説明

連続イオンビームの電流の均一性を調整し制御する電磁制御体

【課題】リボン状連続イオンビームの電流密度の均一性を調整可能とする組立体で操作が簡単で、単純な構造の電力消費量を削減できるイオン注入装置が望ましい。
【解決手段】連続イオンビームに加えられる連続磁場を生成するための電磁制御体が記載される。制御体は、強磁性材からなる支持棒と支持棒上に独立し、かつ隣接して設けられたコイルで構成される直線状の多極アレイと多極アレィと所定距離はなれ平行に設けられた強磁性境界板とからなり、リボン状の移動する連続ビームの均一性を制御するために構築され、電流の均一性を高めるためのパラメータとして磁場の磁場勾配を直接調整することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イオンビーム内の荷電粒子の均一性の制御に関する。特に、本発明は、より均一な、リボン状の連続イオンビームの生成に向けられており、このような連続ビーム中の荷電粒子の電流密度を調整する装置及び方法を提供し、さらに、用意された処理対象品を荷電粒子で処理するためのターゲット面に向かう平行なリボン状の連続イオンビームの横断方向に沿って、電流の均一性を制御する組立体を提供する。例えば、イオンビームの均一性が精度よく制御する必要のある、シリコンウエハ又はフラットパネルディスプレイ基板のためのイオン注入装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームで材料を処理する分野では、電流密度を制御するとともに、幅の広い略平行なリボン状イオンビームを生成するために、種々の技術が開発されてきた。この状況下、「制御」は、ビームの長い横断(ターゲットの方向又は移動軸を横断する)寸法に沿った電流密度が所望のプロファイルに忠実であることを意味する。この所望のプロファイルは、均一(すなわち、均質である、対象性を有する又は整然である)であってもよいし、所定の方法、又は予め設定されたパターン(例えば、左右で線形に傾斜)において、変化可能で不均一(すなわち、不均質である、非対称性を有する又は整然としていない)であってもよい。
連続イオンビームを用いるが、均一性を制御する積極的な手段の省かれたイオン注入装置の例を見出すことはできる。これらの多くは不純物の成分を除くためにイオンビームを分析する手段も省いている。例えば、Armini et al.による“Non-Mass-Analyzed Solar Cell Ion Implanter” in Nucl. Instr. And Meth,B6(1985),p.94, ,Elsevier, North Hollandを参照。
【0003】
イオンビームの電流密度の均一性制御するために従来から用いられてきた組立体及び技術は以下の通りである。
(i)US特許5350926号に記載される発明は、イオンビームの分析、形状の形成、及びイオンビームを平行にするための磁石の利用のみならず、ビームの均一性を制御するための多極素子(湾曲した磁石に組み込まれ、あるいは分離された組み立て体として)の利用を教示する。
【0004】
(ii)Varian Semiconductor Equipment Associates Inc.により販売されている商業ベースの注入システム(“VIISta-80 ion implanter”として知られている)では、リボン状ビームの長い寸法方向及び移動方向に対して直角(垂直)を成して存在する局所ダイポール場の成分において、変位磁石の範囲内で、極片の離散的な組として部材を物理的に移動することにより変化を生じさせている。
【0005】
(iii)三井造船により販売されている商業ベースの注入装置(MDI-100)では、離散的多極子が、イオンビームを囲むヨーク上に設けられた、矩形状の鉄製極片のアレイとして提供されている。各々の極片は、その周りに巻き回された分離したコイルによって別々に励磁される。この結果生じる電磁場は、リボン状イオンビームが通過する中心部分の矩形形状の開口部分に形成される。この電磁場は、空間的に変化するダイポール成分からなり、これによりそこを通過するイオンの軌跡の局所的な微小な偏向を引き起こす。続いて、この軌跡の偏向は、多極子から下流の処理面においてイオンビームの電流密度に特性変化を生じさせる。その際、典型的には、ある領域はイオン濃度の減少を示す一方、隣りの領域はイオン濃度の増加を示す。この装置の補足の詳細については、例えばUS特許5834786号及びUS特許5350926号を参照。
【0006】
(iv)電流密度の高い均一性を得るために、多極子を調整するアルゴリズムが、Diamond Semiconductor Group Inc.によって開発され、商業べースの製品の製造に主に用いられている。しかし、このようなアルゴリズムは詳細が非常に複雑であり、イオン注入システムの機能の一つとして実行するのは現実的には極めて困難なものである。
【0007】
(v)従来より知られている多極レンズの形態[例えばBanfird, The Transport of Charged Particle Beamst中, Spon, 1960]が、従来技術の図Aに示されている。そこに示されるように、多極レンズは回転対称性を持って考えられている。そこで生成される電磁場は円柱状の調和の点から表すことができ、極座標システムを用いて最もよく表現されている。このようなレンズは、システム光学の収差を制御することのできる電子顕微鏡や加速器等のような、一般的に円筒状イオンビームの種々の用途に用いられている。
【0008】
(vi)また、Bahnford[The Transport of Charged Particle Beams中, Spon, 1960]により述べられ、従来技術の図面Bに示された“Panofsky”4極レンズの設計に注目すべきである。この多極形態は、高アスペクト比のビームのための4極レンズを作るために鉄製の閉じられた矩形形状のヨークを用いている。ヨークの2つの長い部材片上の、一方向に延びる巻き線は、ヨークを閉じ、他の方向に向けられた短い部材片上の2つの巻き線に対して、同じアンペア・回(しかし、反対の意味で)を持っている。両方の対の巻き線は、中央部分の範囲内で均一な場の勾配を生成するために、断面において均一でなければならない。ヨークの反対側に位置する巻き線は、電気的に励起されて、線形的に変化する磁場の領域を産出する。すなわち、dB/dx =-dB/dyであり、これがコイルによって仕切られた空間の範囲で略一定となる。
【0009】
(vii)以前より知られている別の形態は、リボン状ビームの形状に形状が一致する、White et al.の“Cartesian”多極レンズ[IEEE出版によるITT’98コンファレンスで開示されている]であり、従来技術の図C及びDのそれぞれに示されている。このデバイス(図Cによる断面図に図示され、図Dによる詳細部分図に示されている)は、リボン状ビームの均一性を制御するためにリボン状ビームの形状に形状が一致しており、極座標と異なり直交座標で最もよく表されることから、しばしば“Cartesian”と呼ばれる矩形形状の多極レンズである。したがって、この多極レンズは、異なるx座標上のコイルの電流を変化させることにより、コイルと極のピッチにより定まる分解能で、x軸に沿った変化を直接制御することができる場の成分“By”を生成する。従来技術の図Eは、この“Cartesian”多極の範囲内にある1対のコイルに与える励起が、他の(otherwise)均一状のイオンビームに与える影響を示している。
【0010】
連続イオンビームを用いるシステムのたいていのタイプでは、イオンビームを介して注入する処理対象品を、イオンビームの長さの短い寸法の方向に、イオンの正しい注入量を達成するために有効な制御速度で動かすように設けられている。あるシステムでは、1つの経路が利用され、他のシステムでは処理対象品のそれぞれが、イオンビームを複数回通り抜けて移動する。この技術によりもたらされる利点は、y方向におけるビームの寸法のわずかな変動は、処理の均一性に正味の影響を与えないということである。
そのため、結局、これらの以前より知られていた構造及び従前のイオン注入システムの多くは、商業ベースで利用され、技術的にある程度の意義をもって成功し、これらの使用と動作の完全な記載で、技術文献内に報告されてきた。しかし、これらの公知のすべてのシステム内の多極の構成は、流れるイオンビームのx軸/寸法の関数として強度が制御される磁場を供給するように設計されてきたことは注目すべきである。さらには、多極の構成は、しばしば作動させるためのソフトウェアアルゴリズムを伴う必要があり、一般に、十分に理解し又有効に制御するためには、適度に技能を有する操作者の能力を超えるものであった。
このような理由から、副次的な効果を最小とし、単一の領域(残りのビーム中の領域に対して)で自在に電流密度を昇降させるための単一の操作制御の調整をユーザに提供する組立体の開発の必要性は、良く知られており、かつ長い間存在してきた。
