説明

連続加熱処理炉の炉温設定方法及び炉温制御方法

【課題】移動する炉床上に載置された原料をバーナーで加熱して還元処理する連続加熱処理炉において、目標とする金属化率を、最小の必要投入熱量で達成することを可能とする炉温設定方法及び炉温制御方法を提供する。
【解決手段】連続加熱処理炉の装入口から排出口までの間をゾーンニングして各ゾーンごとに炉温を仮定して複数の炉温パターンを設定する。次いで、予め試験等により求めておいた原料の金属化率α及び炭素含有率βの時間関数を用いて、排出口における金属化率αOUTを各炉温パターンについて算出し、算出された金属化率αOUTが目標値以上となる炉温パターンについて連続加熱処理炉の必要投入熱量を算出し、算出された必要投入熱量のうち、最小となる必要投入熱量を実現する炉温パターンを最適炉温パターンとする。そして、最適炉温パターンに基づいて、連続加熱処理炉のバーナーに供給される燃料を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する炉床上に載置された原料をバーナーで加熱して還元処理する連続加熱処理炉の炉温設定方法及び炉温制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄ダストや粉鉱石などの製鉄廃棄物に含まれる酸化鉄を還元処理して製鉄原料等に再利用するため、製鉄廃棄物と炭材とを混合して造粒したブリケット(ペレット)を回転炉床炉に装入し、加熱還元することにより還元製品(DRI)を製造すると共に、亜鉛を含む製鉄廃棄物から亜鉛を捕集して回収するプロセスが実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
回転炉床炉10及び関連設備の一例を図12に、回転炉床炉10の内部の一例を図13に示す。製鉄ダストと還元材である炭材は、回転炉床炉10の前段に配置された原料前処理部20において所定の割合で混合された後、ブリケットBに造粒される。原料前処理部20において製造されたブリケットBは、回転炉床炉10の装入口18から回転炉床炉10内に装入される。
【0004】
回転炉床炉10は、水平面内に配置されたドーナツ状の回転炉床11と、回転炉床11の内周縁と外周縁に沿ってそれぞれ配置された周壁部12a及び天井部12bからなるフード12と、各周壁部12aに所定の間隔で配置されたバーナー13とを備えている。図12では、回転炉床炉10の内部を示すため、回転炉床11の半分のみフード12で覆われているように描かれているが、実際は、回転炉床11全体がフード12で覆われている。
回転炉床11の直下には、全周に亘ってレール14が配設されている(図13参照)。回転炉床11は、車輪15を介してレール14に支持され、車輪15が回転することにより一定速度でフード12内を移動する。また、フード12内(炉内)を外気から遮断するため、回転炉床11と周壁部12aとの間には、水封手段17が設けられている。
【0005】
装入口18から炉内に装入されたブリケットBは、回転炉床11の移動に伴って先ず加熱ゾーンで1000℃以上まで加熱される。さらに、高温の還元ゾーンでは、ブリケットBの反応温度は1100℃以上に達し、含有炭素による酸化亜鉛や酸化鉄の還元反応が進行する。この反応により亜鉛が気化し、ブリケットBから分離される。燃焼ガス及び反応ガスは、回転炉床11に対し対向流となって排気ダクト21から回転炉床炉10外へ排出される。そして、集塵機22でガス中の亜鉛分が回収された後、煙突23から大気中へ放出される。一方、還元されたブリケットBは排出口19から排出され、還元製品として再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−298202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転炉床炉の操業では、還元製品の品質を評価する重要な指標の一つとして、金属化率(Metal.Feの質量/Total.Feの質量)が用いられている。高品質の還元製品を製造するためには、できるだけ高い金属化率を達成する必要があるが、回転炉床炉から排出される還元製品の金属化率をリアルタイムで測定することは現状では不可能であるため、1週間ほどかけて還元製品の化学分析を行っている。
【0008】
還元製品の金属化率を決定する因子は、ブリケットやペレットなどの原料に含まれる炭素量(初期炭素含有率)、還元時間、及び炉内温度である。初期炭素含有率及び還元時間が一定の場合、炉内温度が高いほど、原料の還元が促進される。また、炉内温度及び還元時間が一定の場合、初期炭素含有率が高いほど、原料の還元が促進される。
【0009】
上記因子のうち、初期炭素含有率については、回転炉床炉に装入される前の原料を分析することにより把握することができる。また、還元時間については、回転炉床の移動速度(回転速度)から計算することができる。
