説明

連続作動モード設定機構および、この連続作動モード設定機構を備えたエアゾール式製品

【課題】噴射ボタンの回動による連続作動モード(ガス抜きモード)の設定状態の確実化と、当該連続作動モードの設定についての誤操作防止の十全化を図る。
【解決手段】連続作動モードを設定する際には、静止モード位置の噴射ボタン1(図示の噴射ボタン1を時計方向に90度回動させた状態)を、ステム2から一旦取り外した後90度ほど反時計方向に回動して、モード選択用凸状部6cが作動モード用の案内部5cから連続作動モード用の案内部5dに対応する位置へと移行させる。続いて再度ステム2に取り付けて押し込むことで、モード選択用凸状部6cとガス抜きモード設定用凸状部5eとが係合してステム2が押圧されたままの連続作動モードとなる。噴射ボタン1を反時計方向に回動すれば前記係合が外れて、連続作動モードは解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の作動モード設定操作可能な状態でステム側に取り付けられている操作部(噴射ボタン)を、いったん取り外した後、その正立状態のまま、肩カバー体に対する所定の新周方向位置関係で当該ステム側に再度取り付けてから押下げることにより、当該操作部が通常の作動モード位置と同様の下動位置に係合保持されて、連続作動モード(ガス抜きモード,内容物連続噴射モード)へと移行し、かつ、この係合保持状態の操作部の回動操作に基づいて連続作動モードが解除される、ようにした連続作動モード設定機構に関する。
【0002】
本明細書では「連続作動モード」の語を、噴射ボタンが作動モードと同様の下動位置に強制的に保持されて、ガス,内容物などが連続噴射される状態を示す意で用いる。
【0003】
なお、必要に応じてガスの連続噴射状態を「ガス抜きモード」といい、内容物の連続噴射状態を「内容物連続噴射モード」という。
【0004】
また、「肩カバー体」の語を、作動モードおよび連続作動モードの際にも容器本体側のマウンティングキャップなどに取り付けられたままの状態に保持される、部材を示す意で用いる。
【0005】
また、「ステム」の語を、弁作用を呈するステム本体に噴射ボタンとの間の接続部材などを取り付けた形のものも含む意で用いる。
【0006】
また、前後上下の位置関係を、静止モードおよび作動モードにおける噴射孔側を「前」、それとは反対側を「後」とそれぞれ記し、噴射ボタン側を「上」、それとは反対の容器本体側を「下」とそれぞれ記す。
【0007】
なお、エアゾール式製品の連続作動モードが設定された場合、容器内容物をまだ使い切っていないときは内容物連続噴射状態(内容物連続噴射モード)となり、容器内容物を略使い切っているときはガス抜き状態(ガス抜きモード)となる。
【0008】
内容物連続噴射状態とガス抜き状態とはもっぱら用途上の違いにすぎず、エアゾール式製品の動作機構としては、これら各状態はともにアクチュエータ(噴射ボタン,ステムなど)がその作動位置に継続的に保持されているものである。すなわち当該各状態のそれぞれにおけるバルブ機構などの動作メカニズムの違いはない。
【背景技術】
【0009】
従来、内容物を略消尽した後のエアゾール式製品の廃棄に先立って押下げタイプの噴射ボタンを回動操作することにより、当該噴射ボタンがガス抜きモード位置まで下動してその位置に係合保持される、ようにしたガス抜きモード設定機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
このときのガス抜きモード設定操作は、ステムに取り付けられたままの押下げタイプの噴射ボタンに対しての静止モード位置からの回動操作である。
【0011】
この回動操作にともない、噴射ボタンの被案内部分が、肩カバー体の下り傾斜の天井面に案内されながら下方に移動してその先の端面(平坦天井面)に係合保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−165586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように従来の、押下げタイプの噴射ボタンの回動操作に基づいて作動するガス抜きモード設定機構の場合、その設定操作の方向はあくまで概略「横」であって、最終的に噴射ボタンを保持する部分も回動操作方向上側の平坦天井面となる。
【0014】