加えて、このように連続イオンビームの電流密度の均一性を調整可能とする、改良された組立体は、操作が簡単で直感的であること、単純な設計であり構造であること、さらに電力消費量を削減し、リボン状の荷電粒子の連続ビームを生成するイオン注入装置の熱負荷を顕著に削減すること、が望ましい。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は複数の形態を有する。第1の形態は、荷電粒子を連続イオンビームとして生成する生成源と、連続イオンビームを所望の向きに方向付ける手段と、用意された処理対象品に連続イオンビーム中の荷電粒子を注入するための平面と、連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整及び制御する、改良された電磁制御体と、を含むイオン注入装置における前記制御体であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周周りの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、独立し、かつ隣接して設けられ、それぞれが導電性材で形成され、真っ直ぐに延びた支持棒に直交するように巻き回されて置かれた少なくとも2つのワイヤコイルと、で構成される直線状の多極アレイと、
前記直線上多極アレイに対して平行に配置され、しかも前記直線上多極アレイから所定の間隙距離離れた位置にある平面を呈する境界板であって、所定の寸法及び構成を成し強磁性材から成る境界板と、
前記支持棒に設けられたそれぞれのワイヤコイルに別々に電気エネルギを印加する手段と、
前記アレイの前記支持棒に隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに独立に可変電流の電気エネルギを流し、これにより、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場勾配の領域を生成し、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場勾配が複数集まって連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場にわたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、前記連続磁場内で、横幅の限定されたそれぞれの磁場勾配の領域が、別々に自在に変更され得るようにする、オンデマンド手段と、
連続磁場を、横切って移動する連続イオンビームに加えるとともに、横切って移動する連続イオンビームのために、加えられた連続磁場の磁場勾配を調整し制御する、区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記直線状の多極アレイのワイヤコイルの配列によってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記境界板の前記平面から前記多極アレイが離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められ、さらに、この空間通路において、連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度が調整され、制御される、区切られた空間通路と、を備える制御体を提供する。
【0012】
本発明の第2の形態は、荷電粒子を連続イオンビームとして生成する生成源と、連続イオンビームを所望の向きに方向付ける手段と、用意された処理対象品に連続イオンビーム中の荷電粒子を注入するための平面と、連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整及び制御する、改良された電磁制御体と、を含むイオン注入装置における前記制御体であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周周りの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルの配列であって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される第1の直線状の多極アレイと、
前記ワイヤコイルの配列に対応し、かつ前記第1の直線状多極アレイから所定の間隙距離離れて位置する第2の直線状多極アレイであって、
(α)強磁性材から成り、所定の長さと周周りの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(β)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルの配列であって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれて置かれたワイヤコイルと、で構成される第2の直線状の多極アレイと、
前記第1及び第2の多極アレイの前記支持棒のそれぞれに隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを、独立にかつ同時に流し、これによって、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場勾配を、前記第1の直線状の多極アレイと前記第2の直線状の多極アレイとの間に独立にかつ同時に生成し、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場が複数集まって第1の直線状の多極アレイと第2の直線状の多極アレイとの間に1つの連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場にわたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、前記連続磁場内で、横幅の限定されたそれぞれの磁場を、別々にかつ同時に、自在に変更可能とする、オンデマンド手段と、
第1の直線上の多極アレイと第2の直線状の多極アレイの間にあり、横切って移動する連続イオンビームに連続磁場を加えるとともに、加えられた連続磁場の磁場勾配を調整、制御する、区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記第1及び第2の直線状の多極アレイの前記支持棒の長さによってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記第1の直線状の多極アレイを前記第2の直線状の多極アレイのコイルから離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められ、さらに、これによって、連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度が調整、制御される、区切られた空間通路と、を備える制御体を提供する。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、連続イオンビーム内を通過する荷電粒子の均一性の程度を調整し制御する電磁制御体である。本発明は、このような連続イオンビーム内で運ばれる荷電粒子の濃度を調整する製造品及び方法を含む。それゆえ、本発明は、リボン状の連続ビームの横方向に沿ってイオン電流の均一性を制御する有効な配置と手段を提供する。このリボン状の連続ビームは、注入平面をターゲットとされ、また用意された処理対象品(例えばシリコンウエハ等)内へ荷電イオンを配するための加工物の表面をターゲットとされる。処置対象品の一面全体に注入するために、長手方向に対して直角のビームが、注入平面または用意された処理対象品を通過する。
【0014】
I.定義
専門用語の不整合を回避し、外延的意味と内包的意味における不明確さを排除し、把握と理解が明確でかつ完全なものとなるように、詳細に列挙した一組の定義を以下に挙げる。本発明が何であるか、また本発明がどのように構成され、どのように用いられるかを説明するだけでなく、発明の主題とそうでないものとを分類し区別するよう本発明を説明して請求すべく、これらの用語または専門用語をここでは一貫して繰り返して用いる。
イオンビーム:電子、正もしくは負のイオン、分子、クラスタ、または素粒子を含む荷電粒子のビーム、
リボンビーム:長い寸法と短い寸法によって特徴付けられる断面を有するイオンビームであり、長い寸法は、短い寸法の少なくとも2倍であり、通常は短い寸法の少なくとも5倍である。通常、長い寸法は、ビームで処理される処理対象品の表面の寸法よりも大きい。
連続リボンビーム:少なくとも、1つの処理対象品を処理するのに必要な時間、どの時点でも電流がとぎれないリボンビーム。(これに対し、スキャンされるリボンビームは、リボン形状の包絡面内でスキャンされるより小さいビームであり、包絡面内のどのポイントでもビームは各走査において二度遮断される)。
【0015】
x、y、z座標(または軸):z座標(または軸)は、イオンビームの意図した移動方向である。x軸は、意図したビームの大きい断面寸法と一致する。y軸は、意図したビームの小さい断面寸法と一致する。
下流:イオンビームの移動経路または目標とする角度と方向。
上流:イオンビームの移動経路の逆方向、すなわち目標とする角度とイオンビームの方向から180度。
イオンビームの調整:所望のプロファイルに一致し動かないように、ビームの長い寸法(目標方向または移動経路軸)に沿って電流密度を変化させること。
イオンビームの制御:所望のプロファイルに一致し動かないように、ビームの長い寸法(目標方向または移動経路軸)に沿って所望の電流密度に維持すること。
均一なイオンビーム:断面プロファイルにおいて、実質的に一定した、均質の、対象の、または整然としたイオンビーム内の荷電粒子の集まり。
不均一なイオンビーム:断面のプロファイルおいて、実質的に一定しない、不均質の、非対象の、または整然としないイオンビーム内の荷電粒子の集まり。
【0016】
