説明

連続油膜回収装置および防液堤を備えた貯油設備

【課題】人力によらず、また特別なランニングコストを必要とすることなく連続的な油膜の除去処理を行い得る連続油膜回収装置を提供する。
【解決手段】外周面21Aに接触する油膜11を付着し得るよう加工され、中心を通る軸周りに回転自在にフレーム22に支持されている大回転ドラム21と、大回転ドラム21を連続的に回転させる空気モータ24と、大回転ドラム21の外周面21Aに押し当てられて油膜11を拭取る小回転ドラム23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続油膜回収装置および防液堤を備えた貯油設備に関し、特に表面に油膜が形成された状態で溜まった雨水を定期的に外部に排出する側溝の前記油膜を除去する際に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来技術に係る防液堤を備えた貯油設備の一例を示す構造説明図である。当該貯油設備は、貯油タンク1、防液堤2、側溝3、油分離槽4を有している。ここで、貯油タンク1は、床面5に配設され、石油等の油分を含む液体である燃料を貯留している。防液堤2は貯油タンク1で漏油が発生した場合に、この漏油を外部に流出させないようにするための堤防となるもので、貯油タンク1の周囲を取り囲むように配設してある。側溝3は防液堤2の内周面に沿って床面5に設けてあり、防液堤2内の雨水等を集積するとともに、集積した雨水等を排水口9を介して外部に排出するように構成してある。油分離槽4は排水弁6を介して流入する側溝3からの雨水等から油分を分離処理して防潮堤7の外側の海中8に排出する。
【0003】
ここで、側溝3に溜まる雨水10の表面には、一般に貯油タンク1の配管の継ぎ目等から漏れ出る少量の漏油により油膜11が形成される。このように油分が浮いた雨水10をそのまま防液堤2の外部に排出した場合には、環境汚染の問題が発生する。そこで、側溝3から流出した雨水等を油分離槽4で油分の分離処理を行った後、海中8等の環境に排出している。また、排水弁6は通常は閉めてあり、定期的に開いて側溝3に溜まった雨水等を防液堤2の外部に排出している。
【0004】
一方、側溝3に溜まる雨水10の表面に浮遊する油膜11が厚くなり、油量が多くなると油分離槽4で処理して海中8に排出する雨水10に油分が混ざってしまい、この場合には排出された油分が環境汚染の原因となるという問題を生起する。
【0005】
そこで従来は、側溝3の雨水10の表面に浮遊する油膜11を作業員が容器等で汲み取ることにより人力で定期的に除去している。ちなみに、油膜11に接触させた状態で雨水10に浮かべることにより油膜を付着して回収するものとしてオイルキャッチャーが知られている。しかしながら、油膜の成分によっては、オイルキャッチャーでは回収できない場合があり、回収できたにしてもその据え付けおよび回収は人力によらなければならない。
【0006】
なお、鉱物油を含む汚水中の油分を連続的に除去する装置として特許文献1がある。これは、水に浮く性質を有しかつ動植物油及び鉱物油をゲル化しうる物質をゲル化剤として用い、連続的に導入される汚水の導入領域に、ゲル化剤を水とともに連続的に又は間欠的に供給し、表層交流攪拌を行いつつ汚水中の油分をゲル化し、汚水表層に浮かぶゲルを分離板の下方揺動又は回転によって間欠的に汚水中に押し沈めて分離板上方に新しい反応層を形成し、分離板下方では掻取板によってゲルを分離板から掻き取って反応槽内の汚水から除去するようにしたものである。特許文献1によれば、油分を連続的に除去することは可能であるが、ゲル化剤を水とともに連続的に又は間欠的に供給しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−226008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑み、人力によらず、また特別なランニングコストを必要とすることなく連続的な油膜の除去処理を行い得る連続油膜回収装置および防液堤を備えた貯油設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、
外周面に接触する油膜を付着し得るよう加工され、中心を通る軸周りに回転自在にフレームに支持されている回転ドラムと、
前記回転ドラムを連続的に回転させる駆動力を供給する回転駆動手段と、
前記回転ドラムの外周面に押し当てて前記外周面に付着された前記油膜を拭取る拭取手段とを有することを特徴とする連続油膜回収装置にある。
【0010】
本態様によれば、回転ドラムの下部の一部を表面に油膜が浮いた水中に浸漬することにより前記油膜を回転ドラムの外周面に付着させて回収することができる。一方、付着した油膜は拭取手段で拭取ることにより除去することができる。ここで回転ドラムは継続して回転されているので油膜は連続して回収される。
【0011】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する連続油膜回収装置において、
前記拭取手段は、
中心を通る軸周りに回転自在に支持されてその外周面が前記回転ドラムの外周面に当接され前記油膜を拭取る他の回転ドラムと、
前記回転ドラムと前記他のドラムとの当接部での回転速度が異なるように前記他の回転ドラムを回転させる他の回転駆動手段とを有することを特徴とする連続油膜回収装置にある。
【0012】
