本体部31の熱抵抗を低減するために、本体部31の内部にサーマルビア37および放熱層38が埋設される。サーマルビア37を下面1bから搭載部Tまで貫通させた場合、熱抵抗は小さくできるが搭載部Tの平坦度が悪くなり、搭載する素子と搭載部Tの熱的な接触が悪くなる。サーマルビア37は、例えば発光素子の搭載部Tより小さい柱状で、下面1bから内部に埋設された放熱層38にかけて配設するのが好ましい。このようにサーマルビア37と搭載部Tとの間を基板材料等で距離を持たせることで、搭載面33、特に搭載部Tの平坦度を向上し、熱抵抗を低減でき、また発光素子を搭載したときの傾きも抑制できる。
【0068】
図5は、図3に示される素子基板3を有する発光装置の平面図であり、図6は、図5に示す発光装置のC−C’線断面図である。なお、図5では、封止層を除いた状態を示す。
【0069】
発光装置10は、素子基板3と、この素子基板3の搭載部Tに搭載され、一対の電極がそれぞれ配線導体34の第1の電極34aおよび第2の電極34bにワイヤボンディングされた2ワイヤタイプのLED素子からなる発光素子11とを備える。
【0070】
発光素子11は、8個が並列に接続されるように設けられ、いずれも下面が同サイズの正方形であり、図示しない接着剤であるシリコーンダイボンド材により搭載部Tに固定される。各発光素子11の図示しない電極の一方は、ボンディングワイヤ12によって第1の電極34aに接続され、他方の電極は、第2の電極34bのうち最も近い電極にボンディングワイヤ12によって接続される。8個の発光素子11の8対16個の電極を接続する16本のボンディングワイヤ12は、互いに交差しないように配置される。さらに、これらの発光素子11やボンディングワイヤ12を覆うように、モールド樹脂からなる封止層13が設けられる。
【0071】
このような発光装置10は、例えば、携帯電話、液晶TV、液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いられる。
【0072】
次に、連結基板1の製造方法を説明する。連結基板1は以下の工程により製造される。なお、以下では、連結基板1の構成材料をガラスセラミックスとし、素子基板3の本体部31を3枚のグリーンシートから構成し、枠部32を1枚のグリーンシートから構成する場合について説明する。
【0073】
(A)グリーンシート作製工程
ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物を用いてグリーンシートを作製する。グリーンシートとしては、いずれも所定数の素子基板3が形成されるものであって、本体部31を構成するための上層、中層、および下層の3枚のグリーンシート、ならびに枠部32を構成するための1枚のグリーンシートの計4枚を製造する。
【0074】
グリーンシートは、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させて製造する。
【0075】
ガラス粉末としては、ガラス転移点(Tg)が550〜700℃のものが好ましい。Tgが550℃未満の場合には、脱脂が困難となるおそれがあり、700℃を超える場合には、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0076】
また、ガラス粉末は、800〜930℃で焼成したときに結晶が析出するものが好ましい。結晶が析出することで、十分な機械的強度を得ることができる。さらに、DTA(示差熱分析)により測定される結晶化ピーク温度(Tc)が880℃以下のものが好ましい。Tcが880℃以下の場合、良好な寸法精度を得ることができる。
【0077】
ガラス粉末としては、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を57〜65%、B2O3を13〜18%、CaOを9〜23%、Al2O3を3〜8%、K2OおよびNa2Oから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5〜6%含有するものが好ましい。このようなものを用いることで、表面平坦度の向上が容易となる。
【0078】
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマとなる。SiO2の含有量が57%未満の場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。一方、SiO2の含有量が65%を超える場合には、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。SiO2の含有量は、好ましくは58%以上、より好ましくは59%以上、特に好ましくは60%以上である。また、SiO2の含有量は、好ましくは64%以下、より好ましくは63%以下である。
【0079】
B2O3は、ガラスのネットワークフォーマとなる。B2O3の含有量が13%未満の場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。一方、B2O3の含有量が18%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。B2O3の含有量は、好ましくは14%以上、より好ましくは15%以上である。また、B2O3の含有量は、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下である。
【0080】
Al2O3は、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を高めるために添加される。Al2O3の含有量が3%未満の場合、ガラスが不安定となるおそれがある。一方、Al2O3の含有量が8%を超える場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。Al2O3の含有量は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上である。また、Al2O3の含有量は、好ましくは7%以下、より好ましくは6%以下である。
【0081】
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めるとともに、ガラス溶融温度やTgを低下させるために添加される。CaOの含有量が9%未満の場合、ガラス溶融温度が過度に高くなるおそれがある。一方、CaOの含有量が23%を超える場合、ガラスが不安定になるおそれがある。CaOの含有量は、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上、特に好ましくは14%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22%以下、より好ましくは21%以下、特に好ましくは20%以下である。
【0082】
K2O、Na2Oは、Tgを低下させるために添加される。K2OおよびNa2Oの合計した含有量が0.5%未満の場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。一方、K2OおよびNa2Oの合計した含有量が6%を超える場合、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがあり、電気的絶縁性も低下するおそれがある。K2OおよびNa2Oの合計した含有量は、0.8%以上5%以下が好ましい。
【0083】
なお、ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、Tg等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10%以下が好ましい。
【0084】
ガラス粉末は、上記組成を有するガラスを溶融法によって製造し、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕して得られる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水またはエチルアルコールを用いることが好ましい。粉砕機としては、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。
【0085】
ガラス粉末の50%粒径(D50)は0.5〜2μmが好ましい。ガラス粉末のD50が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく取り扱いが困難になるばかりでなく、均一分散が困難になる。一方、ガラス粉末のD50が2μmを超える場合には、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径は、例えば粉砕後に必要に応じて分級して調整してもよい。
【0086】
セラミックス粉末としては、従来からガラスセラミックスに用いられているものを使用でき、例えば、アルミナ粉末、またはアルミナ粉末とアルミナよりも高い屈折率を有するセラミックスの粉末との混合粉末が好ましい。以下、アルミナよりも高い屈折率を有するセラミックスの粉末を高屈折率セラミックス粉末と示す。
【0087】
高屈折率セラミックス粉末は、ガラスセラミックスの反射率を向上させる成分であり、例えば、チタニア粉末、ジルコニア粉末、安定化ジルコニア粉末等が挙げられる。アルミナの屈折率が1.8程度であるのに対して、チタニアの屈折率は2.7程度、ジルコニアの屈折率は2.2程度であり、アルミナに比べて高い屈折率を有している。これらのセラミックスの粉末のD50は、0.5〜4μmが好ましい。
【0088】
ガラス粉末とセラミックス粉末とは、例えばガラス粉末が30〜50質量%、セラミックス粉末が50〜70質量%となるように配合し、混合して、ガラスセラミックス組成物とする。また、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーとする。
【0089】
バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を好適に使用できる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等を使用できる。溶剤としては、トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノール等の有機溶剤を好適に使用できる。
【0090】
スラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させて、本体部31となる上層、中層、および下層の3枚のグリーンシートを作製する。また、同様にして、枠部32となるグリーンシートを作製する。
【0091】
(B)未焼成導体形成工程
前記工程で作製されたグリーンシートの表面および内部に、未焼成導体、すなわち未焼成配線導体、未焼成外部電極端子、未焼成接続ビア、未焼成サーマルビア、未焼成放熱層等を形成する。
【0092】
図7に示すように、上層用グリーンシート31aには、各素子基板3の搭載面33の中央部となる位置に第1の未焼成電極34aを形成する。また、第1の未焼成電極34aを囲むようにリング状の未焼成連結導体34cを形成するとともに、8個の第2の未焼成電極34bを、未焼成連結導体34cから内側に延出するように略等間隔に形成する。さらに、第1の未焼成電極34aの中心部、および未焼成連結導体34cの所定の位置に、上層用グリーンシート31aを貫通するように未焼成接続ビア36を形成する。なお、図中、符号5で示す破線は、後工程で分割溝5が形成される溝形成予定部であり、符号6で示す破線は、後工程で分割孔6が形成される孔形成予定部である。以下の図8、9についても同様である。
【0093】
