説明

連続型揺動式粒子表面処理装置

【課題】 揺動により攪拌する方式の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する
【解決手段】 複数の半円弧形状の反応流路1と、反応流路の一方端に反応流路入口1a、他端に反応流路出口1bを有し、隣接する反応流路入口と反応流路出口が逆止管2を経由して接続されるように反応流路の円弧中心を共通の軸上に位置するように並列配置し、並列配置した反応流路の一方端の反応流路の入口から粒子30を供給し、他端の反応流路の出口から粒子を排出し、所定の反応ガスを反応流路に供給し、反応流路を円弧中心に揺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動により攪拌する方式の連続型の揺動式粒子表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体及び粒状物といった所謂、粒子を対象に、乾燥、被覆、或いは造粒等の表面処理を効率的に、かつ高速に処理を実現できる粒子表面処理プロセスが考案されている。
【0003】
従来の粒子表面処理装置の一例としては、処理する対象が粉体、或いは粒状物であることから、回転ドラムを用いて攪拌する方式のものが提案されている。回転ドラムを使用する場合に、回転ドラムとしては、攪拌のために内部に、攪拌羽を有するものが多い(例えば、特許文献1参照)。図5に示すように、粒径が75μmを超え、425μm以下の粉末50を攪拌しているが、原料投入口51を中心軸上に有する円筒状攪拌容器52を含む攪拌装置として、ロッキングミキサーを用いた方法が示されている。粉末の攪拌を効果的に行うために、円筒状攪拌容器52は中心軸を揺動させることが可能であるが、基本的には円筒状攪拌容器52を中心軸54回りに回転させる方式である。回転は、8〜30rpmであるが、円筒状攪拌容器52内に設けてある攪拌羽53が効果的に機能しており、攪拌羽63による掻き上げを有効に利用している。
【0004】
また、図6に示したアルキメデスポンプは、従来から存在する流体等を搬送するための簡単な構成のものとして知られている。管60の内部に螺旋形状の羽61があり、螺旋形状の羽61が回転する事で、流体を連続的に下方から上方へ移動させるものである。効率が低いが、粘性のある液体の搬送にも適しており、現在でも各地で用いられる。また、砕氷船等の推進器としても用いられる。つまり、効率はあまり良くないが、一般的な送風機やポンプでは搬送が困難な粉体であって、本発明の対象とする粉体の搬送には、適用が可能な技術として、その構造が簡単なことからも古くから活用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4235412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した構成の粒子表面処理装置にも課題がある。
【0007】
特許文献1の方法では、粉体或いは粒状物を回転ドラム内に入れて攪拌しつつ表面処理を行う構成となっているため、粉体或いは粒状物の各々の表面を均質に処理することが可能である。しかしながら、図5に示すような回転ドラム式においては、粒子の処理を連続的に実施することは困難となる欠点がある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、揺動により攪拌する方式の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0010】
本発明の第1態様によれば、揺動駆動する揺動駆動軸と、
前記揺動駆動軸の軸心方向沿いに、交互に千鳥状に配置された、円弧形状の第1流路及び第2流路で構成される反応流路と、
前記第1流路の一方の端部に、反応処理対象物である粒子を供給する粒子供給部と、
前記反応流路に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記第1流路の他方の端部と前記第2流路の一方の端部とを連結する第1逆止管とを備え、
前記揺動駆動軸を揺動して前記反応流路を揺動させることにより、前記粒子供給部から供給された前記粒子を、前記第1流路、前記第1逆止管、前記第2流路と順に移動させながら前記反応ガスと反応させる、連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続型揺動式粒子表面処理装置によれば、回転部分が存在しないため、反応ガスの供給時、及び排出時のリークが防止でき、連続的に粒子を供給、移動、排出させながら、粒子と反応ガスを接触させることにより、粒子への均質な表面処理が行える。その結果、高効率で高品質な表面処理を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の構成を示す図
