説明

連続的なフライス加工プロセスにおいてベベルギヤの歯システムを切削するための方法

【課題】良好な歯当たりパターンまたは歯面の良好な表面特性を保証し、かつ良好な生産性を提供する。
【解決手段】連続プロセスにてベベルギヤの歯システムを切削するための方法であって、歯切り盤を使用してフライス加工による第1の連続的な金属切削加工を実行するステップであって、加工対象のベベルギヤの凸面の内側側面が内側の刃先によって加工され、第1の機械設定が使用されるステップと、歯切り盤を使用してフライス加工による第2の連続的な金属切削加工を実行するステップであって、加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面が外側の刃先によって加工され、第2の機械設定が使用されるステップとが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、連続的なフライス加工プロセスにおいてベベルギヤの歯システムを切削するための方法である。特に、スパイラルベベルギヤの歯システムのフライス加工に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車を機械加工するための多数の方法が存在している。スパイラルベベルギヤの切屑生成式(chip−producing)の製造においては、単一割出プロセス(single indexing process)と連続プロセス(continuous process)(連続割出プロセス(continuous indexing process)と称されることもある。)との間で区別される。
【0003】
例えば、連続プロセス(フェイスホビング(face hobbing)とも称される。)においては、グループのように配置された内側カッタおよび外側カッタを備えるカッタヘッドツールが、ワークピースの凸面および凹面の側面を切削するために適用される。すなわち、ワークピースを、1回の固定で、ノンストップのプロセスにおいて切削することができる。連続プロセスは、ツールと加工されるワークピースとが連続的な割出動作を実行するきわめて複雑に組み合わせられた一連の動作に基づいている。割出動作は、該当の機械の複数の軸駆動部を協調的に駆動することによってもたらされる。連続割出法においては、毎回ただ1つのカッタグループが歯溝を通って移動し、次のカッタグループが次の空間を通って移動するように、カッタヘッドの回転と加工されるワークピースの回転とが組み合わせられる。このようにして割出が連続的に実行され、すべての歯溝が実質的に同時に生成される。これらの組み合わせられた動作によって、拡張された外サイクロイドが、製造すべきベベルギヤのクラウンギヤの長手方向の歯すじとしてもたらされる。連続プロセスにおいて、カッタグループのカッタは、各カッタが位相角の分だけ別のカッタの背後に配置され、外側および内側カッタの刃先は、共通の平面における投影において交差する。
【0004】
割出プロセス(単一割出プロセスまたは正面フライスとも称される。)においては、1つの歯溝が機械加工され、次いでツールを後退させて歯溝から出すべく相対変位動作が実行され、次の歯溝の機械加工の前にワークピースをツールに対して回転させるいわゆる割出動作(割出回転)が実行される。このように、歯車が段階的に製作される。単一割出プロセスにおいては、ワークピース上で内側の側面(凸面の歯面)を切削し、外側の側面を予備的に機械加工するために、内側カッタと外側カッタとを備えた第1のカッタヘッドを適用することができる。外側カッタは、外側の側面の最終的な形状を生成しない。したがって、第1のカッタヘッドを、ワークピースに外側の側面(凹面の歯面)を切削することができる外側カッタを備えている第2のカッタヘッドで置き換えることができる。この手順は、片面(single−side)切削とも称される。ツールの刃先は、(例えば、フェイスカッタヘッドに関して)円形に配置されており、したがってワークピースに生成される歯すじは、円弧の形状を有する。
【0005】
上述の単一割出プロセスにおいては、カッタヘッドの交換が行われ、このことが、一方では機械加工の総計の継続時間の延長につながり、他方では固定の変更または新たな固定のたびに理想的な位置からのわずかなずれが生じる可能性があるため、精度の低下を引き起こす可能性がある。さらに、割出プロセスは、いわゆる割出誤差がつきまとうという欠点を抱えている。両方の歯面を互いに実質的に独立に最適化できる点が、2つの別個のカッタヘッドを用いる片面単一割出プロセスの利点である。
【0006】
