説明

連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラム

【課題】中空糸膜に応じて膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させる連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、および、その方法、プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、所定の培養条件になるように調整剤が供給される培養液に発酵原料を供給する第1のポンプと、中空糸膜を介して培養液から濾過液を濾過する第2のポンプと、中空糸膜に培養液を供給し未濾過液を培養液に還流する第3のポンプと、各重量を計測する重量計と、各密度を記憶する記憶部と、設定された設定フラックスで濾過液が濾過されるように、第2のポンプの出力を制御し、重量計により計測される濾過液および調整剤の重量変化から各密度に基づいて、培養液の減少量を算出し、培養液の減少量分の発酵原料が供給されるように、重量計により発酵原料の重量変化を監視しながら、第1のポンプの出力を制御する制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物や培養細胞を培養して連続的に生産物を回収する方法が存在する。具体的には、濾過膜を用いて生産物を微生物等から分離するとともに、未濾過液に含まれる微生物等を再び培養液に戻す連続発酵法が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、微生物もしくは培養細胞の培養液を、水頭圧等により比較的低い膜間差圧で濾過し、濾過液から生産物を回収し、さらに、微生物等を含む未濾過液を培養液に保持または還流し、かつ、発酵原料を培養液に追加する連続発酵法が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1においては、発酵槽から限外濾過膜に培養液を連続的に供給し、微生物を含む未濾過液を再び発酵槽に還流させるとともに、濾過液から電気透析により発酵産物である乳酸を粗精製し、透析後の濾過液を再び発酵槽に還流する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/097260号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Danner, L. Madzingaidzo, C. Thomasser, M. Neureiter, R. Braun “Thermophilic production of lactic acid using integrated membrane bioreactor systems coupled with monopolar electrodialysis” Appl. Microbiol. Biotechnol. (2002) Vol.59, pp.160−169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の連続発酵法において、有機高分子等の中空糸膜を用いる場合に、膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させる連続発酵を行うには、種々の問題点があった。
【0008】
特に、特許文献1においては、発酵槽内の培養液はレベルセンサを用いて制御しており、発泡などが発生すると発酵槽内の培養液量が減少してしまうという問題があった。また、非特許文献1においては、発酵槽内へ供給される培地の量を、連続発酵運転に関与する全ての物質の重量からコンピュータ制御により供給しているため安定した連続発酵運転が可能となっているが、セラミックス膜性能を最大限に発揮できた運転にはなっていないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、使用する中空糸膜に応じて当該膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させる連続発酵を行うことができる、連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、本発明の連続発酵重量制御装置は、所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、を備えた連続発酵システムに接続される、記憶部と制御部とを少なくとも備えた連続発酵重量制御装置であって、前記記憶部は、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶し、前記制御部は、設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御手段と、前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出手段と、前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ出力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の連続発酵重量制御装置は、上記記載の連続発酵重量制御装置において、前記連続発酵システムは、更に、前記中空糸膜の膜間差圧を求めるための圧力を計測する圧力計を備え、前記制御部は、前記設定フラックスを、異なる値で繰り返し設定するフラックス設定手段と、前記フラックス設定手段により前記設定フラックスが設定されるたびに、前記圧力計により計測される前記圧力に基づいて前記膜間差圧を取得する膜間差圧取得手段と、前記フラックス設定手段により設定された前記設定フラックスと前記膜間差圧取得手段により取得された前記膜間差圧との関係が、線形から非線形に変化するときの前記設定フラックスの値を限界フラックスとして取得する限界フラックス取得手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の連続発酵重量制御装置は、上記記載の連続発酵重量制御装置において、前記記憶部は、前記中空糸膜の膜面積を、更に記憶し、前記第2ポンプ出力制御手段は、前記設定フラックスから前記膜面積に基づいて濾過液速度を算出し、前記重量計により計測される前記濾過液の重量変化と前記密度に基づいて、前記算出した前記濾過液速度で前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の連続発酵重量制御装置は、上記記載の連続発酵重量制御装置において、前記記憶部は、前記中空糸膜に前記培養液を供給する際の流体断面積または前記流体断面積を求めるための値を、更に記憶し、前記制御部は、設定された膜面線速度から前記流体断面積に基づいて循環液量を算出し、当該循環液量の前記培養液が前記中空糸膜に供給されるように、前記第3のポンプの出力を制御する第3ポンプ出力制御手段、を更に備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の連続発酵重量制御装置は、上記記載の連続発酵重量制御装置において、前記制御部は、前記第2ポンプ出力制御手段により出力制御される前記第2のポンプの出力値を異なる値で繰り返し設定し、当該出力値を設定するたびに、前記重量計により計測される前記濾過液の前記重量変化を取得し、前記出力値と当該重量変化との関係式を算出することにより、前記第2ポンプ出力制御手段による前記出力制御のキャリブレーションを行う第2ポンプ出力補正手段、を更に備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の連続発酵システムは、所定の培養条件となるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、制御部と、を備えた連続発酵システムであって、前記制御部は、設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御手段と、前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出手段と、前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ出力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の連続発酵重量制御方法は、所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、を備えた連続発酵システムに接続される、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、制御部とを少なくとも備えたコンピュータにおいて実行される連続発酵重量制御方法であって、前記制御部において実行される、設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御ステップと、前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から、前記密度記憶手段に記憶された前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出ステップと、前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の連続発酵重量制御プログラムは、所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、を備えた連続発酵システムに接続される、前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、制御部とを少なくとも備えたコンピュータに実行させるための連続発酵重量制御プログラムであって、前記制御部において、設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御ステップと、前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から、前記密度記憶手段に記憶された前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出ステップと、前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ制御ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は記録媒体に関するものであり、上記記載のプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラムによれば、有機高分子等の中空糸膜を用いる場合に膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させる連続発酵を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態における連続発酵システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態が適用される連続発酵重量制御装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、発酵原料と調整剤と濾過液と循環液等に関するポンプと密度と重量と体積について、本実施形態の説明で用いる符号の関係を示す表である。
【図4】図4は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100の連続発酵モードにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100の限界フラック測定モードにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100のポンプ出力補正処理(P3キャリブレーション)の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図8】図8は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図9】図9は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図10】図10は、本実施例の連続発酵モード運転において書き出されたデータの一例を示す図である。
【図11】図11は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図12】図12は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図13】図13は、本実施例の限界フラックス測定モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図14】図14は、本実施例の限界フラックス測定モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【図15】図15は、本実施例の限界フラックス測定モード運転において書き出されたデータの一例を示す図である。
