説明

連続式全有機炭素濃度測定方法及びその装置

【課題】 装置全体の小型化及び低コスト化を図りつつ、長時間に亘る連続使用時にも圧力変動にかかわらず流量を安定化し、かつ、微少異物や気泡による影響もなくしてTOC濃度を高精度に測定できる連続式TOC濃度測定装置を提供する。
【解決手段】 測定対象となる試料液を収容するオーバーフロー槽2、該オーバーフロー槽2から試料液を吸引するチュービングポンプ6と、このチュービングポンプ6により吸引された試料液にUVを照射して試料液に含まれる有機成分を酸化させ、UV照射前後の導電率の差に基づいて有機成分中のTOC濃度を測定する測定部と、試料液の流量を計測する流量計測部5と、試料液の圧力を正圧に維持する単一キャピラリー6とにより形成されるサンプリング測定フロー7に試料液を連続的に流動させることにより、該試料液中のTOC濃度を連続測定するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体の洗浄に用いられる純水や製薬用水の清浄度などの水質管理に好適なものであって、各種の半導体製造工程や製薬プロセス工程で使用される液に含まれている有機成分中の全有機炭素(Total Organic Carbon:以下、TOCと称する)濃度を連続的に測定する連続式TOC濃度測定方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TOC濃度を測定する装置として、従来一般より、測定対象となる試料液に紫外線(以下、UVと称する)を照射して該試料液に含まれている有機成分を酸化させ、前記UV照射前後で検出される導電率の差を演算することによって、前記有機成分中のTOC濃度を測定するUV酸化−導電率検出方式に構成されたものが広く知られている。
【0003】
上記したUV酸化−導電率検出方式のTOC濃度測定装置は、半導体の洗浄工程や製薬プロセス工程で長時間に亘り連続使用される液の清浄度をリアルタイムにモニタリング管理して常に清浄度のよい液を使用できるようにするために当該測定装置を前記工程中に組込設置して連続供給される試料液のTOC濃度を精度よくかつリアルタイムに測定可能なオンライン計測システムを構成することが望ましい。
【0004】
ところで、上述のようなオンライン計測システムを構成するために、UV酸化−導電率検出方式のTOC濃度測定装置を半導体の洗浄工程等に組込設置した場合、工程配管内で試料液が圧力変動することは避けられず、このような圧力変動に起因して試料液の流量が変動し、その結果、一定量の試料液に対するUV照射光量が変化して試料液中に含まれる有機成分の酸化度にばらつきが生じ、TOC濃度の測定値が変動するという問題があり、このような試料液の圧力変動の影響による測定精度の低下をなくするためには、圧力変動にかかわらず試料液の流量を安定よく一定に維持することが求められている。
【0005】
また、測定対象となる試料液が例えば注射液用水などの高温試料液である場合は、これを高温型減圧機構で減圧して使用するが、その減圧によって試料液中に気泡が生じる場合があり、さらに、測定フローの構成部品、例えば、導電率センサ、弁、配管継手の構造や種類によっては配管内で気泡を発生しやすいものもあり、測定精度を上げるためには、気泡の配管内での成長や管内面への付着により流量が変動(低下)しないようにすることが非常に重要である。
【0006】
さらに、通常の連続測定においては、上記測定フローの構成部品に付着した微少異物(ゴミやパーティクル粒子など)が試料液の流れや配管振動などにより剥離し、その剥離した微少異物がニードル弁オリフィスに再付着し、かつ、堆積して流量低下が生じるので、定期的にニードル弁の開度を調整して所定の流量を維持することが重要である。
【0007】
上述したような要望及び重要性に鑑み試料液の圧力変動及び気泡の影響による測定精度の低下を抑制する手段として、従来、図4の概略フロー図に示すように、スパイラル石英蛇管などの石英セル構造の反応管21と該反応管21内を通過流動する試料液にUVを照射する3〜15W程度の低圧UVランプ22と前記反応管21の前後にそれぞれ設置されてUV照射前後の試料液の導電率を検出する二つの導電率センサ23,23とを備えてなるUV酸化−導電率検出方式のTOC濃度測定部20への試料液の入口側に試料液の圧力を制御して流量を略一定に維持するためのレギュレータ24を設置するとともに、TOC濃度測定部20の送出側に、前記レギュレータ24と連係して試料液の流量を一定に保つために、流量計25a付属のニードル弁等のオリフィス25を取付けてなる連続式TOC濃度測