説明

連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備

【課題】デフレクターロールの配置自由度が高く、ケーシング及びスナウトの内面に付着したメッキ用金属の除去作業も容易に行える連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備を提供する。
【解決手段】連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備10は、連続焼鈍炉11の後段にスナウト19を介して溶融メッキポット20が配置されている。連続焼鈍炉11の出口11aには、筒状の第一のケーシング13の前端面13aが接続され、第一のケーシング13の後端面13bには、後端部14bが封止された第二のケーシング14が軸支部15を介して回動可能に連結されている。第一のケーシング13内の後端側にはターンダウンロール23が配置され、第二のケーシング14の後端部14bの下部には、斜め下方に延びるスナウト19の入口19aが接合されており、連続焼鈍炉11の出口11aとターンダウンロール23との間には、シール装置12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍炉の後段にスナウトを介して溶融メッキポットが配置され、鋼帯の連続焼鈍と溶融メッキとを切替えて操業することが可能な連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼帯の連続焼鈍と溶融メッキとを切替えて操業することが可能な連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備が実用に供されている。例えば特許文献1には、連続焼鈍炉の出口に装着された炉出口フード(ケーシング)に伸縮管(ベローズ)を介してスナウトが接続され、溶融メッキポットを挟んで連続焼鈍炉の後段に配置されたデフレクターロールに向けてスナウトが傾動可能とされていることを特徴とする溶融メッキラインと連続焼鈍炉の兼用ラインの発明が開示されている。当該発明において溶融メッキを行う場合は、スナウトを下方に傾動させて、スナウトから出た鋼帯を溶融メッキポットに浸漬させ、溶融メッキポット内に配置されたシンクロールにより鋼帯の搬送方向を転換させた後、溶融メッキポットから鋼帯を引き上げる。一方、連続焼鈍を行う場合は、スナウトを上方に傾動させることにより、スナウトから出た鋼帯は溶融メッキポットを飛び越えてデフレクターロールに向けて搬送され、デフレクターロールで方向転換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−265217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている溶融メッキラインと連続焼鈍炉の兼用ラインの場合、連続焼鈍炉の出口にベローズを介してスナウトが接続されているため、スナウトの傾動角度が小さく、デフレクターロールの設置位置が溶融メッキポット周辺に限定される。そのため、デフレクターロールが邪魔になり溶融メッキポット周辺のメンテナンス作業が阻害されるという問題がある。また、従来の兼用ラインの場合、溶融メッキ時にケーシングやスナウトの内面に付着したメッキ用金属の除去作業が容易でないという問題もある。除去作業用のメンテナンスハッチをケーシングに設けることも可能だが、除去したメッキ用金属がスナウトを経由して溶融メッキポットに落下するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、デフレクターロールの配置自由度が高く、ケーシング及びスナウトの内面に付着したメッキ用金属の除去作業も容易に行える連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、連続焼鈍炉の後段にスナウトを介して溶融メッキポットが配置され、鋼帯の連続焼鈍と溶融メッキとを切替えて操業することが可能な連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備において、前記連続焼鈍炉の出口に前端面が接続され、後端側にターンダウンロールを備える筒状の第一のケーシングと、前端面が前記第一のケーシングの後端面に当接し、後端部の上部が封止された筒状の第二のケーシングと、前端部が前記第二のケーシングの後端部の下部に接合されたスナウトと、前記連続焼鈍炉の出口と前記ターンダウンロールとの間に配置されたシール手段とを備え、前記第二のケーシングが前記第一のケーシングに軸支され、該第二のケーシングが前記スナウトと共に鉛直面内で回動可能とされていることを特徴としている。
なお、本明細書では、鋼帯の搬送方向を「後」方向、その逆方向を「前」方向と呼ぶ。
【0007】
