説明

連続動作レーザショックピーニング

【課題】 本発明は、レーザショックピーニングに関し、より具体的には、レーザショックピーニング中にレーザ発射と動作システムとを同期させる装置及び方法に関する。
【解決手段】 レーザコントローラ(24)は、レーザビーム(2)を起動することなしにレーザフラッシュランプ(70)をあるフラッシュレート(73)で点滅させるスタンバイモードと、レーザビームパルス(77)の形態のレーザビーム(2)を起動して発射する発射モードとを有する。レーザコントローラ(24)は、レーザビームパルス(77)を発射するために電子制御動作コントローラ(25)によってレーザインターフェースコントローラ(24)に供給されるトリガー信号(93)と、フラッシュレート(73)とを実質的にレーザビームパルス(77)が発生されることになる時間において同期させる同期手段(27)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザショックピーニングに関し、より具体的には、レーザショックピーニング中にレーザ発射と動作システムとを同期させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザショックピーニング(LSP)は、レーザショック加工とも呼ばれ、物品の表面区域をレーザショックピーニングすることによって加えられる深い圧縮残留応力の領域を生成するためのプロセスである。レーザショックピーニングは一般的に、高出力及び低出力パルスレーザによる1つ又はそれ以上の放射パルスを使用して、物品の表面において強い衝撃波を生成するものであり、これは、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に開示されている方法と類似している。レーザショックピーニングは、当該技術分野で知られており且つ本明細書で使用する場合、レーザビーム源からのパルスレーザビームを利用して、レーザビームの衝突点において、その表面の薄層又はプラズマを形成するその表面上のコーティング(テープ又はペイントのような)を瞬間的にアブレーション又は蒸発によって爆発力を発生させることにより、表面の一部に強力な局所的圧縮力を生成することを意味する。
【0003】
ガスタービンエンジン分野で多くの用途向けにレーザショックピーニングが開発されてきており、その幾つかは、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9に開示されており、これらの全ての特許は本特許出願人に譲渡されている。
【0004】
約20から約50ジュールの高エネルギーレーザビーム又は約3から約10ジュールの低エネルギーレーザビームが使用されてきており、他のエネルギー水準が企図される。例えば、高エネルギーレーザを使用するLSP加工を開示する、特許文献8、及び特許文献10を参照されたい。低エネルギーレーザビームは、ネオジムドープのイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Nd YAG)、Nd:YLF、及びその他のような異なるレーザ材料を使用して生成することができる。
【0005】
レーザショックピーニングで大きな区域をカバーするためには、多数のレーザショットを取得する必要があり、従って、レーザを発射及び移動段階及びシステムの同期を必要とするLSP連続プロセスを有することが望ましい。レーザショックピーニングされるべき全区域をレーザショックピーニングされたスポットで覆うためには、レーザが異なる場所で加工物に衝突するようにレーザショックピーニングされる加工物とレーザビームとの間で移動を行う必要がある。連続的移動で加工を行う場合に同期が無いければ、スポットの1つのパス又は層から次のパス又は層へのレーザショックピーニングのスポット配置に対して必要な再現性要件を満たすことはできない。1つの層又はパス上へのレーザショックピーニングされたスポットは、以前の層又はパス上へのスポットの間にヒットしなければならない。
【0006】
レーザショックピーニングは通常、加工物の固定位置への移動が含まれ、移動が停止するとレーザが発射されて、次いで部品の移動を再開し、次のレーザ発射のために加工物を再配置する。この停止と開始動作が、レーザショックピーニングされる区域又はパッチが完了するまで繰り返される。オンザフライレーザショックピーニングは、特許文献10で開示されており、これは、レーザビームスポットの重複する列を形成する固定送り速度移動システムにより固定の一定レーザパルスレートを使用することを含む。重複しないショットを1つの層の上で加工するため、及びより以前の層からなるレーザショックピーニングされたスポットと重複する後続の層の上にあるスポット間にレーザショックピーニングされたスポットを配置するために必要となるレーザショックピーニングされたスポットをより正確に位置付けることが望ましい。
