説明

連続式アンローダによる原料の荷役方法

【課題】水分が含まれている製鉄原料の荷役作業において、原料搬送ラインにおける製鉄原料のスリップを防止し、以て原料搬送ライン全体に亘る荷役効率の改善を図ることが可能な、連続式アンローダによる原料の荷役方法を提供する。
【解決手段】船倉内の原料Sを連続式アンローダのバケット14で掻き取って船外に移送する方法において、積載された原料Sの表面部をバケット14で掻き取って原料Sの表面に凹部45を形成する第1工程と、原料Sから浸み出す水分Wを凹部45に溜める第2工程と、凹部45に溜まった水Wをバケット14で掬い取って船外に放出する第3工程と、水分Wを放出した原料Sをバケット14で掻き取って船外に移送する第4工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船倉内の原料を連続式アンローダで荷役する方法に関し、詳細には、水分を含んでいる製鉄原料を連続式アンローダで荷役する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁に接岸した船舶の船倉から鉄鉱石や石炭などの製鉄原料を荷役する作業では、短時間で効率的に製鉄原料を揚陸するため、連続式アンローダが使用される。連続式アンローダは旋回及び起伏可能なブームを有し、ブームの先端部には、上下方向に配置された無端チェーンに所定間隔を隔てて複数のバケットが装着されたバケットコンベアが取り付けられている。連続式アンローダによる製鉄原料の荷役作業では、バケットコンベアの下部(掻取部)を船倉内に挿入し、バケットコンベアを作動させて船倉内の製鉄原料をバケットで連続的に掻き取って上方のブームコンベアに移送する。
【0003】
しかし、製鉄原料は一般に水分を含んでいるため、付着性を有している。そのため、バケットに製鉄原料が付着してバケット容積が減少し、荷役効率が低下するという問題がある。また、バケットコンベア側の重量がカウンタウェイト側の重量よりも重くなってブームの水平バランスがくずれ、ブームを起伏する起伏シリンダに過負荷が掛かるという問題もある。
【0004】
そこで、特許文献1では、バケットエレベータ(バケットコンベア)下端のバケット下降側に水配管を設け、バケットエレベータの空運転時に下降するバケットの通り道に向けて水を噴射するノズルを前記水配管に設ける発明が開示されている。
また、特許文献2では、連続式アンローダの掻取部を収容可能なバケット洗浄槽を桟橋に設け、バケットに向けて放水する放水具を前記バケット洗浄槽の内周部に設置する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−154634号公報
【特許文献2】特開2002−193429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載された発明はいずれも、連続式アンローダにバケット洗浄手段を設け、バケットに放水してバケットに付着した原料を取り除くことにより、荷役効率の低下及び起伏シリンダの過負荷を防止するものである。
しかし、製鉄原料は一般に水分を多く含んでいるため、バケットへの原料付着の問題だけではなく、連続式アンローダより後段の原料搬送ライン、特にベルトコンベアの上り部や落下シュートなどにおいて製鉄原料がスリップして落下するという問題がある。そのため、原料搬送ラインの搬送速度を落とさなければならず荷役効率の低下を招いている。従って、水分を多く含む製鉄原料の荷役作業では、船倉内原料の掻き取りから原料ヤードへの製鉄原料の積付けまでの原料搬送ライン全体に亘る荷役効率(荷役能力)が重要となる。
【0007】
揚陸される製鉄原料は、原料搬送ラインを構成する連続式アンローダ、一又は複数のベルトコンベア、スタッカー等の個々の搬送装置を順に経て原料ヤードに積み付けられる。この一連の作業における荷役効率は、前記搬送装置のうち搬送能力(例えば単位時間当たりの搬送トン数)の最も低い搬送装置に制約されて決定される。水分の割合が多い製鉄原料の場合、ベルトコンベア上の製鉄原料のスリップが原因となり、原料搬送ライン全体に亘る荷役効率がベルトコンベアの搬送能力によって制約されることがある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、水分が含まれている製鉄原料の荷役作業において、原料搬送ラインにおける製鉄原料のスリップを防止し、以て原料搬送ライン全体に亘る荷役効率の改善を図ることが可能な、連続式アンローダによる原料の荷役方法を提供することを目的とする。