すなわち、肩カバー体の下り傾斜の天井面に案内されながら略横方向に移動する噴射ボタンの被案内部分を、当該傾斜部分から連続した形の平坦天井面に当接させ、これにより当該噴射ボタンの上方向への静止モード復帰動作を阻止している。
【0015】
また、ガス抜きモード設定用の回動操作はステムに取付けられたままの噴射ボタンに対して行われる。
【0016】
そのため、ガス抜きモードの噴射ボタンに、ガス抜きモード設定の回動操作とは逆方向の不用意な力が加わったりすると、噴射ボタンの被案内部分が、本来の平坦天井面からその隣の傾斜天井面(このときの被案内部分からみると上り傾斜天井面)の方に移動して、操作ボタンのガス抜きモード位置への確実な保持を担保できない可能性が生じるという問題点があった。
【0017】
この場合、隣の傾斜天井面へと移動した噴射ボタンは、その被案内部分が上り傾斜天井面に沿う形で上動してついには静止モード位置へと復帰し、ガス抜きモードは勿論中断される。
【0018】
また、通常の作動モード設定仕様のまま、ガス抜きモード設定用の操作ボタン回動操作がおこなわれるようにしているので、操作ボタンの不用意な回動操作にともなうガス抜きの誤動作が生じ得るという問題点があった。
【0019】
そこで本発明では連続作動モード設定機構を、
(11)押下げタイプの操作部をいったんステムから取り外して例えば肩カバー体の周方向に例えば90度ほど回動させた状態、すなわち肩カバー体との間のいわば周方向位相を作動モードとは異なる状態にしてからステムに再度取り付け、
(12)この再取付け後の操作部を下動させることにより、当該操作部に形成した連続作動モード設定用の被係合部が肩カバー体の係合部に係合保持される、
態様の構成にしている。
【0020】
これにより、操作部の回動操作をともなう連続作動モード設定後の当該操作部と肩カバー体との係合状態の確実化を図るとともに、当該連続作動モードの設定についての誤操作防止の十全化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器本体(例えば後述の容器本体3)と一体化される筒状の肩カバー体(例えば後述の肩カバー体5)と、
前記肩カバー体の中を上下動して噴射内容物への弁作用を呈するステム(例えば後述のステム2)と、
前記ステムに取外し可能な形で取り付けられて作動モードおよび連続作動モードを選択的に設定するための押下げタイプの操作部(例えば後述の噴射ボタン1)と、
からなる連続作動モード設定機構において、
前記肩カバー体は、
その内周面の第1の周方向位置に形成されて、作動モード設定操作時の前記操作部を案内する第1の案内部(例えば後述の長縦凹状部5c)と、
当該内周面の当該第1の周方向位置とは異なる第2の周方向位置に形成されて、連続作動モード設定の際の前記操作部を案内する第2の案内部(例えば後述の短縦凹状部5d)と、
当該第2の案内部の下側内周面に形成されて、前記操作部を連続作動モード位置に係合保持する係合部(例えば後述のガス抜きモード設定用凸状部5e)と、
当該係合部の周方向両側の内周面に形成されて、
当該係合部に係合状態の当該操作部が、第1の周方向に回動して当該係合状態から脱して上方向に移動した後、当該第1の周方向とは逆の第2の周方向に回動することにより当該係合部の上方の当該第2の案内部に復帰するための内周面凹状空間域(例えば後述の周方向切欠状部5h)と、を備え、
前記操作部は、
前記ステムに取り付けられたときの前記肩カバー体に対する回動位置の違いにより、前記第1の案内部または前記第2の案内部に選択的に案内され、かつ、当該第2の案内部に案内されながら所定位置まで下動することにより、
前記係合部に係合保持される被案内係合部(例えば後述のモード選択用凸状部6c)を備えている。
(2)上記(1)において、
前記被案内係合部は、
前記係合部を乗り越えた所定位置まで下動して当該係合部に係合保持される態様のものである。
(3)上記(2)において、
前記第1の案内部および前記第2の案内部はそれぞれ、
前記肩カバー体の上端部分から下方に形成された縦凹状部であり、
前記係合部は、
内方への下り傾斜により形成された上テーパ面(例えば後述の上テーパ面5f)および、当該上テーパ面の内端部分から前記下側内周面に向けて形成された底面(例えば後述の底面5g)を備えた、周方向の連続作動モード設定用凸状部であり、
