説明

連続法ポリエステル製造装置およびその運転方法

【課題】リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、経済性の高い方法でポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを循環再使用でき、高品質なポリエステルを経済的に、かつ安定して製造することのできる連続法を提供する。
【解決手段】少なくともスラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽および反応槽より留出するグリコールの分留回収用の蒸留塔よりなるリン化合物を添加してポリエステルを製造する連続法ポリエステル製造装置において、反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなり、蒸留塔(B)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと非接続である連続法ポリエステル製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの連続法ポリエステル製造装置ならびに該製造装置を用いた運転方法に関する。さらに詳しくは、経済的に実施することができて、かつ高品質なポリエステルが安定して得られる連続法ポリエステル製造装置ならびに該製造装置を用いた運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性および化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用、光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。
【0003】
現在、これらのポリエステルは、反応性を高めるために酸成分に対してグリコール成分を過剰に用いて、エステル化反応あるいはエステル交換反応により両末端にグリコールが縮合されたオリゴマーとして、これを高温、減圧下でエステル交換による脱グリコール反応、いわゆる重縮合反応により高分子量のポリエステルを得る2段階反応の方法がとられている。また、近年、製造コストが安いことより、芳香族ジカルボン酸とグリコールを原料とする、いわゆる直接エステル化法が主流になってきている。そして、それぞれ別の反応槽が用いられており、エステル化反応および重縮合反応ともに均一に段階的に反応を進行させるために、これらの反応装置はそれぞれ複数の反応槽を有している。
【0004】
直接エステル化法においては、ポリエステルの製造は芳香族ジカルボン酸とグリコールをスラリー調合槽でスラリーを調合しエステル化反応槽に供給されエステル化反応が行われる。芳香族ジカルボン酸が固体でありグリコールに不溶であることより、これらの原料はスラリー状でエステル化反応槽に供給されるが、このスラリーの流動性を確保するため、理論必要量以上のグリコールを原料として供給し、過剰部分を回収する方法が一般的である。また、エステル化されたオリゴマーは重縮合反応槽で脱グリコール反応によりポリエステルが生成される。これらの過剰使用のグリコールや重縮合反応により生ずるグリコールは回収され再使用する必要がある。これらのグリコールの回収、再使用の方法はポリエステルの製造コストに大きく影響を及ぼすので、各種方法が開示されている。
【0005】
エステル化反応槽の留出液の低沸点留分を精留除去しスラリー調合槽に循環し再使用する方法(特許文献1参照)、エステル化反応槽から排出されるエチレングリコールの低沸点留分を精留除去しエチレングリコール貯槽に供給するとともに、この一部を重縮合反応槽に設けられた湿式コンデンサーの循環液として用い凝縮液をエチレングリコール貯槽に供給し、該エチレングリコール貯槽に滞留したエチレングリコールをスラリー調合用に再使用する方法(特許文献2参照)、重縮合反応槽より発生する留出液を湿式コンデンサーにて凝縮し、エステル化反応槽に設けられた蒸留塔へ送り低沸点留分を除いた後、スラリー調合槽に戻して再使用する方法(特許文献3参照)、重縮合反応槽で発生する留出液を連続的に単蒸留し、この連続単蒸留缶の底部抜き出し液を回分式単蒸留缶に送液して単蒸留を行い、初留部分を除いた蒸留液を重縮合反応ガスの凝縮用冷媒液の一部と使用する方法(特許文献4参照)、エステル化反応槽留出液および重縮合反応槽留出液の一部は低沸点留分を精留除去し、重縮合反応槽留出液の残りの一部は低沸点留分と高沸点留分を除去し、スラリー調合に循環し再使用する方法(特許文献5参照)、エステル化反応2段階目の反応槽から排出される留出液を蒸留精製せずに直接、原料の一部、または全量として再使用する方法(特許文献6参照)、重縮合反応槽からの留出液をフラッシュ蒸留により低沸点留分を精留除去して原料グリコールの一部として再使用する方法(特許文献7参照)が開示されている。
【特許文献1】特開昭53−126096号公報
【特許文献2】特開昭55−56120号公報
【特許文献3】特開昭60−163918号公報
【特許文献4】特開平8−325363号公報
【特許文献5】特許第3424755号公報
【特許文献6】特開平10−279677号公報
【特許文献7】WO01/083582号公報
【0006】
一方、ポリエステルの製造においては、エステル化やエステル交換反応触媒に用いられる金属化合物の封鎖、ポリエステル製造工程で例えば金属化合物との反応により微粒子を析出させるいわゆる内部粒子法あるいはポリエステルに静電密着性を付与するために添加する金属化合物の封鎖や静電密着特性の向上のため等にリン化合物が添加される場合が多い。これらのリン化合物はその一部が留出グリコールに混入する。該留出グリコールに混入したリン化合物は再使用の際に上記反応に影響するのでその混入を阻止あるいは制御する必要があるが、上記の特許文献において開示された技術では、循環再使用されるグリコールへのリン化合物の混入に関しては全く配慮がなされていない。
【0007】
例えば、特定構造のリン化合物を用いた内部粒子法によるポリエチレンテレフタレートの製造方法おいて、リン化合物の一部がエチレングリコールと共に系外に留出し、このエチレングリコールを再使用すると、エステル交換反応や析出粒子の粒子径や粒子量が変化しフィルムとした時、望みの表面特性を与えるポリエステルが再現よく得られないという課題が知られている。該課題を解決する方法として、ポリエステルの製造工程より留出したエチレングリコールをアルカリ化合物の存在下で加熱処理後蒸留したエチレングリコールを使用する方法(特許文献8)、留出エチレングリコールを同容量以上の水を加えて加熱して、混入したリン化合物を水と共に留去させて得たエチレングリコールを使用する方法(特許文献9参照)および留出エチレングリコールに対して0.2〜10wt%の水を添加し加熱処理した後、蒸留して回収したエチレングリコールを使用する方法(特許文献10参照)が開示されている。
【特許文献8】特開昭57−14619号公報
【特許文献9】特開昭57−14620号公報
【特許文献10】特開昭59−96124号公報
【0008】
上記方法はリン化合物の回収エチレングリコールに混入を阻止する方法としては有効な方法であるが、経済性の点で不利であるという課題を有する。
従って、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、ポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを経済性の高い方法で留出グリコールに混入するリン化合物を除去し循環再使用できる方法の確立が強く嘱望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、経済性の高い方法でポリエステルの製造工程で留出されるグリコールを循環再使用でき、高品質なポリエステルを経済的に、かつ安定して製造することのできる連続法ポリエステル製造装置ならびに該連続法ポリエステル製造装置の運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、少なくともスラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽および反応槽より留出するグリコールの分留回収用の蒸留塔を有する、リン化合物を添加してポリエステルを製造する連続法ポリエステル製造装置において、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽より前に設置された反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなり、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽およびそれ以降の反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(B)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽およびスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと非接続であることを特徴とする連続法ポリエステル製造装置である。
【0011】
この場合において、上記蒸留塔(B)が1基よりなり、該蒸留塔(B)の中段より取り出される中留分の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなることが好ましい。
【0012】
また、この場合において、上記蒸留塔(B)が2基に分割されてなり1基目の蒸留塔(B1)の塔底部より取り出される分留残留液を2基目の蒸留塔(B2)に供給し、該蒸留塔(B2)の塔頂部より取り出される分留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなることが好ましい。
【0013】
また、この場合において、上記蒸留塔(A)および蒸留塔(B1)の少なくとも一方の塔底部より取り出される残留分の一部をそれぞれの蒸留塔に循環する循環ラインを設けてなることが好ましい。
【0014】
また、この場合において、上記蒸留塔(A)および蒸留塔(B1)の少なくとも一方の蒸留塔中段に温度検出器を設置してなることが好ましい。
【0015】
また、この場合において、上記蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインに近赤外線検出器を設置してなることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記の連続法ポリエステル製造装置にておいて、上記蒸留塔(B)の中段より取り出される分留液あるいは上記蒸留塔(B2)の塔頂部より取り出される分留液中のリン原子含有量が10ppm以下になるよう制御してなることを特徴とする連続法ポリエステル製造装置の運転方法である。
【0017】
この場合において、上記の連続法ポリエステル製造装置において、上記蒸留塔(A)塔底部より取り出される分留残留液中の水分量をX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内に制御することが好ましい。
【0018】
また、この場合において、上記の連続法ポリエステル製造装置において、アルカリ土類金属化合物を添加することが好ましい。
【0019】
