連続式インクジェット記録ヘッド
【課題】液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが可能な連続式インクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】液体を液滴として吐出する吐出口13aと、吐出口13aに連通するノズル孔13bと、吐出口13aに近接するノズル孔13bの内壁にノズル孔13bの中心軸に関して対称に配置された一対のヒーター17、18とを有し、一対のヒーター17、18は、互いに同じ発熱量で同時に発熱してノズル孔13bの中心軸に関して対称な一対の気泡110、112を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱してノズル孔13bの中心軸に対して非対称な偏向用気泡116を生成し、一対の気泡110、112で液体を液滴としてノズル孔13bの軸方向に吐出させ、偏向用気泡116で液体を液滴として軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる。
【解決手段】液体を液滴として吐出する吐出口13aと、吐出口13aに連通するノズル孔13bと、吐出口13aに近接するノズル孔13bの内壁にノズル孔13bの中心軸に関して対称に配置された一対のヒーター17、18とを有し、一対のヒーター17、18は、互いに同じ発熱量で同時に発熱してノズル孔13bの中心軸に関して対称な一対の気泡110、112を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱してノズル孔13bの中心軸に対して非対称な偏向用気泡116を生成し、一対の気泡110、112で液体を液滴としてノズル孔13bの軸方向に吐出させ、偏向用気泡116で液体を液滴として軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から吐出される液滴の吐出方向を偏向する連続式インクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等の記録装置で採用されているインクジェット記録方法の一つに、コンティニュアス型インクジェット方式がある。コンティニュアス型インクジェット記録方式は、一般的に、加圧源と滴化手段により連続的に液滴を形成する。そして、記録に用いられる印字液滴は記録媒体へ向けて吐出され、記録に用いない非印字液滴は偏向手段により回収口に向けて吐出方向を偏向させることで画像形成が行われる。
【0003】
上述したようなコンティニュアス型インクジェット記録方式を採用した連続式インクジェット記録ヘッドが特許文献1に開示されている。この連続式インクジェット記録ヘッドでは、加圧手段により加圧されたインクがノズル孔を連続的に流れる。そして、連続的なインク流れにより形成されたインク液柱がノズル孔の一端に形成された吐出口から大気中に飛び出る。大気中に飛び出たインク液柱は、吐出口の外側にノズル孔の中心軸に対称に配置された1対のヒーターで加熱される。この加熱によって、インク液柱から複数の液滴が分離する。この連続式インクジェット記録ヘッドでは、非印字液滴が吐出される場合、インク流(ノズル孔の中心軸)に対して非対称にインク液柱が加熱される。非対称加熱によって、インク液柱の飛び出し方向が偏向され、その結果、このインク液柱から分離した複数の非印字液滴が回収口に向かって吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4128673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドでは、一対のヒーターが吐出口の外側(大気側)に配置され、吐出口から大気中に露出した液柱がこの一対のヒーターで加熱される。そのため、加熱してから液滴に分離するまでに時間差が生じ、その結果、インク液柱から吐出方向が同じ複数の液滴が一度に形成されている。したがって、特許文献1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドでは、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが可能な連続式インクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の連続式インクジェット記録ヘッドは、液体を液滴として吐出する吐出口と、該吐出口に連通するノズル孔と、前記吐出口に近接する前記ノズル孔の内壁に前記ノズル孔の中心軸に関して対称に配置された一対のヒーターと、を有し、前記一対のヒーターは、互いに同じ発熱量で同時に発熱して前記中心軸に関して対称な一対の気泡を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱して前記中心軸に関して非対称な偏向用気泡を生成し、前記一対の気泡で液体を液滴として前記ノズル孔の軸方向に吐出させ、前記偏向用気泡で液体を液滴として前記軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出口に近接するノズル孔の内壁に配置された一対のヒーターの間を、1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体が通過した直後に、一対の気泡、または偏向用気泡のいずれかが生成される。そして、一対の気泡および偏向用気泡によって、1滴分の液体が1つの液滴として形成されると同時に、形成された液滴の吐出方向がノズル孔の軸方向または軸方向から偏向した偏向方向のいずれかに制御される。このように吐出方向が互いに異なる液滴を1滴毎に形成できるので、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図である。
【図2】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドの吐出ヘッドを吐出口側から見た平面図である。
【図3】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドの回収ユニットの構成を示す平面図である。
【図4】図1に記載の切断線B−Bに沿った断面の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドのノズル孔を詳細に示した図である。
【図6】実施形態1における液滴の形成と形成した液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。
【図7】実施形態1において各ヒーターに与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。
【図8】実施形態1において各ヒーターの発熱により生成する気泡の圧力と体積の変化を示す線図である。
【図9】本発明の連続式インクジェット記録ヘッドが取り付けられているインクジェットプリンターの制御構成の一例を示すブロック図である。
【図10】実施形態1におけるヒーターの他の配置構成を示す図である。
【図11】実施形態2における液滴の形成と液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。
【図12】吐出量が比較的大きな液滴の形成及び吐出方向の偏向を、実施形態1に記載の方法で行ったときの液滴の吐出状態を示す断面図である。
【図13】実施形態3の連続式インクジェット記録ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
【図14】実施形態3において各ヒーターに与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。
【図15】本発明の第三の実施例における印字液滴形成時と非印字液滴形成時の、吐出ノズルの液滴形成と吐出方向制御を示した吐出口断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図である。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、ライン型記録方式である。ライン型記録方式とは、記録媒体の全幅に渡って複数の吐出口が形成されたインクジェット記録ヘッドを固定し、インクジェット記録ヘッドの直下を記録媒体が移動することで印刷を行なう記録方法である。
