連続的な併用療法
血管新生に関する障害を処置するための新しい方法が開示される。血管新生に関する障害は、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤の投与によって処置される。1つの局面において、本発明は血管新生に関する障害を処置する方法を提供し、この方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年10月17日に出願された米国仮出願第60/852,263号および2006年12月19日に出願された米国仮出願第60/875,736号(これらの内容は、その全体が参考として援用される)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
血管は、内皮細胞の内側層と周細胞または平滑筋細胞の外側層とからなっている。第1の管状構造は内皮細胞によって形成されており、内皮細胞はその後周細胞および平滑筋細胞によって覆われる。中胚葉由来の内皮前駆細胞の分散集団からの血管の新規の形成は、脈管形成と呼ばれる。この原始的なネットワークは、出芽、分裂およびリモデリングを含む連続的な形態形成事象を受けて、大きな脈管から分岐した小さな脈管までの階層的な脈管ネットワークを生じる。これらの連続的な形態形成事象は、集合的に血管新生と呼ばれる。過去の研究では、いくつかの内皮細胞特異的な受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinases:RTKs)およびその同族リガンドが同定されており、それらは血管の脈管形成的および血管新生的発達に介在する。脈管内皮成長因子(vasucular endothelial growth factor:VEGF)ファミリーの構成員およびその受容体は初期の胚血管叢の形成の際に機能するのに対し、アンギオポエチン(angiopoietins:Angs)およびその受容体Tie2、ならびにエフリン(ephrins)およびそのEph受容体はその後のリモデリングプロセスに関係する。血管新生およびリンパ管新生の応答に含まれる受容体の概説としては、たとえば非特許文献1を参照されたい。
【0003】
Tie1およびTie2は、ほとんど内皮細胞および造血前駆細胞においてのみ発現されるRTKである。これら2つの受容体は、胚形成の際の脈管構造の正常な発達のために必要とされる。これら2つのTie受容体は、他のRTKファミリー構成員とは異なり、細胞外EGF相同ドメインを含むため、RTKサブファミリーを形成する。たとえば、非特許文献2および特許文献1などを参照されたい。マウスにおけるTie1遺伝子の標的破壊は、大量出血および微細血管保全性不良を特徴とする致死表現型をもたらす。たとえば非特許文献3などを参照されたい。Tie2ヌルの胚は脈管リモデリングおよび成熟に欠陥を有し、これは周囲内皮支持細胞の不適当な補充によってもたらされる。アンギオポエチン(Ang、例、Ang1、Ang2、Ang3およびAng4)は、Tie2と相互作用するタンパク質である。
【0004】
脈管内皮成長因子(VEGF)は、正常および異常な血管新生の調節においてもかなりの役割を果たす。単一のVEGF対立遺伝子の損失は胚の致死性をもたらし、このことはこの因子が脈管系の発達および分化において主要な役割を果たすことを示唆する(非特許文献4)。VEGFは、腫瘍および眼内障害(intraocular disorders:Id.)に関連する新血管形成の主要な介在物質であることも示された。VEGFのmRNAは、調べられたヒト腫瘍の大多数によって過剰発現されている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8および非特許文献9)。抗VEGF中和抗体は、ヌードマウスにおいてさまざまなヒト腫瘍細胞系の生育を抑制する(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12および非特許文献13)。もっと最近になって、モノクローナル抗体VEGF阻害剤ベバシズマブが、特定のヒト癌の処置に対して認可された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第93/14124号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jonesら、Nat.Rev.Molec.Cell Biol.(2001)2:257
【非特許文献2】Partanen、Mol.Cell Biol.(1992)12:1698
【非特許文献3】Puriら、EMBO J.(1995)14:5884
【非特許文献4】Ferraraら、Endocr.Rev.(1997)18:4−25
【非特許文献5】Berkmanら、1993、J Clin Invest、91:153−159
【非特許文献6】Brownら、Human Pathol.(1995)26:86−91
【非特許文献7】Brownら、Cancer Res.(1993)53:4727−35
【非特許文献8】Matternら、Brit.J.Cancer.(1996)73:931−34
【非特許文献9】Dvorakら、Am J.Pathol.(1995)146:1029−39
【非特許文献10】Kimら、Nature(1993)362:841−44
【非特許文献11】Warrenら、J.Clin.Invest.(1995)95:1789−97
【非特許文献12】Borgstromら、Cancer Res.(1996)56:4032−39
【非特許文献13】Melnykら、Cancer Res.(1996)56:921−24
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、本発明は、望ましい治療効果を得るためにTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬を投与するための投与計画を特徴とする。
【0008】
1つの局面において、本発明は血管新生に関する障害を処置する方法を提供し、この方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に対象に投与するステップを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0011】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0012】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0013】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは前立腺癌または膵癌である。
【0015】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して腫瘍脈管構造の変化を示すときに第2の薬剤が投与される。いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍サイズの変化をモニタリングするステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0017】
他の局面において、本発明は術後補助療法を提供する方法を記載し、この方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を投与する前の期間に投与するステップを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0020】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、手術から約5、10、15、20、24、35、40または48時間以内に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0022】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、腫瘍の再増殖を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0023】
いくつかの実施形態において、腫瘍とは本明細書に記載される腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍とは結腸腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍または膵腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍とは前立腺腫瘍または膵腫瘍である。
【0024】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0025】
他の局面において、本発明は血管新生に関する障害を処置する方法を提供し、この方法は、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を対象に投与する前の期間に対象に投与するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0028】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0029】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0030】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して変化を示すときに第2の薬剤が投与される。いくつかの実施形態において、この方法は腫瘍成長をモニタリングするステップを含み、腫瘍成長が示されるときに第2の薬剤が投与される。
【0031】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0032】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは前立腺癌または膵癌である。
【0033】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0034】
他の局面において、本発明は術後補助療法を提供する方法を記載し、この方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を投与する前の期間に投与するステップを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0037】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、手術から約5、10、15、20、24、35、40または48時間以内に投与される。
【0038】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0039】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、腫瘍の再増殖を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0040】
いくつかの実施形態において、腫瘍とは本明細書に記載される腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍は結腸、肺、乳房、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺または膵臓に存在する。いくつかの実施形態において、腫瘍とは前立腺腫瘍または膵腫瘍である。
【0041】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0042】
他の局面において、本発明は、腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる方法を提供し、この方法は、血管新生に関する障害を有する対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に投与するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0045】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0046】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。
【0047】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して変化を示すときに第2の薬剤が投与される。
【0048】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0049】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0050】
いくつかの局面において、本発明は、VEGF拮抗薬を投与されている癌を有する対象における腫瘍の再増殖の速度を減少させる方法を提供し、この方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与するステップを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0053】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0054】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである。
【0055】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍成長をモニタリングして、成長が示されるときに第2の薬剤を投与するするステップを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、癌とは本明細書に記載される癌である。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0057】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0058】
いくつかの局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤の投与前に対象に投与することによって、対象へのVEGF拮抗薬の投与の頻度を減少させる方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0060】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0061】
他の実施形態において、この方法は対象の腫瘍成長をモニタリングするステップを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、癌とは本明細書に記載される癌である。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0063】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0064】
別の局面において、本発明は、本明細書に開示される方法に従って血管新生に関する障害を処置するための薬の製造に対するTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を含む。
【0065】
他の局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤の代わりに、またはTie1外部ドメイン結合剤とともにTie2外部ドメイン結合剤が用いられる、本明細書に記載される方法を提供する。
【0066】
他の局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤と、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤と、本明細書に記載される方法に従って使用するための指示書とを含むキットを提供する。
【0067】
本明細書に記載される局面において、血管新生に関する障害は、腫瘍性疾患(例、固形腫瘍、腫瘍転移、および良性腫瘍、特に血液供給または血管新生を必要とする腫瘍性疾患);炎症性障害(例、慢性関節リウマチ、狼瘡、再狭窄、乾癬、移植片対宿主反応または多発性硬化症);眼性血管新生疾患、たとえば糖尿病性網膜症、未熟児の網膜症、黄斑変性(例、年齢に関係する黄斑変性の湿潤および/または乾燥形)、角膜移植片拒絶、新生血管緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅など;Osler−Webber症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生(plaque neovascularization);毛細管拡張症;血友病者関節;血管線維腫;および創傷肉芽形成を含むが、これらに限定されない。
【0068】
良性腫瘍は、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫を含むが、これらに限定されない。固形腫瘍は、悪性腫瘍、たとえば肉腫、腺癌、および癌腫など、さまざまな器官系の、たとえば肺、乳房、胃腸(例、結腸)、および尿生殖路(例、腎性、尿路上皮性細胞)、咽頭などを冒すものなど、ならびに悪性腫瘍を含む腺癌、たとえばほとんどの大腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌、肝癌、肺の非小細胞癌、小腸癌、食道癌、および膵癌などを含むが、これらに限定されない。処置可能な固形腫瘍のさらなる例は以下を含む:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌、膵癌、乳癌、尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎臓細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽腫。
【0069】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、血管新生に関する障害とは、炎症性障害、たとえば慢性関節リウマチ、乾癬、リウマチ様もしくはリウマチ性の炎症性疾患など、またはその他の慢性炎症性障害、たとえば慢性喘息、動脈もしくは移植後のアテローム性動脈硬化症、および子宮内膜症などである。処置可能なその他の血管新生に関する障害は、調節解除された血管新生または望ましくない血管新生を有する障害、たとえば眼性新血管形成など、たとえば網膜症(糖尿病性網膜症および年齢に関係する黄斑変性を含む)、血管芽細胞腫、血管腫、および動脈硬化などを含む。
【0070】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、対象は血管新生を低減させる必要があるか、またはそうであることが確認されている。たとえば、対象は腫瘍性障害、たとえば転移性癌などを有する。たとえば、対象は血管新生依存性の癌または腫瘍を有する。その腫瘍は固形腫瘍であってもよく、たとえば直径が少なくとも1、2、3、5、8または10mmの腫瘍などであってもよい。実施形態の1つにおいて、固形腫瘍は低酸素の中心部を有する。この方法は、拮抗薬を投与する前に、対象を評価して対象内の固形腫瘍を検出するステップを含んでもよい。
【0071】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、Tie複合体の形成を増加させる。本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、Tie1のチロシンリン酸化を増加させる。本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、細胞の表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0072】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は抗体であり、その抗体は以下のものからの少なくとも1つの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR、例、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、および/またはLC CDR3)を含む:
【0073】
【化1】
VEGF拮抗薬剤とは、VEGFシグナリング経路を標的とするか、または負に調節する薬剤である。この後者のクラスの例は、VEGF阻害剤(例、VEGF(例、VEGF−A、−B、−C、または−D)を直接阻害する薬剤、たとえばVEGFに結合することによるもの(例、抗VEGF抗体、たとえばベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))もしくはラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、またはその他の阻害剤、たとえばペガプタニブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、およびPI−88など))、VEGF発現のモジュレータ(例、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノクリスタル分散、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、Veglin)、VEGF受容体の阻害剤(例、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)の阻害剤、たとえば抗KDR抗体など、VEGFR2抗体、たとえばCDP−791、IMC−1121Bなど、VEGFR2遮断薬、たとえばCT−322など)、VEGFR発現のモジュレータ(例、VEGFR1発現モジュレータSirna−027)、またはVEGF受容体下流シグナリングの阻害剤を含む。本明細書に記載されるいくつかの局面において、VEGF拮抗薬剤は、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、パゾパニブ、バンデタニブ、バタラニブ、セディラニブ、フェンレチニド、スクアラミン、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、テトラチオモリブデート、パンゼムNCD、2−メトキシエストラジオール、AEE−788、AG−013958、ベバシラニブナトリウム、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、CDP−791、CP−547632、PI−88、SU−14813、SU−6668、XL−647、XL−999、IMC−1121B、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、CT−322、CX−3542、E−7080、ENMD−1198、OSI−930、PTC−299、Sirna−027、TKI−258、Veglin、XL−184、またはZK−304709である。
【0074】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤の投与は、補助療法として用いられる。この補助療法は、対象が腫瘍のすべてまたは部分を除去するための手術を受けた後(例、神経膠芽腫または結腸直腸癌、乳癌もしくは肺癌を処置するための手術後)に対象に投与される術後療法であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明に従った投与は手術から6、12、24、48または100時間以内に開始される。
【0075】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、この方法は付加的な治療様式を含む。たとえば、その付加的な治療様式とは放射線療法または細胞毒性化学療法剤、たとえば代謝拮抗物質(例、5−FU、ロイコボリンを伴う)、イリノテカン(または他のトポイソメラーゼ阻害剤)、ドキソルビシン、またはこれらすべての薬剤のあらゆる組合せなどであり、これらの薬剤すべての投与も含まれる。
【0076】