本態様によれば、他の回転ドラムの外周面が、前記回転ドラムの外周面に当接されており、しかも回転ドラムと他の回転ドラムの当接面での相対回転速度が異なるので、他の回転ドラムで油膜を良好に拭取ることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、
第1または第2の態様に記載する連続油膜回収装置において、
前記回転駆動手段または、前記回転駆動手段および前記他の回転駆動手段は、
圧縮空気を駆動源とする空気モータで形成したことを特徴とする連続油膜回収装置にある。
【0014】
本態様によれば、油膜が揮発性でかつ発火性を有するものであっても、電動モータのように火花を発生することがないので、いわゆる防爆仕様として安全性を確保することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、
第1〜第3の態様のいずれか一つに記載する連続油膜回収装置において、
前記回転ドラムの外周面は静電気が帯電するように加工してあることを特徴とする連続油膜回収装置にある。
【0016】
本態様によれば、回転ドラムの外周面が容易に帯電されるので、その静電力を油膜に対する付着に利用することができ、かかる付着を容易、確実に行うことができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、
油分を含む液体を貯留している貯油タンクと、該貯油タンクの周囲を取り囲むように配設してある防液堤と、該防液堤の内周面に沿って前記貯油タンクが設置された床面に設けられて前記防液堤内の雨水を含む液体を溜めるとともに、最下流側に形成された排水口に連通する排水弁を介して内部に溜まった前記液体を外部に排出する側溝とを有する防液堤を備えた貯油設備であって、
前記側溝に溜まった雨水に前記連続油膜回収装置のいずれかひとつの前記回転ドラムの下部が一部浸漬されるよう、前記側溝に跨って前記連続油膜回収装置が配設されていることを特徴とする防液堤を備えた貯油設備にある。
【0018】
本態様によれば、防液堤内の側溝に溜まる雨水から良好に油膜を除去することができるので、安心して雨水を防液堤の外部に排出することができる。すなわち、環境負荷が小さい貯油設備とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転する回転ドラムの外周面に油膜を付着させて回収するとともに、回転ドラムの外周面に付着させた油膜を拭取手段で拭取り除去することができるので、例えば側溝の雨水の表面に浮遊する油膜を良好かつ迅速に、また安価なランニングコストで確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る連続油膜回収装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す連続油膜回収装置を防液堤を備えた貯油設備に適用した場合の当該貯油装置の一例を示す構造図である。
【図3】従来技術に係る防液堤を備えた貯油設備の一例を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態に係る連続油膜回収装置を示す斜視図である。同図に示すように、大回転ドラム21は外周面21Aに接触する油膜11を付着し得るよう加工され、中心を通る軸周りに回転自在にフレーム22に支持されている。すなわち、外周面21Aには、例えば帯電し易いプラスチック膜がコーティングしてある。外周面21Aが帯電した場合には、これを油膜11に接触させることにより静電気力で簡単に油膜11を外周面21Aに付着させることができるからである。ここでいう「油膜11を付着し得るよう加工」とは他の部材との接触により外周面が帯電される場合や、帯電器等により帯電させられる場合も含む。例えば外周面21Aに形成したコーティング膜が、後述する小回転ドラム23の拭取部材23Aと接触する際に帯電させられるように加工しておいても良い。
【0023】
他の回転ドラムである小回転ドラム23は、その中心を通る、大回転ドラム21の軸と平行な軸周りに回転自在にフレーム22に支持されるとともに、外周面に取り付けられた拭取部材23Aが大回転ドラム21の外周面21Aに当接されて油膜11を拭取るように構成してある。拭取部材23Aはタオルやスポンジ等の多孔質部材が好適である。これらは油膜11を良好に吸収するからである。
【0024】
また、拭取部材23Aはその拭取り機能が飽和した場合には交換する。したがって、例えば円筒状の多孔質部材を拭取部材23Aとして用意しておき、拭取り機能が飽和した場合には小回転ドラム23の芯材の軸方向に移動させて、小回転ドラム23の前記芯材から抜き、代わりの新しい多孔質部材を逆方向に移動させることにより小回転ドラム23の芯材に挿入して一体化する等の構造が好適である。交換作業が容易であるからである。
【0025】
大回転ドラム21および小回転ドラム23の回転駆動手段は何れも防爆仕様の空気モータ24,25で構成してある。これら空気モータ24,25は管路26,27を介して供給される圧縮空気を駆動源として回転するものである。したがって、油膜11が揮発性でかつ発火性を有するものであっても、電動モータのように火花を発生することがないので、安全性を確保することもできる。
【0026】
また、空気モータ24,25の回転数は大回転ドラム21と小回転ドラム23との当接部での相対的な回転速度が異なるように制御されている。このことにより小回転ドラム23の拭取部材23Aが、大回転ドラム21の外周面21Aに付着している油膜11を良好に拭取ることができる。本形態の場合には、小回転ドラム23の相対的な回転数が多くなるように制御されている。大回転ドラム21をゆっくり回し、雨水10の表面に浮遊する油膜11に接触する時間が長くなるように制御するほうが、油膜11を付着回収するのに有利であるからである。