また、この場合において、上記の連続法ポリエステル製造装置において、アルカリ金属化合物を添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による連続法ポリエステル製造装置および該連続法ポリエステル製造装置の運転方法により、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出されるグリコール中に混入するリン化合物が経済性の高い方法で除去され、該リン化合物によるポリエステルの重縮合触媒活性や品質に対する悪影響を回避し循環再使用できるので、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できるという利点を有する。さらには重縮合生産性を低下させることなく、かつ高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できるという極めて顕著な効果を奏する。さらに、ポリエステルの製造工程のエステル化反応工程におけるエステル化反応の変動が抑制されることにより得られるポリエステルの品質変動が抑制され、上記の高品質なポリエステルが安定して製造できるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の連続法ポリエステル製造装置は、少なくともスラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽および反応槽より留出するグリコールの分留回収用の蒸留塔を有する、リン化合物を添加してポリエステルを製造する連続法ポリエステル製造装置において、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽より前に設置された反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなり、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽およびそれ以降の反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(B)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽およびスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと非接続であることが重要である。
【0022】
本発明の連続法ポリエステル製造装置におけるエステル化反応槽および重縮合反応槽の数は限定されない。それぞれ2〜4が好ましい。
【0023】
例えば、複数のエステル化反応槽で実施する場合のエステル化反応は、複数のエステル化反応槽を直列に連結して、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施するのが好ましい。第1段のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段階のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段の反応条件と最終段階の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配することが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低縮合物が得られる。
【0024】
引き続き、上記低縮合物を重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは0.027〜0.0040Mpaである。また、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配することが好ましい。
【0025】
本発明の連続法ポリエステル製造装置を用いた該装置の運転においては、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(以下、留出物(A)と略記することもある)とリン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(以下、留出物(B)と略記することもある)を区分して処理することによりグリコールを回収し、該回収グリコールを前記した原料グリコールの一部または全量として循環再使用することが好ましい。
【0026】
前述のごとく、ポリエステルの製造工程において添加されるリン化合物はその一部が留出グリコールに混入するために、該留出グリコールを再使用する場合には、回収グリコール中にリン化合物の混入を阻止あるいは制御する必要がある。特に、ポリエステルの静電密着性を向上させるために、リン化合物に加えて、アルカリ土類金属化合物およびアルカリ金属化合物を反応系に添加し、これらの原子の原子数比を特定範囲にする方法においては、リン化合物のリン原子の量により静電密着性が大きく変化する。また、重縮合触媒としてチタン系、錫系あるいはアルミニウム系触媒を用いる場合もリン化合物の量は重縮合触媒活性に大きく影響する。
【0027】
従って、本発明における連続ポリエステル製造装置の運転方法においては、上記回収グリコール中のリン原子含有量が10ppm以下になるようにして循環再使用するのが好ましい。8ppm以下がより好ましく、5ppm以下がさらに好ましい。リン原子含有量が10ppmを超える回収グリコールを使用した場合は、ポリエステルに残存するリン原子の量の設計値からの変動により、静電密着性や触媒活性が不安定になり、品質や操業性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0028】
ポリエステルの製造工程で添加されたリン化合物は該工程において化学反応によりその構造が変化をして、例えば、グリコールのリン酸エステル等の構造になっており、留出するグリコール中に含まれるリン化合物はグリコールより高沸点化合物に変質している。従って、上記の回収グリコール中のリン原子含有量が10ppm以下になるようにするには上記蒸留において高沸点留分を分留除去するのが好ましい。
【0029】
一方、ポリエステルの製造工程より留出するグリコール中にリン化合物が含まれていなければ、水等の低沸点混入物を分留除去するのみで、高沸点留分を分留除去せずに循環再使用してもポリエステルの品質等に悪影響を及ぼすことが少ないので、高沸点留分を除去せず循環再使用するのが好ましい。両者を区分して回収処理し循環再使用することは、経済性、すなわち、運転経費の節減と設備の簡略化に大きく寄与する。
【0030】
リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(A)は、水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが好ましい。
【0031】
一方、リン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(B)は、水を主体とした低沸点留分とポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去した中留分をポリエステル製造用のグリコールの一部または全量として再使用することが好ましい。該留出物(B)も留出物(A)と同様に水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分をエステル化反応用のグリコールの一部または全量として再使用する方法、すなわち、特許文献3に記載の方法に準じた方法で実施した場合は、回収グリコールにリン化合物が混入して、ポリエステルに残存するリン原子の量が設計値から変動する。その結果、静電密着性や触媒活性が不安定になり、品質や操業性に悪影響を及ぼす場合があるので好ましくない。一方、留出物(A)も留出物(B)と同様に低沸点留分と高沸点留分を分留除去した中留分をエステル化反応用のグリコールの一部または全量として再使用した場合は、留出物(A)の処理が過剰となり設備および運転経費の増大に繋がり経済的に不利となり好ましくない。一般に、留出物(A)は留出物(B)に比して量が多いので、本発明の方法である両者を区分して回収処理し循環再使用することは、経済性、すなわち、運転経費の節減と設備の簡略化に大きく寄与する。
【0032】
すなわち、本発明の連続法ポリエステル製造装置における留出物の蒸留塔を用いた分留処理によるグリコールの回収およびその回収グリコールの循環再使用する方法においては、リン化合物を添加する前の反応槽より留出する留出物(A)は、水を主体とした低沸点留分を分留除去し、残留分(A’)を回収グリコールとして循環再使用できる構造になっていることが好ましい。
【0033】
一方、リン化合物を添加した反応槽およびそれ以降の反応槽より留出する留出物(B)は分留による残留分は回収グリコールとして循環再使用しない構造になっており、かつ水を主体とした低沸点留分とポリエステルオリゴマーやリン化合物等を含む高沸点留分を分留除去した中留分(B’)を回収グリコールとして循環再使用できる構造になっていることが好ましい。
【0034】
従って、本発明の連続法ポリエステル製造装置においては、前述のごとく、上記したポリエステル製造装置のリン化合物の供給ラインを設けた反応槽より前に設置された反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなり、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽およびそれ以降の反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(B)塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽及びスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと非接続であることが好ましい。
【0035】
上記留出物(B)の分留を行う上記蒸留塔(B)は、1基よりなり、該蒸留塔の中段より取り出される中留分の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽と接続されてなるか、あるいは上記蒸留塔(B)が2基に分割されてなり1基目の蒸留塔(B1)の塔底部より取り出される分留残留液を2基目の蒸留塔(B2)に供給し、該蒸留塔(B2)の塔頂部より取り出される分留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなることが好ましい。どちらで実施しても構わないが、後者の方が、効率的な分留ができるので、蒸留塔の設備費や運転経費の低減に繋がる。
【0036】
なお、上記の回収グリコールの供給ラインと接続されてなるとは、回収グリコールをスラリー調製槽に供給するラインに繋がっている箇所と接続されておればその内容は問わない。すなわち、上記の送液ラインで送液される分留液が最終的にスラリー調製槽に繋がっており、該回収グリコールの供給ラインあるいは該供給ラインと繋がっている貯槽タンク等に接続している状態をさしている。また、非接続とは、最終的にスラリー調製槽に繋がっていないことを示す。
【0037】
上記方法に用いられる蒸留塔の性能は限定されないが、蒸留塔(A)および(B1)は、8〜15段が好ましい。また、蒸留塔(B2)は20〜30段が好ましい。また、蒸留塔(B)は、30〜50段が好ましい。泡鐘カラムおよび充填カラムのどちらでもよい。還流比は蒸留塔の段数や回収グリコールの要求品質により適宜設定される。蒸留塔を複数設けて実施する場合は、全蒸留塔を同じ性能のものを用いてもよいし、それぞれの性能を変えてもよい。第2エステル化反応槽以降の留出分の分留物を第1エステル化反応槽の留出分の分留用蒸留塔に供給し再分留する場合は第1エステル化反応槽に設置する蒸留塔より第2エステル化反応槽に設置する蒸留塔は段数を低くしてもよい。