【図16】図16は、本実施例の限界フラックス測定モード運転において遷移する表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。特に、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための連続発酵システムを例示するものであって、本発明をこの連続発酵システムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の連続発酵システムにも等しく適用し得るものである。例えば、以下の実施形態においてはシステム全体を連続発酵システムと呼ぶことがあるが、特許請求の範囲に規定する本発明は、このシステム全体のうちの一部であってもよい。
【0022】
[連続発酵システムの構成]
まず、本実施形態における連続発酵システムの構成の一例について、図1を参照して以下に説明する。ここで、図1は、本実施形態における連続発酵システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態における連続発酵システムは、概略的に、ポンプP1〜P4と、発酵原料、調整剤、および、濾過液を保持する容器であるタンクT1〜T3にそれぞれ設定され、各重量を計測する重量計S1〜S3と、微生物もしくは培養細胞の培養液を保持する発酵槽T4と、中空糸膜モジュール10と、検出器11と、圧力計12と、連続発酵重量制御装置100とを備える。なお、図1の太線は、各タンクT1〜T4間または中空糸膜モジュール10との間を、発酵原料や調整剤や濾過液や培養液等の液体が流通可能に接続する管を表しており、好適には、弾性のあるチューブでもよい(例えば、ポンプP1〜P4としてチューブポンプを用いる場合等)。また、太線矢印の方向は、各ポンプP1〜P4が駆動した場合における、当該液体の流通方向を表す。なお、図1の破線は、電気的接続関係を表す。
【0024】
このうち、ポンプP1〜P4は、発酵原料、調整剤、濾過液、および、培養液などの液体に圧力を付与する装置であり、好適には、チューブポンプである。また、ポンプP1,P3,P4は、後述する連続発酵重量制御装置100からの信号により、その出力を制御可能に構成される。一例として、各ポンプPは、連続発酵重量制御装置100から送信される、出力値(例えば、最大出力を100%としたときの値(%)や回転数)の信号を受信すると、その出力値に応じた出力を行う。
【0025】
また、ポンプP1は、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプである。より具体的には、図1に示すように、ポンプP1は、原料タンクT1から発酵原料を、発酵槽T4の培養液に供給する機能を有する。
【0026】
また、ポンプP2は、所定の培養条件になるように、調整剤を培養液に供給するポンプである。より具体的には、ポンプP2は、所定の培養条件に基づいて、調整剤タンクT2から調整剤を発酵槽T4の培養液に自動的に供給する機能を有する。すなわち、本実施形態において、発酵槽T4では、検出器11の検出結果に応じて、培養液が所定の培養条件になるように、調整剤をポンプP2により自動で供給する自動調整機能を有することを前提とする。例えば、pHメーターである検出器11により検出される培養液のpHに応じて、ポンプP2は、検出されたpHが所定のpHよりも低い場合に、NaOH等の中和剤を培養液に供給してもよい。なお、これに限られず、検出器11は、発酵による泡の発生を検出して、ポンプP2の駆動により、発泡抑制剤(消泡剤)等の調整剤が供給されるよう制御してもよい。このように、検出器11は、調整剤によって調整可能な培養条件の項目(pH、泡の発生など)を検出し、ポンプP2は、検出器11の検出結果に連動して駆動してもよい。なお、これら制御のために、発酵槽T4は、マイクロコンピュータ等の制御装置を備えてもよい。また、発酵槽T4は、図1に示すように、発酵槽T4内の培養液を攪拌する攪拌装置13を備える。なお、攪拌装置13は、酸素等の供給速度を上げる必要がある場合等に攪拌速度を調整する機能等を備えてもよい。また、所定の温度となるように温度調節器を備えてもよい。このほか、発酵槽T4は、必要な気体を供給する装置等を備えるなど、公知の発酵槽にかかる製品(例えば、バイオリアクター等)の技術が採用されてもよい。
【0027】
また、ポンプP3は、中空糸膜を介して培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプである。より具体的には、ポンプP3は、図1に示すように、中空糸膜モジュール10の2次側を減圧することにより、フラックス(膜面濾過流束)を増加させる機能を有する。なお、本実施形態において、2次側とは、培養液が供給される1次側(未濾過液側)とは反対面(濾過液側)のことをいう。
【0028】
また、ポンプP4は、中空糸膜に培養液を供給し、未濾過液を培養液に還流する第3のポンプである。より具体的には、図1に示すように、ポンプP4は、中空糸膜モジュール10の1次側に培養液を供給し、濾過されなかった微生物等を含む未濾過液を、発酵槽T4に還流させる機能を有する。これにより、中空糸膜の1次側には、膜面に対し平行な流れが発生し、1次側に堆積する濾物を除去するような剪断力が与えられる。なお、この流れの速さを、膜面線速度(クロスフロー速度)という。
【0029】
また、図1に示すように、重量計S1〜S3は、原料タンクT1、調整剤タンクT2、および、濾液タンクT3のそれぞれに設置され、各タンク内の液体の重量を計測する装置(例えば、重量天秤や電子天秤等)である。なお、本実施形態では、重力加速度が一定の下で実施することを想定して重量を計測しているが、これに限られず、重量計は、原理的に質量を計測するものであってもよい。
【0030】
また、中空糸膜モジュール10は、微生物等と生産物とを分離可能な中空糸膜であり、好適には、有機高分子の中空糸膜である。例えば、中空糸膜モジュール10は、精密濾過膜(MF膜)等からなる多数の中空糸を、同一方向に並列に配置して、取替え可能なカートリッジとして構成したものであってもよく、公知の中空糸膜モジュールに限らず、新規な中空糸膜モジュールであってもよい。すなわち、本実施形態の連続発酵システムは、さまざまなタイプの中空糸膜(モジュール)を許容するものであり、設置された中空糸膜に応じて当該膜の性能を十分に発揮させる汎用性を実現することができる。
【0031】
また、圧力計12は、中空糸膜の1次側と2次側との圧力差(すなわち、膜間差圧)を求めるための圧力計である。例えば、圧力計12は、中空糸膜の1次側と2次側のそれぞれに設置された2台の圧力計によって構成されてもよく、また、2次側に対する1次側の相対的な圧力差である膜間差圧を直接求めることができる差圧計(例えば、微差圧計)等であってもよい。
【0032】
また、連続発酵重量制御装置100は、重量計S1〜S3、圧力計12、および、ポンプP1,P3,P4に接続され、重量計Sによる重量の計測結果に従ってポンプPの出力を制御する等の機能を有する。ここで、図2は、本実施形態が適用される連続発酵重量制御装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施形態に関係する部分を中心に概念的に示している。
【0033】
図2において、連続発酵重量制御装置100は、概略的に、制御部102と、入出力制御インターフェース部108と、記憶部106を備える。ここで、制御部102は、連続発酵重量制御装置100の全体を統括的に制御するCPU等である。また、入出力制御インターフェース部108は、入力部112や、表示部114、重量計S1〜S3、ポンプP1,P3,P4、および、圧力計12に接続されるインターフェースである。これら連続発酵重量制御装置100の各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0034】
このうち、記憶部106は、各種のデータベースやテーブルなどを格納する装置である。記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブル(設定データファイル106a、および、測定データファイル106b)は、固定ディスク装置等のストレージ手段であってもよい。例えば、記憶部106は、各種処理に用いる各種のプログラム、テーブル、ファイル、データベース、および、ウェブページ等を格納してもよい。
【0035】
これら記憶部106の各構成要素のうち、設定データファイル106aは、設定データを記憶する設定データ記憶手段である。設定データファイル106aに記憶された設定データは、後述する制御部102によるポンプ出力制御等に利用されるデータ等である。図2に示すように、設定データは、発酵原料、濾過液、および、調整剤の各密度や、利用者または制御部102により設定されたフラックスである設定フラックス、中空糸膜モジュール10における膜面積や、クロスフローの流体断面積(または当該流体断面積を求めるための値)、膜面線速度等の各種データであってもよい。このほか、設定データは、空のタンクT1〜T3の重量や、各種ポンプ出力制御のタイミングを設定したデータであってもよい。また、設定データは、ポンプPの出力値(出力%や回転数など)と、実際の出力による値(実測値)との関係を示す関係式や対応テーブル等であってもよい。例えば、関係式は、最大出力を100%としたときのポンプPの出力値と、ポンプPの実際の出力に応じた測定値(重量変化量、体積変化量のほか、ポンプP3にかかる実測フラックスや実測濾過液速度、ポンプP4にかかる実測循環液量など)との対応関係を規定した関係式や対応テーブル等であってもよい。なお、設定データは、予め記憶部106に記憶されてもよく、コンピュータを連続発酵重量制御装置100として機能させるためのプログラムに規定されていてもよく、また、利用者に入力部112を介して入力されたデータであってもよく、あるいは、外部システム200からネットワーク300を介してダウンロード等したデータであってもよい。
【0036】
また、測定データファイル106bは、重量計S1〜S3や圧力計12等により計測された各種測定値のデータや、測定値に基づいて制御部102により算出された各種データ等を記憶する測定データ記憶手段である。ここで、図3は、発酵原料と調整剤と濾過液と循環液等に関するポンプと密度と重量と体積について、本実施形態の説明で用いる符号の関係を示す表である。
【0037】
図3に対応関係を示すように、ポンプP1が駆動することにより発酵原料が培養液に供給され、原料タンクT1に設置された重量計S1で計測される重量W1に変化が生じる。このことは、発酵原料の密度をD1とすると、体積V1(=ΔW1/D1)の発酵原料が供給されたことを意味する。また、ポンプP2が駆動することにより調整剤が培養液に供給され、調整剤タンクT2に設置された重量計S2で計測される重量W2に変化が生じる。これは、調整剤の密度をD2とすると、体積V2(=ΔW2/D2)の調整剤が培養液に供給されたことを意味する。また、ポンプP3が駆動することにより濾過液が減圧濾過され、濾液タンクT3に設置された重量計S3で計測される重量W3に変化が生じる。これは、濾過液の密度をD3とすると、体積V3(=ΔW3/D3)の濾過液が濾過されたことを意味する。なお、ポンプP4が駆動しても、発酵槽T4と中空糸膜モジュール10の間で培養液が循環するだけであるので、基本的に重量変化は生じない。
【0038】
再び図2に戻り、測定データファイル106bに記憶される測定データは、一例として、重量計S1〜S3で計測された重量W1〜W3や、上述のように計測された重量W1〜W3と密度D1〜D3に基づいて算出された体積V1〜V3等のログデータであってもよい。このほか、測定データは、後述する制御部102により取得される、実測フラックスや、圧力計12により計測される圧力(例えば膜間差圧)等であってもよい。なお、測定データに対応付けて、当該測定データが取得された日時や、連続発酵を開始してからの時間(連続発酵時間)等の情報が格納されもよい。例えば、制御部102の内部クロックは、後述する連続発酵モード開始からの時間をカウントして、各測定データに対応付けて、カウントした時間情報を測定データファイル106bに格納してもよい。このほか、連続発酵重量制御装置100を検出器11に接続させて、検出結果(pHなど)のログデータを測定データファイル106bに記憶させてもよく、発酵槽T4に備えられた温度計による温度のログデータを記憶させてもよい。
【0039】
また、図2において、入出力制御インターフェース部108は、入力部112や、表示部114、重量計S1〜S3、ポンプP1,P3,P4、圧力計12等の入出力制御を行う。ここで、入力部112としては、キーボード、マウス、およびマイク等を用いることができる。また、表示部114としては、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカを用いることができる。なお、入力部112と表示部114が一体として形成されたタッチパネルを用いてもよい。
【0040】
また、図2において、制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有する。そして、制御部102は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、設定データ入力制御部102a、P3出力制御部102b、P4出力制御部102c、培養液減少量算出部102d、P1出力制御部102e、フラックス設定部102f、膜間差圧取得部102g、限界フラックス取得部102h、ポンプ出力補正部102j、および、測定結果出力部102kを備える。
