説明

連続式急速凍結装置

【課題】 インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とを明確に区別し、インピンジメント処理とテンパリング処理とを繰り返すことにより、食品等の凍結対象物の鮮度を保ちつつ急速凍結できる連続式急速凍結装置を提供する。
【解決手段】 連続式急速凍結装置の上側噴射部と下側噴射部は、噴射部主体と、搬送用コンベヤのベルト往動部に向けて冷気を噴射する噴射用スリットと、前記噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部とを備える。前記複数の上側噴射部はベルト往動部の上方において、また、前記複数の下側噴射部はベルト往動部の下方において、それぞれ間隙を確保して設ける。前記上側噴射部の噴射用スリットと前記下側噴射部の噴射用スリットとが搬送用コンベヤのベルト往動部を挟んで略対向するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の凍結対象物を連続的に凍結する連続式急速凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等の凍結対象物の鮮度を保ちつつ急速凍結する方法として、インピンジメント処理とテンパリング処理(均温処理)とを繰り返して行う凍結方法が知られている。インピンジメント処理とは、凍結対象物に対して冷気を強く集中して吹き付けることによって、最大氷結晶生成帯を速く通過させる処理である。これにより細胞内氷結晶が微細になり、細胞組織の損傷が回避される。
【0003】
一方、テンパリング処理(均温処理)とは、急速凍結の過程において、一時冷気の吹き付けを中断することにより、表面温度が低く、内部温度が高いという凍結対象物の温度分布を均温状態とする処理である。急速凍結の過程においては、図4に示すように、凍結対象物の表面が先行して凍結し、内部が未凍結の状態となる。凍結対象物の表面が凍結することで体積膨張が発生する。内部の未凍結部分は体積変動が生じないので、凍結対象物の凍結部分と未凍結部分との境界で応力が発生する。この界面応力が凍結対象物の引張強度を越えると、凍結対象物に割れが発生し、凍結対象物の品質が低下する。テンパリング処理を行うことにより、内部応力が弛緩または消散され、凍結対象物の割れが防止される。
【0004】
凍結対象物に対してインピンジメント処理とテンパリング処理とを繰り返す凍結方法によれば、凍結対象物の割れの防止と、凍結対象物の細胞内氷結晶の細分化によって、食品等の凍結対象物の鮮度を保ちつつ、急速凍結することができる。
【0005】
この凍結方法を連続式急速凍結装置によって効果的に行うためには、インピンジメント処理を行う領域(インピンジメント処理領域)とテンパリング処理を行う領域(テンパリング処理領域)とを凍結対象物が繰り返し通過するようにし、しかも、インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とは明確に区別されるようにすることが好ましい。
【0006】
インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とが明確に区別されるようにするには、インピンジメント処理領域では、凍結対象物に対して冷気をできるだけ強く集中して吹き付けるようにし、反対にテンパリング処理領域では、凍結対象物に対してできるだけ冷気を吹き付けないようにする必要がある。
【0007】
従来の連続式急速凍結装置として、搬送用コンベアの上下に多数の冷気噴射管が間隔をおいて設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記冷気噴射管は搬送用コンベアと直交する方向に設けられており、冷気噴射管には冷気を噴射するためのスリットが形成されている。この連続式急速凍結装置におけるインピンジメント処理領域は、上下の冷気噴射管の間の領域であって、凍結対象物に対して冷気が吹き付けられる領域である。また、この連続式急速凍結装置におけるテンパリング処理領域は、搬送用コンベアの搬送方向に沿って隣接する冷気噴射管の間の領域である。
【0008】