II.本発明と、従来から公知のマルチポールレンズとの実質的な相違点
第1に、本発明を構成する制御体を用いることで、磁場の値「B」を直接制御することは不必要となり、または望まれない。しかしその代わり、本発明では、磁場勾配パラメータ「dB/dx」の効率的な制御が要求される。これは従来から公知の構造とは、著しく異なっておりまた変更されている。
イオンと電子の光学分野では、均一場の領域はビームをまとめて偏向する。したがって、不均一の磁場領域は、ビームの異なる部分を異なる量偏向させ、収束または非収束を引き起こす。焦点強度を決定するのは磁場勾配である。イオンビームの僅かな収束をもたらす場の領域は、下流位置でイオン濃度の増加を引き起こす。反対に、非収束の領域は、下流でイオン濃度の減少を引き起こす。
【0017】
第2に、均一磁場勾配「dB/dx」の領域は、等しくかつ反対の大きさの対応する項「dB/dy」も有していなければならない(マクスウェルのカール方程式)ことはよく知られている。この数学の方程式から、x軸方向でビームを収束させるために不均一場の領域が設定されると、同時に必ずy軸方向においてビームが収束することはない。
この直交方向(x軸とy軸)の不可避的関連により、2次元すなわちx軸とy軸におけるイオンビームの均一性を制御しようとする試みはうまくいかなかった。そして結局のところ、y軸寸法における対応するビーム(および対応するイオン濃度)の変化が重要な懸案事項でないと考えられる1次元システム構成に落ち着くに至った。というのは、1次元システム構成では、注入される処理対象品をy軸方向にビーム中で移動し、それによってその1次元においてビーム電流を効果的に一本化するからである。また一方、イオン注入プロセス中に、使用可能なパラメータとして磁場の勾配を有効に調整または制御することが可能な従来型の多極構造は、現在に至るまでなお使用されていない。
【0018】
第3に、イオンビームの収束が望まれる場合、パラメータdB/dxを直接制御することが最も好都合であると考えられる。例えば、イオン電流の変調の制御(または代わって、意図的な発生)が望まれる場合、所与の空間区域内のdB/dxの変化を直接調節するのが最も好ましい。
同様に、1つの軸または1つの次元に沿ってイオン電流の均一性を効果的に維持し制御するためには、dB/dxが、イオンビームの移動する空間通路の、任意の2つの区域の間でおよび全ての異なる領域の地点間で、滑らかに変化するように構造体を設計し、x軸方向のラインに沿った複数の異なる領域または空間区域でdB/dxを制御することが望ましい。この目的のために不可欠ではないが、イオンビームの大体のまたはおおよその中心で、BとB値の値がそれぞれ零(ゼロ)であることが極めて望ましい。
【0019】
本発明は、独自の構造上の配列を介して操作可能なパラメータとして磁場勾配dB/dxを直接調整しまた制御する機能を始めて達成し、ユーザに提供する。制御体の独自の配列は、構成および一つの機構の多大な簡略化をも提供し、従来技術である図A、B、Cに示す従来の装置とは著しく異なりまたは違っている。例えば、ビーム内の荷電粒子の均一性を調整し制御して有用なプロファイルを得るために、より小さな電流しか必要とされない。さらに、磁場強度および磁場勾配に関する通常起こる固有の変化は、端から端まで隣接したコイルの配列によって制御され、従来技術の“Cartesian”多極装置により以前制御された場合に比べて、かなり滑らかなものとなる。
【0020】
III.本発明を構成する電磁制御体
電磁制御体を含む全体としての主題は、ここで説明するように、従来技術装置に用いられる直交座標システムと本発明の極座標構造との相違点を特に参照することで、最も容易に理解される。読者の便宜のために、z軸は、意図した通路に沿って移動するイオンビームのほぼ中心にあって延びているとし、「下流」という用語は、イオンビームの生成源からターゲットとされる処理対象品に向かって移動する連続イオンビームの移動方向の位置と通路とを示す。
【0021】
制御体およびその使用方法は、本発明全体の主題を含む。制御体は、既知の強度とプロファイルの連続磁場を発生するための少なくとも1つの直線状の多極アレイを提供し、通常は矩形であり、設定された空間寸法を有し、(z軸に移動する)連続イオンビーム全体を(x軸およびy軸座標を用いて)包囲し境界を画する、区切られた空間通路を含む。生成される所定の長さの連続磁場領域は、区切られた空間通路の領域および寸法内に生成され調整される。しかしながら、従来技術の装置とは異なり、連続磁場の磁場勾配dB/dxを自在に直接調整しかつ制御することが可能であり、そのような磁場勾配の自在の調整と制御が、直線状の多極アレイの個々の異なる部分で電流を変えることにより達成され、その結果区切られた空間通路によって包囲された全容積内で、注意深く選択された空間区域および/または領域内の磁場勾配の強度を変化させるように、本発明は構成され、設計されている。
【0022】
A.最も簡単な構造
構造の構成要素
本発明の最も簡単な実施形態を、それぞれ、図1Aと1Bの制御体よって例示および説明する。ここに見られるとおり、制御体10は、制御される連続イオンビームのx軸方向よりも若干長いサイズの設定された長さと周周りを有する、真っ直ぐに伸びた強磁性の棒20を含み、棒20は、平面62を有する境界板60に対して平行に配置され、しかも境界板60から所定の間隙距離離れた位置にある。真っ直ぐに伸びた強磁性の棒20は、支持棒としての役割を果たし、その周りに複数の個別ワイヤコイル22が別々にかつ独立に直角に巻かれる。これらの直角に巻かれたワイヤコイル22は、支持棒20のほぼ全長をわたって均等に区切られた所定のかつ異なる複数の位置に、連続して独立にかつ隣接して設けられている。x軸に沿った個別の、別々の、隣接して設けられた1つのワイヤコイル22が集まって多極コイルアレイ30を構成する。
境界板60は、多極コイルアレイ30のx軸方向に平行に取り付けられかつ向きが設定されている。境界板60は、平面を提供し、多極コイルアレイ30に対して平行に配置され、しかも多極コイルアレイ30から所定の間隙距離離れた位置にある。境界板60は、所定の寸法と構成をなし、強磁性材によって構成される。
【0023】
多極コイルアレイ30と境界板60の間には、通過する連続イオンビームを規制し、
磁場を生成し、しかも連続イオンビームに加える連続的な磁場の磁場勾配を調節し制御する区切られた区域を提供する、空間通路40である。空間通路40は、多極コイルアレイ30の直線の長さによって、x軸方向におけるその幅寸法42が制限されており、境界板60の平面62から多極アレイ30の支持棒20が離間する所定の間隙距離44によってy軸方向における寸法が制限されている。区切られた空間通路40内で、制御された磁場が生成され加えられる。そして、磁場勾配が個々の区域と場所毎に調整可能とされ、連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度が調整され制御される。
【0024】
制御体全体の構成部分は、指示棒20の固定長に沿って直角に設けられた各個別ワイヤコイル22を介して、可変電流の電気エネルギを独立に導入するオンデマンド手段(不図示)である。適切な電気エネルギの電流を流すと、それぞれ隣接して設けられエネルギの印加されたワイヤコイル22は、直角の方向に延びまた個別に調節可能な横幅の限定された磁場を独立に発生し、この横幅の限定された複数の隣接して延びている磁場が集まって連続磁場を形成する。この連続磁場内の横幅の限定されたそれぞれの磁場の強度を(電流を変化させることにより)自在に個別に変更することを可能とし、連続磁場全体を調節可能かつ制御可能な磁場勾配が発生する。以下に、調整方法を十分に説明する。
【0025】
図1Bに示されるように、一列に並んだ複数の個別ワイヤコイル22が多極アレイ30を構成し、この多極アレイ30の中で各ワイヤコイルが、直角に巻かれかつ所定長の強磁性材の指示棒に沿って異なる固定位置に直角に設けられることが、認められ理解されるであろう。さらに、図1Aに示されるように、連続イオンビームがその場所を移動する空間通路40の幅寸法42と一列に並んだ複数の個別ワイヤコイル22が一致し(即ち、重ねたときに正確に一致し)、この幅寸法42を取り囲むアレイ30を構成する。したがって、図1Aおよび図1Bによって図示される個別ワイヤコイル22を直角に巻き配置する特徴は、類のない特異な配置であり、従来技術の図Cおよび図Dによってそれぞれここに示される従前の公知の多極レンズ構造のコイル状の巻き線とは、明らかに異なりまた区別できる。図11は、その中で、本発明の直角に巻かれ配置されたコイルの明らかな相違点を、従来技術の図Cおよび図Dの従来の多極構造におけるコイルの異なる配置と巻き線と対比して簡単に示している。
【0026】
マルチコイルアレイ30は、好ましくは非磁化の支持体によって境界板60の平面62と平行になるように配置され、ワイヤコイル22と平面62との間には、所定の間隙距離44がある。この所定の間隙距離44は、磁場が誘導される通路40の矩形の空間容積の2面を定める。境界板60と平面62強磁性材は、x軸多極コイルアレイに対して磁場線を直角に拘束する、所定の境界を規定する。したがって、連続イオンビームが(x軸方向に)移動する介在空間容積(z軸方向)は、x軸寸法を表す横幅距離42とy軸寸法を表す間隙距離44の範囲内に取り囲まれ、かつこれらによって区切られている。
【0027】
制御体を用いる方法の基礎