前記被案内係合部は、
前記上テーパ面に対応する外方への上り傾斜により形成された下テーパ面(例えば後述の下テーパ面6d)および、当該下テーパ面の外端部分から前記操作部の外周面に向けて形成され、連続作動モード設定操作の際に前記底面と係合する上面(例えば後述の上面6e)を備えた、周方向のモード選択用凸状部である。
【0022】
このような構成からなるエアゾール用カバー体および、当該カバー体を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以上の課題解決手段により、
操作部の回動操作をともなう連続作動モードの設定後の当該操作部と肩カバー体との係合状態の確実化を図るとともに、当該連続作動モードの設定についての誤操作防止の十全化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】通常の作動モードが設定可能な静止モードを示している。
【図2】図1の噴射ボタンをステムから取り外して図示反時計方向に回動させたガス抜きモード設定の初期段階および、ガス抜きモードを解除する場合の噴射ボタンの操作方向を示している。
【図3】図2の初期段階の操作ボタンを再びステムに取り付けてから押し下げた状態のガス抜きモードを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1乃至図3を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
なお、上述したように本発明の連続作動モード設定機構における具体的な個々の動作態様は、ガス抜きモードまたは内容物連続噴射モードといえる。
【0027】
以下の実施形態では、単なる説明の便宜上として、ガス抜きモードすなわち操作ボタンが通常の作動モード位置に係合保持された状態で容器本体の残留ガスが外部空間域に連続噴射されることを前提にする。
【0028】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば上端側開口部3a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体3)の一部であることを示している。
【0029】
図1〜図3において、
1は作動モードおよびガス抜きモードを選択的に設定できる噴射ボタン(=後述のガス抜きモード保持部6+操作本体部7),
2は噴射ボタン1(操作本体部7)が取外し可能な形で取り付けられ、かつ、コイルスプリング(図示省略)の弾性力により上方向に付勢されて、周知のバルブ作用および噴射通路作用を呈するステム,
3は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の周知の容器本体,
3aは当該容器本体の上端側開口部,
4は容器本体3の上端側開口部3aに例えば巻締め態様により取り付けられた周知のマウンティングキャップ,
4aは当該マウンティングキャップの上端外側の縁部分に形成された周知のアンダーカット,
をそれぞれ示している。
【0030】
また、
5はマウンティングキャップ4のアンダーカット4aに嵌合状態で取り付けられて、ガス抜きモード設定機能を備えた筒状の肩カバー体,
5aは当該肩カバー体を構成してその内外径がともに後述の下筒状部5bのそれぞれより小さく設定された上筒状部,
5bは上筒状部5aから連続する形で当該肩カバー体を構成してその内外径がともに当該上筒状部のそれぞれより大きく設定された下筒状部,
5cは上筒状部5aの内周面の180度離れた対向位置のそれぞれにその上端から下方に延びる態様で形成されて、作動モード設定時の噴射ボタン1の下動を可能にするための一対の長縦凹状部,
5dは長縦凹状部5cから90度離れた内周面対向位置のそれぞれにその上端から下方に延びる態様で形成されて、ガス抜きモード設定時の噴射ボタン1の下動を可能にするための一対の短縦凹状部,
5eは一対の短縦凹状部5dからそれぞれ連続してその直下および直下両側の各内周面域に広がる周方向下凹状部の、当該直下の部分に形成されて、噴射ボタン1(後述のモード選択用凸状部6c)をガス抜きモード位置に係合保持するための一対のガス抜きモード設定用凸状部,
5fはガス抜きモード設定用凸状部5eの上面側であって内方への下り傾斜態様により形成された上テーパ面,