図8に示すように、中層用グリーンシート31bには、上面に未焼成放熱層38を形成するとともに、厚さ方向に貫通するように未焼成接続ビア36および未焼成サーマルビア37を形成する。また、図9に示すように、下層用グリーンシート31cには、厚さ方向に貫通するように未焼成接続ビア36および未焼成サーマルビア37を形成するとともに、下面に未焼成外部電極端子35を形成する。
【0094】
第1の未焼成電極34aは、上層用グリーンシート31aを貫通する未焼成接続ビア36により一方の未焼成放熱層38と電気的に接続され、該未焼成放熱層38は中層用グリーンシート31bおよび下層用グリーンシート31cを貫通する未焼成接続ビア36により一方の未焼成外部電極端子35に電気的に接続される。第2の未焼成電極34bは、上層用グリーンシート31aを貫通する未焼成接続ビア36により他方の未焼成放熱層38と電気的に接続され、該未焼成放熱層38は中層用グリーンシート31bおよび下層用グリーンシート31cを貫通する未焼成接続ビア36により他方の未焼成外部電極端子35に電気的に接続される。
【0095】
各未焼成導体は、スクリーン印刷による導体ペーストの塗布、または充填により形成する。導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金等を主成分とする金属の粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを使用できる。なお、上記金属粉末としては、銀粉末、銀と白金またはパラジウムからなる金属粉末が好ましく用いられる。
【0096】
(C)積層工程
上記工程で得られた本体部31となる上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31c、ならびに枠部32となるグリーンシートを所定の順序で重ね合わせ、熱圧着により一体化する。これにより、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1を得る。
【0097】
(D)分割溝および分割孔形成工程
分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1の表裏面に、それぞれグリーンシート切断機等を用いて、縦3列、横3行に配列される素子基板3の境界線上に縦4本、横4本の分割溝5を形成する。さらに、分割溝5の16か所の交点において交点を中心とする円形の貫通孔を分割孔6として孔開け機等を用いて形成し、分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得る。分割溝5の形成は、例えば、以下のようにして行う。
【0098】
まず、図10(a)に示すように、未焼成の連結基板1の下面1bに粘着シート7aを貼り合わせる。下面1bへの粘着シート7の貼り合わせは、例えば、下面1bに粘着シート7aを重ね合わせてハンディーローラー等にて積層方向に加圧して行う。その後、図10(b)に示すように、粘着シート7aが貼り合わされた下面1b側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定し、この状態で上面1aにグリーンシート切断機により分割溝5を形成する。その後、下面1bに貼り合わされた粘着シート7aの剥離のために加熱や紫外線の照射を行う場合、加熱または紫外線の照射を行う。
【0099】
次に、図10(c)に示すように、下面1bに粘着シート7aが貼り合わされた状態で、上面1aに粘着シート7bを貼り合わせる。上面1aへの粘着シート7bの貼り合わせは、例えば、上面1aに粘着シート7bを重ね合わせてハンディーローラー等にて積層方向に加圧して行う。
【0100】
さらに、図11(a)に示すように、上面1aおよび下面1bに粘着シート7aおよび7bが貼り合わされた未焼成の連結基板1の上面1a側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定する。その後、図11(b)に示すように、上面1a側を真空吸着により固定しつつ、下面1bから粘着シート7aを剥離し、下面1bにグリーンシート切断機により分割溝5を形成する。
【0101】
さらに、上面1aに貼り合わされた粘着シート7bの剥離のために加熱や紫外線の照射を行う場合、加熱または紫外線の照射を行った後、図11(c)に示すように、上面1aに粘着シート7bが貼り合わされた状態で、下面1bを多孔質状の吸着台8により真空吸着する。その後、図11(d)に示すように、下面1bを真空吸着により固定しつつ、上面1aから粘着シート7bを剥離する。
【0102】
上記方法により、両主面に分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得ることができる。また、上記したように、未焼成の連結基板1を真空吸着により固定しつつ、粘着シート7bを剥離することで、粘着シート7bを容易に剥離できる。この際、粘着シート7a、7bとして粘着力の異なるシートを用いることで、具体的には、先に剥離する粘着シート7aの粘着力を粘着シート7bの粘着力よりも小さくすることで、先に剥離する粘着シート7aを剥離しやすくなるため好ましい。
【0103】
分割溝5は、焼成後の連結基板1における上面1aまたは下面1bに開口する開口部の幅が1〜50μmとなるように形成することが好ましい。また、分割溝5は、焼成後の連結基板1における上面1aまたは下面1bからの深さが100〜400μmとなるように形成することが好ましい。
【0104】
粘着シート7は、例えば、基材71と、この基材71の一方の主面に形成された粘着層72とを有し、この粘着層72によって未焼成の連結基板1に貼り合わされる。未焼成の連結基板1への粘着シート7の貼り合わせは、上記したように、未焼成の連結基板1と粘着シート7とを重ね合わせ、ハンディーローラー等で一方の端部から他方の端部にかけて押圧する方法等により行うことができる。
【0105】
一方、未焼成の連結基板1からの粘着シート7の剥離についても、既に説明したように、粘着層72を構成する粘着剤の種類に応じて以下のように行うことができる。すなわち、放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤以外の粘着剤の場合、粘着力を低下させる特別な処理を行うことなく、そのまま未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。放射線硬化型粘着剤の場合、放射線、例えば、紫外線を照射し、粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。熱剥離型粘着剤の場合、加熱によって粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。なお、放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤の場合であっても、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあるものについては、剥離時に放射線の照射または加熱を行う必要はない。
【0106】
(E)焼成工程
分割溝5が形成された未焼成の連結基板1は、必要に応じてバインダー等を脱脂後、ガラスセラミックス組成物を焼結させるための焼成を行って連結基板1とする。
【0107】
脱脂は、例えば500〜600℃の温度で1〜10時間保持する。脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去できないおそれがある。一方、脱脂温度は600℃程度、脱脂時間は10時間とすれば、バインダー等を十分に除去でき、これを超えるとかえって生産性等が低下するおそれがある。
【0108】
焼成は、緻密な構造の獲得と分割精度、生産性を考慮して、800〜930℃の温度範囲で適宜時間を調整できる。具体的には、850〜900℃の温度で20〜60分の保持が好ましく、特に860〜880℃の温度が好ましい。焼成温度が800℃未満では、緻密な構造を得られないおそれがある。一方、焼成温度は930℃を超えると、構造が緻密になり過ぎて分割溝5の表面粗さRaが過度に低くなり、分割精度が低下するおそれがある。また、変形により生産性等が低下するおそれもある。さらに、導体ペーストとして、銀を主成分とする金属粉末を含有する導体ペーストを用いた場合、焼成温度が880℃を超えると、過度に軟化するために所定の形状を維持できなくなるおそれもある。
【0109】
以上、連結基板1の製造方法について、ガラスセラミックスの場合を例に挙げて説明したが、構成材料としてはガラスセラミックス以外のセラミックスであってもよく、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト等であってもよい。これらのものについても、ガラスセラミックスの場合と同様、原料粉末にバインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等により所定のグリーンシートとする。このグリーンシートからなる分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1について、粘着シート7を用いて分割溝5を形成する。その後、分割溝5が形成された未焼成の連結基板1について、必要に応じて脱脂を行い、所定の焼成温度、例えば、酸化アルミニウムについては1400〜1700℃、窒化アルミニウムについては1700〜1950℃で焼成する。これにより、連結基板1が得られる。
【0110】
以上、連結基板1の製造方法について説明したが、分割溝5は必ずしも上面1aおよび下面1bの両面に形成される必要はなく、上面1aおよび下面1bの一方に形成されてもよい。また、分割溝5の形成順序についても、上面1aおよび下面1bのいずれが先であってもよく、必ずしも上面1aに先に分割溝5を形成する必要はない。さらに、粘着力を低下させる処理を行う時期についても、必ずしも真空吸着前に限られず、真空吸着後、すなわち真空吸着された状態で行ってもよい。また、連結基板1を構成するグリーンシートの枚数、素子基板群2や素子基板3の形成数、配置、発光素子11の搭載数、配置等についても、必要に応じて適宜変更できる。
【実施例】
【0111】
次に、本発明の具体的な実施例を記載する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0112】
(実施例:例1〜7、比較例:例8)
図12に模式的に示すような未焼成の連結基板1を製造した。ここで、未焼成の連結基板1は、焼成前の大きさが170mm×170mmとなるものであり、外周部付近の余剰部4を除いた部分に6箇所の素子基板群2を有するものである。未焼成の連結基板1における個々の素子基板3の大きさは、焼成後の大きさで2.5mm×1.5mmであり、連結基板1の全体における素子基板3の形成数、すなわち6箇所の素子基板群2における素子基板3の形成数の合計数は、2940個である。
【0113】
まず、素子基板3の本体部31となるグリーンシート(上層用グリーンシート、内層用グリーンシート、および下層用グリーンシート)、および枠部32となるグリーンシートを作製した。グリーンシートの作製においては、酸化物基準のモル%表示で、SiO2が60.4%、B2O3が15.6%、Al2O3が6%、CaOが15%、K2Oが1%、Na2Oが2%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0114】
次いで、このガラス粉末、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45H)、ジルコニアフィラー(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3F−J)を、ガラス粉末38質量%、アルミナフィラー38質量%、ジルコニアフィラー24質量%の割合となるように配合し、混合して、ガラスセラミックス組成物を調製した。このガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)を配合し、混合してスラリーを調製した。