しかし、特許文献1記載の連続式急速凍結装置の冷気噴射管は、断面円形の管である(特許文献1の図3参照)。断面円形の管にスリットを形成しただけでは、スリットから噴射される冷気はほとんど乱流となり、スリットから出た直後に横方向に広がり拡散してしまう。冷気はスリットから噴射された直後に拡散するため、インピンジメント処理領域においては凍結対象物に対して冷気を強く集中して吹き付けることはできない。また、テンパリング処理領域においては、拡散した冷気が凍結対象物に吹き付けられてしまう。特許文献1記載の連続式急速凍結装置では、冷気がスリットから噴射された直後に拡散するため、インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とが明確に区別されなくなるという問題があった。
【0009】
また、従来、冷気が噴射された直後に拡散することを防止するため、搬送用コンベアの上下にチャンバーを設けた連続式急速凍結装置が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。前記チャンバーには冷気を噴射するためのノズルが搬送用コンベアと直交する方向に多数設けられている。前記チャンバーは、チャンバーの外枠を構成する幅広の断面コ字型の部材と、ノズルを構成する幅狭の断面コ字型の部材とからなる構造である(特許文献1の図4参照。)。1基のチャンバーには複数の幅狭の部材が間隙を置いて配置されており、隣接する幅狭の部材の側壁と側壁との間隙がノズルの開口部となる。幅狭の部材と幅広の部材との間には空間があり、この空間は冷風供給室に接続されている(特許文献1の図2参照。)。冷風供給室からこの空間に正圧の冷気が導かれて各ノズルから冷気が噴射される。この連続式急速凍結装置におけるインピンジメント処理領域は、上下のノズルの間の領域であって、凍結対象物に対して冷気が吹き付けられる領域である。また、この連続式急速凍結装置におけるテンパリング処理領域は、搬送用コンベアの搬送方向に沿って隣接するノズルの間の領域である。
【0010】
前記特許文献2記載の連続式急速凍結装置では、噴射された冷気の回収は、チャンバーの構造上の制約から、チャンバーの横方向から行われる。チャンバーの各幅狭の部材の内側(側壁と側壁とで挟まれた空間)はそれぞれ噴射流帰還通路になっており、各噴射流帰還通路は冷気回収室に接続されている(特許文献1の図3参照。)。冷気回収室は負圧になっており、各ノズルから噴射された冷気は、各噴射流帰還通路を通って冷気回収室に吸引される。吸引された冷気は再度冷却された後、冷風供給室に戻される。
【0011】
しかし、特許文献2記載の連続式急速凍結装置のように、チャンバーの横方向からの吸引では、冷気回収室に近い部分の冷気は吸引することができるが、冷気回収室から離れた部分の冷気には吸引力が及ばず吸引できない。吸引されずに残った冷気は上下のチャンバーの間に滞留する。滞留した冷気はノズルから噴射される冷気の妨げとなり、ノズルからの冷気が拡散する。ノズルからの冷気が拡散すると冷気の風速が低下するため、インピンジメント処理領域において凍結対象物に対して冷気を強く集中して吹き付けることはできない。また、テンパリング処理領域においては、前記滞留した冷気によって拡散した冷気が凍結対象物に吹き付けられてしまう。特許文献2記載の連続式急速凍結装置では、吸引されずにチャンバー間に滞留した冷気によってノズルから噴射される冷気が拡散してしまうため、インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とが明確に区別されなくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−164676号公報
【特許文献2】特開2001−120243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであって、インピンジメント処理を行う領域とテンパリング処理を行う領域とが明確に区別されるとともに、インピンジメント処理とテンパリング処理とを繰り返して行うことにより、食品等の凍結対象物の鮮度を保ちつつ急速凍結することができる連続式急速凍結装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、断熱トンネル内に凍結室を有し、凍結室内に冷気用熱交換手段で冷却された冷気を送出して、凍結室内で搬送される凍結対象物を冷気によって凍結させ、凍結対象物と熱交換させた後の冷気を前記冷気用熱交換手段に帰還させるようにした、冷気を循環させる連続式急速凍結装置であって、
