説明

連続吸引式空気輸送装置

【課題】果実のような損傷しやすいばら状物を無傷で又は安全に輸送するバッチ式吸引式空気輸送機を備えた連続吸引式空気輸送装置を提供する。
【解決手段】1つの共通の空気輸送管20と2つのバッチ式吸引式空気輸送機24との間に分配器22を設ける。分配器22は、円筒形の内周面と凹面形の底面とを備えたサイクロン室、及び2つの空気輸送機24の入口管60に夫々接続される2本の出口管50を有する。分配器22のサイクロン室に入来した果実は円筒形内周面上を転動しながら底面に集まるので、損傷することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交互に作動する2つのバッチ式吸引式空気輸送機を備えた連続吸引式空気輸送装置の改良に係り、より詳しくは、果実のような損傷しやすいばら状物を無傷で又は安全に輸送することの可能な空気輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第4066062号(特開2004-131189)には、交互に作動する2つのバッチ式吸引式空気輸送機を備えた空気輸送装置が開示されている。この装置によれば、高濃度輸送モードで連続的に粉粒体を空気輸送することができる。
【0003】
図1はこの装置の概要を示すもので、この装置は第1の容器1に収容された粉粒体を第2の容器2に空気輸送するべく構成されており、吸引ノズル3と1つの共通の空気輸送管4と2台のバッチ式吸引式空気輸送機5とを備えている。
【0004】
この装置においては、2台のバッチ式吸引式空気輸送機5の入口管6はY字管7を介して空気輸送管4に接続されており、2台のバッチ式吸引式空気輸送機5が交互に作動することにより空気輸送管4内には連続的に搬送用吸引空気流が維持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空気輸送管4を2台のバッチ式吸引式空気輸送機5に接続するためにY字管7が使用してあるので、搬送空気流に乗って空気輸送管4から送られて来た物体はY字管7の分岐部8に衝突することになる。
その結果、輸送すべき物体が果実のような損傷しやすいものである場合には、分岐部8に衝突することにより損傷し、商品価値が減殺される。
【0006】
本発明の目的は、果実のような損傷しやすいばら状物を無傷で輸送することの可能な連続吸引式空気輸送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、交互に作動する2つのバッチ式吸引式空気輸送機の入口管をばら状物の供給源から延長する1つの共通の空気輸送管に夫々接続することにより、ばら状物を供給源から目的地へと連続的に空気輸送するようになった空気輸送装置において:
略円筒形の内周面と上端面と略凹面形の底面とにより画定されるサイクロン室と、前記サイクロン室に対して接線方向に開口する入口管と、前記上端面を貫通して前記底面の近傍まで下向きに延長する2本の出口管、とを有する分配手段を設け、
この分配手段の前記入口管を前記空気輸送管の下流端に接続し、前記2本の出口管を前記2つの空気輸送機の入口管に夫々接続したことを特徴とするものである。
【0008】
使用時には、2つのバッチ式空気輸送機が交互に作動することにより空気輸送管内には連続吸引空気流が定立され、輸送すべきばら状物は吸引空気流に乗って先ず分配手段のサイクロン室へと搬送される。接線方向に開口した入口管からサイクロン室へ接線方向に入ったばら状物は、サイクロン室の円筒形の内周面次いで凹面形の底面に沿って転動しながら次第に速度を失い、螺旋形の軌跡を描いてサイクロン室の底面に落下し集積する。
このように、ばら状物はサイクロン室の円筒形内周面上および凹面形底面上を転動しながらサイクロン室の底に集まるので、果実のような損傷しやすい物体であっても損傷することがない。
サイクロン室の底面に集積したばら状物は、2つのバッチ式空気輸送機が交互に作動するに伴い、サイクロン室底面近傍まで延長した2本の出口管から交互に吸引され、2つのバッチ式空気輸送機へ分配される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図2は本発明の空気輸送装置の実施例を示す。図2を参照するに、この空気輸送装置10は、第1の容器12に入れた損傷しやすい果実のようなばら状物14を第2の容器(例えば、輸送先ホッパー)16に空気輸送するべく構成されている。
【0010】
この空気輸送装置10は、容器12に入れた果実14を吸引するための吸引ノズル18と、吸引ノズル18から延長する空気輸送管20と、空気輸送管20の末端に接続された分配器22と、輸送先ホッパー16の上に設置された2台のバッチ式吸引式空気輸送機24と、ブロワーのような真空源26と、制御装置28を有する。
【0011】
好ましくは、夫々のバッチ式空気輸送機24は特開2003-104550号公報に開示されたような構成を有する。空気輸送機24は真空源26からの負圧の伝達を制御するべく出口に配置された遮断弁30と、空気輸送機24内に吸引されたばら状物を輸送先ホッパー16に向けて排出するためのダンパー装置32を有する。空気輸送機24の構成については前記公報を参照することができるので、詳細な説明は省略する。
夫々の空気輸送機24の遮断弁30付き出口は真空配管34により真空源26に接続されている。
制御装置28は、2台の空気輸送機24の遮断弁30を交互に開閉することにより2台の空気輸送機24を交互に作動させるようにプログラムされている。
【0012】
図3は図2に示した分配器22の拡大図である。図3を参照するに、分配器22はステンレス鋼板などで形成された本体36と蓋38とで構成することができ、本体36と蓋38とは内部洗浄の便宜などのために複数のバックル装置40によって分離自在に結合されている。
分配器22の本体36は円筒形の内周面42と凹面形の底面44を有し、本体36の内部にはサイクロン室46が形成されている。
【0013】