【0027】
かかる本形態によれば、大回転ドラム21の下部の一部を表面に油膜11が浮いた雨水10中に浸漬させることにより油膜11を大回転ドラム21の外周面21Aに付着させて回収することができる。一方、付着した油膜11は拭取手段である小回転ドラム23の拭取部材23Aと当接させることにより拭取られて除去される。ここで大回転ドラム21は継続して回転されているので油膜11は連続して回収される。
【0028】
図2は図1に示す連続油膜回収装置を防液堤を備えた貯油設備に適用した場合の当該貯油設備の一例を示す構造図である。図2中連続油膜回収装置Iを除く他の部分は、図3と全く同様に構成してある。そこで、図3と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図2に示すように、図1に示す連続油膜回収装置Iは、側溝3に溜まった雨水10に、その下部が一部浸漬されるよう、側溝3に跨って配設されている。かかる態様で、側溝3に溜まった雨水10の表面に浮遊する油膜11(図2には図示せず。)を連続的に回収、除去する。
【0030】
この結果、本形態によれば、排水弁6を開くことにより、側溝3の雨水10を排出してもこの雨水10に浮遊していた油膜11は、連続油膜回収装置Iにより事前に可及的に除去されているので、防液堤2の外部に油分が排出されるのを可及的に防止し得る。また、少量の油分が排出されても油分離槽4での油分離処理により充分油分が除去された雨水10を海中8に排出することができる。
【0031】
なお、上記実施の形態において拭取手段は小回転ドラム23で形成したが、勿論これに限るものではない。大回転ドラム21の外周面21Aに多孔質部材で好適に形成し得る拭取部材を押し当てる構造となっていればそれ以上の特別な限定はない。このとき、拭取部材を、例えば無限軌道状に移動させて、外周面21Aに当接する部位が経時的に変わるような構造としておく必要がある。拭取った油膜11により拭取部材の拭取り機能が飽和するのを避けるためである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば大容量の石油を貯留する貯留タンクが防液堤の内部に配設されている貯油設備を所有する電力業界等の産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
I 連続油膜回収装置
1 貯油タンク
2 防液堤
3 側溝
4 油分離槽
5 床面
6 排水弁
21 大回転ドラム
21A 外周面
22 フレーム
23 小回転ドラム
23A 拭取部材
24,25 空気モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に接触する油膜を付着し得るよう加工され、中心を通る軸周りに回転自在にフレームに支持されている回転ドラムと、
前記回転ドラムを連続的に回転させる駆動力を供給する回転駆動手段と、
前記回転ドラムの外周面に押し当てて前記外周面に付着された前記油膜を拭取る拭取手段とを有することを特徴とする連続油膜回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載する連続油膜回収装置において、
前記拭取手段は、
中心を通る軸周りに回転自在に支持されてその外周面が前記回転ドラムの外周面に当接され前記油膜を拭取る他の回転ドラムと、
前記回転ドラムと前記他のドラムとの当接部での回転速度が異なるように前記他の回転ドラムを回転させる他の回転駆動手段とを有することを特徴とする連続油膜回収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する連続油膜回収装置において、
前記回転駆動手段または、前記回転駆動手段および前記他の回転駆動手段は、
圧縮空気を駆動源とする空気モータで形成したことを特徴とする連続油膜回収装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載する連続油膜回収装置において、
前記回転ドラムの外周面は静電気が帯電するように加工してあることを特徴とする連続油膜回収装置。
【請求項5】
油分を含む液体を貯留している貯油タンクと、該貯油タンクの周囲を取り囲むように配設してある防液堤と、該防液堤の内周面に沿って前記貯油タンクが設置された床面に設けられて前記防液堤内の雨水を含む液体を溜めるとともに、最下流側に形成された排水口に連通する排水弁を介して内部に溜まった前記液体を外部に排出する側溝とを有する防液堤を備えた貯油設備であって、
前記側溝に溜まった雨水に前記請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載する連続油膜回収装置の前記回転ドラムの下部が一部浸漬されるよう、前記側溝に跨って前記連続油膜回収装置が配設されていることを特徴とする防液堤を備えた貯油設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75249(P2013−75249A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215498(P2011−215498)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】