断熱トンネル内の凍結室内を貫通し、冷気が通過可能な多数の穴を形成したベルトを有し、凍結室内で凍結対象物を搬送する搬送用コンベヤと、
断熱トンネル内に設けられ、凍結室内の冷気を回収する冷気回収口と、凍結室内の冷気を吸引して回収する冷気回収手段とを有し、その冷気を冷気用熱交換手段に送る冷気回収室と、
前記冷気回収室からの冷気を冷却する冷気用熱交換手段と、
断熱トンネル内であって前記搬送用コンベヤの側部に沿って設けられ、前記冷気用熱交換手段からの冷気を後記上側噴射部と下側噴射部とに供給する冷気供給室と、
前記冷風供給室に連通する噴射部主体と、搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に形成されて搬送用コンベヤのベルト往動部の上面部に向けて冷気を噴射する噴射用スリットと、前記噴射用スリットの幅と略同一の幅であって前記噴射部主体から前記噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部と、を有する複数の上側噴射部と、
前記冷風供給室に連通する噴射部主体と、搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に形成されて搬送用コンベヤのベルト往動部の下面部に向けて冷気を噴射する噴射用スリットと、前記噴射用スリットの幅と略同一の幅であって前記噴射部主体から前記噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部と、を有する複数の下側噴射部と、
を備え、
前記複数の上側噴射部は、前記搬送用コンベヤのベルト往動部の上方において、また、前記複数の下側噴射部は、前記搬送用コンベヤのベルト往動部の下方において、それぞれ搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に間隙を確保して設けられ、かつ、前記上側噴射部の噴射用スリットと前記下側噴射部の噴射用スリットとが搬送用コンベヤのベルト往動部を挟んで略対向するように設けられている連続式急速凍結装置とした。
【0014】
(作用)
請求項1に記載の発明では、複数の上側噴射部及び下側噴射部はそれぞれ間隙を確保して設けられている。凍結対象物と熱交換を行った後の冷気は、噴射部の間隙を上下方向に通過することができる。冷気回収手段で吸引すると、冷気は噴射部の間に滞留することなく、噴射部の間隙から冷気回収室に回収される。インピンジメント処理領域において噴射部から噴射される冷気は、凍結対象物と熱交換を行った後の冷気に妨げられず、拡散せずに凍結対象物に吹き付けられる。一方、テンパリング処理領域においては、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射された冷気が拡散しないため、冷気が凍結対象物に吹き付けられない。
【0015】
また、上側噴射部と下側噴射部はそれぞれ、冷気を噴射する噴射用スリットと、噴射用スリットの幅と略同一の幅であって噴射部主体から噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部とを有している。噴射用スリットから噴射される冷気はほとんど層流となる。インピンジメント処理領域において、冷風は噴射用スリットから出ても拡散せずに、凍結対象物に強く集中して吹き付けられる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、インピンジメント処理領域では凍結対象物に対して冷気が強く集中して吹き付けられ、最大氷結晶生成帯を速く通過させることができる。また、テンパリング処理領域では、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射された冷気は凍結対象物に吹き付けられず、凍結対象物の表面と内部の温度分布を均温状態に移行させることができる。よって、インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とを明確に区別し、インピンジメント処理とテンパリング処理とを繰り返して行うことによって食品等の凍結対象物の鮮度を保ちつつ急速凍結することができる、連続式急速凍結装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を具体化した実施形態について図1から図3に従って説明する。本発明の実施例に係る連続式急速凍結装置1は、断熱トンネル11内に凍結室3、冷気回収室4、冷気供給室5、搬送用コンベア6、冷気用熱交換手段7、複数の上側噴射部81及び下側噴射部82を有する。