【0038】
本発明において、エステル化反応槽からの留出物の低沸点留分の分留除去は、留出物自体が有する熱により連続的に行うことが好適である。このことにより、運転経費の節減と設備の簡略化をより高めることができる。必要に応じて、配管の加熱や熱交換により補助加熱してもよい。
【0039】
上記の蒸留塔(A)および(B1)の少なくとも一方においては、これらの蒸留塔の底部より抜き出した残留分の一部をそれぞれの蒸留塔に循環させること(以下、蒸留塔液循環法と称する)が好ましい実施態様である。該方法の実施により、該残留分の送液ラインのライン詰りの発生が抑制され、長期の安定生産が可能となる。ポリエステル製造工程で留出するグリコール中には、飛沫同伴等によりポリエステルのオリゴマー類等よりなるグリコールに難溶性あるいは不溶性の固形分が含まれる。該固形分は、当然のことであるが上記蒸留において、蒸留塔残留分中に含まれポリエステル製造工程に循環される。従って、ポリエステルの製造を長期に渡り連続して実施した場合に、該残留分の送液ラインにおいて、残留分中に存在する固形分あるいは送液ライン中で析出する固形分により該送液ラインの送液性の低下やライン詰まりが発生し安定運転が困難な場合があるという課題を有しておりその改善が嘱望されていた。本発明は上記の極めて単純な方法で該課題を解決したものである。上記蒸留塔液循環法の実施により上記課題が解決される理由は明確でないが、残留分の送液流量および流速の増加、液温度維持、該温度変動抑制および残留分の蒸留塔内の滞留延長による固形分の構造変化等の複数の要因の総和により固形分の析出が抑制されることにより引き起こされるものと推察される。ここで、構造変化は、化学変化と物理変化の両方の効果が加味されていると推察される。すなわち、化学変化としては、固形分中のオリゴマーのグリコリシスによる低分子量化によりグリコールへの溶解性の向上および結晶性低下等が、また、物理変化としては固形分の結晶性等の等の変化が考えられる。また、蒸留塔液循環法の実施は、ライン詰りの抑制に加えて分留精度の向上にも繋がる。
【0040】
従って、残留分の液温および該温度範囲の設定、蒸留塔底部の残留分の貯留容量、循環液の戻し位置および循環量等が重要となる。該条件は限定されないが、以下の方法が好ましい。例えば、循環液の戻し位置は、蒸留塔の中段から蒸留塔底部の残留分の貯留部の最上部が好ましい。蒸留精度向上の点では蒸留塔の中段への戻しが好ましいが、温度管理の点では不利になる。両者のバランスにおいて適宜決定される。また、該循環液の蒸留塔への供給は該液を噴霧状態で供給するのが好ましい。該対応により分留効率の増進や蒸留塔トレイの飛沫同伴による汚染防止効果が付加される上に該供給液の供給量の安定化ができ、循環液の流量変動による循環ラインの詰まり発生が抑制できる。さらに、該循環ライン内での詰まり発生防止のために該循環ラインの配管内面をバフ研磨、または電解研磨処理をしたり、該配管の曲がり半径を大きくする等の対応をするのが好ましい。循環に用いるポンプはリバース形とノンリバース形のどちらでもよいが、リバース形が好ましい。貯留量は循環量に対し25〜70質量%に保つことが好ましい。該循環量は残留分の30〜75質量%が好ましい。
【0041】
また、蒸留塔の液面の制御について例えば、エステル化反応槽から留出するグリコールの他に蒸留塔に加えるグリコールの流量を制御することが考えられる。蒸留塔に加えるグリコールは新規グリコール、重合工程で発生し回収したグリコール、他の蒸留塔から留出したグリコール、別の系から回収したグリコールのいずれを用いてもよい。蒸留塔に加えるグリコールの流量は直接的制御する必要は無く、グリコール貯留槽やその前工程の液面や温度などを制御することにより間接的に流量を一定範囲内で規定するものであってもよい。また、蒸留塔からの抜き出し量により液面制御することも考えられる。この場合、抜き出し量は先にも述べたように貯留量を循環量に対し25〜70質量%に保ち、該循環量を残留分の30〜75質量%に保つ範囲内であることが好ましい。抜き出し量は直接的に流量制御する必要は無く、抜き出した液が流入する工程やその後工程の液面や温度などにより間接的に流量を一定範囲内に規定するものであってもよい。
また、循環液温度は、160〜180℃がより好ましい。164〜173℃がより好ましく、168〜175℃がさらに好ましい。該温度維持および温度制御のために循環ラインに温度調整機能を付加するのが好ましい。該温度が160℃未満の場合は、ライン詰り頻度が高くなる。逆に、180℃を超えた場合は、エネルギーロスの増加に繋がり経済的に不利となる。また、蒸留精度の低下に繋がる。
【0042】
一方、重縮合反応槽からの留出物は、湿式コンデンサーで冷却凝縮して回収されるので、加熱して蒸留塔に供給することが必要となる。従って、高沸点留分の分留除去は回分式で実施してもよい。
【0043】
さらに、本発明においては、設備費および運転経費が増大する留出物(B)の処理量を出来るだけ軽減するために、リン化合物の添加を第2エステル化反応槽以降のできるかぎりエステル化反応工程の後の方で行うことが好ましい。
【0044】
本発明においては、上記した連続法ポリエステル製造装置を用いて、上記蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液中の水分量をX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)に制御して運転するのが好ましい。本発明者等は、回収グリコールの最適な水分量について鋭意検討して上記範囲で制御することが好ましいことを見出した。X±1.5質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内がより好ましく、X±1.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内がさらに好ましい。一方、変動範囲の下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.1質量%が好ましく、±0.3質量%がより好ましい。水分量を該範囲に制御することにより、前記した水分量によるエステル化反応への影響の安定化と回収コストとのバランスが取れる。さらに、その上に、該回収グリコール中の水分によりカルボン酸とグリコールよりなるスラリーの流動性が向上し、エステル化反応の安定化に繋がり、結果としてポリエステルの品質の安定化に繋がるという効果が付加される。すなわち、ポリエステルの製造を新規グリコールのみで製造あるいは、回収グリコールの水分量を実質的に無水状態にして回収して製造する場合に比べて、回収グリコール中の水分によりスラリーの流動性が向上し、該スラリーのエステル化反応槽への供給精度が向上し工程や品質の安定化に繋げることができる。また、スラリー調製時のグリコール使用量を低くしてもスラリーの供給安定性が確保できるのでスラリー中のグリコール量比を下げても安定生産が可能となり経済的に有利となる。すなわち、設定値が3質量%を超えた場合は、スラリーの流動性の向上効果が飽和する上に、エステル化反応が不安定になりポリエステルオリゴマーの特性変動が大きくなり、結果として最終ポリエステルのカルボキシル末端基濃度や色調等の品質変動が大きくなるので好ましくない。逆に設定値が2質量%未満では、回収コストが上がり、かつスラリーの流動性が悪化するので好ましくない。また、変動範囲が±2質量%を超えた場合は、エステル化反応が不安定になりポリエステルオリゴマーの特性変動が大きくなり、結果として最終ポリエステルのカルボキシル末端基濃度や色調等の品質変動が大きくなるので好ましくない。
【0045】
上記の回収グリコール中の水分量を上記範囲にする方法は限定されないが、蒸留塔の圧力および温度の制御を行い、蒸留塔底部より取り出される分留の残留分中の水分量を制御するのが好ましい。
【0046】
蒸留塔の圧力は限定されないが、該蒸留塔に供給されるグリコールの発生源であるエステル化反応槽の圧力に影響を及ぼすので、該エステル化反応槽の好ましい圧力に設定するのが好ましい。該エステル化反応槽の圧力との関連および蒸留効率と蒸留に要するエネルギーとのバランス等を総合的なパフォーマンスより大気圧ないしは微加圧状態で実施するのが好ましい。
【0047】
従って、蒸留塔は塔頂圧力を大気圧〜300kPa(絶対圧)の範囲に設定して実施するのが好ましい。以下、圧力はいずれも絶対圧で表示する。圧力が300kPaを超えた場合は、分留精度の低下に繋がる。また、該塔頂圧力でエステル化反応槽の圧力調整をする方法においては、エステル化反応工程におけるジエチレングリコールの副生が増大に繋がるので好ましくない。さらに、エステル化反応槽の圧力の増大により、圧力変動によるエステル化反応に対する影響度が大きくなるためにエステル化反応の変動が増大するので好ましくない。一方、下限は大気圧まで許容されるが、大気圧の場合は極端な低気圧になった場合等の折に大気圧変動により圧力の変動が起こることがあるので10kPa以上が好ましい。すなわち、10〜300kPaに保つことが好ましい。20〜250kPaがより好ましく、80〜200kPaがさらに好ましい。
【0048】
上記の蒸留塔の塔頂圧力の制御方法は限定されない。例えば、蒸留塔のベント配管に調圧弁を設置し、該調圧弁で調整する方法や該ベント配管を水封し、該水封の液面あるいは水封部分の配管の位置変更で調整する方法などが挙げられる。
【0049】
本発明は、グリコールとしてエチレングリコールを用いたポリエステルの製造方法に適用するのが好ましい。該グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合は、上記蒸留塔(A)の中段温度を106±3℃に制御して運転することが好ましい。一般に蒸留塔の制御は蒸留塔の塔頂温度で管理されるが、本発明の分留においては、該塔頂温度で管理して、蒸留塔の底部より取り出される残留分中の水分量に制御するには、極めて範囲の狭い温度制御をする必要がある。一方、例えば、特許文献1で開示されている塔底部の温度で管理した場合は、塔頂温度が成り行き任せとなり、塔頂より取り出される水を主体とした低沸点留分中のエチレングリコール量の変動が大きくなる。一般に、該低沸点留分は廃棄処分されるので該低沸点留分中のエチレングリコール量の変動が大きくなると廃液の処理負荷の変動に繋がり、環境負荷が増大するので好ましくない。蒸留塔中段の温度管理をすることにより、上記課題のバランスが取れる。なお、中段温度とは、蒸留塔の棚段のほぼ中央部を意味している。すなわち、棚段数が奇数段の場合は中央の棚段部に、偶数の場合は、2分割した各分割部の中央側の棚段のいずれかの部分の温度を指す。該温度範囲は106±2℃がより好ましい。該温度が103℃未満では、残留分中の水分量が上記範囲より多くなるので好ましくない。一方、110℃を超えた場合は、残留分中の水分量が上記範囲より少なくなり、かつ低沸点留分中のエチレングリコール量が増大し、該低沸点留分を廃液処理する場合の負荷が増大するので好ましくない。
【0050】
本発明においては、上記の回収グリコール中の水分量の制御方法として、近赤外線分光光度計を用いて回収グリコール中の水分量を定量し、該定量値により上記の蒸留塔(A)の中段温度を制御する方法で実施してもよい。その具体的な方法は限定されないが、例えば、蒸留塔底部あるいは、該蒸留塔底部よりスラリー調製槽に至る回収グリコールの送液ラインに近赤外線分光光度計の検出器を設置して該回収グリコール中の水分量をオンライン計測し、該計測値を蒸留塔の温度設定値にフィードバックして制御する方法が挙げられる。
【0051】