この方法は、たとえば以下の1つまたはそれ以上の低減について対象をモニタリングするステップをさらに含んでもよい:腫瘍サイズの低減;癌マーカ、たとえば癌特異的抗原のレベルなどの低減;たとえば骨スキャンなどにおける新たな病変の出現の低減;新たな疾患に関係する症状の出現の低減;または軟部組織量のサイズの減少もしくは安定化;または臨床的結果の改善に関係するあらゆるパラメータ。対象は、以下の期間の1つまたはそれ以上においてモニタリングされてもよい:処置の開始前;処置中;または処置の1つもしくはそれ以上の構成要素が投与された後。モニタリングは、同じTie1結合タンパク質および/またはVEGF拮抗薬剤によるさらなる処置の必要性か、または付加的な薬剤による付加的な処置の必要性を検討するために使用できる。一般的に、上述のパラメータの1つまたはそれ以上が減少または安定化することは、対象の状態が改善されたことを示す。このモニタリングに関する情報は、たとえば電子形式またはデジタル形式などで記録されてもよい。
【0077】
対象は哺乳動物、たとえば霊長類などであってもよく、好ましくはより高等な霊長類、たとえばヒトなどであってもよい。
【0078】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項からより明らかになる。本発明の実施形態は、本明細書に記載される特徴のあらゆる組合せを含み得る。「実施形態」という用語は、本明細書の、たとえば別の実施形態などに開示される1つまたはそれ以上の他の特徴を必然的に除外することはない。この出願書全体にわたって引用されるすべての参考文献、特許出願および特許の内容はここに明白に引用により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ヒトTie1のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の10日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図3】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の20日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図4】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にソラフェニブを投与したことを示すグラフである。
【図5】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にソラフェニブを投与したことを示すグラフである。
【図6】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図7】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にさまざまなスケジュールでベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図8】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の10日または20日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図9】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与と同じ日または5日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図10】DX−2240処置マウスからの腫瘍のレクチン染色を示す図である。
【図11】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にさまざまな用量のベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図12】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明者らは驚くべきことに、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を投与するときに、一方の薬剤が第2の薬剤の投与前に十分な期間にわたって投与されていれば、相乗効果がもたらされることを見出した。たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤がVEGF拮抗薬剤の投与の前に投与されるときに相乗効果が起こる。したがって本明細書において提供されるのは、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を異なる時間に対象に投与することによって血管新生に関する障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)方法である。たとえば1つの局面において、対象における血管新生に関する障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)方法は、最初にTie1外部ドメイン結合剤を投与し、続いてVEGF拮抗薬を投与するステップを含む。
【0081】
Tie1外部ドメイン結合剤(例、DX−2240またはDX−2220)の投与によって、Tie1およびTie2を発現している細胞、たとえば内皮細胞などの表面からのTie1/Tie2へテロ二量体のダウンモジュレーションがもたらされる。したがって本発明は、最初にTie1外部ドメイン結合剤を投与し、続いてVEGF拮抗薬剤を投与することによって血管新生に関する障害の少なくとも1つの症状を改善する方法も提供する。
【0082】
「処置する」または「処置」という用語は、薬剤を単独で、または1つもしくはそれ以上の他の薬剤(例、第2の薬剤)と組合せて、対象、たとえば患者など、たとえば障害(例、本明細書に記載されるような障害)、障害の症状、または障害に対する性質もしくは障害になりやすい傾向を有する患者などに適用または投与することによって、その障害、障害の症状または障害になりやすい傾向を、たとえば治療するか、治癒するか、緩和するか、軽減するか、変えるか、修復するか、良くするか、改善するか、またはそれに影響することを示す。細胞を処置するとは、細胞の活性、たとえば内皮細胞が管または脈管を形成する能力などを低減させることを示す。低減とは必ずしも活性の完全な消失を要するわけではなく、たとえば細胞の活性または数の統計学的に有意な低減などの低減であってもよい。
【0083】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を示す。たとえば、抗体は重(heavy:H)鎖可変領域(variable region)(本明細書ではVHと略される)、および軽(light:L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)を含み得る。別の例においては、抗体は2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、完全な抗体と同様に、抗体の抗原結合断片(例、1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)を包含する。
【0084】
VHおよびVL領域は、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる高度可変性の領域と、CDRとともに散在する「フレームワーク領域」(framework regions:FR)と呼ばれるもっと保存された領域とにさらに細分できる。フレームワーク領域とCDRとの程度は正確に定められている(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健福祉省、NIH Publication No.91−3242、およびChothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照)。本明細書ではKabatの定義が用いられる。VHおよびVLの各々は、典型的には3つのCDRおよび4つのFRからなり、それらはアミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0085】
「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインからのドメインを示す。免疫グロブリンドメインは典型的に、約7つのβストランドで形成された2つのβシートと、保存されたジスルフィド結合とを含有する(例、A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay、1988、Ann.Rev Immunol.6:381−405を参照)。以下の文献に記載されるとおり、免疫グロブリン可変の高度可変ループの限界構造は、その配列から推測できる:Chothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776−798);およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−38。
【0086】
本明細書において用いられる「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成できるアミノ酸配列を示す。たとえばこの配列は、自然発生する可変ドメインのアミノ酸配列のすべてまたは部分を含んでもよい。たとえばこの配列は、1つ、2つまたはそれ以上のN末端またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を省いていてもよく、1つまたはそれ以上の挿入または付加的な末端アミノ酸を含んでいてもよく、またはその他の変更を含んでいてもよい。実施形態の1つにおいて、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して標的結合構造(または「抗原結合部位」)、たとえばTie1と相互作用する構造、たとえばTie1に結合するかまたはTie1を阻害する構造などを形成してもよい。
【0087】
抗体のVHまたはVL鎖は、重鎖または軽鎖定常領域のすべてまたは部分をさらに含むことによって、それぞれ重免疫グロブリン鎖または軽免疫グロブリン鎖を形成してもよい。実施形態の1つにおいて、抗体は2つの重免疫グロブリン鎖および2つの軽免疫グロブリン鎖の四量体であり、その重免疫グロブリン鎖および軽免疫グロブリン鎖は、たとえばジスルフィド結合などによって相互に結合されている。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は典型的に、免疫系のさまざまな細胞(例、エフェクタ細胞)および古典的な補体系の第1の構成要素(Clq)を含む宿主組織または因子への抗体の結合に介在する。「抗体」という用語は、タイプIgA、IgG、IgE、IgD、IgM(およびそのサブタイプ)のインタクトな免疫グロブリンを含む。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパまたはラムダタイプであってもよい。実施形態の1つにおいて、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存的細胞毒性および/または補体介在細胞毒性に対して機能し得る。
【0088】
「単一特異的抗体」という用語は、たとえばエピトープなどの特定の標的に対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体を示す。この用語は、たとえば同種の単離細胞の集団などから単一分子種として生成された抗体を示す「モノクローナル抗体」を含む。「モノクローナル抗体組成物」とは、組成物中に単一分子種の抗体を含む、抗体またはその断片の調製物を示す。実施形態の1つにおいて、モノクローナル抗体は哺乳動物細胞によって生成される。1つまたはそれ以上のモノクローナル抗体種が組合されてもよい。
【0089】
抗体の1つまたはそれ以上の領域は、ヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、可変領域の1つまたはそれ以上がヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、CDRの1つまたはそれ以上がヒト、たとえばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3などであってもよい。軽鎖CDRの各々がヒトであってもよい。HC CDR3がヒトであってもよい。フレームワーク領域の1つまたはそれ以上がヒト、たとえばHCまたはLCのFR1、FR2、FR3およびFR4などであってもよい。実施形態の1つにおいては、すべてのフレームワーク領域がヒトであり、たとえばヒト体細胞など、たとえば免疫グロブリンを生成する造血細胞または非造血細胞などに由来する。実施形態の1つにおいて、ヒト配列は生殖細胞系配列であり、たとえば生殖細胞系核酸によってコードされる。定常領域の1つまたはそれ以上が、ヒトまたは事実上ヒトであってもよい。別の実施形態においては、フレームワーク領域(例、集合的にFR1、FR2およびFR3、または集合的にFR1、FR2、FR3およびFR4)の少なくとも70、75、80、85、90、92、95もしくは98%、または抗体全体がヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、FR1、FR2およびFR3は集合的に、軽鎖または重鎖配列をコードする座のヒト生殖細胞系Vセグメントによってコードされるヒト配列と少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98または99%同一であってもよい。
【0090】
抗体のすべてまたは部分が、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされてもよい。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。免疫グロブリン軽鎖の全長(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)と、COOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子とによってコードされる。免疫グロブリン重鎖の全長(約50Kdまたは446アミノ酸)も同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)と、他の前述の定常領域遺伝子の1つ、たとえばガンマ(約330アミノ酸をコードする)などとによってコードされる。軽鎖とは、軽鎖可変ドメインを含むあらゆるポリペプチドを示す。重鎖とは、重鎖可変ドメインであるあらゆるポリペプチドを示す。
【0091】
本明細書において用いられる全長抗体の「抗原結合断片」(または単に「抗体部分」もしくは「断片」)という用語は、目的の標的に特異的に結合する能力を保持した、全長抗体の1つまたはそれ以上の断片を示す。全長抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例は以下を含む:(i)Fab断片、すなわちVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわちヒンジ領域においてジスルフィド架橋によってつながれた2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)dAb断片(Wardら(1989)Nature、341:544−546)、VHドメインからなる;および(vi)機能性を保持した単離相補性決定領域(CDR)。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いてそれらをつなぎ合わせ、合成リンカによって、VLおよびVH領域が対となって単鎖Fv(single chain Fv:scFv)として公知の一価の分子を形成する単一タンパク質鎖として作成されるようにできる。たとえば、Birdら(1988)Science、242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879−5883などを参照されたい。
【0092】
抗体断片は、当業者に公知の従来の方法を含むあらゆる適切な技術を用いて得ることができる。「単一特異的抗体」という用語は、たとえばエピトープなどの特定の標的に対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体を示す。この用語は、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を含み、本明細書において用いられるそれらの用語は、単一分子組成物の抗体またはその断片の調製物を示す。本明細書において用いられる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例、IgMまたはIgG1)を示す。
【0093】
実施形態の1つにおいて、抗体のHCまたはLCは、たとえばフレームワーク領域および/またはCDRなど、ヒト生殖細胞系配列によってコードされるアミノ酸配列と一致する配列を含む。たとえば、抗体はヒトDP47抗体からの配列を含んでもよい。実施形態の1つにおいては、抗体に対する1つまたはそれ以上のコドンが生殖細胞系核酸配列に関して変えられるが、同じアミノ酸配列をコードするように選択される。コドンは、たとえば特定の系における発現を最適化する、制限酵素部位を作成する、サイレントフィンガープリントを作成するなどのために選択されてもよい。
【0094】
「ヒト化された(humanized)」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むことによって、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化された」免疫グロブリンの説明は、たとえば米国第6,407,213号および米国第5,693,762号を含む。
【0095】
「事実上(effectively)ヒトの」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むことによって、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒトの」抗体とは、十分な数のヒトアミノ酸位置を含むことによって、抗体が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた抗体である。
【0096】
本明細書において用いられる「Tie複合体」とは、Tie1およびTie2を含む(アンギオポエチン(Ang)を含んでもよい)ヘテロマー複合体か、またはTie1のホモマー複合体のいずれかを示す。ヘテロマーTie複合体は、部分的にはTie1およびTie2の細胞外ドメインの会合によって形成され、Angも含んでもよい。本明細書において用いられる「複合体構成員」とは、ヘテロマーTie複合体に含まれるタンパク質を示す。したがって、Tie1およびTie2、ならびに任意にはAngもすべて複合体構成員である。「Ang」という用語は、たとえばAng1、Ang2、Ang3、およびAng4などのすべてのアンギオポエチンを含む。ヘテロマーTie複合体は、Tie1、Tie2およびAngに加えて、他のタンパク質を含んでもよい。
【0097】
「血管新生」とは、脈管発達(例、血管またはリンパ管の発達)のすべての段階を含み、それは初期の脈管形成ならびにその後の脈管リモデリングおよび形態の変化を含む。
【0098】
本明細書において用いられる「作用薬(agonist)」および「拮抗薬(antagonist)」とは、特定の活性または効果の状況における特性を説明するものである。たとえば、E3またはE3b抗体は、Tie1の自己会合(例、ホモ二量体化)を促進する状況においては作用薬であり得るが、ヒト臍静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells:HUVECs)によるTie複合体形成および管形成を減少させるかまたは阻害する状況においては拮抗薬であり得る。同様に、Tie1シグナリング経路の状況においては作用薬である薬剤は、内皮細胞の出芽、分裂および管形成の状況においては拮抗薬となり得る。
【0099】
「Tie1外部ドメイン」という用語は、Tie1タンパク質の細胞外領域、たとえば図1(SEQ ID NO:1)のアミノ酸の約25〜759を含む領域などを示す。その他の例示的な領域は、以下を含む領域である:1つまたはそれ以上のEGF様ドメイン(例、図1の214〜256、258〜303、303〜345、214〜303、258〜345、または214〜345);1つまたはそれ以上のIg様C2タイプドメイン(例、43〜105、43〜426、372〜426);1つまたはそれ以上のフィブロネクチンタイプIII反復(例、図1の446〜540、543〜639、643〜744、446〜639、543〜744、または446〜744);および、それらの組合せ。「第1のIg様C2タイプドメイン」および「Ig1」という用語は、Tie1またはTie2中の免疫グロブリン様ドメインのうち、他方のIg様C2タイプドメイン(第2のこうしたドメイン)よりもタンパク質のアミノ末端の近くに位置するドメインを示す。たとえば、Tie1に対する第1の免疫グロブリン様C2タイプドメインは約43残基から約105残基に位置し、第2のIg様C2タイプドメインは約372残基から約426残基に位置する。
【0100】
本明細書において用いられる「結合親和性」とは、見かけの会合定数(apparent association constant)またはKaを示す。Kaは解離定数(Kd)の逆数である。たとえばリガンドは、特定の標的分子に対する少なくとも105、106、107または108M−1の結合親和性を有してもよい。第2の標的の結合に対するKa(または数値Kd)よりも第1の標的の結合に対するKaの方が高い(または数値Kdが小さい)ことによって、第2の標的に比べて第1の標的に対するリガンドの親和性結合が高いことが示され得る。こうした場合には、そのリガンドは第2の標的よりも第1の標的に対する特異性を有する。(例、特異性またはその他の比較に対する)結合親和性の差は、少なくとも1.5、2、5、10、50、100、または1000倍であってもよい。たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤はTie1に対して、たとえばTie2、EGF、フィブロネクチンまたはヒト血清アルブミンなどの別の抗原よりも少なくとも1.5、2、5、10、50、100、または1000倍優先的に結合してもよい。
【0101】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラスモン共鳴、または分光法(例、蛍光アッセイの使用)を含むさまざまな方法によって決定できる。これらの技術を用いて、結合リガンドおよび遊離リガンドの濃度をリガンド(または標的)濃度の関数として測定できる。結合リガンドの濃度([Bound])は遊離リガンドの濃度([Free])および標的上のリガンドに対する結合部位の濃度に関係し、ここで(N)は次の等式による標的分子当りの結合部位の数である:
[Bound]=N・[Free]/((1/Ka)+[Free])
Kaの定量的測定値はルーチンであるが、Kaを正確に定めることが常に必要なわけではなく、時には親和性の定性的測定値を得ることで十分な場合があり、たとえばELISAまたはFACS分析などの方法などを用いて定められた測定値はKaに比例するため、たとえば高い親和性というのが基準よりもたとえば2、5、10、20、または50倍高いかどうかなどを定める比較に用いることができる。結合親和性は典型的に、0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTAおよび0.005%(v/v)の界面活性剤P20において評価される。
【0102】
「単離組成物」とは、単離組成物を得ることができる天然サンプルの少なくとも1つの成分の少なくとも90%から取出された組成物を示す。人工的または自然に生成された組成物は、目的の種または種の集団が重量−重量ベースで少なくとも5、10、25、50、75、80、90、95、98、または99%純粋であれば、「少なくとも」ある程度の純度の「組成物」となり得る。
【0103】