【0018】
図1、図2に示すように、前記断熱トンネル11は、全長は約5mであり、断面形状は略方形である。連続式急速凍結装置1の側面には上方に開く扉部12が設けられており、扉部12を開けて断熱トンネル11内の点検、清掃等を行えるようになっている。図2に示すように、断熱トンネル11の内側は、長手方向に沿って設けられた隔壁によって凍結室3、冷気回収室4、冷気供給室5に区分されている。凍結室3は、断熱トンネル11の内側を隔壁で仕切られて図示左側に設けられる。冷気供給室5は、前記凍結室3の図示右側に設けられる。冷気回収室4は、凍結室3の上方であって、かつ冷気供給室5の図示左側に設けられる。後述するように、凍結室3、冷気回収室4、冷気供給室5はそれぞれ連通する部分を有しており、冷気は凍結室3、冷気回収室4、冷気供給室5を強制循環するようになっている。
【0019】
前記凍結室3は、搬送される凍結対象物Wを冷気によって凍結させる区画である。図1に示すように、凍結室3は、断熱トンネル11内において長手方向の一端から他端まで連続している。凍結室3の長手方向の一端側には、凍結対象物Wを凍結室3内に供給する凍結対象物供給口13が設けられている。凍結室3の長手方向の他端側には、凍結対象物Wを凍結室3内から取り出すための凍結対象物取出し14が設けられている。
【0020】
前記搬送用コンベア6は、前記凍結室3内で凍結対象物Wを搬送するために設けられている。図1に示すように、搬送用コンベア6は、凍結室3の凍結対象物供給口13から凍結対象物取出し14にかけて凍結室3内を縦貫するように架設されている。搬送用コンベア6のベルト61は無端状であり、ステンレス製のネットで形成されて冷気が通過可能な多数の穴を有している。ベルト61の図示上側が凍結対象物Wを凍結対象物供給口13から凍結対象物取出し14に向けて搬送するベルト往動部62となり、ベルト61の図示下側が凍結対象物取出し14から凍結対象物供給口13に向けて戻るベルト復動部63となる。搬送用コンベア6のベルト61は両側をスプロケット64に掛けて架設されており、無段変速駆動モータ(図示せず)を駆動源として駆動するようにしている。無段変速駆動モータは凍結室3内に設けた温度センサーからの信号または作業者による操作によって回転数が変更される。
【0021】
前記冷気回収室4は、前記凍結室3内の冷気を回収し、その冷気を冷気用熱交換手段7に送る区画である。図2に示すように、冷気回収室4の図示左側には、冷気供給室5と離隔した位置に冷気回収口41が設けられる。冷気回収口41は冷気回収室4と凍結室3とを連通させて、凍結室3内の冷気を冷気回収室4内に回収するために設けられる。冷気回収口41の内側には冷風回収手段としての送風ファン42が設けられており、送風ファン42によって凍結室3の冷気が冷気回収室4に回収される。冷気回収室4と冷気供給室5との間の供給室隔壁21には冷気回収室4と冷気供給室5とを連通させる回収室連通穴部22が形成される。
【0022】
冷気用熱交換手段7は冷媒によって空気と熱交換を行い、空気を冷却する部分である。図2に示すように、冷気用熱交換手段7は冷気回収室4内であって前記冷気回収口41と冷気供給室5との間に設けられる。冷風回収口から送風ファン42によって回収された冷気は冷気用熱交換手段7に接触し、冷媒と熱交換を行って冷却される。送風ファン42によって回収され、冷気用熱交換手段7で冷却された冷気は、冷気回収室4と冷気供給室5とを連通させる前記回収室連通穴部22から冷気供給室5に送られる。
【0023】
前記冷気供給室5は、前記冷気用熱交換手段7によって冷却された冷気を取り入れ、上側噴射部81と下側噴射部82とに供給する部分である。図2に示すように、冷気供給室5は凍結室3の図示右側であって、凍結室3の長手方向に沿って設けられている。冷気供給室5と凍結室3とを仕切る凍結室隔壁23には、上側噴射部81と下側噴射部82とに連通させる凍結室連通穴部24が設けられている。凍結室連通穴部24は複数設けられており、凍結室3の長手方向に沿って上段と下段の2段に等間隔で設けられている。凍結室連通穴部24のピッチは約150mmである。凍結室連通穴部24の列の上段は前記搬送用コンベア6のベルト往動部62よりやや上方に設けられ、下段は前記搬送用コンベア6のベルト往動部62よりやや下方に設けられる。