しかし、炉内温度については、上述したように、還元製品の金属化率をリアルタイムで測定できないため、適切な炉温設定であるかどうか操業時に検証することができない。そのため、過去の操業経験に基づいて回転炉床炉の炉温制御を行っており、目標とする金属化率を、最小の必要投入熱量で達成するための最適炉温にはなっていない。
【0010】
さらにまた、従来の炉温制御が炉温監視によるPID制御であるため、原料装入量の急激な変動に適応できないという問題がある。例えば、原料の装入量が一時的に増加した際、増加した原料による還元吸熱反応によって吸熱量が増大し、炉内温度が低下するが、この温度低下が原因となり、製品品質(金属化率)が劣化することが多い。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、移動する炉床上に載置された原料をバーナーで加熱して還元処理する連続加熱処理炉において、目標とする金属化率を、最小の必要投入熱量で達成することを可能とする炉温設定方法及び炉温制御方法を提供することを目的とする。
また、原料装入量の急激な変動に適応可能な炉温制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、第1の発明は、移動する炉床上に載置された原料をバーナーで加熱して還元処理する連続加熱処理炉の炉温を設定する方法であって、連続加熱処理炉の装入口から排出口までの間をゾーンニングして各ゾーンごとに炉温を仮定して複数の炉温パターンを設定し、各炉温パターンについて排出口における金属化率αOUTを算出する。そして、算出された金属化率αOUTが目標値以上となる炉温パターンのうち、最小となる必要投入熱量を実現する炉温パターンを最適炉温パターンとするものであり、以下の工程を備えている。
【0013】
(1)連続加熱処理炉の炉温T及び該連続加熱処理炉に装入される原料の初期炭素含有率βINをパラメータとして、該原料の金属化率αの時間関数α=f(t)と炭素含有率βの時間関数β=g(t)を求める。ここで、金属化率=Metal.Feの質量/Total.Feの質量、炭素含有率=原料に含まれる炭素の質量/原料の質量である。また、tは還元時間である。
(2)前記連続加熱処理炉の装入口から排出口までの間を第1ゾーンから第mゾーン(mは自然数)にゾーンニングし、前記各ゾーンについて炉温T(i=1...m)を仮定して、前記第1ゾーンの炉温T乃至前記第mゾーンの炉温Tからなる炉温パターンを複数通り作成する。
【0014】
(3)作成した全ての炉温パターンについて以下の操作を実施し、各炉温パターンごとに、排出口における金属化率αOUTを算出する。
先ず、原料装入時における該原料の金属化率αIN及び該原料の初期炭素含有率βINを第1ゾーンの入口における金属化率α1IN及び炭素含有率β1INとし、前記第1ゾーンの炉温T及び初期炭素含有率β1INにおける前記α=f(t)及び前記β=g(t)を用いて、前記第1ゾーンの出口における金属化率α1OUT及び炭素含有率β1OUTを算出する。次いで、第i−1ゾーン(i=2...m)の出口における金属化率αi−1OUT及び炭素含有率βi−1OUTを第iゾーンの入口における金属化率αiIN及び炭素含有率βiINとし、第iゾーンの炉温Tにおける前記α=f(t)及び前記β=g(t)を用いて、前記第iゾーンの出口における金属化率αiOUT及び炭素含有率βiOUTを算出する。
(4)算出された前記金属化率αOUT(第mゾーンの出口における金属化率αmOUT)が目標値以上となる前記炉温パターンについて、前記連続加熱処理炉の必要投入熱量を算出し、算出された前記必要投入熱量のうち、最小となる前記必要投入熱量を実現する前記炉温パターンを最適炉温パターンとする。
【0015】
第1の発明に係る連続加熱処理炉の炉温設定方法では、最適な炉温パターンを求めること、即ち、排出口における金属化率αOUTが目標値以上となる炉温パターンのうち、最小となる必要投入熱量を実現する炉温パターンを求めることを目的としているため、第i−1ゾーンの炉温Ti−1と第iゾーンの炉温Tが異なる場合も当然考えられる。その場合、炉温Tが異なるため、第i−1ゾーンで使用したα=f(t)及びβ=g(t)を、第iゾーンにおいて使用することができない。そこで、第1の発明に係る連続加熱処理炉の炉温設定方法では、以下の工程を備えていることを好適とする。
【0016】
(1)連続加熱処理炉の炉温T及び該連続加熱処理炉に装入される原料の初期炭素含有率βINをパラメータとして、該原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係式β=h(α)を求める。
(2)前記第i−1ゾーンの炉温Ti−1と前記第iゾーンの炉温Tが異なる際、前記第iゾーンの入口における金属化率αiINと炭素含有率βiINの関係を満足する炉温Tにおける前記β=h(α)を選択して、該β=h(α)における初期炭素含有率βiINを求める。
