説明

連続孔削孔機

【課題】先行孔に挿入されて削孔ビットによる削孔を案内するガイドロッドの外径寸法を大きく形成することが可能であるとともに、独立した単孔形成時のガイドロッドの撤去操作を軽減することが可能な連続孔削孔機を提供する。
【解決手段】ガイドロッド5は、その前端を削孔ビット3より前方に位置させるとともに、ロッドガイド6から後方へその後端を突出させた状態でロッドガイドに対し摺動可能に貫通して設けられてなり、ガイドロッド後端には、ロッドガイドからのガイドロッドの抜脱を規制するストッパ9が設けられ、ガイドロッドの外周面とガイドロッドが貫通して設けられるロッドガイドの内周面との間には、ガイドロッドの摺動規制手段が設けられて、ガイドロッドの前端が先行孔Pの先端に達した後に、ガイドロッドがロッドガイドに対し後方へ摺動するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行孔に挿入されて削孔ビットによる削孔を案内するガイドロッドの外径寸法を大きく形成することが可能であるとともに、独立した単孔形成時のガイドロッドの撤去操作を軽減することが可能な連続孔削孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
岩盤などにスロットを削孔する削孔機を搭載するジャンボなどのベースマシンの小型・軽量化を図るとともに、他の用途、例えばロックボルト打設孔の削孔などへの転用も可能とすることにより、コストダウンを図る目的から、従来の多連の削孔機に代わり、連続孔削孔機が採用されつつある。この連続孔削孔機は、単孔削孔機にガイドロッドを設け、このガイドロッドを利用して続孔を穿設するものであって、いわゆる単孔連続方式でスロットを形成するようになっている。複数の単孔を並べることで形成される続孔を精度よく穿設するために、先行して形成した先行孔内にガイドロッドを挿入し、このガイドロッドに削孔ロッドを沿わせながら、先行孔の隣りに削孔ビットで削孔していく。先行孔に深く挿入することが可能なガイドロッド周りの機構として、特許文献1や特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1の「連続孔さく孔装置」では、ビットを有する回転ロッドを収容する外管の移動を案内するセントラライザーによって、当該外管とともにガイドシリンダがガイドシェルに保持されている。ガイドシリンダは、外管と一体に形成され、既設孔内に挿入される。ガイドシリンダには、ばねによって伸縮されるガイドピストンが設けられている。ガイドピストンの後部には、これより径方向外方へ突出させて、ガイドシリンダからのガイドピストンの抜脱を規制するストッパが形成されている。
【0004】
特許文献2の「岩盤削孔用ガイドロッド及び岩盤削孔装置」では、削孔ロッドにロッド保持部材を介してガイドロッドが保持されている。ガイドロッドは、大径ロッドに小径ロッドをスライド自在に組み付けて伸縮可能に構成されている。ガイドロッドは、その大径ロッドがロッド保持部材に固定的に保持されている。そしてガイドロッドは、ロッド保持部材とともにその全体が先行孔内に挿入される。また、ロッド保持部材は、削孔ロッドに回転自在に取り付けられ、従ってガイドロッドは、ロッド保持部材を介して、削孔ロッドを中心に回転可能となっている。
【特許文献1】特開平2−88881号公報
【特許文献2】特開2004−263445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、既設孔に挿入されて回転ロッドの移動を案内する主要部分であるガイドピストンの外径寸法が、ガイドシリンダ内に突出形成するようにしたストッパの分だけ、細い寸法に制限されていた。特許文献2にあっても、先行孔に挿入されて削孔ロッドの移動を案内する主要部分である小径ロッドの外径寸法が、ロッド保持部材で保持するようにした大径ロッドの肉厚分だけ、細い寸法に制限されていた。これらガイドピストンや小径ロッドは、その外径寸法が細いと十分な曲げ剛性を確保することができず、その結果変形や折損などが生じて、ガイドとしての機能を適切に果たせなくなってしまうおそれがあるという課題があった。