【0011】
本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、図1に示すように、吐出ヘッド1と、回収ユニット2と、を有する。吐出ヘッド1では、インクジェットプリンター本体のインク供給装置(不図示)に貯蔵されている液体であるインクを加圧ポンプ47(図9参照)で加圧することで、インクが、インク流入口11を経て共通液室16(図4参照)へ供給される。加圧時の圧力値としてはゲージ圧で数MPa程度である。共通液室16の下部には、インクを吐出するための複数の吐出口13a(図2参照)が形成されている。
【0012】
図2は、吐出ヘッド1を吐出口側から見た(図1のZ方向から見た)平面図である。図2に示すように、複数の吐出口13aは吐出ノズルプレート15に形成されている。吐出ノズルプレート15において、複数の吐出口13aは分割ノズル列14として配列されている。分割ノズル列14では、互いに隣接する吐出口13aが角度θの方向に斜めに配置され、X方向(記録媒体の搬送方向)における距離M(図2参照)が、プリンター出力解像度分の距離になっている。
【0013】
図3は、回収ユニット2の構成を示す平面図である。回収ユニット2では、吐出ヘッド1の分割ノズル列14に対向して回収スリット24が形成されている。さらに、吐出口13aから吐出方向が偏向して吐出した液滴が回収スリット24の内壁に衝突する位置に回収口25が各吐出ノズルに対応して形成されている(図4参照)。回収口25の下流側には、回収支流路22が形成されている。回収支流路22の下流側には、回収支流路22が合流する回収本流路23が配置されている。回収本流路23の下流側には、回収流出口21が形成されている。回収流出口21は、回収装置3の回収流路32により回収タンク31まで接続され、その途中には回収口25を減圧するための回収ポンプ33が配置されている。回収口25に回収された非印字液滴(回収液滴)は回収ポンプ33により回収支流路22を通過し、回収タンク31へ移動する。回収タンク31に集められた非印字液滴は、再度吐出ヘッド1へ供給され再利用される構成をとるが、その他の構成であっても構わない。
【0014】
図4は、図1に記載の切断線B−Bに沿った断面の一部を拡大して示す断面図である。図4は、吐出口13aの周辺を拡大して示している。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドでは、印刷動作時、吐出ヘッド1の共通液室16に供給されたインクは加圧ポンプ47により数MPa程度(ゲージ圧)の圧力が与えられる。これにより、インクは、共通液室16に連通するノズル孔13bを連続して流れる。ノズル孔13bを連続して流れるインクは、ノズル孔13bの一端に形成された吐出口13aから液滴として大気に吐出する。ノズル孔13bの内壁における吐出口13aに近接する位置には、各々が個別に発熱可能な一対のヒーター17、18がノズル孔13bの中心軸に関して対称に配置されている。一対のヒーター17、18に通電するための電気配線(不図示)は、吐出ノズルプレート15の表面に形成されている。本実施形態では、ヒーター17とヒーター18の2つのヒーターの発熱量を制御することにより、吐出口13aから吐出する液滴の形成と、形成された液滴の吐出方向を1滴毎に制御する。なお、本実施形態では、印字液滴の吐出方向を、ノズル孔13bの軸方向にすることで、印字液滴は吐出ヘッド1の直下に位置する記録媒体に到達する。一方、非印字液滴は、ノズル13bの軸方向から偏向した偏向方向への吐出により回収ユニット2の回収口25に到達する。
【0015】
図5は、ノズル孔13bを拡大して示す図である。図5(a)は断面図であり、図5(b)は、ノズル孔13bを吐出口13a側から見た平面図である。本発明では、吐出口13aの寸法や、ヒーター17、18の寸法および位置などは、吐出される液滴の液量(体積)、印字速度などにより異なる。本実施形態において、吐出口13aは正方形であり、その1辺の長さm、nは8μmである。また、ヒーター17、18の辺長p、qは4μmである。また、吐出口13a(吐出ノズル面132)と、ヒーター17、18の吐出口側の端面との距離r(図5(a)参照)は2μmである。なお、本発明では、距離rは、吐出口13aの1辺の長さ以内であることが好ましいが、上記以外の寸法であってもよい。
【0016】
本実施形態で用いられるインクは、一対のヒーター17、18による瞬時の発熱により膜沸騰が発生するインクである。代表的なインク成分としてはイオン交換水、グリセリン、ポリエチレングリコール、色剤等から成る水系インクが好ましい。また、インクの粘度の範囲は、0.002Pa・sから0.05Pa・sまでであることが好ましい。
【0017】
図9は、本発明の連続式インクジェット記録ヘッドが取り付けられているインクジェットプリンターの制御構成の一例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)43は、図9に示す各構成要素の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM(Read Only Memory)41には、CPU43の処理手順等が格納されている。さらに、ROM41には、ヒーター17、18、および加圧ポンプ47などを駆動するためのデータが格納されている。また、RAM(Random Access Memory)42は、CPU43が上記処理を実行するためのワークエリアとして用いられる。
【0018】
本実施形態では、CPU43が加圧ポンプ47を作動させるためにモータドライバ45に制御信号を送ることで、インクがノズル孔13bを連続して流れる。次に、画像形成のための印刷データに基づき、ヒーター17、ヒーター18を駆動するための制御信号をCPU43がヘッドドライバ48に送る。ヘッドドライバ48は、この制御信号に基づいてノズル13bを流れるインクから分離した液滴を形成すると共に形成した液滴の吐出方向を制御する。これにより、記録媒体への印字が実行される。また、CPU43は、記録媒体を搬送するための搬送ベルト46を駆動するための制御信号をモータドライバ44に送信することで、記録媒体の搬送も行なわれる。
【0019】
図6は、本実施形態における液滴の形成と形成された液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。図6(a)から図6(g)は、印字液滴の形成を示している。図6(h)から図6(l)は非印字液滴の形成を示している。また、図7は、本実施形態においてヒーター17、18に与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。図7(a)はヒーター17に与えられる駆動パルスを示し、図7(b)はヒーター18に与えられる駆動パルスを示している。
【0020】
本実施形態では、加圧ポンプ47でインクを加圧すると、図6(b)に示すように各吐出口13aから連続的にインクが大気に露出する。そして、1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体19がヒーター17、18の間を通過した直後に、ヒーター17とヒーター18に同一波形の駆動パルスQ1が同時に与えられる。
【0021】
駆動パルスQ1が同時に与えられることにより、ヒーター17、18は同じ発熱量で同時に発熱し、1滴分の液体19に後続するインクを加熱し始める。加熱が開始(図7の時間T0参照)してから0.5μs後(図7の時間T1)に加熱されたインクが発泡し始め、その後0.2μs間発泡状態が続く。これにより、1滴分の液体19の後端部に続く1対の気泡110、111が生成される。1対の気泡110、111はノズル孔13bの中心軸に対して対称な形状になるように形成されている。そのため、1対の気泡110、111が吐出口13aから大気中に出た際、ノズル孔13の中心軸を挟んで互いに反対方向(X方向、−X方向)で大きさが同じ2つの外力が1滴分の液体19の後端部に加えられる。これにより、1滴分の液体19が、1つの液滴19として形成され、ノズル孔13bの軸方向に吐出される(図6(a)〜(g)参照)。この液滴19は、印字液滴として記録媒体に到達する。