【0041】
このうち、設定データ入力制御部102aは、利用者に入力部112を介して、設定データを入力させるよう制御し、入力された設定データを設定データファイル106aに格納する設定データ入力制御手段である。ここで、設定データ入力制御部102aは、入力部112および表示部114を制御することによりGUI(Graphical User Interface)を実現し、表示部114の表示と連動させて、利用者が入力部112を介して設定データを入力するよう制御してもよい。例えば、設定データ入力制御部102aは、入力部112と一体として形成されたタッチパネルの表示部114に、テンキーを表示させ、利用者が表示されたテンキー上で指定(例えば、シングルタップやダブルタップ等)した座標に対応する数字(数値)を、設定データとして取得してもよい。なお、設定データ入力制御部102aは、利用者に入力部112を介して、ポンプPの運転開始や運転停止等の指示を入力させてもよく、これら利用者により入力された指示に応じて、P3出力制御部102bやP4出力制御部102cやP1出力制御部102e等に各ポンプPを制御させてもよい。
【0042】
また、P3出力制御部102bは、設定データファイル106aに設定された設定フラックスで濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力を制御する第2ポンプ出力制御手段である。例えば、P3出力制御部102bは、設定フラックスで濾過液が濾過されるように、濾液タンクT3に設置された重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を監視しながら、ポンプP3の出力を制御してもよい。例えば、P3出力制御部102bは、設定データファイル106aに記憶された、設定フラックスおよび膜面積に基づいて、目標とする濾過液速度(「目標濾過液速度」と呼ぶ。)を算出し、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3と密度D3に基づいて、算出した目標濾過液速度で濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力を制御してもよい。すなわち、P3出力制御部102bは、濾過液の重量変化量ΔW3と密度D3に基づいて体積変化ΔV3(すなわち、実測濾過液速度)を求め、実測濾過液速度が目標濾過液速度に一致するように、ポンプP3の出力値を設定してもよい。
【0043】
ここで、P3出力制御部102bによる、目標濾過液速度および実測濾過液速度の算出方法の一例について説明する。フラックス(膜濾過流束)は、膜の単位面積あたりの、膜面に垂直な成分の通過量で表される(単位は、例えば[m/day])。一方、濾過液速度は、単位時間あたりの、膜全体を通過する濾過液の通過量である。したがって、P3出力制御部102bは、設定フラックスに膜面積を乗ずることにより、目標濾過液速度を算出することができる。一例として、P3出力制御部102bは、以下の式に基づいて、目標濾過液速度および実測濾過液速度を算出してもよい。
目標濾過液速度[ml/min]=設定フラックス[m/day]×膜面積[cm]×100/(60×24)
実測濾過液速度[ml/min]=1分あたりの重量増加量ΔW3(g/min)/濾過液密度D3[g/cm
【0044】
なお、上記においては、P3出力制御部102bは、実測濾過液速度が目標濾過液速度に一致するようにポンプP3の出力制御を行う例を説明したが、これに限られず、P3出力制御部102bは、実測フラックスと設定フラックスが一致するようにポンプP3の出力を制御してもよい。一例として、P3出力制御部102bは、以下の式に基づいて、実測フラックスを算出してもよい。
実測フラックス[m/day]=(実測濾過液速度[ml/min]×60×24/膜面積[cm])/100
【0045】
また、P4出力制御部102cは、培養液が中空糸膜モジュール10に供給されるように、ポンプP4の出力制御を行う第3ポンプ出力制御手段である。例えば、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに設定された膜面線速度で、培養液が中空糸膜上に供給されるように、ポンプP4の出力制御を行う。一例として、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに記憶された、膜面線速度および流体断面積に基づいて、目標とする循環液量(「目標循環液量」と呼ぶ。)を算出し、当該循環液量の培養液が中空糸膜に供給されるようにポンプPの出力値(出力%や回転数など)を決定し、ポンプP4に出力値を指定する信号を与えて出力制御を行ってもよい。
【0046】
ここで、P4出力制御部102cによる、流体断面積の算出方法の一例について説明する。設定データファイル106aに、中空糸膜上に供給される培養液の流体断面積が記憶されていない場合、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに記憶された、流体断面積を求めるための値(中空糸膜モジュール10の内径や充填率など)に基づいて、当該流体断面積(中空糸膜モジュール10中の液通過断面積)を求めてもよい。一例として、P4出力制御部102cは、以下の式に基づいて、流体断面積を算出してもよい。
流体断面積[cm]=(内径[mm]/20)×3.14×(100−充填率[%])/100
【0047】
また、P4出力制御部102cによる、目標循環液量の算出方法の一例について以下に説明する。膜面線速度(クロスフロー速度)は、膜面に対し平行な流れの速さであり、一例として[cm/sec]の単位で表される。一方、循環液量(循環液速度)は、単位時間あたりに循環する液量、すなわち、単位時間あたりに中空糸膜上に供給される培養液の量である。したがって、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに記憶された膜面線速度に流体断面積を乗じることにより、目標循環液量を算出することができる。一例として、P4出力制御部102cは、以下の式に基づいて、目標循環液量を算出してもよい。
目標循環液量[ml/min]=膜面線速度[cm/sec]×流体断面積[cm]×60
【0048】
なお、上述においては、P4出力制御部102cが、算出した目標循環液量に基づいて、ポンプP4の出力制御を行うことを説明したが、これに限られない。例えば、膜面線速度とP4の出力値との関係が設定データファイル106aに記憶されていれば、P4出力制御部102cは、循環液量を算出することなく、設定された膜面線速度に基づいて、直接、ポンプP4の出力を制御してもよい。
【0049】
ここで、P3出力制御部102bやP4出力制御部102cは、目標とする設定値が定まると、実測値とポンプ出力値との関係式や対応テーブル等に基づいて、ポンプ出力値を決定し、ポンプPに出力値を示す信号を与えてもよい。例えば、P3出力制御部102bは、実測フラックスとポンプP3出力値の関係式から、設定フラックスに対応する出力値を決定し、ポンプP3に当該出力値を信号として与えてもよい。あるいは、P3出力制御部102bは、目標濾過液速度が求まると、実測濾過液速度とポンプP3出力値との関係式から出力値を決定し、ポンプP3に当該出力値の信号を与えてもよい。同様に、P4出力制御部102cは、設定された膜面線速度に基づいて、実測した膜面線速度とポンプP4出力値の関係式から出力値を決定し、ポンプP4に当該出力値の信号を与えてもよい。あるいは、P4出力制御部102cは、目標循環液量が定まると、実測した循環液量とポンプP4出力値の関係式から出力値を決定し、ポンプP4に当該出力値を指示する信号を与えてもよい。このように、P3出力制御部102bやP4出力制御部102cは、目標とする値に対応する、ポンプPの出力値を決定して、当該ポンプPに指令を与えることで、ポンプPからの出力によって目標とする値となるように制御する。
【0050】
また、培養液減少量算出部102dは、重量計S2,S3により計測される調整剤および濾過液の重量変化量ΔW2,ΔW3から各密度D2,D3に基づいて、培養液の減少量を算出する培養液減少量算出手段である。例えば、培養液減少量算出部102dは、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3から密度D3に基づいて、濾過液の流出による培養液の減少量に相当する、濾過液の増加量ΔV3(=ΔW3/D3)を算出する。そして、培養液減少量算出部102dは、重量計S2により計測される調整剤の重量変化量ΔW2から密度D2に基づいて、培養液の増加量に相当する、調整剤の減少量ΔV2(=ΔW2/D2)を算出する。そして、培養液減少量算出部102dは、濾過液の増加量ΔV3と調整剤の減少量ΔV2から、培養液の減少量(=ΔV3−ΔV2)を算出する。例えば、培養液減少量算出部102dは、以下の式に基づいて、培養液の減少量を算出してもよい。
培養液の減少量=ΔW3/D3−ΔW2/D2
【0051】
また、P1出力制御部102eは、培養液減少量算出部102dにより算出された培養液の減少量分の発酵原料が供給されるように、重量計S1により発酵原料の重量変化量ΔW1を監視しながら、ポンプP1の出力を制御する第1ポンプ出力制御手段である。ここで、本実施形態において、「培養液の減少量分の発酵原料」とは、培養液の減少量に相当する発酵原料のことであり、具体的には、培養液の減少量と同体積の発酵原料をいう。一例として、P1出力制御部102eは、以下の式に基づいて、培養液の減少量分の発酵原料の重量ΔW1(すなわち、供給すべき発酵原料の重量)を算出してもよい。
ΔW1=培養液の減少量×D1
【0052】
なお、上述の二式を統合すると下記の式となる。
ΔW1=(ΔW3/D3−ΔW2/D2)×D1
【0053】
そして、P1出力制御部102eは、上述のように算出した供給すべき発酵原料の重量変化量ΔW1に一致するまで、重量計S1により計測される発酵原料の重量変化量ΔW1を監視しながら、ポンプP1の出力を制御してもよい。なお、P1出力制御部102eは、設定データファイル106aに記憶された、ポンプP3出力値と発酵原料の重量変化量の関係式に基づいて、供給すべき発酵原料の重量ΔW1に対応する出力値を決定し、決定した出力値を指定する信号でポンプP1の出力制御を行ってもよい。
【0054】
また、フラックス設定部102fは、設定フラックスを設定するフラックス設定手段である。ここで、フラックス設定部102fは、限界フラックスを求めるため、設定フラックスを異なる値で繰り返し設定してもよい。例えば、フラックス設定部102fは、設定フラックスを、小さな値から大きな値まで昇順に繰り返し設定してもよい。なお、設定された設定フラックスで運転が始まってから膜間差圧が一定値に落ち着くまで、時間がかかるので、フラックス設定部102fは、膜間差圧取得部102gにより更新される膜間差圧が一定値に落ち着くまで、あるいは、設定フラックスを設定してから所定の時間、再設定処理を待機してもよい。
【0055】
また、膜間差圧取得部102gは、圧力計12により計測される圧力に基づいて膜間差圧を取得する膜間差圧取得手段である。なお、圧力計12として差圧計を用いる場合には、直接、膜間差圧が求められるが、1次側と2次側で2台の圧力計12が設置されている場合は、膜間差圧取得部102gは、それぞれの圧力計12で計測された圧力値の差分を求めることにより膜間差圧を算出してもよい。ここで、膜間差圧取得部102gは、フラックス設定部102fにより設定フラックスが設定されるたびに、膜間差圧を取得し、測定データファイル106bに格納してもよい。なお、膜間差圧取得部102gは、定期的に膜間差圧を取得してもよく、更新される膜間差圧が一定値に落ち着いた際の膜間差圧、あるいは、設定フラックスが設定されてから所定の時間後の膜間差圧を、後述する限界フラックスを求めるための膜間差圧として取得してもよい。なお、膜間差圧取得部102gは、取得した膜間差圧を、測定データファイル106bに格納してもよい。
【0056】
また、限界フラックス取得部102hは、フラックス設定部102fにより設定された設定フラックスの値と、膜間差圧取得部102gにより取得された膜間差圧との関係が、線形から非線形に変化するときの設定フラックスの値を限界フラックスとして取得する限界フラックス取得手段である。一般的に、膜間差圧ΔPが比較的小さな値の範囲では、ΔPに比例したフラックスが得られるが、ΔPが大きくなるとフラックスは比例関係から離脱し、やがてΔPに依存せず一定値に収束することになる。すなわち、膜間差圧ΔPを増加させても、1次側に濾物が堆積するのみでフラックスは増加せず、エネルギーが無駄に消費される状態に到達することになる。そのため、膜の性能を有効に利用するには、限界フラックス内で、設定フラックスを設定することが重要となる。一例として、限界フラックス取得部102hは、「線形から非線形に変化するときの設定フラックスの値」として、ΔPとの比例関係から離脱するときの設定フラックスの値を取得してもよく、フラックスが収束する一定値を取得してもよく、あるいは、これら両者の値の範囲を示すものや、両者の値の間の任意の値であってもよい。なお、限界フラックス取得部102hは、取得した限界フラックスを、測定データファイル106bに格納してもよい。