上記の近赤外線分光光度計を用いて定量することによりオンライン計測する場合の計測装置および測定波長は限定されない。
【0052】
計測器はオンラインで連続的に測定可能な近赤外分光光度計であれば、特に限定されない。例えば、NIRSシステムズ社(ニレコ社)、BRAN LUEBBEおよび横河電機社製の近赤外オンライン分析計等の市販品を使用してもよいし、本目的のためにシステム化した装置を製作して対応してもよい。
【0053】
測定波長は限定されない。水分既知のグリコールサンプルを用いて、感度が高く、かつ外乱の少ない波長を調査して適宜設定して検量線を作成して計測するのが好ましい。例えば、1922nmの波長を用いるのが好ましい。また、複数の波長を組み合わせた検量線より算出してもよい。
【0054】
上記方法で回収されたグリコールの再使用方法は限定されない。グリコール貯槽に蓄えた後に、ポリエステル製造用のグリコールとして再使用するのが好ましい。留出物(A)
および(B)からの回収グリコールはそれぞれ別個の貯槽に蓄えてもよいし、一括して蓄えてもよい。また、回収されたプラントで使用してもよいし、別プラントで使用してもよい。また、留出物(A)の場合は、蒸留塔下部の体積を大きくしてこの部分に貯留をしてもよい。
【0055】
本発明においては、必要に応じて、工程内、外において未精製あるいは精製グリコールを濾過等の処理を行いポリエステルオリゴマー等の固形分を除去し、配管詰りを回避したり、純度を向上させる等の方法を取り入れることも好ましい実施態様である。
【0056】
上記した連続法ポリエステル製造装置を用いて、芳香族ジカルボン酸とグリコールをスラリー調製槽にて混合しスラリーとなし、該スラリーをエステル化反応槽に供給して複数のエステル化反応槽を用いてエステル化反応を行い、得られたポリエステル低重合体を続いて重縮合反応槽に供給して重縮合することによりポリエステルを連続製造される。
【0057】
本発明で用いられる芳香族ジカルボン酸としては、例えばオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4、4’
−ビフェニルジカルボン酸、4、4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’−ビ
フェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカル
ボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などが挙げられる。
また、全ジカルボン酸に対して30モル%以下あればジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5―ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸を併用してもよい。
【0058】
また、本発明のポリエステルには、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール等の三官能以上の多官能化合物あるいは安息香酸、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の化合物を全ジカルボン酸に対して5モル%以下の範囲で用いることができる。
【0059】
炭素数2〜4のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは1,4−ブタンジオールが挙げられる。
また、全グリコールの30モル%以下であれば、炭素数2〜4のアルキレングリコール以外のグリコールとしては、例えばエチレングリコール(主たるグリコールがエチレングリコール以外のとき)、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール(主たるグリコールが1,3−プロパンジオール以外のとき)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(主たるグリコールが1,4−ブタンジオール以外のとき)、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール成分は、1種のみで用いても、あるいは2種以上を併せて用いてもよい。また、当然ながら、炭素数2〜4のアルキレングリコールが全グリコール成分に対して100モル%であってもよい。
【0060】
これらグリコール以外に、全グリコールの5モル%以下であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0061】
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3―ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p―(2―ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4―ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0062】
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0063】
本発明のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)が好ましく、これらのうちPETが特に好ましい。
【0064】
本発明のポリエステルの製造は重縮合触媒の存在下で行われる。
本発明において使用される重縮合触媒は、公知の反応触媒であり、例えばアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物およびアルミニウム化合物等を用いることができる。
【0065】
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが好適であり、特に好ましくは三酸化アンチモンである。また、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが好適であり、特に好ましくは二酸化ゲルマニウムである。二酸化ゲルマニウムとしては、結晶性のものと非晶性のものもいずれもが使用できる。
【0066】
チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
【0067】
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0068】
また、アルミニウム化合物としては、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩が挙げられる。これらのうちカルボン酸塩が特に好ましい。
このような触媒を供給する位置や供給方法については、特に限定されるものではなく、製造条件に対応して適宜決定すればよい。
【0069】
本発明では、リン化合物の使用が必須である。リン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0070】
本発明においては、前述した連続法ポリエステル製造装置を用いたポリエステルの製造によるポリエステルの製造において、アルカリ土類金属化合物を添加するのが好ましい。さらに、アルカリ金属化合物を添加するのがより好ましい。
【0071】
アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csであり、特に好ましくはNaまたはK化合物の使用である。アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に高度な静電密着性を付与するためには、Mg化合物またはCa化合物を使用することが好ましい。
【0072】
上記のアルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0073】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルが着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。
【0074】
従って、本発明で好適に使用することのできるアルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物としては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0075】
上記アルカリ金属化合物あるいはアルカリ土類金属化合物の添加場所は限定されないが、最終エステル化反応槽出口の移送ラインまでの間に添加するのが好ましい。
【0076】
上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物を添加することにより、ポリエステルの静電密着性を向上させることができる。ポリエステルの静電密着性とは、例えば、ポリエステルをフィルムやシートに溶融押出し法で成型する場合のキャスティング時に必要な特性である。すなわち、押出口金から溶融押出したフィルム状物を回転冷却ドラムで急冷する際、該フィルム状物の表面に静電荷を析出させ、フィルム状物を冷却ドラムの表面に静電力で密着させる静電密着法が知られている。しかし、この方法においては、生産能力を高めるために冷却ドラムの回転速度を上げるとフィルム状物と冷却ドラムとの密着力が減少し、フィルム状物と冷却ドラムとの間に気体を噛み込むようになるピンナーバブルの発生がおこり、厚み斑や外観不良発生の原因となる。静電密着性とは、この静電密着法において、大きな静電密着力が付与でき、高速でキャスティングしても厚み精度の高い製膜製品が得られるポリエステル樹脂の特性である。
【0077】
近年ポリエステルフィルムやシートに対する品質に対する要求特性はますます厳しくなり、それに伴い厚み精度を向上させることが重要な要件となってきており、上記の静電密着性は、ポリエステルの重要な特性の一つである。
【0078】
この静電密着性はポリエステルの溶融比抵抗と相関しており、ポリエステルの溶融比抵抗により静電密着キャスト法においてピンナーバブルの発生を抑制しながらキャストできる最高のキャスティング速度、すなわち静電密着性が変化する。溶融比抵抗が低ポリエステルほど、高速でキャスティングすることが可能となり、フィルム生産性の面から非常に重要である。
【0079】
ポリエステルの溶融比抵抗は、0.5×108Ω・cm以下であることが好ましい。溶融比抵抗が0.5×108Ω・cmより高ければ、静電密着性が悪化し、キャスティング速度が遅くなり生産性が悪くなる。好ましくは、0.4×108Ω・cm以下、さらに好ましくは、0.3×108Ω・である。一方、耐熱性や着色の点から、下限値は0.05×108Ω・cmとすることが好ましく、特に好ましくは0.09×108Ω・cmである。
【0080】
ポリエステルに溶融比抵抗に付与する方法としては、上記のアルカリ土類金属化合物、アルカリ金属化合物およびリン化合物をポリエステルに添加し、これらの原子の原子数比を特定範囲にすることが好ましい実施態様である。この場合、リン原子の量によりポリエステルの溶融比抵抗が大きく変化するので厳密な制御が必要である。
【0081】
アルカリ土類金属化合物は、アルカリ土類金属原子の残存量として、ポリエステルに対し3〜200ppmとなるように反応系に添加することが好ましい。アルカリ土類金属原子の残存量が3ppm未満では、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。一方、200ppmを超えた場合は、ポリエステルの熱安定性が低下しやすくなり、ポリエステルの着色が増大しやすくなる。