5gは上テーパ面5fの下端(内端)部分から上筒状部5aの内周面に向けて形成されたガス抜きモード係合作動用の底面,
5hは上記周方向下凹状部の、ガス抜きモード設定用凸状部5eそれぞれの両側内周面部分に設定され、ガス抜きモード解除の際に後述のモード選択用凸状部6cの復帰用空間域として作用する計四個の周方向切欠状部,
をそれぞれ示している。
【0031】
また、
6は吊りゲート形態により肩カバー体5と一体成形されて噴射ボタン1の下側部分を構成し、ガス抜きモード設定機能を備えた環状のガス抜きモード保持部,
6aは肩カバー体5との間の仮結合部,
6bは当該ガス抜きモード保持部と後述の操作本体部7との一体化に際しての案内用テーパ面とこれに続く嵌合用横平面とを備える態様で、上面部分周方向の180度離れた対向位置に形成された一対の起立片部,
6cは作動モード設定操作時には長縦凹状部5cに案内されながら下動し、また、ガス抜きモード設定操作時には短縦凹状部5dに案内されながらガス抜きモード設定用凸状部5eに係合保持される態様で、当該ガス抜きモード保持部の、各起立片部6bの周方向中間部分に相当する外周面位置のそれぞれに形成された一対のモード選択用凸状部,
6dはモード選択用凸状部6cの底面側であって、ガス抜きモード設定操作時に肩カバー体5(ガス抜きモード設定用凸状部5e)の上テーパ面5gに案内される態様の、外方への上り傾斜により形成された下テーパ面,
6eはモード選択用凸状部6cの上面側であって、ガス抜きモード時に肩カバー体5(ガス抜きモード設定用凸状部5e)の底面5gと係合する上面,
7はガス抜きモード保持部6と嵌合して噴射ボタン1の上側部分を構成する鞘状の操作本体部,
7aは当該操作本体部の環状上面の、起立片部6bがそれぞれ入り込んで嵌合する位置に形成された一対の孔部,
7bは当該操作本体部に設定される周知の内容物通路の出力部としての噴射孔,
Aはガス抜きモードを解除する際の噴射ボタン1の初期回動操作方向(図2参照),
をそれぞれ示している。
【0032】
ここで、噴射ボタン1,肩カバー体5,ガス抜きモード保持部6および操作本体部7は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。容器本体3やマウンティングキャップ4は例えば金属性のものである。ステム2は例えばプラスチック製または金属製のものである。
【0033】
図示のガス抜きモード設定機構の基本的特徴は、
(21)肩カバー体5に、
・作動モード対応の長縦凹状部5c
・ガス抜きモード対応の短縦凹状部5dおよびその直下のガス抜きモード設定用凸状部5e
・ガス抜きモード解除対応の周方向切欠状部5h
をそれぞれ形成し、
(22)噴射ボタン1のガス抜きモード保持部6にモード選択用凸状部6cを形成した、
ことである。
【0034】
ここでガス抜きモード(図3参照)を設定する際、利用者は、
(31)先ず、モード選択用凸状部6cが長縦凹状部5cに設定された状態の静止モード(図1参照)の噴射ボタン1を、ステム2からいったん取り外してから周方向に(図示の場合は反時計方向に)90度回動させた状態、すなわちモード選択用凸状部6cが肩カバー体5の短縦凹状部5dの上方に位置する状態に設定し(図2参照)、
(32)次に、この回動後の噴射ボタン1を、図2の実線矢印で示すように下動させながらステム2に取り付け、
(33)さらに、噴射ボタン1およびこれと一体のステム2を下方に押し込んで、当該噴射ボタン(ガス抜きモード保持部6)のモード選択用凸状部6cの上面6eをガス抜きモード設定用凸状部5eの底面5gに係合させる、
ことになる。
【0035】
なお、上記(33)において、ガス抜きモード保持部6のモード選択用凸状部6cは、肩カバー体5のガス抜きモード設定用凸状部5eとの間で生じるテーパ面作用および弾性変形作用に基づいて、当該ガス抜きモード設定用凸状部を乗り越える。
【0036】
このテーパ面作用は、モード選択用凸状部6cの下テーパ面6dとガス抜きモード設定用凸状部5eの上テーパ面5fとの当接によって生じる。
【0037】
乗越え後のガス抜きモード設定用凸状部5eおよびモード選択用凸状部6cはともに初期形状に弾性復帰して、それぞれの底面5gと上面6eとの係合作用により保持される。
【0038】
また、図3のガス抜きモードを解除する際、利用者は図2の点線矢印Aで示すように、