【0115】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させて、素子基板3の本体部31となる上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31c、ならびに枠部32となるグリーンシートを製造した。なお、上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、下層用グリーンシート31c、および枠部32となるグリーンシートは、上記したように所定の個数の素子基板群2および素子基板3が形成されるものである。
【0116】
一方、導電性金属粉末(大研化学工業社製、商品名:S550)、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散後、磁器乳鉢中で1時間混練し、さらに三本ロールにて3回分散して導体ペーストを製造した。
【0117】
上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31cについては、図7〜9に示すように、導体ペーストのスクリーン印刷により各未焼成導体を形成した。また、枠部32となるグリーンシートについては、各素子基板3の中央部をグリーンシート用パンチングマシーンにより円形にくり抜いた。また、各グリーンシートには、各素子基板3の角部に分割孔6となる直径0.6mmの円形の貫通孔を孔開け機により形成した。
【0118】
次に、上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31cを所定の順で積層するとともに、上層用グリーンシート31aの上部に枠部32となるグリーンシートを積層し、加熱および加圧により一体化した。こうして、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1を得た。未焼成の連結基板1の厚さは0.7mmである。
【0119】
次いで、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1に、表1に示すような粘着力を有する粘着シート7を用い、図10、11に示すようにして分割溝5を形成した。粘着力は、「JIS K 6854−3 T型剥離接着試験」に準じて、被着体としてグリーンシート積層体に被着させたときの粘着力である。ここで、測定に用いたグリーンシート積層体の厚みは1.2mmとした。グリーンシート積層体への被着は、「JIS Z 0237」に準じて、ハンディーローラーにて、20mm/s、2往復の条件で圧着を行った。粘着力の測定は、いずれも粘着力を低下させる処理をせずに行った。
【0120】
ここで、表1には、粘着シート7の剥離処理タイプを示した。「熱」は、所定温度での加熱により粘着力が低下するもの、「UV光」はUV光の照射により粘着力が低下するもの、「なし」は加熱やUV光の照射を行わないものを示す。表1に示す粘着力は、このような熱剥離タイプおよびUV光剥離タイプであっても加熱やUV光の照射を行わずに測定した粘着力であるが、仮に剥離時に加熱やUV光の照射を行えばより粘着力が低下することから、剥離処理が容易となる。
【0121】
まず、図10(a)に示すように、未焼成の連結基板1の下面1bに粘着シート7aを貼り合わせた。下面1bへの粘着シート7aの貼り合わせは、下面1bに粘着シート7aを重ね合わせてハンディーローラーにて積層方向に加圧して行った。その後、図10(b)に示すように、粘着シート7aが貼り合わされた下面1b側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定し、この状態で上面1aにグリーンシート切断機により分割溝5を形成した。その後、下面1bに貼り合わされた粘着シート7aの剥離処理のタイプに応じて、加熱や紫外線の照射により粘着力が低下するものについては、加熱または紫外線の照射を行った。
【0122】
次に、図10(c)に示すように、下面1bに粘着シート7aが貼り合わされた状態で、上面1aに粘着シート7bを貼り合わせた。上面1aへの粘着シート7bの貼り合わせは、上面1aに粘着シート7bを重ね合わせてハンディーローラーにて積層方向に加圧して行った。
【0123】
さらに、図11(a)に示すように、上面1aおよび下面1bに粘着シート7a、7bが貼り合わされた未焼成の連結基板1の上面1a側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定した。その後、図11(b)に示すように、上面1a側を真空吸着により固定しつつ、下面1bから粘着シート7aを剥離し、下面1bにグリーンシート切断機により分割溝5を形成した。
【0124】
さらに、上面1aに貼り合わされた粘着シート7bの剥離処理のタイプに応じて、加熱や紫外線の照射により粘着力が低下するものについては、加熱または紫外線の照射を行った後、図11(c)に示すように、上面1aに粘着シート7bが貼り合わされた状態で、下面1bを多孔質状の吸着台8により真空吸着した。その後、図11(d)に示すように、下面1bを真空吸着により固定しつつ、上面1aから粘着シート7bを剥離した。これにより、両主面に分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得た。
【0125】
なお、分割溝5は、素子基板3どうしの間、また素子基板3と余剰部4との間に、未焼成の連結基板1における深さで280μmとなるようにセラミックグリーンシート積層体切断機(UHT社製G−cut6)を用いて形成した。
【0126】
このような未焼成の連結基板1の製造において、分割溝5の形成前後における位置ずれを評価した。評価は、図13に示すような42箇所の評価点9において、分割溝5の形成前後に各素子基板3の左上角部に設けられた分割孔6の位置ずれを測定し、これを平均するとともに、同様の操作を他の2枚の未焼成の連結基板1について行い、計3枚の未焼成の連結基板1の位置ずれの平均値を求めた。結果を表2に示す。表中、位置ずれの平均値が0.05mm以下であるものを位置ずれが抑制されたものとして「○」で示し、平均値が0.05mmを超えるものを「×」で示した。
【0127】
なお、評価点9は、6箇所の素子基板群2における4つの角部および長辺部の中央部に位置する素子基板3(特に、その左上角部に設けられた分割孔6)、また左右方向における中央部の2箇所の素子基板群2についてはさらに中央部および短辺部の中央部に位置する素子基板3(特に、その左上角部に設けられた分割孔6)とした。
【0128】
また、未焼成の連結基板1について、粘着シート7を剥離したときの表面の印刷膜の状態(剥離結果)を評価した。評価は、光学顕微鏡を用いて印刷膜の剥離の有無を調べた。結果を表2に示す。表中、印刷膜の剥離がなかったものを「○」、一部の印刷膜が剥離したものを「×」で示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表2から明らかなように、粘着シート7の粘着力が0.09N/20mm以上の場合、分割溝5の形成による位置ずれを有効に抑制できる。また、粘着シート7の剥離による印刷膜の損傷を抑制する観点から、粘着シート7の粘着力、特に剥離時の粘着力は0.51N/20mm以下が好ましく、粘着シート7の種類としては、剥離処理を必要としないか、剥離処理が必要な場合には加熱処理を行うものが好ましい。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…連結基板、1a…上面、1b…下面、2…素子基板群、3…素子基板、4…余剰部、5…分割溝、6…分割孔、7a,7b…粘着シート、8…吸着台、9…評価点、10…発光装置、11…発光素子、12…ボンディングワイヤ、13…封止層、31…本体部、31a…上層用グリーンシート、31b…中層用グリーンシート、31c…下層用グリーンシート、32…枠部、33…搭載面、34…配線導体、34a…第1の電極、34b…第2の電極、34c…連結導体、35…外部電極端子、36…接続ビア、37…サーマルビア、38…放熱層、71…基材、72…粘着層、321…アライメントマーク、T…搭載部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載するための素子基板が複数連結して形成されるとともに、各素子基板間に分割のための分割溝を有する連結基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子等の発光素子を有する発光装置の高輝度および白色化に伴い、携帯電話、液晶TV、液晶ディスプレイのバックライト等に発光素子を有する発光装置が使用されている。発光素子を有する発光装置は、例えば、発光ダイオード素子等の発光素子と、この発光素子を搭載する素子基板とから構成され、従来、素子基板として樹脂材料からなるものが用いられている。しかし、発光素子の高輝度化に伴って発熱量が増加し、耐熱性に優れ、かつ発光素子から発生する熱を速やかに放散して十分な発光輝度を得られる素子基板が求められている。
【0003】
耐熱性の高い素子基板として、アルミナ基板が知られている。また、アルミナ基板に比べて高い反射率が得られる素子基板として、低温同時焼成セラミックス基板(Low Temperature Co-fired Ceramics)が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、低温同時焼成セラミックス基板をLTCC基板と記す。
【0004】
LTCC基板は、ガラスとアルミナ粉末のようなセラミックス粉末とからなり、ガラスとセラミックスとの屈折率差が大きく、光の入射方向に面する両者の界面の占める割合が多く、かつセラミックス粉末の粒径が使用波長より大きいことから、高い反射率が得られる。これにより、発光素子からの光を効率よく利用でき、発熱量を低減できる。また、無機酸化物からなるために光源による劣化が少なく、長期間に亘って基板の色調を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/128354号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発光装置等に対する小型化の要求から、素子基板についても小型化が求められている。小型の素子基板を作製する場合、取扱い性を向上させる観点から、まず複数の素子基板が連結して形成されるとともに、各素子基板間に分割溝が形成された連結基板を製造し、めっき処理や発光素子の実装を行った後、分割溝を利用して個々の素子基板に分割することが好ましい。
【0007】
連結基板は、例えば、分割溝の形成されていない未焼成の連結基板を製造し、この未焼成の連結基板における素子基板間にセラミックグリーンシート積層体切断機等を用いて分割溝を形成した後、焼成等を行って製造される。
【0008】
また、分割溝は、例えば、未焼成の連結基板の表面にセラミックグリーンシート積層体切断機等の切断刃を押し付けることにより形成され、具体的には、未焼成の連結基板の表面における縦横方向のうち、まず一方向において端部から順に1本ずつ形成した後、これと交差する他方向において端部から順に1本ずつ形成される。
【0009】
しかしながら、切断刃を押し付けて分割溝を形成する場合、切断刃の押し付けにより未焼成の連結基板に水平方向の外力が加わり、全体が外側に広がるように変形し、素子基板に変形や位置ずれが発生しやすい。例えば、素子基板には位置合わせのためのアライメントマークが形成されるが、アライメントマークの位置が本来の位置からずれることにより、分割溝の形成位置、素子基板における電極等の各種導体の相対的な位置等にバラツキが発生し、発光装置等としたときに実装位置の精度等が低下しやすい。特に、未焼成の連結基板には多数の素子基板が形成されることから、素子基板における変形や位置ずれが大きくなりやすい。