【0006】
また先行孔内方に深く位置するこれらガイドピストンや小径ロッドを利用してスライム除去や注水を行うことが好ましく、そのためには、これらガイドピストンや小径ロッドに通孔を形成することが必要となるが、ガイドピストンや小径ロッドの外径寸法が細いと、曲げ強度の問題も関係して、このような通孔を設けることが難しいという課題もあった。特に、狭いスロットを形成する場合は、各単孔の孔径が小さくなるため、上記課題が顕著であった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、先行孔に挿入されて削孔ビットによる削孔を案内するガイドロッドの外径寸法を大きく形成することが可能であるとともに、独立した単孔形成時のガイドロッドの撤去操作を軽減することが可能な連続孔削孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる連続孔削孔機は、削孔機本体に、削孔ビットを前端に取り付けた削孔ロッドと該削孔ロッドの削孔駆動手段とを進退自在に設け、該削孔ロッドに、先行孔に挿入される短尺のガイドロッドを保持するロッドガイドを位置固定して設け、該ガイドロッドで案内される該削孔ビットにより、先行孔に隣接する孔を形成してスロット状連続孔を形成する連続孔削孔機において、上記ガイドロッドは、その前端を上記削孔ビットより前方に位置させるとともに、上記ロッドガイドから後方へその後端を突出させた状態で該ロッドガイドに対し摺動可能に貫通して設けられてなり、上記ガイドロッド後端には、上記ロッドガイドからの該ガイドロッドの抜脱を規制するストッパが設けられ、上記ガイドロッドの外周面と該ガイドロッドが貫通して設けられる上記ロッドガイドの内周面との間には、該ガイドロッドの摺動規制手段が設けられて、上記ガイドロッドの前端が先行孔の先端に達した後に、該ガイドロッドが上記ロッドガイドに対し後方へ摺動するよう構成されることを特徴とする。
【0009】
前記削孔機本体には、削孔終了後に前記削孔ロッドの後退とともに後退する前記ガイドロッドの後端を受止して、該ガイドロッドを前記ロッドガイドに対し前方に摺動させる該ガイドロッドの位置決め部材が備えられていることを特徴とする。
【0010】
前記ロッドガイドは、前記削孔ロッドに対し回転自在に設けてなり、前記ガイドロッド後端には、係合部が設けられ、前記位置決め部材は、削孔終了後に上記削孔ロッドの後退とともに後退する上記ガイドロッドの上記係合部に係脱自在に係合して、該削孔ロッド周りにおける該ガイドロッド前端の位置を固定するよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記係合部と前記位置決め部材との間には、それらの係合を案内するテーパ部が備えられていることを特徴とする。
【0012】
前記削孔ロッドは、前記ロッドガイドが該削孔ロッドに対し脱着可能となるよう構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる連続孔削孔機にあっては、先行孔に挿入されて削孔ビットによる削孔を案内するガイドロッドの外径寸法を大きく形成することができるとともに、独立した単孔形成時のガイドロッドの撤去操作を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる連続孔削孔機の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる連続孔削孔機は基本的には、図1〜図3に示すように、削孔機本体を構成するガイドシェル1に、削孔ビット3を前端に取り付けた削孔ロッド4と削孔ロッド4の削孔駆動手段であるドリフター12とを進退自在に設け、削孔ロッド4に、先行孔Pに挿入される短尺のガイドロッド5を保持するロッドガイド6を位置固定して設け、ガイドロッド5で案内される削孔ビット3により、先行孔Pに隣接する孔Hを形成してスロット状連続孔Sを形成する連続孔削孔機において、ガイドロッド5は、その前端を削孔ビット3より前方に位置させるとともに、ロッドガイド6から後方へその後端を突出させた状態でロッドガイド6に対し摺動可能に貫通して設けられてなり、ガイドロッド5後端には、ロッドガイド6からのガイドロッド5の抜脱を規制するストッパ9が設けられ、ガイドロッド5の外周面とガイドロッド5が貫通して設けられるロッドガイド6の内周面との間には、ガイドロッド5の摺動規制手段が設けられて、ガイドロッド5の前端が先行孔Pの先端に達した後に、ガイドロッド5がロッドガイド6に対し後方へ摺動するよう構成される。