いわゆる仕上げ(completing)プロセスは特別な単一割出プロセスであり、大量生産に好適に使用される。仕上げプロセスにおいては、クラウンギヤおよびピニオンギアが、2つの側面の切削にて加工され、完全に仕上げられる。他の単一割出プロセスと比べて、仕上げプロセスは、より高い生産性(2倍の切削能力)を特徴とする。しかしながら、2つの側面の切削を含むすべてのプロセスにおいて同様に、機械の運動学的な変更が常に両方の側面に影響を及ぼすため、側面の形状の変更がより困難である。このように、機械の運動による一方の側面の変更が、常に他方の側面の変更を伴うことが、仕上げプロセスの欠点である。したがって、「2つの側面の切削に適合」する場合に限って変更可能である。
【0007】
したがって、割出プロセスに従って動作する機械と連続的に動作する機械との間でも、本質的に区別される。
【0008】
例えば、「Oerlikon Spiralkegelrader, Berechnungen,Herstellung und Optimierung」(英語では、「Oerlikon spiral bevel gears,calculations, manufacturing and optimization」)、Schriftensammlung(英語では、collection of documents) 1988/89、Werkzeugmaschinenfabrik Oerlikon−Buhrle AG、Oerlikon Verzahnungsmaschinen(英語では、Oerlikon gear cutting machines)という文書の73〜77頁に記載されている所謂マルチカットまたはOerlikonマルチカットプロセスが、最も近い技術水準として挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、歯車の歯面を切削するための方法であって、良好な歯当たりパターンまたは歯面の良好な表面特性を保証し、かつ良好な生産性を特徴とする方法を提供することにある。歯車あたりの加工時間の短縮も、本発明の主要な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、サイクロ−パロイド(cyclo−palloid)プロセス(ドイツ語:Zyklo−Palloid−Verfahren)によって予め研削された歯システムの単一割出プロセスにおける研削に利用される半仕上げプロセスと根本的に比較され得る方法によって達成される。
【0011】
ベベルギヤの2つの側面(すなわち、凸面の内側側面および凹面の外側側面)が、別々の機械設定にて、しかしながら同じツールを使用して、連続的に切削されることが本発明に係る方法の特徴である。しかしながら、この目的のために、凹面および凸面の側面の加工に必要なツール半径を、共通のカッタヘッドに設けなければならない。加工対象のベベルギヤ(bevel work gear)の凸面の内側側面のフライス加工のための内側の刃先が、第1のフライサークル半径(fly circle radius)に配置される。加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面のフライス加工のための外側の刃先が、第2のフライサークル半径に配置される。第1のフライサークル半径は、第2のフライサークル半径よりも小さい。異なるフライサークル半径を規定することによって、内側の刃先および外側の刃先の両方を、1つの同じカッタヘッドに設けることができ、好ましくは1つの同じバーカッタに設けることができる。フライサークル半径はフォロー角に関係しているため、機械の設定を調節しなければならない。
【0012】
例えば、連続プロセスにおける内側カッタと外側カッタとの間の角度(この角度が、フォロー角と呼ばれる。)の変化は、歯の厚さの変化をもたらすが、単一割出プロセスにおいては影響を有さない。したがって、本発明に係る方法においては、歯の厚さの変化(歯の厚さの誤差)、らせん角の変化(らせん角の誤差)、および他の態様を補償または補正するために、機械設定の変更を実行しなければならない。
【0013】
上述のマルチカットプロセスと比べ、本発明によれば、ベベルギヤピニオンおよびクラウンギヤが、一面ずつ製造され、両面カッタすなわち内側および外側カッタを備えたカッタヘッドを使用してそれぞれ機械加工される。
【0014】
本発明によれば、外側カッタのフライサークル半径が内側カッタのフライサークル半径よりも大きくなるように、設計され且つカッタが設けられたカッタヘッドが適用される。すなわち、異なるフライサークル半径が想定される。
【0015】
本発明によれば、ベベルギヤの凸面および凹面の側面が、別々の機械設定にてフライス加工される。
【0016】