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、図4において、26はレギュレータ24の送出側で分岐されたバイパス流路で、このバイパス流路26には比抵抗計27が介在されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−177164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1で提案されている従来の連続式TOC濃度測定装置においては、試料液の元圧が低い場合や工程配管内での圧力変動に伴い一次圧力が一定圧以下に低下すると、具体的には、0.05MPa以下になると、レギュレータが正常に動作せず安定した調圧機能を発揮しなくなり、TOC濃度測定部における試料液の流量を一定に保てない。また、試料液が低圧状態になったとき、ニードル弁等のオリフィス開度を大きく調整することで所定の流量を確保することが可能となるものの、レギュレータによる調圧機能が不十分なために、ニードル弁等のオリフィスに付着堆積する微少異物などにより流量が変動しやすい。特に、長時間に亘る連続測定の場合は、流量が低下しやすく、それを補うためには、オリフィス開度を頻繁に調整しなければならないという問題がある。
【0010】
また、測定対象となる試料液が、例えば注射液用水のような高温試料液である場合は、耐高温型のレギュレータの使用が必要で、圧力変動が生じた時、測定配管ライン内で気泡が発生され、この気泡の影響で流量が変動して測定精度が低下しやすいという問題がある。
【0011】
さらに、レギュレータとニードル弁等のオリフィスを組み合せた流量制御手段は、上述のように、小流量の流量制御には適用できないだけでなく、当該手段に要するコストの上昇が避けられず、特に、図4のような概略フローからなる特許文献1の場合は、高温耐久性部品の使用及び流量の不安定さを修正(調整)するための流量計の採用が必須不可欠となり、それだけ配管構成が複雑になって、装置全体が一層コスト高になるという問題もあった。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、装置全体の小型化及び低コスト化を図りつつ、長時間に亘る連続使用時においても圧力変動にかかわらず流量を安定化し、かつ、微少異物や気泡による影響もなくしてTOC濃度を高精度に測定することができる連続式TOC濃度測定方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る連続式TOC濃度測定方法は、測定対象となる試料液を収容するオーバーフロー槽と、このオーバーフロー槽から前記試料液を吸引する吸引ポンプと、このポンプにより吸引された試料液に紫外線を照射して試料液に含まれる有機成分を酸化させ、前記紫外線照射前後の前記試料液の導電率の差に基づいて前記有機成分中のTOC濃度を測定する測定部と、前記試料液の流量を計測する流量計測部と、前記試料液の圧力を正圧に維持する減圧機構とから形成されるサンプリング測定フローに、前記試料液を連続的に流動させることにより、前記試料液中のTOC濃度を連続測定する方法であって、前記吸引ポンプとして、流量可変型チュービングポンプを用いるとともに、前記減圧機構として、単一キャピラリーを用いることを特徴としている(請求項1)。
【0014】
また、上記と同一の目的を達成するため、本発明に係る連続式TOC濃度測定装置は、測定対象となる試料液を収容するオーバーフロー槽と、このオーバーフロー槽から前記試料液を吸引する吸引ポンプと、このポンプにより吸引された試料液に紫外線を照射して試料液に含まれる有機成分を酸化させ、前記紫外線照射前後の前記試料液の導電率の差に基づいて前記有機成分中のTOC濃度を測定する測定部と、前記試料液の流量を計測する流量計測部と、前記試料液の圧力を正圧に維持する減圧機構とからサンプリング測定フローを形成し、このサンプリング測定フローに前記試料液を連続的に流動させることにより、前記試料液中のTOC濃度を連続測定するように構成されている連続式TOC濃度測定装置であって、前記吸引ポンプが流量可変型チュービングポンプから構成されているとともに、前記減圧機構が単一キャピラリーから構成されていることを特徴としている。(請求項5)