【0015】
ガイドシェル1には、削孔終了後に削孔ロッド4の後退とともに後退するガイドロッド5の後端を受止して、ガイドロッド5をロッドガイド6に対し前方に摺動させるガイドロッド5の位置決め部材としての係合突起11が備えられている。ロッドガイド6は、削孔ロッド4に対し回転自在に設けてなり、ガイドロッド5後端には、係合部としての係合孔10が設けられ、係合突起11は、削孔終了後に削孔ロッド4の後退とともに後退するガイドロッド5の係合孔10に係脱自在に係合して、削孔ロッド4周りにおけるガイドロッド5前端の位置を固定するよう構成されている。係合孔10と係合突起11との間には、それらの係合を案内するテーパ部として、テーパ面10a,11aが備えられている。削孔ロッド4は、ロッドガイド6が削孔ロッド4に対し脱着可能となるよう構成される。
【0016】
ガイドシェル1には、その後端部に、回転・打撃装置であるドリフター12が設けられる。ガイドシェル1には、その長さ方向に沿って後端部から前端部にわたって、削孔ロッド4が設けられる。削孔ロッド4は、ドリフター12に連結され、削孔ビット3に回転力と打撃力を伝達し、またガイドシェル1に沿って進退移動される。ガイドシェル1にはさらに、その後端部と前端部との間に位置させて、削孔ロッド4が貫通するスライドガイド2が設けられる。スライドガイド2は、削孔ロッド4をガイドシェル1に対して支持するとともにその進退移動を案内する削孔ロッド4用のセントラライザーとして機能する。削孔ロッド4の前端側には、削孔用の削孔ビット3が着脱自在に設けられる。削孔ロッド4および削孔ビット3には、これらを貫通して削孔箇所に注水するための注水孔13が形成される。ガイドシェル1の前端部には、岩盤などの削孔対象物Xに対して当該ガイドシェル1の前端部を安定的に設置させる固定パット14が設けられる。
【0017】
削孔ロッド4には、ガイドロッド5を摺動自在に保持するためのロッドガイド6が位置固定して設けられる。このロッドガイド6とガイドロッド5とで削孔時の削孔ビット3の案内部を構成している。ロッドガイド6は、サポートスリーブ15およびガイドスリーブ16を平行に並べて一体化した形態で形成される。これらサポートスリーブ15およびガイドスリーブ16はそれぞれ、削孔ビット3で削孔される孔Hおよび先行孔Pに挿入可能な外径寸法で形成される。サポートスリーブ15は、断面円形の貫通孔15aを有する中空六角柱状に形成される。ガイドスリーブ16は、断面円形のスライド孔16aを有する中空円筒体状に形成される。スライド孔16a内には、ガイドスリーブ16の長さ方向に沿ってスプライン溝17が形成される。このロッドガイド6は、サポートスリーブ15を介して、削孔ロッド4に回転自在かつ脱着自在に装着される。
【0018】
ロッドガイド6を削孔ロッド4に脱着自在に装着する脱着部7は主に、削孔ロッド4に連結されたスリーブ18と、スリーブ18に連結され、ロッドガイド6のサポートスリーブ15に挿抜自在に挿入されるロッド体19と、ロッド体19に着脱自在に取り付けられる削孔ビット3とから構成される。なお、スリーブ18およびロッド体19はいずれも削孔ロッド4の一部を構成するものである。スリーブ18、削孔ビット3の外径は、ロッド体19の外径より大径に形成されている。削孔ロッド4の前端にはネジ部が形成される。削孔ロッド4前端のネジ部には、両端にナット部が形成されたスリーブ18の一端が螺合され、これによりスリーブ18は削孔ロッド4に固定的に連結される。スリーブ18の他端には、両端にネジ部が形成されたロッド体19の一端が、衝撃吸収用のワッシャ20を介して螺合され、これによりロッド体19がスリーブ18に固定的に連結される。ロッド体19の他端には、削孔ビット3に形成されたナット部が螺合され、これによりロッド体19、ひいては削孔ロッド4に削孔ビット3が着脱自在に取り付けられる。