【図1B】図1Aの上面図として模式図として分かり易く示している図
【図1C】図1Aの平面図であり、手前側の反応流路を実線で、その隣接する奥側の反応流路を破線で示す図
【図1D】反応ガス発生器の具体例を示す図
【図1E】本発明の第1実施形態の変形例における連続型揺動式粒子表面処理装置の構成を示す図
【図1F】図1Eでの粒子表面処理の説明図
【図1G】図1Eの混合部材の拡大斜視図
【図1H】本発明の第1実施形態の別の変形例における連続型揺動式粒子表面処理装置において攪拌翼を使用する場合の斜視図
【図1I】図1Hでの粒子表面処理の説明図
【図1J】図1Hの攪拌翼の拡大斜視図
【図1K】本発明の第1実施形態のさらに別の変形例における連続型揺動式粒子表面処理装置において可動式の攪拌翼を使用する場合の斜視図
【図1L】本発明の第1実施形態のさらに別の変形例における連続型揺動式粒子表面処理装置において可動式の攪拌翼を使用する場合の斜視図
【図1M】図1Kの可動式の攪拌翼の動作を側面図
【図2A】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の粒子の移動と反応ガスの反応状態(すなわち、対向流における表面処理とガス濃度変化の状態)を示す図
【図2B】対向流で無い場合のディメリットを説明するため、対向流でない構成で、反応ガスが少なめの場合の粒子の移動と反応ガスの反応状態(すなわち、対向流でない場合の表面処理とガス濃度変化の状態)を示す図
【図2C】対向流で無い場合のディメリットを説明するため、対向流でない構成で、反応ガスが多めの場の粒子の移動と反応ガスの反応状態(すなわち、対向流でない場合の表面処理とガス濃度変化の状態)を示す図
【図3】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の圧力と反応ガスの状態を示す図
【図4A】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の揺動のための駆動装置に関する実施例を示す図
【図4B】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の揺動のための駆動装置に関する実施例を示す図
【図4C】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の揺動のための駆動装置に関する実施例を示す図
【図4D】本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の揺動のための駆動装置に関する実施例を示す図
【図5】従来の間欠型の回転ドラム式の粒子表面処理装置の構成を示す図
【図6】従来のアルキメデスポンプの構成と原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0015】
本発明の第1態様によれば、揺動駆動する揺動駆動軸と、
前記揺動駆動軸の軸心方向沿いに、交互に千鳥状に配置された、円弧形状の第1流路及び第2流路で構成される反応流路と、
前記第1流路の一方の端部に、反応処理対象物である粒子を供給する粒子供給部と、
前記反応流路に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記第1流路の他方の端部と前記第2流路の一方の端部とを連結する第1逆止管とを備え、
前記揺動駆動軸を揺動して前記反応流路を揺動させることにより、前記粒子供給部から供給された前記粒子を、前記第1流路、前記第1逆止管、前記第2流路と順に移動させながら前記反応ガスと反応させる、連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0016】
本発明の第2態様によれば、前記反応ガスは、前記第2流路の他方の端部から前記第1流路の前記一方の端部に向けて供給される、第1の態様に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0017】