なお、本明細書では、「製鉄原料」を単に「原料」と呼ぶことがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、船倉内の製鉄原料を連続式アンローダのバケットで掻き取って船外に移送する原料の荷役方法において、
積載された前記製鉄原料の表面部を前記バケットで掻き取って該製鉄原料の表面に凹部を形成する第1工程と、前記製鉄原料から浸み出す水分を前記凹部に溜める第2工程と、前記凹部に溜めた水を船外に放出する第3工程と、水分を放出した前記製鉄原料を前記バケットで掻き取って船外に移送する第4工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明では、製鉄原料を連続式アンローダを用いて揚陸する際、連続式アンローダより後段の原料搬送ラインに水分を含んだ製鉄原料を移送しないようにするため、船倉内で製鉄原料と水分を分離して水分だけを系外に排出する。具体的には、製鉄原料に含まれる水分の溜まり場となる凹部を、積載された製鉄原料の表面に形成することにより、製鉄原料と水分を分離することができる。これにより、製鉄原料から容易に水分を除去することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る連続式アンローダによる原料の荷役方法では、前記凹部に溜めた水を前記バケットで掬い取って船外に放出しても良い。
当該構成では、凹部に溜めた水を船外に放出するための排水設備を新たに設ける必要がなく、凹部の形成から凹部に溜めた水の船外放出まで連続式アンローダを用いて行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る連続式アンローダによる原料の荷役方法では、製鉄原料に含まれる水を効率的に分離して除去することができる。即ち、バケットで原料の表面に凹部を形成し、凹部に溜めた水を船外に放出した後、水分を放出した製鉄原料をバケットで掻き取って船外に移送することにより、原料搬送ライン上で製鉄原料がスリップすることがない。そのため、製鉄原料の搬送速度を低下させる必要が無く、原料搬送ライン全体に亘る荷役効率の改善を図ることができる。
また、凹部に溜めた水をバケットで掬い取って船外に放出すれば、排水設備を新たに設ける必要が無く、効率的に製鉄原料の荷役作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一般的な連続式アンローダの模式図である。
【図2】連続式アンローダから原料ヤードまで敷設された原料搬送ラインの配置図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る連続式アンローダによる原料の荷役方法の手順を説明するための模式図であり、(A)は原料表面に凹部を形成している状態、(B)は凹部に水が溜まっている状態、(C)は凹部内の水を掬い取っている状態をそれぞれ示している。
【図4】荷役開始から完了までの荷役効率の変動を示す時刻歴グラフである。
【図5】荷役開始から完了までの平均荷役効率の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0015】
連続式アンローダ10の一例を図1に示す。また、連続式アンローダ10から原料ヤード36まで敷設された原料搬送ライン(ベルトコンベア31、32、33)の一例を図2に示す。
連続式アンローダ10は、船舶42が接岸する岸壁40に沿って埠頭41上を移動可能とされ、旋回及び起伏可能なブーム21の先端部に取り付けられたバケットコンベア15により船倉43内の原料Sを掻き取って、船外に設置されたベルトコンベア31に移送する港湾設備である。
【0016】
原料S(製鉄原料)は一般に水Wを多く含んでおり、平均すると7〜14質量%程度の水Wを含んでいる。原料S中の水Wは、重力や原料Sの粒度分布の影響等により偏在するため、局所的に見ると、平均値よりも高い水Wを含んだ原料Sも多く存在する。
【0017】