【0010】
また、分割溝の形成は、分割溝を形成する表面とは反対側の表面を真空吸着により固定して行うが、素子基板の各角部に分割を容易にするための貫通孔である分割孔が形成される場合、この分割孔のために真空吸着が不十分のため十分に固定できない。また、素子基板の中央部に発光素子等を搭載するための凹部が形成される場合、この凹部の開口部側を真空吸着すると、凹部の底部が開口部側に凸状に変形しやすい。いずれの場合についても、素子基板における変形や位置ずれが発生しやすく、発光装置等としたときに実装位置の精度等が低下しやすい。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、分割溝を形成する際の素子基板の変形や位置ずれを抑制できる連結基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の連結基板の他の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離するとともに、前記第1の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、前記第2の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分割溝の形成時、分割溝を形成する主面とは反対側の主面に所定の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせることで、各素子基板となる部分を粘着シートによって拘束でき、その変形や位置ずれを抑制できる。結果として、発光装置等としたときの実装位置の精度等を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の製造方法により製造される連結基板の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1に示す連結基板の断面図。
【図3】素子基板の一実施形態を示す平面図。
【図4】図3に示す素子基板の断面図。
【図5】発光装置の一実施形態を示す平面図。
【図6】図5に示す発光装置の断面図。
【図7】未焼成導体が形成された上層用グリーンシートの平面図。
【図8】未焼成導体が形成された中層用グリーンシートの平面図。
【図9】未焼成導体が形成された下層用グリーンシートの平面図。
【図10】粘着シートを用いた分割溝の形成方法を説明する説明図。
【図11】粘着シートを用いた分割溝の形成方法を説明する説明図。
【図12】実施例の未焼成の連結基板を模式的に示す平面図。
【図13】位置ずれの評価点を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、連結基板の製造方法について詳細に説明する。
連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面とは反対側の第2の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第1の主面から粘着シートを剥離した後、未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
他の連結基板の製造方法は、複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面とは反対側の第2の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、第1の主面から粘着シートを剥離するとともに、第1の主面に複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、第2の主面から粘着シートを剥離した後、未焼成の連結基板を焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
上記各製造方法によれば、未焼成の連結基板の分割溝を形成する主面とは反対側の主面に粘着シートを貼り合わせ、この粘着シートが貼り合わされた状態で未焼成の連結基板に分割溝を形成することで、各素子基板となる部分を粘着シートによって拘束でき、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を抑制できる。結果として、発光装置等としたときの実装位置の精度等を向上できる。特に、未焼成の連結基板における素子基板の形成数が0.25pcs/mm2以上の場合に、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を顕著に抑制できる。なお、素子基板の形成数の上限は、特に限定されないが、通常1.0pcs/mm2以下である。例えば、連結基板のサイズが170mm×170mmの場合、素子基板の形成数が2000個以上となると、変形や位置ずれ等を抑制する効果が顕著となる。
【0019】
また、粘着シートを貼り合わせることで、各素子基板となる部分の角部に分割を容易にするための分割孔が設けられる場合であっても、分割孔を粘着シートにより塞ぐことができ、真空吸着による固定を確実に行うことができる。さらに、各素子基板となる部分の中央部に発光素子等を搭載するための凹部が設けられる場合であっても、その開口部側に粘着シートを貼り合わせることで、開口部を粘着シートにより塞ぐことができ、真空吸着により開口部とは反対側に位置する底部が開口部側に引き寄せられることによる変形を抑制できる。
【0020】
特に、粘着シートの粘着力、より具体的には初期粘着力を0.09N/20mm以上とすることで、分割溝の形成時における各素子基板となる部分の固定を確実にし、各素子基板となる部分の変形や位置ずれ等を抑制できる。さらに、粘着シートの粘着力、より具体的には剥離時の粘着力を0.51N/20mm以下とすることで、粘着シートの剥離時、素子基板となる部分の表面に形成された形成物、例えば、位置合わせのためのアライメントマークや未焼成外部電極端子等の剥離等による損傷を抑制できる。
【0021】
上記粘着力を有する粘着シートとしては、例えば、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあり、剥離時に粘着力を低下させるための処理を必要としないもの、また初期粘着力が0.51N/20mmを超え、剥離時に粘着力を低下させるための処理が必要となるものが挙げられるが、いずれであってもよい。粘着力を低下させる処理としては、加熱または放射線の照射が挙げられる。なお、加熱または放射線の照射により粘着力が低下するものであっても、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあるものについては、剥離時に加熱または放射線の照射を行わずに使用できる。
【0022】
連結基板の製造に用いられる粘着シートは、通常、基材と、この基材上に形成された粘着剤層とから構成される
【0023】
基材としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプ ロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素 樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。基材の厚さは、例えば、5〜200μmが好ましい。
【0024】
粘着剤層の構成材料としては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーやゴム系ポリマー等を含む公知の粘着剤が挙げられる。粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プルピル基、イソプルピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、及びドデシル基等の炭素数30以下、好ましくは炭素数4〜18の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記以外のモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸等の酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、及び(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。これらモノマー成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋処理等を目的に多官能モノマー等も必要に応じて共重合モノマー成分として使用できる。
【0028】
多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能モノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
多官能モノマーの使用量は、粘着特性等の観点より全モノマー成分の30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーの調製は、例えば1種または2種以上のモノマー成分を含む混合物を溶液重合方式、乳化重合方式、塊状重合方式、または懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。
【0031】
重合開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物系が挙げられる。単独で用いるのが望ましいが、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、鉄、銅、コバルト塩等のイオン化の塩、トリエタノールアミン等のアミン類、アルドース、ケトース等の還元糖等を挙げることができる。また、アゾ化合物も好ましい重合開始剤であり、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオアミジン酸塩、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド等を使用できる。また、上記重合開始剤を2種以上の併用もできる。
【0032】
反応温度は通常50〜85℃程度、反応時間は1〜8時間程度とされる。また、前記製造法のなかでも溶液重合法が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーの溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤が用いられる。溶液濃度は通常20〜80質量%程度とされる。
【0033】
粘着剤には、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるため、架橋剤を適宜に加えることもできる。架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等があげられる。架橋剤を使用する場合、その使用量は引き剥がし粘着力が下がり過ぎないことを考慮し、一般的には、上記ベースポリマー100質量部に対して、0.01〜5質量部程度配合するのが好ましい。粘着剤には、必要により、上記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有できる。
【0034】
粘着剤は、紫外線、電子線等の放射線により硬化して粘着力が低下する放射線硬化型粘着剤としてもよい。放射線硬化型粘着剤を用いた場合、放射線、例えば、紫外線の照射によって粘着力が低下することから、粘着シートの剥離が容易となる。
【0035】
放射線硬化型粘着剤としては、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
【0036】