本発明の第3態様によれば、前記第1流路と前記第2流路とは大略同一形状の円弧形状でかつ大略同一位相に配置されて、一体的に揺動する、第1又は2の態様に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0018】
本発明の第4態様によれば、前記反応流路の中に突出して配置されて、前記粒子と前記反応ガスとの混合を増進させる混合部材をさらに備える、第1〜3の態様のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0019】
本発明の第5態様によれば、前記反応流路内に前記粒子を揺動可能な攪拌翼をさらに備え、
前記攪拌翼により、前記粒子を前記反応流路の各々で複数回揺動させる、第4の態様に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第6態様によれば、前記反応流路の内部が負圧であるよう前記反応ガス供給部が稼動する、第1〜5の態様のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0021】
本発明の第7態様によれば、前記反応ガスとして、クロロシラン系化合物をガス化して使用する、第1〜6の態様のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0022】
本発明の第8態様によれば、前記粒子は砂である、第1〜7の態様のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置を提供する。
【0023】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の構成を示す図である。
【0025】
図1Aにおいて、連続型揺動式粒子表面処理装置は、大略同一形状の太い半円弧形(言い換えれば半円環状)の側面を有する半円環状筒部材10が、多数個、並列して配置されている。すなわち、全ての半円環状筒部材10は、その内部の反応流路1の円弧中心の共通の軸(後述する揺動駆動軸100の軸芯)40上に大略同一位相で位置するように、並列配置されている。
【0026】
全ての半円環状筒部材10は、揺動駆動軸100(図4A参照)に大略同一位相で連結されて、揺動駆動装置41の駆動により揺動駆動軸100が所定の角度範囲内で揺動することにより、全ての半円環状筒部材10が一体的に揺動するように構成されている。
【0027】
隣接する2つの半円環状筒部材10のうちの一方の半円環状筒部材10の一端の反応流路入口1aと他方の半円環状筒部材10の他端の反応流路出口1bとが互いに隣接するように配置され、両者は逆止管2を経由して接続されて、粒子表面処理装置全体として、揺動駆動軸100の軸心40方向沿いに、反応流路1が交互に千鳥状に配置されて、反応流路1と逆止管2と反応流路1と逆止管2とがジグザグ状に連通した流路を形成するようにしている。
【0028】
多数の並列配置した半円環状筒部材10の一連の反応流路1の両端側に位置する粒子供給部3及び粒子排出部4内の反応流路1X、1Yのうち、一方端の反応流路1Xの入口を反応流路最初入口1aaとし、及び、他方端の反応流路1Yの出口を反応流路最終出口1bbとする。
【0029】
反応流路最初入口1aaには、反応処理対象物である粒子30を供給する粒子供給部3が接続される。反応流路最終出口1bbには、粒子30を排出する粒子排出部4が接続される。粒子供給部3及び粒子排出部4は、それぞれ、4分の1円環状筒部材で構成され、内部に流路を有している。
【0030】
所定の反応ガスを発生して反応流路1に供給する、反応ガス供給部の一例としての反応ガス発生器5は、ガス供給管5aが反応流路最終出口1bbの一部に接続され、反応ガスをガス供給管5a及び反応流路最初入口1aaを介して反応流路1内に供給する。また、反応ガス発生器5は、ガス排出管5bが反応流路最初入口1aaの一部にも接続され、反応流路1内から反応流路最終出口1bb及びガス排出管5bを介して反応ガスを排出する。反応流路1を有する半円環状筒部材10と粒子供給部3と粒子排出部4とを円弧中心の円弧中心の共通の軸40回りに揺動させることにより、反応流路1内で粒子と反応ガスとが所定の反応を行なう構成となっている。
【0031】