前述したように、図1は、境界板60の平面62が、y=0の平面に平行に配置されていることを示す。多極コイルアレイ30には、個別ワイヤコイル22が、直線状の棒の長さにわたって、強磁性材の棒20の周りに直角に巻かれ、所定の配置で互いに離間するが隣接して設けられている。各ワイヤコイル22に異なる電流が流れると、平面62に近い場の勾配はなだらかに変化するが、コイルにより近い場の勾配では、その変化はなだらかでない。電流密度の変化およびその結果生じる磁場勾配の変化をよりなだらかにするよう、ワイヤコイル22の隣接領域を形作ることは可能であろうが、実際には、この試みは不要であると考えられる。
【0028】
むしろ、連続イオンビームの生成源から流れる連続イオンビーム内の荷電粒子が、x軸の寸法距離42とy軸の寸法間隙距離44とによって規制された、空間通路40の区切られた空間容積をz軸方向に通過することで足り、より実用的である。磁場Bの成分は、強磁性材の平面によって平面では零に拘束されているので、その結果、Bはイオンビームの中心部では非零である可能性がある。したがってある距離はなれた下流では、ビームの形状がy方向にいくらか曲がるかもしれない。このことはビーム内の荷電粒子の均一性を調整し制御するための使用を妨げるのは不十分であろう。
【0029】
図1Aと1Bに示される配列の特有の特徴は、コイルが、支持棒から外側に延在し、閉塞されていない空間通路40のサイズを物理的に制限するように、各ワイヤコイル22が強磁性の支持棒20に巻かれているということである。横幅の限定された複数の個別磁場勾配は、各1つのコイル状の巻き線に独立してエネルギを印加することにより生成され、各個別に生成された磁場は、空間的に外側に、直角に、y軸方向に、間隙距離44に(すなわち、移動するイオンビームの経路に)及ぶ。
図1のアレイ化された配列の大きな利点と効果は、隣接しているが個別に制御可能な横幅の限定された磁場勾配の形成であり、この磁場勾配が集まって連続平行磁場を形成することである。各ワイヤコイルは、横幅の限定された磁場勾配の区域を生成するが、これらは集まって累積し、空間通路40の間隙距離42の全体を覆うことができかつ有効となる連続場を形成する。
【0030】
コイルの厚さと、この厚さによる明確な通路の縮小は、必要とされる大きさの場の勾配を生成するために棒の単位長さ毎の十分なアンペア・回を与えるのに必要である。コイルの厚さを薄くすることにより、アンペア・回の数を維持して所与の場の勾配を達成するために、コイル内の電流密度を上げる必要性が生じる。コイル内の電力密度は、その厚さを薄くするにつれて極めて急激に上昇する。コイルの厚さは、このことを検討することにより定められ、基本的な電磁気またはイオン光学の検討から定められるものではない。
【0031】
図2は、不均一な電流密度であるが荷電粒子の軌跡が平行であるイオンビームにおいて、1つの個別なコイル状の巻き線22の励磁が、x軸方向に沿った電流密度分布に与える影響を示している。しかしながら、図2は、イオンビームの均一性と平行性との間に存在する長い間認められている関係を、単に示しているにすぎない。
本発明の方法は、しかしながら、逆の状態から始まり、図2の過程とは反対のことを意図している。図3には、この反対の効果と、より大きな均一性の達成とが示されており、平行であるが不均一のビームが、ターゲットの面でより均一になるように調整され制御される。そこでは、電流密度のより大きい均一性がビームの平行性を犠牲にして達成される。
【0032】
図3によって明らかなように、実際のビームの偏向は小さく、収束性の効果及び非収束性の効果は常に小さいため、部分的な焦点距離は、多極アレイからターゲットの面までの間隙距離よりも大きい。さもなければ、ビーム内の荷電粒子の個々の軌跡は交差し、このような荷電粒子の交差により、流れるビーム内に回復できない不均一性の特徴が生じるであろう。
【0033】
最も簡単な構造の特徴と限界
制御体(先に説明したとおり、1つの多極コイルアレイと、境界板と、平面を含む)の最も単純な実施形態が、シリコンウエハに注入する際にターゲット面から500mmの移動距離の位置で用いられ配置されるとすると、このとき、電流密度内に突出先端や特異点の発生を回避するには、制御体の全ての部分の焦点距離はこの移動距離よりも極めて大きくしなければならない。
【0034】
これに基づき、また、標準的な電磁理論を用いて、以下の関係を示すことができる。(図4、5および6をそれぞれ参照されたい)
ビーム内の装置(全てのコイルは同じ励磁電流を受けると仮定すると)の中心部における場の勾配は、
dB/dx=μ/g
で与えられる。ここで、gは2つの強磁性材の棒(または1つの強磁性材の棒と強磁性材の境界板)間の間隙であり、Jは、x方向における単位長さあたりのコイルのアンペア・回の数である。コイルの幅がgを超えるという条件では、1つのワイヤコイルのみを励磁すると、この式はこのコイルによって引き起こされるピーク勾配に近づく。コイルがより狭い場合、いくつかの隣接するコイルを励磁しても、この関係は維持される。質量M、電荷q、運動エネルギUのイオンを、半径ρの軌道に偏向するために必要とされる磁場は、
【数1】

によって与えられる。
【0035】
多極装置のz方向の範囲を、実際のコイルのz方向の全体の範囲によって定義されると仮定すると、正確には、z方向の範囲を僅かに小さくし、有限要素コンピュータコードによってモデル化すべきである。この寸法をLとして定め、この寸法を拘束しない。実用的な理由から、Lを100mmの値に指定することができる。したがって、所与の場Bが、有効長がLの装置を通過する質量Mのイオンを偏向する角度は、
【数2】

となり、
焦点距離は、
【数3】

によって与えられる。
【0036】
最少焦点距離を、多重極の中心からターゲットの面までの距離Lの約2倍と仮定すると、ビームパラメータと物理的な配置のみに基づいて、コイル内の電流密度の最大値を制限するために、不等式を(MKSA単位で)書くことができる。さらに、イオン電荷が一定であり、イオンが全直流電位Vを介して加速されると仮定すると、
【数4】

g=0.06m、L=0.2m、L=0.5mとし、また100keVのヒ素とすると、J=94178アンペア・回/m、または約94アンペア・回/mmになる。
これは不等式であり、電流密度の少なくとも+/−25%の変調を実現するには十分な電流密度は、この半分より少ない量で得ることができる。それにもかかわらず、コイルの奥行きを15mmと仮定すると、必要とされる電流密度は3アンペア/mmであり、この3アンペア/mmは実際の生産においては少々高すぎる。このように、先に記載した最も簡単な実施形態は、記載された寸法内において100keVのヒ素のイオンビームの均一性を修正するには能力に限界がある。
【0037】
B.好適な構造
好適な構造の構成要素
本発明の好ましい実施形態を図7と図8に示す。そこに示されるように、制御体は、2つの強磁性材の棒120と220とを有し、その各々は、制御しようとする移動するイオンビームのxの寸法よりも直線の長さが幾分長く定められており、たがいに、平行に位置しかつ所定の間隙距離144離れるように、配置される。強磁性材の棒120と220のそれぞれは、真っ直ぐに伸びた支持棒としての役割を果たし、その周りに、複数の個別ワイヤコイル122と222が所定数かつ異なる位置に直交して巻かれている。独立して、別々に、かつ隣接して設けられたコイル状の巻き線が集まって、軸方向に一列に並んだ組を作り、それぞれ第1の多極コイルアレイ130と第2の多極コイルアレイ230を形成する。制御体110はこのように、第1の多極アレイ130と第2の多極アレイ230を有し、これらは、共有するx軸方向に沿って向けられ一方、互いに平行になるようにかつ対応して配置される。
【0038】
制御体全体の構成部分は、固定長の支持棒120と220に沿って直角に配置され、各々が独立しかつ隣接して設けられたワイヤコイル122と222に、独立して可変電流(アンペア)の電気的エネルギを印加するオンデマンド手段(不図示)である。適切な電流の電気的エネルギを与えると、それぞれ隣接して設けられエネルギが与えられたワイヤコイル22は、直交して延在しかつ個別に調整可能な、横幅の限定された磁場を独立して生成し、隣接して延在する横幅の限定された磁場が複数集まって合体し、連続磁場を形成する。そして、この連続磁場内の横幅の限定されたそれぞれの磁場の強度を、個別に自在に(電流を変化させることにより)変化することができ、調整可能かつ制御可能な、連続磁場全体にわたる磁場勾配が生成される。
【0039】
個々の強磁性材の棒120と220のそれぞれに、独立かつ隣接して設けられたワイヤコイル122と222の一列の並びは第1と第2の多極コイルアレイ130と230を構成し、それぞれが連続イオンビームが移動する、区切られた空間通路140の横幅寸法142と調和し(すなわち、重ねると正確に一致し)、横幅寸法142を取り巻いている。多極アレイ130と230は、所定の間隙距離144が存在し、かつ所定の間隙距離144が複数のワイヤコイル122と222との間に保持されるよう、平行かつ対応して配置される。予め設定された間隙距離144は、所望の磁場がその中に生成され加えられる矩形状の通路140の2面を定める。それぞれの多極コイルアレイ130と230は、固定された強磁性材の境界を提供し、この境界で磁場線が直交するように規制される。従って、連続イオンビームの荷電粒子が(z軸方向に)移動する空間容積は、空間通路140の横幅間隔142(x軸寸法を表す)と所定の間隙距離144(y軸寸法を表す)で囲まれ、横幅間隔142(x軸寸法を表す)と所定の間隙距離144(y軸寸法を表す)によって区切られている。