【0057】
また、ポンプ出力補正部102jは、P3出力制御部102bにより出力制御されるポンプP3の出力値(例えば、最大出力を100%としたときの出力%や回転数など)を異なる値で繰り返し設定し、当該出力値を設定するたびに、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を取得し、出力値と重量変化量ΔW3との関係式を算出することにより、P3出力制御部102bによる出力制御のキャリブレーションを行う第2ポンプ出力補正手段である。例えば、ポンプ出力補正部102jは、出力値と重量変化量ΔW3について検量線を作成することにより関係式を求め、P3出力制御部102bが参照可能となるように、設定データファイル106aに格納してもよい。一例として、ポンプ出力補正部102jは、P3出力制御部102bにより出力制御されるポンプP3の出力値を、10%、20%、40%、80%、100%と繰り返し設定する。そして、ポンプ出力補正部102jは、設定された各出力値で、重量計S3により計測されるW3の重量変化を感知してから30分間に計測した重量変化量ΔW3を取得して、P3出力値対濾過液速度の1点プロットとし、上記10%〜100%までの5点プロットで検量線を作成して、ポンプP3の出力値と濾過液速度との関係式を算出してもよい。なお、重量変化量ΔW3から濾過液速度を求める算出方法は、上述と同様である(濾過液速度=ΔW3/D3)。
【0058】
また、ポンプ出力補正部102jは、ポンプP4のキャリブレーションを行ってもよい。なお、ポンプP4のキャリブレーションを行う場合は、ポンプP4により出力される液量を把握するために、培養液の循環用の管を、一時的に原料タンクT1に接続してもよい。すなわち、ポンプP4のキャリブレーション時(非定常時)においては、発酵槽T4から出た管を、ポンプP4および中空糸膜モジュール10を介して、発酵槽T4に還流させることなく、原料タンクT1に接続する。そして、ポンプ出力補正部102jは、P4出力制御部102cにより出力制御されるポンプP4の出力値を異なる値で繰り返し設定し、当該出力値を設定するたびに、重量計S1により計測される培養液の重量変化量ΔW1を取得し、出力値と当該重量変化量ΔW1との関係式を算出することにより、P4出力制御部102cによる出力制御のキャリブレーションを行ってもよい。例えば、ポンプ出力補正部102jは、出力値と当該重量変化量ΔW1について検量線を作成することにより関係式を求め、P4出力制御部102cが参照可能となるように、設定データファイル106aに格納してもよい。一例として、ポンプ出力補正部102jは、P4出力制御部102cにより出力制御されるポンプP4の出力値を、10%、20%、40%、80%、100%と繰り返し設定する。そして、ポンプ出力補正部102jは、設定された各出力値で、重量計S1により計測されるW1の重量変化を感知してから1分間に計測した重量変化量ΔW1を取得して1点プロットとし、上記10%〜100%までの5点プロットで検量線を作成して、ポンプP4の出力値と循環液量(循環液速度)との関係式を算出してもよい。なお、重量変化量ΔW1から循環液量を求める算出方法は、上述と同様である。
【0059】
なお、ポンプ出力補正部102jは、関係式を算出することに限らず、単に、出力値と重量変化等との関係を示す対応テーブルを作成してもよく、作成した対応テーブルP3出力制御部102bやP4出力制御部102cが参照可能に、設定データファイル106aに格納してもよい。なお、上記と同様に、ポンプ出力補正部102jは、(定常時に)ポンプP1の出力値と重量計S1の重量変化量ΔW1との関係式や対応テーブルを求めることにより、ポンプP1のキャリブレーションを行ってもよい。
【0060】
また、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bに格納された測定データを表示部114に出力する測定結果出力手段である。ここで、測定結果出力部102kは、測定データに対応付けて、設定データファイル106aに記憶された設定データを表示させてもよい。例えば、測定結果出力部102kは、フラックス設定部102fにより設定された設定フラックスと、膜間差圧取得部102gにより取得された膜間差圧とを、表やグラフ等に対応付けて表示させてもよい。ここで、測定結果出力部102kは、一定期間(例えば、後述する連続発酵モード開始からの所定時間)が経過した場合に、チューブ交換を警告するアラームを音や表示により表示部114に出力してもよい。また、測定結果出力部102kは、設定データファイル106aに記憶された空タンク重量に基づいて、原料タンクT1内の発酵原料や調整剤タンクT2内の調整剤が無くなりそうな場合に、警告音や警告表示を出力してもよい。また、測定結果出力部102kは、設定データファイル106aに記憶された空タンク重量と制限容量に基づいて、濾液タンクT3内の濾過液が制限容量を超えそうな場合に、警告音や警告表示を出力してもよい。
【0061】
このほか、制御部102は、重量計S1,S2,S3によって計測され更新される各重量の値を、時系列に測定データファイル106bに格納してもよい。また、制御部102は、連続発酵重量制御装置100に接続された外部記憶媒体(USB等)に、測定データファイル106b中の測定データや設定データ等を書き出してもよく、外部システム200に測定データ等を送信(アップロード等)してもよい。
【0062】
以上が、連続発酵重量制御装置100の基本的な構成である。ここで、連続発酵重量制御装置100は、更に、通信制御インターフェース104を備えてもよい。通信制御インターフェース104は、連続発酵重量制御装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信制御を行う。すなわち、通信制御インターフェース104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。そのため、連続発酵重量制御装置100は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワーク300に通信可能に接続されることになる。
【0063】
通信制御インターフェース104は、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェースであり、連続発酵重量制御装置100とともに、外部システム200が、ネットワーク300を介して通信可能に接続されてもよい。
【0064】
図2において、ネットワーク300は、連続発酵重量制御装置100と外部システム200とを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット等である。また、外部システム200は、ネットワーク300を介して、連続発酵重量制御装置100と相互に接続され、利用者に対して、各種液体の密度等の設定データ等に関する外部データベースや連続発酵重量制御プログラム等の外部プログラム等を実行するウェブサイトを提供する機能を有してもよい。
【0065】
ここで、外部システム200は、WEBサーバやASPサーバ等として構成していてもよい。また、外部システム200のハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置およびその付属装置により構成していてもよい。また、外部システム200の各機能は、外部システム200のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等およびそれらを制御するプログラム等により実現される。
【0066】
以上で、本実施形態における連続発酵システムの説明を終える。
【0067】
[連続発酵システムの処理]
次に、このように構成された本実施形態における本連続発酵システムの処理の一例について、以下に図4〜図6を参照して詳細に説明する。
【0068】
[連続発酵モード]
まず、連続発酵モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理の詳細について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100の連続発酵モードにおける処理の一例を示すフローチャートである。この連続発酵モードでは、微生物もしくは培養細胞の培養液から、設定された設定フラックスに応じて連続的に、発酵の生産物を含む濾過液を回収することを目的としている。なお、以下の処理においては、設定データは、設定データ入力制御部102a等の制御により、事前に設定データファイル106aに格納されていることを前提として説明する。
【0069】
図4に示すように、まず、連続発酵重量制御装置100のP4出力制御部102cは、培養液が中空糸膜モジュール10に供給されるように、ポンプP4の出力制御を開始する(ステップSA−1)。例えば、設定データファイル106aに設定された膜面線速度で培養液を循環させるために、P4出力制御部102cは、下記の式1に示すように、設定データファイル106aに記憶された、膜面線速度と流体断面積とを乗じて目標循環液量を算出してもよい。なお、設定データファイル106aに流体断面積が記憶されていない場合、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに記憶された、中空糸膜モジュール10の内径や充填率から、下記の式2に基づいて、流体断面積を求めてもよい。そして、P4出力制御部102cは、設定データファイル106aに記憶された、ポンプP4の出力値と循環液量との関係式に基づいて、目標循環液量に対応する出力値を決定し、当該出力値を指定する信号を送信してポンプP4の出力を制御してもよい。なお、P4出力制御部102cによる、培養液の循環制御は、以降の処理においても継続される。
目標循環液量[ml/min]=膜面線速度[cm/sec]×流体断面積[cm]×60 ・・・(式1)
流体断面積[cm]=(内径[mm]/20)×3.14×(100−充填率[%])/100 ・・・(式2)
【0070】
そして、P3出力制御部102bは、設定データファイル106aに設定された設定フラックスで濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力制御を開始する(ステップSA−2)。例えば、P3出力制御部102bは、設定フラックスで濾過液が濾過されるように、濾液タンクT3に設置された重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を監視しながら、ポンプP3の出力を制御する。より具体的には、P3出力制御部102bは、下記の式3に示すように、設定データファイル106aに記憶された、設定フラックスと膜面積とを乗じて、目標濾過液速度を算出してもよい。そして、P3出力制御部102bは、下記の式4に示すように、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を密度D3で除して体積ΔV3(実測濾過液速度)を求め、実測濾過液速度が目標濾過液速度に一致するように、ポンプP3の出力を制御してもよい。なお、重量を監視しながら制御することに限られず、P3出力制御部102bは、実測濾過液速度とポンプP3出力値との関係式から目標濾過液速度に対応する出力値(出力%や回転数など)を決定し、ポンプP3に当該出力値を与えてもよい。また、P3出力制御部102bによる、設定フラックスでの濾過制御は、以降の処理においても継続されるが、その制御は断続的であってもよい(例えば、9分間の運転と1分間の停止の繰り返し運転等)。なお、P3出力制御部102bは、上記P4出力制御部102cによる制御開始から一定期間(濾過開始時間)待機してから当該ポンプP3の出力制御を開始してもよい。その際、濾過開始時間までに重量計S2で計測された重量変化ΔW2に相当する体積の濾過液を濾過して、全ての重量計S1〜S3をリセット(ゼロ校正)してもよい。
目標濾過液速度[ml/min]=設定フラックス[m/day]×膜面積[cm]×100/(60×24) ・・・(式3)
実測濾過液速度[ml/min]=1分あたりの重量増加量ΔW3(g/min)/濾過液密度D3[g/cm] ・・・(式4)
【0071】
そして、培養液減少量算出部102dは、重量計S2,S3により計測される調整剤および濾過液の重量変化量ΔW2,ΔW3から各密度D2,D3に基づいて、培養液の減少量を算出する(ステップSA−3)。例えば、培養液減少量算出部102dは、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を密度D3で除して濾過液の増加量ΔV3(=ΔW3/D3)を算出する。そして、培養液減少量算出部102dは、重量計S2により計測される調整剤の重量変化量ΔW2を密度D2で除して調整剤の減少量ΔV2(=ΔW2/D2)を算出する。最後に、培養液減少量算出部102dは、濾過液の増加量ΔV3から調整剤の減少量ΔV2を減ずることにより、培養液の減少量(=ΔV3−ΔV2)を算出する。例えば、培養液減少量算出部102dは、以下の式5に基づいて、培養液の減少量を算出してもよい。