すなわち、本発明は、連続的な半仕上げフライス加工プロセス(continuous semi-completing milling process)に関し、すなわち、連続的なフライス加工プロセスにおいて半仕上げ法(semi-completing method)の態様が適用される方法に関する。
【0017】
しかしながら、本発明によれば、上述したように、半仕上げ単一割出プロセスを1:1のやり方で移転させることができないため、機械設定の変更を実行しなければならない。これらの変更は、歯当たりパターンを製造される歯のほぼ中央に位置させるために必要とされる。
【0018】
ツールの交換(固定の変更)が不要であり、2つの異なるツールを備える二連ヘッドの機械を使用する必要もないことが、本発明の利点である。
【0019】
本発明に係る方法を、乾式および湿式の加工の両方として実行することができる。
【0020】
本発明のさらなる詳細および利点が、以下で、実施の形態の例を使用し、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】内側カッタを外側カッタと組み合わせて正の中心間距離を有する刃先を備えるバーカッタとする概略図を示している。
【図1B】幾何学的導出のさらなる詳細を示している。
【図2A】第1の実施の形態におけるバーカッタの斜視図を示している。
【図2B】図2Aのバーカッタの平面図を示している。
【図2C】正の中心間距離を有する本発明に係るバーカッタのレーキ面の大まかな概略図を示している。
【図2D】負の中心間距離を有する本発明によらない典型的なバーカッタのレーキ面の大まかな概略図を示している。
【図3A】第1の実施の形態におけるカッタヘッドの斜視図を示している。
【図3B】図3Aのカッタヘッドの平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に関して、関連の刊行物および特許においても利用が見つけられる用語が使用される。しかしながら、これらの用語の使用が、単により良い理解をもたらすためのものであることに、注意すべきである。本発明の考え方および特許請求の範囲の技術的範囲は、特定の用語の選択による解釈に限定されない。本発明を、さらなる苦労を必要とせずに、他の用語体系および/または技術分野へと移転させることができる。他の技術分野において、用語は同じように使用されなければならない。
【0023】
公知の連続プロセスにおいては、両方の歯面が、(頂部などを生成するための修正を除き)同じツール半径で機械加工される。対応する内側カッタと外側カッタとの主たる刃先が、ピッチ面において互いに交差する。内側カッタは、角距離π/zで外側カッタに追従する。ここで、zはギアの数である。
【0024】
本発明の場合のように、内側カッタ2が外側カッタ3と結合することで、先端幅sa0を有するただ1つのバーカッタ10が形成されるとき、前記の刃先は、2・Δrずつお互いから離れるように引かれなければならない。2つの刃先のうちのいずれか一方が、全量分ずらされるか、あるいは両方の刃先a,i(図1A参照)が半分(すなわち、Δr)だけずらされる。ここで、Δrは、傾斜方向(図1Bの27)のカッタの変位に相当する。図1Aにおいて、内側カッタ2および外側カッタ3の輪郭が細い線によって示されている。新たなバーカッタ10の輪郭が、より太い線で示されている。
【0025】
この場合、凸面の側面を生成するためのカッタの側面が、より小さい半径にセットされ、凹面の側面を生成するためのカッタの側面が、より大きい半径にセットされ、すなわち、カッタの正の先端幅sa0≒0.32・mが生成されるようにセットされる(ここで、mは、平均の(mean)歯直角モジュールである。)。これに対応する半径の変更は、半径方向に実行されてはならず、傾斜方向27(図1B)に実行されなければならない。図1Aおよび1Bにおいて、種々の幾何学量に関し、凸については「x」が、凹については「v」が付されている。
【0026】
図1Aの図示から、正の中心間距離sa0がもたらされるように2つの単独の外側の刃先aと内側の刃先iとがどのように結合されることができるのか、を理解することができる。以下の式は、図1Aに示した状況の幾何学的関係をさらに詳しく説明する。
【0027】
【数1】

【数2】

【数3】

【0028】