(3)求められた前記初期炭素含有率βiIN及び炉温Tを満足する前記α=f(t)及び前記β=g(t)を選択して、前記第iゾーンの出口における金属化率αiOUT及び炭素含有率βiOUTを算出する。
【0017】
また、第2の発明に係る連続加熱処理炉の炉温制御方法は、第1の発明に係る連続加熱処理炉の炉温設定方法によって得られた最適炉温パターンに基づいて、前記連続加熱処理炉のバーナーに供給される燃料を制御することを特徴としている。
【0018】
また、第2の発明に係る連続加熱処理炉の炉温制御方法では、前記連続加熱処理炉に装入される原料の質量を測定すると共に、該連続加熱処理炉内における前記原料の位置をトラッキングし、トラッキングされた位置に近接する前記バーナーに供給される燃料を該原料の質量に基づいて補正することを好適とする。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明では、連続加熱処理炉の装入口から排出口までの間をゾーンニングして各ゾーンごとに炉温を仮定して複数の炉温パターンを設定し、各炉温パターンについて排出口における金属化率αOUTを算出し、算出された金属化率αOUTが目標値以上となる炉温パターンのうち、最小となる必要投入熱量を実現する炉温パターンを選択できる。
【0020】
また、第2の発明では、連続加熱処理炉に装入される原料の質量を測定すると共に、炉内における原料の位置をトラッキングし、トラッキングされた位置に近接するバーナーに供給される燃料を該原料の質量に基づいて補正する場合、原料装入量が急激に変動しても炉内温度が一定に保持され、製品品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一例、(B)は原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)の一例をそれぞれ示している。
【図2】炉温Tと原料の初期炭素含有率βINをパラメータとする原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一覧表の一例である。
【図3】炉温Tと原料の初期炭素含有率βINをパラメータとする原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)の一覧表の一例である。
【図4】(A)は回転炉床炉のゾーンニングを説明するための模式図、(B)は回転炉床炉の炉温パターンの一例を示す一覧表である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る連続加熱処理炉の炉温設定方法を説明するための模式図である。
【図6】図5のSTEP1で選択された例えば第1ゾーンの炉温が800℃、初期炭素含有率βINが15質量%のときの原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)である。
【図7】図5のSTEP2で選択された原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)であり、(A)はデータの内挿が不必要な場合、(B)はデータの内挿が必要な場合をそれぞれ表している。
【図8】図5のSTEP3で選択された原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)である。
【図9】同炉温設定方法の手順を示したフロー図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る連続加熱処理炉の炉温制御方法を説明するための制御ブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る連続加熱処理炉の炉温制御方法を説明するための制御ブロック図である。
【図12】回転炉床炉及び関連設備の一例を示す模式図である。
【図13】回転炉床炉内部の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。なお、以下では、連続加熱処理炉として回転炉床炉10(図12、図13参照)を例に採り、詳細に説明する。
【0023】
[炉温設定方法]
回転炉床11上に載置された原料をバーナー13で加熱して還元処理する回転炉床炉10の炉温設定方法について手順に沿って説明する。
(1)チューブ炉試験
回転炉床炉10の炉温T及び回転炉床炉10に装入される原料の初期炭素含有率βINをパラメータとする試験又は解析等を実施して、原料の金属化率αの時間関数α=f(t)、炭素含有率βの時間関数β=g(t)、及び原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係式β=h(α)を求め、データベース化する。本実施の形態では、チューブ炉試験によってα=f(t)、β=g(t)、及びβ=h(α)を求める。