【特許文献1】米国特許第3,850,698号公報
【特許文献2】米国特許第4,401,447号公報
【特許文献3】特表06−505834号公報
【特許文献4】米国特許第5,756,965号公報
【特許文献5】米国特許第5,591,009号公報
【特許文献6】米国特許第5,531,570号公報
【特許文献7】米国特許第5,492,447号公報
【特許文献8】特表11−508826号公報
【特許文献9】特表11−509782号公報
【特許文献10】特表2000−504890号公報
【特許文献11】米国特許第6,159,619号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
連続動作レーザショックピーニング装置は、加工物をレーザショックピーニングするためにレーザビームを発生するレーザユニットと、加工物を連続的に移動させて位置決めするようにマニピュレータに制御可能に接続された動作コントローラと、レーザユニットからレーザビームを変調して発射するレーザコントローラとを含む。レーザ発射システムは、レーザビームをレーザユニットから発射するために使用される。動作コントローラは、レーザコントローラに動作可能に接続されて、動作コントローラの速度制御からの軸位置フィードバックに基づいてレーザビームを発射する。本装置の例示的な実施形態は、レーザユニットにおいてレージングロッドを作動させるように動作可能に配置された少なくとも1つのフラッシュランプを含む。レーザコントローラは、レーザユニットからレーザビームを変調して発射するための第1及び第2のモードを有する。第1のモードは、レーザビームを起動することなしにフラッシュランプをあるフラッシュレートで点滅させるスタンバイモードである。第2のモードは、レーザビームパルスの形態でレーザビームを起動して発射する発射モードである。レーザコントローラは、レーザビームのレーザビームパルスを発射するために、電子制御動作コントローラによってレーザインターフェースコントローラに供給されるトリガー信号と、フラッシュランプの点滅のフラッシュレートとを、実質的にレーザビームパルスが発生されることになる時間において同期させる同期手段を含む。
【0008】
連続動作レーザショックピーニング装置の1つの例示的な実施形態は、レーザコントローラに動作可能に接続され、且つマニピュレータの1つ又はそれ以上の軸に沿って所定間隔に基づいてレーザビームを発射するようにプログラムされた動作コントローラを含む。所定間隔は、動作コントローラによって発生されたエンコーダ計数値に基づき、且つ軸に沿う距離を表す。
【0009】
本装置の更に別の特定の実施形態では、レーザユニットの発振器は、前方及び後方ミラーとフラッシュランプとの間に動作可能に配置されたレージングロッドを含む。シャッターは、前方ミラーとレージングロッドとの間に配置され、Qスイッチは、レージングロッドと後方ミラーとの間に配置される。Qスイッチは、レーザビームパルスを起動して発射するために、レーザコントローラに制御可能に接続される。
【0010】
本装置の更に別の特定の代替的実施形態では、発振器は、前方及び後方ミラーとフラッシュランプとの間に動作可能に配置されたレージングロッドを含む。二重ポッケルセルが、発振器からビームを導き出すパスに沿って発振器と高速シャッターとの間に直接的に配置される。高速シャッターと二重ポッケルセルは、レーザコントローラに制御可能に接続される。
【0011】
連続動作レーザショックピーニングを行う方法は、発振器を有するレーザユニットを使用して加工物のレーザショックピーニング表面上にレーザビームからなるレーザビームパルスを発射して、レーザショックピーニング表面上にレーザビームの少なくとも単一のパスでレーザショックピーニングされたスポットの少なくとも第1の列を形成する段階を含む。本方法は更に、レーザインターフェースコントローラでレーザユニットを変調及び制御してレーザショックピーニング表面上にレーザビームを発射する段階と、電子制御動作コントローラによって制御されるマニピュレータを使用して加工物を連続的に移動させて位置決めする段階と、レーザインターフェースコントローラに対する動作コントローラの速度制御からの軸位置フィードバックに基づいてレーザビームパルスを発射する段階とを含む。更に別の特定の本方法の実施形態は、トリガー信号の列の少なくとも最初のパルスに対して電子制御動作コントローラがレーザビームパルスを発射するのを遅延させるヘッダーをトリガー信号上に配置する段階を含む。