ここで、αFxは、凸面の歯面を生成するためのカッタの側面の角度であり、αFvは、凹面の歯面を生成するためのカッタの側面の角度である。符号tは、バーカッタ10の先端の高さを表わし、輪郭の基準面からカッタの先端までの距離を測る。輪郭の基準線が、図1Aにおいて一点鎖線4で表わされている。符号hは、カッタの輪郭の高さであり、実施上の配慮により、生成される歯の輪郭よりもわずかに大きい。輪郭の基準線4において、カッタの輪郭は、計算点P1において交差する。輪郭の基準線4は、ベベルギヤの歯システムを設計するための設計パラメータとして機能する。計算点P1において、両方のカッタ2,3は同じフライサークル半径を有する。上記の式において、符号rFLx,vは、傾斜方向における外側および内側カッタのツール半径を指し、rは、カッタヘッドの公称半径を指し、mは、平均の(mean)歯直角モジュールを指している。符号rは、凸面の側面のための刃先のフライサークル半径を表わしており、rは、凹面の側面の刃先のフライサークル半径を表わしている。
【0029】
前記の変更される半径とともに、ラジアル(the radials)φおよび平均の(mean)生成位置(生成ピボット角とも称される。)α(図1Bを参照)も、両方の側面に同じ所望の平均の(mean)らせん角βがもたらされるように調節されなければならない。ラジアル(the radial)φがラジアル(the radial)φとは異なることを、図1Bから理解することができる。また、生成ピボット角αmx,αmvも、互いに異なる。第1の機械設定から第2の機械設定への切り換えにおいて、これらのパラメータが変更される。
【0030】
図1Bに、幾何学的導出のさらなる詳細が示されている。図1Bの符号Mは、カッタヘッド20の中心を指している。符号Kは、回転軸を指している。図1Bに、仮想のクラウンギヤの一部が示されている。以下の式が、図1Bに示した状況の幾何学的関係を、さらに詳しく説明する。
【0031】
【数4】

【数5】

【数6】

ここで、vおよびvは、導出のための幾何学的な補助量であり、βは、計算点P1における平均の(mean)らせん角であり、Rは、ピッチ円錐の平均の(mean)長さである。
【0032】
凸面の歯面の機械加工から凹面の歯面の機械加工への切り換え時、すなわち第1の機械設定から第2の機械設定への切り換えの場合に、クラウンギヤを割出の半分だけ回転させなければならず、ワークピース(加工対象のベベルギヤ)を、前記加工対象のギアの歯の数zに対するクラウンギヤの歯の数zの比に従って回転させなければならない。この回転aβは、以下の式から計算される。
【0033】
【数7】

【0034】
本発明によれば、好ましくは図2A、2Bに係るバーカッタ10が適用される。バーカッタ10は、軸部11を備えている。軸部11の形状は、バーカッタ10をカッタヘッド20の対応するカッタ溝またはチャンバ21に安全かつ正確に取り付けできるように選択される。軸部11の断面は、例えば矩形または多角形であってよい。
【0035】
バーカッタ10の先端領域に、第1のレリーフ面(a first relief face)14(A面またはツールの側面A)と、第2のレリーフ面(a second relief face)13(B面またはツールの側面B)と、(共通の)レーキ面(a rake face)12と、ヘッドツール面15と、第1の刃先18と、第2の刃先17と、ヘッド刃先16とが位置している。
【0036】
レーキ面12は、第1の刃先18の推移にほぼ一致するか、あるいは第1の刃先18の推移に正確に一致する仮想の交線において、第1のレリーフ面14と交差する。レーキ面12は、第2の刃先17の推移にほぼ一致するか、あるいは第2の刃先17の推移に正確に一致する仮想の交線において、第2のレリーフ面13と交差する。
【0037】
すべての実施の形態において、適切なカッタ外形を形成するバーカッタ10の種々の面が、好ましくは棒状の本体を研削することによって生成される。
【0038】
好ましくは、すべての実施の形態において、バーカッタ10のカッタ外形が、内側カッタおよび外側カッタの両方が1つのバーカッタ10へと組み合わせられてなる特別なカッタ先端部形状(面、刃先、および角度の構成)を有する。バーカッタ10の形状は、好ましくは、第1の機械設定の規定において第1の刃先18が例えば連続プロセスで加工対象のベベルギヤの凸面の内側側面を切削すべく歯切り盤の有効な刃先として機能するように選択される。第1の機械設定とは異なる第2の機械設定の規定においては、カッタヘッド20の固定を変える必要なく、あるいは別のカッタヘッドをこの目的のために固定する必要なく、第2の刃先17が例えば連続プロセスで同じ加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面を切削すべく有効な刃先として機能する。
【0039】