培養液の減少量=ΔW3/D3−ΔW2/D2 ・・・(式5)
【0072】
そして、P1出力制御部102eは、培養液減少量算出部102dにより算出された培養液の減少量分の発酵原料(培養液の減少量と同体積の発酵原料)が供給されるように、重量計S1により発酵原料の重量変化量ΔW1を監視しながら、ポンプP1の出力を制御する(ステップSA−4)。一例として、P1出力制御部102eは、下記の式6に基づいて、培養液の減少量分の発酵原料の重量ΔW1(すなわち、供給すべき発酵原料の重量)を算出してもよい。なお、上記式5と式6を統合すると下記の式7となる。そして、P1出力制御部102eは、算出した供給すべき発酵原料の重量変化量ΔW1に一致するまで、重量計S1により計測される発酵原料の重量変化量ΔW1を監視しながら、ポンプP1の出力を制御してもよい。
ΔW1=培養液の減少量×D1 ・・・(式6)
ΔW1=(ΔW3/D3−ΔW2/D2)×D1 ・・・(式7)
【0073】
そして、連続発酵重量制御装置100は、上記ステップSA−3およびSA−4の処理を、終了条件に達するまで繰り返す(ステップSA−5)。すなわち、連続発酵重量制御装置100の制御部102は、終了条件を満たさない場合(ステップSA−5,No)、処理をステップSA−3に戻し、一方、終了条件を満たした場合(ステップSA−5,Yes)、処理を終える。終了条件は、例えば、設定データファイル106aに予め設定された連続発酵運転時間等に達したことであってもよく、また、利用者により入力部112を介して停止ボタン等が押下されたことであってもよく、また、重量計S1またはS2によって計測される重量が、設定データファイル106aに記憶された空のタンクT1またはT2の重量となった場合であってもよい。
【0074】
これにて、連続発酵モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理が終了する。なお、以上のように測定された測定データは、測定結果出力部102kの処理により、表示部114に表示されてもよい。例えば、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bに格納された測定データと、設定データファイル106aに記憶された設定データとを、対応付けて表形式やグラフ形式等で表示させてもよい。例えば、重量計S1〜S3により計測された重力W1〜W3の変化や、そこから算出された体積V1〜V3の変化(例えば濾過液の積算値(=積算W3重量増加[g]/濾過液密度[g/cm]))や、培養液の減少量や、圧力計12等により計測された膜間差圧の履歴等の各種測定値のデータや、設定フラックスの値や時間(連続発酵制御の運転開始からの時間等)等を、対応付けて表やグラフ等に表示させてもよい。
【0075】
また、上記においては、P3出力制御部102bが、実測濾過液速度と目標濾過液速度が一致するようにポンプP3の出力制御を行う例を説明したが、これに限られず、P3出力制御部102bは、実測フラックスと設定フラックスが一致するようにポンプP3の出力を制御してもよい。一例として、P3出力制御部102bは、以下の式8に基づいて、実測フラックスを算出してもよい。また、上記においては、P4出力制御部102cが、算出した目標循環液量に基づいて、ポンプP4の出力制御を行うことを説明したが、これに限られず、例えば、設定データファイル106aに記憶された、膜面線速度とポンプP4の出力値との関係式に基づいて、設定された膜面線速度に対応する出力値を決定し、ポンプP4の出力を制御してもよい。
実測フラックス[m/day]=(実測濾過液速度[ml/min]×60×24/膜面積[cm])/100 ・・・(式8)
【0076】
また、P3出力制御部102bやP4出力制御部102cは、関係式に基づいてポンプPの出力値を決定することに限らず、設定データファイル106aに記憶された対応テーブルに基づいて、出力値を決定してもよい。例えば、P3出力制御部102bは、実測フラックスとポンプP3出力値の対応テーブルから、設定フラックスに対応する出力値を決定し、ポンプP3に当該出力値を指定する信号を与えてもよい。あるいは、P3出力制御部102bは、目標濾過液速度が求まると、実測濾過液速度とポンプP3出力値との対応テーブルから出力値を決定し、ポンプP3に当該出力値の信号を与えてもよい。同様に、P4出力制御部102cは、実測した膜面線速度とポンプP4出力値の対応テーブルから、設定された膜面線速度に対応する出力値を決定し、ポンプP4に当該出力値を指定する信号を与えてもよい。あるいは、P4出力制御部102cは、目標循環液量が定まると、実測した循環液量とポンプP4出力値の関係式から出力値を決定し、ポンプP4に当該出力値を示す信号を与えてもよい。
【0077】
また、上記においては、特に説明しなかったが、各重量変化量ΔWは、各重量計S1〜S3によって計測され、定期的に制御部102により測定データファイル106bに時系列に格納された重量変化の履歴に基づいて、求める期間の差分をとることにより求めてもよい。また、これに限られず、ステップSA−3〜SA−5の処理が繰り返されるたびに、重量計S1〜S3の値をリセット(ゼロ校正)することにより、繰り返し期間における重量変化量ΔWを求めてもよい。
【0078】
[限界フラック測定モード]
次に、限界フラック測定モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理の詳細について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100の限界フラック測定モードにおける処理の一例を示すフローチャートである。この限界フラック測定モードでは、設定フラックスを異なる値で繰り返し設定することにより、限界フラックスを求めることを目的としている。なお、図5において、図4で参照したステップの符号(SA−1〜SA−5)と同一の符号は、同様に処理が行われることを示している。
【0079】
まず、図5に示すように、まず、連続発酵重量制御装置100のP4出力制御部102cは、上述のように、培養液が中空糸膜モジュール10に供給されるように、ポンプP4の出力制御を開始する(ステップSA−1)。
【0080】
そして、フラックス設定部102fが第1の設定フラックスを設定すると、P3出力制御部102bは、上述のように、設定データファイル106aに設定された設定フラックスで濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力制御を開始する(ステップSA−2)。
【0081】
そして、上述のように、培養液減少量算出部102dは、調整剤および濾過液の重量変化量ΔW2,ΔW3から各密度D2,D3に基づいて、培養液の減少量を算出し(ステップSA−3)、P1出力制御部102eは、培養液の減少量分の発酵原料が供給されるように、ポンプP1の出力を制御して(ステップSA−4)、所定の終了条件に達するまで、これらのステップSA−3およびSA−4の処理を繰り返す(ステップSA−5)。なお、この限界フラック測定モードにおいて、ステップSA−5の終了条件は、後述する膜間差圧が一定の値に落ち着いたことであってもよく、設定フラックスが設定されてから所定の時間が経過したこと等であってもよい。
【0082】
そして、膜間差圧取得部102gは、圧力計12により計測される圧力に基づいて膜間差圧を取得して、測定データファイル106bに格納する(ステップSA−6)。なお、膜間差圧取得部102gは、微差圧計等の圧力計12から計測された圧力をそのまま膜間差圧として取得してもよく、また、1次側と2次側に設置された各圧力計12から計測された圧力の差分を膜間差圧として取得してもよい。なお、膜間差圧取得部102gは、限界フラックス測定モードが開始されると、並列的に、常時、あるいは、定期的に、更新される膜間差圧を取得してもよく、取得した膜間差圧の履歴を測定データファイル106bに格納してもよい。そして、膜間差圧取得部102gは、更新される膜間差圧が一定値に落ち着いた際に上記終了条件を判定して、現在の設定フラックスに対応付けて最新の膜間差圧を、測定データファイル106bに記録してもよい。
【0083】
そして、フラックス設定部102fは、設定フラックスの再設定を終了するか否かを判定する(ステップSA−7)。例えば、フラックス設定部102fは、予め設定された設定フラックスの複数の値を全て設定し終えた場合に、終了と判定してもよい。また、後述する限界フラックス取得部102hが、限定フラックス測定モードにおいて並列的に限界フラックスの取得を試行する場合、当該限定フラックスの取得が成功した段階で、終了すると判定してもよい。
【0084】
設定フラックスの再設定を終了しないと判定した場合(ステップSA−7,No)、フラックス設定部102fは、設定フラックスを異なる値で再設定する(ステップSA−8)。すなわち、フラックス設定部102fは、上記第1の設定フラックスに続けて、第2、第3の設定フラックスを、異なる値で再設定する。なお、設定するフラックスの異なる複数の値は、設定データファイル106a等に予め記憶されてもよく、また、フラックス設定部102fが、その都度、設定すべきフラックスを決定して設定してもよい。例えば、フラックス設定部102fは、設定フラックスの値を、乱数表等を用いてランダムに抽出し、小さい値から順番に設定してもよい。また、フラックス設定部102fは、後述する限界フラックス取得部102hの判定により膜間差圧との線形性(比例関係)が得られない場合には、より小さな値を設定し、線形性が得られた場合は、より大きな値を設定してもよい。
【0085】
そして、連続発酵重量制御装置100は、以上のステップSA−2〜SA−8の処理を繰り返し実行する。なお、この繰り返し回数の分だけ、設定フラックスの値と膜間差圧とのプロットが得られることになる。
【0086】
フラックス設定部102fにより設定フラックスの再設定を終了すると判定した場合(ステップSA−7,Yes)、限界フラックス取得部102hは、フラックス設定部102fにより設定された設定フラックスの値と、膜間差圧取得部102gにより取得された膜間差圧との関係が、線形から非線形に変化するときの設定フラックスの値を限界フラックスとして取得する(ステップSA−9)。一例として、限界フラックス取得部102hは、限定フラックスの値として、膜間差圧ΔPとの比例関係から離脱するときの設定フラックスの値を取得する。なお、限界フラックス取得部102hは、取得した限界フラックスを、測定データファイル106bに格納してもよい。なお、限界フラックス取得部102hは、当該限定フラックス測定モードにおいて、上述したステップSA−2〜SA−8の処理が繰り返されるたびに、限界フラックスの取得を試行してもよく、当該限定フラックスの取得が成功した段階で、ステップSA−7の処理で終了と判定させ、取得した限界フラックスを測定データファイル106bに格納してもよい。また、測定結果出力部102kは、限界フラックス取得部102hにより取得された限界フラックスを、表示部114に表示させてもよい。
【0087】
これにて、限界フラック測定モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理が終了する。なお、このように測定された限界フラックスの値は、上述した連続発酵モードの処理が行われる際に、測定結果出力部102kの処理により、表示部114に表示されてもよい。すなわち、設定データ入力制御部102aは、利用者に設定フラックスを入力させる場合に、利用者に適正な設定フラックスの値を参照させるために、測定された限定フラックスを表示部114に表示してもよい。
【0088】
[ポンプ出力補正処理]
つづいて、連続発酵重量制御装置100のポンプ出力補正処理の詳細について図6を参照して説明する。図6は、本実施形態の本連続発酵システムにおける、連続発酵重量制御装置100のポンプ出力補正処理の一例(P3キャリブレーション)を示すフローチャートである。このポンプ出力補正処理では、ポンプPの出力値を異なる値で繰り返し設定することにより、目的の出力を得るための適正な出力値を得て、ポンプ出力制御のキャリブレーションを行うことを目的としている。なお、当該P3キャリブレーション処理は、好適には、上述した連続発酵モードや限界フラックス測定モードでの運転開始前に、毎回実行させてもよい。ただしポンプ出力補正処理では純水を利用する。
【0089】
まず、図6に示すように、上述したステップSA−1と同様に、連続発酵重量制御装置100のP4出力制御部102cは、培養液が中空糸膜モジュール10に供給されるように、ポンプP4の出力制御を開始する(ステップSB−1)。
【0090】
そして、ポンプ出力補正部102jが第1のP3出力値を設定すると、上述したステップSA−2と同様に、P3出力制御部102bは、当該設定された出力値で運転するようポンプP3の出力を制御する(ステップSB−2)。
【0091】
そして、ポンプ出力補正部102jは、重量計S3により計測される濾過液の重量変化量ΔW3を取得し、測定データファイル106bに格納する(ステップSB−3)。なお、ポンプ出力補正部102jは、重量計S3により計測される濾過液の重量変化を感知してから、30分間に計測した重量変化量ΔW3を取得してもよい。そして、ポンプ出力補正部102jは、取得した重量変化量ΔW3を密度D3で除することにより、濾過液速度(1分あたりの濾過液の体積変化量)を算出して測定データファイル106bに格納してもよい。このように、現在設定されたP3出力値と測定された濾過液速度によって、1点のプロットが得られる。