【0024】
チューブ炉(図示省略)は、炉内がパイプ状の電気炉であり、炉内に装入される試料を囲むようにヒータが配置されている。また、チューブ炉内には、炉内温度を計測する熱電対が挿入されている。試験に際しては、炉心管と呼ばれるパイプ状のものを炉内にセットする。そして、炉心管内に試料を装入し、窒素ガスを用いて炉心管内をガス置換しながらヒータで加熱する。なお、ガス置換するのは、空気中には酸素が存在するため、空気雰囲気下で加熱すると、高沸点の酸化物が生成され、化学形態が変化してしまうおそれがあるためである。窒素は不活性ガスで、他の物質と反応しにくいので余分な反応を起こす可能性が低い。
【0025】
チューブ炉試験により得られた原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一例を図1(A)に、原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)の一例を図1(B)にそれぞれ示す。金属化率αの初期値はゼロであって、還元時間tの増加と共に増大する。一方、炭素含有率βは、初期炭素含有率βINが最も高く、還元時間tの増加と共に減少する。また、炭素含有率βは、金属化率αの増加と共に減少する。
【0026】
炉温T及び原料の初期炭素含有率βINをパラメータとして、チューブ炉試験によって得られた原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一覧表の一例を図2に、原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)の一覧表の一例を図3にそれぞれ示す。本例では、炉温Tの最小値を800℃、最大値を1350℃、炉温間隔を50℃としているが、実施状況に応じて適宜変更する必要がある。原料の初期炭素含有率βINも同様である。
【0027】
(2)回転炉床炉10の排出口における金属化率αOUTの算定
続いて、上記チューブ炉試験によって得られたデータを用いて、回転炉床炉10の排出口における金属化率αOUTを算定する方法について説明する。
図4(A)に示すように、回転炉床炉10の装入口から排出口までの間を第1ゾーンから第mゾーン(mは自然数)にゾーンニング(区分け)する。そして、各ゾーンについて炉温T(i=1...m)を仮定して、第1ゾーンの炉温T〜第mゾーンの炉温Tからなる炉温パターンを複数通り作成する。例えば、回転炉床炉10を4つのゾーンに区分けしたときの炉温パターンの一例を図4(B)に示す。なお、図中のnは炉温パターンの通し番号である。
【0028】
複数の炉温パターンが設定されると、各炉温パターンについて、排出口における金属化率αOUT及び炭素含有率βOUTを算出する。ここでは、図4(B)の炉温パターン(n=1)を例に採り説明する。
先ず、原料装入時における原料の金属化率αIN(=0質量%)及び原料の初期炭素含有率βIN(=15質量%)を、第1ゾーンの入口(装入口)における金属化率α1IN及び炭素含有率β1INとする。そして、炉温Tと初期炭素含有率βINをパラメータとする原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一覧表において、炉温T=800℃、初期炭素含有率βIN=15質量%の条件下で得られた時間関数f11(t)、g11(t)を選択する(図5のSTEP1参照)。
そして、図6に示すように、時間関数f11(t)、g11(t)を用いて、第1ゾーンの出口における金属化率α1OUT及び炭素含有率β1OUTを算出する。なお、第1ゾーンの還元時間tは第1ゾーンの搬送距離/回転炉床の回転速度で算出される。
【0029】
次いで、第1ゾーンの出口における金属化率α1OUT及び炭素含有率β1OUTを第2ゾーンの入口における金属化率α2IN及び炭素含有率β2INとして、第2ゾーンの炉温Tにおけるα=f(t)及びβ=g(t)を用いて、第2ゾーンの出口における金属化率α2OUT及び炭素含有率β2OUTを算出する。しかし、本炉温パターンでは、第2ゾーンの炉温Tが1100℃であるため、第1ゾーンで使用した時間関数f11(t)、g11(t)を使用することができない。そのため、原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)を使用する。具体的には、原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係を示すグラフβ=h(α)の一覧表を用いて、炉温Tが1100℃のときに、金属化率αがα2IN且つ炭素含有率βがβ2INであるh27(α)を選択する(図5のSTEP2、図7(A)参照)。但し、h27(α)の初期炭素含有率βINは12質量%である。
【0030】