好ましくは、すべての実施の形態において、第1の刃先18と第2の刃先17とは、両方の刃先17、18が正の中心間距離を定める(すなわち、図2BにおいてL1>0)ようにバーカッタ10に配置される。図2Aに、そのようなバーカッタ10の一例が示されており、このバーカッタ10では、中心間の距離が正であり、すなわち、長さL1>0を有する先端の刃先16が先端領域(例えば、図2Cを参照)にもたらされている。仮に両方の刃先17、18がそのような正の中心間距離をもたらさないように配置される場合、ツールの側面12は、例えば両方の刃先17、18の交点Pによって定められる実際の先端を有する(例えば、図2Dを参照)。図2Dが特別な場合を表わしていることに注意すべきである。従来からの連続プロセスにおいては、負の中心間距離さえもたらされると考えられ、すなわちこの場合には、先端Pがさらに深く位置すると考えられる。
【0040】
別々の内側および外側カッタ(すなわち、内側カッタおよび外側カッタが互いに対してフォロー角で配置される。)によって機能する本発明の実施の形態においては、内側カッタおよび外側カッタが、共通の平面への内側カッタおよび外側カッタの投影において正の中心間距離がもたらされるような空間的関係に配置される。
【0041】
図2Bに、バーカッタ10の実施の形態のさらなる詳細が、図式化された平面図で示されている。平面図において、バーカッタ10の前側領域の形状の詳細を見て取ることができ、それぞれの刃先が、概略図には表わされていないが、わずかな丸みの半径を有していることに注意すべきである。
【0042】
図2Cにおいて、2つの刃先17、18によって定められ、正の中心間距離を有している共通のレーキ面12が、概略図にて示されている。レーキ面12は、好ましくは台形であり、両方の刃先17、18は、典型的には同じ長さまたは傾斜を有していない。両方の刃先17、18が、レーキ面12の平面の上方(外側)に位置する交点Pを定めている。レーキ面12は、その上部領域において、切削長L1を有するヘッド刃先16によって限られている。実際には、ヘッド刃先16は、直線を呈してはいない。典型的には、側面の刃先17、18が、半径(図2A〜2Cの概略図には示されていない。)を有するヘッド刃先16へと移行している。ヘッド刃先16の湾曲ゆえ、sa0の長さは、L1の長さよりも大きい。
【0043】
図2Dには、正の中心間距離を定めていない2つの刃先17、18によって定められたレーキ面12が、概略図にて示されている。基本的には、これは、交点Pが三角形の3つの角のうちの1つに一致する三角形のレーキ面12を要件とする特別な場合に関する。
【0044】
正の中心間距離を有するバーカッタ形状を選択することによって、外側の刃先17および内側の刃先18を、刃先17、18の一方がそれぞれの他方の側面の切削時に誤差または不正確を引き起こす恐れなく、凸面の内側側面を第1の機械設定を使用して切削でき、加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面を第2の機械設定を使用して内側側面とは別個独立に切削できるように、共通のバーカッタ10に収容することができる。
【0045】
複数(ここでは、N=26)のそのようなバーカッタ10が、図3Aおよび3Bの異なる図に示されているカッタヘッド20に設けられる。ここで、カッタヘッド20が、カッタヘッドの平面25からカッタヘッドの面24へとほぼカッタヘッド20の傾斜の方向に傾けられた26個のカッタ溝またはチャンバ21を備えている。カッタ溝またはチャンバ21は、バーカッタ10のA面およびB面におそらくは一様なレーキタングル(rake tangle)がもたらされるよう、γ(図3B)だけ周方向に関して回転させられている。図3Aにおいて、補助線HLが、傾斜δを示すために引かれている。寸法線29は、カッタヘッドの軸28に平行に延びている。
【0046】
図3Bに、図2Bに係る内蔵バーカッタ10が、位置Iに示されている。残りのカッタ溝またはチャンバ21は、図示の瞬間においては未だ占められていない。この1つのバーカッタ10から、カッタヘッド20が中心の回転軸(カッタヘッドの軸28)を中心にして時計方向に回転する場合に刃先17、18がどのように空間内を移動するのかを、見て取ることができる。時計方向の回転において、例えば第1の機械設定を使用して、刃先18が、円錐機械歯車の内側の側面を次々に切削する。次いで、第2の機械設定が規定および設定された後で、刃先17が、加工対象のベベルギヤの外側の側面を次々に切削する。カッタ溝の傾きγが、図3Bに示されている。
【0047】
機械設定およびバーカッタ10の具体的な形状の選択に応じて、第1の機械設定において刃先18が内側の側面を切削する一方で、刃先17が反対側の側面を(予備的に)切削することが可能である。これは、例えば、カッタヘッド20のバーカッタ10が、歯溝があらかじめ加工されていない素材へと進められる場合に生じる。この場合、バーカッタ10は、実質的にバーカッタ10の全輪郭を使用して機能する。しかしながら、内側の側面と実質的に同時に切削される反対側の仮の側面は、同じ歯溝の最終的な外側側面に一致しない。外側側面は、後に第2の機械設定が規定された後で、刃先17によってのみ切削され、仕上げられる。