図1Bには、図1Aの上面図として模式図として分かり易く示している。粒子供給部3から投入された粒子30は、反応流路1内を水平方向にジグザクに移動していると言える。但し、現実には円弧状の反応流路1は円弧状に揺動するために、粒子30の位置は図1Cのようになる。図1Cは、図1Aの平面図であり、手前側の反応流路1(ここでは、説明を理解しやすくするため、手前側の反応流路101とする。)を実線で、その隣接する奥側の反応流路1(ここでは、説明を理解しやすくするため、奥側の反応流路102とする。)を破線で示しており、図1Cの(1)から(5)までが円弧状の揺動と同時に粒子30の位置を○で示している。粒子30は常に重力により、円弧状の反応流路101,102の概略最下部に位置する。実際にはスムーズに流動しないため位置は遅延するが、ここでは模式的に示している。手前側の反応流路101において、一方の端部101aから粒子30が供給され、図1Cの(4)(すなわち、手前側の反応流路101の他方の端部101b)に到達した粒子30は、手前側の反応流路101の端部101bから逆止管2を経由して重力落下して、奥側の反応流路102の一方の端部102aに移動する。一旦落下した粒子30は、隣接する奥側の反応流路102から(重力に逆らって)逆流することは無い。なお、後述するように、反応ガスは粒子30が移動する方向とは逆方向に対向して流れてくるために、粒子30のうちの一部の粒子30、例えば、粒径が10μm程度以下の小さく浮遊しやすい粒子30は、反応ガスに乗って逆流する可能性はある。図1Cの(6)は(5)において破線で記述していた反応流路102を実線にして、反応流路102の次にさらに奥側に隣接する反応流路103を破線で示すことで、以下、(7)から(10)に粒子30の移動を模式図で示している。粒子30の移動としては、(10)の後は、反応流路が異なるが、(1)以降と同様な動作が行われることになる。
【0032】
また、図1Dに反応ガス発生器5の具体例を示す。液体の表面処理化合物を容器5−1に入れた状態を示しており、容器5−1は密閉容器であるが、不活性気体供給管5−3と反応ガス排出管5−4が接続されている。不活性気体供給管5−3は表面処理化合物の液面より下方に、反応ガス排出管5−4は液面より必ず上方になるように構成されており、加熱用ヒータ5−2による液体の加熱により、表面処理化合物が気化して反応ガス排出管5−4から反応ガスとして排出されるようになっている。ここで、不活性気体供給管5−3から供給される不活性気体は、液体中でバブリングすることで、気化するガスを効率的に排出することが可能となっている。不活性ガスとしては窒素でも良いが、空気でも選択可能である。しかし、反応性ガスの種類によって不活性ガスの選定は異なる。例えば、後述するように、表面処理化合物としてクロロシラン系化合物を使用する場合には、水分と反応を避けるために、乾燥したガス、例えば乾燥空気、を選定することも可能である。
【0033】
なお、図6で示すようなアルキメデスポンプでは、螺旋形状の羽61の駆動には連続回転が必須条件であるが、その基本原理を活用して、本実施形態の装置では、図1Aのように半円弧形状に分割しても、アルキメデスポンプと同様な搬送機能は残したまま、連続回転を不要としている。
【0034】
図1Eには、反応流路1の中に、粒子30と反応ガスとの混合を増進させる、スリット11aを上部に有する傾斜板11と、傾斜板11の中央部に固定されて貫通口aを有する円筒形状の混合部材6とを設けている。混合部材6によれば、図1Fに示すように、粒子30は、図1Fの左方から右方に向けて重力により搬送されて来て、傾斜板11の上方の矩形のスリット11aから図1Fの右方へ落下していく。これに対して、反応ガスは、図1Fの右方から左方に向けて送風されてきて、中央の円筒形状の混合部材6の貫通口6aを図1Fの左方へ流れていく。
【0035】
この混合部材6の拡大図を図1Gに示す。上述のスリット11aと円筒形状の混合部材6の貫通口6aは、傾斜板11に設けられているが、傾斜板11は反応流路1の内部を完全に覆っている。なお、上方のスリット11aは中央の円筒形状の混合部材6の貫通口6aより上に位置していることが条件である。また、中央の円筒形状の混合部材6の貫通口6aは、中央付近に存在すれば良い。その結果、図1Gの左方から右方に向けて搬送された粒子30が傾斜板11の斜面を経由して、傾斜板11の上方のスリット11aに至った後に、傾斜板11から滝状に図1Gの右方にて落下する。その際に、中央の円筒形状の混合部材6の貫通口6aには円筒状の壁となっているため、粒子30は、この貫通口6aから図1Gの右方へ流れることは不可能である。一方、反応ガスは図1Gの右方から来て、中央付近の円筒形状の混合部材6の貫通口6a、或いは、上方のスリット11aから、図1Gの左方へ流れることができるが、上方のスリット11aは粒子30が到来している時点ではほぼ閉塞しており、反応ガスの通過が困難であり、主に円筒形状の混合部材6の貫通口6aから図1Gの左方へ流れようとする。