該方法の更に別の特定の実施形態は、レーザショックピーニングパッチがレーザショックピーニングされた表面上に形成されることになるパッチ区域の両遠位端において開始及び停止マスクを配置する段階と、レーザショックピーニング表面上でレーザビームの各パス上の開始マスクに向けてレーザビームパルスの少なくとも最初の1つを発射する段階とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2に示すのは、コンピュータ数値制御(CNC)多軸マニピュレータ127内に取り付けられたガスタービンエンジンブレードで示す物品又は加工物8をレーザショックピーニングするための連続動作レーザショックピーニング装置10である。本明細書ではコンピュータ数値制御(CNC)5軸マニピュレータ127が示され、図1においてそれぞれX、Y、及びZで表記された通常の並進運動のX、Y、及びZ軸と、CNC機械加工ではよく知られたそれぞれ通常の第1、第2、及び第3の回転軸A、B、及びCを有する。マニピュレータ127を用いて、レーザショックピーニングを施すためにブレードを連続的に移動させて位置決めし、すなわち加工物8と固定レーザビーム2との間で連続移動を可能にする。レーザショックピーニングは、アブレーティブ媒体としてのペイント又はテープを使用して(詳細には、特表11−508826号公報を参照)幾つかの種々の方法で実施することができる。
【0013】
固定レーザビーム2は、加工物8のレーザショックピーニング表面55上でのターゲット領域42に配向される。レーザショックピーニング装置10は、発振器33、レーザインターフェースコントローラ24及び電子制御動作コントローラ25を有するレーザユニット31を含む。レーザインターフェースコントローラ24は、レーザユニット31を変調して制御し、レーザビーム2を被覆又は非被覆レーザショックピーニング表面55に発射するのに使用される。電子制御動作コントローラ25は、マニピュレータ127の速度及び位置決めを含む動作及び移動を制御するのに使用される。レーザショックピーニング装置10は更に、レーザビームパス66に沿った前置増幅器47とビームスプリッタ49を含む。ビームスプリッタ49は、前置増幅されたレーザビームを、2つのビーム光学伝送回路43へ供給する。ビーム光学伝送回路43の各々は、第1の増幅器39、第2の最終増幅器41、及び光学系35を含む。光学系35は、レーザビーム2をレーザショックピーニング表面55に伝送して合焦する光学要素を含む。
【0014】
ターゲット領域42内に位置するレーザショックピーニング表面55は、加工物8として表わされたブレードの前縁LEのそれぞれ正圧側面46及び負圧側面48上に示されている。レーザショックピーニング表面55は、ペイント又はアブレーティブテープなどのアブレーティブ被覆57で被覆され、特表11−508826号公報及び特表11−509782号公報で開示されたような被覆面を形成する。被覆57は、アブレーティブ媒体を形成し、この上に流水の流体カーテン21のような透明な閉じ込め媒体が配置される。レーザショックピーニング中、固定レーザビーム2を発射して、レーザショックピーニング表面55上で水ノズル19によって供給される水流カーテン21を透過させながら、ブレード(加工物8)を移動させる。レーザショックピーニングプロセスは通常、レーザショックピーニングされた表面54上に重複する円形のレーザショックピーニングされたスポット58を形成するのに使用される。
【0015】
レーザビームショック誘起の深い圧縮残留応力は、圧縮性プレストレス領域56内に形成される。圧縮残留応力は通常、約50〜150KPSI(キロポンドパースクエアインチ)であり、レーザショックピーニングされた表面54から約20〜50ミルの深さまでプレストレス領域内へ連続的に延びる。レーザビームショック誘起の深い圧縮残留応力は、レーザショックピーニング表面55に対して通常プラスマイナス数百ミルほど焦点を外したレーザビーム2を繰り返し発射することによって生成される。
【0016】
レーザユニット31は、図2においてより詳細に示されている。レーザユニット31内の発振器33は、単一のレージングロッド36を有する。例示的な発振器33は、一般的なパルスYAG自励発振器である。そのような発振器の例には、当初は穿孔用に製造されたConvergent−Prima P50並びに他のYAGレーザがある。これらのレーザは、1から50ジュール、1〜100Hzを超える周波数でパルス幅が数百マイクロ秒から1ミリ秒を超える出力を発生する。これらは、Trumpf、Rofin、Sinar、Lasag及びJKなどの幾つかのベンダーから購入可能である。レーザは、500ワットより少ない、通常は200ワットより少ない平均出力(例えば、反復率xエネルギー/パルス)と多くの方法で組み合わせたパラメータで作動することができる。自励YAGレーザ発振器33は、レージングロッド36を作動させる一対のフラッシュランプ70によってポンピングされる。
