説明

連続接合構造部材

【課題】連続接合を用いて製造する構造部材(連続接合構造部材)において、その形状・寸法を適切に規定することにより、効果的に曲げ剛性を向上させることができる連続接合構造部材を提供する。
【解決手段】ハット形状の横断面を有するハット形状部品11と、そのハット形状部品11の開口部を閉じるための平板部品12とを連続接合してなる連続接合構造部材10Pであって、横断面積Sが2500mm以上30000mm以下、長さLが200mm以上600mm以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続接合を用いて製造する構造部材(連続接合構造部材)に関するものであり、主に自動車の構造部品に用いられる連続接合構造部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に自動車産業においては、環境問題に起因した車体の軽量化が進められている。一方で、乗り心地や操縦安定性を表す剛性については増加が求められているものの、軽量化により部材の板厚を減少させると剛性が低下することが知られている。
【0003】
この課題に対し、一般的に自動車の構造部材を製造する際に使われているスポット接合(スポット溶接)をレーザー接合等の連続接合(連続溶接)に変えることによって剛性を向上させる技術として、特許文献1に、連続接合を用いた中空構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−102253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造部材を製造する際に、スポット接合(スポット溶接)を連続接合(連続溶接)に変えることによって剛性を向上させる場合、構造部材の形状・寸法や連続接合の方法が支配因子となる。
【0006】
そこで、特許文献1では、連続接合の接合線を蛇行させたり、二重にしたりして剛性を向上させている。
【0007】
しかし、本発明者が検討した結果、特許文献1の手法は、構造部材の形状・寸法によっては、剛性(曲げ剛性)が向上しない場合があり、すべての構造部材に使えるわけではない。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、連続接合を用いて製造する構造部材(連続接合構造部材)において、その形状・寸法を適切に規定することにより、効果的に曲げ剛性を向上させることができる連続接合構造部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0010】
[1]ハット形状の横断面を有するハット形状部品と、該ハット形状部品の開口部を閉じるための平板部品とを連続接合してなる構造部材であって、横断面積が2500mm以上30000mm以下、長さが200mm以上600mm以下であることを特徴とする連続接合構造部材。
【0011】
[2]ハット形状部品の縦壁と平板部品とがなす角度が85°以下であることを特徴とする前記[1]に記載の連続接合構造部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、連続接合を用いて製造する構造部材(連続接合構造部材)の形状・寸法を適切に規定したことによって、効果的に曲げ剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における接合構造部材を示す横断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における接合構造部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態において比較するスポット接合構造部材と連続接合構造部材を示す横断面図である。
【図4】本発明の一実施形態において連続接合構造部材の曲げ剛性向上率に及ぼす部材長さの影響を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態において連続接合構造部材の曲げ剛性向上率に及ぼす縦壁角度の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明の一実施形態においては、図1に横断面図、図2に斜視図を示すような、ハット形状の横断面を有するハット形状部品11と、そのハット形状部品11の開口部を閉じるための平板部品12とを接合してなる接合構造部材10を対象としている。
【0016】
ちなみに、一般的に、このような接合構造部材10は、その外郭がなす横断面積Sが2500mm〜30000mmである。
【0017】
なお、図1中のHはハット形状部品11の高さ、Wはハット形状部品11の幅、θはハット形状部品11の縦壁と平板部品12とがなす角度である。また、図2中のLは接合構造部材10の長さである。
【0018】
そして、図3(a)に横断面図を示すような、ハット形状部品11と平板部品12とをスポット接合してなるスポット接合構造部材10Sの曲げ剛性を基準にて、図3(b)に横断面図を示すような、ハット形状部品11と平板部品12とを連続接合してなる連続接合構造部材10Pにおける曲げ剛性の向上効果を検討した。
【0019】
ここで、ハット形状部品11の寸法は、高さHは50mm、幅Wが75mm、コーナーRが5mmとした。
【0020】
また、スポット接合構造部材10Sにおけるスポット接合13の接合位置は、フランジ中央とした。一方、連続接合構造部材10Pにおける連続接合14の接合位置は、A(R止まり)、B(R止まり+1メッシュ:R止まりのフランジ中央側近傍)、C(フランジ中央)の3種類とした。
【0021】
そして、接合構造部材10(スポット接合構造部材10S、連続接合構造部材10P)の長さLと縦壁角度θを変化させて各種試験体を製作し、それぞれの試験体の一端を固定し、他端に荷重を加えることで、それぞれの試験体の曲げ剛性を測定した。
【0022】
その測定結果に基づいて、スポット接合構造部材10Sの曲げ剛性を基準にした連続接合構造部材10Pの曲げ剛性向上率を算出した。
【0023】
なお、連続接合構造部材10Pの曲げ剛性向上率は下式で算出した。
【0024】
曲げ剛性向上率(%)=(連続接合構造部材10Pの曲げ剛性−スポット接合構造部材10Sの曲げ剛性)/スポット接合構造部材10Sの曲げ剛性×100
【0025】
算出した連続接合構造部材10Pの曲げ剛性向上率を整理した結果を図4と図5に示す。
【0026】
まず、図4は、連続接合構造部材10Pの曲げ剛性向上率に及ぼす部材長さLの影響を示す図である。
【0027】
図4から、良好な曲げ剛性向上率が得られるのは、連続接合構造部材10Pの長さLが200mm〜600mmの範囲であることが分かる。
【0028】
そして、図5は、長さLが200mm〜600mmの範囲にある連続接合構造部材10Pについて、その曲げ剛性向上率に及ぼす縦壁角度θの影響を示す図である。
【0029】
図5から、より良好な曲げ剛性向上率が得られるのは、連続接合構造部材10Pの縦壁角度θが85°以下の場合であることが分かる。
【0030】
このように、横断面積Sが2500mm〜30000mmである連続接合構造部材10Pにおいて、その長さLを200mm〜600mmの範囲に制限することによって曲げ剛性が効果的に向上する理由は以下のように推測される。
【0031】
すなわち、ハット形状部品11と平板部品12とを接合してなる接合構造部材10が荷重を受ける場合、ハット形状部品11の横断面が開こうとする挙動が生じるが、これが接合されている平板部品12により抑制される。この抑制が形状・寸法を制限することにより、効果的に発現する。平板部品12は拘束位置(固定端)の近くではハット形状部品11側に反るが、荷重端の近くでは逆に反り、この反りの領域が接合構造部材10の長さLと、横断面積Sと長さLの比で変わるため、連続接合による曲げ剛性向上効果に差ができるものと推定される。
【0032】
このようにして、この実施形態においては、連続接合構造部材10Pの形状・寸法を適切に規定したことによって、効果的に曲げ剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 接合構造部材
10S スポット接合構造部材
10P 連続接合構造部材
11 ハット形状部品
12 平板部品
13 スポット接合
14 連続接合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハット形状の横断面を有するハット形状部品と、該ハット形状部品の開口部を閉じるための平板部品とを連続接合してなる構造部材であって、横断面積が2500mm以上30000mm以下、長さが200mm以上600mm以下であることを特徴とする連続接合構造部材。
【請求項2】
ハット形状部品の縦壁と平板部品とがなす角度が85°以下であることを特徴とする請求項1に記載の連続接合構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162186(P2012−162186A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24563(P2011−24563)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】