説明

連続洗濯機の定置洗浄方法

【課題】従来の定置洗浄方法を改良して、好適に連続洗濯機内の全体を自動洗浄することができる連続洗濯機の定置洗浄方法を提供する。
【解決手段】各浴槽6に配設され通常の洗濯時の水位よりも高水位に設定されたオーバーフロー管7と、オーバーフロー管から溢れ出た水を貯留する貯水タンク8と、貯水タンクの水を圧送するポンプ11と、ポンプからの水を噴射すべく外側ハウジング2の内側に配設された噴射ノズル10とを備え、浴槽内に洗浄液を入れて内側ハウジングを回動若しくは連続して回転することにより浴槽内を洗浄するとともに、噴射ノズルから洗浄液を外側ハウジング内に噴射して浴槽内の自動洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の浴槽を用いて被洗物を連続して洗濯することができる連続洗濯機に係り、特に浴槽内を自動的に洗浄することができる連続洗濯機の定置洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に連続洗濯機は、被洗物を、予洗/本洗/濯ぎ/仕上の各浴槽間を移動させながら連続して洗濯するものであり、この連続洗濯機の構造は、両端に被洗物の投入口と排出口を有するとともに、各浴槽を仕切る仕切板を下部に設ける細長い外側ハウジングと、該外側ハウジング内に配置され且つ連結された複数のドラムからなる細長い内側ハウジングとを備え、この内側ハウジングを回転させることによって、浴槽内の被洗物について予洗/本洗/濯ぎ/仕上を各浴槽で行いながら、各ドラム内に配置されたすくいシャベルを揺動させることにより被洗物を上流側から下流側に順次移送するように構成されている。
そして、従来の連続洗濯機は、外側ハウジングの内壁や内側ハウジングの浴槽の洗浄を行う際には、浴槽内に洗浄用洗剤を含む洗浄液を入れ、被洗物の洗濯時と同様に内側ハウジング及びすくいシャベルを揺動することによって、浴槽内の洗浄を行うものであるが、内側ハウジング及びすくいシャベルが所定角度内でしか揺動しないため、洗浄液は浴槽内で揺れる範囲にしか届かず、それゆえ浴槽内の洗浄液が届かない範囲は洗浄することができなかった。
そこで、本願発明者は、連続洗濯機の浴槽内に洗浄液を高水位(洗濯時と比較して)まで投入し、且つ各浴槽内に高温の水蒸気を供給して洗浄液を含む浴槽内部を約70℃〜90℃に暖めた上で、すくいシャベルを1G以下のG(重力加速度)が発生する速度で約2〜3時間回転又は回動(往復動)し、さらに洗浄液を排水した後、常温水を浴槽内に高水位まで投入し、同様にすくいシャベルを1G以下のGが発生する速度で約1時間以上回転させ、これによりすくい上げた洗浄液を浴槽内に叩き付けることにより、浴槽内部を自動的に洗浄する連続洗濯機の定置洗浄方法を案出した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−29878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した連続洗濯機の定置洗浄方法は、連続洗濯機を洗浄するために新たな設備を設けることなく、低コストで浴槽を洗浄することができる優れた定置洗浄方法である。
ただし、この優れた定置洗浄方法であっても、すくいシャベルがすくい上げた洗浄液は、必ずしも浴槽内全体を満遍なく洗浄できるとは限らなかった。すなわち、外側ハウジングの内壁の上部には、水蒸気とともに洗剤や薬剤の成分が付着しこれが固着することがあるが、この部分には洗浄液があまり届かないことから、上述した洗浄方法を用いても必ずしも良好に洗浄できるとは限らなかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、従来の定置洗浄方法を改良して、好適に連続洗濯機内の全体を自動洗浄することができる連続洗濯機の定置洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、外側ハウジング内に噴射ノズルを備えて浴槽内部の洗浄液が届きづらい個所に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄方法を案出するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、外側ハウジング内で内側ハウジングを揺動し前記外側ハウジング内の仕切板により区分けされた浴槽内で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、各浴槽に配設され通常の洗濯時の水位よりも高水位に設定されたオーバーフロー管と、該オーバーフロー管から溢れ出た水を貯留する貯水タンクと、該貯水タンクの水を圧送するポンプと、該ポンプからの水を噴射すべく前記外側ハウジングの内側に配設された噴射ノズルとを備え、前記浴槽内に洗浄液を入れて前記内側ハウジングを回動若しくは連続して回転することにより浴槽内を洗浄するとともに、前記噴射ノズルから洗浄液を前記外側ハウジング内に噴射して浴槽内の自動洗浄を行うことを特徴とする連続洗濯機の定置洗浄方法を提供するものである。