分配器22の本体36にはサイクロン室46に対して接線方向に開口する入口管48が設けてある。
分配器22の蓋38には、天板を貫通して底面44の近傍まで延長する2本の出口管50が溶接などにより固定してある。
分配器22は本体36に溶接した例えば4本の脚部52により支持される。本体36には、手動バルブ54を備えた水抜き用排出口56が設けてある。
【0014】
図2に示したように、分配器22の入口管48は吸引ノズル18から延長する空気輸送管20に接続されている。
分配器22の2本の出口管50は、夫々、空気輸送枝管58により空気輸送機24の入口管60に接続されている。
【0015】
次に、この空気輸送装置10の作動の態様を説明する。
真空源としてのブロワー26を作動させ、2台の空気輸送機24の遮断弁30を交互に開放すると、2台の空気輸送機24は交互に作動せられる。これにより、搬送用空気は、吸引ノズル18、空気輸送管20、分配器22、および空気輸送枝管58を介して双方の空気輸送機24に交互に吸引される。双方の空気輸送機24の遮断弁30の切換えタイミングを若干オーバラップさせることにより、空気輸送管20内には連続した搬送用吸引空気流が定立される。
【0016】
図2に示したように操作員が吸引ノズル18の先端を容器12内に挿入すると、容器内の果実14は搬送用吸引空気流に乗って空気輸送管20、分配器22、更に空気輸送機24の方へ搬送される。前述したように、空気輸送管20内には連続した搬送用吸引空気流が定立されているので、搬送すべき果実は空気輸送管20の垂直部分内で落下沈降することなく、分配器22へ向かって円滑に吸引される。従って、空気輸送管20の垂直部分の長さは例えば約10m或いはそれ以上にすることができ、地面から充分な高さのところに設置した分配器22まで果実を確実に搬送することができる。
【0017】
搬送用吸引空気流に乗って分配器22の入口管48からサイクロン室46内に接線方向に入来した果実は、サイクロン室の円筒形内周面42に沿って転動しながら図3に矢印で示した螺旋形の軌跡を描いて落下し、次第に速度を失いながら凹面形底面44に達する。
果実は次いで凹面形底面44上を転動しながら更に失速し、凹面形底面44の中央に集まる。
このように、分配器22に送られた果実14はサイクロン室46の円筒形内周面42および凹面形底面44上を転動しながらサイクロン室の底に集まるので、果実の損傷は最小限に抑制される。
この装置を試験したところ、満足すべき程度に商品価値を保持したまゝで梅酒用の青梅を充分な高さのところまで搬送することができた。
【0018】
分配器22の底面44に集まった果実は、2台の空気輸送機24が交互に作動するに伴い、分配器22の2本の出口管50から空気輸送機24に交互に吸引される。こうして、分配器22は、1本の共通の空気輸送管20を介して送られて来た果実を2台のバッチ式空気輸送機24へ分配する分岐管の役割を果たす。
【0019】
果実は、更に、搬送用吸引空気流に乗って分配器22の出口管50、空気輸送枝管58、および入口管60を介して空気輸送機24内に吸引され、空気輸送機24内で固気分離されてダンパー装置32のダンパー上に貯まる。周期的にダンパーを開放することにより、果実は輸送先ホッパー16へと排出される。
【0020】
以上のように、本発明によれば、交互に作動する2つのバッチ式吸引式空気輸送機を用いて果実のような損傷しやすいばら状物を無傷で又は安全に空気輸送することができる。
【0021】
以上には本発明の特定の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更や修正を施すことができる。例えば、ばら状物の輸送先ないし目的地としてホッパーを例示したが、輸送先はベルトコンベアでもよい。また、バッチ式吸引式空気輸送機としては種々の形式のバキュームコンベアを使用することができる。分配器の底面の形状は、部分球形ないし半球形にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の空気輸送装置の模式図である。
【図2】本発明の空気輸送装置の模式図である。
【図3】図2に示した本発明の空気輸送装置の分配器の拡大図で、(A)は側面図、(B)は水平断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10: 空気輸送装置
12: 供給源
14: ばら状物
16: 輸送先ホッパー(目的地)
20: 空気輸送管
22: 分配手段(分配器)
24: バッチ式吸引式空気輸送機
26: 真空源
42: 分配器の円筒形内周面
44: 分配器の凹面形底面
46: 分配器のサイクロン室
48: 分配器の入口管
50: 分配器の出口管
60: 空気輸送機の入口管

特許出願人 株式会社 ワイ・エム・エス
発明者 荒井 竹志
代理人 弁理士 伊藤 宏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に作動する2つのバッチ式吸引式空気輸送機の入口管をばら状物の供給源から延長する1つの共通の空気輸送管に夫々接続することにより、ばら状物を供給源から目的地へと連続的に空気輸送するようになった空気輸送装置において:
略円筒形の内周面と上端面と略凹面形の底面とにより画定されるサイクロン室と、前記サイクロン室に対して接線方向に開口する入口管と、前記上端面を貫通して前記底面の近傍まで下向きに延長する2本の出口管、とを有する分配手段を設け、
この分配手段の前記入口管を前記空気輸送管の下流端に接続し、前記2本の出口管を前記2つの空気輸送機の入口管に夫々接続したことを特徴とする空気輸送装置。
【請求項2】
搬送すべき前記ばら状物は果実であることを特徴とする請求項1に基づく空気輸送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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