(41)先ず、モード選択用凸状部6cの上面6eがガス抜きモード設定用凸状部5eの底面5gに係合保持された状態の噴射ボタン1を、図示A方向またはその逆方向に回動して、当該噴射ボタンの上記(33)の係合状態を解除し、
(42)次に、この係合状態解除後、周知のステム付勢用コイルスプリングの弾性作用によりモード選択用凸状部6cの上面6eが周方向切欠状部5hの天井部分に当接する、噴射ボタン1を、上記(41)とは逆方向の短縦凹状部5dの方へと回動させ、
(43)次に、モード選択用凸状部6cの全体が短縦凹状部5dの位置まで移動した段階で、この回動操作を止めて、噴射ボタン1を、コイルスプリングの弾性力により上下方向初期位置へと復帰させる、
ことになる。
【0039】
なお、周方向切欠状部5hの天井部分とガス抜きモード設定用凸状部5eの上テーパ面5fとの上下方向の位置関係は、上記(42)の回動操作の際にモード選択用凸状部6cが当該ガス抜きモード設定用凸状部の上方に移動できるように設定されている。
【0040】
ここで再度、図1の静止モードを設定するには、上記(43)の状態の噴射ボタン1を、ステム2からいったん取り外して静止モードからガス抜きモードへの移行のときとは逆方向に90度回動させた状態で、ステム2に取り付ければよい。
【0041】
この90度回動後の噴射ボタン1は、そのガス抜きモード保持部6のモード選択用凸状部6cが肩カバー体5の長縦凹状部5cの直上部分に位置する。
【0042】
したがって、この90度回動後の噴射ボタン1をそのまま下動させてステム2に取り付けると、噴射ボタン1,ステム2および肩カバー体5などはそれぞれ図1の静止モードと同じ位置関係に設定される。
【0043】
なお、図示の噴射ボタン機構のように、容器本体1や肩カバー体5に対する噴射方向を特定する必要がないエアゾール式製品の場合、ステム2からいったん取り外した噴射ボタン1を、静止モードからガス抜きモードへの移行のときと同じ方向に90度回動させた状態で当該ステムに取り付けてもよい。
【0044】
図1の静止モードにおいては、
(51)ガス抜きモード保持部6のモード選択用凸状部6cが肩カバー体5の長縦凹状部5cに配設され、
(52)噴射ボタン1およびこれと一体のステム2が上記コイルスプリングの作用で上方向に駆動されて所定位置に保持され、
(53)ステム2の周知の弁作用部が閉状態に設定されている。
【0045】
そして利用者がこの噴射ボタン1を押し下げることにより、通常のエアゾール式製品の場合と同じように、
(61)ステム2もコイルスプリングの上方向への弾性力に抗しながら下動して、それまで閉状態であった弁作用部が開状態へと変化し、
(62)容器本体3の内容物が、噴射ガスの作用で、ステム2および操作本体部7それぞれの内部通路を経て噴射孔7bから外部空間域に噴射される。
【0046】
この噴射ボタン1の押下げ操作を止めると、ステム2およびこれと一体の噴射ボタン1がコイルスプリングの弾性作用により上方向に移動して、弁作用部が閉じた状態の静止モード(図1参照)に復帰する。
【0047】
本発明の連続作動モード設定機構が図示の実施形態に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、
(71)ガス抜きモード設定用凸状部5eを、その底面5gが上筒状部5aの下端位置またはそれより下方位置となるように形成する、
(72)長縦凹状部5c,短縦凹状部5dおよびモード選択用凸状部6cそれぞれの設定個数を「1」を含む任意の個数とする、
(73)噴射ボタン1を、ガス抜きモード保持部6と操作本体部7とを合体した態様の一部材として形成する(この場合、起立片部6bおよび孔部7aは不要である)、
ようにしてもよい。
【0048】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0049】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0050】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0051】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0052】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0053】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0054】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0055】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0056】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0057】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0058】