【0008】
また、洗浄液を70℃〜90℃に加熱して洗浄することを特徴とする。
【0009】
また、浴槽内を洗浄液で洗浄後に、前記浴槽内に常温水を入れて内側ハウジングを回動若しくは連続して回転することにより浴槽内を濯ぐとともに、前記噴射ノズルから常温水を外側ハウジング内に噴射して浴槽内の洗浄・濯ぎを行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の連続洗濯機は、外側ハウジング内で内側ハウジングを揺動し前記外側ハウジング内の仕切板により区分けされた浴槽内で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、各浴槽に配設され通常の洗濯時の水位よりも高水位に設定されたオーバーフロー管と、該オーバーフロー管から溢れ出た水を貯留する貯水タンクと、該貯水タンクの水を圧送するポンプと、該ポンプからの水を噴射して浴槽内を洗浄すべく前記外側ハウジングの内側に配設された噴射ノズルとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明の連続洗濯機の定置洗浄方法によれば、連続洗濯機において浴槽内の洗浄液が届きづらい個所も好適に洗浄して連続洗濯機を清潔に保つことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の連続洗濯機の定置洗浄方法を示す説明図である。
【図2】本発明の連続洗濯機の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の連続洗濯機の定置洗浄方法を実施するための形態を詳細に説明する。図1、図2は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0014】
<構成>
図1は、本発明に係る連続洗濯機の全体を示し、図2はその要部を拡大して表している。連続洗濯機1は、洗浄液を収容する外側ハウジングである外胴2の内側に、被洗物を収容し駆動装置(図示せず)により回転する複数の内胴3を連結して備えている。
外胴2の下部内壁には各内胴3を仕切る仕切板が設けられ、外胴2の左端の洗濯前の被洗物を投入する投入口4側から下流となる右端の排出口5に向かって、予洗、本洗1、本洗2、本洗3、本洗4、本洗5、本洗6、濯ぎ1、濯ぎ2、仕上の計10個の浴槽6が配置されている。この浴槽6の数は、用途に応じて適宜設定することができるものである。
【0015】
上記各浴槽6には、本実施形態の定置洗浄方法に使用するオーバーフロー管7が設けられ、浴槽6内の洗浄液の水位を通常の洗濯時よりも一定程度高水位に保つとともに、そのオーバーフロー管7の設定水位を超えた場合に、超えた水を貯水タンク8(貯水量としては、例えば約150リットル程度)に送出して貯留するものである。各貯水タンク8には、自動排水弁9が設けられ、必要に応じて排水する。そして、貯水タンク8内の水を吸い上げて上記各浴槽6内に配設された噴射ノズル10に圧送するためにポンプ11が設けられている。
上記貯水タンク8には、浴槽6内を洗浄することにより汚れ等の固形物が剥離して混入することがあることから、洗浄液を汲み上げるポンプ11の吸い込み口には、固形物を取り除くための適宜なフィルタを設置することが望ましい。
【0016】
噴射ノズル10は、図2に示すように、外胴2の内壁の上部に配設されていて、外胴2の内壁や内胴3の外面に満遍なく洗浄水を噴射することができる。本実施例にあっては、隣接する内胴3の間に噴射ノズル10を配設したが、この位置に限られることはなく、外胴2の内壁や内胴3の外面に満遍なく洗浄水を噴射することができるのであれば外胴2内のどのような位置であってよい。そして、噴射ノズル10の個数も必要に応じて適宜設定することができる。また、噴射する洗浄液は、各浴槽6に投入する前、若しくは浴槽6に投入した後に、水蒸気を用いて70℃〜90℃に加熱することにより、洗浄効果を増すことができる。
【0017】
<洗浄方法>
上述した構成からなる連続洗濯機1について、本実施形態の定置洗浄方法を以下に説明する。
