説明

連続培養装置

移植または生体内インプラントのための、三次元構造体における哺乳類の細胞の培養のための連続装置が説明される。培養装置は、(a)規則的な間隔で相互接続される成長表面のマトリックスにより形成される台座と、(b)成長領域の入口および出口における流体分配手段と、を有する。この装置は、特に、歯科インプラントまたは骨復構のための骨細胞の培養に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植および生体内(in vivo)インプラントのために、三次元構造において哺乳類の細胞を培養する装置に関する。より具体的には、本発明は、歯科インプラントまたは骨復構のための骨細胞の培養のための連続培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3D構造物または台座のような三次元(3D)環境で細胞を成長させることへの関心が高まっている。3D台座上での細胞培養は、移植可能な組織構造の生成のための組織工学において有用である。3D台座での3D培養に内在する困難性は、(i)台座の孔を通じての細胞の均一性および効率的な種植、および(ii)中央台部分での限られた質量伝達である。
【0003】
過去30年、組織工学の領域において大きな進歩があったが、深いまたは厚い構造の中心で細胞を培養することに関する困難性は残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許第6194210号明細書は、統合マイクロキャリア細胞培養における肝炎Aウィルスのプロセスを説明している。
米国特許6218182号明細書は、3D組織の培養方法を説明しており、特に、細胞が植えられ、細胞の異なる側部に接触する2つの媒質流れとともに提供されるバイオリアクタにおいて、生体外肝臓支援装置としての使用のための肝臓組織の培養方法を説明している。
【0005】
米国特許出願公開2009/0186412号明細書は、多孔細胞台座およびその製造方法を説明している。全ての従来技術文献は、高い細胞の密度を備える培養システムが不規則な流れに出会うときに生じる問題に対処する。
【0006】
公知のバイオリアクタは、厚い構造において、または培養密度が大きいとき、効率的な生体内栄養機構を擬態しない。
哺乳類の身体における、流れ、栄養分の運搬、ガス、および水の除去の規制は、体内の多くの複雑な機能を含む自動化されるプロセスである。血液は複雑なシステムであり、これは、身体全体を通して細胞へ、または細胞からの大量のガスおよび栄養分を輸送する能力を支援する。流れは、血液の流れを高い要求のある領域へ再分配するように体積および圧力を自動的に変化させる複雑なシステムにより管理される。この分配システムは、数千の分枝を含み、また、それぞれの分枝は、最終的に細胞に養分が付与される場所の寸法レベルに到達するまで内部直径が小さくなる。数値流体力学(Computational Fluid Dynamics, CFD)ソフトウェアの使用は、複雑な構造内およびその容器内の流れの解析を可能にする。適切な特性が同定される場合、材料の使用速度および排出物の生成の両方が、典型的な安全領域内にあることを確認するために、代謝パラメータを検討することができる。一例は、全ての細胞が有気性であることを確保するために、最大細胞密度および酸素消費速度を計算することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
我々は、今回、深いまたは厚い構造の中心で細胞を培養することの問題を解決する連続培養装置を発見した。
本発明の対象は、(a)規則的な間隔が空けられる相互接続される成長表面のマトリックスにより形成される台座と、(b)成長領域の入口および出口における流体分配手段と、を有する連続培養装置である。
【0008】
間隔および精細度は、成長表面を通るまたその周りの均一な方向の流れを許容するように構成される。
成長領域の入口および出口における流体分配手段は、各成長表面への十分な流れを可能にする。流体の分配は、数値流体力学および主要な代謝産物利用解析(key metabolite utilization analysis)を用いて解析され、細胞が有害な成長条件にさらされないことを確保する。
【0009】
好ましくは、流体分配手段は、新しい栄養分およびガスの流入流れを成長表面に分配する。分配装置チャネルの断面およびチャネルの数は、成長表面の形状および成長表面により支持される細胞の全数に応じて、成長表面への均一な分配を促進するように調整することができる。
【0010】
好ましくは、培養装置は、相互接続される複数の繊維、または三次元構造物により画定される、反復的に組織化された相互接続される成長表面のマトリックスを含み、これは、細胞の取り付けおよび成長を促進または増強するために用いられる任意の数のファセットまたは表面構造を含むことができる。
【0011】
マトリックスを形成する三次元構造は、円筒形、矩形、六辺形、または他の任意の形状または形状の組み合わせとすることができ、表面はなめらかでも荒くてもよい。
本発明の実際的な好ましい実施形態において、台座は、中心指示部の周りで規則的な間隔が隔てられた相互接続された成長表面のマトリックスにより形成される。
【0012】
構造物の相互接続により形成される開放空間は、0.7mm以上、3mm以下であり、好ましくは、0.9mm以上、3mm以下である。好ましい実施形態における空間は、1.0mmより大きいが、台座の物理的な強度の必要性により変更することができる。本発明のより好ましい実施形態において、相互接続される成長表面は、1.0mm以上、2.0mm以下の規則的な間隔で間隔が隔てられる。
【0013】