本発明は、連続焼鈍炉の出口とスナウトとの間に設置される筒状のケーシングを、連続焼鈍炉の出口に接続された第一のケーシングと、スナウトが接合された第二のケーシングとから構成し、第二のケーシングの前端部が第一のケーシングの後端部に軸支されてスナウトと共に回動するようにしたものである。これにより、スナウトは第二のケーシングと共に鉛直面内で大きく回動(傾動)することができる。またその際、連続焼鈍炉の出口とターンダウンロールとの間にシール手段を配置しているので、第二のケーシングが回動した際、連続焼鈍炉内の還元性雰囲気ガスが外部に漏れ出たり、連続焼鈍炉内に大気が進入したりすることはない。
【0008】
また、本発明に係る連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備では、前記第一のケーシングの後端面と前記第二のケーシングの前端面との間にシール材が介装されていることを好適とする。当該構成により、第一のケーシングと第二のケーシングの当接部の気密性を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備では、連続焼鈍炉の出口とスナウトとの間に設置される筒状のケーシングを、連続焼鈍炉の出口に接続された第一のケーシングと、スナウトが接合された第二のケーシングとから構成し、第二のケーシングが第一のケーシングに軸支されて回動するようにしているので、スナウトは第二のケーシングと共に鉛直面内で大きく回動することができる。これにより、デフレクターロールの配置自由度が高くなり、溶融メッキポット周辺のメンテナンス作業に支障を来さない箇所にデフレクターロールを設置することができる。
また、スナウトがほぼ水平となるまで傾動させることにより、第一のケーシングと第二のケーシングの間に生じる間隙を利用して、ケーシング及びスナウトの内面に付着したメッキ用金属の除去作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】鋼帯の溶融メッキ時における、本発明の一実施の形態に係る連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備の模式図である。
【図2】鋼帯の連続焼鈍時における同連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、前述したように、以下の説明では、鋼帯の搬送方向を「後」方向、その逆方向を「前」方向と呼ぶ。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備10の概略構成を図1及び図2に示す。
連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備10は、鋼帯Sに対して加熱、均熱、冷却等の熱処理を施す連続焼鈍炉11の後段に、筒状のスナウト19を介して溶融メッキポット20が配置されている。連続焼鈍炉11の出口11aには、筒状の第一のケーシング13の前端面13aが接続されている。第一のケーシング13の後端面13bには、第一のケーシング13と同断面を有し、後端部14bの上部が封止された筒状の第二のケーシング14が軸支部15を介して連結されている。また、第一のケーシング13内の後端側にはターンダウンロール23が配置され、第二のケーシング14の後端部14bの下部には、斜め下方に延びるスナウト19の入口19a(前端部)が接合されている。スナウト19の中間部は、ワイヤーロープ24により上方から懸吊されており、ウィンチ(図示省略)等によりワイヤーロープ24を巻き上げることで、スナウト19の傾動角度を変更することができる。
【0013】
第一のケーシング13の後端面13b及び第二のケーシング14の前端面14aの外周は、それぞれフランジ16、17で補強され、フランジ16とフランジ17の上端部は、鉛直面内で回動する回動軸を有する軸支部15を介して回動可能に連結されている。また、フランジ17と当接するフランジ16の表面には、ガスケット18(シール材)が貼着されている。
【0014】
連続焼鈍炉11の出口11aとターンダウンロール23との間には、シール装置12(シール手段)が設けられ、連続焼鈍炉11内の還元性雰囲気ガスの漏洩を防止すると共に、連続焼鈍炉11内への大気の進入を防止する。シール装置12は、鋼帯Sの幅方向に平行に複数のラビリンスシール板が間隔をおいて設けられたラビリンスシールを用いてもよいし、鋼帯Sの上下に仕切り板やロールなどを設けてもよい。
【0015】
なお、図1に示すように、溶融メッキポット20内には、鋼帯Sの搬送方向を転換させるシンクロール22が設置されている。また、図2に示すように、溶融メッキポット20を挟んで連続焼鈍炉11の後方に架設されたデッキ26の上には、鋼帯Sの搬送方向を転換させるデフレクターロール25が設置されている。
【0016】
連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備10により溶融メッキを行う場合は、図1に示すように、第一のケーシング13の後端面13bと第二のケーシング14の前端面14aとを当接してケーシング13、14内を密閉し、スナウト19の出口19bは、溶融メッキポット20内の溶融金属21中に浸漬させる。