まず洗剤、アルカリ剤、キレート剤を予め定められた割合で混合して作成した洗浄液を、水蒸気により70℃〜90℃に加熱した上で各浴槽6内にオーバーフロー管7の設定水位まで、若しくはそれ以上投入する。そして、浴槽6と同様に、貯水タンク8にも上記洗浄液を一定量投入する。
【0018】
そして連続洗濯機1の内胴3は、通常の洗濯時の揺動回転(往復動)、又は連続回転することにより洗浄液を揺らし、これにより浴槽内を洗浄液で洗浄する。
これと同時に、ポンプ11は、対応する貯水タンク8の洗浄液を噴射ノズル10に圧送し、広い範囲に勢いよく噴射することにより浴槽6内の、通常洗浄液が当たりづらい個所を洗浄する。そして浴槽6に貯まる洗浄液は、オーバーフロー管7の設定水位を超える分が貯水タンク8に送出され、循環する。この洗浄作業を2〜3時間連続して行うことが望ましい。
【0019】
この洗浄作業が終了した後、浴槽6内を濯ぐ作業を行う。
すなわち、各浴槽6の排水弁12及び各貯水タンク8の自動排水弁9を開いて内部に貯留する洗浄液を排水する。排水が終了したところで、各排水弁を閉じて、各浴槽6及び各貯水タンク8内に常温の水を満たす。そして、上述した洗浄作業と同様に、内胴3を通常の洗濯時の揺動回転、又は連続回転するとともに、各ポンプ11が、対応する貯水タンク8の常温水を噴射ノズル10に圧送し、広い範囲に勢いよく噴射することにより浴槽6内の洗浄・濯ぎを行うものである。浴槽6に貯まる濯ぎ水は、オーバーフロー管7の設定水位を超える分が貯水タンク8に送出され、循環する。この濯ぎ作業を1時間程度連続して行うことが望ましい。
【0020】
以上、本発明の連続洗濯機の定置洗浄方法について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における連続洗濯機の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の連続洗濯機の定置洗浄方法は、連続洗濯設備を製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 連続洗濯機
2 外胴
3 内胴
4 投入口
5 排出口
6 浴槽
7 オーバーフロー管
8 貯水タンク
9 自動排水弁
10 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ハウジング内で内側ハウジングを揺動し前記外側ハウジング内の仕切板により区分けされた浴槽内で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、
各浴槽に配設され通常の洗濯時の水位よりも高水位に設定されたオーバーフロー管と、該オーバーフロー管から溢れ出た水を貯留する貯水タンクと、該貯水タンクの水を圧送するポンプと、該ポンプからの水を噴射すべく前記外側ハウジングの内側に配設された噴射ノズルとを備え、
前記浴槽内に洗浄液を入れて前記内側ハウジングを回動若しくは連続して回転することにより浴槽内を洗浄するとともに、前記噴射ノズルから洗浄液を前記外側ハウジング内に噴射して浴槽内の自動洗浄を行うことを特徴とする連続洗濯機の定置洗浄方法。
【請求項2】
洗浄液を70℃〜90℃に加熱して洗浄することを特徴とする請求項1記載の連続洗濯機の定置洗浄方法。
【請求項3】
浴槽内を洗浄液で洗浄後に、前記浴槽内に常温水を入れて内側ハウジングを回動若しくは連続して回転することにより浴槽内を濯ぐとともに、前記噴射ノズルから常温水を外側ハウジング内に噴射して浴槽内の洗浄・濯ぎを行うことを特徴とする請求項1又は2記載の連続洗濯機の定置洗浄方法。
【請求項4】
外側ハウジング内で内側ハウジングを揺動し前記外側ハウジング内の仕切板により区分けされた浴槽内で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、
各浴槽に配設され通常の洗濯時の水位よりも高水位に設定されたオーバーフロー管と、該オーバーフロー管から溢れ出た水を貯留する貯水タンクと、該貯水タンクの水を圧送するポンプと、該ポンプからの水を噴射して浴槽内を洗浄すべく前記外側ハウジングの内側に配設された噴射ノズルとを備えたことを特徴とする連続洗濯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−239540(P2012−239540A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110235(P2011−110235)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】