【0019】
サポートスリーブ15には、貫通孔15aを介してロッド体19が挿抜自在に挿入される。また、サポートスリーブ15の後端面が、削孔ロッド4の打撃の際の緩衝用のワッシャ20を介して、スリーブ18の前端面に当接され、またサポートスリーブ15の前端面が削孔ビット3の後端面に当接されることで、サポートスリーブ15は、ロッド体19に支持されつつこれらスリーブ18と削孔ビット3との間に挟み込んで位置固定される。従って、予め削孔ロッド4の前端にスリーブ18を連結し、このスリーブ18にワッシャ20を介してロッド体19を連結しておき、この状態で、ロッドガイド6のサポートスリーブ15をロッド体19に挿入し、サポートスリーブ15前端から突出するロッド体19に削孔ビット3を取り付けることで、ロッドガイド6は削孔ロッド4に対し位置固定して設けられる。
【0020】
ロッドガイド6を取り外す際には、削孔ビット3が取り外されたロッド体19から、サポートスリーブ15を介してロッドガイド6を抜き出すだけでよい。削孔ロッド4の後端には、当該削孔ロッド4をドリフター12に連結する連結具21のネジ部と螺合されるナット部が形成される。
【0021】
ロッドガイド6のガイドスリーブ16は上述したように、スライド孔16aを有する中空円筒体状に形成され、スライド孔16aがガイドスリーブ16を貫通して形成されることで、ガイドスリーブ16の後端には、ロッドガイド6の後端から後方へ向かって開放された開口部8が形成される。ガイドスリーブ16には、先行孔Pにその前端から挿入されるガイドロッド5が挿入される。ガイドロッド5は、軸体状であって、その前端および後端がガイドスリーブ16の前端および後端から突出するように、ガイドスリーブ16よりも長く形成される。ガイドロッド5の外周面には、スライド孔16aのスプライン溝17に嵌合されるスプライン突起22が形成され、これによりガイドロッド5は、ガイドスリーブ16に摺動自在かつ回転不能に設けられる。
【0022】
ガイドロッド5の先端には、先行孔Pへの挿入を円滑化するための尖頭部23が形成される。ガイドロッド5には、尖頭部23の後方位置に、周方向に適宜間隔を隔てて径方向外方へ突出させてスタビライザー突起24が形成される。スタビライザー突起24は、先行孔Pの内周面に摺接されて先行孔P内でのガイドロッド5の姿勢を安定化させる。スタビライザー突起24は、スライド孔16aの内径よりも大きな外径寸法で形成され、これによりガイドロッド5のガイドスリーブ16後方への抜脱が規制される。
【0023】
ガイドスリーブ16後端の開口部8を介して当該ガイドスリーブ16後端から後方へ突出されたガイドロッド5の後端には、ロッドガイド6からのガイドロッド5の抜脱を規制するストッパ9が設けられる。ストッパ9は、ガイドロッド5にその後端から挿入されて取り付けられる。ストッパ9は、スライド孔16aの内径よりも大きな外径寸法で形成され、その前端面がガイドスリーブ16の後端面に当接可能で、これによりガイドロッド5がガイドスリーブ16前方、ひいてはロッドガイド6前方へ抜脱されることが規制される。ストッパ9の外周面にもその長さ方向に沿って、周方向に適宜間隔を隔てて径方向外方へ突出するスタビライザー突起25が形成される。ガイドロッド5は、ガイドスリーブ16にその前方から挿入され、ガイドスリーブ16の開口部8から突出された後端にストッパ9が装着されることで、ロッドガイド6に保持される。ストッパ9は、ガイドロッド5とロッドガイド6とを一体化する固定部材としても機能する。
【0024】
ガイドロッド5、本実施形態にあってはガイドロッド5の後端に設けられたストッパ9に、係合孔10が形成される。係合孔10の内面は、ストッパ9の後端から前方へ向かって漸次内径が窄められてテーパ面10aで形成される。ガイドロッド5には長さ方向に貫通して、尖頭部23からストッパ9の係合孔10にわたって連通させて孔部26が形成される。孔部26は、削孔箇所周辺への注水や削孔箇所周辺からのスライムの除去などに利用される。