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴構成を有する請求項1及び請求項5に係る本発明によれば、供給圧(一次圧力)が低くても、また、高温の試料液に対しても長時間安定した流量を確保することが可能な定流量特性を有するチユービングポンプと、ある一定距離に亘って徐々に圧力降下し急激な圧力降下による気泡の発生を抑制可能であるとともに、測定対象試料液に気泡や微少異物が含まれている場合でも、その気泡や微少異物をサンプリング測定フロー内から円滑に排出する気泡抜け性能に優れ、かつ、気泡や微少異物の付着もほとんどない単一キャピラリーとの組み合わせからなる流量制御手段を用いることによって、試料液供給圧の変動が大きいあるいは試料液の元圧が低圧の条件下であっても、小流量のサンプリング及びTOC濃度測定部における試料液の流量を安定よく維持することができる。これによって、長時間に亘る連続使用において、圧力変動にかかわらず、また、高温試料液を測定対象とする場合でも気泡や微少異物による影響を殆ど受けることなく流量を安定化して所定のTOC濃度を精度よく測定することができる。しかも、流量制御手段がチユービングポンプと単一キャピラリーの組み合せという最小必要限の構成要素を用いた構造簡単かつ安価なものでよいこと、および、小流量での測定が可能であるために、TOC濃度測定部を構成する反応管容積及びUVランプも小容量化又は短寸化できることにより、装置全体の小型化及び低コストを図ることができるという効果を奏する。
【0016】
本発明において、前記流量計測部による計測流量に基づいて前記チュービングポンプのローラ回転数を調整して流量を自動補正するフィードバック制御系を備えた構成(請求項2,6)を採用することによって、長時間に亘る連続測定時に、例えば気泡や試料液中の微少異物の付着などの影響を受けることなく、チュービングポンプ能力の経時変化による流量低下を補正することが可能となり、所定のTOC濃度の連続測定精度を一層高めることができる。
【0017】
また、本発明において、前記流量可変型チュービングポンプとしては、その吐出圧が0.03〜0.08MPa範囲で使用することが望ましく(請求項3,7)、さらに、前記単一キャピラリーとしては、その内径0.3〜1.0mmで、長さ約100〜10000mmサイズのものが好ましく(請求項4,8)、特に、内径0.5mm/外径1.5mm、長さ500〜1000mmサイズのものを使用することが最も望ましい。その理由については、後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る連続式TOC濃度測定方法に用いられる連続式TOC濃度測定装置の概略構成図である。この連続式TOC濃度測定装置1は、測定対象となる試料液Aを底部より供給する試料液供給口部2aとオーバーフロー状態に排出する排出口部2bとを有して常に一定量の試料液Aを収容するオーバーフロー槽2と、このオーバーフロー槽2から前記試料液Aを吸引する吸引ポンプ3と、この吸引ポンプ3により吸引された試料液AにUVを照射して該試料液に含まれる有機物を酸化させ、前記UV照射前後の試料液の導電率の差に基づいて前記有機成分中のTOC濃度を測定する測定部4と、前記試料液Aの流量を計測する流量計測部5と、前記試料液Aの圧力を正圧に保持する減圧機構6とからサンプリング測定フロー7を形成し、このサンプリング測定フロー7に前記試料液Aを連続的に流動させることにより、前記試料液A中のTOC濃度を連続測定するように構成されている。なお、図1において、9は連続式TOC濃度測定装置1の使用前に、該装置1の校正を行うべくサンプリング測定フロー7に校正液を導入するための三方弁である。
【0019】
前記TOC濃度測定部4は、図2に示すように、スパイラル石英管またはセル長さが1〜3mの石英セル構造の反応管4Aと該反応管4A内を通過流動する試料液AにUVを照射する3〜15W程度の低圧UVランプ4Bと前記反応管4Aの前後にそれぞれ設置されてUV照射前後の試料液の導電率を検出する二つの導電率センサ4C,4Cとを備え、前記二つの導電率センサ4C,4Cにより検出されたUV照射前後の導電率の差を演算することによって、UV照射により酸化された有機成分中のTOC濃度を測定するように構成されている。
【0020】
前記吸引ポンプ3としては、最大吐出圧能力が0.3〜0.4MPaで、その使用吐出圧を最大吐出能力の約1/10〜1/5の0.03〜0.08MPa範囲に設定した流量制御型チュービングポンプが用いられる。このチュービングポンプ3と前記流量計測部5との間には、ガラス計量管方式または液体用マスフローセンサが用いられる前記流量計側部5による計測流量に基づいて前記サンプリング測定フロー7の流量が初期設定流量に自動補正されるように、チュービングポンプ3のローラ回転数を自動調整するコントローラ8Aを含むフィードバック制御系8が設けられている。
【0021】