「エピトープ」とは、たとえば抗原結合タンパク質(例、Fabまたは抗体)などのリガンドによって結合される標的化合物上の部位を示す。たとえば標的化合物がタンパク質である場合には、エピトープとはリガンドによって結合されるアミノ酸を示してもよい。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通アミノ酸残基を含む。
【0104】
本明細書において用いられる「実質的に同一」(または「実質的に相同」)という用語は、第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に対して、十分な数の同一または同等(例、類似の側鎖を有する、例、保存されたアミノ酸置換)のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有することによって、第1および第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が類似の活性を有することを示すために本明細書において用いられる。抗体の場合には、第2の抗体は同じ特異性を有し、その親和性の少なくとも50%を有する。
【0105】
本明細書に開示される配列と類似または相同(例、少なくとも約85%の配列同一性)の配列も本出願の部分である。いくつかの実施形態において、配列同一性は約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高くてもよい。代替的には、選択的ハイブリダイゼーション条件(例、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件)の下で核酸セグメントが鎖の補体にハイブリダイズするとき、かなりの同一性が存在する。核酸は、細胞全体、細胞溶解物、または部分的に精製された形もしくは実質的に純粋な形において存在してもよい。
【0106】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書において相互交換可能に用いられる)の算出は、次のように行なわれる。配列は最適な比較の目的のために整列される(例、最適な整列のために、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップが導入されてもよく、非相同配列は比較目的に対して無視されてもよい)。好ましい実施形態において、比較目的のために整列される基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているとき、それらの分子はその位置において同一である(本明細書において用いられるアミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数であり、そこでは2つの配列の最適な整列のために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さが考慮される。
【0107】
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)のアルゴリズムを用いて決定され、このアルゴリズムは、Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、ならびにギャップ重量16、14、12、10、8、6、または4、および長さ重量1、2、3、4、5、または6を用いるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれている。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリクス、ならびにギャップ重量40、50、60、70、または80、および長さ重量1、2、3、4、5、または6を用いるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて定められる。特に好ましいパラメータの組(および、分子が本明細書に記載される配列同一性または相同性の制限内にあるかどうかを定めるためにどのパラメータを適用するべきか従事者が分からないときに用いられるべきパラメータの組)は、Blossum62スコアリングマトリクスであり、そのギャップペナルティは12、ギャップ伸長ペナルティは4、フレームシフトギャップペナルティは5である。
【0108】
本明細書において用いられる「相同」という用語は「類似」と同義であり、目的の配列と基準配列とが1つまたはそれ以上のアミノ酸置換の存在によって異なっていることを意味する(少しのアミノ酸挿入または欠失)も存在してもよい。基準配列に対する相同性または類似性の程度を算出するための現在好ましい手段は、BLASTアルゴリズム(国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center of Biotechnology Information:NCBI)、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド州より入手可能)の使用によるものであり、各々の場合において、アルゴリズムデフォルトまたは算出された配列相関の有意性を定めるために推奨されるパラメータが用いられる。2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、E.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム((1989)CABIOS、4:11−17)を用いて定めることもでき、このアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、それはPAM120重み残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティを用いる。
【0109】
「ポリペプチド」または「ペプチド」(相互交換可能に用いられてもよい)という用語は、ペプチド結合によってつながれた3つまたはそれ以上のアミノ酸のポリマーを示し、その長さはたとえば3から30、12から60、もしくは30から300、または300を超えるアミノ酸などである。ポリペプチドは1つまたはそれ以上の人為的なアミノ酸を含んでもよい。典型的には、ポリペプチドは天然のアミノ酸のみを含む。「タンパク質」は1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖を含み得る。したがって「タンパク質」という用語はポリペプチドを包含する。タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上の修飾、たとえばグリコシル化、アミド化、リン酸化なども含んでもよい。「小さいペプチド」という用語は、長さが3から30アミノ酸、たとえば長さが8から24アミノ酸などのポリペプチドを記載するために用いられてもよい。
【0110】
統計学的な有意性は、当該技術分野において公知のあらゆる方法によって定められてもよい。例示的な統計学的検定は以下を含む:StudentsのT検定、Mann WhitneyのU非パラメータ検定、およびWilcoxonの非パラメータ統計学的検定。いくつかの統計学的に有意な関係は、0.05または0.02未満のP値を有する。特定のリガンドは、たとえば統計学的に有意な特異性または結合などの相違を示してもよい(例、P値<0.05または0.02)。
【0111】
「血管新生依存性の癌および腫瘍」とは、血液を供給する血管の数および密度の増加をその成長(体積および/または質量の拡大)に必要とする癌および腫瘍である。
【0112】
「退行(Regression)」とは腫瘍の質量およびサイズの低減、たとえば少なくとも2、5、10または25%の低減を示す。
【0113】
「腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる」とは、ある条件において脈管がVEGFシグナリング経路を標的とするかまたは負に調節する薬剤(例、VEGF拮抗薬)に露出されたときに、その条件がない状態で脈管構造がその薬剤に露出されるときよりも、脈管が成長および/または機能性の減少を示すような条件を示す。
【0114】
本明細書において用いられる腫瘍脈管構造の「変化」という用語は、腫瘍の内部または周囲の血管の生理機能および/または機能の変化を示す。その変化は以下の1つまたはそれ以上であってもよいが、それらに限定されない:腫瘍脈管成長、血流、血液量、脈管透過性、腫瘍代謝、微小血管密度(microvessel density:MVD)、周細胞被覆度、または腫瘍内圧(すなわち、間質液圧(interstitial fluid pressure)またはIFP)の減少または増加。腫瘍代謝、周細胞被覆度および血流の減少は、脈管機能の減少を示す。脈管透過性およびIFPの増加は、脈管機能の減少を示す。
【0115】
以下は、腫瘍脈管構造の変化を評価するために用いられ得る公知の技術の例である。造影剤によって行なわれるコンピュータ断層撮影(Computed tomography:CT)は、血流、血液量および脈管透過性を測定できる。ドップラー超音波などの超音波も血流および血液量を評価できる。造影剤によって行なわれる磁気共鳴映像法(Magnetic resonance imaging:MRI)は、血液量および脈管透過性を測定できる。加えて、たとえばH2O15、11COおよび18FDGなどのいくつかの放射性トレーサを用いた陽電子放射断層撮影法(positron emission tomography:PET)は、血流、血液量および腫瘍代謝を定めることができる。軟性S状結腸鏡検査などの内視鏡検査技術を用いてIFPを測定できる。さまざまな抗体による腫瘍生検の染色も腫瘍脈管構造の変化を評価できる。たとえばPECAM、CD34またはフォン・ウィルブランド因子などに対する抗体を用いて脈管を視覚化することによって、腫瘍面積のマイクロメートル平方当りの脈管数、すなわちMVDを定めることができる。PECAMおよびα平滑筋アクチンまたはNG2に対する抗体による腫瘍生検の二重染色は、脈管の周細胞被覆度を評価できる。
【0116】
本明細書に記載される方法は、第1の薬剤の投与後に腫瘍脈管構造をモニタリングして、腫瘍脈管構造に変化が起こったことが示されるときに第2の薬剤の投与を開始するステップを含んでもよい。たとえば、いくつかの局面においては、Tie1外部ドメイン結合剤(例、DX−2240またはDX−2220)の投与の開始後に対象における腫瘍脈管構造がモニタリングされてもよい。腫瘍脈管構造の変化が示されるときにVEGF拮抗薬(例、ベバシズマブ)の投与が開始されてもよい。
【0117】
Tie1外部ドメイン結合剤
本発明に従って有用なTie1外部ドメイン結合剤は、Tie1のエピトープ(例、ヒトTie1外部ドメイン)に結合する。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はTie複合体の形成を増加させる。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はTie1のチロシンリン酸化を増加させる。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、細胞の表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0118】
例示的なTie1外部ドメイン結合タンパク質は以前に開示されており(例、米国特許第5,955,291号および米国特許出願公開第2005/0136053号、第2006/0024297号、および第2006/0057138号、特に米国出願公開第2006/0057138号の図7〜39および実施例28〜30を参照)、それらは
【0119】
【化2−1】
【0120】
【化2−2】
を含む。抗体E3およびその変形(例、DX−2220、DX−2240)ならびにM0044−B08は、Tie複合体形成、Tie1チロシンリン酸化、および細胞表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0121】
当該技術分野において公知の技術を用いて、付加的または代替的なTie1外部ドメイン結合タンパク質が単離されてもよく、その技術は、免疫化動物(例、マウス)または表示ライブラリの選択から単離されたB細胞から作成されたハイブリドーマからのモノクローナル抗体生成を含む。Tie1外部ドメイン結合剤を同定するために有用な表示ライブラリは、ペプチド(例、構造化ペプチド、たとえばジスルフィド結合によって拘束されたペプチドなど;例、米国特許出願公開第2006/0084113号を参照)または抗体(例、Fab;例、Hoetら、2005、Nat.Biotech.23(3):344−48を参照)を表示してもよい。Tie1外部ドメイン(またはその部分、たとえばEGFドメイン、フィブロネクチン反復、またはIgスーパーファミリードメイン(例、Ig様C2タイプ2ドメイン)など)を用いて、Tie1外部ドメインに結合する表示ライブラリの構成員を同定してもよい。たとえば、Tie1外部ドメインが組換えによって発現され、支持に付着され、次いで表示ライブラリ(例、抗体を表示するファージライブラリ)と混合されてもよい。Tie1外部ドメイン標的に結合するライブラリの構成員は、次いで単離されてさらに特徴付けされる。こうした技術は当該技術分野において公知であり、米国特許出願公開第2006/0057138号に記載されている。
【0122】
付加的/代替的なTie1外部ドメイン結合剤の活性は、さまざまなアッセイを用いてアッセイされてもよく、そのアッセイは米国特許出願公開第2006/0057138号の実施例2に記載されるTie1/EpoRキメラBaF3細胞アッセイを含む。付加的なアッセイは、管形成アッセイ(例、Jones M Kら、1999、Nature Medicine、5:1418−1423)、Tie1のTie1外部ドメイン結合剤に誘導されるチロシンリン酸化の測定(例、アミノ酸約1117におけるモチーフYVNのチロシンのリン酸化)、およびインビボモデル(例、腫瘍異種移植片または同所性腫瘍移植)を含む。
【0123】
Tie1外部ドメイン結合抗体は、抗体の可変領域を1つまたはそれ以上の生殖細胞系配列により近付けるために変更されてもよい。たとえば、抗体はたとえばフレームワークまたはCDR領域などに1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むことによって、基準生殖細胞系配列により近付けられてもよい。Vkappaに対する例示的な生殖細胞系基準配列は以下を含む:O12/O2、O18/O8、A20、A30、L14、L1、L15、L4/18a、L5/L19、L8、L23、L9、L24、L11、L12、O11/O1、A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、A27、A11、L2/L16、L6、L20、L25、B3、B2、A26/A10、およびA14。たとえば、Tomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−3などを参照。HC可変ドメインに対する生殖細胞系基準配列は、特定の限界構造、たとえばH1およびH2高度可変ループ中の1〜3構造などを有する配列に基づいていてもよい。以下の文献に記載されるとおり、免疫グロブリン可変ドメインの高度可変ループの限界構造は、その配列から推測できる:Chothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776−798);およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−38。1〜3構造を有する例示的な配列は以下を含む:DP−1、DP−8、DP−12、DP−2、DP−25、DP−15、DP−7、DP−4、DP−31、DP−32、DP−33、DP−35、DP−40、7−2、hv3005、hv3005f3、DP−46、DP−47、DP−58、DP−49、DP−50、DP−51、DP−53、およびDP−54。
【0124】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はアプタマーである。本明細書において用いられる核酸「アプタマー」という用語は、少なくとも5ヌクレオチドの内部非二重核酸構造を含むコンフォーメーションを有する核酸分子を示す。アプタマーは、自己相補性の領域を有する1本鎖核酸分子であってもよい。
【0125】
選択されたアプタマーを標準的な核酸増幅手順によって回収できるため、アプタマーはインビトロでスクリーニングできる。この方法は、たとえばその後の一連の選択などにおいて、選択されたアプタマーをプールに分け、プール中の各アプタマーをフルオロフォアなどの検出可能なラベルで修飾することによって向上できる。ラベルの特性を機能的に変えるアプタマーを有するプールを同定できる。こうしたプールを繰り返し分割して再分析することによって、所望の特性を有する個々のアプタマーを同定できる(例、Jhaveriら、Nature Biotechnol.18:1293を参照)。
【0126】
加えて、アプタマーをインビボの活性に対してスクリーニングできる。たとえば、混合された核酸を発現ベクターにクローニングし、そのベクターを細胞に導入してもよい。発現された混合核酸から得られるRNAアプタマーの生物活性をスクリーニングできる。活性を有する細胞を単離して、その選択されたRNAアプタマーに対する発現ベクターを回収できる。
【0127】
治療的オリゴマー(例、アプタマー)の重要な特徴は、投与されたオリゴマーのバックボーンの設計である。いくつかの実施形態において、バックボーンはインビボにおいて安定なヌクレオシド間結合を含有し、たとえばホスホジエステル結合を攻撃するヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対してオリゴマーが耐性であるように構成される。同時に、オリゴマーが標的DNAまたはRNAにハイブリダイズする能力は保持される(Agarwal,K.L.ら(1979)Nucleic Acids Res.6:3009;Agarwal,S.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA、85:7079)。代替のヌクレオシド間結合を用いて変更されたオリゴヌクレオチドを構築できる。これらの例示的な結合のいくつかがUhlmann,E.およびPeyman,A.(1990)Chemical Reviews、90:543−584に記載されている。これらの中には、メチルホスホン酸塩(リンに結合した酸素の1つがメチルに置換されている);ホスホロチオエート(これらの酸素のうち1つを硫黄が置換する)およびさまざまなアミド化(NH2または有機アミン誘導体、たとえばモルホリデートまたはピペラジデート(piperazidates)などが酸素を置換する)がある。これらの置換は安定性を高める。WO91/15500号はさまざまなオリゴヌクレオチド類似体を教示し、その類似体においてはヌクレオチド間結合の1つまたはそれ以上が硫黄に基づく結合に置換えられており、その結合は典型的にはスルファミン酸ジエステルであり、これはホスホジエステルによって等配電子および等電位である。WO89/12060号も同様に、スルフィド、スルホキシドおよびスルホンを含有する結合を開示する。WO86/05518号は、立体規則性ポリマーの3’,5’結合の変形を示唆する。米国特許第5,079,151号は、2’,5’ホスホジエステル結合を介して1本鎖DNAに結合する分岐RNAのmsDNA分子を開示する。米国特許第5,264,562号は、式−−Y’CX’2Y’−−の結合の変形を記載し、ここでY’は独立にOまたはSであり、各X’は安定化置換基であって独立に選択される。モルホリノ型ヌクレオチド間結合は米国特許第5,034,506号に記載されており、いくつかの場合には相補標的配列に対するオリゴマーの親和性を増加させる。米国特許第5,264,562号および第5,596,086号は、標的RNAおよびDNAに対する強力なハイブリダイゼーションが可能な、変更されたヌクレオシド結合を有する変更オリゴヌクレオチドを開示する。
【0128】
VEGF拮抗薬剤
本発明において用いるためのVEGF拮抗薬剤は、VEGF経路拮抗薬である。VEGF経路拮抗薬は、VEGFの阻害剤(例、VEGF−A、−B、または−Cの阻害剤、たとえばベバシズマブなど)、VEGF発現のモジュレータ(例、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノクリスタル分散、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、Veglin)、VEGF受容体の阻害剤(例、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)の阻害剤、たとえば抗KDR抗体など、VEGFR2抗体、たとえばCDP−791、IMC−1121Bなど、VEGFR2遮断薬、たとえばCT−322など)、VEGFR3抗体、たとえばhF4−3C5など、VEGFR発現のモジュレータ(例、VEGFR1発現モジュレータSirna−027)、またはVEGF受容体下流シグナリングの阻害剤を含む。
【0129】
例示的なVEGFの阻害剤は、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、およびPI−88を含む。
【0130】
例示的なVEGF受容体拮抗薬は、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害剤を含む。4−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)フェニルアミノ]ピリミジン−5−カルボニトリル(JNJ−17029259)は、脈管内皮成長因子受容体2(vasucular endothelial growth factor receptor−2:VEGF−R2)の経口的に利用可能な選択的ナノモル阻害剤である5−シアノピリミジンの構造的クラスの1つである。付加的な例は以下を含む:PTK−787/ZK222584(AstraZeneca)、SU5416、SUl1248(Pfizer)、およびZD6474([N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチルピペリジン−4−イル)メトキシ]キナゾリン−4−アミン])、バンデタニブ、セディラニブ、AG−013958、CP−547632、E−7080、XL−184、L−21649、およびZK−304709。他のVEGF拮抗薬剤は、広範な特異性のチロシンキナーゼ阻害剤、たとえばSU6668(例、Bergers,B.ら、2003、J.Clin.Invest.111:1287−95を参照)、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バタラニブ、AEE−788、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、SU−14813、XL−647、XL−999、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、OSI−930、およびTKI−258などである。同様に有用なのは、細胞表面におけるVEGF受容体をダウンレギュレートする薬剤、たとえばフェンレチニドなど、およびVEGF受容体下流シグナリングを阻害する薬剤、たとえばスクアラミンなどである。
【0131】
タンパク質生成
標準的な組換え核酸法を用いて、Tie1外部ドメイン結合タンパク質およびタンパク質のVEGF拮抗薬剤を発現できる。たとえば、SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州(2001)、およびAusubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」(Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、ニューヨーク州(1989)などに記載される技術を参照されたい。一般的に、結合タンパク質をコードする核酸配列は、核酸発現ベクター中にクローニングされる。タンパク質が複数のポリペプチド鎖を含むときには、各々の鎖が発現ベクター、たとえば同じベクターまたは異なるベクターの中にクローニングされて、同じ細胞または異なる細胞において発現されてもよい。抗体を生成するための方法も以下に提供される。
【0132】