【0025】
さらに、ガイドロッド5の外周面とガイドスリーブ16の内周面、具体的にはスライド孔16aの周面との間には、ガイドスリーブ16内でガイドロッド5が不必要に摺動移動することを規制する摺動規制手段が設けられる。ガイドロッド5が自由に摺動してしまうと、削孔ビット3の前端位置とガイドロッド5の前端位置とが同一となってしまい、ガイドロッド5が、削孔ビット3の案内という本来の機能を発揮できなくなる。また、例えば尖頭部23を先行孔Pに挿入する際などの操作性も劣化する。摺動規制手段は、一定以上の力が作用した場合にガイドロッド5をロッドガイド6に対して摺動可能とし、それ以外の場合にはロッドガイド6に対するガイドロッド5の摺動移動を規制する。摺動規制手段は例えば、ガイドロッド5およびガイドスリーブ16のいずれか一方の周面に組み込まれ、ガイドロッド5およびガイドスリーブ16のいずれか他方の周面に対して摺動摩擦を発生させる板バネで構成される。あるいは、ガイドロッド5外周面とガイドスリーブ16内周面の表面加工処理により、当該周面間の周面摩擦を利用して摺動規制手段を構成するようにしてもよい。
【0026】
他方、ガイドシェル1には、削孔ロッド4を支持するスライドガイド2とは別個に、削孔ロッド4の後退とともに後退するガイドロッド5に設けたストッパ9の係合孔10に係脱自在に係合して、削孔ロッド4に対するガイドロッド5の位置を位置決めする係合突起11が設けられる。係合突起11は、テーパ面10aで形成した係合孔10に対応させて、錐体面で形成されたテーパ面11aを備えて形成される。ガイドロッド5に設けたストッパ9の係合孔10は、削孔ロッド4を後退させた連続孔削孔機の待機状態で、係合突起11に係合し、削孔ロッド4が前進する連続孔削孔機の稼働状態で先行孔Pに挿入されたガイドロッド5が前進することで係合突起11から離脱する。
【0027】
本実施形態にかかる連続孔削孔機の作用について説明する。まず事前に、ロッドガイド6にガイドロッド5を挿入し、ストッパ9でガイドロッド5をロッドガイド6に固定して一体化しておく。以後、このパーツの脱着で、連続孔の削孔作業と、独立した単孔の削孔作業とを切り換える。連続孔の削孔準備に際しては、削孔ビット3をロッド体19から取り外し、ロッド体19に、ガイドロッド5を一体化したロッドガイド6を挿入して、再度削孔ビット3をロッド体19に取り付ける。これにより、ガイドロッド5を備えたロッドガイド6が削孔ロッド4に対して位置固定される。
【0028】
その後、削孔ロッド4を後退させて待機位置にセットする。削孔ロッド4を後退させると、ガイドロッド5がロッドガイド6とともに後退するとともに、この削孔ロッド4の後退動作により、ガイドロッド5の係合孔10がガイドシェル1の係合突起11に係合する。これにより、ガイドロッド5は削孔ロッド4に対して適正に位置決めされる。この位置決め状態では、尖頭部23が削孔ビット3よりも前方に位置する。摺動規制手段により、削孔ロッド4の後退に際して、ガイドロッド5がロッドガイド6の途中位置に位置保持されていても、係合孔10が係合突起11に係合する際に、摺動規制手段の摺動規制に抗してガイドロッド5に対してロッドガイド6が相対的に摺動し、最終的にストッパ9とロッドガイド5が当接する。これにより、連続孔削孔機は待機状態にセットされる。
【0029】
連続孔削孔機の稼働にあたっては図2(a)に示すように、ガイドシェル1を前進させて、固定パット14を削孔対象物Xに当接させる。このガイドシェル1の前進によって、ガイドロッド5の尖頭部23が先行孔P内に挿入されるとともに、削孔ビット3が削孔箇所に当接される。この操作に際しては、係合突起11と係合孔10とにより、削孔ロッド4に対するガイドロッド5の位置決めが確保されるので、ガイドロッド5の先行孔Pへの挿入により削孔ビット3を適正な削孔箇所に導くことができる。図2(b)に示すように、ドリフター12を起動して削孔ビット3により徐々に削孔して孔Hを形成して行くに従って、ガイドロッド5は削孔ビット3に対してほぼ同じ位置関係を保ちつつ、先行して先行孔P内に進入していく。この際、摺動規制手段の摺動規制を越える力がガイドロッド5に作用すると、ガイドロッド5はロッドガイド6に対して自在に摺動移動する。