【0022】
図8は1対の気泡110、111の各々の内圧と体積の変化を示したグラフである。加圧ポンプ47によりノズル孔13bを流れるインクには数MPaの圧力が与えられている。しかし、ヒーター17、18は吐出口13aに近接したノズル孔13bの内壁に配置されているため、発泡直前の圧力は大気圧よりも若干高い圧力(図8の圧力P0参照)である。その後、発泡が開始した時(図8の時間T1)に気泡110、112内は数十MPa以上の圧力P1が瞬時に発生すると共に、体積が大きくなる。しかし、気泡110、111は、常時加圧ポンプ47により与えられたインクの流れにより吐出口13aの外側に流され大気と連通する。そのため、気泡内圧力は大気圧まで下がってしまう(図7、図8の時間T2参照)。その後、ヒーター17、18には、駆動パルスが図7に示す時間T3まで与えられる。時間T1から時間T2までの時間に発生する気泡内圧力(最大圧力値P1)により1滴分の液体19の後端部に尾引き部112が形成され、その後1滴分の液体19は後続のインクから完全に分離する。
【0023】
続いて、共通液室16内のインクに対して連続的に与えられている圧力により、1滴分の液体113がヒーター17、18の間を通過した直後に、今度はヒーター17のみに一定の駆動パルスQ2が与えられる。すると、ヒーター17の発熱が開始(図7の時間T4)してから0.5μs後(図7の時間T5)に発泡が開始し、その後0.2μs間発泡状態が続く。このとき駆動パルスのQ2の電圧値(ヒーター17に印加される電圧値)は、駆動パルスQ1の電圧値よりも大きい値とする。このようにして生成した偏向用気泡116は、ノズル孔13bの中心軸に関して非対称な形状であるため、1滴分の液体113の後端部に対してノズル孔13bの軸方向に垂直な一方向(図6の−X方向)の外力が加えられる。これにより、1滴分の液体113の後端部が−X方向に変形され液滴変形部114が形成される。また、偏向用気泡116は、加圧ポンプ47の連続的な加圧によりインクと共にノズル孔13bを流れ、大気と連通する(図6(i)、図7の時間T6参照)。このとき、液滴変形部114の後端部に尾引き部115が形成される。外力に対する拘束が少ない大気に放出された液滴113に対し、吐出口13a近傍のヒーター17での非対称発泡による外力を与えることで、1滴分の液体113の後端部に形成された液滴変形部114が−X方向に変形し易くなる。さらにその後、液滴変形部114が1滴分の液体113全体の−X方向への偏向につながる(図6(k)参照)。そして、尾引き部115が千切れることで、1滴分の液体113が1つの液滴として形成されるとともに、形成された液滴が偏向方向に非印字液滴として吐出される。
【0024】
上述した構成の連続式インクジェット記録ヘッドにおいて、ノズル孔13bを流れるインクに与える加圧値を1MPa(ゲージ圧)とし、粘度が0.02Pa・Sのインクを使用して実験した。その結果、吐出口13aから体積が1pl(ピコリットル)、液滴速度が10m/sの印字液滴および非印字液滴が100kHzで形成できた。また、非印字液滴が、ノズル孔13bの中心軸に対して約2.5°偏向した方向に吐出することを確認できた。また、実験の結果、ヒーター17、18が吐出口13aに近接して配置するほど液滴の吐出方向をより大きく偏向できることを確認できた。具体的には、ヒーター17、18は、上述した距離r(図5(a)参照)が5μm以内になるように配置することがより好ましい。
【0025】
また、本実施形態における液滴形成および吐出方向制御方式は、液滴吐出方向の偏向量が大きく曲げられ、さらにコンティニュアス型の印刷方式として数十kHz以上の高速印字に対応できることが必要である。さらに、ヒーター17、18の発泡によるインクの耐久性なども総合的に考えると、吐出口13aは、1辺の長さが10μm以内の矩形であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態では、非印字液滴の吐出方向を偏向するために、ヒーター17のみを駆動して非対称発泡を発生させているが、非対称発泡を形成するためのその他の駆動制御方法でもよい。例えば、ヒーター17とヒーター18を互いに異なる発熱量で同時に発熱することでノズル孔13bに非対称発泡を発生させてもよい。
【0027】
さらに本実施形態の液滴偏向制御手段を、印字液滴の記録紙への着弾位置補正として利用しても構わない(図4の2つの加熱ヒーターではX方向の着弾位置補正が行なわれる構成である)。
【0028】
図10は、本実施形態におけるヒーターの他の配置構成を示す図である。図10(a)はノズル孔13bの断面図であり、図10(b)はノズル孔13bを吐出口13a側から見た平面図である。
【0029】
本実施形態では、図5に示すように、ノズル孔13bの中心軸に対してX方向に対称に一対のヒーター17、18が配置されている。しかし、本発明では、ヒーターの配置構成は、これに限定されない。ヒーターの配置構成は、図10に示すように、X方向だけでなくY方向(記録媒体の幅方向)にもノズル孔13bの中心軸に対して対称に一対のヒーター117、118を設けてもよい。この配置構成によれば、ノズル孔13bの内壁に4つのヒーターを設け、発熱量を制御することで、印字液滴の記録媒体への着弾位置補正を記録媒体の搬送方向(X方向)だけでなく、吐出口13aの配列方向(Y方向)にも補正可能となる。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドについて説明する。なお、ここでは、実施形態1で説明した連続式インクジェット記録ヘッドと異なる構成について詳細に説明し、同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0031】
図11は、本実施形態における液滴の形成と液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。なお、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、吐出量が比較的大きい液滴、具体的には吐出量が4pl(ピコリットル)以上の液滴の形成と吐出方向の偏向について実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドに比べ有効である。
【0032】
図12は、吐出量が比較的大きな液滴の形成および吐出方向の偏向を、実施形態1に記載の方法で行ったときの液滴の吐出状態を示す断面図である。図12(a)は、断面積が比較的狭いノズル孔で形成された液滴の吐出状態を示す。図12(b)は、12(a)に記載のノズル孔の断面積に比べて断面積が広いノズル孔で形成された液滴の吐出状態を示す。
【0033】
図12(a)に示すように、ノズル孔の一端に設けられた辺長mの吐出口から1滴分のインク128が大気に露出したとき、インク128の形状は吐出方向に細長く伸びた状態になる。このとき、ヒーター17のみが発熱することによってインク128の後端部に連続する気泡129が生成される。しかし、この場合、インク128の液滴形成は行なえても、吐出方向まで大きく変えることは困難である。一方、図12(b)に示すように、ノズル孔の一端に設けられた辺長mよりも長い辺長sの吐出口からインク128と同じ液量のインク131が大気に露出したとき、インク131の全長をインク128の全長よりも短くできる。しかし、液滴を形成して吐出方向を偏向するためには気泡130の体積を気泡129の体積よりも大きくする必要がある。この気泡130を発泡させるためには時間がかかってしまう。よって、ある一定以上の液量の液滴形成ならびに吐出方向制御と、高速印字化を同時に行なうことは、実施形態1で説明したようなヒーター制御では困難である。
【0034】
そこで、図11に示す本実施形態のヒーターの制御方法では、1つの液滴127(図11(j)参照)の液量に相当するインクがヒーター17とヒーター18との間を通過する途中で、非対称発泡を数回行なう。
【0035】