【0017】
連続動作レーザショックピーニング装置10は、加工物8を連続的に移動させながら、レーザインターフェースコントローラ24により、レーザビーム装置を変調して発射させることによって連続したレーザショックピーニングを可能にし、該レーザビーム装置は、加工物上の精密に制御された位置にある被覆されたレーザショックピーニング表面55にレーザビーム2の特異なレーザビームパルス77を配向する。レーザ発射システム125は、レーザユニット31からレーザビーム2を発射するために使用され、レーザコントローラ24に動作可能に接続されて動作コントローラ25の速度制御129からの軸位置フィードバックに基づいてレーザビーム2を発射する動作コントローラ25を含む。
【0018】
図4には、レーザユニット31内のレージングロッド36を作動させるように動作可能に配置された少なくとも1つのフラッシュランプ70を含むレーザ発射システム124の第1の例示的な実施形態が示されている。図3に示すように、レーザコントローラ24は、レーザユニット31からレーザビーム2を変調して発射するための第1及び第2のモードを有する。第1のモードは、レーザビーム2を起動することなくレーザランプ周波数又はフラッシュレート73でフラッシュランプ70を点滅させるスタンバイモードである。1つの例示的なフラッシュランプ周波数又はフラッシュレート73は、約10Hz、すなわち1秒当たり10サイクル又は繰り返し数である。スタンバイモードでは、レーザは熱的安定性を保持する。しかしながら、レーザは、レーザコントローラ24によって発振器のQスイッチ99に送信されるパルス状トリガー信号93が無いために、レーザビームパルス77の形態のレーザビーム2を形成することにはならない。発振器のQスイッチ99は、ポッケルセルとして示されている。
【0019】
第2のモードは、レーザビームパルス77を発射する発射モードである。トリガー信号93は、電子制御動作コントローラ25によってレーザインターフェースコントローラ24に供給され、発射モード中に正確な時間で開始するレーザビーム2のレーザビームパルス77を発射する。トリガー信号93は、通常はフラッシュランプ周波数又はフラッシュレート73と一致するトリガー周波数95を有する一連のトリガーパルス173を含む。これにより、フラッシュランプ周波数又はフラッシュレート73で、図1、図6、及び図7に示すような単一のパスにおいて又は一列に沿って均等に間隔を置いて配置されたレーザショックピーニングされたスポット58が形成されることになる。
【0020】
図7は、レーザショックピーニングされたスポット58の第1、第2、及び第3の列R1、R2、及びR3をそれぞれ有するレーザショックピーニングされた表面54上のレーザショックピーニングされたパッチ53を示す。第1、第2、及び第3の列R1、R2、及びR3の各々は、第1及び第2のシーケンス1及び2の各々の形態の第1、第2、及び第3のパスでそれぞれ作られる。各シーケンスのうちの1つの間の各列の1つにおける全てのレーザショックピーニングされたスポット58は、レーザショックピーニングされた表面54を覆うレーザビーム2の単一パスで形成される。
【0021】
本明細書で説明する例示的な連続動作レーザショックピーニング方法において、各シーケンスでの各パスは、離間して配置された重複しないレーザショックピーニングされたスポット58、すなわちシーケンス1の第1の列R1内のレーザショックピーニングされたスポット58の1つの列を形成する。各列のいずれかにおける重複するレーザショックピーニングされたスポット58のパターンは、異なるシーケンスの異なるパス期間を使用して形成される。本明細書で説明する例示的な連続動作レーザショックピーニング方法では、重複するレーザショックピーニングされたスポット58の第1、第2、及び第3の列R1、R2、及びR3は、第1及び第2のシーケンス1及び2の各々において第1、第2、及び第3のパスかでそれぞれ作られる。重複するレーザショックピーニングされたスポット58の各列は、2つのパスで作られるが、より多くのパスを使用しても良い。
【0022】