【0017】
連続焼鈍炉11から排出された鋼帯Sは、第一のケーシング13内のターンダウンロール23を経由した後、第二のケーシング14に接合されたスナウト19を通過して溶融メッキポット20内の溶融金属21中に浸漬される。この間、鋼帯Sは、ケーシング13、14、及びスナウト19によって大気から遮断されている。
溶融金属21が付着した鋼帯Sは、溶融メッキポット20内のシンクロール22で方向転換された後、溶融メッキポット20から引き上げられ、後段の設備へ搬送される。
【0018】
一方、連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備10により連続焼鈍を行う場合は、図2に示すように、ウィンチ等を用いてスナウト19が水平より若干斜め下方となる位置までワイヤーロープ24を巻き上げ、スナウト19の出口19bをデフレクターロール25に向ける。
【0019】
連続焼鈍炉11から排出された鋼帯Sは、第一のケーシング13内のターンダウンロール23を経由した後、第二のケーシング14に接合されたスナウト19を通過してデフレクターロール25に向かう。鋼帯Sはデフレクターロール25によって方向転換され、後段の設備へ搬送される。
なお、連続焼鈍炉11の出口11aとターンダウンロール23との間にシール装置12が設置されているので、スナウト19が第二のケーシング14と共に回動した際、連続焼鈍炉11内の還元性雰囲気ガスが外部に漏れ出たり、連続焼鈍炉11内に大気が進入したりすることはない。
【0020】
また、ケーシング13、14及びスナウト19の内面に付着したメッキ用金属の除去作業を行う場合は、図2に示すように、ウィンチ等を用いてスナウト19が水平より若干斜め下方に位置するまでワイヤーロープ24を引き上げた状態で、第一のケーシング13と第二のケーシング14の間に生じる間隙を利用して、ケーシング13、14及びスナウト19の内面に付着したメッキ用金属の除去作業を行えばよい。
【0021】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、スナウトは一体物としているが、途中にベローズのような伸縮管を設けて伸縮自在としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10:連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備、11:連続焼鈍炉、11a:出口、12:シール装置(シール手段)、13:第一のケーシング、14:第二のケーシング、13a、14a:前端面、13b:後端面、14b:後端部、15:軸支部、16、17:フランジ、18:ガスケット(シール材)、19:スナウト、19a:入口(前端部)、19b:出口、20:溶融メッキポット、21:溶融金属、22:シンクロール、23:ターンダウンロール、24:ワイヤーロープ、25:デフレクターロール、26:デッキ、S:鋼帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍炉の後段にスナウトを介して溶融メッキポットが配置され、鋼帯の連続焼鈍と溶融メッキとを切替えて操業することが可能な連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備において、
前記連続焼鈍炉の出口に前端面が接続され、後端側にターンダウンロールを備える筒状の第一のケーシングと、前端面が前記第一のケーシングの後端面に当接し、後端部の上部が封止された筒状の第二のケーシングと、前端部が前記第二のケーシングの後端部の下部に接合されたスナウトと、前記連続焼鈍炉の出口と前記ターンダウンロールとの間に配置されたシール手段とを備え、
前記第二のケーシングが前記第一のケーシングに軸支され、該第二のケーシングが前記スナウトと共に鉛直面内で回動可能とされていることを特徴とする連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備。
【請求項2】
請求項1記載の連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備において、前記第一のケーシングの後端面と前記第二のケーシングの前端面との間にシール材が介装されていることを特徴とする連続焼鈍及び溶融メッキ兼用設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215990(P2010−215990A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66529(P2009−66529)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】