本実施形態では、図11(d)に示すように、液滴127の半分の液量に相当する液体119がヒーター17、18の間を通過した時にヒーター17が発熱することによって、気泡120が生成される。その後、気泡120が吐出口13aから大気中に出たときに液滴変形部121が形成される(図11(e)参照)。ただし、気泡120は液体119が液滴として分離されないように生成される。気泡120により吐出口13aから大気に出た液体119は、ノズル孔13bの軸方向に垂直な方向(−X方向)に吐出方向が偏向される(図11(f)参照)。続いて、液滴127の残りの半分の液量に相当する液体124がヒーター17、18の間を通過した時に、ヒーター17が発熱することによって、偏向用気泡123が生成される。偏向用気泡123は、液体119と液体124とで構成された液滴127を形成して吐出方向を偏向するため、気泡120よりも体積が大きくなければならない。そのため、偏向用気泡123を生成するためにヒーター17に印加される電圧値は、気泡120を生成するためにヒーター17に印加される電圧値よりも大きくなる。このようにして生成した偏向用気泡123が吐出口13aから大気中に出た際に、液体124の後端部に液滴変形部125が形成されながら液体124の飛出し方向が−X方向に偏向される。そして、液滴変形部125の後端部に尾引き部126が形成される(図11(g)参照)。その後、液体119と液体124は、1つの液滴にまとまりながら尾引き部126で千切れる。これにより、液滴127が形成されると同時に、液滴127の吐出方向も偏向させることが可能となる。
【0036】
本実施形態では、偏向用気泡123を生成する前に、偏向用気泡123よりも体積が小さな気泡120が生成され、この気泡120により液滴127の吐出方向が偏向方向に誘導される。そのため、特に液量の多い液滴の吐出方向の偏向も容易に行なうことが可能となる。
【0037】
(実施形態3)
本実施形態のインクジェット記録ヘッドについて説明する。なお、ここでは、実施形態1で説明した連続式インクジェット記録ヘッドと異なる構成について詳細に説明し、同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0038】
図13は、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドの要部の構成を示す断面図である。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、回収口25の配置位置が実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドと異なる。本実施形態において回収口25は、ノズル孔13bの中心軸の直下に配置されている。すなわち、吐出口13aから偏向されずに(ノズル孔13bの軸方向に)吐出した非印字液滴143が、回収口25に到達できるように、回収口25が配置されている。また、図13に示すように回収口25よりもX方向側には回収スリット24が形成されている。この回収スリット24を通過して、吐出口13aから偏向方向に吐出した印字液滴140が記録媒体まで到達する。
【0039】
図14は、本実施形態においてヒーター17とヒーター18に与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。また、図15は、本実施形態において液滴が形成される状態を示す断面図である。図15(a)は、印字液滴が形成される状態を示し、図15(b)は、非印字液滴が形成される状態を示す。
【0040】
本実施形態では、印字液滴が記録媒体へ到達するためには、印字液滴が回収スリット24を通過する必要がある。よって印字液滴の吐出方向をX方向に偏向させる必要がある。
【0041】
そこで、本実施形態では、加圧ポンプ47により吐出口13aから1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体140がヒーター18を通過した直後(図14の時間T1)に、ヒーター18に駆動パルスQ1を与える。これにより偏向用気泡148が生成する。その後、偏向用気泡148が吐出口13aから大気中に出たときに、液体140の後端部にX方向の外力が加えられる。この外力により、液体140は、吐出方向がX方向に偏向されるとともに、印字液滴140として記録媒体へ到達する。
【0042】
印字液滴140に後続して吐出される印字液滴141、印字液滴142も、駆動パルスQ1と同様の駆動パルスQ2,Q3が与えられることによって、吐出方向が偏向される。
【0043】
一方、非印字液滴143は、非印字液滴143の直前に形成された印字液滴142から非印字液滴143の直後に吐出される印字液滴145が形成されるまで連続した非印字画素数分の液量のインクを細かく滴化させることなく1つの大きな液滴としたものである。よって、非印字液滴143は、画像パターンにより大きさが異なる。本実施形態では、印字液滴142の次に吐出される非印字液滴143は、3画素分の非印字液滴が1つの大きな液滴として吐出されるものとする。
【0044】
図13の非印字液滴143の液量に相当する液体がヒーター17、18を通過した直後(図14のT8とT9の間)、ヒーター17に駆動パルスQ41を与えると同時にヒーター18に駆動パルスQ42を与える。非印字液滴143は、ノズル孔13bの軸方向の直下に配置された回収口25に向けて真直ぐ吐出させる必要があるため、対称発泡させることが好ましい。よってヒーター17とヒーター18に与える駆動パルスQ41、Q42は同一の波形とする。ヒーター17、18に駆動パルスQ41、Q42を同時に与えることで、図15(b)に示すように一対の気泡150、151が生成する。この一対の気泡150、151が吐出口13aから大気中に出たときに非印字液滴143の後端部に尾引き部152が形成される。尾引き部152は時間経過と共に千切れることで、非印字液滴143は、回収口25に向かって吐出する。回収口25に到達した非印字液滴143は、回収ユニット2で回収される。
【0045】
本実施形態では、印字液滴の吐出方向が偏向され、非印字液滴の吐出方向は偏向されない。また、非印字液滴は印字液滴のように小さく液滴形成することをせずに、一定量にまとまった大きな液滴として形成される。連続式インクジェット記録ヘッドは、一般的に、単位時間当たりに非印字液滴の吐出が占める割合が、印字液滴の吐出が占める割合に比べ圧倒的に多い。実施形態1、2では、印字液滴と同様の体積の非印字液滴を形成していたが、本実施形態では、印字液滴よりも体積の大きな非印字液滴を形成している。そのため、実施形態1、2に比べヒーター17、18の発熱回数が低減する。これにより、ヒーター17、18の寿命を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
13a 吐出口
13b ノズル孔
17、18 ヒーター
110、112 気泡
116 偏向用気泡
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から吐出される液滴の吐出方向を偏向する連続式インクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター等の記録装置で採用されているインクジェット記録方法の一つに、コンティニュアス型インクジェット方式がある。コンティニュアス型インクジェット記録方式は、一般的に、加圧源と滴化手段により連続的に液滴を形成する。そして、記録に用いられる印字液滴は記録媒体へ向けて吐出され、記録に用いない非印字液滴は偏向手段により回収口に向けて吐出方向を偏向させることで画像形成が行われる。
【0003】