【0040】
もし必要であれば、非強磁性材の真空壁(不図示)を、イオンビームと第1の直線状の多極アレイとの間ならびにイオンビームと第2の直線状の多極アレイとの間に挟んでもよい。このような真空壁を配置することは従来から公知であり、この位置に真空壁を用いることは、本件の制御体が機能し意図した目的を達成するイオン注入環境における、選択的であるが好ましい特徴であると考えられる。
したがって、図7及び図8のそれぞれの好適な構成では、構造体は、ビームの両側にビーム幅の端から端まで配置され、かつほぼ平面y=0が中心とされる、2つの強磁性の棒を構成する。隣接して設けられた規則的な一連のワイヤコイルは、2つの鉄の棒のそれぞれの周りに直角に巻かれ、第1の棒に設けられたそれぞれ直角に配置されたワイヤコイルは、第2の棒に直角に巻かれた別の個別ワイヤコイルと反対側にかつ対向して配されるように設置され直線状に並べられる。向かい合った位置にある対になったコイルは、好ましくは正確に一致した直線状の並び(正確な相互対応)で配置される。あるいは、向かい合った位置にある対のコイルは、選択的に、千鳥配列(オフセット相互対応)に配置されてもよい。アレイを形成するワイヤコイルの総数は、イオンビームの予想される外周あるいは周囲長に依存するが、少なくとも4つの巻き線コイルとすべきである。多くの場合、その数は、隣接して強磁性材の棒に設けられるコイルの数は30を超えるであろう。
【0041】
ワイヤコイル122が正確に一致した直線状の並びで配置される場合は、通常それぞれのワイヤコイル122は、正反対の対応するワイヤコイル222と電気的に共通して接続される。しかしながら、一対のワイヤコイルが千鳥対応で配置される他の実施形態では、反対側の位置に配されたコイルを直接電気的に接続することはできない。いずれにせよ、いずれの場合においても、反対側に配され、間隔を置いたワイヤコイルの組のそれぞれは、空間通路140のそれぞれの側の1つの対応した組として、対応した組のコイルの周りに電流を同じ角度方向(angular sense)つまり同じ方向に流すことにより、同等にエネルギを印加すべきである(すなわち同じ量の電流を受け取る)。したがって、空間通路140の横幅寸法42を横切るワイヤコイルのピッチは、dB/dxを最適に制御するためにはg/2よりも小さくすべきである。しかし、ワイヤコイルのピッチが小さくなるにつれて独立した電源の数が増えるので、制御体全体のコストと配線の複雑さが、決定的な要因かつ実際的な考慮すべき対象ととなる。
【0042】
図7及び図8の構成された制御体を用いることで、反対側に配され、電気的に接続された(第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイのそれぞれに配された)ワイヤコイルの組のそれぞれに通電されるアンペア電流を独立に調整しかつ個別に制御することができる。このように、アレイごとに通常4から30のワイヤコイルを用いる本発明の多極アレイのこれらの実施形態には、電気的に共通して接続され反対側に配された4から30個のワイヤコイルの対応した組、そして、反対側に直線状に配置されたコイルのそれぞれの対応した組に、異なる個別のアンペア数を提供する4から30の別々の電気接続があるであろう。
さらに、強磁性体の棒の端部の最近傍に配置される、反対側に配されたワイヤコイルのそれぞれの組は、イオンビームの横幅の領域をまさに超えて配置されることがあろう。また、それぞれの多極アレイの支持棒の端は、イオンビームに加える磁場の分布に対して与える、それぞれの多極アレイにおける支持棒の端部の影響が大きくならないよう保証するのに十分な長さの延長により、長さについて最後のワイヤコイルを超えて長くするかもしれない。通常、棒の端部の延長の大きさは、第1の多極アレイと第2の多極アレイの所定の間隙距離のサイズの少なくとも2倍はあるであろう。
【0043】
さらに、強磁性材を用いて2つの強磁性材の棒をそれぞれの端部で接続して完全な磁気ヨークを形成する(以前から公知の装置のように)場合、追加の大きなワイヤコイルをこれらの短い棒の端部に配置することが不可欠となる。この追加の大きなワイヤコイルは、それぞれの多極コイルアレイにおける電流の代数和に等しく、電気的に逆の方向または逆の場の方向の電流(アンペア)を流すことになろう。支持棒端部にある追加の大きなワイヤコイルが、イオンビームの実際の幅を十分に超えて延在する場合、中央の磁場特性の影響は重要にはならない。アレイ構造から少し離れて起こり得る漂遊磁界は、いくぶん大きな影響があるかもしれないが、この不具合は、磁気遮蔽によって制御可能である(この議論は本発明の範囲からはずれる)。
したがって、制御体の中心部における磁場勾配の均一性は、反対側に配されたワイヤコイルの組のそれぞれに加えられる電流の一致度および電気的同一度によって定まる。各アレイの端部付近では、磁場勾配は零へと下がり、その後反転する。したがって、この理由により、それぞれのアレイのワイヤコイルの配列は、所望の場の特性が維持されなければならない領域を超えて延材しなければならない。このことは、磁気的に飽和しないように、2つの棒の配列長において十分な量の鉄ないしスチールが存在するということになる。そして、このことは、ひいては、最大のx寸法範囲と、制御体を構成する第1のアレイおよび第2のアレイの励起の程度とを定める。
【0044】
その他の特徴
ここに記載した好適実施形態では、最も単純な構造における、強磁性体の境界板と平面は省略され、複数の独立しかつ隣接して設けられたワイヤコイルを有する第2の多極コイルアレイが、第1の多極コイルアレイに平行に位置するように配され、第1の多極コイルアレイに対応するように置かれる。第1および第2の多極コイルアレイは、合計距離2g離間しており、最も単純な構造に関する上述の同じ不等式が適用される。
しかしながら、図7と図8の好適実施形態は、ビームのために同じ移動空間が使用できる場合、間隙距離「g」はより小さくなり、それぞれのワイヤコイルにおけるアンペア電流はより小さくなるという利点を有する。より多くのワイヤコイルが必要であるが、それぞれのアレイの中央平面では、場の成分Bは零である。このことはビームの形状に望ましくない影響を最少にする。反対側のコイルの電流の向きを逆にするように注意すれば、対応するコイルは直列に接続することができる。
また、本発明の、最も単純な実施形態および/または好ましい実施形態では、ある特徴及び特性が非常に望ましく考えられる。これらは以下のことを含む。多極コイルアレイのワイヤコイルに印加される電流は、約50アンペア・回から約10,000アンペア・回までの範囲とする。空間通路の所定の間隙距離は、約25mmから約250mmまでの範囲の寸法とする。空間通路の横幅寸法は、サイズが約200mmから約2,000mmまでのサイズの範囲とする。
【0045】
C.その他の構造
より高い磁気剛性を有する連続イオンビームのためにより高磁場を提供する本発明の代替構造と実施形態も作製可能である。そのような代替構造は以下に基づくものである。
単位長さ毎に必要とされる電流密度は、制御体における第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイを支持する、反対側に配された強磁性材の棒の2組(最も単純な実施形態の場合では、1つの強磁性材の棒と、平面を有する強磁性の境界板)の間隙距離に比例する。必要とされる電流密度が高すぎると、このアレイの棒に配置されるそれぞれのワイヤコイルがより厚く巻かれることを余儀なくされる。このことは、ひいては強磁性材間の適切な間隙距離を大きくさせる。各ワイヤコイルの巻き線が、空間通路の間隙距離よりもきわめて薄い場合は、場内でゲインはあるが、ワイヤコイルがより厚く巻かれるとゲインの漸減(a diminishing return)がある。以下の技術を用いることにより、磁場勾配の滑らかさを代償にして、この問題を部分的に解決することができる。
【0046】
理想的には、多極コイルアレイのコイルは間隙によっては分離されているわけではない。しかしながら、コイル間に間隙を導入することの実用上の必要性は不可避的なものであるものの、そのような間隙にスチールや他の強磁性材で意図的に補充することにより、強磁性材の部品間の間隙距離を大きくすることなく、棒を取り除くことが可能となる。このアプローチは磁場を直接増大させ、さらにワイヤコイルのためにより多くの空間を与える。このように、支持棒に設けられたそれぞれのワイヤコイルは、介在するスチールのスペーサによって意図的に分離される。このスチールのスペーサは、隣に隣接して設けられたアレイのワイヤコイルの端部まで延在する。図9に、第1のアレイおよび第2のアレイの支持棒に設けられたワイヤコイルを介在するスチールペーサの配列を示す。
図9に示される代替の実施形態のタイプは、最も高い磁気剛性を有する連続イオンビームに有効であるとも考えられる。これらの例では、スペーサ(通常スチール)として用いられる強磁性材は、強磁性材が飽和することがない十分な厚さがなければならない。また、有限の厚さの、真っ直ぐに伸びた支持棒とスペーサによって生成される磁場の不均一性が過度にならないように、スペーサのピッチは十分短くかつ小さくなければならない。例えば、磁場の不均一性は、ワイヤコイルのピッチの2乗および介在するスペーサの厚さの2乗に比例する。
【0047】
IV.連続リボンビームの均一性を改善する方法の調整ステップ