【0092】
そして、ポンプ出力補正部102jは、P3出力値の再設定を終了するか否かを判定する(ステップSB−4)。例えば、ポンプ出力補正部102jは、予め設定されたポンプP3の複数の出力値を全て設定し終えた場合に、終了と判定してもよい。
【0093】
再設定を終了しないと判定した場合(ステップSB−4,No)、ポンプ出力補正部102jは、ポンプP3の出力値を異なる値で再設定する(ステップSB−5)。すなわち、ポンプ出力補正部102jは、上記第1のP3出力値に続けて、第2、第3のP3出力値を、異なる値で再設定する。なお、設定する異なる複数の出力値は、設定データファイル106a等に予め記憶されてもよく、また、ポンプ出力補正部102jが、その都度、設定すべきP3出力値を決定して設定してもよい。例えば、ポンプ出力補正部102jは、P3出力制御部102bにより出力制御されるポンプP3の出力値を、最大出力を100%として、10%、20%、40%、80%、100%と順に設定してもよい。これに限らず、ポンプ出力補正部102jは、乱数表等を用いてランダムに出力値を設定してもよい。
【0094】
そして、連続発酵重量制御装置100は、以上のステップSB−2〜SB−5の処理を繰り返し実行する。なお、この繰り返し回数の分だけ、P3出力値と重量変化量ΔW3のプロットが得られることになる。
【0095】
そして、ポンプ出力補正部102jによりP3出力値の再設定を終了すると判定した場合(ステップSB−4,Yes)、ポンプP3の出力値と重量変化量ΔW3(または濾過液速度ΔV3)との関係式を算出することにより、P3出力制御部102bによる出力制御のキャリブレーションを行う(ステップSB−6)。例えば、ポンプ出力補正部102jは、P3出力値と重量変化量ΔW3について検量線を作成することにより関係式を求め、P3出力制御部102bが参照可能となるように、設定データファイル106aに格納してもよい。上述した例のように、ポンプ出力補正部102jが、P3出力値を、10%、20%、40%、80%、100%と繰り返し設定したとすると、上記10%〜100%までP3出力値と濾過液速度ΔV3の5点プロットで検量線を作成して、ポンプP3の出力値と濾過液速度(ΔW3/D3)との関係式を算出してもよい。
【0096】
以上が、連続発酵重量制御装置100のポンプ出力補正処理の一例である。なお、求める関係式は、上述した、P3出力値と重量変化量ΔW3との関係式や、P3出力値と濾過液速度ΔV3との関係式に限られず、P3出力値と(実測)フラックスとの関係式であってもよい。なお、一例として、実測フラックスは、濾過液速度から上記式8を用いて求められる。また、線形性により関係式を求めることに限らず、ポンプ出力補正部102jは、P3出力値と、ΔW3やΔV3や実測フラックス等との対応テーブル(対応表)を作成し、設定データファイル106aに格納してもよい。
【0097】
また、上記ポンプ出力補正処理の説明においては、ポンプP3の出力制御のキャリブレーションについて説明したが、同様に、ポンプ出力補正部102jは、ポンプP4の出力制御のキャリブレーションや、ポンプP1の出力制御のキャリブレーションを行ってもよい。
【0098】
なお、ポンプP4のキャリブレーションを行う場合は、ポンプP4により出力される液量を把握するために、培養液の循環用の管を、一時的に原料タンクT1に接続してもよい。そして、ポンプ出力補正部102jは、P4出力制御部102cにより出力制御されるポンプP4の出力値を異なる値で繰り返し設定し(例えば、順に、10%、20%、40%、80%、100%のP4出力値で設定し)、当該出力値を設定するたびに、重量計S1により計測される培養液の重量変化量ΔW1を取得し、P4出力値と重量変化量ΔW1との関係式を算出することにより、P4出力制御部102cによる出力制御のキャリブレーションを行ってもよい。例えば、ポンプ出力補正部102jは、P4出力値と重量変化量ΔW1について検量線を作成することにより関係式を求め、P4出力制御部102cが参照可能となるように、設定データファイル106aに格納してもよい。なお、P4出力値と重量変化量ΔW1との関係式を求めることに限らず、ポンプ出力補正部102jは、P4出力値と循環液量(循環液速度)ΔV1(=ΔW1/培養液の密度D4)との関係式や、P4出力値と膜面線速度との関係式を求めてもよい。なお、一例として、膜面線速度は、以下の式を用いて求めることができる。
膜面線速度[cm/sec]=循環液量[ml/min]/流体断面積[cm]/60 ・・・(式9)
【0099】
以上で、本実施形態の連続発酵システムにおける処理の説明を終える。
【0100】
[実施例]
つづいて、上述した実施形態が適用される実施例について、表示画面の遷移に沿って図7〜図16を参照して以下に説明する。
【0101】
なお、本実施例の連続発酵システムは、実験台上に設定できる省スペースな構成とする。原料タンクT1には、ナルゲン社製丸型瓶(20L)を用い、中和剤を保持する調整剤タンクT2には、同社製丸型瓶(10L)を、濾液タンクT3には、同社製丸型瓶(20L)を用いる。なお、発酵槽T4は、pHメーターの検出器11とポンプP2による自動pH調整機能を含む各種の既成品を用いてよい。
【0102】
また、重量計S1は、エー・アンド・デイ社製のHV−60KGV(商品名)(10g精度、30kg)を用い、重量計S2は、同社製HV−15KGV(商品名)(5g精度、15kg)を、重量計S3は、同社製GP−30K(商品名)(0.1g精度、30kg)を用いる。
【0103】
また、ポンプP1,P3,P4には、ヤマト科学社製MasterFlex(商品名)のポンプヘッド(P1,P3:イージーロードポンプヘッド7518−10、P4:イージーロードIIポンプヘッド77201−62)を用いる。なお、ポンプP1,P3は、回転数1〜100rpmであり、0.21〜21ml/minの流量の出力が得られる。また、ポンプP4は、回転数10〜600rpmであり、最大1500ml/min(300rpm)の流量(圧力)が得られる。なお、ポンプの駆動源は、回転数20〜600rpm、最大トルク13kg・cm、ポンプヘッド最大取り付け数2、モーター出力DC75W、回転速度再現性±0.25%FS、分解能回転数:1rpmのモーターを用いてもよい。または、回転数1.6〜100rpm、最大トルク26kg・cm、ポンプヘッド最大取り付け数4、モーター出力DC75W、回転速度再現性±0.25%FS、分解能回転数:0.1rpmのモーターを用いてもよい。
【0104】
また、液体を流通させる管は、ヤマト科学社製チューブ(シリコンL/S14等)を用いる。圧力計12は、長野計器社製のCG62デジタル微差圧計を用いる。なお、以上の構成は一例であり、これに限られず、また、本実施例に特記しない構成は上記実施形態で上述した構成と同様としてもよい。
【0105】
[連続発酵モード運転例]
まず、上記実施形態における連続発酵モードが適用される実施例(連続発酵モード運転例)について、以下に図7〜図12を参照して説明する。ここで、図7〜図9ならびに図11および図12は、本実施例の連続発酵モード運転において遷移する表示画面例を示す図である。
【0106】
図7に示すように、本実施例の画面は、連続発酵モードで運転させるための「連続発酵モード」ボタンMA−1と、限界フラックス測定モードで運転させるための「限界フラックス測定モード」ボタンMA−2とを含み、利用者が入力部112を介していずれかを押下(タッチパネルにおけるシングルタップ等)することにより、各モードを選択可能になっている。なお、選択されたモードは明るく表示し、非選択のモードは暗く表示してもよい。また、画面遷移制御は、設定データ入力制御部102aまたは測定結果出力部102jのいずれか又は両者が協働して行ってもよい。本実施例においては、設定データの入力の際は、設定データ入力制御部102aが、入力部112および表示部114を制御してGUI画面を実現し、一方、測定データ等の表示の際は、測定結果出力部102jが、測定データ等の出力表示を担う。
【0107】
なお、図7では、利用者が「連続発酵モード」ボタンMA−1を、入力部112を介して押下したことにより、既に連続発酵モードが選択されており、図示のごとく、この連続発酵モードにおいては、「入力・運転条件」タブMA−11、「実測値・算出値」タブMA−12、「連続発酵グラフ」タブMA−13、および、「濾過性グラフ」タブMA−14が選択可能に表示されている。
【0108】
このうち、利用者により入力部112を介して「入力・運転条件」タブMA−11が押下(シングルタップ等)されると、図8に示すように、設定データ入力制御部102aは、「入力・運転条件」タブMA−11の表示画面を表示部114に表示させる。
【0109】
そして、設定データ入力制御部102aは、利用者に入力部112を介して各種設定データの項目を入力させるGUIを実現する。例えば、設定データ入力制御部102aは、入力部112と一体として形成されたタッチパネル式の表示部114において、利用者が図8に示す「培地密度」をシングルタップすると、テンキーを重畳的に表示させ(図示せず)、利用者が表示されたテンキー上でシングルタップした座標に対応する数字(数値)を、培地密度の設定データとして取得してもよい。そのほか、図8に記載の項目(膜面積、MD内径、充填率、膜面線速度、設定フラックス、濾過開始時間、濾過ON/OFF時間等)も、設定データ入力制御部102aの制御により同様に設定可能である。
【0110】
そして、図8において、各種設定データの項目が入力され、利用者により「連続発酵開始」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、連続発酵モードにおける運転を開始する。なお、連続発酵モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理の詳細は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、「連続発酵終了」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、連続発酵モードにおける運転を終了する。また、「連続発酵データ排出」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、接続された外部記憶媒体(USB等)に測定データファイル106bに格納された測定データを書き出す処理を行う。
【0111】
そして、連続発酵モードの運転中または運転終了後に、利用者が「実測値・算出値」タブMA−12を押下すると、図9に示すように、測定結果出力部102kは、「実測値・算出値」タブMA−12の表示画面を表示部114に表示させる。
【0112】
図9に示すように、測定結果出力部102kは、連続発酵モードにおける処理により測定データファイル106bに格納された測定データ(重量制御関係測定値、連続発酵結果、濾過性評価結果等)を表示させる。すなわち、図9に示すように、表示される測定データは、培地(発酵原料)や中和剤(調整剤の一つ)や濾過液などの体積[L]等の重量制御関係測定値や、日時[YYYY/MM/DD/HH]や連続発酵時間[h]や積算濾過液量[L]等の連続発酵結果、膜間差圧[kPa]や濾過液速度[ml/min]や実測フラックス[m/day]等の濾過性評価結果等である。なお、膜面積[cm]は測定データではなく設定データである。また、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bにおいて、各種測定データの項目が更新されると、表示に反映させてもよい。例えば、図8に示したように、濾過ON/OFF時間の設定データに基づいて、ポンプP3の9分間の運転と1分間の停止が繰り返される場合、膜間差圧取得部102gにより取得される膜間差圧と、P3出力制御部102bにより算出される濾過液速度と実測フラックスは、10分に1回測定され更新されるので、測定結果出力部102kは、濾過性評価結果の表示を10分毎に更新する。
【0113】
なお、測定結果出力部102kがチューブ交換やタンク交換を警告する音声出力や表示出力を行うことにより、利用者が交換時期を把握できるようにしてもよい。そして、利用者が入力部112を介して、図9に示す「タンク交換」ボタンや「チューブ交換」ボタンを押下(シングルタップ等)すると、連続発酵重量制御装置100は、連続発酵モードの運転を停止させる等の処理を行う。なお、「タンク交換」ボタンまたは「チューブ交換」ボタンのいずれかのボタンが押下されると、選択されたボタンを明るく表示し、非選択のボタンは暗く表示してもよい。
【0114】
例えば、利用者により「タンク交換」ボタンが入力部112を介して押下されると、連続発酵重量制御装置100は、P1出力制御部102eの制御によりポンプP1の運転を停止させ、P3出力制御部102bの制御によりポンプP3の運転を停止させる。これにより、利用者は、原料タンクT1と濾液タンクT3を同時に交換することができる。なお、その際も、P4ポンプは稼動したままである。そして、利用者により「タンク交換」ボタンが再度押下されると、連続発酵重量制御装置100は、ポンプP1,P3の運転を再開させ、通常の連続発酵モードに復帰する。なお、本実施例において、ポンプP2は、連続発酵重量制御装置100による出力制御を受けていないが、利用者は個別にポンプP2の運転停止操作を行って、調整剤タンクT2を交換(または調整剤を充填)してもよい。