いくつかの抗体、たとえばFabなどは、たとえばE.coli細胞などのバクテリア細胞において生成されてもよい。たとえば、表示実体とバクテリオファージタンパク質(またはその断片)との間に抑制可能な終止コドンを含むファージ表示ベクター中の配列によってFabがコードされているとき、ベクター核酸は終止コドンを抑制できないバクテリア細胞に混合され得る。この場合、Fabは遺伝子IIIタンパク質に融合されずに培地に分泌される。
【0133】
抗体は真核細胞においても生成できる。実施形態の1つにおいて、抗体(例、scFvの抗体)は、酵母細胞、たとえばPichia(例、Powersら(2001)J Immunol Methods.251:123−35を参照)、Hanseula、またはSaccharomycesなどにおいて発現される。
【0134】
実施形態の1つにおいて、抗体は哺乳動物細胞において生成される。クローン抗体またはその抗原結合断片を発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary:CHO細胞)(dhfr−CHO細胞を含み、これはUrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216−4220に記載され、DHFR選択可能マーカ、たとえばKaufmanおよびSharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるものなどとともに用いられる)、リンパ性細胞系、たとえばNS0骨髄腫細胞、SP2細胞、COS細胞、HEK 293T細胞など、およびトランスジェニック動物、たとえばトランスジェニック哺乳動物などからの細胞を含む。たとえば、この細胞は乳房上皮細胞である。
【0135】
組換え発現ベクターは、免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、付加的な配列、たとえば宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例、複製の発端)、および選択可能マーカ遺伝子などを有していてもよい。選択可能マーカ遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照)。たとえば典型的には、選択可能マーカ遺伝子はベクターが導入された宿主細胞に、たとえばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカ遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase:DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞においてメトトレキサート選択/増幅とともに用いる)およびneo遺伝子(G418選択に対するもの)を含む。別の例示的な発現系は、Lonza Group Ltd.CHより入手可能なグルタミンシンターゼ(glutamine synthase:GS)ベクター系である(例、Clarkら(2004)BioProcess International、2(4):48−52;Barnesら(2002)Biotech Bioeng.81(6):631−639を参照)。
【0136】
抗体またはその抗原結合部分の組換え発現の例示的な系においては、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウムを介したトランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖および軽鎖の遺伝子の各々がエンハンサ/プロモータ調節因子(例、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの、たとえばCMVエンハンサ/AdMLPプロモータ調節因子またはSV40エンハンサ/AdMLPプロモータ調節因子など)に適切につながれることによって、遺伝子の高レベルの転写を起こす。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も有しており、それによってメトトレキサート選択/増幅を用いてベクターでトランスフェクションされたCHO細胞を選択することが可能になる。選択された形質転換体宿主細胞を培養して抗体重鎖および軽鎖を発現させ、培地からインタクトな抗体を回収する。標準的な分子生物学技術を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクションし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養して培地から抗体を回収する。たとえば、いくつかの抗体はプロテインAまたはプロテインGによるアフィニティクロマトグラフィによって単離できる。
【0137】
コドンの使用頻度は宿主細胞のコドンの偏りに適合されてもよく、たとえばCHO細胞に対してはCricetulus griseus遺伝子のコドンの偏りに適合されてもよい。加えて、可能なときにはGC含有量が非常に高い(>80%)領域または非常に低い(<30%)領域を回避してもよい。最適化プロセスにおいては、以下のシス作用配列モチーフが回避された:内部TATAボックス;chi部位およびリボソームのエントリ部位;ATリッチまたはGCリッチな配列伸長;ARE、INS、CRS配列因子;反復配列およびRNA二次構造;ならびに(潜在的な)スプライスドナーおよびアクセプタ部位、分岐点。効率的な終止を確実にするために2つの停止コドンが用いられてもよい。配列のコドン最適化は、Sharp,P.M.、Li,W.H.、Nucleic Acids Res.15(3)、1987に従って評価されてもよい。標準的なコドン適合指標(codon adaptation index:CAI)が用いられてもよい。稀少コドンは、0〜40の品質クラスを有するコドンを含む。
【0138】
コドン改変(例、コドン最適化)した配列を用いて抗体を生成してもよい。例示的な方法は、抗体をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を提供して、その細胞中で核酸を発現させる、すなわちたとえば細胞をそのタンパク質が発現される条件下に維持するなどのステップを含む。抗体をコードする核酸は、哺乳動物発現ベクター、たとえば細胞に導入されるベクターなどに与えられてもよい。細胞はヒト以外の哺乳動物細胞、たとえばCHO細胞などであってもよい。
【0139】
Fcドメインを含む抗体に対しては、抗体生成系はFc領域がグリコシル化された抗体を合成することが好ましい。たとえば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297においてグリコシル化される。このアスパラギンは二分岐型のオリゴ糖による修飾のための部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体および補体Clqに介されるエフェクタ機能に必要であることが示されている(BurtonおよびWoof(1992)Adv.Immunol.51:1−84;Jefferisら(1998)Immunol.Rev.163:59−76)。好ましい実施形態において、Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系において生成される。Fcドメインは、他の真核生物翻訳後修飾を含んでもよい。
【0140】
トランスジェニック動物によって抗体が生成されてもよい。たとえば、米国第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法を記載する。導入遺伝子は、乳汁特異的プロモータと、目的の抗体をコードする核酸と、分泌のためのシグナル配列とを含むように構築される。こうしたトランスジェニック哺乳動物のメスによって生成される乳汁中に、目的の抗体が分泌される。抗体は乳汁から精製されてもよいし、いくつかの適用に対しては直接使用されてもよい。
【0141】
たとえば天然の、ヒトの、または部分的にヒトの免疫グロブリン座による、たとえば動物を用いた免疫化によって、Tie1外部ドメインに結合する抗体を生成することも可能である。こうした抗体はあらゆるアロタイプであってもよく、たとえばa,zアロタイプ、fアロタイプ、または非Aアロタイプであってもよい。非ヒト抗体を変更してヒト免疫グロブリン配列に対する置換を含ませてもよく、その置換はたとえば特定の位置におけるコンセンサスヒトアミノ酸残基であってもよく、その特定の位置はたとえば以下の位置の1つまたはそれ以上(好ましくは少なくとも5、10、12個、またはすべて)であってもよい:(軽鎖の可変ドメインのFRにおける)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、および/または(重鎖の可変ドメインのFRにおける)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、および/または103H(Kabat番号付けに従う)。たとえば米国第6,407,213号を参照されたい。
【0142】
医薬組成物
Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤は典型的に、本発明の方法において医薬組成物として投与される。薬剤の「医薬組成物」とは、医薬的に許容できる担体とともに調合された薬剤である。医薬組成物は、(例、インビボイメージングのために)ラベルされた結合タンパク質および治療的組成物を包含する。
【0143】
本明細書において用いられる「医薬的に許容できる担体」は、生理的に適合性のあらゆるすべての溶剤、分散媒、コーティング、抗菌性および抗真菌性の薬剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮の投与(例、注射または注入による)に対して好適である。投与の経路によっては、酸の作用および化合物を不活性化し得るその他の自然条件から化合物を保護するために、結合タンパク質が材料に被覆されていてもよい。
【0144】
「医薬的に許容できる塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、かついかなる望ましくない毒物的影響も与えない塩を示す(例、Berge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。こうした塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、無毒性の無機酸、たとえば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに無毒性の有機酸、たとえば脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、たとえばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに無毒性の有機アミン、たとえばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0145】
医薬組成物はさまざまな形であってもよい。その形は、たとえば液体、半固体および固体などの用量形、たとえば液体溶液(例、注射および注入可能な溶液)、分散または懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソームおよび座薬などを含む。好ましい形は、投与および治療的適用の意図されるモードによって異なる。タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤に対する典型的な好ましい調合物は、注射または注入可能な溶液の形、たとえばヒトに抗体を投与するために用いられる組成物と同様の組成物などの形である。こうしたタンパク質の薬剤に対する好ましい投与モードは、典型的に非経口的(例、静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内)である。いくつかの実施形態において、タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、静脈内注入によって、たとえば30、20、10、5、または1mg/min未満の速度で、約1mg/m2から100mg/m2、または7mg/m2から25mg/m2の用量に達するように投与されるか、または注射によって投与される。他の実施形態において、タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0146】
本明細書において用いられる「非経口的投与」および「非経口的に投与される」という言葉は、腸内投与および局所的投与以外の、通常は注射による投与のモードを意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入を限定的でなく含む。
【0147】
Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に対して好適なその他の規則的な構造として調合されてもよい。滅菌された注射可能な溶液は、必要量の薬剤を、必要に応じて上記に列挙された成分の1つまたは組合せとともに適切な溶剤中に組込み、その後ろ過滅菌することによって調製できる。一般的に、分散液は、基本的な分散培地および上記に列挙された成分のうちの必要な他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を組込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過された溶液から活性成分およびあらゆる付加的な所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適当な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用などによって維持できる。たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物に含ませることによって、注射可能な組成物の吸収を延長させることができる。
【0148】
投与の経路および/またはモードは、所望の結果によって変動する。特定の実施形態においては、活性化合物が、化合物の急速な放出を防ぐ担体、たとえば移植片を含む徐放性調合物、およびマイクロカプセルに入れられた送達系などとともに調製されてもよい。生分解性の生体適合性ポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などが用いられてもよい。こうした調合物を調製するための多くの方法が特許されるか、または一般的に公知である。たとえば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照されたい。
【0149】
特定の実施形態において、結合タンパク質は、たとえば不活性の希釈剤または同化できる可食担体などによって経口投与されてもよい。化合物(および所望であれば他の成分)は、硬いかまたは軟らかいシェルゼラチンカプセルに封入されても、圧縮して錠剤にされても、対象の飲食物に直接組み込まれてもよい。経口の治療的投与に対しては、化合物が賦形剤とともに組み込まれて、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形で用いられてもよい。本明細書に記載される化合物を非経口投与以外の手段で投与するためには、化合物の不活性化を防ぐ材料で化合物を被覆するか、または化合物をその材料とともに投与する必要があり得る。
【0150】
医薬組成物は、当該技術分野において公知の医療デバイスによって投与されてもよい。たとえば、好ましい実施形態においては、たとえば米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号などに開示されるデバイスなどの、針のない皮下注射デバイスによって医薬が投与されてもよい。移植片およびモジュールの例は、以下を含む:制御された速度で投薬を施すための埋め込み可能なマイクロ注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて薬を投与するための治療的デバイスを開示する米国特許第4,486、194号;薬を正確な注入速度で送達するための薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬物送達のための可変流埋め込み可能注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;複数チャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号;および、浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号。もちろん、多くのその他のこうした移植片、送達系およびモジュールも公知である。
【0151】
特定の実施形態において、本明細書に記載される結合タンパク質は、インビボでの適切な分布を確実にするように調合されてもよい。たとえば、血液脳関門(blood−brain barrier:BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。治療的タンパク質が(所望のときに)BBBを横断することを確実にするために、そのタンパク質をたとえばリポソームなどに調合してもよい。リポソームを製造する方法については、たとえば米国特許第4,522,811号、第5,374,548号、および第5,399,331号などを参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送される1つまたはそれ以上の部分を含むことによって、標的とする薬物送達を増強してもよい(例、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。
【0152】
最適な所望の応答(例、治療的応答)を与えるために投与計画が調整される。たとえば、単一のボーラスが投与されてもよいし、ある期間にわたっていくつかの分割された用量が投与されてもよいし、治療状況の緊急性によって示されるとおりに用量が比例的に減少または増加されてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために、非経口組成物を用量単位の形に調合することが特に有利である。本明細書において用いられる用量単位の形とは、処置される対象に対する単位用量として適した物理的に別個の単位を示す;各単位は、必要な医薬担体に関連して望ましい治療効果を生じるように算出された、予め定められた量の活性化合物を含有する。用量単位の形に対する仕様は、以下によって規定され、かつそれらに直接的に依存してもよい:(a)活性化合物の一意の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感度の処置に対するこうした活性化合物の調合の技術分野において固有の制限。
【0153】
医薬組成物は、本明細書に記載される標的結合タンパク質の治療的有効量または予防的有効量を用いて調製されてもよい。組成物の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別および重量、ならびに結合タンパク質が個体において所望の応答を誘発する能力などの要素に従って変動し得る。加えて、治療的有効量においては、組成物のあらゆる毒性の効果または有害な効果を治療的に有益な効果が上回る。治療的有効量は、たとえば炎症または腫瘍の成長速度などの測定可能なパラメータを、処置されていない対象に比べて好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%阻害する。化合物がたとえば癌などの測定可能なパラメータを阻害する能力は、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系において評価できる。代替的には、組成物のこの特性は、当業者に公知のアッセイによって、インビトロ阻害など、化合物が阻害する能力を調べることによって評価できる。
【0154】
本発明の範囲内には、(a)Tie1外部ドメイン結合剤と、(b)VEGF拮抗薬剤と、(c)本明細書に開示される方法に従って使用するための指示書とを含むキットも存在する。治療的適用に対する指示書は、(a)癌または腫瘍性障害、(b)炎症性障害(例、慢性関節リウマチ)または眼性障害を有する患者において提案される用量および/または投与のモードを含む。このキットはさらに、1つまたはそれ以上の別個の医薬調製物における適切に調合された少なくとも1つの付加的な試薬、たとえば付加的な治療的薬剤など(例、細胞毒性化学療法剤)を含有してもよい。
【0155】
安定化および保持
いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、循環、たとえば血液、血清、リンパまたはその他の組織などにおける薬剤の安定化および/または保持を改善するような部分と物理的に結合される。
【0156】
たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、ポリマー、たとえば実質的に非抗原性のポリマー、たとえばポリアルキレン酸化物またはポリエチレン酸化物などに結合されてもよい。好適なポリマーは、重量によってかなり変動する。例示的なポリマーは、分子数平均重量が約200から約35,000、約1,000から約15,000、および2,000から約12,500の範囲のポリマーを含むが、その範囲はもっと高くてもよく(例、最大約500,000D)、いくつかの実施形態においては少なくとも約20,000D、または少なくとも約30,000D、または少なくとも約40,000Dである。選択される分子量は、得られるべき結合体の有効サイズ、ポリマーの性質(例、構造、たとえば直鎖または分岐鎖など)、および誘導体化の程度に依存し得る。
【0157】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の修飾のために有用なポリマーは、水溶性ポリマー、たとえば親水性ポリビニルポリマー、たとえばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどを含む。こうしたポリマーの限定的でないリストには、ポリアルキレン酸化物ホモポリマー、たとえばポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)またはポリプロピレングリコールなど、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー、およびそれらのブロックコポリマーが含まれ、ここでブロックコポリマーの水溶性は維持されるものとする。付加的な有用なポリマーには以下が含まれる:ポリオキシアルキレン、たとえばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー(Pluronics)など;ポリメタクリレート;カルボマー;糖モノマーのD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例、ポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびノイラミン酸を含む分岐または非分岐多糖類、そこにはホモ多糖類およびヘテロ多糖類、たとえばラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性ムコ多糖類の多糖サブユニット、たとえばヒアルロン酸などが含まれる;糖アルコールのポリマー、たとえばポリソルビトールおよびポリマンニトールなど;ヘパリンまたはヘパラン。
【0158】
たとえば細胞毒素、ラベル、または別のターゲティング剤、たとえば別の標的結合剤または無関係の薬剤など、他の化合物が同じポリマーに付着されてもよい。モノ活性化アルコキシ終端ポリアルキレン酸化物(polyalkylene oxides:PAO’s)、たとえばモノメトキシ終端ポリエチレングリコール(monomethoxy−terminated polyethylene glycols:mPEG’s);C1−4アルキル終端ポリマー;およびビス活性化ポリエチレン酸化物(グリコール)などを架橋に用いることができる。たとえば米国第5,951,974号などを参照されたい。
【0159】
ポリ(エチレングリコール)すなわちPEGの最も一般的な形は、ヒドロキシル基で終端された直鎖または分岐鎖ポリエーテルであり、次の一般的な構造を有する:
HO−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
PEGは、エチレン酸化物のアニオン開環重合によって合成でき、これは水酸化イオンのエポキシド環への求核性攻撃によって開始される。ポリペプチド修飾に対して特に有用なのは、モノメトキシPEGすなわちmPEGであり、これは次の一般的な構造を有する:
CH3O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
さらなる解説としては、たとえばRobertsら(2002)Advanced Drug Delivery Reviews、54:459−476などを参照されたい。
【0160】
共有結合架橋を用いて標的結合剤(例、タンパク質)をポリマーに付着させてもよく、たとえばN末端アミノ基およびリジン残基にみられるイプシロンアミノ基、ならびにその他のアミノ基、イミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、水酸基またはその他の親水基への架橋などが用いられてもよい。ポリマーは、多機能(通常は二機能)架橋剤を用いることなく標的結合タンパク質に直接共有結合されてもよい。アミノ基への共有結合は、以下に基づく公知の化学作用によって達成される:シアヌル酸塩化物、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応性基(PEGアルコキシドにブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタールを加えたもの;PEGにDMSOおよび無水酢酸を加えたもの、または塩化PEGに4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシドを加えたもの、活性化スクシンイミジルエステル、活性化ジチオカルボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメート、またはP−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)。カルボキシル基は、カルボジイミドを用いてPEG−アミンを結合することによって誘導体化できる。スルフヒドリル基は、マレイミド置換PEG(例、アルコキシ−PEGアミンにスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレートを加えたもの)(WO97/10847号)またはShearwater Polymers,Inc.、ハンツヴィル、アラバマ州より商業的に入手可能なPEG−マレイミド)に結合することによって誘導体化できる。代替的には、たとえばPedleyら、Br.J.Cancer、70:1126−1130(1994)などに記載されるとおり、結合タンパク質上の遊離アミノ基(例、リジン残基上のイプシロンアミノ基)を2−イミノ−チオラン(トラウト試薬(Traut’s reagent))によってチオール化し、次いでPEGのマレイミド含有誘導体に結合させてもよい。
【0161】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤に付着され得る機能化されたPEGポリマーは、たとえばShearwater Polymers,Inc.(ハンツヴィル、アラバマ州)などから入手可能である。こうした商業的に入手可能なPEG誘導体は、たとえばアミノ−PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG−ヒドラジド、PEG−チオール、PEG−コハク酸塩、カルボキシメチル化PEG、PEG−プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシンイミジルコハク酸塩、PEGスクシンイミジルプロピオン酸塩、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジル炭酸塩、アミノ酸PEGのスクシンイミジルエステル、PEG−オキシカルボニルイミダゾール、PEG−ニトロフェニル炭酸塩、PEGトレシレート、PEG−グリシジルエーテル、PEG−アルデヒド、PEGビニルスルホン、PEG−マレイミド、PEG−オルトピリジル−ジスルフィド、ヘテロ官能基PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、およびPEGホスホリドなどを含む。これらのPEG誘導体を結合するための反応条件は、含まれるTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤、所望のPEG付加(PEGylation)の程度、および利用されるPEG誘導体によって変わり得る。PEG誘導体の選択に含まれるいくつかの因子は、以下を含む:所望の付着箇所(たとえばリジンまたはシステインR基など)、誘導体の加水分解安定性および反応性、結合の安定性、毒性および抗原性、分析に対する好適性など。あらゆる特定の誘導体の使用に対する特定の指示書は製造者から入手可能である。
【0162】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤とポリマーとの結合体は、たとえばゲルろ過またはイオン交換クロマトグラフィ、たとえばHPLCなどによって、未反応の出発材料から分離できる。結合体の非相同種は、同じやり方で個々に精製される。たとえば未反応のアミノ酸のイオン特性の違いなどによって、異なる種(例、1つまたは2つのPEG残基を含有する)の決定も可能である。たとえばWO96/34015号を参照されたい。
【0163】
標的結合タンパク質は、安定化または保持機能を与えるタンパク質、たとえばアルブミン、たとえばヒト血清アルブミンなどに物理的に結合されてもよい。米国特許出願公開第2004/0171794号は、タンパク質を血清アルブミンに物理的に結合するための例示的な方法を記載する。例示的に、ヒトアルブミン配列またはその断片については、EP201 239号、EP322 094号、WO97/24445号、WO95/23857号を、特に米国特許出願公開第2004/0171794号のSEQ ID NO:18およびWO01/79480号に示されるようなヒトアルブミンの成熟形、または他の脊椎動物からのアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の類似物もしくは変形物、もしくはその断片を参照されたい。他の例示的なヒト血清アルブミンタンパク質は、以下の点突然変異の組の一方または両方を含んでもよい:Leu−407からAla、Leu−408からVal、Val−409からAla、およびArg−410からAla;またはArg−410からAla、Lys−413からGln、およびLys−414からGln(たとえば、米国特許出願公開第2004/0171794号のSEQ ID NO:18を参照しながら国際公開番号WO95/23857号を参照されたい)。
【0164】
使用の方法
本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤の投与を異なる時間に開始することによって、血管新生に関する障害の少なくとも1つの症状を改善するための方法を提供する。いくつかの局面においては、Tie1外部ドメイン結合剤が投与され、次いでVEGF拮抗薬が投与される。Tie1外部ドメイン結合剤は、VEGF拮抗薬剤の第1の投与前のある期間にわたって投与され、この期間はVEGF拮抗薬剤の第1の投与前の1日から最大35日(例、5、7、10、14、20、21、28または30日)間に及んでもよく、または腫瘍脈管構造の変化もしくは腫瘍成長が示されるときに投与されてもよい。この期間は、たとえば所与の処置サイクルに対するTie1外部ドメイン結合剤の第1の投与などに基づいて算出されてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態においては、対象は血管新生を低減させる必要があるか、またはそうであることが確認されている。たとえば、対象は腫瘍性障害、たとえば転移性癌などを有する。たとえば、対象は血管新生依存性の癌または腫瘍を有する。腫瘍は固形腫瘍であってもよく、たとえば直径が少なくとも1、2、3、5、8または10mmの腫瘍などであってもよい。実施形態の1つにおいて、固形腫瘍は低酸素の中心部を有する。この方法は、拮抗薬を投与する前に、対象を評価して対象内の固形腫瘍を検出するステップを含んでもよい。
【0166】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤の投与は、VEGF拮抗薬剤の第1の投与後、継続されるが、他の実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤の投与は、VEGF拮抗薬剤投与の開始の際に中止される。
【0167】
いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置する(例、障害の症状を改善する)のに有効な量で投与される。他の実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置または予防するのに有効な量よりも少ない量で投与される。他の実施形態においては、VEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置または予防するのに有効な量よりも少ない量で投与される(例、VEGF拮抗薬剤がベバシズマブであって、障害が非扁平上皮の非小細胞肺癌であるとき、AVASTINの用量は15mg/kg未満である)。いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤は、相乗的に有効な量で投与される(例、単独で投与されたいずれかの化合物と比べたときに相乗効果をもたらす量)。
【0168】
Tie1外部ドメイン結合剤(例、本明細書に開示されるTie1外部ドメイン結合タンパク質)は、VEGF経路を標的とする薬剤(例、VEGF−A−結合抗体、たとえばベバシズマブなど)の活性を増強できる。したがって、癌の処置のための併用療法の1つにおいては、第2の療法はVEGF経路シグナリングを阻害する薬剤、たとえばVEGF−A−結合抗体(例、ベバシズマブ)などであり、この薬剤は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質の不在下で投与されるときのVEGF経路阻害剤の用量よりも少ない用量で投与される。たとえば、Tie1外部ドメイン結合タンパク質がVEGF拮抗薬(例、抗VEGF−A抗体)とともに併用療法に用いられるとき、VEGF拮抗薬の用量は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質と組合されずに投与されるときのVEGF拮抗薬の用量よりも少なくされてもよい(例、Tie1外部ドメイン結合タンパク質と組合されずに投与されるときのVEGF拮抗薬剤の用量よりも少なくとも10%、25%、40%、または50%少ない)。たとえば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))の用量は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質との併用療法において(ただし他の化学療法剤はなしで)投与されるときには、約15、13.5、11.25、9、または7.5mg/kg未満である。化学療法剤(例、ボーラス−IFL(イリノテカン(irinotecan)125mg/m2IV、5−フルオロウラシル500mg/m2IV、およびロイコボリン20mg/m2IV、6週間ごとに週1回4週間与えられる)、FOLFOX4(Day1(1日目):オキサリプラチン85mg/m2およびロイコボリン200mg/m2同時IV、次いで5−FU400mg/m2IVボーラスの後600mg/m2連続IV;Day2:ロイコボリン200mg/m2IV、次いで5−FU400mg/m2IVボーラスの後600mg/m2連続IV;2週間ごとに繰り返される)、または5−FU)と組合せて投与されるとき、ベバシズマブの用量は5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかに低減される。したがって、併用時のベバシズマブの用量は、本明細書に開示されるようなTie1外部ドメイン結合タンパク質と組合せて与えられるときには、約10、9、7.5、6または5mg/kg未満(Tie1外部ドメイン結合タンパク質不在下のベバシズマブの用量が10mg/kgであるとき)、または、約5、4.5、3.75、3または2.5mg/kg未満(Tie1外部ドメイン結合タンパク質不在下のベバシズマブの用量が5mg/kgであるとき)に低減されてもよい。
【0169】
血管新生に関する障害は、腫瘍性疾患(例、固形腫瘍、腫瘍転移、および良性腫瘍、特に血液供給または血管新生を必要とする腫瘍性疾患);炎症性障害(例、慢性関節リウマチ、狼瘡、再狭窄、乾癬、移植片対宿主反応または多発性硬化症);眼性血管新生疾患、たとえば網膜障害(例、増殖性網膜症、たとえば糖尿病性網膜症、虚血性網膜症、または未熟児の網膜症など);脈絡膜新血管新生;水晶体新血管新生;角膜新血管新生;虹彩新血管新生;または結膜新血管新生、黄斑変性(例、年齢に関係する黄斑変性の湿潤および/または乾燥形)、角膜移植片拒絶、新生血管緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅など;Osler−Webber症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生;毛細管拡張症;血友病者関節;血管線維腫;および創傷肉芽形成を含むが、これらに限定されない。
【0170】
良性腫瘍は、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫を含むが、これらに限定されない。固形腫瘍は、悪性腫瘍、たとえば肉腫、腺癌、および癌腫など、さまざまな器官系の、たとえば肺、乳房、胃腸(例、結腸)、および尿生殖路(例、腎性、尿路上皮性細胞)、咽頭などを冒すものなど、ならびに悪性腫瘍を含む腺癌、たとえばほとんどの大腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌、肝癌、肺の非小細胞癌、小腸癌、食道癌、および膵癌などを含むが、これらに限定されない。処置可能な固形腫瘍のさらなる例は以下を含む:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌、膵癌、乳癌、尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎臓細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽腫。
【0171】
血管新生に関する障害が腫瘍性障害であるとき、この障害の症状の改善とは、臨床的測定値(例、MRI、CT、診断的放射測定(例、骨スキャン)など)によって定められる腫瘍性障害の量(例、腫瘍サイズ)の消失、低減、安定化、または成長速度もしくは腫瘍の数(例、転移)の低減のことである。影響され得るその他のパラメータは、日常生活の活動性、たとえば痛みなど(例、視覚または数の尺度を用いて患者が報告する痛み)を含む。
【0172】
いくつかの実施形態においては、血管新生に関する障害とは、炎症性障害、たとえば慢性関節リウマチ、乾癬、リウマチ様もしくはリウマチ性の炎症性疾患など、またはその他の慢性炎症性障害、たとえば慢性喘息、動脈もしくは移植後のアテローム性動脈硬化症、および子宮内膜症などである。処置可能なその他の血管新生に関する障害は、調節解除された血管新生または望ましくない血管新生を有する障害、たとえば眼性新血管形成など、たとえば網膜症(糖尿病性網膜症および年齢に関係する黄斑変性を含む)、血管芽細胞腫、血管腫、および動脈硬化などを含む。
【0173】
乾癬は慢性の皮膚疾患であり、スケーリングおよび炎症によって特徴付けられる。乾癬が発症するとき、典型的には皮膚の部分が厚くなり、赤くなり、プラークと呼ばれる銀白色の鱗屑に覆われるようになる。乾癬はひじ、ひざ、頭皮、背中の下部、顔、手のひら、および足の裏に最もよく起こる。この疾患は、指の爪、足の爪、ならびに口および性器の内側の軟部組織も冒し得る。乾癬の人の約10%は、関節炎の症状を生じる関節の炎症を有する。静的医師包括評価(static Physician Global Assessment:sPGA)を用いて患者を評価でき、きれいなもの(clear)から非常に深刻なものまでの6つのカテゴリにわたるカテゴリスコアを受取る。このスコアはプラーク、スケーリングおよび紅斑に基づいている。本明細書の治療方法を用いて、これらの特徴の少なくとも1つの改善を達成できる。
【0174】
慢性関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:“RA”)は、主に関節の痛み、腫れ、凝り、および機能の損失をもたらす慢性の炎症性疾患である。RAは、しばしば滑膜、すなわち保護嚢を生成している関節を囲む膜において始まる。RAに罹患している多くの個体においては、白血球が循環から滑膜に侵入して、継続的な異常炎症(例、滑膜炎)を起こす。その結果、滑膜に炎症が起こり、暖気、赤み、腫れおよび痛みがもたらされる。軟骨中のコラーゲンが徐々に破壊され、関節空間を狭くするために最終的に骨が損傷する。この炎症は患部領域におけるびらん性の骨損傷をもたらす。このプロセスの間に、滑膜の細胞は異常に生育および分裂し、通常は薄い滑膜を厚くするために、結果として関節が腫れ、腫脹性の触感となる。RAはさまざまな臨床的測定値によって評価できる。いくつかの例示的な特徴は、総シャープスコア(total Sharp score:TSS)、シャープびらんスコア、およびHAQ障害指数を含む。本明細書の治療方法を用いて、これらの特徴の少なくとも1つの改善を達成できる。
【0175】
本明細書において用いられる、障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)のに有効なTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の量、または「治療的有効量」とは、対象への単一または複数用量投与の際に、本明細書に記載されるような障害を有する対象の治癒の延長、緩和、軽減、または改善が、こうした処置の不在下に予測されるものよりも有効となるようなTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の量を示す。いくつかの場合において、治療的有効量は、結合剤がヌードマウスモデル中の異種移植片の腫瘍サイズを未処置の対照マウスよりも低減させる能力を評価することによって確認できる。本明細書において用いられる、腫瘍またはその他の新生物の「成長を阻害する」とは、その成長および転移を遅らせるか、中断させるか、抑制するか、止めることを示しており、必ずしも新生物の成長の完全な排除を示すものではない。
【0176】
本明細書に記載される抗体の治療的有効量に対する例示的で非限定的な範囲は0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。標的結合抗体は、30、20、10、5、または1mg/min未満の速度で静脈内注入によって投与されて、約1mg/m2から100mg/m2または約5mg/m2から30mg/m2の用量に達してもよい。分子量が抗体よりも小さいTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤に対しては、適切な量が比例的に小さくなり得る。なお、用量値は緩和されるべき状態のタイプおよび深刻度によって変動してもよい。さらに、あらゆる特定の対象に対する特定の用量計画は、個体の要求、および組成物を投与するかまたはその投与を管理する人物による専門家の判断に従って、時間とともに調整されるべきであり、本明細書に示される用量範囲は単なる例示であって、特許請求される組成物の範囲または実施を制限することは意図されていないことが理解されるべきである。
【0177】
処置され得る対象はヒトおよびヒト以外の動物を含む。たとえば、ヒトとは異常な細胞増殖または細胞分化によって特徴付けられる障害を有するヒトの患者であってもよい。「ヒト以外の動物」という用語は、すべての脊椎動物、たとえば非哺乳動物(たとえばニワトリ、両生類、爬虫類など)および哺乳動物、たとえばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ブタなどを含む。
【0178】
Tie1外部ドメイン結合剤、VEGF拮抗薬剤およびその他の薬剤(例、細胞毒性の化学療法剤)を投与する方法は、「医薬組成物」にも記載されている。用いられる分子の好適な用量は、対象の年齢および重量ならびに使用される特定の薬物に依存する。
【0179】
併用療法
本明細書に開示される処置方法は、以下を含むがそれに限定されない1つまたはそれ以上の付加的な処置様式と組合せて用いられてもよい:手術;放射線療法、および化学療法。
【0180】
本明細書に開示される方法を参照して、「組合せ(併用)(combination)」という用語は、同じ患者を処置するために1つまたはそれ以上の付加的な薬剤または療法を用いることを示し、ここではその薬剤または療法の使用または作用の時間が重複している。付加的な薬剤または療法は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質および/またはVEGF拮抗薬剤が投与されるのと同時に投与されてもよいし、あらゆる順番で逐次投与されてもよい。逐次投与とは異なる時間に与えられる投与のことである。1つの薬剤と別の薬剤との投与の間の時間は、数分、数時間、数日、または数週間であってもよい。
【0181】
付加的な薬剤または療法は、別の抗癌剤または抗癌療法であってもよい。抗癌剤の非限定的な例は、たとえば抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、分裂抑制剤、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害できる薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸の(naked)抗体、抗毒素および放射結合体(radioconjugates)を含む)などを含む。特定のクラスの抗癌剤の例は以下に詳細に与えられる:抗チューブリン/抗微小管、例、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害剤、例、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン(merbarone)、塩酸ピロキサントロン;代謝拮抗物質、例、5−フルオロウラシル(5−fluorouracil:5−FU)、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara−C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパレート(N−Phosphoracetyl−L−Asparate)=PALA、ペントスタチン、5−アザシチジン、5−アザ2’−デオキシシチジン、ara−A、クラドリビン、5−フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタード、ピポブロマン、4−イポメアノール;他の作用機構を介して作用する薬剤、例、ジヒドロレンペロン、スピロムスチン、およびデシペプチド(desipeptide);生物学的応答変更子、例、抗腫瘍応答を高めるためのもの、たとえばインターフェロンなど;アポトーシス剤、たとえばアクチノマイシンDなど;および抗ホルモン、たとえば抗エストロゲン、たとえばタモキシフェンなど、またはたとえば抗アンドロゲン、たとえば4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオナニリドなど。
【0182】
併用療法は、他の療法の副作用を低減させる薬剤の投与を含んでもよい。その薬剤は、抗癌処置の副作用を低減させる薬剤であってもよい。たとえば、その薬剤はロイコボリン(例、5−フルオロウラシルと組合せる)であってもよい。併用療法は、他の療法の投与の頻度を低減させる薬剤の投与を含んでもよい。その薬剤は、他の療法の抗癌効果が減少した後の腫瘍の成長を減少させる薬剤であってもよい。