上述したようなコンティニュアス型インクジェット記録方式を採用した連続式インクジェット記録ヘッドが特許文献1に開示されている。この連続式インクジェット記録ヘッドでは、加圧手段により加圧されたインクがノズル孔を連続的に流れる。そして、連続的なインク流れにより形成されたインク液柱がノズル孔の一端に形成された吐出口から大気中に飛び出る。大気中に飛び出たインク液柱は、吐出口の外側にノズル孔の中心軸に対称に配置された1対のヒーターで加熱される。この加熱によって、インク液柱から複数の液滴が分離する。この連続式インクジェット記録ヘッドでは、非印字液滴が吐出される場合、インク流(ノズル孔の中心軸)に対して非対称にインク液柱が加熱される。非対称加熱によって、インク液柱の飛び出し方向が偏向され、その結果、このインク液柱から分離した複数の非印字液滴が回収口に向かって吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4128673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドでは、一対のヒーターが吐出口の外側(大気側)に配置され、吐出口から大気中に露出した液柱がこの一対のヒーターで加熱される。そのため、加熱してから液滴に分離するまでに時間差が生じ、その結果、インク液柱から吐出方向が同じ複数の液滴が一度に形成されている。したがって、特許文献1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドでは、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが可能な連続式インクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の連続式インクジェット記録ヘッドは、液体を液滴として吐出する吐出口と、該吐出口に連通するノズル孔と、前記吐出口に近接する前記ノズル孔の内壁に前記ノズル孔の中心軸に関して対称に配置された一対のヒーターと、を有し、前記一対のヒーターは、互いに同じ発熱量で同時に発熱して前記中心軸に関して対称な一対の気泡を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱して前記中心軸に関して非対称な偏向用気泡を生成し、前記一対の気泡で液体を液滴として前記ノズル孔の軸方向に吐出させ、前記偏向用気泡で液体を液滴として前記軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出口に近接するノズル孔の内壁に配置された一対のヒーターの間を、1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体が通過した直後に、一対の気泡、または偏向用気泡のいずれかが生成される。そして、一対の気泡および偏向用気泡によって、1滴分の液体が1つの液滴として形成されると同時に、形成された液滴の吐出方向がノズル孔の軸方向または軸方向から偏向した偏向方向のいずれかに制御される。このように吐出方向が互いに異なる液滴を1滴毎に形成できるので、液滴の吐出方向を1滴毎に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図である。
【図2】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドの吐出ヘッドを吐出口側から見た平面図である。
【図3】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドの回収ユニットの構成を示す平面図である。
【図4】図1に記載の切断線B−Bに沿った断面の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図1に記載の連続式インクジェット記録ヘッドのノズル孔を詳細に示した図である。
【図6】実施形態1における液滴の形成と形成した液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。
【図7】実施形態1において各ヒーターに与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。
【図8】実施形態1において各ヒーターの発熱により生成する気泡の圧力と体積の変化を示す線図である。
【図9】本発明の連続式インクジェット記録ヘッドが取り付けられているインクジェットプリンターの制御構成の一例を示すブロック図である。
【図10】実施形態1におけるヒーターの他の配置構成を示す図である。
【図11】実施形態2における液滴の形成と液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。
【図12】吐出量が比較的大きな液滴の形成及び吐出方向の偏向を、実施形態1に記載の方法で行ったときの液滴の吐出状態を示す断面図である。
【図13】実施形態3の連続式インクジェット記録ヘッドの要部の構成を示す断面図である。
【図14】実施形態3において各ヒーターに与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。
【図15】本発明の第三の実施例における印字液滴形成時と非印字液滴形成時の、吐出ノズルの液滴形成と吐出方向制御を示した吐出口断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドの全体を示す斜視図である。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、ライン型記録方式である。ライン型記録方式とは、記録媒体の全幅に渡って複数の吐出口が形成されたインクジェット記録ヘッドを固定し、インクジェット記録ヘッドの直下を記録媒体が移動することで印刷を行なう記録方法である。
【0011】
本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、図1に示すように、吐出ヘッド1と、回収ユニット2と、を有する。吐出ヘッド1では、インクジェットプリンター本体のインク供給装置(不図示)に貯蔵されている液体であるインクを加圧ポンプ47(図9参照)で加圧することで、インクが、インク流入口11を経て共通液室16(図4参照)へ供給される。加圧時の圧力値としてはゲージ圧で数MPa程度である。共通液室16の下部には、インクを吐出するための複数の吐出口13a(図2参照)が形成されている。
【0012】
図2は、吐出ヘッド1を吐出口側から見た(図1のZ方向から見た)平面図である。図2に示すように、複数の吐出口13aは吐出ノズルプレート15に形成されている。吐出ノズルプレート15において、複数の吐出口13aは分割ノズル列14として配列されている。分割ノズル列14では、互いに隣接する吐出口13aが角度θの方向に斜めに配置され、X方向(記録媒体の搬送方向)における距離M(図2参照)が、プリンター出力解像度分の距離になっている。
【0013】
図3は、回収ユニット2の構成を示す平面図である。回収ユニット2では、吐出ヘッド1の分割ノズル列14に対向して回収スリット24が形成されている。さらに、吐出口13aから吐出方向が偏向して吐出した液滴が回収スリット24の内壁に衝突する位置に回収口25が各吐出ノズルに対応して形成されている(図4参照)。回収口25の下流側には、回収支流路22が形成されている。回収支流路22の下流側には、回収支流路22が合流する回収本流路23が配置されている。回収本流路23の下流側には、回収流出口21が形成されている。回収流出口21は、回収装置3の回収流路32により回収タンク31まで接続され、その途中には回収口25を減圧するための回収ポンプ33が配置されている。回収口25に回収された非印字液滴(回収液滴)は回収ポンプ33により回収支流路22を通過し、回収タンク31へ移動する。回収タンク31に集められた非印字液滴は、再度吐出ヘッド1へ供給され再利用される構成をとるが、その他の構成であっても構わない。
【0014】