そして、前記サンプリング測定フロー7内における試料液Aの圧力を正圧に保持する減圧機構6としては、漸減圧型の減圧機構部品の一つである単一キャピラリーを選定して使用している。この単一キャピラリーを選定した理由については後述する。
【0022】
そして、前記単一キャピラリー6は、上述したチュービングポンプ3吐出圧の設定使用範囲(0.03〜0.08MPa)で流量5〜10ml/min.においてサンプリング測定フロー7内に気泡を発生しない、また、混入している気泡や微少異物を付着させないで円滑に通過排出させるに足りる与圧を維持させ得るという条件、並びに、そのような与圧を維持するためにハーゲン−ポアズイユの法則により規定される長さ、具体的には、内径比の4乗倍、つまり、内径の16倍の長さの条件を共に満足するうえで、内径が0.3〜1.0mm、長さが約100〜10000mm、好ましくは内径0.5mm/外径1.5mmで、長さが500〜1000mmサイズに設定されているのが最も適切である。因みに、内径が1.0mmサイズの単一キャピラリーを使用すると、その長さが8000〜10000mm以上にもなり、該キャピラリーを一直線に伸ばして使用する場合でも装置内の空間内に幾重にも丸く束ねて収納する場合でも、大きな空間スペースを要するとともに、材料コスト的にも高くなるという問題がある。
【0023】
上記した連続式TOC濃度測定装置1によれば、サンプリング測定フロー7の流量制御手段として、供給圧が低くても、また、それが大きく変動しても、さらに、高温の試料液に対しても長時間安定した流量を確保することが可能な定流量特性を有するチユービングポンプ3と、ある一定距離に亘って徐々に圧力降下し急激な圧力降下による気泡の発生を抑制可能であるとともに、測定対象試料液Aに気泡や微少異物が含まれている場合でも、その気泡や微少異物をサンプリング測定フロー7内で円滑に通過させてオーバーフロー槽2に排出する気泡抜け性能に優れ、かつ、気泡や微少異物の付着もない単一キャピラリー6との組み合わせからなる流量制御手段を用いているために、試料液供給圧の変動が大きいあるいは試料液供給圧が低圧の条件下であっても、サンプリング測定フロー7内に5〜10ml/min.範囲の小流量の試料液AをサンプリングしてTOC濃度測定部4における試料液の通過流量を安定よく維持することが可能である。
【0024】
これによって、長時間に亘る連続使用時における圧力変動にかかわらず、また、気泡や微少異物による影響も殆ど受けることなく流量を安定化して所定のTOC濃度を非常に精度よく測定することができる。また、流量制御手段がチユービングポンプ3と単一キャピラリー6の組み合せという最小必要限の構成要素を用いた構造簡単かつ安価なものでよいこと、および、小流量での測定が可能であるために、TOC濃度測定部4を構成する反応管4Aの容積及びUVランプ4Bの小容量化又は短寸化が可能で、装置全体の小型化及び低コストを図ることができる。
【0025】
また、長時間に亘る連続使用において、例えば気泡や試料液中の微少異物の付着などによりサンプリング測定フロー7の流量が不測に許容範囲以上に変化した場合、流量計側部5の計測値に応じてフィードバック制御系8を通してチュービングポンプ3のローラ回転数が変更されて流量を設定許容範囲に自動補正することが可能であり、これによって、所定のTOC濃度の連続測定精度を一層高めることができる。
【0026】
次に、本発明における主要構成要素である減圧機構部品として単一キャピラリーを選定した理由について説明する。
すなわち、サンプリング測定フロー7内で試料液Aの圧力を減圧保持するための減圧機構部品として使用可能な種類とTOC濃度測定にとって重要な要素、例えば気泡の抜け性能、気泡の付着性等の流量制御用条件に対する適用性の良否とに基づいて総合判断すると、低圧用途の条件に適用可能な減圧機構部品としては、漸減圧型の単一キャピラリーとオリフィス型のニードル弁とがある。このうち、ニードル弁は、構造が複雑であるとともに、その開度ポジショニングを一定に保ちにくくて流量の安定性に欠けるという難点がある。これに対して、単一キャピラリーは、固定抵抗であって、構造が簡単であるとともに、低圧用途の条件及び気泡の抜け性、気泡の付着性の面からも流量の安定性に優れている。
【0027】
因みに、本発明者らは、減圧機構部品の検討事項として、本発明のように単一キャピラリーを使用した場合とニードル弁を使用した場合との流量と圧力の関係について次のような試験を行った。
1.試験フロー、試験条件及び試験装置:
図3に示すように、純水タンクTに収容されている純水をチュービングポンプTPを介してUV酸化方式のTOC濃度測定部Bに連続的に供給するとともに、その測定部B通過後の純水を単一キャピラリーCを経て排出する試験フローと、ニードル弁Nを経て排出する試験フローとを形成する。そして、各試験フローにおいてポンプ流量、具体的にはチュービングポンプTPの駆動モータに対するパルス数(流量係数)を4段階に順次変更し、それら各段階での各試験フロー流量と二次圧PG2を測定した。ここで、流量計としては東京計装社製のF98−40392を、また、圧力計としては第一計器社製の11−Lを使用した。
2.試験結果:
下記の表1に示すとおりの結果が得られた。
【0028】
【表1】

【0029】
3.試験結果の考察:
(1)表1からも明らかなとおり、減圧機構部品としてニードル弁を使用した場合は、連続使用によりポンプTP下流でニードル弁N前の二次圧PG2(MPa)が初期(設定)圧力に比べて次第に上昇し、数分後にはポンプ吐出圧能力の限界近く(0.35〜0.45MPa)に達し、それに伴いフロー流量(ml/min.)が急激に減少した。
(2)二次圧PG2が上昇している原因は、ニードル弁Nの純水通過抵抗が増大していることであり、これは、外部からニードル弁Nに衝撃を与えると、二次圧PG2が直ぐに初期圧力まで低下したことからも明らかなように、ニードル弁Nの開度変更でなく、気泡や含有異物の付着が原因であると推定できる。この現象は、流量が7.7ml/min.付近から起こり、10ml/min.では顕著であり、16ml/min.付近では流量が最大で約1/2まで低下することが分かった。
(3)これに対して、単一キャピラリーCを使用した場合は、連続使用によっても、二次圧PG2の上昇及び流量の低下はほとんど起こらなかった。
【0030】
以上の試験結果を踏まえて本願発明は、減圧機構部品として、単一キャピラリー6を選定し、この単一キャピラリー6とチユービングポンプ3との併用によって、装置全体の小型化及び低コスト化を図りつつ、長時間に亘る連続使用時においても圧力変動にかかわらず流量を安定化し、かつ、微少異物や気泡による影響もなくしてTOC濃度を高精度に測定することができるといった本願発明の目的を達成し得たのである。
【0031】
また、本発明者らは、本発明において使用する単一キャピラリー6のサイズを選定するにあたって、単一キャピラリーによるハーゲン−ポアズイユ(Hagen−Poiseuille)の式の評価試験を行った。
1.ポアズイユの式:
Q=(−dP/dx)πa4 /8μ
ここで、Qは流量、Pは圧力、xは長さ、aは直径、μは試料液の粘性
2.試験方法:
図3に示す試験フローの単一キャピラリーCとして、内径が0.5mm(0.51mm)/外径1.5mm、長さが2000mmの四ふっ化樹脂管と、内径が1.0mm(1.02mm)/外径3.0mmで、長さが10000mmの四ふっ化樹脂管とを用意し、これらを順次所定長さに切断して使用した。なお、括弧内の数値は、単一キャピラリー内を流動する純水(22℃、密度0.998g/cm3 )の充填重さから求めた直径aである。ここで、純水の流量は7.4ml/min.に設定し、圧力計としては、オムロン社製のE8F2−B10C(デジタル4桁表示)を使用して、その表示の最高値と最少値との平均値を求めた。
3.試験結果:
下記の表2に示すとおりの結果が得られた。
【0032】
【表2】

【0033】
4.試験結果の考察:
(1)表2の結果から、流量7.4ml/min.における上記各供試サイズの単一キャピラリーと圧力損失とは、圧力損失ΔP∝長さxの関係が成立していることが分かる。
(2)このことから、試験フロー内を一定の正圧(0.03〜0.08MPa)に維持するには、すなわち、単一キャピラリーで一定の圧力損失ΔPを得るためには、
(a1.0 /a0.54 ∝(x1.0 /x0.5 4
の関係を成立することが条件となる。
【0034】
以上の試験結果から本発明者らは、減圧機構部品として用いる単一キャピラリーの内径/外径サイズが増大すればするほど所定の与圧を維持するために必要となる長さが大きくなる傾向にあることを知見し、その知見に基いて、チュービングポンプ3を吐出圧0.03〜0.08MPaの範囲で使用し、かつ、流量5〜10ml/min.においてサンプリング測定フロー7内に気泡を発生しない、また、混入している気泡を付着させないで円滑に通過排出させるに足りる与圧を維持させ得るという条件、並びに、材料コスト及び収納のための所要スペースをできるだけ少なくするという条件を共に満足する上で、内径0.5mm/外径1.5mm、長さ500〜1000mmサイズの単一キャピラリーの使用が最も好ましいことを確認した。
【0035】