そして、h27(α)に対応する時間関数α=f(t)及びβ=g(t)を選択する。具体的には、炉温Tと初期炭素含有率βINをパラメータとする原料の金属化率αの時間関数α=f(t)及び炭素含有率βの時間関数β=g(t)の一覧表において、炉温T=1100℃、初期炭素含有率βIN=12質量%の条件下で得られた時間関数f27(t)、g27(t)を選択する(図5のSTEP3参照)。
図8に示すように、時間関数f27(t)、g27(t)では、原料装入時から第2ゾーンの入口までの還元時間tが、tと異なる値となる。第2ゾーンの出口における金属化率α2OUT及び炭素含有率β2OUTは、時間関数f27(t)、g27(t)において、第2ゾーンの入口における金属化率α2IN及び炭素含有率β2INから還元時間t後の値を求めればよい。ここで、第2ゾーンの還元時間tは第2ゾーンの搬送距離/回転炉床の回転速度である。
【0031】
なお、金属化率αがα2IN且つ炭素含有率βがβ2INであるh(α)がデータベースに存在しない場合は、線形補間などの内挿法を使用すればよい。例えば、図7(B)に示すように、β2INがβ=h27(α)とβ=h17(α)の間にある場合、α=α2IN、β=β2INであるβ=h(α)は、線形補間により(h27(α)×x+h17(α)×y)/(x+y)として得ることができる。但し、x=β2IN−h27(α2IN)、y=h17(α2IN)−β2INである。また、β=h(α)に対応するα=f(t)及びβ=g(t)も同様に線形補間により得ることができる。
【0032】
第3及び第4ゾーンについても第2ゾーンと同様であり、第4ゾーンの出口における金属化率α4OUTを回転炉床炉10の排出口における金属化率αOUTとする。
但し、第2ゾーンと第3ゾーンの炉温Tが同じ場合は、第2ゾーンで使用したグラフを引き続き使うことができる。同様に、第3ゾーンと第4ゾーンの炉温Tが同じ場合は、第3ゾーンで使用したグラフを引き続き使うことができる。
【0033】
(3)最適炉温の設定
図9は本実施の形態に係る炉温設定方法の手順を示したフロー図である。
最初に、回転炉床炉10に装入される原料の初期炭素含有率βIN、金属化率の目標値α、炉温パターン数nMAX、ゾーンニング数mMAXなど初期値の設定を行う(S10)。なお、原料装入時における原料の金属化率αINはゼロとする。
次いで、1番目の炉温パターン(n=1)について(S11)、第1ゾーンから第mMAXゾーン(S12、S14)まで順に、各ゾーン出口における金属化率αmOUT及び炭素含有率βmOUTを算定する(S13)。そして、第mMAXゾーンにおける金属化率αOUTが金属化率の目標値α以上の場合(S15)、回転炉床炉10の必要投入熱量γを当該炉温パターンに属する炉温T(i=1...mMAX)に基づいて算定する(S16)。
上記操作(S12〜S16)を全ての炉温パターンについて実施し(S11、S17)、算出された必要投入熱量γが最小のときの炉温パターンを最適炉温パターンとして選択する(S18)。
【0034】
次に、回転炉床炉10の炉温制御方法について説明する。
[第1の炉温制御方法]
第1の炉温制御方法を説明するための制御ブロック図を図10に示す。回転炉床炉10の炉温制御を行う制御装置30は、最適炉温演算部32、温度調節部33、必要熱量演算部34、及び燃料調節部36を備えている。また、回転炉床炉10には、各ゾーンごとにバーナー13と熱電対37が設置されている。制御装置30は、回転炉床炉10に設置されているこれら全てのバーナー13及び熱電対37と接続されている。
【0035】
制御装置30では、最適炉温演算部32において、上記炉温設定方法を用いて最適炉温パターンが設定される。次いで、温度調節部33において、最適炉温パターンによる炉温と熱電対37で計測された炉温との偏差ΔTが算出され、必要熱量演算部34において、偏差ΔTに基づいて回転炉床炉10の必要投入熱量が計算された後、燃料ガス流量に換算される。そして、燃料調節部36において、必要熱量演算部34によって算出された燃料ガス流量と流量計39によって計測された燃料ガス流量との偏差に応じて、バーナー13に供給される燃料ガス流量の調整を行う流量調整弁38の制御が行われる。
【0036】
[第2の炉温制御方法]
第2の炉温制御方法を説明するための制御ブロック図を図11に示す。なお、第1の炉温制御方法を構成する構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付し、当該構成要素の説明を省略する。
第2の炉温制御方法における制御装置31も、第1の炉温制御方法における制御装置30と同様、最適炉温演算部32、温度調節部33、必要熱量演算部35、及び燃料調節部36を備えている。また、回転炉床炉10の装入口18には、装入される原料の質量を計測するためのロードセル40が設置されると共に、炉内における原料の位置が、回転炉床11の回転速度に基づいてトラッキングされている。
【0037】