【0036】
また、図1Hには、反応流路1内に、2枚の板を逆V字状に組み合わせた攪拌翼7を構成し、攪拌翼7により粒子30を反応流路1の各々で複数回揺動させるよう構成している。攪拌翼7は両側に斜面7aを有するもので、揺動によって到来する粒子30を一方の斜面7aで一旦受け止めて、揺動の進行により、反対側の空間に滝状に落下させるように構成されたものである。
【0037】
なお、ここで、前述の図1Eの混合部材6と、図1Hの攪拌翼7とは、共存しても同様な効果が得られる。
【0038】
図1Jには攪拌翼7の拡大図を示しているが、この例では二つの斜面7aは角度θにて左右に対称な形状を有している。その結果、図1Iのように、粒子30は、攪拌されつつ、滝状に落下する際に、反応ガスと接触し易くなっている。 かかる構成によれば、粒子供給部3より供給された粒子30が、反応流路最初入口1aaから反応流路1に送り込まれ、反応流路1を揺動駆動軸100の駆動により揺動させることにより、順に半円弧状の反応流路1内を移動する。反応流路1の揺動角度は、ほぼ、左右に各々90度ずつ、つまり±90度により全体で180度行われる。反応流路1の揺動によって粒子30は反応流路1の内壁の下部を移動する。重力により、粒子30は常にほぼ半円弧状の反応流路1の最下部に保持されつつ、搬送される仕組みである。粒子30は各反応流路1内を移動して、各反応入口1aから各反応流路出口1bに至り、各逆止管2を経由して、流路が隣接する反応流路1に移動していくが、逆止管2は、重力方向沿いに設けられており、粒子30は一旦逆止管2内に入り次の反応流路1に移動すると、元の反応流路1には戻ることができないよう構成されている。
【0039】
その結果、連続して揺動することにより、粒子30は順に隣接する反応流路1へ移りながら搬送されていき、最後は反応流路最終出口1bbに至り、逆止管2を経て、接続されている粒子排出部4から取り出される。一方、反応ガス発生器5から供給される反応ガスは、粒子30とは逆方向に、まず、反応流路最終出口1bbに供給され、接続された複数の反応流路1内を送風される。送風された反応ガスは、反応流路最初入口1aaに到達した後、反応ガス発生器5に回収される。逆方向に移動する粒子30と反応ガスとが接触するたびに、粒子30に所定の表面処理が実行される。
【0040】
図1Eに示す混合部材6を使用する場合、粒子30は図1Eの左方から下向きやや右方に向けて重力により搬送されて来て、上方のスリット11aから図1Eの右方へ落下していくが、反応ガスの方は図1Eの右方から送風されてきて中央の円筒形状の混合部材6の貫通口6aを図1Eの左方へ流れていく。その結果、滝状に落下する粒子30が反応ガスと均質に効果的に接触することが可能となっている。一般的に、粒子30が3次元的に集合している場合には、内部の粒子30へは反応ガスが到達することが困難であるが、前記のように粒子30が滝状になっていることで、2次元的に落下する粒子群は、反応ガスとの接触を簡単に行うことが可能である。
【0041】
また、図1Hに示す攪拌翼7を使用する場合、前記の混合部材6ほどの効果的な粒子30と反応ガスの接触は実施できないものの、シンプルな構成にて、攪拌翼7の頂上から滝状の粒子30の落下状態を再現できる点が特徴である。そして、混合部材6では、一方向での粒子30の移動しか実施できないが、攪拌翼7の場合には往復での粒子30の滝状化が実現できる。つまり、反応流路1の揺動角度を±90度ではなくて、粒子30が逆止管2に至る直前までの角度、例えば±80度にて数回のみ揺動した後、揺動角度を大きくして±90度位置で隣接する反応流路1への粒子30の移行を行う場合を想定している。つまり、攪拌翼7は、往復の両方で粒子30と反応ガスとの接触を効果的に行う構成のため、各単一の反応流路1での効果を高めることで、隣接する複数の反応流路1の総数を削減することが可能である。簡素な構成によって、効率的で高品質な表面処理が可能な連続型揺動式粒子表面処理装置が提供できる。
【0042】