【0030】
図2(c)に示すように、先行孔Pの先端にガイドロッド5の尖頭部23が到達すると、ガイドロッド5のそれ以上の進出が制止され、摺動規制手段の摺動規制を超える力がガイドロッド5とロッドガイド6との間に作用して、ガイドロッド5に対しロッドガイド6が摺動移動する。このガイドロッド5とロッドガイド6との摺動移動を伴いつつ、削孔ロッド4の前進に従って削孔ビット3が削孔を続行する。ロッドガイド6がガイドロッド5に対して摺動して、ガイドスリーブ16が尖頭部23側のスタビライザー突起24に当接すると、削孔ロッド3はそれ以上前進することができなくなり、削孔ビット3による削孔が完了する。ロッドガイド6からの削孔ビット3の突出寸法と、尖頭部23からスタビライザー突起24にわたる長さ寸法をほぼ同じにしておけば、先行孔Pと削孔ビット3による孔Hの孔深さはほぼ同一となる。
【0031】
削孔完了後は、図2(d)に示すように、削孔ロッド4を後退させる。削孔ロッド4を後退動作すると、ガイドロッド5が残された形で、まず削孔ビット3とともにロッドガイド6が後退していく。その後、ロッドガイド6がストッパ9に当接すると、削孔ロッド4の後退とともにガイドロッド5が先行孔Pから引き出されていく。そしてストッパ9の係合孔10が係合突起11に係合する。ガイドロッド5およびロッドガイド6が引き出された際、ロッドガイド6が削孔ロッド4に対して、回転していたら、人力によりこれを削孔ロッド4周りに回転して正規位置に戻し、係合孔10を係合突起11に係合させる。係合させた後、さらに削孔ロッド4を後退させると、これに伴い後退するストッパ9の係合孔10の孔壁を受止する係合突起11が、ガイドロッド5を、摺動規制手段の摺動規制を超える力でもって押圧して摺動させ、削孔ビット3より前方の所定位置に位置させる。以上で、削孔ロッド4の後退動作が完了する。この後、ガイドシェル1を削孔対象物Xの表面に沿って所定量移動させた後、先行孔Pにガイドロッド5を挿入して、次の削孔を行う。以上の工程を繰り返すことにより、一連のスロット状連続孔Sが削孔対象物Xに形成される。
【0032】
ところで、本実施形態にかかる連続孔削孔機にあっては、ロッドガイド6に形成した開口部8から後方へ突出させたガイドロッド5の後端に、ガイドロッド5がロッドガイド6から抜脱されることを規制するストッパ9を設けたので、ストッパ9をロッドガイド6のスライド孔16a内に配置する場合に比べて、当該ストッパ9をスライド孔16a外方へ配置した分だけ、ガイドロッド5の外径寸法を大きく設定することができる。これにより、先行孔Pに挿入されて削孔ビット3による削孔を案内するガイドロッド5の強度を高く確保することができる。また、注水やスライム除去のための孔部26を適切にガイドロッド5に設けることができる。
【0033】
また、ガイドロッド5の位置決めを、削孔ロッド4用のスライドガイド2とは別に設けた係合突起11とこれに係合する係合孔10で行うようにしたので、独立した単孔を削孔する際には、ガイドロッド5を撤去するのみで、そのほか何らの変更も行う必要なく、削孔ロッド4で単孔の削孔作業を行うことができる一方で、連続孔削孔時には、ガイドロッド5を装着するだけで、これら係合突起11と係合孔10とによって適切に削孔ロッド4に対するガイドロッド5の位置決め機能を確保することができる。また、単孔の削孔作業と連続孔の削孔作業の切り替えに際しては、装着部7における削孔ビット3の取り外しによって、ガイドロッド5と一体化したロッドガイド6の脱着操作を実施するだけでよく、簡単にこれら作業を切り換えることができて、単孔を穿設する際のガイドロッド5の撤去操作を軽減することができ、作業効率を向上できる。
【0034】