【0048】
今や、ベベルギヤの歯システムを切削するための方法を、以下のように定めることができる。この方法は、内側の刃先18と外側の刃先17とからなるペアを複数備えているカッタヘッド20(例えば、図3A、3Bに係るカッタヘッド)が適用される連続プロセスに関する。1つの内側の刃先18および1つの外側の刃先17を、ペアとしてバーカッタ10(例えば、図2A、2Bに係るバーカッタ)に配置することができる。内側の刃先18が、外側の刃先17よりも小さいフライサークル半径に配置される。フライス加工による切屑生成式の加工のための動作が、加工対象のベベルギヤおよびカッタヘッド20の両方が連関して動作するように、歯切り盤によって実行される。
【0049】
本発明によれば、フライス加工による連続的な切屑生成式の加工が、歯切り盤によって実行され、そこでは加工対象のベベルギヤの凸面の内側側面が、内側の刃先18を使用して加工され、フライス加工によるこの第1の連続的な切屑生成式の加工は、第1の機械設定を使用して実行される。次いで、フライス加工による連続的な切屑生成式の加工が、歯切り盤によって実行され、そこでは加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面が、外側の刃先17を使用して加工され、フライス加工によるこの第2の連続的な切屑生成式の加工は、第2の機械設定を使用して実行される。本方法のこれらの工程の順番は、反対であってもよい。その場合、凹面の外側側面が最初に加工され、その後に凸面の内側側面が加工される。
【0050】
ここで再び、フォロー角によって互いに続く内側の刃先および外側の刃先が別々のバーカッタに収容される実施の形態も考えられることに、注意すべきである。
【0051】
フライス加工による第1の連続的な切屑生成式の加工が、歯切り盤によって実行され、そこでは加工対象のベベルギヤの凸面の内側側面が、内側の刃先18の適用によって加工され、フライス加工によるこの第1の連続的な切屑生成式の加工は、第1の機械設定を使用して実行される。次いで、フライス加工による第2の連続的な切屑生成式の加工が、歯切り盤によって実行され、そこでは加工対象のベベルギヤの凹面の外側側面が、外側の刃先17の適用によって加工され、フライス加工によるこの第2の連続的な切屑生成式の加工は、第2の機械設定を使用して実行される。
【0052】
各カッタ溝または各チャンバ21について、好ましくはバーカッタ10の固定ねじのための2つのねじ穴22(図3Aを参照)が、カッタヘッド20の外周面に考えられる。さらに、中央の固定ねじのための中央の穴23および4つのさらなる固定ねじのための4つのさらなる穴26が存在する。カッタヘッド20の回転アクセス(rotation access)は、中央の穴23の中心によって定められる。対応するカッタヘッドの軸28が、図3Aに示されている。
【0053】
好ましくは、すべての実施の形態において、モノブロックのカッタヘッド(全体が1つの部分からなるカッタヘッド)が、カッタヘッド20として適用される。
【0054】
好ましくは、すべての実施の形態において、すべてのカッタ溝またはチャンバ21が同じ形態、位置、および傾斜の傾きを有しているカッタヘッド20が適用される。2つの異なるフライサークル半径は、バーカッタ10の前面領域の形状からもたらされている。それぞれの機械設定ゆえに、それぞれの有効刃先(例えば、内側側面の加工のための刃先18および外側側面の加工のための刃先17)が、加工対象のベベルギヤの原材料を通って配置および案内される。
【0055】
すべての実施の形態において、好ましくは、カッタ溝またはチャンバ21が、正確にはまり合うようにするために、浸食法を使用して製造されている。
【0056】
すべての実施の形態において、好ましくは、カッタヘッド20の各カッタ群について1つのバーカッタ10が適用される。そのようなカッタヘッド20が、図3A、3Bに示されている。しかしながら、各カッタ群について2つのバーカッタを利用することも可能である。
【0057】
すべての実施の形態において、好ましくは、レーキ角がゼロまたはゼロに近いバーカッタ10が適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の刃先(18)と外側の刃先(17)とからなるペアを複数備えたカッタヘッド(20)が適用され、
前記内側の刃先(18)が前記外側の刃先(17)よりも小さいフライサークル半径に配置され、
加工対象のベベルギヤと前記カッタヘッド(20)との両方が連動して動作するように、フライス加工による金属切削加工のための動作が歯切り盤によって実行される、