配合する放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、特に制限されるものではないが、粘着性を考慮すると、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、5〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは60〜150質量部である。
【0038】
また、放射線硬化型粘着剤としては、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを使用できる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。この場合においては、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を特に加えなくてもよく、その使用は任意である。
【0039】
放射線硬化型粘着剤には、紫外線線等により硬化させる場合、光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α−メチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニゾインメチルエーテルの如きベンゾインエーテル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピルフェノン等のα−ケトール系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0040】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100質量部に対して、0.1〜10質量部程度が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0041】
また、粘着剤は、加熱により粘着力が低下する熱剥離型粘着剤、具体的には発泡剤を含有する加熱発泡剥離型粘着剤であってもよい。加熱発泡剥離型粘着剤としては、例えば、前述の(メタ)アクリル系ポリマーに発泡剤を含有させたものが挙げられる。
【0042】
発泡剤としては、特に制限されないが、熱膨張性微小球を好適に使用できる。発泡剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。熱膨張性微小球としては、公知の熱膨張性微小球から適宜選択できる。熱膨張性微小球としては、マイクロカプセル化されている発泡剤を好適に使用できる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球等が挙げられる。
【0043】
殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法や、界面重合法等により製造できる。
【0044】
発泡剤としては、熱膨張性微小球以外の発泡剤も使用できる。このような発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤等の各種発泡剤を適宜選択して使用できる。無機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤の代表的な例としては、例えば、水;トリクロロモノフル オロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシ レート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビス(ベンゼン スルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス (ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合 物;N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド等のN−ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0045】
発泡剤(熱膨張性微小球等)の配合量は、熱剥離型粘着剤の膨張倍率や粘着力の低下性等に応じて適宜選択できるが、一般にはベースポリマー100質量部に対して、1〜150質量部が好ましく、より好ましくは10〜130質量部、さらに好ましくは25〜100質量部である。
【0046】
粘着剤層の形成は、上記した各粘着剤を必要に応じて溶媒やその他の添加剤等と混合して、シート状の層に形成する慣用の方法により行うことができる。具体的には、上記粘着剤を含む混合物を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化させる方法、また適当なセパレータ(剥離紙等)上に上記混合物を塗布して粘着剤層を形成し、これを基材上に転写させる方法等が挙げられる。
【0047】
粘着剤層の厚さは、粘着剤の種類、必要とされる粘着力等に応じて適宜選択できるが、熱剥離型粘着剤以外のものについては、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μmであり、熱剥離型粘着剤については、5〜300μmが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。粘着剤層が薄すぎると、十分な粘着力が得られないおそれがある。また、粘着剤層が厚すぎると、粘着力が過度に高くなり、粘着シートの剥離が困難となるおそれがある。
【0048】
粘着シートの貼り合わせは、例えば、未焼成の連結基板に粘着シートを重ね合わせた後、これらの表面をハンディーローラー等で一方の端部から他方の端部にかけて押圧する方法等、公知の方法を適用して行うことができる。
【0049】
一方、粘着シートの剥離は、粘着剤の種類に応じて以下に示すように行うことができる。
【0050】
放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤以外の粘着剤の場合、粘着力を低下させる特別な処理を行うことなく、そのまま未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。
【0051】
放射線硬化型粘着剤の場合、放射線、例えば、紫外線を照射し、粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。紫外線の照射は、粘着力を0.51N/20mm以下に低下させることが好ましく、30mJ/cm2以上の紫外線照射積算光量が好ましい。紫外線照射積算光量を30mJ/cm2以上とすることにより、粘着剤を十分に硬化させ、粘着力を低下できる。通常、紫外線照射積算光量は1000mJ/cm2以下が好ましい。
【0052】
熱剥離型粘着剤の場合、加熱によって粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板から粘着シートを剥離する。加熱温度は、粘着力を0.51N/20mm以下に低下させるものが好ましく、70〜120℃が好ましい。加熱温度を70℃以上とすることにより、粘着力を効果的に低下できる。また、120℃以下とすることにより、基材の変形等を抑制できる。加熱時間は、粘着剤自体が70〜120℃に達すればよく、特に限定されない。
【0053】
以下、発光素子を搭載するための素子基板の連結基板を例に挙げて具体的に説明する。まず、連結基板、および発光装置について説明する。なお、以下では、連結基板、および発光装置における同一部分について、同一の符号を付して説明する。
【0054】
図1は、連結基板の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す連結基板のA−A’線断面図である。
【0055】
連結基板1は、主として無機絶縁材料からなる略板状であって、中央部に素子基板群2が形成されるとともに、この素子基板群2に、縦3列、横3行、合計9個の素子基板となる構成単位である素子基板3が互いに隣接して配列される。9個の素子基板3の外側には、これを囲むようにして余剰部4が設けられる。ここで、略板状とは、目視レベルで全体が板状に見えるものであり、以後、略とは目視レベルでそのように見えるものを指す。
【0056】
連結基板1の上面1aには、隣接する素子基板3の境界線、余剰部4と素子基板3との境界線、およびこれらの境界線の延長線に、分割溝5が設けられる。図2に示すように、連結基板1の下面1bについても、上面1aの分割溝5に対応する位置に分割溝5が設けられる。
【0057】
連結基板1は、最終的に、分割溝5に応力を負荷する等により分割されて、独立した9個の素子基板3となる。また、分割による欠け等の不具合発生を防止するために、各素子基板3の4隅には、上面1aから下面1bに貫通するように分割孔6が形成される。
【0058】
連結基板1を構成する無機絶縁材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス(LTCC)等が挙げられる。無機絶縁材料としては、高反射性、製造の容易性、易加工性、経済性等の観点から、LTCCが好ましい。
【0059】
分割溝5の上面1aおよび下面1bに開口する開口部の幅は1〜50μmが好ましい。開口部の幅が1μm未満であると、連結基板1の分割精度が低下し、分割後の素子基板3にバリや欠けが発生しやすい。一方、開口部の幅が50μmを超えると、例えば、連結基板1の表面を平滑化するブラスト処理において、ブラスト処理に用いる研磨粒子が内部に侵入しやすい。
【0060】
分割溝5の深さは、100〜400μmが好ましい。深さが100μm未満であると、十分な分割精度を得られない。一方、深さが400μmを超えると、連結基板1の製造時の成形性が低下する。分割溝5の深さは、より好ましくは200〜300μmである。
【0061】
分割溝5の断面形状は、図2に示すようなV字形状が好ましいが、必ずしもこのような形状に限定されず、長方形状もしくはU字形状でもよい。なお、図2に示す連結基板1では、上面1aおよび下面1bの両面に分割溝5を設けたが、必ずしも両主面に分割溝5を設ける必要はなく、上面1aまたは下面1bの一方のみに分割溝5を設けてもよい。
【0062】
図3は、素子基板3の平面図であり、図4は、図3に示す素子基板3のB−B’線断面図である。
【0063】
素子基板3は、2ワイヤタイプの発光素子が8個搭載されるとともに、これらが電気的に並列接続されるものである。素子基板3は、略板状の本体部31を有し、この本体部31の上部に枠部32が形成される。枠部32の表面には、例えば、位置合わせ等に利用されるアライメントマーク321が形成される。本体部31の上面のうち、枠部32で囲まれた領域は発光素子の搭載される搭載面33となり、また枠部32の内部は発光素子の搭載後にシリコーン樹脂等の封止材が注入されて封止される。
【0064】
搭載面33には、発光素子と電気的に接続される配線導体34が設けられる。配線導体34は、第1の電極34aおよび第2の電極34bを有する。第1の電極34aは、搭載面33の中央に配設された1個のアノード側またはカソード側電極である。第2の電極34bは、搭載面33の外周部付近に配設された、第1の電極と反対極側の複数の電極である。第2の電極34bは、搭載される発光素子と同数形成され、それぞれ第1の電極34aを囲む円周上に略等間隔で配設される。ここで、第1の電極34aと第2の電極34bとの間の円周上の部分に、実際に発光素子が搭載される搭載部Tが設けられる。
【0065】
第2の電極34bの個数は、搭載される発光素子の個数と同数の8個であるが、それ以外に必要とする電極等があれば、必要に応じて形成できる。すなわち、配線導体34を構成する第1の電極34aの形状および位置、第2の電極34bの形状および個数等は、必ずしも限定されない。また、配線導体34の構成材料は、通常の発光素子基板に用いられる配線導体層と同様のものであれば特に制限されない。配線導体34の厚さは5〜15μmが好ましい。
【0066】