空間は本発明の特性を与える特徴である。上述の範囲のパラメータの可変性は、台座を通る媒質の流れを最適化することを可能にし、同時に、本発明による全ての装置が最終的な形状および寸法から3D構造物に十分な剛性を与えることを可能にする。相互接続される成長表面により形成される開放空間は、本発明の装置の組織化された特徴構造を形成し、これは、従来技術から公知である装置の多孔構造とは異なる。
【0014】
台座の形状は、好ましくは立方体であるが、他の形状とすることもでき、たとえば、円筒形等とすることができる。
好ましくは、培養装置は、大きな開放領域を形成するために均一に構成される、多数の相互接続される成長表面を含み、これは、立方体容積辺りの細胞の最大数を制限し、成長領域の容易な脈管化を促進する。
【0015】
培養装置は、任意の生体適合性材料から形成することができる。
生体適合性材料は、任意の生体適合性有機ポリマーまたはそれらの混合物とすることができ、また、生体適合性有機ポリマー、生体適合性の有機または無機の非ポリマー化合物の混合物とすることができる。
【0016】
本発明において有効な生体適合性材料の成分の非限定的な具体例は、ポリカプロラクトン、ポリエチレン酸化物−テレフタラート、ポリアミド、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、フィブロネクチン、ハイドロキシアパタイト等である。
【0017】
実際的な好ましい実施形態において、培養装置はさらに、無菌式にシールされたハウジングを有し、これは、培養期間の完了において分解することができる。前記無菌ハウジングは、シールされた取り外し可能なカバー、入口分配手段、随意選択の出口分配手段、および、成長表面を培養装置内に配置および固定するのに必要とされる支持手段を含むことができる。
【0018】
ハウジングは、矩形、円筒形、または培養装置を保持するのに必要な、他の任意の形状とすることができ、また、台座の無菌の取り外し可能な追加的な特徴を提供することができる。
【0019】
本発明は、従来の培養装置に比べていくつかの利点を提供し、栄養分の運搬が、厚い(>1mm)基板上で組織の形成および生存性を維持することを可能にする。
本発明の3D培養装置は、単一のステッププロセスで製造することができる。
【0020】
代替的に、2D層を最初に製造することができ、その後、単一の2D層を1つづつ組み立て、本発明による3D培養装置を形成することができる。
3D培養装置の最終寸法は、組み立てる2D層の数による。
【0021】
本発明の培養装置は、任意の種類の細胞を3D組織に培養するのに効果的に使用することができる。好ましくは、歯科インプラントまたは骨復構のための細胞培養に用いられる。細胞が3D組織に成長すると、媒質の流れを停止することができ、組織は使用することができ、または将来の使用のために保管することができる。本発明の培養装置は、身体内で直接的に細胞を培養するのに効果的に用いることができる。実際、本装置は、組織の復構の必要において、患者にインプラントすることができ、また、生体内で培養することもできる。
【0022】
本発明による培養装置を用いることで、細胞は、生物分解性の台座上で制御された環境で成長することができる。成長表面の相互接続により形成される大きな開放領域は、媒質の均一な流れにさらされることを可能にし、また、成長プロセスの間のよごれを防止することを可能にする。特に、成長プロセスの間の、ガス泡による成長表面のよごれまたは封鎖が防止される。
【0023】
さらに、本発明の培養装置で、培養条件は連続的に監視され、望ましい条件からの乖離は、自動的に補正または警告される。これは、細胞を画一的な状態に維持するのに必要な条件を提供し、最大細胞密度を最小化し、関連する有害な壊死を最小化し、また、重要な栄養分およびガスのための拡散制限されていない環境を提供する。
【0024】
さらに、本発明による培養装置は、ウサギでの実験により示されるように、細胞の不存在においても組織の成長を提供する。

実験プロトコル
本発明による、等しい寸法の4つの部片に切断される2層台座(11mm×11mm×5mm)がマウスでの細胞成長実験に用いられた。
【0025】
組織学的解析および結果
4つの連続培養装置は、免疫欠損NOD/SCIDマウスにインプラントされた。
インプラントから1週間後の刺激反応の解析は、典型的な刺激反応、すなわち、腫れ(swelling)、赤み(redness)、滲出物(exudates)等のサインを示さなかった。コントロール材料HA(Hydroxy Apatite)、すなわち、標準サンプルとして使用される市販されている生物医学的材料の組織学的解析は、炎症(たとえば、リンパ球浸潤)を示さず、逆に、多孔セラミック材料の組織への同化が示された(材料の孔の繊維芽細胞の増殖)。
【0026】
ポリカプロラクトンは、本発明の連続培養装置対象物を含む全てのサンプルから取り除かれ、また、パラフィンで置換された。これは、顕微鏡写真上の負のまたは空の画像を生じさせた。
【0027】
サンプルP(ポリカプロラクトン)、PC(細胞を備えるポリカプロラクトン)、PD(トリカルシウムリン酸塩浸漬を備えるポリカプロラクトン)(図7)、PDC(細胞を備えるトリカルシウムリン酸塩浸漬を備えるポリカプロラクトン)(図8)の組織学的解析は、組織の炎症プロセスを示さなかった。本発明の連続培養装置対象物の生体内インプラントは、組織の炎症プロセスを与えることなく細胞の成長を提供した。
【0028】
マウスで実行された解析は、連続培養装置は生体適合的であり、局所的に有害でないことを示した。さらに、連続培養装置の特徴的な3D構造は、組織の成長を提供する。
添付図面において本発明をより詳細に説明する。これらは、本発明を限定することなく具体的な実施形態を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】台座の一実施形態を示す図である。
【図2】流れ分配装置の一実施形態を示す図である。
【図3】2つの流れ分配装置の間の台座の一実施形態を示す図である。