【0183】
以下の実施例は限定的なものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0184】
実施例1:例示的なTie1外部ドメイン結合抗体配列
以下は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変ドメインの例示的な配列である:
806C−M0044−B08
【0185】
【化3】
【0186】
【化4】
DX−2220は、全長IgG1生殖細胞系ヒト抗Tie1抗体E3bである。DX−2220の配列は次のとおりである:
【0187】
【化5】
【0188】
【化6】
【0189】
【化7】
実施例2:DX−2240の配列:生殖細胞系FアロタイプE3抗体
DX−2240(軽、重−可変、定常)。
【0190】
【化8】
【0191】
【化9】
軽鎖は任意に以下のシグナル配列をさらに含んでもよい:
【0192】
【化10】
(SEQ ID NO:14)。重鎖は任意に以下のシグナル配列をさらに含んでもよい:
【0193】
【化11】
(SEQ ID NO:15)。
【0194】
実施例3:膵癌異種移植片モデルにおけるTie1外部ドメイン結合タンパク質およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
DX−2240およびベバシズマブ(抗VEGF抗体)またはソラフェニブ(マルチキナーゼ阻害剤)の組合せの抗腫瘍活性を、ヒト腫瘍異種移植片モデルにおいてテストした。皮下BxPC−3腫瘍を有する宿主ヌードマウス(nu/nu)から採取されたBxPC3(ヒト膵癌細胞系)腫瘍断片を、メスのヌードマウス(実験動物)の皮下に移植して腫瘍を形成させた。マウスは腫瘍サイズによってペアマッチングされ、腫瘍が約100mm3に達したとき(腫瘍移植の約18日後)にさまざまな処置グループにランダムに入れられた。これらの動物は表1に示される処置グループに分類された(「開始」は処置を開始した日を示す)。示された投与開始日および投与計画において、DX−2240は20mg/kgでの腹膜内(intraperitoneal:IP)注射によって投与され;ベバシズマブは10mg/kgでのIP注射によって投与され、ソラフェニブは60mg/kg(合計9用量に対して)で経口投与され、対照IgG(パリビズマブ、DX−2240と同じアイソタイプの抗体)は20mg/kgでのIP注射によって投与された。付加的な正の対照グループ(グループ13)が含まれており、これらの動物には合計4用量にわたる40mg/kg Q3dでのゲムシタビンが投与された。
【0195】
【表1】
腫瘍サイズは、カリパスを用いて3日から4日ごとに評価された。結果は図2〜4のグラフにまとめられている。腫瘍体積データ(mm3)を表2に示す。
【0196】
【表2】
単一の薬剤として、DX−2240、ベバシズマブおよびソラフェニブはすべて、対照に比べて腫瘍サイズを低減した。DX−2240の投与後、day10にベバシズマブの投与を開始した結果、腫瘍サイズ低減の相乗的改善がもたらされ、薬物の同じ組合せでベバシズマブの投与をday20に開始しても相乗的改善の傾向が示された。特に、DX−2240およびベバシズマブの逐次投与によって、腫瘍成長の速度が減少したために、10日または20日のDX−2240前処置を有するグループ(すなわちグループ3および4)における安定な腫瘍および退縮の数が対照IgGおよびベバシズマブのグループ(グループ6および7)よりも増加したことが注目された。表3は算出された腫瘍成長速度を示す。
【0197】
【表3】
DX−2240とソラフェニブとの組合せによって腫瘍サイズのわずかな低減がもたらされたが、この効果は対照IgG/ソラフェニブの組合せよりも大きくはなかった。この結果は、ソラフェニブに対するこの腫瘍タイプの過敏性によるものかもしれない。DX−2240とともに投与されるときにいくつかの腫瘍タイプにおいて相乗効果を与えるようなソラフェニブの最適用量が存在することが予期される。
【0198】
実施例4:前立腺癌異種移植片モデルにおけるTie1外部ドメイン結合タンパク質およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
DU145前立腺癌細胞を無胸腺症nu/nuマウスの皮下に注射して腫瘍を形成させた。動物を9〜10匹のマウスのグループに分類し、次いでDX−2240(20mg/kgでのIP注射、Q2d)、アイソタイプ適合抗体の対照(A2、20mg/kgでのIP注射、Q2d)、ベバシズマブ(12mg/kgでのIP注射、Q5d)、DX−2240の20mg/kgのQ2d+ベバシズマブ(DX−2240の20mg/kgのQ2d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の20mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の20mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の10mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の10mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の5mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の5mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の1mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の1mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240+ソラフェニブ(DX−2240の20mg/kgでのIP注射、Q2d、ソラフェニブの100mg/kgの毎日の経口投与(PO)を9日間(QDx9)、day25および56に開始)、またはA2+ソラフェニブ(A2の20mg/kgでのIP注射、Q2d、ソラフェニブの100mg/kgのPO QDx9、day25および56に開始)で処置した。day34の後、DX−2240のみのグループおよびA2のみのグループのマウスに付加的な薬剤を与えたため、もはやこの実験に対する対照として利用できなくなった。週2回腫瘍体積を測定した。
【0199】
腫瘍体積のデータは図5および図6にまとめられている。図5に示されるとおり、このモデルにおけるDX−2240に続くソラフェニブの逐次投与は、腫瘍成長をかなり減少させ(その結果DX−2240およびソラフェニブの共投与の期間における腫瘍収縮がもたらされた)、この減少はより遅い時点(例、より大きな腫瘍サイズ)において相乗的であることが示された。このモデルはベバシズマブに対して高度に敏感であることが示された(ベバシズマブのみを12mg/kg、Q5dにて投与した結果、腫瘍収縮がもたらされた)ため、Tie1外部ドメイン結合剤(DX−2240)との逐次投与の相乗効果を観察することはできなかった。
【0200】
実施例5:膵癌モデルにおけるDX−2240およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
BxPC−3ヒト膵癌モデルにおけるDX−2240のスケジュール依存性の抗腫瘍活性を評価した。DX−2240およびベバシズマブをさまざまなスケジュールで共投与し、ベバシズマブおよび対照IgG(パリビズマブ)で共処置されたグループと活性を比較した。加えて、腫瘍脈管構造の変化およびネズミVEGFのあらゆる潜在的影響をα−マウスVEGF結合抗体を用いて調べた。
【0201】
メスのヌードマウス(nu/nu)を14グループに分けた。グループ1〜12の動物には、ヌードマウス宿主におけるSC成長腫瘍から採取したBxPC3腫瘍断片をトロカールによって皮下に移植した。グループ13〜14のマウスには、組織培養からの約1x107個のBxPC−3細胞を皮下注射した。注射された腫瘍が約104mm3のサイズに成長したとき(移植の約19日後)、および移植された腫瘍が約110mm3のサイズに成長したとき(移植の約22日後)、動物は腫瘍サイズによってペアマッチングされて処置グループおよび対照グループに分けられた。グループ1および2からの動物を用いて腫瘍脈管構造を評価した。グループ13および14からの動物を用いて、細胞注射から形成された腫瘍に対するDX−2240の効果を比較した。
【0202】
動物をペアマッチングした後(day1)に処置を開始した。すべてのグループの動物は重量によって投薬された(10ml/kg)。対照IgGおよびDX−2240はIP注射によって20mg/kgで投与され、ベバシズマブおよびラットα−マウスVEGF IgG抗体はIP注射によって10mg/kgで投与され、投与は3日おきに行なわれた。投与はday−3、1、5、6、10または20に開始された。表4にさまざまな投与スケジュールを示す。
【0203】
【表4】
個体およびグループの平均腫瘍体積をday1からday39まで週2回記録した。各グループに対する平均腫瘍体積を表5に示し、図7にまとめている。
【0204】
【表5】
上記の実施例3に記載される研究の結果と一致して、図8に示されるとおり、この研究においてもDX−2240の投与に続いてベバシズマブの投与をday10またはday20に開始することによって、対照グループに比べて腫瘍サイズ低減の相乗的改善が得られることが示された。図9に示されるとおり、対照IgGまたはDX−2240をday1に、ベバシズマブをday1またはday5に開始した共投与のグループは、腫瘍成長阻害に顕著な差を示さなかった。
【0205】
α−マウスVEGF抗体を加えることによって、DX−2240/ベバシズマブ処置動物(グループ12)における腫瘍成長阻害が減少したが、DX−2240/ベバシズマブの組合せはそれでもなお対照IgG/ベバシズマブの組合せ(グループ11)に比べて腫瘍成長を減少させた。細胞注射によって形成された腫瘍(グループ13および14)は、類似の測定腫瘍体積(約400mm3)において評価された移植腫瘍に比べてDX−2240/ベバシズマブの組合せに対する敏感度が低かった。しかし、注射された腫瘍が体積終点に達したときにこの敏感度の低下が残ったかどうかは明らかでない。
【0206】
腫瘍脈管構造の変化を定めるために、グループ1および2の各々から3匹の動物をランダムに選択して、day5、10、15および20に腫瘍および血清を含む破壊的サンプル収集を行なった。動物には150μLのビオチン化レクチン溶液をIV注射した(day5および15には注射なし)。5分後、動物には心臓内注射によってPBS中の1%パラホルムアルデヒド溶液が3分間灌流された。次いで腫瘍が回収されて灌流溶液中に置かれ、直ちに分析のために送られた。血液は心臓穿刺によって回収され、血清が抽出され、液体窒素中で急速冷凍されて−80℃にて保存された。レクチン染色研究のデータを表6および図10にまとめている。
【0207】
【表6】
DX−2240で処置した動物からの腫瘍は、対照動物からの腫瘍よりも少ないレクチン染色を示した。この結果から、DX−2240処置動物の機能的腫瘍脈管構造が少なくなっていたことが示唆される。
【0208】
実施例6:前立腺腫瘍モデルにおけるDX−2240およびソラフェニブの異なる投与スケジュールの評価
DU145ヒト前立腺腫瘍モデルにおけるDX−2240および対照IgG(パリビズマブ)による処置と比較したときの、さまざまなスケジュールにおけるDX−2240およびソラフェニブによる処置に対する腫瘍成長阻害を評価した。
【0209】
オスのヌードマウス(nu/nu)に、組織培養から採取したDU145細胞を皮下注射した(約1x107個の細胞/マウス)。腫瘍が約95mm3のサイズに成長したとき(注射の約7日後)、動物は腫瘍サイズによってペアマッチングされて処置グループおよび対照グループに分けられた。
【0210】
動物をペアマッチングした後(day1)に処置を開始した。対照グループおよび処置グループの動物は重量によって投薬された(10ml/kg)。DX−2240および対照IgG(パリビズマブ)はIP注射によって、day1から1日おきに17回の処置にわたって投与されるか、またはday1から4日おきに9回の処置にわたって投与された。ソラフェニブは、day15から1日1回、9回の処置にわたって経口的な胃管栄養法によって投与された。対照として供するために、対照IgGはday1から1日おきに17回の処置にわたって投与された。この研究に対する投与濃度およびスケジュールを表7に示す。個体およびグループの平均腫瘍体積をday1からday57まで週2回記録した。その結果を表8に示し、図11にまとめている。
【0211】
DX−2240およびソラフェニブで処置した動物は、対照IgG単独またはDX−2240単独で処置した動物に比べて腫瘍成長の低減を示した。特に、図12に示されるとおり、DX−2240(20mg/kg;Q2Dx17;day1)とソラフェニブ(100mg/kg;QDx9;day15)とを組合せて処置した動物は、対照IgGとソラフェニブとを共投与した動物に比べて、化合物の投与が中止された後も腫瘍成長の顕著な減少を示し続けた。
【0212】
【表7】
【0213】
【表8】
その他の実施形態は以下の請求項の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年10月17日に出願された米国仮出願第60/852,263号および2006年12月19日に出願された米国仮出願第60/875,736号(これらの内容は、その全体が参考として援用される)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
血管は、内皮細胞の内側層と周細胞または平滑筋細胞の外側層とからなっている。第1の管状構造は内皮細胞によって形成されており、内皮細胞はその後周細胞および平滑筋細胞によって覆われる。中胚葉由来の内皮前駆細胞の分散集団からの血管の新規の形成は、脈管形成と呼ばれる。この原始的なネットワークは、出芽、分裂およびリモデリングを含む連続的な形態形成事象を受けて、大きな脈管から分岐した小さな脈管までの階層的な脈管ネットワークを生じる。これらの連続的な形態形成事象は、集合的に血管新生と呼ばれる。過去の研究では、いくつかの内皮細胞特異的な受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinases:RTKs)およびその同族リガンドが同定されており、それらは血管の脈管形成的および血管新生的発達に介在する。脈管内皮成長因子(vasucular endothelial growth factor:VEGF)ファミリーの構成員およびその受容体は初期の胚血管叢の形成の際に機能するのに対し、アンギオポエチン(angiopoietins:Angs)およびその受容体Tie2、ならびにエフリン(ephrins)およびそのEph受容体はその後のリモデリングプロセスに関係する。血管新生およびリンパ管新生の応答に含まれる受容体の概説としては、たとえば非特許文献1を参照されたい。
【0003】
Tie1およびTie2は、ほとんど内皮細胞および造血前駆細胞においてのみ発現されるRTKである。これら2つの受容体は、胚形成の際の脈管構造の正常な発達のために必要とされる。これら2つのTie受容体は、他のRTKファミリー構成員とは異なり、細胞外EGF相同ドメインを含むため、RTKサブファミリーを形成する。たとえば、非特許文献2および特許文献1などを参照されたい。マウスにおけるTie1遺伝子の標的破壊は、大量出血および微細血管保全性不良を特徴とする致死表現型をもたらす。たとえば非特許文献3などを参照されたい。Tie2ヌルの胚は脈管リモデリングおよび成熟に欠陥を有し、これは周囲内皮支持細胞の不適当な補充によってもたらされる。アンギオポエチン(Ang、例、Ang1、Ang2、Ang3およびAng4)は、Tie2と相互作用するタンパク質である。
【0004】
脈管内皮成長因子(VEGF)は、正常および異常な血管新生の調節においてもかなりの役割を果たす。単一のVEGF対立遺伝子の損失は胚の致死性をもたらし、このことはこの因子が脈管系の発達および分化において主要な役割を果たすことを示唆する(非特許文献4)。VEGFは、腫瘍および眼内障害(intraocular disorders:Id.)に関連する新血管形成の主要な介在物質であることも示された。VEGFのmRNAは、調べられたヒト腫瘍の大多数によって過剰発現されている(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8および非特許文献9)。抗VEGF中和抗体は、ヌードマウスにおいてさまざまなヒト腫瘍細胞系の生育を抑制する(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12および非特許文献13)。もっと最近になって、モノクローナル抗体VEGF阻害剤ベバシズマブが、特定のヒト癌の処置に対して認可された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第93/14124号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jonesら、Nat.Rev.Molec.Cell Biol.(2001)2:257
【非特許文献2】Partanen、Mol.Cell Biol.(1992)12:1698
【非特許文献3】Puriら、EMBO J.(1995)14:5884
【非特許文献4】Ferraraら、Endocr.Rev.(1997)18:4−25
【非特許文献5】Berkmanら、1993、J Clin Invest、91:153−159
【非特許文献6】Brownら、Human Pathol.(1995)26:86−91
【非特許文献7】Brownら、Cancer Res.(1993)53:4727−35
【非特許文献8】Matternら、Brit.J.Cancer.(1996)73:931−34
【非特許文献9】Dvorakら、Am J.Pathol.(1995)146:1029−39
【非特許文献10】Kimら、Nature(1993)362:841−44
【非特許文献11】Warrenら、J.Clin.Invest.(1995)95:1789−97
【非特許文献12】Borgstromら、Cancer Res.(1996)56:4032−39
【非特許文献13】Melnykら、Cancer Res.(1996)56:921−24
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、本発明は、望ましい治療効果を得るためにTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬を投与するための投与計画を特徴とする。
【0008】
1つの局面において、本発明は血管新生に関する障害を処置する方法を提供し、この方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に対象に投与するステップを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0010】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0011】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0012】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0013】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは前立腺癌または膵癌である。
【0015】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して腫瘍脈管構造の変化を示すときに第2の薬剤が投与される。いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍サイズの変化をモニタリングするステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0017】
他の局面において、本発明は術後補助療法を提供する方法を記載し、この方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を投与する前の期間に投与するステップを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0020】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、手術から約5、10、15、20、24、35、40または48時間以内に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0022】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、腫瘍の再増殖を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0023】
いくつかの実施形態において、腫瘍とは本明細書に記載される腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍とは結腸腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍または膵腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍とは前立腺腫瘍または膵腫瘍である。
【0024】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0025】
他の局面において、本発明は血管新生に関する障害を処置する方法を提供し、この方法は、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を対象に投与する前の期間に対象に投与するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0028】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0029】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0030】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して変化を示すときに第2の薬剤が投与される。いくつかの実施形態において、この方法は腫瘍成長をモニタリングするステップを含み、腫瘍成長が示されるときに第2の薬剤が投与される。
【0031】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0032】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは前立腺癌または膵癌である。
【0033】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0034】
他の局面において、本発明は術後補助療法を提供する方法を記載し、この方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を投与する前の期間に投与するステップを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0037】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。他の実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、手術から約5、10、15、20、24、35、40または48時間以内に投与される。
【0038】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0039】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量で投与される。他の実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬は、腫瘍の再増殖を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬の各々は、腫瘍の再増殖を処置するために相乗的に有効な量で投与される。