下面1bには、アノード側およびカソード側に対応する一対の外部電極端子35が設けられる。一対の外部電極端子35は、それぞれ本体部31の内部に形成された接続ビア36を介して、第1の電極34a、第2の電極34bと電気的に接続される。外部電極端子35および接続ビア36の形状や構成材料は、通常の発光素子基板と同様にできる。また、外部電極端子35および接続ビア36の配置については、第1の電極34aおよび第2の電極34bを介して発光素子を電気的に並列接続できれば特に限定されない。
【0067】
また、本体部31の熱抵抗を低減するために、本体部31の内部にサーマルビア37および放熱層38が埋設される。サーマルビア37を下面1bから搭載部Tまで貫通させた場合、熱抵抗は小さくできるが搭載部Tの平坦度が悪くなり、搭載する素子と搭載部Tの熱的な接触が悪くなる。サーマルビア37は、例えば発光素子の搭載部Tより小さい柱状で、下面1bから内部に埋設された放熱層38にかけて配設するのが好ましい。このようにサーマルビア37と搭載部Tとの間を基板材料等で距離を持たせることで、搭載面33、特に搭載部Tの平坦度を向上し、熱抵抗を低減でき、また発光素子を搭載したときの傾きも抑制できる。
【0068】
図5は、図3に示される素子基板3を有する発光装置の平面図であり、図6は、図5に示す発光装置のC−C’線断面図である。なお、図5では、封止層を除いた状態を示す。
【0069】
発光装置10は、素子基板3と、この素子基板3の搭載部Tに搭載され、一対の電極がそれぞれ配線導体34の第1の電極34aおよび第2の電極34bにワイヤボンディングされた2ワイヤタイプのLED素子からなる発光素子11とを備える。
【0070】
発光素子11は、8個が並列に接続されるように設けられ、いずれも下面が同サイズの正方形であり、図示しない接着剤であるシリコーンダイボンド材により搭載部Tに固定される。各発光素子11の図示しない電極の一方は、ボンディングワイヤ12によって第1の電極34aに接続され、他方の電極は、第2の電極34bのうち最も近い電極にボンディングワイヤ12によって接続される。8個の発光素子11の8対16個の電極を接続する16本のボンディングワイヤ12は、互いに交差しないように配置される。さらに、これらの発光素子11やボンディングワイヤ12を覆うように、モールド樹脂からなる封止層13が設けられる。
【0071】
このような発光装置10は、例えば、携帯電話、液晶TV、液晶ディスプレイ等のバックライト、自動車用あるいは装飾用の照明、その他の光源として好適に用いられる。
【0072】
次に、連結基板1の製造方法を説明する。連結基板1は以下の工程により製造される。なお、以下では、連結基板1の構成材料をガラスセラミックスとし、素子基板3の本体部31を3枚のグリーンシートから構成し、枠部32を1枚のグリーンシートから構成する場合について説明する。
【0073】
(A)グリーンシート作製工程
ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物を用いてグリーンシートを作製する。グリーンシートとしては、いずれも所定数の素子基板3が形成されるものであって、本体部31を構成するための上層、中層、および下層の3枚のグリーンシート、ならびに枠部32を構成するための1枚のグリーンシートの計4枚を製造する。
【0074】
グリーンシートは、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させて製造する。
【0075】
ガラス粉末としては、ガラス転移点(Tg)が550〜700℃のものが好ましい。Tgが550℃未満の場合には、脱脂が困難となるおそれがあり、700℃を超える場合には、収縮開始温度が高くなり、寸法精度が低下するおそれがある。
【0076】
また、ガラス粉末は、800〜930℃で焼成したときに結晶が析出するものが好ましい。結晶が析出することで、十分な機械的強度を得ることができる。さらに、DTA(示差熱分析)により測定される結晶化ピーク温度(Tc)が880℃以下のものが好ましい。Tcが880℃以下の場合、良好な寸法精度を得ることができる。
【0077】
ガラス粉末としては、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を57〜65%、B2O3を13〜18%、CaOを9〜23%、Al2O3を3〜8%、K2OおよびNa2Oから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5〜6%含有するものが好ましい。このようなものを用いることで、表面平坦度の向上が容易となる。
【0078】
SiO2は、ガラスのネットワークフォーマとなる。SiO2の含有量が57%未満の場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。一方、SiO2の含有量が65%を超える場合には、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。SiO2の含有量は、好ましくは58%以上、より好ましくは59%以上、特に好ましくは60%以上である。また、SiO2の含有量は、好ましくは64%以下、より好ましくは63%以下である。
【0079】
B2O3は、ガラスのネットワークフォーマとなる。B2O3の含有量が13%未満の場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。一方、B2O3の含有量が18%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。B2O3の含有量は、好ましくは14%以上、より好ましくは15%以上である。また、B2O3の含有量は、好ましくは17%以下、より好ましくは16%以下である。
【0080】
Al2O3は、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を高めるために添加される。Al2O3の含有量が3%未満の場合、ガラスが不安定となるおそれがある。一方、Al2O3の含有量が8%を超える場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。Al2O3の含有量は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上である。また、Al2O3の含有量は、好ましくは7%以下、より好ましくは6%以下である。
【0081】
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めるとともに、ガラス溶融温度やTgを低下させるために添加される。CaOの含有量が9%未満の場合、ガラス溶融温度が過度に高くなるおそれがある。一方、CaOの含有量が23%を超える場合、ガラスが不安定になるおそれがある。CaOの含有量は、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上、特に好ましくは14%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22%以下、より好ましくは21%以下、特に好ましくは20%以下である。
【0082】
K2O、Na2Oは、Tgを低下させるために添加される。K2OおよびNa2Oの合計した含有量が0.5%未満の場合、ガラス溶融温度やTgが過度に高くなるおそれがある。一方、K2OおよびNa2Oの合計した含有量が6%を超える場合、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがあり、電気的絶縁性も低下するおそれがある。K2OおよびNa2Oの合計した含有量は、0.8%以上5%以下が好ましい。
【0083】
なお、ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、Tg等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10%以下が好ましい。
【0084】
ガラス粉末は、上記組成を有するガラスを溶融法によって製造し、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕して得られる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水またはエチルアルコールを用いることが好ましい。粉砕機としては、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。
【0085】
ガラス粉末の50%粒径(D50)は0.5〜2μmが好ましい。ガラス粉末のD50が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく取り扱いが困難になるばかりでなく、均一分散が困難になる。一方、ガラス粉末のD50が2μmを超える場合には、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径は、例えば粉砕後に必要に応じて分級して調整してもよい。
【0086】
セラミックス粉末としては、従来からガラスセラミックスに用いられているものを使用でき、例えば、アルミナ粉末、またはアルミナ粉末とアルミナよりも高い屈折率を有するセラミックスの粉末との混合粉末が好ましい。以下、アルミナよりも高い屈折率を有するセラミックスの粉末を高屈折率セラミックス粉末と示す。
【0087】
高屈折率セラミックス粉末は、ガラスセラミックスの反射率を向上させる成分であり、例えば、チタニア粉末、ジルコニア粉末、安定化ジルコニア粉末等が挙げられる。アルミナの屈折率が1.8程度であるのに対して、チタニアの屈折率は2.7程度、ジルコニアの屈折率は2.2程度であり、アルミナに比べて高い屈折率を有している。これらのセラミックスの粉末のD50は、0.5〜4μmが好ましい。
【0088】
ガラス粉末とセラミックス粉末とは、例えばガラス粉末が30〜50質量%、セラミックス粉末が50〜70質量%となるように配合し、混合して、ガラスセラミックス組成物とする。また、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーとする。
【0089】
バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を好適に使用できる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等を使用できる。溶剤としては、トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノール等の有機溶剤を好適に使用できる。
【0090】
スラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させて、本体部31となる上層、中層、および下層の3枚のグリーンシートを作製する。また、同様にして、枠部32となるグリーンシートを作製する。
【0091】
(B)未焼成導体形成工程
前記工程で作製されたグリーンシートの表面および内部に、未焼成導体、すなわち未焼成配線導体、未焼成外部電極端子、未焼成接続ビア、未焼成サーマルビア、未焼成放熱層等を形成する。
【0092】
図7に示すように、上層用グリーンシート31aには、各素子基板3の搭載面33の中央部となる位置に第1の未焼成電極34aを形成する。また、第1の未焼成電極34aを囲むようにリング状の未焼成連結導体34cを形成するとともに、8個の第2の未焼成電極34bを、未焼成連結導体34cから内側に延出するように略等間隔に形成する。さらに、第1の未焼成電極34aの中心部、および未焼成連結導体34cの所定の位置に、上層用グリーンシート31aを貫通するように未焼成接続ビア36を形成する。なお、図中、符号5で示す破線は、後工程で分割溝5が形成される溝形成予定部であり、符号6で示す破線は、後工程で分割孔6が形成される孔形成予定部である。以下の図8、9についても同様である。