連続プロセスでベベルギヤの歯システムを切削するための方法であって、
前記歯切り盤を使用して、フライス加工による第1の連続的な金属切削加工を実行するステップであって、前記加工対象のベベルギヤにおける凸面の内側側面が前記内側の刃先(18)によって加工され、フライス加工による第1の連続的な金属切削加工が第1の機械設定を使用して実行されるステップと、
前記歯切り盤を使用して、フライス加工による第2の連続的な金属切削加工を実行するステップであって、前記加工対象のベベルギヤにおける凹面の外側側面が前記外側の刃先(17)によって加工され、フライス加工による第2の連続的な金属切削加工が第2の機械設定を使用して実行されるステップと、を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カッタヘッド(20)に、複数のバーカッタ(10)が備えられ、各バーカッタ(10)が、第1のレリーフ面(14)と、第2のレリーフ面(13)と、該2つのツール側面の間に配置されたレーキ面(12)とを備えたヘッド形状を有しており、内側の刃先(18)が、前記第1のレリーフ面(14)と前記レーキ面(12)との交差によって形成される仮想の交線の領域に配置され、外側の刃先(17)が、前記第2のレリーフ面(13)と前記レーキ面(12)との交差によって形成される仮想の交線の領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カッタヘッド(20)に、複数のバーカッタ(10)が備えられ、内側の刃先(18)と外側の刃先(17)とのペアが、各バーカッタ(10)に形成され、ペアの内側の刃先(18)と外側の刃先(17)とが、前記バーカッタ(10)のレーキ面(12)の面への投影において、前記バーカッタ(10)の前記レーキ面(12)の範囲外で交差することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
内側の刃先(18)と外側の刃先(17)とからなる各ペアは、正の中心間距離を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加工対象のベベルギヤの1回の固定において連続的なフライス加工プロセスの準備ができた状態で、短い中断の間に前記第1の機械設定が前記第2の機械設定に変更されるノンストップのプロセスにより、前記ベベルギヤの歯システムが切削されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の機械設定から前記第2の機械設定への変更の際に、
仮想のクラウンギヤが、歯面割出の半分だけ回転させられ、
前記加工対象のベベルギヤが、対応する歯数の比に従って回転させられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の機械設定から前記第2の機械設定への変更の際に、第1の生成ピボット角(αmx)から第2の生成ピボット角(αmv)への変更と、第1のラジアル(φ)から第2のラジアル(φ)への切り換えとが実行されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記機械設定の変更が、歯の略中央に位置する歯当たりパターンを歯面に生成するために実行されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フライス加工プロセスは、前記クラウンギヤと前記ベベルギヤとの両方が回転される連続的な正面フライス加工プロセスに関することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フライス加工プロセスが、半仕上げフライス加工プロセスに関することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ベベルギヤの歯システムが、スパイラルベベルギヤの歯システムに関することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2012−30354(P2012−30354A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−165794(P2011−165794)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(596043494)クリンゲルンベルク・アクチェンゲゼルシャフト (15)
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg AG