制御装置31では、ロードセル40によって計測された原料の質量データ及び原料のトラッキング位置データが、必要熱量演算部35に入力される。必要熱量演算部35では、ΔTに基づいて算出された燃料ガス流量を原料の質量に基づいて補正した値が、トラッキングされた位置に近接するバーナーに供給される燃料ガス流量とされる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、回転炉床炉を例に採り説明したが、炉床が直線状とされていても良い。
【符号の説明】
【0039】
10:回転炉床炉、11:回転炉床、12:フード、12a:周壁部、12b:天井部、13:バーナー、14:レール、15:車輪、17:水封手段、18:装入口、19:排出口、20:原料前処理部、21:排気ダクト、22:集塵機、23:煙突、30、31:制御装置、32:最適炉温演算部、33:温度調節部、34、35:必要熱量演算部、36:燃料調節部、37:熱電対、38:流量調整弁、39:流量計、40:ロードセル、B:ブリケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する炉床上に載置された原料をバーナーで加熱して還元処理する連続加熱処理炉の炉温を設定する方法であって、
前記連続加熱処理炉の炉温T及び該連続加熱処理炉に装入される原料の初期炭素含有率βINをパラメータとして、該原料の金属化率αの時間関数α=f(t)と炭素含有率βの時間関数β=g(t)を求める工程と、
前記連続加熱処理炉の装入口から排出口までの間を第1ゾーンから第mゾーン(mは自然数)にゾーンニングし、前記各ゾーンについて炉温T(i=1...m)を仮定して、前記第1ゾーンの炉温T乃至前記第mゾーンの炉温Tからなる炉温パターンを複数通り作成する工程と、
原料装入時における該原料の金属化率αIN及び該原料の初期炭素含有率βINを前記第1ゾーンの入口における金属化率α1IN及び炭素含有率β1INとし、前記第1ゾーンの炉温Tにおける前記α=f(t)及び前記β=g(t)を用いて、前記第1ゾーンの出口における金属化率α1OUT及び炭素含有率β1OUTを算出し、次いで第i−1ゾーン(i=2...m)の出口における金属化率αi−1OUT及び炭素含有率βi−1OUTを第iゾーンの入口における金属化率αiIN及び炭素含有率βiINとし、第iゾーンの炉温Tにおける前記α=f(t)及び前記β=g(t)を用いて、前記第iゾーンの出口における金属化率αiOUT及び炭素含有率βiOUTを算出することにより、前記排出口における金属化率αOUTを前記各炉温パターンについて算出する工程と、
算出された前記金属化率αOUTが目標値以上となる前記炉温パターンについて、前記連続加熱処理炉の必要投入熱量を算出し、算出された前記必要投入熱量のうち、最小となる前記必要投入熱量を実現する前記炉温パターンを最適炉温パターンとする工程とを備えることを特徴とする連続加熱処理炉の炉温設定方法。
【請求項2】
請求項1記載の連続加熱処理炉の炉温設定方法において、
前記連続加熱処理炉の炉温T及び該連続加熱処理炉に装入される原料の初期炭素含有率βINをパラメータとして、該原料の金属化率αと炭素含有率βとの関係式β=h(α)を求めておき、
前記第i−1ゾーンの炉温Ti−1と前記第iゾーンの炉温Tが異なる際に、前記第iゾーンの入口における金属化率αiINと炭素含有率βiINの関係を満足する炉温Tにおける前記β=h(α)を選択して、該β=h(α)における初期炭素含有率βiINを求め、
求められた前記初期炭素含有率βiIN及び炉温Tを満足する前記α=f(t)及び前記β=g(t)を選択して、前記第iゾーンの出口における金属化率αiOUT及び炭素含有率βiOUTを算出することを特徴とする連続加熱処理炉の炉温設定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の連続加熱処理炉の炉温設定方法によって得られた最適炉温パターンに基づいて、前記連続加熱処理炉のバーナーに供給される燃料を制御することを特徴とする連続加熱処理炉の炉温制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の連続加熱処理炉の炉温制御方法において、前記連続加熱処理炉に装入される原料の質量を測定すると共に、該連続加熱処理炉内における前記原料の位置をトラッキングし、トラッキングされた位置に近接する前記バーナーに供給される燃料を該原料の質量に基づいて補正することを特徴とする連続加熱処理炉の炉温制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−220121(P2012−220121A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87565(P2011−87565)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】