【0082】
ポリエステル中のアルカリ土類金属原子の残存量は、静電密着性の点から、下限値を5ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは10ppm、特に好ましくは15ppmに制御する。一方、熱安定性の点から、上限値を160ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは120ppm、特に好ましくは100ppmに制御する。
【0083】
また、アルカリ金属化合物は、アルカリ金属原子の残存量として、ポリエステルに対し0.5〜20ppmとなるように反応系に添加することが好ましい。アルカリ金属原子の残存量が0.5ppm未満では、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。さらに、副反応であるグリコール成分同士の縮合反応が増加し、例えば、グリコール成分としてエチレングリコールを用いた場合は、ジエチレングリコールの副生が増大する。該副反応の増大により、ポリエステルの融点低下や熱酸化安定性等の品質が低下しやすくなる。一方、50ppmを超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗の低下やグリコール成分同士の縮合反応の抑制効果が頭打ちになり、かつポリエステルの着色が増大により色調の低下が起こりやすくなる。
【0084】
ポリエステル中のアルカリ金属原子の残存量は、静電密着性、副生成物による融点低下や熱酸化安定性の点から、下限値を1ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは2ppm、特に好ましくは3ppmに制御する。一方、色調の点から、上限値を40ppmに制御することがより好ましく、さらに好ましくは30ppm、特に好ましくは20ppmに制御する。
【0085】
また、リン化合物は、ポリエステル中の残存量として、リン原子/アルカリ土類金属原子の原子数比で0.1〜5.0の範囲となるように、添加量を制御することが好ましい。
【0086】
また、リン化合物は、ポリエステル中の残存量として、リン原子/アルカリ土類金属原子の原子数比で0.1〜5.0の範囲となるように、添加量を制御することが好ましい。
【0087】
リン原子/アルカリ土類金属原子(残存原子数比)が、0.10未満ではポリエステルの熱安定性が低下しやすくなる。一方、リン原子/アルカリ土類金属原子(原子数比)が5.0を超えた場合は、ポリエステルの溶融比抵抗が大きくなり、静電密着性が悪化しやすくなる。リン原子/アルカリ土類金属原子(残存原子数比)は、熱安定性の点から、下限値を0.15に制御することがより好ましく、特に好ましくは0.20に制御する。一方、静電密着性の点から、上限値を4.0に制御することがより好ましく、特に好ましくは3.0に制御する。
【0088】
本発明においては、上記したような製造方法のカルボン酸とグリコールとからなるスラリーをスラリー調製槽で調製してエステル化反応槽に連続的に供給する過程において、該スラリーの温度を設定値の±4℃以内に制御してエステル化反応槽に定量供給することが好ましい。該スラリー温度は設定値の±3℃以内に制御するのがより好ましく、±2℃以内に制御するのがさらに好ましい。±1℃以内に制御するのが特に好ましい。±4℃を超えた場合は、上記の回収グリコール中の水分量を本発明の範囲に制御しても、エステル化反応の進行の変動が大きくなりポリエステルオリゴマー(以下単にオリゴマーと称することがある)のカルボキシル末端基濃度の変動が大きくなる場合あり、後続の重縮合反応の進行や最終製品であるポリエステルの色調や透明性等の品質変動に繋がるので好ましくない。一方、下限は無変動である±0℃が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.1℃が好ましく、±0.3℃がより好ましい。
【0089】
スラリー調製槽におけるスラリー調整はバッチ式で実施してもよい。バッチ式スラリー調製法は、スラリー調製における重要工程管理項目であるスラリーのジカルボン酸とグリコールとの組成比の管理が容易となるので該管理の制御系を簡略化することができるという利点にも繋がる。また、該方法の場合は、スラリー貯留槽において、上記のジカルボン酸とグリコールとの組成比の調整が実施できるので、該組成比の変動抑制に繋げることもできるという利点を有する。該方法においては、スラリー調製を連続法やセミバッチ法で実施してもよい。また、該方法と前者の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0090】
上記スラリー温度の制御方法は限定されないが、上記スラリー調製槽の温度又はテレフタル酸温度を検出し、該調製槽に供給されるグリコール温度にフィードバックし制御するのが好ましい。また、スラリー温度制御はスラリー調製槽やスラリーの移送ラインに熱交換器を設置して制御してもよい。また、スラリー調製槽に循環ラインを設けてスラリー調製槽中のスラリーを循環させて温度制御の精度向上を図ってもよい。該方法の場合は、循環ラインにも温度制御機能を付加するのが好ましい。以上の方法を単独でおこなってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。また、スラリー調製槽出口からエステル化反応槽供給するまでの間にスラリー貯留槽を設けてスラリー温度制御の精度を高めてもよい。該方法の場合に、スラリー貯留槽に温度制御機構を付加してもよい。該スラリー貯留槽を設ける方法はスラリー調製槽におけるスラリー調整はバッチ式で実施してもよい。バッチ式スラリー調製法は、スラリー調製における重要工程管理項目であるスラリーのカルボン酸とグリコールとの組成比の管理が容易となるので該管理の制御系を簡略化することができるという利点にも繋がる。また、該方法の場合は、スラリー貯留槽において、上記のカルボン酸とグリコールとの組成比の調整が実施できるので、該組成比の変動抑制に繋げることもできるという利点を有する。該方法においては、スラリー調製を連続法やセミバッチ法で実施してもよい。また、該方法と前者の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0091】
上記設定値は限定されないが室温から180℃が好ましい。本発明においては、ポリエステルの製造工程で発生する回収グリコールがスラリー調製のグリコールの一部と使用される。該回収グリコールは加温状態にある。従って、該設定温度は加温状態が好ましく70〜160℃がより好ましい。
【0092】
本発明においては、エステル化反応槽へ供給されるスラリーは定量供給を前提としている。すなわち、スラリーのエステル化反応槽への供給量を設定値±3%以内に制御することが好ましい。±2.5%以内がより好ましく、±2.0%以内がさらに好ましい。下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より±0.3%が好ましく、±0.5%がより好ましい。供給量の変動が設定値±3%を超えた場合は、本発明の効果が十分に発現できない場合がある。
【0093】
上記スラリーの供給量の制御方法は限定されない。例えば、流量計を用いて設定流量になるように送液ポンプ回転数を変更する方法、送液ラインの送液ポンプの後に、スラリー調合槽に戻るバイパスラインを設け、送液ポンプの回転数を一定回転とし、送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるようにバイパスラインに設けたコントロール弁の開度を調整する方法、スラリー調製槽と第1エステル化反応槽の位置に高低差を設けて、ヘッド圧でスラリーの送液を行い、該送液ラインに設けた流量計の流量が一定になるように送液ラインに設けたコントロール弁の開度調整により行う等が挙げられる。流量計の種類は限定されない。例えば、ローター流量計、ローターピストン流量計、オーバル流量計およびマイクロモーション流量計等が挙げられる。また、第1エステル化反応槽の液面レベルが一定になるように調整してもよい。
【0094】
また、本発明においては、スラリーを供給する第1エステル化反応槽の条件の変動を抑制することにより、本発明の効果が安定して発現することができる。
【0095】
例えば、該スラリーの中のカルボン酸とグリコールとのモル比もエステル化反応に影響するので一定範囲に制御することが好ましい。該変動範囲は、前記した公知技術の範囲で十分である。設定値±0.3%以内が好ましい。設定値±0.25%以内がより好ましく、設定値±0.2%以内がさらに好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.01%が好ましく、±0.02%がより好ましい。
【0096】
上記モル比の調整方法は限定されないが、オンラインで連続計測してスラリー調製槽へのカルボン酸および/またはグリコール供給量を調整する方法が好ましい。計測方法も限定されない。密度計や近赤外線分光光度計で計測する方法が挙げられる。
【0097】
また、エステル化反応は第1エステル化槽の温度、圧力および滞留時間(限定されたポリエステル製造ラインにおいては、反応槽の液面レベル)の影響を受けるので、該要因は設定条件範囲に制御することが好ましい。例えば、温度は設定値±3%以内が好ましく、±2%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、圧力は設定値±4%以内が好ましく、±3%以内がより好ましい。±2.5%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.2%が好ましく、±0.5%がより好ましい。また、液面レベルは設定値±0.2%以内が好ましく、±0.1%以内がより好ましい。一方、下限は無変動である±0%が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点より、±0.02%が好ましく、±0.05%がより好ましい。該液面レベルの制御は前記のスラリー流量制御を上記範囲にすることにより制御が可能である。
【0098】
本発明においては、上記の反応均一化のための制御を実施することにより、後続の重縮合反応や最終ポリエステルの品質に大きく影響を及ぼす最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動が抑制され、ポリエステルの品質の安定化が図れるが、上記したような製造方法において、最終エステル化反応槽出口のポリエステルオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を測定して、該カルボキシル末端基濃度変動によるフィードバック回路により第2エステル化反応槽以降に供給されるグリコール添加量を変更することで反応制御を行うことにより該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度の変動をより低減することができる。
【0099】
該オリゴマーのカルボキシル末端基濃度の平均値は限定されない。後続の重縮合反応の進行や最終製品であるポリエステルのカルボキシル末端基濃度等の要求により適宜設定される。例えば、後続の重縮合反応の進行、すなわち重縮合活性に関しては、ポリエステルの製造に用いられる重縮合触媒の種類により最適範囲が異なる。また、最終製品であるポリエステルのカルボキシル末端基濃度の設定に関しても、該ポリエステルの使用用途等により最適範囲が異なる。例えば、後続の固相重縮合の重縮合を考慮した場合は高め設定が、また、ポリエステルの加水分解安定性を要求される分野へ使用する場合は低め設定が好ましい。一般には、100〜1000eq/tonの範囲が好ましい。200〜900eq/tonがより好ましい。