列、シーケンス、列の層(各列に沿う複数のパス)、及び1つの列内又は異なる列内で隣接するレーザショックピーニングされたスポット58間の重複60量の数の多くの変形形態がある。本明細書で説明する例示的なレーザショックピーニングされたパッチ53におけるレーザショックピーニングされたスポット58のパターンは、3つの列を有し、ここでは、列R2のような各列内でレーザショックピーニングされたスポット58の隣接するものは、約30%だけ重複するが、列R1及びR3内のように隣接する列ではレーザショックピーニングされたスポット58とは重複しない。レーザショックピーニングされたパッチ53内でのレーザショックピーニングされたスポット58のパターンの多くの変形形態が可能であり、多くは、当該技術分野で公知である。代替として、レーザショックピーニングされたスポット58のパターンは、隣接列におけるレーザショックピーニングされたスポット58が重複できること、或いは各列及び隣接列の内の列においてレーザショックピーニングされたスポット58の隣接するものが重複できることを含むことができる。レーザショックピーニングのために10%から50%の重複60が使用されることは公知である。名称が「リップストップ(Ripstop)レーザショックピーニング」の米国特許第6,159,619号で開示されたような、1つ又はそれ以上の列の重複しないレーザショックピーニングされたスポット58を備えるレーザショックピーニングされたパッチを提供することは、望ましいものとすることができる。
【0023】
レーザショックピーニングされたスポット58の各1つは、レーザビームパルス77の中の1つによって形成され、該レーザビームパルスは、通常フラッシュランプ周波数又はフラッシュレート73と一致するトリガー周波数95で起動する信号95のトリガーパルス173に基づいて発射される。トリガー周波数95はまた、マニピュレータ127によって保持され且つ電子制御動作コントローラ25によって制御される加工物8のレーザショックピーニングされた表面54の送り速度に関係する。
【0024】
レーザコントローラ24は、実質的にレーザビームパルス77が図3に示すように発生する時間でトリガー信号93とレーザランプフラッシュレート73とを同期させる同期手段27を提供するようにプログラムされている。トリガー信号93は、動作コントローラによる加工物の位置決めに基づく。本明細書で説明する例示的な動作コントローラ25は、動作制御信号とも呼ばれるTTL(トランジスタ論理信号)信号を与える。トリガー信号93として機能する動作制御信号は、加工物の位置決め、すなわち加工物上でのレーザビーム2の相対位置を示す。発射時(すなわち、トリガー信号93が電子制御動作コントローラ25によってレーザインターフェースコントローラ24に送られる時間)には、レーザランプフラッシュレート73とトリガー信号93(すなわちTTL信号)とは完全に同期する。
【0025】
例示的なレーザユニット31は、通常は2.5から5ジュール(J)の範囲の定格出力を有する低出力レーザの代表的なものである。他の適切な低出力範囲は、0.5Jから10Jを含む。本明細書で開示する連続レーザショックピーニング方法は、約0.5mmから3mmの範囲の直径Dを有するレーザショックピーニングされたスポット58を含む。ここで使用された例示的なレーザユニットの出力は4Jであり、レーザショックピーニングされたスポット58は、約1.85から1.95mmの直径Dを有する。
【0026】
レーザコントローラ24が10Hzトリガー信号93の第1のパルス112を動作コントローラ25から受信すると、レーザコントローラ24は、レーザランプフラッシュレート73とトリガー信号93を同期させて、レーザビームパルス77を発射する第2のモードすなわち発射モードに切り換える。この時点において、レーザコントローラ24からのレーザランプフラッシュレート73とトリガー信号93とは同期化されることになる。これは、フラッシュランプ速度73をトリガー信号93と同期させるフラッシュランプ速度73のスタッター波形110によって図3に示す。レーザは、トリガー信号93がフラッシュランプ速度73と関連して受信される時間に応じて、トリガー信号93の第1のパルス112(又はそれ以上のパルス)に対して望ましいレーザビームパルス77を生成することはできない。第1のパルス112、又は所要であればそれ以上のパルスは、レーザランプフラッシュレート73とトリガー信号93とが同期する十分な時間を許容するためのトリガー信号93用のヘッダー111としての役割を果たす。レーザコントローラ24又は動作コントローラ25は、レーザコントローラ24からのトリガーパルスを図4に発振器のQスイッチ99として示すレーザトリガー機構に送信することによって、ヘッダー111後の第2のパルス113(又はより高い番号)に基づいてレーザビームパルス77の発射を開始するようにプログラムされる。ヘッダー111は、レーザコントローラ24にトリガー信号93の列114の少なくとも第1のパルス112に対するレーザビームパルス77の発射を遅延させる。レーザは、動作コントローラ25からのトリガー信号93の列114(各パスに対し1つ)が終わると待機モードに戻る。レーザショックピーニングされたスポットの各列に対する各パスは、トリガー信号93の1つの列114に対応する。