【0115】
また、利用者により「チューブ交換」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、P1出力制御部102eの制御によりポンプP1の運転を停止させ、P3出力制御部102bの制御によりポンプP3の運転を停止させ、P4出力制御部102cの制御によりポンプP4を停止させる。
【0116】
また、図9に示す「詳細データ記録」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100の制御部102は、測定データファイル106bへの測定データの記録頻度を増加させてもよい。例えば、利用者が図9に示す「記録時間」に詳細データ記録を行う時間数(この例では、45[h])を入力した上で「詳細データ記録」ボタンを押下すると、制御部102は、通常の記録頻度よりも高い頻度(例えば、10秒/回データロギング)で、記録時間経過まで、各種測定データを測定データファイル106bに格納する。なお、図9の「詳細データ排出」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、接続された外部記憶媒体(USB等)に、設定データファイル106aの設定データや、測定データファイル106bに格納された測定データ(記録時間内に記録された詳細データ等)を書き出す処理を行ってもよい。ここで、図10は、書き出されたデータの一例を示す図である。
【0117】
図10に示すように、書き出されるデータは、一例として、培地密度や中和剤密度や濾過液密度、膜面積やMD内径、充填率等の設定データのほか、連続発酵時間や体積(変化)や積算濾過液量や、(実測)膜面線速度、設定フラックス、膜間差圧、濾過液速度、実測フラックス等の測定データ等であり、例えば、日時に対応付けて表形式で出力される。
【0118】
また、利用者により入力部112を介して「連続発酵グラフ」タブMA−13が選択されると、図11に示すように、測定結果出力部102kは、「連続発酵グラフ」タブMA−13の表示画面を表示部114に表示させる。
【0119】
図11に示すように、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bに格納された測定データ(図10に例示したような時系列ログデータ等)に基づいて、培地(発酵原料)、中和剤(調整剤の一つ)、および、濾過液の体積変化、ならびに、積算濾過液量を、グラフ化して表示させてもよい。なお、図11において、濾過液の体積変化が急激に0になる時点は、ポンプP3の運転を停止させて、濾液タンクT3を空にしたことを示している。また、培地または中和剤の体積変化が急激に上昇している時点は、原料タンクT1または調整剤タンクT2に培地または中和剤を補給したことを示している。
【0120】
また、利用者により入力部112を介して「濾過性グラフ」タブMA−14が選択されると、図12に示すように、測定結果出力部102kは、「濾過性グラフ」タブMA−14の表示画面を表示部114に表示させる。
【0121】
図12に示すように、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bに格納された測定データ(図10に例示したような時系列ログデータ等)に基づいて、設定フラックスおよび実測フラックス(0.000〜0.600[m/day])、膜間差圧(0〜30[KPa])、設定膜面線速度(0〜100[cm/sec])の変化履歴を、グラフ化して表示させてもよい。なお、図12において、膜間差圧は、中空糸膜の詰まり具合を表しており、図の例では上昇傾向にある。一方、実測フラックスは、図12の表示時間において、設定フラックスをほぼ維持しているものの、表示時間経過後は、膜間差圧の上昇(詰まり具合の進行)に伴って、設定フラックスでの運転を維持できなくなる傾向にある。利用者は、このようにグラフ化された濾過性評価結果を見ることで、中空糸膜の詰まり具合や設定フラックスが適正であるか否か、中空糸膜モジュール10の交換時期等を把握することができる。
【0122】
以上で、本実施例における連続発酵モード運転例の説明を終える。
【0123】
[限界フラックス測定モード運転例]
つづいて、上記実施形態における限界フラックス測定モードが適用される実施例(限界フラックス測定モード運転例)について、以下に図13〜図16を参照して説明する。ここで、図13、図14および図16は、本実施例の限界フラックス測定モード運転において遷移する表示画面例を示す図である。
【0124】
上述した図7において、利用者により「限界フラックス測定モード」ボタンMA−2が入力部112を介して押下されると、限界フラックス測定モードが選択される。図13に示すように、この限界フラックス測定モードにおいては、「入力・運転条件」タブMA−21、「実測値・算出値」タブMA−22、および、「限界フラックス測定結果グラフ」タブMA−23が選択可能に表示される。
【0125】
このうち、利用者により入力部112を介して「入力・運転条件」タブMA−21が押下(シングルタップ等)されると、図13に示すように、設定データ入力制御部102aは、「入力・運転条件」タブMA−21の表示画面を表示部114に表示させる。
【0126】
そして、設定データ入力制御部102aは、利用者に入力部112を介して各種設定データの項目を入力させるGUIを実現する。例えば、設定データ入力制御部102aは、入力部112と一体として形成されたタッチパネル式の表示部114において、利用者が図13に示す「第1フラックス」の項目をシングルタップすると、テンキーを重畳的に表示させ(図示せず)、利用者が表示されたテンキー上でシングルタップした座標に対応する数字(数値)を、第1フラックスの設定データとして取得してもよい。そのほか、図13に記載の項目(密度、膜面積、MD内径、充填率、膜面線速度、第1〜第7フラックス等)も、設定データ入力制御部102aの制御により同様に設定可能である。
【0127】
そして、図13において、各種設定データの項目が入力され、利用者により「限定フラックス測定開始」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、限界フラックス測定モードにおける運転を開始する。特に、本実施例の限界フラックス測定モードにおいては、フラックス設定部102fは、上述のように設定された第1〜第7のフラックスを順に設定フラックスとして再設定を行う。なお、限界フラックス測定モードにおける連続発酵重量制御装置100の処理の詳細は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0128】
そして、限界フラックス測定モードの運転中または運転終了後に、利用者が「実測値・算出値」タブMA−22を押下すると、図14に示すように、測定結果出力部102kは、「実測値・算出値」タブMA−22の表示画面を表示部114に表示させる。
【0129】
図14に示すように、測定結果出力部102kは、設定データ(膜面積や膜面線速度や設定フラックス等の試験条件)や、限界フラックス測定モードにおける処理により測定データファイル106bに格納された測定データを表示させる。なお、測定結果出力部102kは、フラックス設定部102fにより現在設定された設定フラックスを表示する。なお、図14に示すように、表示される測定データは、日時や、限界フラックス開始からの時間カウント[min]や、積算濾過液量[mL]、膜間差圧[kPa]、濾過液速度[ml/min]、実測フラックス[m/day]等の限界フラックス測定実測値等である。また、測定結果出力部102kは、測定データファイル106bにおいて、各種測定データの項目が更新されると、表示に反映させてもよい。
【0130】
なお、図14の「限界フラックス測定データ排出」ボタンが押下されると、連続発酵重量制御装置100は、接続された外部記憶媒体(USB等)に、設定データファイル106aの設定データや、測定データファイル106bに格納された測定データ(記録時間内に記録された詳細データ)を書き出す処理を行う。ここで、図15は、書き出されたデータの一例を示す図である。
【0131】
図15に示すように、書き出されるデータは、一例として、培地密度や中和剤密度や濾過液密度、膜面積やMD内径、充填率や(設定)膜面線速度等の設定データのほか、時間カウント、設定フラックス(第1〜第7のフラックス)、積算濾過液量や、膜間差圧、濾過液速度、実測フラックス等の測定データ等であり、例えば、日時に対応付けて表形式で出力される。
【0132】
また、限界フラックス測定モードの運転中または運転終了後に、利用者が入力部112を介して「限界フラックス測定結果グラフ」タブMA−23を選択すると、図16に示すように、測定結果出力部102kは、「限界フラックス測定結果グラフ」タブMA−23の表示画面を表示部114に表示させる。
【0133】
図16に示すように、測定結果出力部102kは、設定データファイル106aの設定データや測定データファイル106bに格納された測定データ(図15に例示したような時系列ログデータ等)に基づいて、時間に対する膜間差圧のグラフ(図左)や、フラックスに対する膜間差圧のグラフ(図右)を表示させてもよい。なお、図16左の膜間差圧のグラフに示すように、本実施例においては、フラックス設定部102fにより15分間隔で第1〜第7のフラックスが再設定されるため、膜間差圧取得部102gにより設定後15分の膜間差圧が設定フラックスに対応付けて取得される。そして、測定結果出力部102kは、取得された膜間差圧と設定フラックスとを対応付けたグラフ(図右)を表示させる。図16右の(設定)フラックスに対する膜間差圧のグラフに示すように、フラックスが小さい領域においては、フラックスと膜間差圧は比例している。そして、徐々に比例関係から離脱し、膜間差圧をいくら上昇させても、フラックスが大きくならない収束状態に達している。なお、本実施例では、限界フラックス取得部102hは、一例として、比例関係を脱した点の設定フラックスの値(図の例では、0.3付近)を限界フラックスとして取得してもよい。
【0134】
以上で、本実施形態における実施例の説明を終える。
【0135】
以上説明したように本実施形態の連続発酵重量制御装置100においては、制御部102が、設定された設定フラックスで濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力を制御し、重量計S2,S3により計測される調整剤および濾過液の重量変化ΔW2,ΔW3から各密度D2,D3に基づいて、培養液の減少量を算出し、培養液の減少量分の発酵原料が供給されるように、重量計S1により当該発酵原料の重量変化ΔW1を監視しながら、ポンプP1の出力を制御するので、中空糸膜を用いる場合に膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させることができる。また、従来では、主に、体積変化をレベルセンサ等で計測していたため、発酵槽中に泡や固形物が発生した場合に、正確な体積変化を計測することができなかったが、本実施形態によれば、重量制御とするので、泡や固形物が発生した場合であっても、発酵槽から流出または流入する液体の重量変化から、培養液の体積変化を算出して、的確なポンプ制御を行うことができる。
【0136】
また、上記連続発酵重量制御装置100においては、制御部102が、設定フラックスを、異なる値で繰り返し設定し、設定フラックスを設定するたびに、圧力計12により計測される圧力に基づいて膜間差圧ΔPを取得し、設定した設定フラックスと取得した膜間差圧ΔPとの関係が、線形から非線形に変化するときの設定フラックスの値を限界フラックスとして取得するので、設置された中空糸膜に応じて当該膜の性能を十分に発揮させるために基準となる限界フラックスを測定することができ、連続発酵において、さまざまなタイプの中空糸膜の設置を許容する汎用性を実現することができる。
【0137】
また、上記連続発酵重量制御装置100においては、制御部102が、設定フラックスから膜面積に基づいて濾過液速度を算出し、重量計S3により計測される濾過液の重量変化ΔW3と密度D3に基づいて、算出した濾過液速度で濾過液が濾過されるように、ポンプP3の出力を制御するので、設置された中空糸膜に応じて、正確に設定フラックスにて減圧濾過を実施することができる。
【0138】
また、上記連続発酵重量制御装置100においては、制御部102が、設定された膜面線速度から流体断面積に基づいて循環液量を算出し、当該循環液量の培養液が中空糸膜に供給されるように、ポンプP4の出力を制御するので、正確に設定された膜面線速度に応じてクロスフロー方式の膜濾過を実施することができる。
【0139】
また、上記連続発酵重量制御装置100においては、制御部102が、ポンプP3の出力値を異なる値で繰り返し設定し、当該出力値を設定するたびに、重量計S3により計測される濾過液の重量変化ΔW3を取得し、出力値と当該重量変化ΔW3との関係式を算出することにより、P3出力制御部102bによる出力制御のキャリブレーションを行うので、設定のフラックスでの正確な濾過を実施させるためにポンプ出力を補正することができる。