【0040】
いくつかの実施形態において、腫瘍とは本明細書に記載される腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍は結腸、肺、乳房、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺または膵臓に存在する。いくつかの実施形態において、腫瘍とは前立腺腫瘍または膵腫瘍である。
【0041】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0042】
他の局面において、本発明は、腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる方法を提供し、この方法は、血管新生に関する障害を有する対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に投与するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0045】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0046】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブである。
【0047】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップを含み、腫瘍脈管構造が第1の薬剤の投与前と比較して変化を示すときに第2の薬剤が投与される。
【0048】
いくつかの実施形態において、血管新生に関する障害とは癌または腫瘍、たとえば本明細書に記載される癌または腫瘍などである。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0049】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0050】
いくつかの局面において、本発明は、VEGF拮抗薬を投与されている癌を有する対象における腫瘍の再増殖の速度を減少させる方法を提供し、この方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与するステップを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約1日から35日(例、1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、14、20、21、28、30もしくは35日、またはその間のあらゆる日)前に投与される。他の実施形態においては、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の約4日(例、3、4または5日)前、約6日(例、5、6または7日)前、約8日(例、7、8または9日)前、約10日(例、8、9、10、11または12日)前、約20日(例、19、20または21日)前、または約2週間(例、12、13、14、15または16日)前に投与される。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、継続される。いくつかの実施形態においては、第1の薬剤の投与は、第2の薬剤の投与の後、中止される。
【0053】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0054】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである。
【0055】
いくつかの実施形態において、この方法は、対象の腫瘍成長をモニタリングして、成長が示されるときに第2の薬剤を投与するするステップを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、癌とは本明細書に記載される癌である。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0057】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0058】
いくつかの局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤の投与前に対象に投与することによって、対象へのVEGF拮抗薬の投与の頻度を減少させる方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、本明細書に記載されるTie1外部ドメイン結合剤である。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240、DX−2220またはそれらの組合せである。
【0060】
いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬は、本明細書に記載されるVEGF拮抗薬である。いくつかの実施形態において、VEGF拮抗薬はソラフェニブである。
【0061】
他の実施形態において、この方法は対象の腫瘍成長をモニタリングするステップを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、癌とは本明細書に記載される癌である。いくつかの実施形態において、癌とは大腸癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌または膵癌である。いくつかの実施形態において、癌とは前立腺癌または膵癌である。
【0063】
いくつかの実施形態において、この方法は放射線療法または化学療法を含む。この放射線療法および/または化学療法は、Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬の投与前、投与中または投与後に行なわれてもよい。
【0064】
別の局面において、本発明は、本明細書に開示される方法に従って血管新生に関する障害を処置するための薬の製造に対するTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を含む。
【0065】
他の局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤の代わりに、またはTie1外部ドメイン結合剤とともにTie2外部ドメイン結合剤が用いられる、本明細書に記載される方法を提供する。
【0066】
他の局面において、本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤と、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤と、本明細書に記載される方法に従って使用するための指示書とを含むキットを提供する。
【0067】
本明細書に記載される局面において、血管新生に関する障害は、腫瘍性疾患(例、固形腫瘍、腫瘍転移、および良性腫瘍、特に血液供給または血管新生を必要とする腫瘍性疾患);炎症性障害(例、慢性関節リウマチ、狼瘡、再狭窄、乾癬、移植片対宿主反応または多発性硬化症);眼性血管新生疾患、たとえば糖尿病性網膜症、未熟児の網膜症、黄斑変性(例、年齢に関係する黄斑変性の湿潤および/または乾燥形)、角膜移植片拒絶、新生血管緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅など;Osler−Webber症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生(plaque neovascularization);毛細管拡張症;血友病者関節;血管線維腫;および創傷肉芽形成を含むが、これらに限定されない。
【0068】
良性腫瘍は、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫を含むが、これらに限定されない。固形腫瘍は、悪性腫瘍、たとえば肉腫、腺癌、および癌腫など、さまざまな器官系の、たとえば肺、乳房、胃腸(例、結腸)、および尿生殖路(例、腎性、尿路上皮性細胞)、咽頭などを冒すものなど、ならびに悪性腫瘍を含む腺癌、たとえばほとんどの大腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌、肝癌、肺の非小細胞癌、小腸癌、食道癌、および膵癌などを含むが、これらに限定されない。処置可能な固形腫瘍のさらなる例は以下を含む:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌、膵癌、乳癌、尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎臓細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽腫。
【0069】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、血管新生に関する障害とは、炎症性障害、たとえば慢性関節リウマチ、乾癬、リウマチ様もしくはリウマチ性の炎症性疾患など、またはその他の慢性炎症性障害、たとえば慢性喘息、動脈もしくは移植後のアテローム性動脈硬化症、および子宮内膜症などである。処置可能なその他の血管新生に関する障害は、調節解除された血管新生または望ましくない血管新生を有する障害、たとえば眼性新血管形成など、たとえば網膜症(糖尿病性網膜症および年齢に関係する黄斑変性を含む)、血管芽細胞腫、血管腫、および動脈硬化などを含む。
【0070】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、対象は血管新生を低減させる必要があるか、またはそうであることが確認されている。たとえば、対象は腫瘍性障害、たとえば転移性癌などを有する。たとえば、対象は血管新生依存性の癌または腫瘍を有する。その腫瘍は固形腫瘍であってもよく、たとえば直径が少なくとも1、2、3、5、8または10mmの腫瘍などであってもよい。実施形態の1つにおいて、固形腫瘍は低酸素の中心部を有する。この方法は、拮抗薬を投与する前に、対象を評価して対象内の固形腫瘍を検出するステップを含んでもよい。
【0071】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、Tie複合体の形成を増加させる。本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、Tie1のチロシンリン酸化を増加させる。本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は、細胞の表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0072】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤は抗体であり、その抗体は以下のものからの少なくとも1つの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR、例、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、および/またはLC CDR3)を含む:
【0073】
【化1】
VEGF拮抗薬剤とは、VEGFシグナリング経路を標的とするか、または負に調節する薬剤である。この後者のクラスの例は、VEGF阻害剤(例、VEGF(例、VEGF−A、−B、−C、または−D)を直接阻害する薬剤、たとえばVEGFに結合することによるもの(例、抗VEGF抗体、たとえばベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))もしくはラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、またはその他の阻害剤、たとえばペガプタニブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、およびPI−88など))、VEGF発現のモジュレータ(例、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノクリスタル分散、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、Veglin)、VEGF受容体の阻害剤(例、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)の阻害剤、たとえば抗KDR抗体など、VEGFR2抗体、たとえばCDP−791、IMC−1121Bなど、VEGFR2遮断薬、たとえばCT−322など)、VEGFR発現のモジュレータ(例、VEGFR1発現モジュレータSirna−027)、またはVEGF受容体下流シグナリングの阻害剤を含む。本明細書に記載されるいくつかの局面において、VEGF拮抗薬剤は、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、パゾパニブ、バンデタニブ、バタラニブ、セディラニブ、フェンレチニド、スクアラミン、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、テトラチオモリブデート、パンゼムNCD、2−メトキシエストラジオール、AEE−788、AG−013958、ベバシラニブナトリウム、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、CDP−791、CP−547632、PI−88、SU−14813、SU−6668、XL−647、XL−999、IMC−1121B、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、CT−322、CX−3542、E−7080、ENMD−1198、OSI−930、PTC−299、Sirna−027、TKI−258、Veglin、XL−184、またはZK−304709である。
【0074】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤の投与は、補助療法として用いられる。この補助療法は、対象が腫瘍のすべてまたは部分を除去するための手術を受けた後(例、神経膠芽腫または結腸直腸癌、乳癌もしくは肺癌を処置するための手術後)に対象に投与される術後療法であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明に従った投与は手術から6、12、24、48または100時間以内に開始される。
【0075】
本明細書に記載されるいくつかの局面において、この方法は付加的な治療様式を含む。たとえば、その付加的な治療様式とは放射線療法または細胞毒性化学療法剤、たとえば代謝拮抗物質(例、5−FU、ロイコボリンを伴う)、イリノテカン(または他のトポイソメラーゼ阻害剤)、ドキソルビシン、またはこれらすべての薬剤のあらゆる組合せなどであり、これらの薬剤すべての投与も含まれる。
【0076】
この方法は、たとえば以下の1つまたはそれ以上の低減について対象をモニタリングするステップをさらに含んでもよい:腫瘍サイズの低減;癌マーカ、たとえば癌特異的抗原のレベルなどの低減;たとえば骨スキャンなどにおける新たな病変の出現の低減;新たな疾患に関係する症状の出現の低減;または軟部組織量のサイズの減少もしくは安定化;または臨床的結果の改善に関係するあらゆるパラメータ。対象は、以下の期間の1つまたはそれ以上においてモニタリングされてもよい:処置の開始前;処置中;または処置の1つもしくはそれ以上の構成要素が投与された後。モニタリングは、同じTie1結合タンパク質および/またはVEGF拮抗薬剤によるさらなる処置の必要性か、または付加的な薬剤による付加的な処置の必要性を検討するために使用できる。一般的に、上述のパラメータの1つまたはそれ以上が減少または安定化することは、対象の状態が改善されたことを示す。このモニタリングに関する情報は、たとえば電子形式またはデジタル形式などで記録されてもよい。
【0077】
対象は哺乳動物、たとえば霊長類などであってもよく、好ましくはより高等な霊長類、たとえばヒトなどであってもよい。
【0078】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項からより明らかになる。本発明の実施形態は、本明細書に記載される特徴のあらゆる組合せを含み得る。「実施形態」という用語は、本明細書の、たとえば別の実施形態などに開示される1つまたはそれ以上の他の特徴を必然的に除外することはない。この出願書全体にわたって引用されるすべての参考文献、特許出願および特許の内容はここに明白に引用により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ヒトTie1のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の10日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図3】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の20日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図4】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にソラフェニブを投与したことを示すグラフである。
【図5】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にソラフェニブを投与したことを示すグラフである。
【図6】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図7】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与後にさまざまなスケジュールでベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図8】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の10日または20日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図9】膵腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与と同じ日または5日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図10】DX−2240処置マウスからの腫瘍のレクチン染色を示す図である。
【図11】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にさまざまな用量のベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【図12】前立腺腫瘍モデルにおいて、DX−2240の投与の15日後にベバシズマブを投与したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明者らは驚くべきことに、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を投与するときに、一方の薬剤が第2の薬剤の投与前に十分な期間にわたって投与されていれば、相乗効果がもたらされることを見出した。たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤がVEGF拮抗薬剤の投与の前に投与されるときに相乗効果が起こる。したがって本明細書において提供されるのは、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤を異なる時間に対象に投与することによって血管新生に関する障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)方法である。たとえば1つの局面において、対象における血管新生に関する障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)方法は、最初にTie1外部ドメイン結合剤を投与し、続いてVEGF拮抗薬を投与するステップを含む。
【0081】
Tie1外部ドメイン結合剤(例、DX−2240またはDX−2220)の投与によって、Tie1およびTie2を発現している細胞、たとえば内皮細胞などの表面からのTie1/Tie2へテロ二量体のダウンモジュレーションがもたらされる。したがって本発明は、最初にTie1外部ドメイン結合剤を投与し、続いてVEGF拮抗薬剤を投与することによって血管新生に関する障害の少なくとも1つの症状を改善する方法も提供する。
【0082】
「処置する」または「処置」という用語は、薬剤を単独で、または1つもしくはそれ以上の他の薬剤(例、第2の薬剤)と組合せて、対象、たとえば患者など、たとえば障害(例、本明細書に記載されるような障害)、障害の症状、または障害に対する性質もしくは障害になりやすい傾向を有する患者などに適用または投与することによって、その障害、障害の症状または障害になりやすい傾向を、たとえば治療するか、治癒するか、緩和するか、軽減するか、変えるか、修復するか、良くするか、改善するか、またはそれに影響することを示す。細胞を処置するとは、細胞の活性、たとえば内皮細胞が管または脈管を形成する能力などを低減させることを示す。低減とは必ずしも活性の完全な消失を要するわけではなく、たとえば細胞の活性または数の統計学的に有意な低減などの低減であってもよい。
【0083】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質を示す。たとえば、抗体は重(heavy:H)鎖可変領域(variable region)(本明細書ではVHと略される)、および軽(light:L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)を含み得る。別の例においては、抗体は2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。「抗体」という用語は、完全な抗体と同様に、抗体の抗原結合断片(例、1本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2、Fd断片、Fv断片、およびdAb断片)を包含する。
【0084】
VHおよびVL領域は、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる高度可変性の領域と、CDRとともに散在する「フレームワーク領域」(framework regions:FR)と呼ばれるもっと保存された領域とにさらに細分できる。フレームワーク領域とCDRとの程度は正確に定められている(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健福祉省、NIH Publication No.91−3242、およびChothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照)。本明細書ではKabatの定義が用いられる。VHおよびVLの各々は、典型的には3つのCDRおよび4つのFRからなり、それらはアミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0085】
「免疫グロブリンドメイン」とは、免疫グロブリン分子の可変ドメインまたは定常ドメインからのドメインを示す。免疫グロブリンドメインは典型的に、約7つのβストランドで形成された2つのβシートと、保存されたジスルフィド結合とを含有する(例、A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay、1988、Ann.Rev Immunol.6:381−405を参照)。以下の文献に記載されるとおり、免疫グロブリン可変の高度可変ループの限界構造は、その配列から推測できる:Chothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776−798);およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−38。
【0086】