【0093】
図8に示すように、中層用グリーンシート31bには、上面に未焼成放熱層38を形成するとともに、厚さ方向に貫通するように未焼成接続ビア36および未焼成サーマルビア37を形成する。また、図9に示すように、下層用グリーンシート31cには、厚さ方向に貫通するように未焼成接続ビア36および未焼成サーマルビア37を形成するとともに、下面に未焼成外部電極端子35を形成する。
【0094】
第1の未焼成電極34aは、上層用グリーンシート31aを貫通する未焼成接続ビア36により一方の未焼成放熱層38と電気的に接続され、該未焼成放熱層38は中層用グリーンシート31bおよび下層用グリーンシート31cを貫通する未焼成接続ビア36により一方の未焼成外部電極端子35に電気的に接続される。第2の未焼成電極34bは、上層用グリーンシート31aを貫通する未焼成接続ビア36により他方の未焼成放熱層38と電気的に接続され、該未焼成放熱層38は中層用グリーンシート31bおよび下層用グリーンシート31cを貫通する未焼成接続ビア36により他方の未焼成外部電極端子35に電気的に接続される。
【0095】
各未焼成導体は、スクリーン印刷による導体ペーストの塗布、または充填により形成する。導体ペーストとしては、例えば、銅、銀、金等を主成分とする金属の粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを使用できる。なお、上記金属粉末としては、銀粉末、銀と白金またはパラジウムからなる金属粉末が好ましく用いられる。
【0096】
(C)積層工程
上記工程で得られた本体部31となる上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31c、ならびに枠部32となるグリーンシートを所定の順序で重ね合わせ、熱圧着により一体化する。これにより、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1を得る。
【0097】
(D)分割溝および分割孔形成工程
分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1の表裏面に、それぞれグリーンシート切断機等を用いて、縦3列、横3行に配列される素子基板3の境界線上に縦4本、横4本の分割溝5を形成する。さらに、分割溝5の16か所の交点において交点を中心とする円形の貫通孔を分割孔6として孔開け機等を用いて形成し、分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得る。分割溝5の形成は、例えば、以下のようにして行う。
【0098】
まず、図10(a)に示すように、未焼成の連結基板1の下面1bに粘着シート7aを貼り合わせる。下面1bへの粘着シート7の貼り合わせは、例えば、下面1bに粘着シート7aを重ね合わせてハンディーローラー等にて積層方向に加圧して行う。その後、図10(b)に示すように、粘着シート7aが貼り合わされた下面1b側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定し、この状態で上面1aにグリーンシート切断機により分割溝5を形成する。その後、下面1bに貼り合わされた粘着シート7aの剥離のために加熱や紫外線の照射を行う場合、加熱または紫外線の照射を行う。
【0099】
次に、図10(c)に示すように、下面1bに粘着シート7aが貼り合わされた状態で、上面1aに粘着シート7bを貼り合わせる。上面1aへの粘着シート7bの貼り合わせは、例えば、上面1aに粘着シート7bを重ね合わせてハンディーローラー等にて積層方向に加圧して行う。
【0100】
さらに、図11(a)に示すように、上面1aおよび下面1bに粘着シート7aおよび7bが貼り合わされた未焼成の連結基板1の上面1a側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定する。その後、図11(b)に示すように、上面1a側を真空吸着により固定しつつ、下面1bから粘着シート7aを剥離し、下面1bにグリーンシート切断機により分割溝5を形成する。
【0101】
さらに、上面1aに貼り合わされた粘着シート7bの剥離のために加熱や紫外線の照射を行う場合、加熱または紫外線の照射を行った後、図11(c)に示すように、上面1aに粘着シート7bが貼り合わされた状態で、下面1bを多孔質状の吸着台8により真空吸着する。その後、図11(d)に示すように、下面1bを真空吸着により固定しつつ、上面1aから粘着シート7bを剥離する。
【0102】
上記方法により、両主面に分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得ることができる。また、上記したように、未焼成の連結基板1を真空吸着により固定しつつ、粘着シート7bを剥離することで、粘着シート7bを容易に剥離できる。この際、粘着シート7a、7bとして粘着力の異なるシートを用いることで、具体的には、先に剥離する粘着シート7aの粘着力を粘着シート7bの粘着力よりも小さくすることで、先に剥離する粘着シート7aを剥離しやすくなるため好ましい。
【0103】
分割溝5は、焼成後の連結基板1における上面1aまたは下面1bに開口する開口部の幅が1〜50μmとなるように形成することが好ましい。また、分割溝5は、焼成後の連結基板1における上面1aまたは下面1bからの深さが100〜400μmとなるように形成することが好ましい。
【0104】
粘着シート7は、例えば、基材71と、この基材71の一方の主面に形成された粘着層72とを有し、この粘着層72によって未焼成の連結基板1に貼り合わされる。未焼成の連結基板1への粘着シート7の貼り合わせは、上記したように、未焼成の連結基板1と粘着シート7とを重ね合わせ、ハンディーローラー等で一方の端部から他方の端部にかけて押圧する方法等により行うことができる。
【0105】
一方、未焼成の連結基板1からの粘着シート7の剥離についても、既に説明したように、粘着層72を構成する粘着剤の種類に応じて以下のように行うことができる。すなわち、放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤以外の粘着剤の場合、粘着力を低下させる特別な処理を行うことなく、そのまま未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。放射線硬化型粘着剤の場合、放射線、例えば、紫外線を照射し、粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。熱剥離型粘着剤の場合、加熱によって粘着力を低下させた後、未焼成の連結基板1から粘着シート7を剥離する。なお、放射線硬化型粘着剤および熱剥離型粘着剤の場合であっても、初期粘着力が0.09〜0.51N/20mmの範囲内にあるものについては、剥離時に放射線の照射または加熱を行う必要はない。
【0106】
(E)焼成工程
分割溝5が形成された未焼成の連結基板1は、必要に応じてバインダー等を脱脂後、ガラスセラミックス組成物を焼結させるための焼成を行って連結基板1とする。
【0107】
脱脂は、例えば500〜600℃の温度で1〜10時間保持する。脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去できないおそれがある。一方、脱脂温度は600℃程度、脱脂時間は10時間とすれば、バインダー等を十分に除去でき、これを超えるとかえって生産性等が低下するおそれがある。
【0108】
焼成は、緻密な構造の獲得と分割精度、生産性を考慮して、800〜930℃の温度範囲で適宜時間を調整できる。具体的には、850〜900℃の温度で20〜60分の保持が好ましく、特に860〜880℃の温度が好ましい。焼成温度が800℃未満では、緻密な構造を得られないおそれがある。一方、焼成温度は930℃を超えると、構造が緻密になり過ぎて分割溝5の表面粗さRaが過度に低くなり、分割精度が低下するおそれがある。また、変形により生産性等が低下するおそれもある。さらに、導体ペーストとして、銀を主成分とする金属粉末を含有する導体ペーストを用いた場合、焼成温度が880℃を超えると、過度に軟化するために所定の形状を維持できなくなるおそれもある。
【0109】
以上、連結基板1の製造方法について、ガラスセラミックスの場合を例に挙げて説明したが、構成材料としてはガラスセラミックス以外のセラミックスであってもよく、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ムライト等であってもよい。これらのものについても、ガラスセラミックスの場合と同様、原料粉末にバインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等により所定のグリーンシートとする。このグリーンシートからなる分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1について、粘着シート7を用いて分割溝5を形成する。その後、分割溝5が形成された未焼成の連結基板1について、必要に応じて脱脂を行い、所定の焼成温度、例えば、酸化アルミニウムについては1400〜1700℃、窒化アルミニウムについては1700〜1950℃で焼成する。これにより、連結基板1が得られる。
【0110】
以上、連結基板1の製造方法について説明したが、分割溝5は必ずしも上面1aおよび下面1bの両面に形成される必要はなく、上面1aおよび下面1bの一方に形成されてもよい。また、分割溝5の形成順序についても、上面1aおよび下面1bのいずれが先であってもよく、必ずしも上面1aに先に分割溝5を形成する必要はない。さらに、粘着力を低下させる処理を行う時期についても、必ずしも真空吸着前に限られず、真空吸着後、すなわち真空吸着された状態で行ってもよい。また、連結基板1を構成するグリーンシートの枚数、素子基板群2や素子基板3の形成数、配置、発光素子11の搭載数、配置等についても、必要に応じて適宜変更できる。
【実施例】
【0111】
次に、本発明の具体的な実施例を記載する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0112】
(実施例:例1〜7、比較例:例8)
図12に模式的に示すような未焼成の連結基板1を製造した。ここで、未焼成の連結基板1は、焼成前の大きさが170mm×170mmとなるものであり、外周部付近の余剰部4を除いた部分に6箇所の素子基板群2を有するものである。未焼成の連結基板1における個々の素子基板3の大きさは、焼成後の大きさで2.5mm×1.5mmであり、連結基板1の全体における素子基板3の形成数、すなわち6箇所の素子基板群2における素子基板3の形成数の合計数は、2940個である。
【0113】
まず、素子基板3の本体部31となるグリーンシート(上層用グリーンシート、内層用グリーンシート、および下層用グリーンシート)、および枠部32となるグリーンシートを作製した。グリーンシートの作製においては、酸化物基準のモル%表示で、SiO2が60.4%、B2O3が15.6%、Al2O3が6%、CaOが15%、K2Oが1%、Na2Oが2%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕してガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0114】
次いで、このガラス粉末、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45H)、ジルコニアフィラー(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3F−J)を、ガラス粉末38質量%、アルミナフィラー38質量%、ジルコニアフィラー24質量%の割合となるように配合し、混合して、ガラスセラミックス組成物を調製した。このガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)を配合し、混合してスラリーを調製した。