図4は、図1に記載の切断線B−Bに沿った断面の一部を拡大して示す断面図である。図4は、吐出口13aの周辺を拡大して示している。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドでは、印刷動作時、吐出ヘッド1の共通液室16に供給されたインクは加圧ポンプ47により数MPa程度(ゲージ圧)の圧力が与えられる。これにより、インクは、共通液室16に連通するノズル孔13bを連続して流れる。ノズル孔13bを連続して流れるインクは、ノズル孔13bの一端に形成された吐出口13aから液滴として大気に吐出する。ノズル孔13bの内壁における吐出口13aに近接する位置には、各々が個別に発熱可能な一対のヒーター17、18がノズル孔13bの中心軸に関して対称に配置されている。一対のヒーター17、18に通電するための電気配線(不図示)は、吐出ノズルプレート15の表面に形成されている。本実施形態では、ヒーター17とヒーター18の2つのヒーターの発熱量を制御することにより、吐出口13aから吐出する液滴の形成と、形成された液滴の吐出方向を1滴毎に制御する。なお、本実施形態では、印字液滴の吐出方向を、ノズル孔13bの軸方向にすることで、印字液滴は吐出ヘッド1の直下に位置する記録媒体に到達する。一方、非印字液滴は、ノズル13bの軸方向から偏向した偏向方向への吐出により回収ユニット2の回収口25に到達する。
【0015】
図5は、ノズル孔13bを拡大して示す図である。図5(a)は断面図であり、図5(b)は、ノズル孔13bを吐出口13a側から見た平面図である。本発明では、吐出口13aの寸法や、ヒーター17、18の寸法および位置などは、吐出される液滴の液量(体積)、印字速度などにより異なる。本実施形態において、吐出口13aは正方形であり、その1辺の長さm、nは8μmである。また、ヒーター17、18の辺長p、qは4μmである。また、吐出口13a(吐出ノズル面132)と、ヒーター17、18の吐出口側の端面との距離r(図5(a)参照)は2μmである。なお、本発明では、距離rは、吐出口13aの1辺の長さ以内であることが好ましいが、上記以外の寸法であってもよい。
【0016】
本実施形態で用いられるインクは、一対のヒーター17、18による瞬時の発熱により膜沸騰が発生するインクである。代表的なインク成分としてはイオン交換水、グリセリン、ポリエチレングリコール、色剤等から成る水系インクが好ましい。また、インクの粘度の範囲は、0.002Pa・sから0.05Pa・sまでであることが好ましい。
【0017】
図9は、本発明の連続式インクジェット記録ヘッドが取り付けられているインクジェットプリンターの制御構成の一例を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)43は、図9に示す各構成要素の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM(Read Only Memory)41には、CPU43の処理手順等が格納されている。さらに、ROM41には、ヒーター17、18、および加圧ポンプ47などを駆動するためのデータが格納されている。また、RAM(Random Access Memory)42は、CPU43が上記処理を実行するためのワークエリアとして用いられる。
【0018】
本実施形態では、CPU43が加圧ポンプ47を作動させるためにモータドライバ45に制御信号を送ることで、インクがノズル孔13bを連続して流れる。次に、画像形成のための印刷データに基づき、ヒーター17、ヒーター18を駆動するための制御信号をCPU43がヘッドドライバ48に送る。ヘッドドライバ48は、この制御信号に基づいてノズル13bを流れるインクから分離した液滴を形成すると共に形成した液滴の吐出方向を制御する。これにより、記録媒体への印字が実行される。また、CPU43は、記録媒体を搬送するための搬送ベルト46を駆動するための制御信号をモータドライバ44に送信することで、記録媒体の搬送も行なわれる。
【0019】
図6は、本実施形態における液滴の形成と形成された液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。図6(a)から図6(g)は、印字液滴の形成を示している。図6(h)から図6(l)は非印字液滴の形成を示している。また、図7は、本実施形態においてヒーター17、18に与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。図7(a)はヒーター17に与えられる駆動パルスを示し、図7(b)はヒーター18に与えられる駆動パルスを示している。
【0020】
本実施形態では、加圧ポンプ47でインクを加圧すると、図6(b)に示すように各吐出口13aから連続的にインクが大気に露出する。そして、1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体19がヒーター17、18の間を通過した直後に、ヒーター17とヒーター18に同一波形の駆動パルスQ1が同時に与えられる。
【0021】
駆動パルスQ1が同時に与えられることにより、ヒーター17、18は同じ発熱量で同時に発熱し、1滴分の液体19に後続するインクを加熱し始める。加熱が開始(図7の時間T0参照)してから0.5μs後(図7の時間T1)に加熱されたインクが発泡し始め、その後0.2μs間発泡状態が続く。これにより、1滴分の液体19の後端部に続く1対の気泡110、111が生成される。1対の気泡110、111はノズル孔13bの中心軸に対して対称な形状になるように形成されている。そのため、1対の気泡110、111が吐出口13aから大気中に出た際、ノズル孔13の中心軸を挟んで互いに反対方向(X方向、−X方向)で大きさが同じ2つの外力が1滴分の液体19の後端部に加えられる。これにより、1滴分の液体19が、1つの液滴19として形成され、ノズル孔13bの軸方向に吐出される(図6(a)〜(g)参照)。この液滴19は、印字液滴として記録媒体に到達する。
【0022】
図8は1対の気泡110、111の各々の内圧と体積の変化を示したグラフである。加圧ポンプ47によりノズル孔13bを流れるインクには数MPaの圧力が与えられている。しかし、ヒーター17、18は吐出口13aに近接したノズル孔13bの内壁に配置されているため、発泡直前の圧力は大気圧よりも若干高い圧力(図8の圧力P0参照)である。その後、発泡が開始した時(図8の時間T1)に気泡110、112内は数十MPa以上の圧力P1が瞬時に発生すると共に、体積が大きくなる。しかし、気泡110、111は、常時加圧ポンプ47により与えられたインクの流れにより吐出口13aの外側に流され大気と連通する。そのため、気泡内圧力は大気圧まで下がってしまう(図7、図8の時間T2参照)。その後、ヒーター17、18には、駆動パルスが図7に示す時間T3まで与えられる。時間T1から時間T2までの時間に発生する気泡内圧力(最大圧力値P1)により1滴分の液体19の後端部に尾引き部112が形成され、その後1滴分の液体19は後続のインクから完全に分離する。
【0023】
続いて、共通液室16内のインクに対して連続的に与えられている圧力により、1滴分の液体113がヒーター17、18の間を通過した直後に、今度はヒーター17のみに一定の駆動パルスQ2が与えられる。すると、ヒーター17の発熱が開始(図7の時間T4)してから0.5μs後(図7の時間T5)に発泡が開始し、その後0.2μs間発泡状態が続く。このとき駆動パルスのQ2の電圧値(ヒーター17に印加される電圧値)は、駆動パルスQ1の電圧値よりも大きい値とする。このようにして生成した偏向用気泡116は、ノズル孔13bの中心軸に関して非対称な形状であるため、1滴分の液体113の後端部に対してノズル孔13bの軸方向に垂直な一方向(図6の−X方向)の外力が加えられる。これにより、1滴分の液体113の後端部が−X方向に変形され液滴変形部114が形成される。また、偏向用気泡116は、加圧ポンプ47の連続的な加圧によりインクと共にノズル孔13bを流れ、大気と連通する(図6(i)、図7の時間T6参照)。このとき、液滴変形部114の後端部に尾引き部115が形成される。外力に対する拘束が少ない大気に放出された液滴113に対し、吐出口13a近傍のヒーター17での非対称発泡による外力を与えることで、1滴分の液体113の後端部に形成された液滴変形部114が−X方向に変形し易くなる。さらにその後、液滴変形部114が1滴分の液体113全体の−X方向への偏向につながる(図6(k)参照)。そして、尾引き部115が千切れることで、1滴分の液体113が1つの液滴として形成されるとともに、形成された液滴が偏向方向に非印字液滴として吐出される。
【0024】