連続リボンビームの均一性を改善する以下の方法が、先に引用したWhiteの米国物理学会(AIP)に記載された方法に比べてきわめて簡潔に説明される。これらのステップは、イオンビームが処理対象品を通過する前に行われる。この方法は、明確にするため、好ましい実施形態についてだけを述べるが、他の実施形態にも容易に適合され得る。
ビームの電流密度特性を測定する方法が論じられている。理解容易のために、ここでは理想的なファラデーカップの配列がターゲットの面に配置されているとする。誤差を無くすためには、それぞれのファラデーカップの前には、接地された矩形形状の入口開口部が設けられるべきであり、それぞれの開口部の横幅を正確に同じにし、かつ、多極アレイのそれぞれのコイルの横幅の一部の幅を有するようにする。それぞれの開口部とファラデーカップの高さは、イオンビームの高さを超えていなければならず、超えない場合は測定は無効である。多極コイル制御体におけるコイルまたはコイルの組の中心である各x座標上に1つのファラデーカップの中心が置かれる。x座標の電流密度は、測定されたイオンビーム電流を開口部の横幅で割ることによって得られるが、全ての開口部が同一の場合は、このステップを省略することができ、測定した電流を直接用いることができる。
測定が終わった後は、ファラデーカップ内の計測電流の平均値を算出する。所望のビーム特性が均一である場合は、それぞれの計測地点での誤差は、計測値と平均値の差分である。所望のビーム特性が不均一である場合は、この誤差値は所望の関数に合わせるように、コンピュータで計算しなければならない。
【0048】
この方法は、以下のステップから成る。
(i) 所望の、種類、エネルギ、概算電流の安定したイオンビームが、イオン注入機からターゲットの面までの意図した経路に導かれる。
(ii) イオンビームのプロファイルを計測する。
(iii) 最初のファラデーカップから開始し、所望の電流(プロファイルが均一の場合は平均値)に一致するまで、最初のファラデーカップで計測される電流を変化させるよう、第1のコイルを通過する電流を調整する。必要とされる変化の適切な方向と大きさを判断するためには、制御パラメータ(コイル内の電流)を小さく変化させる標準的な実験手法により、調整してもよい。しかしながら、一旦システムがテストされ、較正されるとこれらの量は両方とも既知となり、イオンの種類とエネルギとの関係も十分に既知となる。最初のコイルを調整した後は、2番目のコイル内の電流を用いて、第2のファラデーカップ内のイオンビーム電流を調整し、続ける。
(iv)必要ならば、ステップiiとiiiが繰り返される。
【0049】
平均値の算出は除き、この手順は、変化量の計測結果が所望の値になるまで、一度に一つの制御パラメータを調整することから成る。これは線形処理であり、手動によって簡単に遂行することができる。均一性を制御する従来技術の多重極として引用された従来技術の方法は、集中的な演算処理を含んでおり、最も熟練した操作者にさえ手動で遂行できないものであった。
この手順は、線形でありかつスカラー量的で計量的であるため、簡単に自動化される。隣接するコイル間には多少のクロストークがあろう。このクロストークにより、この手順を繰り返すことが必要となり、また、手順を調整して、各手順を繰り返すことで観測される誤差の修正を小さくするかもしれない。したがって自動的に行えば非常に速くなろう。
【0050】
V.制御体の追加の詳細と特徴
1.100keV以下のエネルギーで、シリコンウエハ内にイオン種(ヒ素およびそれより軽い種)を注入することを意図した装置では、イオンビームはx軸寸法が300mmよりも僅かに大きく(今日使用されている商用シリコンウエハの最大標準直径は300mmなので)、y軸寸法が約30mmになるであろう。ウエハは、y軸寸法においてビームのを横断しなければならない。y軸寸法が小さすぎると、ビーム内の電流及び電力密度を望ましくないレベルまで上げてしまう。一方、y軸寸法が大きすぎると、ビームの周辺端部を取り除くためにウエハが移動しなければならない所望の距離が大きくなり、システムの生産性を低減させる。これらの理由により、最適なビームの高さはビームの横幅の10%から20%の間であると概算される。
2.ワイヤコイルのx寸法ピッチよりも小さい距離の間の磁場勾配が制御できないことをはっきりと理解すべきである。ビームy寸法は、場の勾配が確実に制御され得る、制御体の最少間隙距離とほぼ同じ大きさであるということも認識されるべきである。特に具体例として、POISSON(LAACG FTP サーバで利用できるLos Alamos、Poisson Superfish Version 7)等の自由に利用可能なコードを用いたモデル化を利用することで、これらの記述に対してより高い正確さを提供するであろう。
【0051】
3.ワイヤコイルのピッチはビームのy寸法とほぼ同じにすることを予想することができる。同様に、通常ワイヤコイルの巻き線の厚さは、ピッチよりもかなり小さくすべきである。しかしながら、代替の実施形態では、特別の用途および注入システムのためにかなり大きなコイル状の巻き線を用いるであろう。
4.以前においては、装置はイオンビームの周囲に完全な磁場の経路を形成した。コイル状の巻き線のアレイを支持する強磁性材の棒の端部が、スチール等の強磁性材の金属によって接続されないということが、本発明の基本的特徴である。この特徴は、非ゼロの場の成分をそれぞれの多極アレイの端部に存在させることができる。結果として、この制御体からの漂遊磁界は従来技術の装置よりも大きいことがあるかもしれないが、多重極の端部付近で、それぞれの端部までgよりも近くないところに、スチールの分路を配置することによって、漂遊磁界をかなり減らすことができるであろう。
【0052】
5.本発明の実施例は、いかなる従来の公知のイオン注入機に組み込んでもよい。例えば、符号200として表される図10に示すような、第5,834,786号特許に示される装置である。開示された多重極の配置から離れた磁石3’の反対側に配置してもよく、そこではビーム幅は僅かに大きく、ターゲットの面WIからは依然として可能な限り遠い距離である。拡がったイオンビーム1は、イオン源2によって生成され、磁石によって約0.2度内で平行にされる。多重極に配列された制御体は次に、それぞれのファラデーカップにおける電流が均等になるよう、ビームから注入ターゲットを取り除いた状態で、プロファイラおよび多重極制御器によって調整される。
6.イオンビームの均一性は、移動するファラデーカップまたは個別のファラデーカップのアレイによって測定することが可能である。しかしながら、簡単にするため、コイル数の半分とし、かつコイルと一直線に揃えたファラデーカップのアレイを、ターゲットの内にまたはその背後近くに配置できるであろう。それぞれのカップの開口部は正確に等しくなっているので、カップの測定結果が等しいことはイオンビームが均一であることを表す。y方向において測定装置の受け入れ(acceptance)が、全部のビームを受けることは重要である。範囲の限定された開口部がターゲットの面内になければ、精度は落ちる。ターゲットの面にプロファイラのハードウェアを直接配置し、その場合、処理対象品と観測記録装置のハードウェアとの衝突を防止するために結合機構が必要とされるか、あるいは、プロファイラのハードウェアをターゲットの面のちょうど背後に配置して均一性のわずかな低落を受け入れるかを、選択できる。誤差は、多重極調節器によって生成される最も強い四重極場の成分に比例する。
【0053】
7.本発明の実施形態を、シリコンウエハ用イオン注入機に組み込んでもよい。従来技術のシステム(米国特許第5,350,926号によって開示された装置を含む)と比較すると、ビームトリマと移動可能な磁極片と関連した制御の全てが今や取り除かれている。これらに代わるのが、上述したタイプの多重極に配列された制御体と、処理対象品がターゲットの面から取り除かれたときにビームの均一性を測定する一列に並んだファラデーカップのアレイである。イオン源によって生成された拡がったイオンビームは、磁石によって質量が分析され、磁石によって約0.2度の範囲内で平行にされる。多重極に配列された制御体は、実際には約+/−0.3度、平行度を悪化させてもよい。複数のファラデーカップの代わりに、本来の移動するファラデーカップのプロファイラシステムを用いることができることに留意されたい。そして、より正確でかつ費用がかからないであろう。しかし、複数のファラデーカップを利用した実際的な操作は、用いるのに遙かに簡単である。
【0054】
8.(特に米国特許第5,834,786号に例示されている)従来技術は、制御可能な双極子電磁場の直交座標の配列を介して電流密度を調整する方法を提供した。その多重極システムにおいてそれぞれのコイル電流の設定とその結果生じる均一性との間には単純な関係がなかったので、これが必要であった。このシステムは、White et al,IIT−98,IEEE,1999による「フラットパネルディスプレイの注入のためのリボンビームにおける均一性の明確な制御」でより十分に記載されている。
しかしながら、個別ワイヤコイル(最も単純な構造)または多極コイルアレイの反対側に位置する対応した組(好適な構造)における電気的エネルギと、ターゲットの面でのビームのイオン密度との間に今度は直接関係があるので、本発明は、電流の均一性の調整処理を簡素にする。対応するファラデーカップにおける電流が所望の値になるまで、特に調整前のプロファイルの平均値になるまで、第1の多極アレイと第2の対局アレイの全長に亘って設けられた、それぞれのワイヤコイルの対応した組を順番に、整することによって、ビーム電流の均一性の調整は達成され得るであろう。制御体におけるそれぞれの多極アレイは、限定された領域に影響を及ぼすため、若干の調整の繰り返しが要求されるかもしれない。プロファイル全体が所望のプロファイルよりも広いまたは狭い場合、目標値は、比例した量によってそれぞれ上げ下げされよう。