図5に示すような従来の回転ドラム式では、攪拌羽63による攪拌方式においては、粉体或いは粒状物は攪拌羽によって一部掻き上げられてから、落下することによる混合効果を狙っていた。しかしながら、掻き上げ時の粉体或いは粒状物へのせん断応力、また落下の際の衝撃による粉体或いは粒状物へのダメージは、悪影響が多かった。特に、従来は、粒子の掻き上げが一部で発生していたので、全ての粉体或いは粒状物への接触確率は、回転数を増加することで補完していた。さらに、粉体或いは粒状物が再分割されることによって表面積が急に増加して、表面処理に必要な化合物の量が増加したり、処理時間が増加したりする課題が有った。
【0043】
しかしながら、図1Aに示す構成によれば、反応流路1の揺動による粒子30のスムーズな移動によって混合部材6、或いは攪拌翼7が作用して、粒子30が滝状に平面状に落下することから、粒子30へのせん断応力とか落下衝撃と言ったダメージは非常に少なくすることが行えた上で、反応ガスとの接触確率が向上することによる効果的な反応が可能で、効率的で高品質な表面処理が可能となっている。
【0044】
特に、表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用する場合には一層、粒子との接触確率の向上が重要である。クロロシラン系化合物は、粒子30の表面に接するのみで短時間にカップリング被覆を実現するためである。また、クロロシラン系化合物で被覆された部分には、クロロシラン系化合物が重複して被覆されることが無い性質があるため、単分子での表面処理が可能で、効率的な粒子表面処理プロセスとなる。そのためには、図5の示した従来のような回転ドラム式における混合目的での攪拌は全く不要であり、図1Aに示すような連続型揺動式による表面処理化合物と粒子30との接触が優先され、さらなる効果が期待できる。
【0045】
なお、図1Hに示す攪拌翼7は、可動式の構造でも構わない。例えば、粒子30の到来時に、その到来に応じて、所定の角度θ相当にて維持して傾斜するような構成で、逆方向から粒子30が到来する際には逆方向に角度θ相当を維持して傾斜して維持できるような、可動式の攪拌翼も考えられる。図1K及び図1Lに概略を示す。図1Mには、可動式の攪拌翼7Aの動作を側面図で示す。反応流路1の内面の底面1dに固定された蝶番14に揺動可能に支持された平板13が、一対のストッパ15で挟まれた所定の角度θだけ揺動する構成となっている。粉体にも耐える内蔵式ボールベアリング入りの蝶番が適する。なお、平板13の回転運動のために蝶番を採用することが多いが、フレキシブルなフィルムにて平板13を接着固定しておくこととしても良い。或いは、平板自身の材質が柔軟で、反応流路1の内面の底面1dに接する部分を薄くした構成で接合されていることでも代用が可能である。
【0046】
また、第1実施形態において、攪拌翼7の回転軸として軸受けを採用することが多いが、フレキシブルなフィルムにて接着固定しておくこととしても良い。或いは、攪拌翼7の材質自身が柔軟で、その攪拌翼7の回転軸に相当する部分を薄くした構成でも代用が可能である。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の粒子の移動と反応ガスの反応状態について、説明する。対向流の効果として、図2A〜図2Cに示す。本発明では、図1Aに示すように、粒子30の搬送方向と、反応ガスの送風方向が逆である。つまり、対向流の状況となっている。かかる構成によれば、図2Aに示すように、対向流では、反応ガス濃度は、最初(図2Aのグラフの右端)で高い状態であるが、反応流路1内において途中で接触する粒子30に表面処理により費やされるため徐々に低下する。一方、粒子30は、最初(図2Aのグラフの左端)は未処理の状態であるが、反応流路1内を移動するにつれて反応ガスにより表面処理が進む。ここで、排出直前の反応ガスは低濃度になってきているが、投入された直後の未処理の粒子30と接触することで、反応ガスの濃度は急激に低減できる。つまり、排出直前に、未反応の反応ガスも有効に粒子30の表面処理に使用できることを意味している。そして、未反応ガス分が少ないことは、反応ガスの有効利用に役立っている。
【0048】
また、図3にて後述するように、粒子30の供給部近傍での反応ガスのリークを想定した場合に、その濃度が低いことは非常にメリットが大きい。反応ガスの効率的な使用と共に、反応流路1の外への未反応ガスのリークを防止できることは、特に表面処理化合物として、クロロシラン系化合物を使用した場合には、その危険性からも安全性確保の観点で有効となる。また、図2Aにおいて、粒子30の排出(図2Aのグラフの右端)時には、例え表面処理が途中で不均質になったり、反応ガスと粒子30の量の適性化が不十分であったりしても、排出直前で非常に高濃度の反応ガスと接触することになるため、その表面処理の高品質化が維持できる構成でもある。