【0027】
レーザビームパルス77を起動する2つの例示的なレーザトリガー機構を本明細書で説明する。第1の例示的なレーザトリガー機構124が図4に示される。レーザユニット31の発振器33は、前方及び後方ミラー137及び139とフラッシュランプ70との間に動作可能に配置されたレージングロッド36を含む。シャッター149は、前方ミラー137とレージングロッド36との間に配置され、第1の例示的なレーザトリガー機構124として機能するQスイッチ99は、レージングロッド36と後方ミラー139との間に配置される。Qスイッチ99とシャッター149は、レーザコントローラ24に制御可能に接続される。レーザコントローラ24は、レーザビームパルス77を発射するためにトリガーパルス173を発振器のQスイッチ99へ送信する。
【0028】
第2の例示的なレーザトリガー機構144が図5に示される。図5に示す発振器33は、前方及び後方ミラー137及び139とフラッシュランプ70との間に動作可能に配置されたレージングロッド36を含む。二重ポッケルセル181の形態のスライサは、レーザビームパス66に沿って発振器33の外側の高速シャッター151との間に配置される。第2の例示的なレーザトリガー機構144は、レーザコントローラ24に制御可能に接続された二重ポッケルセル181及び高速シャッター151を含む。レーザコントローラ24は、レーザビームパルス77を発射するためにトリガーパルス173を二重ポッケルセル181に送信する。高速シャッター151は、二重ポッケルセル181に従属している。高速シャッター151は、エネルギーを介した流出がレーザの後段によって増幅され、レーザから出る不要な低エネルギーパルスを生成するのを防止する。第2の例示的なレーザトリガー機構144は、第1の例示的なレーザトリガー機構124を使用するレーザ出力と比較すると、最初のレーザ発射から最後の発射までの発振器のレーザ出力に対してより大きな安定性をもたらす。このより大きな安定性は、より不変で一貫性のあるエネルギー及び通常熱的不安定性によって影響を受けるレーザパルスパラメータによって証明される。
【0029】
電子制御動作コントローラ25及びレーザインターフェースコントローラ24は、発射モード中に電気トリガーパルス173を1つ又はそれ以上の並進軸の所定間隔で発生させて正確な時間でレーザビーム2のレーザビームパルス77を発射するように設定することができる。このことは、所望の距離毎の既知のエンコーダ計数値(トリガー信号93として直接的に機能することもできる)をその時間に発生したレーザビームパルス77を使用して調整することによるか、或いは、加工物8上の所望の位置において等しい間隔及び送り速度を備える動作コントローラ25からの出力をフラッシュランプ周波数又はフラッシュレート73に通常整合されたトリガー周波数95を有するトリガーパルス173に適応させるようにプログラミングすることによって達成される。これによって、先行する列のスポットに関連して直接的に位置付けされるべきレーザショックピーニングされたスポット58の複数の列に対して間隔の正確な再現性をもたらすことになる。
【0030】
第1のレーザビームパルス77の衝突外れを許容することができない可能性のある加工物を加工する場合には、図6に示すように、レーザショックピーニングされたパッチ53がレーザショックピーニングされた表面54上に形成されることになるパッチ区域180の遠位端176に開始及び停止マスク172及び174をそれぞれ配置することができる。開始及び停止マスクを使用する場合には、2つのマスクの間の加工物上の全てのスポットに先行して、第1のレーザビームパルス77(又はそれ以上)をマスク上に発射することができる。レーザショックピーニング表面55上のレーザビーム2のパス毎にレーザビームパルス77の少なくとも最初のパルスが開始マスク172に衝突する。送り速度は、出力パルス周波数を決定することになるので、重要な役割を果たすことができる。本明細書で開示する例示的な方法は、電子制御動作コントローラ25からの一定のトリガー信号93だけでなく、レーザビームパルス77を発射する基準として軸位置を使用する。従って、正確なレーザショックピーニングされるスポット58に従う外形を必要とする表面を加工する時に位置を得ることができる。
【0031】