上述した構成の連続式インクジェット記録ヘッドにおいて、ノズル孔13bを流れるインクに与える加圧値を1MPa(ゲージ圧)とし、粘度が0.02Pa・Sのインクを使用して実験した。その結果、吐出口13aから体積が1pl(ピコリットル)、液滴速度が10m/sの印字液滴および非印字液滴が100kHzで形成できた。また、非印字液滴が、ノズル孔13bの中心軸に対して約2.5°偏向した方向に吐出することを確認できた。また、実験の結果、ヒーター17、18が吐出口13aに近接して配置するほど液滴の吐出方向をより大きく偏向できることを確認できた。具体的には、ヒーター17、18は、上述した距離r(図5(a)参照)が5μm以内になるように配置することがより好ましい。
【0025】
また、本実施形態における液滴形成および吐出方向制御方式は、液滴吐出方向の偏向量が大きく曲げられ、さらにコンティニュアス型の印刷方式として数十kHz以上の高速印字に対応できることが必要である。さらに、ヒーター17、18の発泡によるインクの耐久性なども総合的に考えると、吐出口13aは、1辺の長さが10μm以内の矩形であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態では、非印字液滴の吐出方向を偏向するために、ヒーター17のみを駆動して非対称発泡を発生させているが、非対称発泡を形成するためのその他の駆動制御方法でもよい。例えば、ヒーター17とヒーター18を互いに異なる発熱量で同時に発熱することでノズル孔13bに非対称発泡を発生させてもよい。
【0027】
さらに本実施形態の液滴偏向制御手段を、印字液滴の記録紙への着弾位置補正として利用しても構わない(図4の2つの加熱ヒーターではX方向の着弾位置補正が行なわれる構成である)。
【0028】
図10は、本実施形態におけるヒーターの他の配置構成を示す図である。図10(a)はノズル孔13bの断面図であり、図10(b)はノズル孔13bを吐出口13a側から見た平面図である。
【0029】
本実施形態では、図5に示すように、ノズル孔13bの中心軸に対してX方向に対称に一対のヒーター17、18が配置されている。しかし、本発明では、ヒーターの配置構成は、これに限定されない。ヒーターの配置構成は、図10に示すように、X方向だけでなくY方向(記録媒体の幅方向)にもノズル孔13bの中心軸に対して対称に一対のヒーター117、118を設けてもよい。この配置構成によれば、ノズル孔13bの内壁に4つのヒーターを設け、発熱量を制御することで、印字液滴の記録媒体への着弾位置補正を記録媒体の搬送方向(X方向)だけでなく、吐出口13aの配列方向(Y方向)にも補正可能となる。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドについて説明する。なお、ここでは、実施形態1で説明した連続式インクジェット記録ヘッドと異なる構成について詳細に説明し、同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0031】
図11は、本実施形態における液滴の形成と液滴の吐出方向の制御を時系列的に示した断面図である。なお、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、吐出量が比較的大きい液滴、具体的には吐出量が4pl(ピコリットル)以上の液滴の形成と吐出方向の偏向について実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドに比べ有効である。
【0032】
図12は、吐出量が比較的大きな液滴の形成および吐出方向の偏向を、実施形態1に記載の方法で行ったときの液滴の吐出状態を示す断面図である。図12(a)は、断面積が比較的狭いノズル孔で形成された液滴の吐出状態を示す。図12(b)は、12(a)に記載のノズル孔の断面積に比べて断面積が広いノズル孔で形成された液滴の吐出状態を示す。
【0033】
図12(a)に示すように、ノズル孔の一端に設けられた辺長mの吐出口から1滴分のインク128が大気に露出したとき、インク128の形状は吐出方向に細長く伸びた状態になる。このとき、ヒーター17のみが発熱することによってインク128の後端部に連続する気泡129が生成される。しかし、この場合、インク128の液滴形成は行なえても、吐出方向まで大きく変えることは困難である。一方、図12(b)に示すように、ノズル孔の一端に設けられた辺長mよりも長い辺長sの吐出口からインク128と同じ液量のインク131が大気に露出したとき、インク131の全長をインク128の全長よりも短くできる。しかし、液滴を形成して吐出方向を偏向するためには気泡130の体積を気泡129の体積よりも大きくする必要がある。この気泡130を発泡させるためには時間がかかってしまう。よって、ある一定以上の液量の液滴形成ならびに吐出方向制御と、高速印字化を同時に行なうことは、実施形態1で説明したようなヒーター制御では困難である。
【0034】
そこで、図11に示す本実施形態のヒーターの制御方法では、1つの液滴127(図11(j)参照)の液量に相当するインクがヒーター17とヒーター18との間を通過する途中で、非対称発泡を数回行なう。
【0035】
本実施形態では、図11(d)に示すように、液滴127の半分の液量に相当する液体119がヒーター17、18の間を通過した時にヒーター17が発熱することによって、気泡120が生成される。その後、気泡120が吐出口13aから大気中に出たときに液滴変形部121が形成される(図11(e)参照)。ただし、気泡120は液体119が液滴として分離されないように生成される。気泡120により吐出口13aから大気に出た液体119は、ノズル孔13bの軸方向に垂直な方向(−X方向)に吐出方向が偏向される(図11(f)参照)。続いて、液滴127の残りの半分の液量に相当する液体124がヒーター17、18の間を通過した時に、ヒーター17が発熱することによって、偏向用気泡123が生成される。偏向用気泡123は、液体119と液体124とで構成された液滴127を形成して吐出方向を偏向するため、気泡120よりも体積が大きくなければならない。そのため、偏向用気泡123を生成するためにヒーター17に印加される電圧値は、気泡120を生成するためにヒーター17に印加される電圧値よりも大きくなる。このようにして生成した偏向用気泡123が吐出口13aから大気中に出た際に、液体124の後端部に液滴変形部125が形成されながら液体124の飛出し方向が−X方向に偏向される。そして、液滴変形部125の後端部に尾引き部126が形成される(図11(g)参照)。その後、液体119と液体124は、1つの液滴にまとまりながら尾引き部126で千切れる。これにより、液滴127が形成されると同時に、液滴127の吐出方向も偏向させることが可能となる。
【0036】
本実施形態では、偏向用気泡123を生成する前に、偏向用気泡123よりも体積が小さな気泡120が生成され、この気泡120により液滴127の吐出方向が偏向方向に誘導される。そのため、特に液量の多い液滴の吐出方向の偏向も容易に行なうことが可能となる。
【0037】
(実施形態3)
本実施形態のインクジェット記録ヘッドについて説明する。なお、ここでは、実施形態1で説明した連続式インクジェット記録ヘッドと異なる構成について詳細に説明し、同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0038】
図13は、本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドの要部の構成を示す断面図である。本実施形態の連続式インクジェット記録ヘッドは、回収口25の配置位置が実施形態1の連続式インクジェット記録ヘッドと異なる。本実施形態において回収口25は、ノズル孔13bの中心軸の直下に配置されている。すなわち、吐出口13aから偏向されずに(ノズル孔13bの軸方向に)吐出した非印字液滴143が、回収口25に到達できるように、回収口25が配置されている。また、図13に示すように回収口25よりもX方向側には回収スリット24が形成されている。この回収スリット24を通過して、吐出口13aから偏向方向に吐出した印字液滴140が記録媒体まで到達する。
【0039】