【0055】
9.別の異なる構成においては、一方の棒にあるコイルを、正のx方向にコイルのピッチの1/4オフセットし、さらに他方の棒にあるコイルを負のx方向に同じ量オフセットすることにより、不要なB成分の極めて僅かな増加を代償として、コイルの総数を減らすことができる。このようにして、一つの棒のコイルの中心は反対側の棒のコイルの端部と向かい合い、逆の場合も同じである。各コイルを個別に調整することができるという条件で、場の勾配が調整される分解能を大きく低下させることなしに、それぞれのコイルの幅を2倍にすることができる。
本発明は、ここに添付された請求項以外によって、範囲が限定されるものでなく、また形式上制限されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】本発明の制御体の最も単純な構造を示す斜視図である。
【図1B】図1Aの制御体における1つの多極コイルアレイを示す斜視図である。
【図2】図1の制御体における個別のコイル状の巻き線の励磁が、均一かつ平行な別のイオンビームに対して与える影響を示す。
【図3】平行であるが不均一なビームがその平行性を代償にしてビームが均一にされる、図1の制御体の効果を示す。
【図4】本発明の直線状の多極アレイのエネルギが与えられた2つのワイヤコイルによって生じた、個別の磁場勾配間の分離の説明図である。
【図5】コイル電流、場及び場の勾配の関係を示すグラフである。
【図6】場の勾配及びビームの均一性の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の好適な構造を示す斜視図である。
【図8】イオンビームの方向から見た、図7の好適な構造の示す別の図である。
【図9】直線状の多極アレイの、隣接して設けられるワイヤコイルのそれぞれを分離するために、強磁性材のスペーサが用いられた配置を示す。
【図10】従来から公知のイオン注入装置への本発明の組み込みを示す。
【図11】本発明の直角に巻かれて設けられたワイヤコイルと、図C及び図Dの従来技術による構造のコイルとの構造上の差異を示す。
【図12】従来技術の図Aは、イオンビーム用の従来の6極レンズを示す。
【図13】従来技術の図Bは、「Panofsky」4極を示す。
【図14】従来技術の図Cは、ビームの均一性を制御するために用いられるWhite et al.の“Cartesian”多重極の断面図を示す。
【図15】従来技術の図Dは、図Cの“Cartesian”多重極の詳細な立体断面図を示す。
【図16】従来技術の図Eは、図Cの“Cartesian”多重極においてコイルの一組の励磁が均一な別のイオンビームに対して与える影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を連続イオンビームとして生成する生成源と、連続イオンビームを所望の向きに方向付ける手段と、用意された処理対象品に連続イオンビーム中の荷電粒子を注入するための平面と、連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整及び制御する、改良された電磁制御体と、を含むイオン注入装置における前記制御体であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周まわりの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、別々に、直交して、かつ隣接して設けられ、それぞれが導電性材で形成された少なくとも2つのワイヤコイルと、で構成される多極コイルアレイと、
前記多極コイルアレイに対して平行に配置され、しかも前記多極コイルアレイから所定の間隙距離離れた位置にある平面を呈する境界板であって、所定の寸法及び構成を成し強磁性材から成る境界板と、
前記支持棒に設けられたそれぞれのワイヤコイルに別々に電気エネルギを印加する手段と、
前記アレイの前記支持棒に設けられたそれぞれのワイヤコイルに個別に印加される電気エネルギを独立して調整、制御する電流コントローラであって、この電流コントローラによって、エネルギの印加されたそれぞれのワイヤコイルは、直交する方向に延び電流調整された、横幅の限定された磁場勾配を生成し、さらにこの直交する方向に延び電流調整された、横幅の限定された磁場勾配は複数集まって、カスタマイズされた磁場勾配を有する1つの連続磁場を形成し、これによってこの連続磁場のカスタマイズされた磁場勾配が連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を向上させる、該電流コントローラと、
横切って移動する連続イオンビームに、カスタマイズされた磁場勾配を有する連続磁場を加える区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記多極コイルアレイの長さによってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記境界板の前記平面から前記多極コイルアレイが離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められ、さらに、この空間通路において、連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度が増大する、区切られた空間通路と、を備える制御体。
【請求項2】
荷電粒子を連続イオンビームとして生成する生成源と、連続イオンビームを所望の向きに方向付ける手段と、用意された処理対象品に連続イオンビーム中の荷電粒子を注入するための平面と、連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整及び制御する、改良された電磁制御体と、を含むイオン注入装置における前記制御体であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周まわりの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルであって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される第1の多極コイルアレイと、
前記第1の多極コイルアレイに平行に位置し、前記第1の多極コイルアレイのワイヤコイルに対応し、かつ前記第1の多極コイルアレイから所定の間隙距離離れて位置する第2の多極コイルアレイであって、
(α)強磁性材から成り、所定の長さと周まわりの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(β)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルであって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される第2の多極コイルアレイと、
前記第1及び第2の多極コイルアレイの前記支持棒のそれぞれに隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを、独立にかつ同時に流し、これによって、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場勾配を、前記第1の多極コイルアレイと前記第2の多極コイルアレイとの間に独立にかつ同時に生成し、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場勾配が複数集まって第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイとの間に1つの連続磁場を形成し、さらに、これによって前記連続磁場にわたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、前記連続磁場内で、横幅の限定されたそれぞれの磁場勾配を、別々にかつ同時に、自在に変更可能とする、オンデマンド手段と、
第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイの間にあり、横切って移動する連続イオンビームに連続磁場を加えるとともに、加えられた連続磁場の磁場勾配を調整、制御する、区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記第1及び第2の多極コイルアレイの長さによってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記第1の多極コイルアレイを前記第2の多極コイルアレイから離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められ、さらに、この空間通路において、連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度が増大する、区切られた空間通路と、を備える制御体。
【請求項3】
前記連続イオンビームはリボン状のビームである請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