【0100】
この場合において、オリゴマー中のカルボキシル末端基濃度の検出方法は限定されない。定時サンプリングによる評価による間歇評価法で行ってもよいし、例えば、最終エステル化反応槽出口部に、近赤外分光光度計等のカルボキシル末端基濃度をオンラインで連続測定できる検出器を設置してオンライン計測を行い連続評価法で行ってもよい。
【0101】
上記のオリゴマーのカルボキシル末端基濃度調整用に用いるグリコールは、前述のごとく回収グリコールや蒸留塔底部より抜き出される蒸留塔残留分を用いてもよいが、新規グリコールを用いた方が調製効果が安定するので好ましい。
【0102】
本発明においては、得られるポリエステルのカルボキシル末端基の標準偏差(s)が1.2以下であることが好ましい。1.1以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。
【0103】
回収グリコールの使用割合は制限がなく、適宜設定して使用することができる。全量を回収グリコール用いてポリエステルを製造してもよい。
【0104】
なお、本発明においては、回収PETボトルの化学分解回収法で得られたテレフタル酸やエチレングリコール等のリサイクル原料を用いることは、省資源や環境保護に役立つので好ましい実施態様である。
【0105】
本発明方法により得られたポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
【0106】
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0107】
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
【0108】
本発明のポリエステル重縮合触媒を用いて重縮合したポリエステルは常法の溶融紡糸法により繊維を製造することが可能であり、紡糸・延伸を2ステップで行う方法及び1ステップで行う方法が採用できる。さらに、捲縮付与、熱セットやカット工程を備えたステープルの製造方法やモノフィラメントなど公知の繊維製造方法がすべて適用できるものである。
【0109】
また得られた繊維は異型断面糸、中空断面糸、複合繊維、原着糸等の種々繊維構造となすことができ、糸加工においても例えば混繊、混紡、等の公知の手段を採用することができる。
【0110】
更に上記ポリエステル繊維は織編物或いは不織布、等の繊維構造体となすことができる。
【0111】
そして上記ポリエステル繊維は、衣料用繊維、カーテン、カーペット、ふとん綿、ファイバーフィル等に代表されるインテリア・寝装用繊維、タイヤコード、ロープ等の抗張力線、土木・建築資材、エアバッグ等の車輛用資材、等に代表される産業資材用繊維、各種織物、各種編物、ネット、短繊維不織布、長繊維不織布用、等の各種繊維用途に使用することができる。
【0112】
本発明のポリエステルは、中空成形体として好適に用いられる。
【0113】
中空成形体としては、ミネラルウオーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。
【0114】
これらの中でも、ポリエステルの持つ衛生性及び強度、耐溶剤性を活かした耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器として各種飲料用に特に好適である。中空成形体の製造は、溶融重合や固相重合によって得られたポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥後、押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって成形する方法や、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得る。さらに、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形などのブロー成型法により最終的な中空成形体が得られる。もちろん、上記の押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって得られた成形体を最終的な中空容器とすることもできる。
【0115】
このような中空成形体の製造の際には、製造工程で発生した廃棄樹脂や市場から回収されたポリエステル樹脂を混合することもできる。このようなリサイクル樹脂であっても、本発明のポリエステル樹脂は劣化が少なく、高品質の中空成型品を得ることができる。
【0116】
さらには、このような容器は、中間層にポリビニルアルコールやポリメタキシリレンジアミンアジペートなどのガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。また、蒸着やCVD(ケミカルベーパーデポジット)等の方法を用いて、容器の内外をアルミニウムなどの金属やダイヤモンド状カーボンの層で被覆することも可能である。
【0117】
なお、中空成形体の口栓部等の結晶性を上げるため、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加することもできる。
【0118】
また、本発明のポリエステルは押し出し機からシ−ト状物に押し出し、シートとすることもできる。このようなシートは、真空成形や圧空成形、型押し等により加工し、食品や雑貨用のトレイや容器、カップ、ブリスタ−パック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイとして用いる。また、シートは各種カードとして利用することもできる。
【0119】
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
【0120】
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
【0121】
本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは、フィルムに用いることができる。その方法は、ポリエステルを溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸シートを作成する。この際、例えば特公平6−39521号公報、特公平6−45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フィルムとしても良い。
【0122】
本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルは、配向ポリエステルフィルムに用いることができる。配向ポリエステルフィルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
【0123】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法のほか、横・縦・縦延伸法、縦・横・縦延伸法、縦・縦・横延伸法など、同一方向に数回に分けて延伸する多段延伸方法を採用することができる。
【0124】
さらに、延伸終了後、フィルムの熱収縮率を低減させるために、(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
【0125】
前述のごとく本発明のポリエステルは優れた静電密着性を有しているので、該フィルムの製造時のキャスティング工程には静電密着法を採用するのが好ましい実施態様である。
【0126】
得られた配向ポリエステルフィルムは、厚みが1μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下である。1μm未満では腰が無く取り扱いが困難である。また1000μmを超えると硬すぎて取り扱いが困難である。
【0127】
また、接着性、離型性、制電性、赤外線吸収性、抗菌性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、配向ポリエステルフィルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑高透明ポリエステルフィルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層を設け酸素、水、オリゴマーなどの各種バリア機能を付与したり、スパッタリング法などで導電層を設け導電性を付与することもできる。また、配向ポリエステルフィルムの滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、ポリエステルの重合工程で、無機及び有機塩粒子又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加して、フィルム表面に凹凸を形成させてもよい。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましいケースがある。
【0128】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等が挙げられる。
【0129】
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
【0130】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
【0131】
上記不活性粒子を基材フィルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフィルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
【0132】
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
【0133】
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
【0134】
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
【0135】
本発明の配向ポリエステルフィルムは、好ましくは帯電防止性フィルム、易接着性フィルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフィルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、プラズマディスプレイ用、タッチパネル用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、位相差フィルム用、偏光フィルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、感光性樹脂フィルム用、視野拡大フィルム用、拡散シート用、反射フィルム用、反射防止フィルム用、導電性フィルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用などに用いられる。
【0136】