【0140】
[他の実施形態]
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0141】
特に上記実施形態においては、本発明を発酵分野に適用した例について説明したが、狭義の発酵であるか広義の発酵であるかを問わず、さらには学問上の発酵であるか否かを問わず、培養可能な生物種や細胞等を利用する全ての技術分野において、同様に適用することができる。
【0142】
また、ポンプP2の出力制御を行う発酵槽T4側と、ポンプP1,P3,P4の出力制御を行う連続発酵重量制御装置100側との機能分散の形態は以下に限られず、同様の効果や機能を奏し得る範囲において、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、本実施形態で例示した連続発酵システムにおける、検出器11の検出結果に応じて調整剤の自動供給を伴う発酵槽T4側の制御を、連続発酵重量制御装置100の制御部102が行ってもよい。
【0143】
また、連続発酵重量制御装置100がスタンドアローンの形態で処理を行う場合を一例に説明したが、連続発酵重量制御装置100は、クライアント端末(連続発酵重量制御装置100とは別筐体)からの要求に応じて処理を行い、その処理結果を当該クライアント端末に返却するようにしてもよい。例えば、連続発酵重量制御装置100は、入出力制御インターフェース部108を介して取得されると説明した重量や圧力等の値を、クエリーとしてネットワーク300を介して外部システム200から受信し、受信した重量や圧力値等に基づいて決定した各種ポンプPの出力値を、外部システム200に送信してもよい。
【0144】
また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、上述の実施形態においては、調整剤が検出器11の検出結果に応じてポンプP2により自動で供給されることを前提に説明したが、これに限られず、調整剤タンクT2から手動にて調整剤が供給されてもよい。
【0145】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや密度や発酵条件等の各種パラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0146】
また、連続発酵重量制御装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0147】
例えば、連続発酵重量制御装置100の各装置が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて連続発酵重量制御装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0148】
また、このコンピュータプログラムは、連続発酵重量制御装置100に対して任意のネットワーク300を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0149】
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD、および、Blu−ray Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0150】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0151】
記憶部106に格納される各種のデータベース等(設定データファイル106aや測定データファイル106b等)は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0152】
また、連続発酵重量制御装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、連続発酵重量制御装置100は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0153】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0154】
以上詳述に説明したように、本発明によれば、使用する中空糸膜に応じて当該膜の性能を十分に発揮させながら、発酵槽内の培養液量を安定して維持させる、連続発酵重量制御装置、連続発酵システム、連続発酵重量制御方法、および、連続発酵重量制御プログラムを提供することができるので、発酵関連分野のほか、医療や製薬や創薬や生物学研究や食品製造や有機化合物製造などの様々な分野において極めて有用である。
【符号の説明】
【0155】
100 連続発酵重量制御装置
102 制御部
102a 設定データ入力制御部
102b P3出力制御部
102c P4出力制御部
102d 培養液減少量算出部
102e P1出力制御部
102f フラックス測定部
102g 膜間差圧取得部
102h 限界フラックス取得部
102j ポンプ出力補正部
104 通信制御インターフェース部
106 記憶部
106a 設定データファイル
106b 測定データファイル
108 入出力制御インターフェース部
112 入力部
114 表示部
10 中空糸膜モジュール
11 検出器
12 圧力計
13 攪拌装置
S1,S2,S3 重量計
P1,P2,P3,P4 ポンプ
T1,T2,T3 タンク
T4 発酵槽
200 外部システム
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、
中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、
前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、
を備えた連続発酵システムに接続される、記憶部と制御部とを少なくとも備えた連続発酵重量制御装置であって、
前記記憶部は、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶し、
前記制御部は、
設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御手段と、
前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出手段と、
前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする、連続発酵重量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連続発酵重量制御装置において、
前記連続発酵システムは、
更に、前記中空糸膜の膜間差圧を求めるための圧力を計測する圧力計を備え、
前記制御部は、
前記設定フラックスを、異なる値で繰り返し設定するフラックス設定手段と、
前記フラックス設定手段により前記設定フラックスが設定されるたびに、前記圧力計により計測される前記圧力に基づいて前記膜間差圧を取得する膜間差圧取得手段と、
前記フラックス設定手段により設定された前記設定フラックスと前記膜間差圧取得手段により取得された前記膜間差圧との関係が、線形から非線形に変化するときの前記設定フラックスの値を限界フラックスとして取得する限界フラックス取得手段と、
を更に備えたことを特徴とする連続発酵重量制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の連続発酵重量制御装置において、
前記記憶部は、
前記中空糸膜の膜面積を、更に記憶し、
前記第2ポンプ出力制御手段は、
前記設定フラックスから前記膜面積に基づいて濾過液速度を算出し、前記重量計により計測される前記濾過液の重量変化と前記密度に基づいて、前記算出した前記濾過液速度で前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御することを特徴とする連続発酵重量制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の連続発酵重量制御装置において、
前記記憶部は、
前記中空糸膜に前記培養液を供給する際の流体断面積または前記流体断面積を求めるための値を、更に記憶し、
前記制御部は、
設定された膜面線速度から前記流体断面積に基づいて循環液量を算出し、当該循環液量の前記培養液が前記中空糸膜に供給されるように、前記第3のポンプの出力を制御する第3ポンプ出力制御手段、
を更に備えたことを特徴とする連続発酵重量制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の連続発酵重量制御装置において、
前記制御部は、
前記第2ポンプ出力制御手段により出力制御される前記第2のポンプの出力値を異なる値で繰り返し設定し、当該出力値を設定するたびに、前記重量計により計測される前記濾過液の前記重量変化を取得し、前記出力値と当該重量変化との関係式を算出することにより、前記第2ポンプ出力制御手段による前記出力制御のキャリブレーションを行う第2ポンプ出力補正手段、
を更に備えたことを特徴とする連続発酵重量制御装置。
【請求項6】
所定の培養条件となるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、
中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、
前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、
制御部と、
を備えた連続発酵システムであって、
前記制御部は、
設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御手段と、
前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出手段と、
前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ出力制御手段と、
を備えたことを特徴とする、連続発酵システム。
【請求項7】
所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、
中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、
前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、
を備えた連続発酵システムに接続される、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、制御部とを少なくとも備えたコンピュータにおいて実行される連続発酵重量制御方法であって、
前記制御部において実行される、
設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御ステップと、
前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から、前記密度記憶手段に記憶された前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出ステップと、
前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ制御ステップと、
を含むことを特徴とする、連続発酵重量制御方法。
【請求項8】
所定の培養条件になるように調整剤が供給される、微生物もしくは培養細胞の培養液に、発酵原料を供給する第1のポンプと、
中空糸膜を介して前記培養液から生産物を含む濾過液を濾過する第2のポンプと、
前記中空糸膜に前記培養液を供給し、未濾過液を前記培養液に還流する第3のポンプと、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各重量を計測する重量計と、
を備えた連続発酵システムに接続される、
前記発酵原料、前記濾過液、および、前記調整剤の各密度を記憶する記憶部と、制御部とを少なくとも備えたコンピュータに実行させるための連続発酵重量制御プログラムであって、
前記制御部において、
設定された設定フラックスで前記濾過液が濾過されるように、前記第2のポンプの出力を制御する第2ポンプ出力制御ステップと、
前記重量計により計測される前記濾過液および前記調整剤の重量変化から、前記密度記憶手段に記憶された前記各密度に基づいて、前記培養液の減少量を算出する培養液減少量算出ステップと、
前記培養液の前記減少量分の前記発酵原料が供給されるように、前記重量計により当該発酵原料の重量変化を監視しながら、前記第1のポンプの出力を制御する第1ポンプ制御ステップと、
を実行させるための、連続発酵重量制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−191870(P2012−191870A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56830(P2011−56830)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発/化学品原料の転換・多様化を可能とする革新グリーン技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】