支持棒上の所定の位置に独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた前記ワイヤコイルの数は、4と30の間である請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
さらに、多極アレイのコイルのそれぞれと同じx座標値を有する位置を含む複数の位置において電流を計測することにより、注入しようとする処理対象品の面の、長手寸法における前記イオンビームの電流密度のプロファイルを計測する手段を有し、この計測手段は、ビームの幅の狭い寸法では、ビーム端を超えて延在するが、幅の広い寸法の方向では、多極コイルアレイのコイルの1つの厚さよりも小さくなるように制限されている請求項1又は2に記載の制御体。
【請求項6】
可変電流を流す前記手段は、前記電流密度のプロファイルの計測に応じて調整され、電流密度が所望のプロファイルに一致するまで、ターゲットの面の対応する位置における、測定されるイオンビーム電流密度のプロファイルを修正する請求項5に記載の制御体。
【請求項7】
前記多極コイルアレイの前記ワイヤコイルに印加される電流は、50から10000(アンペア・回)の範囲である請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記空間通路の前記所定の間隙距離は、25mmから250mmの間の範囲にある寸法である請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項9】
前記空間通路の前記横幅の寸法は、200mmから2000mmの間の範囲にある請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項10】
連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整、制御する方法であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周まわりの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルであって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される多極コイルアレイと、
前記多極コイルアレイに対して平行に配置され、しかも前記多極コイルアレイから所定の間隙距離離れた位置にある平面を呈する境界板であって、所定の寸法及び構成を成し強磁性材から成る境界板と、
前記支持棒に隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを、独立に流し、その結果、隣接して設けられエネルギの与えられたワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場勾配を独立して生成することができ、隣接して延びる、横幅の限定された磁場勾配が複数集まって連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場にわたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、前記連続磁場内で、横幅の限定されたそれぞれの磁場勾配が、別々に自在に変更され得る、オンデマンド手段と、
横切って移動する連続イオンビームに連続磁場を加え、さらに横切って移動する連続イオンビームのために加えられた連続磁場の磁場勾配を調整、制御する、区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記多極コイルアレイの前記支持棒の長さによってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記境界板の前記平面から前記多極コイルアレイが離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められた、区切られた空間通路と、を備える制御体を取得するステップと、
前記電磁制御体の前記空間通路を通して連続イオンビームの向きを方向付けるステップと、
前記支持棒上に隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを独立に流し、これによって、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場を独立に生成し、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場が複数集まって1つの連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場内で調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、横幅の限定された磁場のそれぞれが前記連続磁場内で、別々に自在に変更され得るようにするステップと、
前記電磁制御体を通過する連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度を調整し制御するステップと、を有する方法。
【請求項11】
連続イオンビーム中の荷電粒子の均一性を調整、制御する方法であって、
(i)強磁性材から成り、所定の長さと周周りの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(ii)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルであって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される第1の多極コイルアレイと、
前記第1の多極コイルアレイに平行に位置し、前記第1の多極コイルアレイのワイヤコイルに対応し、かつ前記第1の多極コイルアレイから所定の間隙距離離れて位置する第2の多極コイルアレイであって、
(α)強磁性材から成り、所定の長さと周まわりの長さを有する真っ直ぐに延びた支持棒と、
(β)この支持棒上の所定の位置に、独立して巻かれ、かつ隣接して設けられた少なくとも2つのワイヤコイルであって、それぞれのワイヤコイルが導電性材で形成され、前記真っ直ぐに延びた支持棒に対して直交するように巻かれたワイヤコイルと、で構成される第2の多極コイルアレイと、
前記第1及び第2の多極コイルアレイの前記支持棒のそれぞれに隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを、独立にかつ同時に流し、この結果、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場勾配を、前記第1の多極コイルアレイと前記第2の多極コイルアレイとの間に独立にかつ同時に生成することができ、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場勾配が複数集まって第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイとの間に連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場わたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、前記連続磁場内で、横幅の限定されたそれぞれの磁場勾配が、別々にかつ同時に、自在に変更され得るようにする、オンデマンド手段と、
第1の多極コイルアレイと第2の多極コイルアレイの間にあり、横切って移動する連続イオンビームに連続磁場を加えるとともに、加えられた連続磁場の磁場勾配を調整、制御する区切られた空間通路であって、この空間通路は、前記第1及び第2の多極コイルアレイの支持棒の所定の長さによってx軸方向における寸法の範囲が定められ、前記第1の多極コイルアレイを前記第2の多極コイルアレイから離間する前記所定の間隙距離によってy軸方向における寸法の範囲が定められた、区切られた空間通路と、を備える制御体を取得するステップと、
前記電磁制御体の前記空間通路を通して連続イオンビームの向きを方向付けるステップと、
前記第1及び第2の多極アレイの前記支持棒上に隣接して設けられたそれぞれのワイヤコイルに可変電流の電気エネルギを独立かつ同時に流し、これによって、隣接して設けられ、エネルギの与えられたそれぞれのワイヤコイルが、直交する方向に延びそれぞれ調整可能な、横幅の限定された磁場を独立かつ同時に生成し、さらに、隣接して延びる、横幅の限定された磁場が複数集まって前記第1の多極アレイと前記第2の多極アレイとの間で1つの連続磁場を形成し、さらに、前記連続磁場にわたって調整可能で制御可能な磁場勾配とするために、横幅の限定された磁場のそれぞれが前記連続磁場内で別々にかつ同時に自在に変更され得るようにするステップと、
前記電磁制御体を通過する連続イオンビームの荷電粒子の均一性の程度を調整し制御するステップと、を有する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−4676(P2006−4676A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−177518(P2004−177518)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(504230291)
【Fターム(参考)】