【図4】システムのフローチャートである。
【図5】CFD流れ解析を示す図である。
【図6】写真による流れ解析を示す図である。
【図7】サンプルPDの顕微鏡写真である。
【図8】サンプルPDCの顕微鏡写真である。
【図9】サンプルHA、PD、PDCの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は台座の一実施形態を示す。台座(1)は、円筒形(3)構造のマトリックスの相互接続物により形成される。台座(1)は、中心支持部(2)の周りに形成される。
図2は、流体分配装置(5)の一実施形態を示す図である。この装置において、流体は、共通導管(6)において装置(5)に存在し、共通導管(6)は、分配導管(7)に接続される。台座(1)の中心支持部(2)に接続するための支持手段(8)が示されている。
【0031】
図3は、2つの分配装置(5)の間に位置決めされた台座(1)を示している。この実施形態において、流体は入口共通導管(6)に運搬され、さらに、分配導管(7)に分配され、台座(1)の開放構造(4)を通ってその周りに分配される。その後、流体は集められ、出口装置(5B)に配置される共通導管(7)に向けられ、ここで集められて、分配装置(5B)の共通導管(6)に向けられる。
【0032】
図4は、中心循環システム(9)に接続された培養装置(10)の概略図である。培養装置(10)がシステム(9)に接続される場合、ポンプ(12)により提供される栄養分および溶解ガスの連続流れを受け取るように位置決めされる。中心循環ループは、ポンプ(12)の出口を培養装置(10)の入口に接続することで形成される。培養装置(10)の出口は、流体リザーバ(13)を通ってポンプ(12)の入口に接続される。システム(12)内の流体の一定の連通は、様々なセンサ(11)である。センサ(11)は、制御手段(20)に接続され、これは、システム(12)の状態を監視および制御する。新しい栄養分の測定された運搬を提供するために、また、システムから材料を廃棄するために、追加のポンプ(14、15)が提供される。
【0033】
図5は、数値流体力学解析の例を示し、流体の分配は構造物の全体におよぶ。
図6は、写真による流れ解析である。
図7および図8は、それぞれサンプルPDおよびサンプルPDCの細胞の成長および炎症プロセスの不存在を示す。顕微鏡写真は、20倍の拡大率であり、皮膚は顕微鏡の頂部にある。
【0034】
図9は、マウスでの細胞成長実験のサンプルHA、PD、PDCの適用および解析領域を示す。サンプルの外部解析は、繊維症反応または炎症プロセスを示していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続培養装置であって、(a)規則的な間隔が隔てられて相互接続される成長表面のマトリックスにより形成される台座と、(b)成長領域の入口および出口における流体分配手段と、を有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記台座は、中心支持部の周りで規則的な間隔が隔てられる相互接続される成長表面のマトリックスにより形成される、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記相互接続される成長表面は、複数の繊維または三次元構造物の相互接続により画定される、装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置であって、前記相互接続される成長表面は、0.7mm以上3.0mm以下の規則的な間隔が隔てられる、装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置であって、前記相互接続される成長表面は、0.9mm以上3.0mm以下の規則的な間隔が隔てられる、装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置であって、前記相互接続される成長表面は、1.0mm以上3.0mm以下の規則的な間隔が隔てられる、装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置であって、前記相互接続される成長表面は、1.0mm以上2.0mm以下の規則的な間隔が隔てられる、装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置であって、さらに、培養期間の完了において分解することができる無菌シールされるハウジングを有する、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、前記無菌シールハウジングは、シールされる取り外し可能なカバーと、入口分配手段と、随意選択な出口分配手段と、前記成長表面を前記培養装置内に配置および固定するための支持手段と、を有する、装置。
【請求項10】
歯科インプラントまたは骨復構のために、骨細胞を培養するための請求項1乃至9のいずれか一項に記載の連続培養装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−514068(P2013−514068A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543722(P2012−543722)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069768
【国際公開番号】WO2011/073261
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512157955)ヴィヴァバイオセル・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (1)
【Fターム(参考)】