連続動作レーザショックピーニングプロセス及び装置10を用いて、1つの列内又は列間で異なる重複60の割合を有するレーザショックピーニングされたスポット58から構成される混成のレーザショックピーニングされたパッチを生成することができる。混成パッチは、一定のエネルギー及びスポット寸法を使用するが、加工物上の重複60の量を変化させる。混成パッチの大きな利点は、余分な層を追加することなく、加工物に応じたニーズの変化と共にLSP効果を変えることができる点である。例えば、材料厚さにばらつきを有する加工物の全区域に対して同一のスポットの重複60割合を適用することは、レーザショックピーニングされた表面又はパスの一部の区域については良好に作用するが、他の区域を歪ませる可能性がある。このような場合、レーザビームのエネルギーは、良好なLSP効果を与えるために増大させることができるが、加工物のより薄い部分では歪曲が問題となる。多くの場合、第2の層を加工物の局所的に厚い部分で使用して、当該区域でのLSP効果を得る。混成パッチは、そのプロセスを単一層にまで低減することができる。レーザショックピーニングされたスポット58のパターンは、各列内のレーザショックピーニングされたスポット58の隣接するものだけの重複、隣接する列内でのレーザショックピーニングされたスポット58だけの重複、又は各列と隣接する列のもの内でのレーザショックピーニングされたスポット58の隣接するものの重複を含むことができる。
【0032】
本発明の好ましく且つ例示的な実施形態とみなされるものを本明細書で説明してきたが、本発明の他の変更形態は、当業者であれば本明細書の教示から明らかであろう。更に、請求項に示す参照番号は、本発明の範囲を狭めることを意図するものではなく、その理解を容易にするためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】連続動作レーザショックピーニングシステムの概略図。
【図2】図1に示すレーザショックピーニングシステムのレーザ及び光学系の概略図。
【図3】図1に示すレーザの作動を示すグラフ。
【図4】図1に示すレーザショックピーニングシステムのための第1の例示的なレーザ発振器の概略図。
【図5】図1に示すレーザショックピーニングシステムのための第2の例示的なレーザ発振器の概略図。
【図6】図1に示すレーザショックピーニングシステムでの加工のために、開始及び停止マスクと、レーザショックピーニングされたスポットの例示的なアレイを備える加工物の側面図。
【図7】図1に示すレーザショックピーニングされたスポットを加工するシーケンスの概略図。
【符号の説明】
【0034】
2 レーザビーム
8 加工物
10 連続動作レーザショックピーニング装置
24 レーザコントローラ、レーザインターフェースコントローラ
25 動作コントローラ、電子制御動作コントローラ
31 レーザユニット
33 発振器
36 レーザ発信棒
55 レーザショックピーニング表面
58 レーザショックピーニングされたスポット
70 フラッシュランプ
73 フラッシュレート
77 レーザビームパルス
93 トリガー信号
99 Qスイッチ
111 ヘッダー
124 レーザ発射システム
127 マニピュレータ
129 速度制御
137 前方ミラー
139 後方ミラー
149 シャッター
151 高速シャッター
181 二重ポッケルセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続動作レーザショックピーニング装置(10)であって、
加工物(8)をレーザショックピーニングするためにレーザビーム(2)を発生するレーザユニット(31)と、
前記加工物(8)を連続的に移動させて位置決めするようにマニピュレータ(127)に制御可能に接続された動作コントローラ(25)と、
前記レーザユニット(31)から前記レーザビーム(2)を変調して発射させるレーザコントローラ(24)と、
前記レーザユニット(31)から前記レーザビーム(2)を発射させるレーザ発射システム(124)と、
を備え、
前記動作コントローラ(25)が、前記レーザコントローラ(24)に制御可能に接続されて、該動作コントローラ(25)の速度制御(129)からの軸位置フィードバックに基づいて前記レーザビーム(2)を発射させることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記レーザユニット(31)においてレージングロッド(36)を作動させるように動作可能に配置された少なくとも1つのフラッシュランプ(70)を更に備え、