帯電防止用フィルムとしては、例えば特許第2952677号公報、特開平6−184337号公報に記載の技術を用いることができる。易接着性フィルムとしては、例えば特公平07−108563、特開平10−235820、特開平11−323271号公報に、カード用としては例えば特開平10−171956、特開平11−010815号公報に記載の技術を本発明のフィルムに適用できる。ダミー缶用としては例えば特開平10−101103号公報に記載のシート状筒体の替わりに、本発明のフィルム上に意匠を印刷し筒状、半筒状にしたものを用いることができる。建材用、建材用化粧版、化粧材用としては、例えば特開平05−200927号公報に記載の基材シート、特開平07−314630号公報に記載の透明シートとして本発明のフィルムを用いることができる。OHP用(オーバーヘッドプロジェクタ用)としては特開平06−297831号公報に記載の透明樹脂シート、特開平08−305065号公報に記載の透明高分子合成樹脂フィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。インクジェット記録用としては、例えば特開平05−032037号公報に記載の透明基材として本発明のフィルムを用いることができる。昇華転写記録用としては例えば特開2000−025349号公報に記載の透明なフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。レーザービームプリンタ用、電子写真記録用としては例えば特開平05−088400号公報に記載のプラスチックフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。熱転写記録用としては例えば特開平07−032754号公報に感熱記録用としては特開平11−034503号公報にそれぞれ記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。プリント基板用としては例えば特開平06−326453号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。メンブレンスイッチ用としては例えば特開平05−234459号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。光学フィルタ(熱線フィルタ、プラズマディスプレイ用)としては、例えば特開平11−231126号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。透明導電性フィルム、タッチパネル用としては例えば特開平11−224539号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。マスキングフィルム用としては、例えば特開平05−273737号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真製版用としては例えば特開平05−057844号公報に記載の方法で本発明のフィルムを用いることができる。写真用ネガフィルムとしては例えば特開平06−167768号公報の段落番号(0123)に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。位相差フィルム用としては例えば特開2000−162419号公報に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。セパレータ用としては、例えば特開平11−209711号公報の段落番号(0012)に記載のフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。紫外線防止用としては例えば特開平10−329291号公報に記載のポリエステルフィルムとして本発明のフィルムを用いることができる。農業用フィルムとしては、特開平10−166534号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のフィルムを適用することにより得ることができる。粘着シートとしては例えば特開平06−122856号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明の配向ポリエステルフィルムを適用することにより得られる。
【0137】
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
【0138】
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
【0140】
1、固有粘度(IV)の測定
フェノール/テトラクロロエタン(60:40、重量比)混合溶媒を用いて、30℃で測定した。
【0141】
2、ポリマー溶融比抵抗(ρi)
275℃で溶融したポリエステル中に2枚の電極板を置き、120Vの電圧を印加した時の電流値(i0)を測定し、比抵抗値ρiを次式により求める。
ρi(Ω・cm)=A/l×V/ i0
ここで、A=電極面積(cm2)、l=電極間距離(cm)、V=電圧(V)である。
【0142】
3、静電密着性
押出機の口金部と冷却ドラムの間にタングステンワイヤー製の電極を設け、電極とキャスティングドラム間に10〜15KVの電圧を印加してキャスティングを行い、得られたキャスティング原反の表面を肉眼で観察し、ピンナーバブルの発生が起こり始めるキャスティング速度で評価する。キャスティング速度が大きいポリマー程、静電密着性が良好である。
【0143】
4、回収エチレングリコールの組成分析
試料液に30容量%のジメチルスルホキサイドを添加し、H−NMRおよびC−NMR測定を行い評価した。
【0144】
5、回収エチレングリコール中のリン原子含有量の定量
試料を硝酸マグネシウム共存下、550℃で灰化後、1.2M塩酸溶液としてから高周波プラズマ発光分析法により定量した。
【0145】
6、オリゴマーカルボキシル末端基濃度
オリゴマーを乾燥に呈すことなくハンディーミル(粉砕器)にて粉砕した。試料1.00gを精秤し、ピリジン20mlを加えた。沸石を数粒加え、15分間煮沸還流し溶解させた。煮沸還流後直ちに、10mlの純水を添加し、室温まで放冷した。フェノールフタレインを指示薬としてN/10−NaOHで滴定した。試料を入れずにブランクも同じ作業を行う。なお、オリゴマーがピリジンに溶解しない場合は、ベンジルアルコール中で行った。下記式に従って、AVo(eq/ton)を算出する。
AVo=(A−B)×0.1×f×1000/W
(A=滴定数(ml),B=ブランクの滴定数(ml),f=N/10−NaOHのファクター,W=試料の重さ(g))
【0146】
7、ポリマー酸価
試料15mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/CDCl3=1/1混合溶媒0.13mlに溶解し、CDCl3 0.52mlで希釈し、さらに0.2Mトリエチルアミン溶液(HFIP/CDCl3 1/9)を22μl添加した溶液を用いて、500MHzのH−NMR測定をして定量した。該定量を3回測定してその平均値を用いた。
【0147】
実施例1
エチレングリコール及びテレフタル酸をモル比が1.7となるようにスラリー調製槽に連続的に供給した。スラリー調製槽中のスラリー温度が90±2℃になるようにグリコール温度を制御した。スラリー調製槽の温度制御は連続的にスラリー調製槽温度と該調製槽に供給するグリコール温度を監視しながら、フィードバック回路により連続的にグリコール添加温度を熱交換器を用いて変更するとともに、スラリー調製槽にも温度調整機能を付け、該スラリー調製槽内スラリー温度が一定になるように制御をした。該スラリーと三酸化アンチモンを生成PETに対してアンチモン原子が160ppmとなる量とし、エステル反応槽へ連続的に供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次に、上第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるエチレングリコールを生成ポリマー(生成PET)に対し8重量%供給し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。次に、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してマグネシウム原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液、生成PETに対してナトリウム原子で5ppmとなる量の酢酸ナトリウムのエチレングリコール溶液および生成PETに対してリン原子が35ppmとなる量のトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。
【0148】
スラリー流量の変動率は設定値の±1.5%以内に制御した。該スラリー流量はロータリーピストン流量計を用いて送液ポンプの回転数を変えて調整した。また、エチレングリコール及びテレフタル酸をモル比は、±0.25%以内に制御した。該モル比の調整は、近赤外線分光光度計を用いてスラリーのテレフタル酸量を計測して、スラリー調製槽に供給するエチレングリコール量を調整することにより行った。また、第1エステル化反応槽の温度は±1.3%以内に制御した。また、第1エステル化反応槽の液面レベルの変動は±0.2%以内であった。エステル化反応槽の圧力は、エチレングリコールを回収する蒸留塔の塔頂圧力制御により行った。該オリゴマーを2時間毎にサンプリングをしてオリゴマーのカルボキシル末端基濃度を測定し、その測定値に基づき重縮合反応工程に供給するオリゴマーのカルボキシル末端基濃度量が一定となるようにフィードバック回路により自動的に計算された量のエチレングリコールを第2エステル化反応槽に添加することでエステル化反応制御を行った。該エチレングリコールは新規品を用いて175±2℃に調整し供給した。
【0149】
上記ポリエステル製造工程におけるエチレングリコールの流れを図1に示す。
スラリー調合槽2へ供給されるフレッシュエチレングリコールと回収エチレングリコールは質量比で約0.4:0.6である。
【0150】
第1エステル化反応槽3および第2エステル化反応槽4より留出する留出分は段数が15段の泡鐘タイプの蒸留塔9に供給され水を主体として低沸点留分を除去する。得られた残留分(A’)はエチレングリコール貯層17に供給される。ここで回収されるエチレングリコールはスラリー調合槽へ供給されるエチレングリコールの約半量になる。蒸留塔9は7段目に設置した温度検出器で検出した温度が106±2℃になるよう制御した。得られた回収エチレングリコール中の水分量は3±0.9質量%に制御されていた。この場合、蒸留に必要な熱は留出分自体が有する熱量で足りるので加熱の必要はない。
【0151】
第3エステル化反応槽5から留出する留出分は蒸留塔10に供給され水を主体として低沸点留分を除去し、高沸点留分除去用の蒸留塔14に供給される。蒸留塔10および14の段数はそれぞれ15および20段である。この場合、蒸留塔10における蒸留は、留出分自体が有する熱で蒸留できるので加熱は必要がない。
【0152】
3基の重縮合反応槽6〜8から留出する留出分は蒸留塔10に供給され水を主体として低沸点留分を除去し、高沸点留分除去用の蒸留塔14に供給される。ただし、これらの留出物は減圧系で発生するため各反応槽に設置された湿式コンデンサー23〜25で凝縮させてエチレングリコール凝縮液貯槽20〜22に供給された後に蒸留塔10に供給される。そのために、熱交換器22で蒸留のための熱量が供給される。この時、湿式コンデンサーに噴霧されるエチレングリコール液の温度の上昇を抑えるために冷却器23〜25で冷却し湿式コンデンサーに供給される。この凝縮液は各湿式コンデンサーで凝縮された凝縮液自体の自己循環で実施されるが、必要に応じて新規エチレングリコールを供給してもよい。また、上記凝縮液はエチレングリコール凝縮液貯槽20〜22に設置した金網で固形分を分離して蒸留塔10に供給した。
【0153】