【0049】
図2Bと図2Cとには、対向流で無い場合のディメリットを説明している。図2Bのように、反応ガス濃度がやや少ない場合には、排出されるガスには未反応分は少なくなるので良いが、逆に粒子の表面処理が不十分となってしまう。また、図2Cのように反応ガスがやや多い場合には、粒子の表面処理は十分に実行できるが、逆に未反応ガスが排出される可能性が高くなってしまう。つまり、対向流で無い場合には、反応ガスの粒子の量への適正なコントロールに非常な精度が要求されることになる。粒子表面処理の効率化、高品質化が困難となる可能性が高まる。しかしながら、本発明の第1実施形態として、図1Aのように対向流とすることにより、排出される未反応ガスを低減しやすく、多少の反応ガスと粒子30の量の適正化が生じた場合にも、排出される粒子30の表面処理の品質確保ができる。
【0050】
さらに、本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の粒子30の移動と反応ガスの反応状態について、反応流路1の内部が負圧である場合(粒子供給部3及び粒子排出部4が負圧の場合)について効果を説明する。図3に、本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置の圧力と反応ガスの状態を示す。本発明では、図1Aに示すように、反応ガス発生器5により、反応ガスを反応流路1内に供給し、反応流路1から排出回収している。しかし、同時に、粒子供給部3と粒子排出部4によって粒子30の供給と排出が連続的に進行する。図3には、半円弧状の複数の反応流路1を模式的に、直管として図示している。まず、粒子供給部3では、粒子30は最密状態であっても必ず粒子30と粒子30の間隙が存在し、そこにガスが存在し、粒子供給の際に外部のガスの流入が想定される。しかし、図2Aにて説明したように、粒子供給部3付近では、対向流の効果によって反応ガスの濃度は低下しており本来、外部にリークすべきでない未反応ガスは低減されている。かつ、反応流路1が負圧のため反応ガスは外部にリークし難く、逆に外部ガスが混入して低濃度の反応ガスに混ざっても、濃度への影響は小さい。反応流路最初入口1aaにて反応ガス発生器5へ回収される。そして、粒子排出部4では、揺動のタイミングに従って粒子30を排出するが、ここでの反応流路1の内部が負圧なため、反応流路最終出口1bbでの高濃度の反応ガスが外部にリークする可能性は皆無である。このように、反応流路1の内部が負圧であることのメリットは大きい。
【実施例1】
【0051】
図4A〜図4Dに本発明の第1実施形態における連続型揺動式粒子表面処理装置における反応流路1の実施例1を示す。連続型揺動式粒子表面処理装置の揺動のための駆動装置を示す図である。なお、その他の図1Aと同一の構成については説明と図を省略する。
【0052】
図4Aには、複数の反応流路1を内蔵する半円環状筒部材10を連結配置し、回転軸が正逆回転するモータ8と、モータ8の回転軸に連結されたカム構造9により、全ての半円環状筒部材10を一斉に揺動させる構成を示す。よって、全ての反応流路1は揺動駆動軸100に沿って設置されている。図4B及び図4Cには、逆止管2を設けた反応流路1の具体的な図を示している。ここでは、攪拌翼7を各々3個内蔵しているが、第1実施形態の図1Hにて説明したような角度θで対象な構造ではなく、図1Eにて説明した混合部材6の用途と同様に、粒子30が各反応流路1内で、一方方向にのみ搬送される場合を想定した構成となっている。つまり、各反応流路1での±80度での複数回の揺動は実行せず、各反応流路1では必ず±90度の揺動にて処理される。図4Bのように攪拌翼7は、粒子30の後の方の斜面7cが、通過前の斜面7dより角度が急になっており(例えば、斜面7cと斜面7dと反応流路1の底面とで大略直角三角形状に構成されており)、通過粒子30の逆止のような効果と、滝状に落下する際の効果を高めている。また、図4C、図4Dに示すように、逆止管2は単純な直管を設けて、隣接する反応流路1の開口部と接続したシンプルな構成としている。その結果、半円弧状の複数の反応流路1は、その中心軸を少し扁平させて同一の揺動駆動軸100上に固定されているが、効果は全く同じである。
【0053】
また、図4Bに示すように、粒子排出管4も逆止管2と同様に単純な直管とした。