【0024】
前記上側噴射部81と下側噴射部82は、それぞれ冷気供給室5からの冷気を搬送用コンベア6の幅方向に送り、冷気を搬送用コンベア6のベルト往動部62に向けて噴射する部分である。図3に示すように、上側噴射部81と下側噴射部82は略同一形状であって、いずれも噴射部主体83、噴射用スリット84、冷風案内空間部85を有している。前記上側噴射部81と下側噴射部82は、断面右側部材86と断面左側部材87及び蓋部材88とから構成されており、それぞれステンレス製薄板を屈曲して形成されている。これらを溶接して上側噴射部81と下側噴射部82の噴射部主体83、噴射用スリット84、冷風案内空間部85が構成される。噴射部主体83の一端は開口部となっており、他端は蓋部材88によって閉塞される。上側噴射部81と下側噴射部82の幅はいずれも約80mmである。
【0025】
前記噴射部主体83は、前記冷風供給室に連通させて冷風を搬送用コンベア6のベルト61上方又は下方まで導く部分である。図3に示すように、噴射部主体83の内側は冷風を導くための空間になっている。図2に示すように、噴射部主体83は搬送用コンベア6を幅方向に跨ぐ長さを有する。噴射部主体83の一端(開口部側)には凍結室隔壁23に取り付けるためのフランジ部89が形成されている。
【0026】
前記噴射用スリット84は、搬送用コンベア6のベルト往動部62の上面部又は下面部に向けて冷気を噴射する部分である。噴射部主体83から離隔して形成される噴射用スリット84は、搬送用コンベア6の搬送方向に対して交差する方向となるように形成され、搬送用コンベア6の搬送方向に対して交差する方向に冷気を噴射する。噴射用スリット84の幅は、例えば、冷気供給室5の内部圧力を約100mmAqとした状態において、約18m/sの風速で冷気が噴射される幅に設定される。
【0027】
前記冷風案内空間部85は、噴射部主体83から噴射用スリット84に冷風を案内し、噴射用スリット84から噴射される冷気を層流に近い状態とする部分である。図3に示すように、冷風案内空間部85は前記噴射部主体83と前記噴射用スリット84との間に設けられる。冷風案内空間部85の幅は、噴射用スリット84の幅と略同一の幅である。冷風案内空間部85の上下方向の長さLは、噴射用スリット84の相当直径Dの4倍から12倍が好ましい。相当直径Dは、噴射用スリット84の幅をA、噴射用スリット84の長さをBとすると、D=√(AB)で表される。
【0028】
前記上側噴射部81は、図1、図2に示すように、搬送用コンベア6のベルト往動部62の上方で、かつ、搬送用コンベア6の搬送方向に対して交差する方向に設ける。上側噴射部81は、噴射部主体83の一端(開口部側)を前記凍結室連通穴部24の上段の列に連通させた状態とし、この状態で前記フランジ部89を凍結室隔壁23に固定して上側噴射部81を凍結室隔壁23に固定する。上側噴射部81は、凍結室連通穴部24のピッチ150mmと略同じピッチで取り付ける。従って、隣接する上側噴射部81の間には約70mmの間隔が確保される。各噴射部主体83の他端(蓋部材88で閉塞された端部側)は、搬送用コンベア6の側方で支持させる。
【0029】
前記下側噴射部82は、図1、図2に示すように、搬送用コンベア6のベルト往動部62の下方で、かつ、搬送用コンベア6の搬送方向に対して交差する方向に設ける。下側噴射部82は、噴射部主体83の一端(開口部側)を前記凍結室連通穴部24の下段の列に連通させた状態とし、この状態で前記フランジ部89を凍結室隔壁23に固定して下側噴射部82を凍結室隔壁23に固定する。下側噴射部82は、凍結室連通穴部24のピッチ150mmと略同じピッチで取り付ける。従って、隣接する下側噴射部82の間には約70mmの間隔が確保される。各噴射部主体83の他端(蓋部材88で閉塞された端部側)は、搬送用コンベア6の側方で支持させる。
【0030】
また図1に示すように、上側噴射部81と下側噴射部82は、上側噴射部81の噴射用スリット84と下側噴射部82の噴射用スリット84とが搬送用コンベア6のベルト往動部62を挟んで略対向するように設ける。
【0031】