蒸留塔9および10については、底部より取り出される残留分の一部をそれぞれの蒸留塔の中間部に循環させた。該循環液の温度は168℃近辺で安定していた。該循環により蒸留塔底部より取り出される残留液の送液ラインの詰まりは発生しなかった。該循環を取り止めると回収エチレングリコール中に含まれる固形分の析出が起こり、該送液ラインの詰まりが発生することがあった。蒸留塔9は7段目に設置した温度検出器で検出した温度が106±3℃になるよう制御した。得られた残留分はエチレングリコール貯層17および18に供給される。なお、蒸留塔9および10共に蒸留塔の塔頂の圧力を100kPa±2%以内に制御した。該圧力は蒸留塔ベント配管に設置した調圧弁で制御した。
【0154】
蒸留塔14で高沸点留分を留去した塔頂部留分[留出分(B)の中留分(B’)]はエチレングリコール貯層18に供給される。
【0155】
各蒸留塔で回収されたエチレングリコールの成分分析結果の一例を表1に示す。また、蒸留塔14で高沸点留分を留去した回収エチレングリコール中のリン原子含有量は2.5ppmであった。
【0156】
【表1】

【0157】
次いで、3段の連続重縮合反応槽において減圧下で連続的に重縮合反応を行った。生成したポリマーはストランド状にして抜き出し、水冷後にペレット状態にカットした。以上の方法により連続的にペレットを生産し、時間の異なる代表サンプルを採取した。そのサンプルの極限粘度、オリゴマー酸価、ポリマー酸価を測定した。そのサンプル間の平均値および標準偏差(s)を表2に示す。いずれの測定値も良好で安定に推移し、品質変動の小さいポリエステルが得られた。また、長期にわたり安定性生産ができた。
なお、表2に示した値は、12時間毎にサンプリングした50個のサンプル(25日分)の評価結果である。また、標準偏差(s)は下記式で求めた。
標準偏差(s)={(測定値―平均値)2の和/サンプル数(50)}1/2
【0158】
また、得られたポリエステルの代表サンプルの溶融比抵抗は0.21×108Ω・cmであり、最大キャスチング速度は62m/分であった。
【0159】
比較例1
実施例1の方法において、蒸留塔10の塔底留分を蒸留塔14に供給して高沸点留分の除去処理を行うことなくエチレングリコール貯槽18に供給するように変更する以外は、実施例1と同様にして重縮合を行いポリエステルを得た。本比較例1におけるポリエステル製造工程におけるエチレングリコールの流れを図2に示す。蒸留塔10の塔底留分中にはリン原子が150ppm含まれていた。本比較例で得られたポリエステルの溶融比抵抗は0.81×108Ω・cmと高く、最大キャスチング速度は30m/分であり、静電密着性が著しく劣っていた。また、実施例1に比べ重縮合触媒活性が低下し、ポリエステルの極限粘度も0.605と低かった。本比較例において、重縮合触媒活性や静電密着性が低下するのは、リン化合物が重縮合系に循環されるために引き起こされたものである。
【0160】
実施例2
実施例1の方法において、蒸留塔(9)の塔底部よりの残留液の抜き出しラインに近赤外線分光光度計の検出端子を設置して、該回収エチレングリコール中の水分量を波長1922nmで測定し、その測定値に基づき該水分量が一定になるように蒸留塔の7段目に設置した温度検出器で検出した温度にフィードバックして該温度を制御することにより、該回収エチレングリコール中の水分量が3±0.5質量%になるように制御すように変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを得た。結果を表2に示す。実施例1よりさらにポリエステルの品質変動が抑制された。
【0161】
実施例3
実施例1において、蒸留塔9の棚段数を7段として、温度検出器の位置を4段目の空間に変更し、該温度を106±5℃で管理するよう変更する以外は、比較例1と同様の方法でポリエステルを得た。回収エチレングリコール中の水分量は3±2.2質量%であった。結果を表2に示す。実施例1よりはポリエステルの品質変動が増大した。
【0162】
実施例4
実施例1の方法において、三酸化アンチモンをテトラブチルチタネートに変更し、かつその添加量を生成ポリエステルに対してチタン原子として15ppmになるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のポリエステルを得た。得られたポリエステルの品質は実施例1と同様に安定していた。結果を表2に示す。また、溶融比抵抗は0.20×108Ω・cmであり、静電密着性は良好であった。
【0163】
比較例2
実施例4の方法において、エチレングリコールの回収方法を比較例1と同様の方法に変更する以外は、実施例4と同様にして比較例2のポリエステルを得た。回収エチレングリコール中に存在するリン化合物の影響でチタン触媒の失活が起こり極限粘度が0.450で頭打ちになり所定の極限粘度のポリエステルが得られなかった。
【0164】
【表2】

【0165】
実施例5
実施例1の方法において、第3エステル化反応槽5より留出したグリコールの蒸留塔10による分留を取り止め、全量を凝縮器16で凝縮し、全重縮合反応槽より留出したグリコールの凝縮液とを併せて、段数が30段の蒸留塔15を用いて分留し、低沸点留分および高沸点留分をカットした中留分を回収グリコール貯槽18に貯留しスラリー調合の原料の一部とするように変更する以外は実施例1と同様の方法で実施例5のポリエステルを得た。得られたポリエステルの品質は実施例1で得られたポリエステルと同等の品質を有しており高品質であった。なお、上記中留分のリン原子含有量は2.1ppmであった。本実施例5における共重合ポリエステル製造工程におけるグリコールの流れを図3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明による連続法ポリエステル製造装置および該連続法ポリエステル製造装置の運転方法により、リン化合物の存在下でポリエステルを連続的に製造する方法において、該ポリエステルの製造工程で留出されるグリコール中に混入するリン化合物が経済性の高い方法で除去され、該リン化合物によるポリエステルの重縮合触媒活性や品質に対する悪影響を回避し循環再使用できるので、運転経費の削減と設備の簡略化が達成できるという利点を有する。さらには重縮合生産性を低下させることなく、かつ高品質、特に静電密着性の優れたポリエステルが安定して製造できるという極めて顕著な効果を奏する。さらに、ポリエステルの製造工程のエステル化反応工程におけるエステル化反応の変動が抑制されることにより得られるポリエステルの品質変動が抑制され、上記の高品質なポリエステルが安定して製造できるという利点を有するので産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施例1〜4におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流れ図である。
【図2】比較例1および2におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流れ図である。
【図3】実施例5におけるポリエステル製造工程のエチレングリコールの流れ図である。
【符号の説明】
【0168】
1:計量タンク
2:スラリー調合槽
3:第1エステル化反応槽
4:第2エステル化反応槽
5:第3エステル化反応槽
6:第1重縮合反応槽
7:第2重縮合反応槽
8:第3重縮合反応槽
9、10、14、15:蒸留塔
16:凝縮器
11〜13:湿式コンデンサー
17、18:回収グリコール貯槽
19〜22:グリコール凝縮液貯槽
23〜25:冷却器
26:熱交換器
27〜44:ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスラリー調製槽、エステル化反応槽、重縮合反応槽および反応槽より留出するグリコールの分留回収用の蒸留塔を有する、リン化合物を添加してポリエステルを製造する連続法ポリエステル製造装置において、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽より前に設置された反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなり、リン化合物の供給ラインを設けた反応槽およびそれ以降の反応槽より留出するグリコールを分留するための蒸留塔(B)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインがスラリー調製槽およびスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと非接続であることを特徴とする連続法ポリエステル製造装置。
【請求項2】
上記蒸留塔(B)が1基よりなり、該蒸留塔(B)の中段より取り出される中留分の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の連続法ポリエステル製造装置。
【請求項3】
上記蒸留塔(B)が2基に分割されてなり1基目の蒸留塔(B1)の塔底部より取り出される分留残留液を2基目の蒸留塔(B2)に供給し、該蒸留塔(B2)の塔頂部より取り出される分留液の送液ラインがスラリー調製槽またはスラリー調製槽への回収グリコールの供給ラインと接続されてなることを特徴とする請求項1に記載の連続法ポリエステル製造装置。
【請求項4】
上記蒸留塔(A)および蒸留塔(B1)の少なくとも一方の塔底部より取り出される残留分の一部をそれぞれの蒸留塔に循環する循環ラインを設けてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の連続法ポリエステル製造装置。
【請求項5】
上記蒸留塔(A)および蒸留塔(B1)の少なくとも一方の蒸留塔中段に温度検出器を設置してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の連続法ポリエステル製造装置。
【請求項6】
上記蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液の送液ラインに近赤外線検出器を設置してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の連続法ポリエステル製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の連続法ポリエステル製造装置において、上記蒸留塔(B)の中段より取り出される分留液あるいは上記蒸留塔(B2)の塔頂部より取り出される分留液中のリン原子含有量が10ppm以下になるよう制御してなることを特徴とする連続法ポリエステル製造装置の運転方法。
【請求項8】
上記蒸留塔(A)の塔底部より取り出される分留残留液中の水分量をX±2.0質量%(但しXは2以上3以下の数を表す)以内に制御することを特徴とする請求項7に記載の連続法ポリエステル製造装置の運転方法。
【請求項9】
アルカリ土類金属化合物を添加することを特徴とする請求項7または8に記載の連続法ポリエステル製造装置の運転方法。
【請求項10】
アルカリ金属化合物を添加することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の連続法ポリエステル製造装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−254642(P2007−254642A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82631(P2006−82631)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】