以上の実施形態において、ガイドロッド5の位置決め機構は、ガイドロッド5側に設けられた係合孔10と、削孔機本体たるガイドシェル1側に設けられた係合突起11とで構成しているが、本発明の位置決め機構はこれに限るものではなく、ガイドロッド5の後端に係合突起11を、ガイドシェル1にこれに外嵌する係合鞘管を設けるように構成してもよいし、ガイドロッド5の後端そのものを直接鞘管で外嵌するようにしても良い。その受止機構においても、テーパ部(テーパ面10a,11a)で受止するに限らず、鞘管を含む係合孔10の孔底と、係合突起11の先端とで受止するようにしても良い。またさらには、位置決め部材がガイドロッド5の後端を単に受止するような構成でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる連続孔削孔機の好適な一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の連続孔削孔機による削孔作業状態を説明する説明図である。
【図3】図2(b)中、A〜E位置における断面の状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ガイドシェル
2 スライドガイド
3 削孔ビット
4 削孔ロッド
5 ガイドロッド
6 ロッドガイド
7 脱着部
8 開口部
9 ストッパ
10 係合孔
11 係合突起
10a,11a テーパ面
26 孔部
H 孔
P 先行孔
S スロット状連続孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔機本体に、削孔ビットを前端に取り付けた削孔ロッドと該削孔ロッドの削孔駆動手段とを進退自在に設け、該削孔ロッドに、先行孔に挿入される短尺のガイドロッドを保持するロッドガイドを位置固定して設け、該ガイドロッドで案内される該削孔ビットにより、先行孔に隣接する孔を形成してスロット状連続孔を形成する連続孔削孔機において、
上記ガイドロッドは、その前端を上記削孔ビットより前方に位置させるとともに、上記ロッドガイドから後方へその後端を突出させた状態で該ロッドガイドに対し摺動可能に貫通して設けられてなり、
上記ガイドロッド後端には、上記ロッドガイドからの該ガイドロッドの抜脱を規制するストッパが設けられ、
上記ガイドロッドの外周面と該ガイドロッドが貫通して設けられる上記ロッドガイドの内周面との間には、該ガイドロッドの摺動規制手段が設けられて、
上記ガイドロッドの前端が先行孔の先端に達した後に、該ガイドロッドが上記ロッドガイドに対し後方へ摺動するよう構成されることを特徴とする連続孔削孔機。
【請求項2】
前記削孔機本体には、削孔終了後に前記削孔ロッドの後退とともに後退する前記ガイドロッドの後端を受止して、該ガイドロッドを前記ロッドガイドに対し前方に摺動させる該ガイドロッドの位置決め部材が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の連続孔削孔機。
【請求項3】
前記ロッドガイドは、前記削孔ロッドに対し回転自在に設けてなり、
前記ガイドロッド後端には、係合部が設けられ、
前記位置決め部材は、削孔終了後に上記削孔ロッドの後退とともに後退する上記ガイドロッドの上記係合部に係脱自在に係合して、該削孔ロッド周りにおける該ガイドロッド前端の位置を固定するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の連続孔削孔機。
【請求項4】
前記係合部と前記位置決め部材との間には、それらの係合を案内するテーパ部が備えられていることを特徴とする請求項3に記載の連続孔削孔機。
【請求項5】
前記削孔ロッドは、前記ロッドガイドが該削孔ロッドに対し脱着可能となるよう構成されることを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載の連続孔削孔機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−170033(P2007−170033A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368866(P2005−368866)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】