1:噴射ボタン(ガス抜きモード保持部6+操作本体部7)
2:ステム
3:容器本体
3a:上端側開口部
4:マウンティングキャップ
4a:アンダーカット
5:肩カバー体
5a:上筒状部
5b:下筒状部
5c:一対の長縦凹状部
5d:一対の短縦凹状部
5e:一対のガス抜きモード設定用凸状部
5f:上テーパ面
5g:ガス抜きモード係合作動用の底面
5h:周方向切欠状部
6:環状のガス抜きモード保持部
6a:仮結合部
6b:一対の起立片部
6c:一対のモード選択用凸状部
6d:下テーパ面
6e:上面
7:鞘状の操作本体部
7a:一対の孔部
7b:噴射孔
A:ガス抜きモードを解除する際の噴射ボタン1の初期回動操作方向(図2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と一体化される筒状の肩カバー体と、
前記肩カバー体の中を上下動して噴射内容物への弁作用を呈するステムと、
前記ステムに取外し可能な形で取り付けられて作動モードおよび連続作動モードを選択的に設定するための押下げタイプの操作部とからなり、
前記肩カバー体は、
その内周面の第1の周方向位置に形成されて、作動モード設定操作時の前記操作部を案内する第1の案内部と、
当該内周面の当該第1の周方向位置とは異なる第2の周方向位置に形成されて、連続作動モード設定の際の前記操作部を案内する第2の案内部と、
当該第2の案内部の下側内周面に形成されて、前記操作部を連続作動モード位置に係合保持する係合部と、
当該係合部の周方向両側の内周面に形成されて、
当該係合部に係合状態の当該操作部が、第1の周方向に回動して当該係合状態から脱して上方向に移動した後、当該第1の周方向とは逆の第2の周方向に回動することにより当該係合部の上方の当該第2の案内部に復帰するための内周面凹状空間域と、を備え、
前記操作部は、
前記ステムに取り付けられたときの前記肩カバー体に対する回動位置の違いにより、前記第1の案内部または前記第2の案内部に選択的に案内され、かつ、当該第2の案内部に案内されながら所定位置まで下動することにより、
前記係合部に係合保持される被案内係合部を備えている、
ことを特徴とする連続作動モード設定機構。
【請求項2】
前記被案内係合部は、
前記係合部を乗り越えた所定位置まで下動して当該係合部に係合保持される態様のものである、
ことを特徴とする請求項1記載の連続作動モード設定機構。
【請求項3】
前記第1の案内部および前記第2の案内部はそれぞれ、
前記肩カバー体の上端部分から下方に形成された縦凹状部であり、
前記係合部は、
内方への下り傾斜により形成された上テーパ面および、当該上テーパ面の内端部分から前記下側内周面に向けて形成された底面を備えた、周方向の連続作動モード設定用凸状部であり、
前記被案内係合部は、
前記上テーパ面に対応する外方への上り傾斜により形成された下テーパ面および、当該下テーパ面の外端部分から前記操作部の外周面に向けて形成され、連続作動モード設定操作の際に前記底面と係合する上面を備えた、周方向のモード選択用凸状部である、
ことを特徴とする請求項2記載の連続作動モード設定機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の連続作動モード設定機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106750(P2012−106750A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255187(P2010−255187)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】