なお、ここではモータ8とカム構造9にて連続的な揺動を実現させたが、これに限定されない。例えば、空圧アームのように圧力で伸縮する駆動部を反応流路1に接続することで簡単に往復運動させて、揺動をスムーズに実現することも可能である。
【0054】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかる連続型揺動式粒子表面処理装置は、複数の半円弧形状の反応流路を揺動させて粒子を移動させつつ、粒子の移動と逆方向に移動する反応ガスを送風して接触させる構成となっており、回転部分が存在しないため反応ガスの供給時、及び排出時のリークが防止でき、連続的に粒子を供給、移動、排出させながら、粒子と反応ガスを接触させることにより、粒子への均質な表面処理が行える。その結果、高効率で高品質な粒子表面を連続的に行える処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 反応流路
1a 反応流路入口
1b 反応流路出口
1aa 反応流路最初入口
1bb 反応流路最終出口
1d 底面
1X 粒子供給部内の反応流路
1Y 粒子排出部内の反応流路
2 逆止管
3 粒子供給部
4 粒子排出部
5 反応ガス発生器
5a ガス供給管
5b ガス排出管
6 混合部材
6a 貫通口
7 攪拌翼
7A 可動式の攪拌翼
8 モータ
9 カム構造
10 半円環状筒部材
11 傾斜板
11a スリット
13 平板
14 蝶番
15 ストッパ
30 粒子
40 反応流路の円弧中心の共通の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動駆動する揺動駆動軸と、
前記揺動駆動軸の軸心方向沿いに、交互に千鳥状に配置された、円弧形状の第1流路及び第2流路で構成される反応流路と、
前記第1流路の一方の端部に、反応処理対象物である粒子を供給する粒子供給部と、
前記反応流路に反応ガスを供給する反応ガス供給部と、
前記第1流路の他方の端部と前記第2流路の一方の端部とを連結する第1逆止管とを備え、
前記揺動駆動軸を揺動して前記反応流路を揺動させることにより、前記粒子供給部から供給された前記粒子を、前記第1流路、前記第1逆止管、前記第2流路と順に移動させながら前記反応ガスと反応させる、連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項2】
前記反応ガスは、前記第2流路の他方の端部から前記第1流路の前記一方の端部に向けて供給される、請求項1に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項3】
前記第1流路と前記第2流路とは大略同一形状の円弧形状でかつ大略同一位相に配置されて、一体的に揺動する、請求項1又は2に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項4】
前記反応流路の中に突出して配置されて、前記粒子と前記反応ガスとの混合を増進させる混合部材をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項5】
前記反応流路内に前記粒子を揺動可能な攪拌翼をさらに備え、
前記攪拌翼により、前記粒子を前記反応流路の各々で複数回揺動させる、請求項4に記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項6】
前記反応流路の内部が負圧であるよう前記反応ガス供給部が稼動する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項7】
前記反応ガスとして、クロロシラン系化合物をガス化して使用する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。
【請求項8】
前記粒子は砂である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の連続型揺動式粒子表面処理装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10064(P2013−10064A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143287(P2011−143287)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】