なお、上記実施の形態では、流量計測部5として、ガラス計量管方式または液体用マスフローセンサを用いた例を説明したが、それ以外に、どのような流量計測手段を用いてもよく、また、フィードバック制御系8のコントローラ8Aに試料液の種類等に対応して測定流量を設定変更可能とする流量設定部を組み込んでもよいこともちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る連続式TOC濃度測定方法に用いられる連続式TOC濃度測定装置の概略構成図である。
【図2】TOC濃度測定部の拡大構成図である。
【図3】減圧機構部品の検討に際して行った試験フローの概略構成図である。
【図4】従来のTOC濃度測定装置の概略フロー図である。
【符号の説明】
【0037】
1 連続式TOC濃度測定装置
2 オーバーフロー槽
3 チュービングポンプ(吸引ポンプ)
4 TOC濃度測定部
4A 反応管
4B 低圧UVランプ
4C 導電率センサ
5 流量計側部
6 単一キャピラリー(減圧機構部品)
7 サンプリング測定フロー
8 フィードバック制御系
A 試料液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる試料液を収容するオーバーフロー槽と、このオーバーフロー槽から前記試料液を吸引する吸引ポンプと、このポンプにより吸引された試料液に紫外線を照射して試料液に含まれる有機成分を酸化させ、前記紫外線照射前後の前記試料液の導電率の差に基づいて前記有機成分中の全有機炭素濃度を測定する測定部と、前記試料液の流量を計測する流量計測部と、前記試料液の圧力を正圧に維持する絞り機構(以下、減圧機構と称する)とから形成されるサンプリング測定フローに、前記試料液を連続的に流動させることにより、前記試料液中の全有機炭素濃度を連続測定する方法であって、
前記吸引ポンプとして、流量可変型チュービングポンプを用いるとともに、前記減圧機構として、単一キャピラリーを用いることを特徴とする連続式全有機炭素濃度測定方法。
【請求項2】
前記流量計測部による計測流量に基づいて前記チュービングポンプのローラ回転数を調整して流量を自動補正するフィードバック制御系を有する請求項1に記載の連続式全有機炭素濃度測定方法。
【請求項3】
前記流量可変型チュービングポンプは、その吐出圧が0.03〜0.08MPa範囲で使用される請求項1または2に記載の連続式全有機炭素濃度測定方法。
【請求項4】
前記単一キャピラリーは、その内径0.3〜1.0mmで、長さ約100〜10000mmサイズのものを使用する請求項1ないし3のいずれかに記載の連続式全有機炭素濃度測定方法。
【請求項5】
測定対象となる試料液を収容するオーバーフロー槽と、このオーバーフロー槽から前記試料液を吸引する吸引ポンプと、このポンプにより吸引された試料液に紫外線を照射して試料液に含まれる有機成分を酸化させ、前記紫外線照射前後の前記試料液の導電率の差に基づいて前記有機成分中の全有機炭素濃度を測定する測定部と、前記試料液の流量を計測する流量計測部と、前記試料液の圧力を正圧に維持する減圧機構とからサンプリング測定フローを形成し、このサンプリング測定フローに前記試料液を連続的に流動させることにより、前記試料液中の全有機炭素濃度を連続測定するように構成されている連続式全有機炭素濃度測定装置であって、
前記吸引ポンプが流量可変型チュービングポンプから構成されているとともに、前記減圧機構が単一キャピラリーから構成されていることを特徴とする連続式全有機炭素濃度測定装置。
【請求項6】
前記流量計測部による計測流量に基づいて前記チュービングポンプのローラ回転数を調整して流量を自動補正するフィードバック制御系が設けられている請求項5に記載の連続式全有機炭素濃度測定装置。
【請求項7】
前記流量可変型チュービングポンプは、その使用吐出圧が0.03〜0.08MPa範囲に設定されている請求項5または6に記載の連続式全有機炭素濃度測定装置。
【請求項8】
前記単一キャピラリーは、その内径0.3〜1.0mmで、長さ約100〜10000mmサイズに設定されている請求項5ないし7のいずれかに記載の連続式全有機炭素濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−107244(P2008−107244A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291648(P2006−291648)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(592187534)株式会社 堀場アドバンスドテクノ (26)
【Fターム(参考)】