上側噴射部81の噴射用スリット84とベルト往動部62の上面部との距離は、凍結対象物Wの厚みを考慮して決定する。距離は一定又は異なる距離に設定する。異なる距離に設定する場合、上側噴射部81の噴射用スリット84とベルト往動部62の上面部との距離は、凍結対象物供給口13の近傍では遠くする(例えば、約60mm)。その距離は凍結対象物取出し14に接近するに従って段階的に近くする(例えば約30mm)。下側噴射部82の噴射用スリット84と、搬送用コンベア6のベルト往動部62の下面部との距離は一定とする(例えば約30mm)。
【0032】
次に本発明の実施例に係る連続式急速凍結装置1の作動について説明する。連続式急速凍結装置1の断熱トンネル11内の冷気は、冷気回収手段としての送風ファン42により、凍結室3、冷気回収室4、冷気用熱交換手段7、冷気供給室5、複数の上側噴射部81及び複数の上側噴射部81を強制循環する。そして、複数の上側噴射部81及び複数の下側噴射部82から搬送用コンベア6のベルト往動部62に対して噴射された冷気によって凍結対象物Wを凍結させる。
【0033】
この連続式急速凍結装置1におけるインピンジメント処理領域は、上側噴射部81と下側噴射部82の間の領域であって、搬送用コンベア6で搬送されてその領域を通過する凍結対象物Wに対して冷気が吹き付けられ、インピンジメント処理が行われる領域である。また、この連続式急速凍結装置1におけるテンパリング処理領域は、隣接する上側噴射部81の間、または隣接する下側噴射部82の間の領域であって、搬送用コンベア6で搬送されてその領域を通過する凍結対象物Wに対して冷気の吹き付けが一時中断され、テンパリング処理が行われる領域である。
【0034】
複数の上側噴射部81及び下側噴射部82から噴射された冷気は、凍結対象物Wと熱交換を行う。複数の上側噴射部81及び下側噴射部82はそれぞれ間隙を確保して設けられているため、凍結対象物Wと熱交換を行った後の冷気は、各噴射部の間隙を上下方向に通過することができる。冷気回収手段としての送風ファン42で吸引すると、冷気は噴射部の間に滞留することなく、噴射部の間隙から冷気回収室4に回収される。従って、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射される冷気は、凍結対象物Wと熱交換を行った後の冷気に妨げられず、拡散せずに凍結対象物Wに吹き付けられる。一方、テンパリング処理領域においては、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射された冷気が拡散しないため、冷気が凍結対象物Wに吹き付けられない。
【0035】
また、上側噴射部81と下側噴射部82はそれぞれ、冷気を噴射する噴射用スリット84と、噴射用スリット84の幅と略同一の幅であって噴射部主体83から噴射用スリット84に冷風を案内する冷風案内空間部85とを有している。噴射用スリット84から噴射される冷気はほとんど層流となっているため、インピンジメント処理領域において、冷風は噴射用スリット84から出ても拡散せずに、凍結対象物Wに強く集中して吹き付けられる。
【0036】
以上説明した本発明の実施例に係る連続式急速凍結装置1によれば、インピンジメント処理領域では凍結対象物Wに対して冷気が強く集中して吹き付けられ、最大氷結晶生成帯を速く通過させることができる。また、テンパリング処理領域では、インピンジメント処理領域において噴射部から噴射された冷気は凍結対象物Wに吹き付けられず、凍結対象物Wの表面と内部の温度分布を均温状態に移行させることができる。よって、インピンジメント処理領域とテンパリング処理領域とを明確に区別し、インピンジメント処理とテンパリング処理とを繰り返して行うことによって食品等の凍結対象物Wの鮮度を保ちつつ急速凍結することができる。
【0037】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
【0038】
凍結対象物Wの厚みが変動する場合に対応するため、上側噴射部81の噴射用スリット84とベルト往動部62の上面部との距離を任意に変更できることが好ましい。変更する手段としては、例えば、凍結室隔壁23に対する上側噴射部81のフランジ部89の固定位置を上下方向に変更できるようにする。
【0039】
上側噴射部81と下側噴射部82の幅や取り付けピッチは実施例に限定されず、凍結対象物Wの種類等に応じて変更してもよい。
【0040】