連続式アンローダ10は、岸壁40に沿って敷設された一対のレール34上を移動可能な走行フレーム29と、走行フレーム29上に旋回可能に設置され、側面視して三角形状とされた旋回フレーム24と、旋回フレーム24の頂点を支点として起伏するバランシングビーム23とを有している。バランシングビーム23と旋回フレーム24との間には、バランシングビーム23を起伏するための起伏シリンダ27が装備されている。
【0018】
バランシングビーム23の船舶42側の先端部には、該先端部を支点として鉛直面内で回動する支持リンク25が取り付けられ、支持リンク25の先端部には、上下方向に延在するバケットコンベア15が収納されたバケットエレベータ16が取り付けられている。また、支持リンク25の先端部と旋回フレーム24を構成する斜材26の中間部との間には、原料Sを搬送するためのブームコンベア22を備えるブーム21が取り付けられている。支持リンク25、斜材26、ブーム21、及びバランシングビーム23は平行リンクを構成し、バランシングビーム23が起伏したとき、バケットエレベータ16は鉛直状態を保持したまま昇降する。
一方、バランシングビーム23の原料ヤード36側の先端部には、バケットエレベータ16側の重量と釣り合うだけのカウンタウェイト28が取り付けられている。
【0019】
バケットエレベータ16は、支持リンク25の先端部に固定された筒形フレーム11と、筒形フレーム11から下方に延出し、筒形フレーム11に旋回可能に支持された筒状のコラム部材12とを備えている。バケットコンベア15は、コラム部材12の上部に配置された一対のスプロケット17並びにコラム部材12の下方に配置された一対のスプロケット18に巻回された無端チェーン13と、無端チェーン13に所定間隔を隔てて装着された複数のバケット14とから概略構成されている。バケットコンベア15の下部は、側面視してL字状とされ、原料Sを掻き取る掻取部19の機能を有している。
【0020】
原料Sを掻き取ったバケット14は上方に搬送され、コラム部材12の上部に配置された一対のスプロケット17の位置で反転する。その際、バケット14内の原料Sが、スプロケット17の下方に配置された回転フィーダ20上に投下され、回転フィーダ20を介してブーム21内に設置されたブームコンベア22に移送される。ブームコンベア22によって旋回フレーム24まで搬送された原料Sは、旋回フレーム24内に設置されたホッパー30を介して、連続式アンローダ10の直下に配置されたベルトコンベア31に投下される。
図2に示すように、ベルトコンベア31に投下された原料Sは、埠頭41に配置されたベルトコンベア31、32、33により原料ヤード36まで搬送され、スタッカー37によって山状に積み付けられる。
【0021】
次に、本発明の一実施の形態に係る連続式アンローダによる原料の荷役方法、即ち、水Wを多く含む鉄鉱石や石炭などの原料Sを連続式アンローダ10を用いて揚陸する方法について説明する。
(1)船倉43に積載されている原料Sの表面部をバケットコンベア15のバケット14で掻き取って原料Sの表面に擂り鉢状の凹部45を形成する(図3(A)参照)。掻き取った原料Sは、バケットコンベア15から回転フィーダ20を介してブームコンベア22に移送する。
(2)原料Sから水Wが凹部45に浸み出してくるので、浸み出してきた水Wを凹部45に溜める(図3(B)参照)。
【0022】
凹部45への水Wの浸み出しは、船倉43内の原料積載量(トン)が、船舶42が有する積載能力(トン)の50%以下になると、鉄鉱石において頻繁に見られるようになり、40%以下になると、石炭においても見られるようになる。これは、原料Sに含まれる水Wの高さ方向分布が、水Wに作用する重力と表面張力による毛細管現象との釣合に影響されるため、上記した程度に原料積載量が減少した段階で、水Wの浸み出しが起き易いためであると考えられる。
【0023】
(3)凹部45に溜まった水Wをバケットコンベア15のバケット14で掬い取る(図3(C)参照)。掬い取った水Wが回転フィーダ20上に放出されないようにするため、掬い取った水Wがはいったバケット14が反転する前にバケットコンベア15を停止する。次いで、バランシングビーム23の船舶42側を上方に回動させてバケットコンベア15を船倉43から抜き出した後、バランシングビーム23を旋回させてバケットコンベア15を船外に移動させる。そして、原料Sを掻き取る方向と逆の方向にバケットコンベア15を作動させてバケット14内の水Wをバケット14から放出する。