前記レーザコントローラ(24)が前記レーザユニット(31)から前記レーザビーム(2)を変調して発射させるための第1及び第2のモードを有し、該第1のモードが前記レーザビーム(2)を起動することなしに前記フラッシュランプ(70)をあるフラッシュレート(73)で点滅させるスタンバイモードであり、前記第2のモードが前記レーザビームパルス(77)の形態で前記レーザビーム(2)を起動して発射させる発射モードである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レーザビーム(2)のレーザビームパルス(77)を発射するために、前記電子制御動作コントローラ(25)によって前記レーザインターフェースコントローラ(24)に供給されるトリガー信号(93)と、フラッシュランプ(70)の点滅のフラッシュレート(73)とを、実質的に前記レーザビームパルス(77)が発生されることになる時間において同期させる同期手段(27)を更に備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レーザコントローラ(24)に動作可能に接続され、且つ前記マニピュレータ(127)の1つ又はそれ以上の軸に沿って所定間隔に基づいてレーザビーム(2)を発射するようにプログラムされた前記動作コントローラ(25)を更に備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記所定間隔が、前記動作コントローラ(25)によって発生されたエンコーダ計数値に基づき、且つ軸に沿う距離を表すことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記トリガー信号(93)を送信するように動作可能な前記電子制御動作コントローラ(25)と、フラッシュランプ(70)を同一の周波数で点滅させるように動作可能な前記レーザコントローラ(24)とを更に備える請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前方及び後方ミラー(137及び139)とフラッシュランプ(70)との間に動作可能に配置されたレージングロッド(36)を含む発振器(33)を更に備え、
前記発振器(33)が前記前方ミラー(137)と前記レージングロッド(36)との間に配置されたシャッター(149)と、前記レージングロッド(36)と後方ミラー(139)との間に配置されたQスイッチ(99)とを更に含み、前記Qスイッチ(99)が前記レーザビームパルス(77)を起動して発射するために、前記レーザコントローラ(24)に制御可能に接続されたことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記前方及び後方ミラー(137及び139)と前記フラッシュランプ(70)との間に動作可能に配置されたレージングロッド(36)を含む発振器(33)と、
前記発振器(33)から導き出すビームパス(66)に沿って前記発振器(33)と高速シャッター(151)との間に直接的に配置される二重ポッケルセル(181)と、
を更に備え、
前記レーザコントローラ(24)が前記レーザビームパルス(77)を起動して発射するために、前記二重ポッケルセル(181)と前記高速シャッター(151)とに制御可能に接続された請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記電子制御動作コントローラ(25)によって前記レーザインターフェースコントローラ(24)に供給されるトリガー信号(93)がヘッダー(111)を含み、前記レーザコントローラ(24)及び前記動作コントローラ(25)の内の1つが、前記ヘッダー(111)の後にレーザビームパルス(77)の発射を開始するようにプログラムされている請求項3に記載の装置。
【請求項10】
連続動作レーザショックピーニング方法であって、
発振器(33)を有するレーザユニット(31)を使用して加工物(8)のレーザショックピーニング表面(55)上にレーザビーム(2)のレーザビームパルス(77)を発射して、前記レーザショックピーニング表面(55)上に前記レーザビーム(2)の少なくとも単一のパスでレーザショックピーニングされたスポット(58)の少なくとも第1の列(R1)を形成する段階と、
レーザインターフェースコントローラ(24)で前記レーザユニット(31)を変調及び制御して、前記レーザショックピーニング表面(55)上に前記レーザビーム(2)を発射する段階と、
電子制御動作コントローラ(25)によって制御されるマニピュレータ(127)を使用して前記加工物(8)を連続的に移動させて位置決めする段階と、
前記レーザコントローラ(24)に対する前記動作コントローラ(25)の速度制御(129)からの軸位置フィードバックに基づいて前記レーザビームパルス(77)を発射する段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−75902(P2006−75902A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−199528(P2005−199528)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】