凍結対象物Wが搬送用コンベア6上で浮上することを防止するため、風速調節器で逃がし弁を制御して、下側噴射部82からの冷風の風速を上側噴射部81からの冷風の風速よりも遅くしてもよい。
【0041】
冷気用熱交換手段7を断熱トンネル11内に設置したが、断熱トンネル11の外部に設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係る連続式急速凍結装置1を長手方向に切断した断面簡略図である。
【図2】図1のA―A線における端面簡略図である。
【図3】上側噴射部81(下側噴射部82)の断面図である。
【図4】凍結対象物の表面が先行して凍結し、内部が未凍結の状態を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 連続式急速凍結装置
11 断熱トンネル
12 扉部
13 凍結対象物供給口
14 凍結対象物取出し口
21 供給室隔壁
23 凍結室隔壁
22 回収室連通穴部
24 凍結室連通穴部
3 凍結室
4 冷気回収室
41 冷気回収口
42 冷気回収手段としての送風ファン
5 冷気供給室
6 搬送用コンベア
61 ベルト
62 ベルト往動部
63 ベルト復動部
64 スプロケット
7 冷気用熱交換手段
81 上側噴射部
82 下側噴射部
83 噴射部主体
84 噴射用スリット
85 冷風案内空間部
86 断面右側部材
87 断面左側部材
88 蓋部材
89 フランジ部
W 凍結対象物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱トンネル内に凍結室を有し、凍結室内に冷気用熱交換手段で冷却された冷気を送出して、凍結室内で搬送される凍結対象物を冷気によって凍結させ、凍結対象物と熱交換させた後の冷気を前記冷気用熱交換手段に帰還させるようにした、冷気を循環させる連続式急速凍結装置であって、
断熱トンネル内の凍結室内を貫通し、冷気が通過可能な多数の穴を形成したベルトを有し、凍結室内で凍結対象物を搬送する搬送用コンベヤと、
断熱トンネル内に設けられ、凍結室内の冷気を回収する冷気回収口と、凍結室内の冷気を吸引して回収する冷気回収手段とを有し、その冷気を冷気用熱交換手段に送る冷気回収室と、
前記冷気回収室からの冷気を冷却する冷気用熱交換手段と、
断熱トンネル内であって前記搬送用コンベヤの側部に沿って設けられ、前記冷気用熱交換手段からの冷気を後記上側噴射部と下側噴射部とに供給する冷気供給室と、
前記冷風供給室に連通する噴射部主体と、搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に形成されて搬送用コンベヤのベルト往動部の上面部に向けて冷気を噴射する噴射用スリットと、前記噴射用スリットの幅と略同一の幅であって前記噴射部主体から前記噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部と、を有する複数の上側噴射部と、
前記冷風供給室に連通する噴射部主体と、搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に形成されて搬送用コンベヤのベルト往動部の下面部に向けて冷気を噴射する噴射用スリットと、前記噴射用スリットの幅と略同一の幅であって前記噴射部主体から前記噴射用スリットに冷風を案内する冷風案内空間部と、を有する複数の下側噴射部と、
を備え、
前記複数の上側噴射部は、前記搬送用コンベヤのベルト往動部の上方において、また、前記複数の下側噴射部は、前記搬送用コンベヤのベルト往動部の下方において、それぞれ搬送用コンベヤの搬送方向に対して交差する方向に間隙を確保して設けられ、かつ、前記上側噴射部の噴射用スリットと前記下側噴射部の噴射用スリットとが搬送用コンベヤのベルト往動部を挟んで略対向するように設けられていることを特徴とする連続式急速凍結装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−24364(P2007−24364A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205191(P2005−205191)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(391018547)高橋工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】