なお、水Wの放出はバケット14に限るものではなく、ホース等を用いたポンプによる放出も可能である。
(4)凹部45に溜まった水Wをほぼ全て船外に放出した後、船倉43内の原料Sのバケット14による掻き取り及び移送を再開する。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の効果を検証するために実施した試験について説明する。
本発明(実施例)と従来方法(比較例)の各方法で船倉内原料の荷役作業を実施し、荷役開始から完了までの荷役効率(単位時間当たりの原料移送量)の変動を調べた。図4に、実施例と比較例の各荷役効率の時刻歴変化を対比して示す。なお、比較例はバケット洗浄のみ実施し、実施例はバケット洗浄を併用しなかった。
【0025】
比較例では、バケット洗浄を行っているのでバケット容量の減少は無い。そのため、荷役開始から3時間後までは高い荷役効率を維持している。しかし、荷役作業が進行するにつれて、原料に含まれる水分量が増加する。そのため、荷役開始から4時間目以降になると、ベルトコンベアの搬送速度を落として原料のスリップを防止しなければならなかった。その結果、荷役開始から完了までに32時間を要した。
【0026】
一方、実施例では、バケット洗浄を行わないのでバケット容量が減少し、荷役開始から1時間経過すると、荷役効率が徐々に低下しだした。このため、荷役を一旦停止し、原料表面に凹部を形成して原料に含まれる水分を船外に排出(5時間目と6時間目の間と11時間目と12時間目の間の計2回)した後、原料の荷役作業を再開した。これにより、高い荷役効率が維持され、荷役開始から18時間で荷役作業が完了した。なお、バケットに原料が一定量付着すると、それ以上バケットに原料が付着することはないため、バケット容量の減少が荷役効率に与える影響は限られている。
【0027】
図5は、実施例と比較例のそれぞれについて、移送した原料全量を荷役開始から完了までの荷役時間で除した平均荷役効率を棒グラフ化して示したものである。同図より、実施例のほうが比較例に比べて平均荷役効率が1.4倍以上大きくなっていることがわかる。即ち、本発明を実施することにより荷役効率の改善が図られていることがわかる。
【0028】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、バケット洗浄を併用しなかったが、併用しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
10:連続式アンローダ、11:筒形フレーム、12:コラム部材、13:無端チェーン、14:バケット、15:バケットコンベア、16:バケットエレベータ、17、18:スプロケット、19:掻取部、20:回転フィーダ、21:ブーム、22:ブームコンベア、23:バランシングビーム、24:旋回フレーム、25:支持リンク、26:斜材、27:起伏シリンダ、28:カウンタウェイト、29:走行フレーム、30:ホッパー、31、32、33:ベルトコンベア(原料搬送ライン)、34:レール、36:原料ヤード、37:スタッカー、40:岸壁、41:埠頭、42:船舶、43:船倉、45:凹部、S:原料(製鉄原料)、W:水(水分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船倉内の製鉄原料を連続式アンローダのバケットで掻き取って船外に移送する原料の荷役方法において、
積載された前記製鉄原料の表面部を前記バケットで掻き取って該製鉄原料の表面に凹部を形成する第1工程と、前記製鉄原料から浸み出す水分を前記凹部に溜める第2工程と、前記凹部に溜めた水を船外に放出する第3工程と、水分を放出した前記製鉄原料を前記バケットで掻き取って船外に移送する第4工程とを備えることを特徴とする連続式アンローダによる原料の荷役方法。
【請求項2】
請求項1記載の連続式アンローダによる原料の荷役方法において、前記凹部に溜めた水を前記バケットで掬い取って船外に放出することを特徴とする連続式アンローダによる原料の荷役方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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