【0115】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させて、素子基板3の本体部31となる上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31c、ならびに枠部32となるグリーンシートを製造した。なお、上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、下層用グリーンシート31c、および枠部32となるグリーンシートは、上記したように所定の個数の素子基板群2および素子基板3が形成されるものである。
【0116】
一方、導電性金属粉末(大研化学工業社製、商品名:S550)、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比85:15の割合で配合し、固形分が85質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散後、磁器乳鉢中で1時間混練し、さらに三本ロールにて3回分散して導体ペーストを製造した。
【0117】
上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31cについては、図7〜9に示すように、導体ペーストのスクリーン印刷により各未焼成導体を形成した。また、枠部32となるグリーンシートについては、各素子基板3の中央部をグリーンシート用パンチングマシーンにより円形にくり抜いた。また、各グリーンシートには、各素子基板3の角部に分割孔6となる直径0.6mmの円形の貫通孔を孔開け機により形成した。
【0118】
次に、上層用グリーンシート31a、中層用グリーンシート31b、および下層用グリーンシート31cを所定の順で積層するとともに、上層用グリーンシート31aの上部に枠部32となるグリーンシートを積層し、加熱および加圧により一体化した。こうして、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1を得た。未焼成の連結基板1の厚さは0.7mmである。
【0119】
次いで、分割溝5が形成されていない未焼成の連結基板1に、表1に示すような粘着力を有する粘着シート7を用い、図10、11に示すようにして分割溝5を形成した。粘着力は、「JIS K 6854−3 T型剥離接着試験」に準じて、被着体としてグリーンシート積層体に被着させたときの粘着力である。ここで、測定に用いたグリーンシート積層体の厚みは1.2mmとした。グリーンシート積層体への被着は、「JIS Z 0237」に準じて、ハンディーローラーにて、20mm/s、2往復の条件で圧着を行った。粘着力の測定は、いずれも粘着力を低下させる処理をせずに行った。
【0120】
ここで、表1には、粘着シート7の剥離処理タイプを示した。「熱」は、所定温度での加熱により粘着力が低下するもの、「UV光」はUV光の照射により粘着力が低下するもの、「なし」は加熱やUV光の照射を行わないものを示す。表1に示す粘着力は、このような熱剥離タイプおよびUV光剥離タイプであっても加熱やUV光の照射を行わずに測定した粘着力であるが、仮に剥離時に加熱やUV光の照射を行えばより粘着力が低下することから、剥離処理が容易となる。
【0121】
まず、図10(a)に示すように、未焼成の連結基板1の下面1bに粘着シート7aを貼り合わせた。下面1bへの粘着シート7aの貼り合わせは、下面1bに粘着シート7aを重ね合わせてハンディーローラーにて積層方向に加圧して行った。その後、図10(b)に示すように、粘着シート7aが貼り合わされた下面1b側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定し、この状態で上面1aにグリーンシート切断機により分割溝5を形成した。その後、下面1bに貼り合わされた粘着シート7aの剥離処理のタイプに応じて、加熱や紫外線の照射により粘着力が低下するものについては、加熱または紫外線の照射を行った。
【0122】
次に、図10(c)に示すように、下面1bに粘着シート7aが貼り合わされた状態で、上面1aに粘着シート7bを貼り合わせた。上面1aへの粘着シート7bの貼り合わせは、上面1aに粘着シート7bを重ね合わせてハンディーローラーにて積層方向に加圧して行った。
【0123】
さらに、図11(a)に示すように、上面1aおよび下面1bに粘着シート7a、7bが貼り合わされた未焼成の連結基板1の上面1a側を多孔質状の吸着台8により真空吸着して固定した。その後、図11(b)に示すように、上面1a側を真空吸着により固定しつつ、下面1bから粘着シート7aを剥離し、下面1bにグリーンシート切断機により分割溝5を形成した。
【0124】
さらに、上面1aに貼り合わされた粘着シート7bの剥離処理のタイプに応じて、加熱や紫外線の照射により粘着力が低下するものについては、加熱または紫外線の照射を行った後、図11(c)に示すように、上面1aに粘着シート7bが貼り合わされた状態で、下面1bを多孔質状の吸着台8により真空吸着した。その後、図11(d)に示すように、下面1bを真空吸着により固定しつつ、上面1aから粘着シート7bを剥離した。これにより、両主面に分割溝5が形成された未焼成の連結基板1を得た。
【0125】
なお、分割溝5は、素子基板3どうしの間、また素子基板3と余剰部4との間に、未焼成の連結基板1における深さで280μmとなるようにセラミックグリーンシート積層体切断機(UHT社製G−cut6)を用いて形成した。
【0126】
このような未焼成の連結基板1の製造において、分割溝5の形成前後における位置ずれを評価した。評価は、図13に示すような42箇所の評価点9において、分割溝5の形成前後に各素子基板3の左上角部に設けられた分割孔6の位置ずれを測定し、これを平均するとともに、同様の操作を他の2枚の未焼成の連結基板1について行い、計3枚の未焼成の連結基板1の位置ずれの平均値を求めた。結果を表2に示す。表中、位置ずれの平均値が0.05mm以下であるものを位置ずれが抑制されたものとして「○」で示し、平均値が0.05mmを超えるものを「×」で示した。
【0127】
なお、評価点9は、6箇所の素子基板群2における4つの角部および長辺部の中央部に位置する素子基板3(特に、その左上角部に設けられた分割孔6)、また左右方向における中央部の2箇所の素子基板群2についてはさらに中央部および短辺部の中央部に位置する素子基板3(特に、その左上角部に設けられた分割孔6)とした。
【0128】
また、未焼成の連結基板1について、粘着シート7を剥離したときの表面の印刷膜の状態(剥離結果)を評価した。評価は、光学顕微鏡を用いて印刷膜の剥離の有無を調べた。結果を表2に示す。表中、印刷膜の剥離がなかったものを「○」、一部の印刷膜が剥離したものを「×」で示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表2から明らかなように、粘着シート7の粘着力が0.09N/20mm以上の場合、分割溝5の形成による位置ずれを有効に抑制できる。また、粘着シート7の剥離による印刷膜の損傷を抑制する観点から、粘着シート7の粘着力、特に剥離時の粘着力は0.51N/20mm以下が好ましく、粘着シート7の種類としては、剥離処理を必要としないか、剥離処理が必要な場合には加熱処理を行うものが好ましい。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…連結基板、1a…上面、1b…下面、2…素子基板群、3…素子基板、4…余剰部、5…分割溝、6…分割孔、7a,7b…粘着シート、8…吸着台、9…評価点、10…発光装置、11…発光素子、12…ボンディングワイヤ、13…封止層、31…本体部、31a…上層用グリーンシート、31b…中層用グリーンシート、31c…下層用グリーンシート、32…枠部、33…搭載面、34…配線導体、34a…第1の電極、34b…第2の電極、34c…連結導体、35…外部電極端子、36…接続ビア、37…サーマルビア、38…放熱層、71…基材、72…粘着層、321…アライメントマーク、T…搭載部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第1の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程と
を有することを特徴とする連結基板の製造方法。
【請求項2】
複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離するとともに、前記第1の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第2の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程と
を有することを特徴とする連結基板の製造方法。
【請求項3】
前記粘着シートは、0.09〜0.51N/20mmの粘着力を有する請求項1または2記載の連結基板の製造方法。
【請求項4】
前記粘着シートは、0.51N/20mmを超える粘着力を有し、加熱または放射線の照射により粘着力が0.51N/20mm以下となる請求項1または2記載の連結基板の製造方法。
【請求項5】
前記未焼成の連結基板は、主としてガラスセラミック組成物からなる請求項1乃至4のいずれか1項記載の連結基板の製造方法。
【請求項6】
前記素子基板は、発光素子を搭載するための素子基板となる請求項1乃至5のいずれか1項記載の連結基板の製造方法。
【請求項1】
複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第1の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程と
を有することを特徴とする連結基板の製造方法。
【請求項2】
複数の素子基板となる未焼成の連結基板の第1の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面とは反対側の第2の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第2の主面に0.09N/20mm以上の粘着力を有する粘着シートを貼り合わせた後、前記第1の主面から前記粘着シートを剥離するとともに、前記第1の主面に前記複数の素子基板に分割するための分割溝を形成する工程と、
前記第2の主面から前記粘着シートを剥離した後、前記未焼成の連結基板を焼成する工程と
を有することを特徴とする連結基板の製造方法。
【請求項3】
前記粘着シートは、0.09〜0.51N/20mmの粘着力を有する請求項1または2記載の連結基板の製造方法。
【請求項4】
前記粘着シートは、0.51N/20mmを超える粘着力を有し、加熱または放射線の照射により粘着力が0.51N/20mm以下となる請求項1または2記載の連結基板の製造方法。
【請求項5】
前記未焼成の連結基板は、主としてガラスセラミック組成物からなる請求項1乃至4のいずれか1項記載の連結基板の製造方法。
【請求項6】
前記素子基板は、発光素子を搭載するための素子基板となる請求項1乃至5のいずれか1項記載の連結基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−69835(P2013−69835A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207024(P2011−207024)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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