図14は、本実施形態においてヒーター17とヒーター18に与える駆動パルス波形を示したタイムチャートである。また、図15は、本実施形態において液滴が形成される状態を示す断面図である。図15(a)は、印字液滴が形成される状態を示し、図15(b)は、非印字液滴が形成される状態を示す。
【0040】
本実施形態では、印字液滴が記録媒体へ到達するためには、印字液滴が回収スリット24を通過する必要がある。よって印字液滴の吐出方向をX方向に偏向させる必要がある。
【0041】
そこで、本実施形態では、加圧ポンプ47により吐出口13aから1つの液滴の液量に相当する1滴分の液体140がヒーター18を通過した直後(図14の時間T1)に、ヒーター18に駆動パルスQ1を与える。これにより偏向用気泡148が生成する。その後、偏向用気泡148が吐出口13aから大気中に出たときに、液体140の後端部にX方向の外力が加えられる。この外力により、液体140は、吐出方向がX方向に偏向されるとともに、印字液滴140として記録媒体へ到達する。
【0042】
印字液滴140に後続して吐出される印字液滴141、印字液滴142も、駆動パルスQ1と同様の駆動パルスQ2,Q3が与えられることによって、吐出方向が偏向される。
【0043】
一方、非印字液滴143は、非印字液滴143の直前に形成された印字液滴142から非印字液滴143の直後に吐出される印字液滴145が形成されるまで連続した非印字画素数分の液量のインクを細かく滴化させることなく1つの大きな液滴としたものである。よって、非印字液滴143は、画像パターンにより大きさが異なる。本実施形態では、印字液滴142の次に吐出される非印字液滴143は、3画素分の非印字液滴が1つの大きな液滴として吐出されるものとする。
【0044】
図13の非印字液滴143の液量に相当する液体がヒーター17、18を通過した直後(図14のT8とT9の間)、ヒーター17に駆動パルスQ41を与えると同時にヒーター18に駆動パルスQ42を与える。非印字液滴143は、ノズル孔13bの軸方向の直下に配置された回収口25に向けて真直ぐ吐出させる必要があるため、対称発泡させることが好ましい。よってヒーター17とヒーター18に与える駆動パルスQ41、Q42は同一の波形とする。ヒーター17、18に駆動パルスQ41、Q42を同時に与えることで、図15(b)に示すように一対の気泡150、151が生成する。この一対の気泡150、151が吐出口13aから大気中に出たときに非印字液滴143の後端部に尾引き部152が形成される。尾引き部152は時間経過と共に千切れることで、非印字液滴143は、回収口25に向かって吐出する。回収口25に到達した非印字液滴143は、回収ユニット2で回収される。
【0045】
本実施形態では、印字液滴の吐出方向が偏向され、非印字液滴の吐出方向は偏向されない。また、非印字液滴は印字液滴のように小さく液滴形成することをせずに、一定量にまとまった大きな液滴として形成される。連続式インクジェット記録ヘッドは、一般的に、単位時間当たりに非印字液滴の吐出が占める割合が、印字液滴の吐出が占める割合に比べ圧倒的に多い。実施形態1、2では、印字液滴と同様の体積の非印字液滴を形成していたが、本実施形態では、印字液滴よりも体積の大きな非印字液滴を形成している。そのため、実施形態1、2に比べヒーター17、18の発熱回数が低減する。これにより、ヒーター17、18の寿命を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
13a 吐出口
13b ノズル孔
17、18 ヒーター
110、112 気泡
116 偏向用気泡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を液滴として吐出する吐出口と、該吐出口に連通するノズル孔と、前記吐出口に近接する前記ノズル孔の内壁に前記ノズル孔の中心軸に関して対称に配置された一対のヒーターと、を有し、
前記一対のヒーターは、互いに同じ発熱量で同時に発熱して前記中心軸に関して対称な一対の気泡を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱して前記中心軸に関して非対称な偏向用気泡を生成し、前記一対の気泡で液体を液滴として前記ノズル孔の軸方向に吐出させ、前記偏向用気泡で液体を液滴として前記軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる、連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記一対のヒーターの各々における前記吐出口側の端面と、前記吐出口との距離が、前記吐出口の1辺の長さ以内である、請求項1に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記吐出口の1辺の長さが10μm以内である、請求項2に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記距離が5μm以内である、請求項2または3に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記一対のヒーターは、これらの間を前記1滴分の液体が通過している途中で、前記偏向用気泡よりも体積が小さく、前記1滴分の液体を前記偏向方向に誘導する気泡を生成する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記液滴は、前記偏向方向に吐出して記録媒体に到達する印字液滴か、または前記軸方向に吐出して前記記録媒体に到達しない非印字液滴のいずれかであり、前記非印字液滴は前記印字液滴よりも体積が大きい請求項1から5までのいずれか1項に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項1】
液体を液滴として吐出する吐出口と、該吐出口に連通するノズル孔と、前記吐出口に近接する前記ノズル孔の内壁に前記ノズル孔の中心軸に関して対称に配置された一対のヒーターと、を有し、
前記一対のヒーターは、互いに同じ発熱量で同時に発熱して前記中心軸に関して対称な一対の気泡を生成するか、または互いに異なる発熱量で同時に発熱するか若しくはいずれか一方のみが発熱して前記中心軸に関して非対称な偏向用気泡を生成し、前記一対の気泡で液体を液滴として前記ノズル孔の軸方向に吐出させ、前記偏向用気泡で液体を液滴として前記軸方向から偏向した偏向方向に吐出させる、連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記一対のヒーターの各々における前記吐出口側の端面と、前記吐出口との距離が、前記吐出口の1辺の長さ以内である、請求項1に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記吐出口の1辺の長さが10μm以内である、請求項2に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記距離が5μm以内である、請求項2または3に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記一対のヒーターは、これらの間を前記1滴分の液体が通過している途中で、前記偏向用気泡よりも体積が小さく、前記1滴分の液体を前記偏向方向に誘導する気泡を生成する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記液滴は、前記偏向方向に吐出して記録媒体に到達する印字液滴か、または前記軸方向に吐出して前記記録媒体に到達しない非印字液滴のいずれかであり、前記非印字液滴は前記印字液滴よりも体積が大きい請求項1から5までのいずれか1項に記載の連続式インクジェット記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−30502(P2012−30502A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172314(P2010−172314)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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