本明細書において用いられる「免疫グロブリン可変ドメイン配列」とは、免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成できるアミノ酸配列を示す。たとえばこの配列は、自然発生する可変ドメインのアミノ酸配列のすべてまたは部分を含んでもよい。たとえばこの配列は、1つ、2つまたはそれ以上のN末端またはC末端アミノ酸、内部アミノ酸を省いていてもよく、1つまたはそれ以上の挿入または付加的な末端アミノ酸を含んでいてもよく、またはその他の変更を含んでいてもよい。実施形態の1つにおいて、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して標的結合構造(または「抗原結合部位」)、たとえばTie1と相互作用する構造、たとえばTie1に結合するかまたはTie1を阻害する構造などを形成してもよい。
【0087】
抗体のVHまたはVL鎖は、重鎖または軽鎖定常領域のすべてまたは部分をさらに含むことによって、それぞれ重免疫グロブリン鎖または軽免疫グロブリン鎖を形成してもよい。実施形態の1つにおいて、抗体は2つの重免疫グロブリン鎖および2つの軽免疫グロブリン鎖の四量体であり、その重免疫グロブリン鎖および軽免疫グロブリン鎖は、たとえばジスルフィド結合などによって相互に結合されている。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は典型的に、免疫系のさまざまな細胞(例、エフェクタ細胞)および古典的な補体系の第1の構成要素(Clq)を含む宿主組織または因子への抗体の結合に介在する。「抗体」という用語は、タイプIgA、IgG、IgE、IgD、IgM(およびそのサブタイプ)のインタクトな免疫グロブリンを含む。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパまたはラムダタイプであってもよい。実施形態の1つにおいて、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存的細胞毒性および/または補体介在細胞毒性に対して機能し得る。
【0088】
「単一特異的抗体」という用語は、たとえばエピトープなどの特定の標的に対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体を示す。この用語は、たとえば同種の単離細胞の集団などから単一分子種として生成された抗体を示す「モノクローナル抗体」を含む。「モノクローナル抗体組成物」とは、組成物中に単一分子種の抗体を含む、抗体またはその断片の調製物を示す。実施形態の1つにおいて、モノクローナル抗体は哺乳動物細胞によって生成される。1つまたはそれ以上のモノクローナル抗体種が組合されてもよい。
【0089】
抗体の1つまたはそれ以上の領域は、ヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、可変領域の1つまたはそれ以上がヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、CDRの1つまたはそれ以上がヒト、たとえばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3などであってもよい。軽鎖CDRの各々がヒトであってもよい。HC CDR3がヒトであってもよい。フレームワーク領域の1つまたはそれ以上がヒト、たとえばHCまたはLCのFR1、FR2、FR3およびFR4などであってもよい。実施形態の1つにおいては、すべてのフレームワーク領域がヒトであり、たとえばヒト体細胞など、たとえば免疫グロブリンを生成する造血細胞または非造血細胞などに由来する。実施形態の1つにおいて、ヒト配列は生殖細胞系配列であり、たとえば生殖細胞系核酸によってコードされる。定常領域の1つまたはそれ以上が、ヒトまたは事実上ヒトであってもよい。別の実施形態においては、フレームワーク領域(例、集合的にFR1、FR2およびFR3、または集合的にFR1、FR2、FR3およびFR4)の少なくとも70、75、80、85、90、92、95もしくは98%、または抗体全体がヒトまたは事実上ヒトであってもよい。たとえば、FR1、FR2およびFR3は集合的に、軽鎖または重鎖配列をコードする座のヒト生殖細胞系Vセグメントによってコードされるヒト配列と少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98または99%同一であってもよい。
【0090】
抗体のすべてまたは部分が、免疫グロブリン遺伝子またはそのセグメントによってコードされてもよい。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。免疫グロブリン軽鎖の全長(約25Kdまたは214アミノ酸)は、NH2末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)と、COOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子とによってコードされる。免疫グロブリン重鎖の全長(約50Kdまたは446アミノ酸)も同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)と、他の前述の定常領域遺伝子の1つ、たとえばガンマ(約330アミノ酸をコードする)などとによってコードされる。軽鎖とは、軽鎖可変ドメインを含むあらゆるポリペプチドを示す。重鎖とは、重鎖可変ドメインであるあらゆるポリペプチドを示す。
【0091】
本明細書において用いられる全長抗体の「抗原結合断片」(または単に「抗体部分」もしくは「断片」)という用語は、目的の標的に特異的に結合する能力を保持した、全長抗体の1つまたはそれ以上の断片を示す。全長抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例は以下を含む:(i)Fab断片、すなわちVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)2断片、すなわちヒンジ領域においてジスルフィド架橋によってつながれた2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)dAb断片(Wardら(1989)Nature、341:544−546)、VHドメインからなる;および(vi)機能性を保持した単離相補性決定領域(CDR)。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いてそれらをつなぎ合わせ、合成リンカによって、VLおよびVH領域が対となって単鎖Fv(single chain Fv:scFv)として公知の一価の分子を形成する単一タンパク質鎖として作成されるようにできる。たとえば、Birdら(1988)Science、242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879−5883などを参照されたい。
【0092】
抗体断片は、当業者に公知の従来の方法を含むあらゆる適切な技術を用いて得ることができる。「単一特異的抗体」という用語は、たとえばエピトープなどの特定の標的に対する単一の結合特異性および親和性を示す抗体を示す。この用語は、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」を含み、本明細書において用いられるそれらの用語は、単一分子組成物の抗体またはその断片の調製物を示す。本明細書において用いられる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例、IgMまたはIgG1)を示す。
【0093】
実施形態の1つにおいて、抗体のHCまたはLCは、たとえばフレームワーク領域および/またはCDRなど、ヒト生殖細胞系配列によってコードされるアミノ酸配列と一致する配列を含む。たとえば、抗体はヒトDP47抗体からの配列を含んでもよい。実施形態の1つにおいては、抗体に対する1つまたはそれ以上のコドンが生殖細胞系核酸配列に関して変えられるが、同じアミノ酸配列をコードするように選択される。コドンは、たとえば特定の系における発現を最適化する、制限酵素部位を作成する、サイレントフィンガープリントを作成するなどのために選択されてもよい。
【0094】
「ヒト化された(humanized)」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むことによって、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化された」免疫グロブリンの説明は、たとえば米国第6,407,213号および米国第5,693,762号を含む。
【0095】
「事実上(effectively)ヒトの」免疫グロブリン可変領域とは、十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むことによって、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒトの」抗体とは、十分な数のヒトアミノ酸位置を含むことによって、抗体が正常なヒトにおける免疫原性応答を誘発しないようにされた抗体である。
【0096】
本明細書において用いられる「Tie複合体」とは、Tie1およびTie2を含む(アンギオポエチン(Ang)を含んでもよい)ヘテロマー複合体か、またはTie1のホモマー複合体のいずれかを示す。ヘテロマーTie複合体は、部分的にはTie1およびTie2の細胞外ドメインの会合によって形成され、Angも含んでもよい。本明細書において用いられる「複合体構成員」とは、ヘテロマーTie複合体に含まれるタンパク質を示す。したがって、Tie1およびTie2、ならびに任意にはAngもすべて複合体構成員である。「Ang」という用語は、たとえばAng1、Ang2、Ang3、およびAng4などのすべてのアンギオポエチンを含む。ヘテロマーTie複合体は、Tie1、Tie2およびAngに加えて、他のタンパク質を含んでもよい。
【0097】
「血管新生」とは、脈管発達(例、血管またはリンパ管の発達)のすべての段階を含み、それは初期の脈管形成ならびにその後の脈管リモデリングおよび形態の変化を含む。
【0098】
本明細書において用いられる「作用薬(agonist)」および「拮抗薬(antagonist)」とは、特定の活性または効果の状況における特性を説明するものである。たとえば、E3またはE3b抗体は、Tie1の自己会合(例、ホモ二量体化)を促進する状況においては作用薬であり得るが、ヒト臍静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells:HUVECs)によるTie複合体形成および管形成を減少させるかまたは阻害する状況においては拮抗薬であり得る。同様に、Tie1シグナリング経路の状況においては作用薬である薬剤は、内皮細胞の出芽、分裂および管形成の状況においては拮抗薬となり得る。
【0099】
「Tie1外部ドメイン」という用語は、Tie1タンパク質の細胞外領域、たとえば図1(SEQ ID NO:1)のアミノ酸の約25〜759を含む領域などを示す。その他の例示的な領域は、以下を含む領域である:1つまたはそれ以上のEGF様ドメイン(例、図1の214〜256、258〜303、303〜345、214〜303、258〜345、または214〜345);1つまたはそれ以上のIg様C2タイプドメイン(例、43〜105、43〜426、372〜426);1つまたはそれ以上のフィブロネクチンタイプIII反復(例、図1の446〜540、543〜639、643〜744、446〜639、543〜744、または446〜744);および、それらの組合せ。「第1のIg様C2タイプドメイン」および「Ig1」という用語は、Tie1またはTie2中の免疫グロブリン様ドメインのうち、他方のIg様C2タイプドメイン(第2のこうしたドメイン)よりもタンパク質のアミノ末端の近くに位置するドメインを示す。たとえば、Tie1に対する第1の免疫グロブリン様C2タイプドメインは約43残基から約105残基に位置し、第2のIg様C2タイプドメインは約372残基から約426残基に位置する。
【0100】
本明細書において用いられる「結合親和性」とは、見かけの会合定数(apparent association constant)またはKaを示す。Kaは解離定数(Kd)の逆数である。たとえばリガンドは、特定の標的分子に対する少なくとも105、106、107または108M−1の結合親和性を有してもよい。第2の標的の結合に対するKa(または数値Kd)よりも第1の標的の結合に対するKaの方が高い(または数値Kdが小さい)ことによって、第2の標的に比べて第1の標的に対するリガンドの親和性結合が高いことが示され得る。こうした場合には、そのリガンドは第2の標的よりも第1の標的に対する特異性を有する。(例、特異性またはその他の比較に対する)結合親和性の差は、少なくとも1.5、2、5、10、50、100、または1000倍であってもよい。たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤はTie1に対して、たとえばTie2、EGF、フィブロネクチンまたはヒト血清アルブミンなどの別の抗原よりも少なくとも1.5、2、5、10、50、100、または1000倍優先的に結合してもよい。
【0101】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラスモン共鳴、または分光法(例、蛍光アッセイの使用)を含むさまざまな方法によって決定できる。これらの技術を用いて、結合リガンドおよび遊離リガンドの濃度をリガンド(または標的)濃度の関数として測定できる。結合リガンドの濃度([Bound])は遊離リガンドの濃度([Free])および標的上のリガンドに対する結合部位の濃度に関係し、ここで(N)は次の等式による標的分子当りの結合部位の数である:
[Bound]=N・[Free]/((1/Ka)+[Free])
Kaの定量的測定値はルーチンであるが、Kaを正確に定めることが常に必要なわけではなく、時には親和性の定性的測定値を得ることで十分な場合があり、たとえばELISAまたはFACS分析などの方法などを用いて定められた測定値はKaに比例するため、たとえば高い親和性というのが基準よりもたとえば2、5、10、20、または50倍高いかどうかなどを定める比較に用いることができる。結合親和性は典型的に、0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTAおよび0.005%(v/v)の界面活性剤P20において評価される。
【0102】
「単離組成物」とは、単離組成物を得ることができる天然サンプルの少なくとも1つの成分の少なくとも90%から取出された組成物を示す。人工的または自然に生成された組成物は、目的の種または種の集団が重量−重量ベースで少なくとも5、10、25、50、75、80、90、95、98、または99%純粋であれば、「少なくとも」ある程度の純度の「組成物」となり得る。
【0103】
「エピトープ」とは、たとえば抗原結合タンパク質(例、Fabまたは抗体)などのリガンドによって結合される標的化合物上の部位を示す。たとえば標的化合物がタンパク質である場合には、エピトープとはリガンドによって結合されるアミノ酸を示してもよい。重複するエピトープは、少なくとも1つの共通アミノ酸残基を含む。
【0104】
本明細書において用いられる「実質的に同一」(または「実質的に相同」)という用語は、第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に対して、十分な数の同一または同等(例、類似の側鎖を有する、例、保存されたアミノ酸置換)のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有することによって、第1および第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が類似の活性を有することを示すために本明細書において用いられる。抗体の場合には、第2の抗体は同じ特異性を有し、その親和性の少なくとも50%を有する。
【0105】
本明細書に開示される配列と類似または相同(例、少なくとも約85%の配列同一性)の配列も本出願の部分である。いくつかの実施形態において、配列同一性は約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高くてもよい。代替的には、選択的ハイブリダイゼーション条件(例、高度に厳密なハイブリダイゼーション条件)の下で核酸セグメントが鎖の補体にハイブリダイズするとき、かなりの同一性が存在する。核酸は、細胞全体、細胞溶解物、または部分的に精製された形もしくは実質的に純粋な形において存在してもよい。
【0106】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(これらの用語は本明細書において相互交換可能に用いられる)の算出は、次のように行なわれる。配列は最適な比較の目的のために整列される(例、最適な整列のために、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップが導入されてもよく、非相同配列は比較目的に対して無視されてもよい)。好ましい実施形態において、比較目的のために整列される基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているとき、それらの分子はその位置において同一である(本明細書において用いられるアミノ酸または核酸の「同一性」とは、アミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2つの配列間のパーセント同一性は、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数であり、そこでは2つの配列の最適な整列のために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さが考慮される。
【0107】
2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanおよびWunsch((1970)J.Mol.Biol.48:444−453)のアルゴリズムを用いて決定され、このアルゴリズムは、Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、ならびにギャップ重量16、14、12、10、8、6、または4、および長さ重量1、2、3、4、5、または6を用いるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれている。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリクス、ならびにギャップ重量40、50、60、70、または80、および長さ重量1、2、3、4、5、または6を用いるGCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて定められる。特に好ましいパラメータの組(および、分子が本明細書に記載される配列同一性または相同性の制限内にあるかどうかを定めるためにどのパラメータを適用するべきか従事者が分からないときに用いられるべきパラメータの組)は、Blossum62スコアリングマトリクスであり、そのギャップペナルティは12、ギャップ伸長ペナルティは4、フレームシフトギャップペナルティは5である。
【0108】
本明細書において用いられる「相同」という用語は「類似」と同義であり、目的の配列と基準配列とが1つまたはそれ以上のアミノ酸置換の存在によって異なっていることを意味する(少しのアミノ酸挿入または欠失)も存在してもよい。基準配列に対する相同性または類似性の程度を算出するための現在好ましい手段は、BLASTアルゴリズム(国立バイオテクノロジー情報センター(the National Center of Biotechnology Information:NCBI)、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド州より入手可能)の使用によるものであり、各々の場合において、アルゴリズムデフォルトまたは算出された配列相関の有意性を定めるために推奨されるパラメータが用いられる。2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、E.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム((1989)CABIOS、4:11−17)を用いて定めることもでき、このアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、それはPAM120重み残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長さペナルティ、および4のギャップペナルティを用いる。
【0109】
「ポリペプチド」または「ペプチド」(相互交換可能に用いられてもよい)という用語は、ペプチド結合によってつながれた3つまたはそれ以上のアミノ酸のポリマーを示し、その長さはたとえば3から30、12から60、もしくは30から300、または300を超えるアミノ酸などである。ポリペプチドは1つまたはそれ以上の人為的なアミノ酸を含んでもよい。典型的には、ポリペプチドは天然のアミノ酸のみを含む。「タンパク質」は1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖を含み得る。したがって「タンパク質」という用語はポリペプチドを包含する。タンパク質またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上の修飾、たとえばグリコシル化、アミド化、リン酸化なども含んでもよい。「小さいペプチド」という用語は、長さが3から30アミノ酸、たとえば長さが8から24アミノ酸などのポリペプチドを記載するために用いられてもよい。
【0110】
統計学的な有意性は、当該技術分野において公知のあらゆる方法によって定められてもよい。例示的な統計学的検定は以下を含む:StudentsのT検定、Mann WhitneyのU非パラメータ検定、およびWilcoxonの非パラメータ統計学的検定。いくつかの統計学的に有意な関係は、0.05または0.02未満のP値を有する。特定のリガンドは、たとえば統計学的に有意な特異性または結合などの相違を示してもよい(例、P値<0.05または0.02)。
【0111】
「血管新生依存性の癌および腫瘍」とは、血液を供給する血管の数および密度の増加をその成長(体積および/または質量の拡大)に必要とする癌および腫瘍である。
【0112】
「退行(Regression)」とは腫瘍の質量およびサイズの低減、たとえば少なくとも2、5、10または25%の低減を示す。
【0113】
「腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる」とは、ある条件において脈管がVEGFシグナリング経路を標的とするかまたは負に調節する薬剤(例、VEGF拮抗薬)に露出されたときに、その条件がない状態で脈管構造がその薬剤に露出されるときよりも、脈管が成長および/または機能性の減少を示すような条件を示す。
【0114】
本明細書において用いられる腫瘍脈管構造の「変化」という用語は、腫瘍の内部または周囲の血管の生理機能および/または機能の変化を示す。その変化は以下の1つまたはそれ以上であってもよいが、それらに限定されない:腫瘍脈管成長、血流、血液量、脈管透過性、腫瘍代謝、微小血管密度(microvessel density:MVD)、周細胞被覆度、または腫瘍内圧(すなわち、間質液圧(interstitial fluid pressure)またはIFP)の減少または増加。腫瘍代謝、周細胞被覆度および血流の減少は、脈管機能の減少を示す。脈管透過性およびIFPの増加は、脈管機能の減少を示す。
【0115】
以下は、腫瘍脈管構造の変化を評価するために用いられ得る公知の技術の例である。造影剤によって行なわれるコンピュータ断層撮影(Computed tomography:CT)は、血流、血液量および脈管透過性を測定できる。ドップラー超音波などの超音波も血流および血液量を評価できる。造影剤によって行なわれる磁気共鳴映像法(Magnetic resonance imaging:MRI)は、血液量および脈管透過性を測定できる。加えて、たとえばH2O15、11COおよび18FDGなどのいくつかの放射性トレーサを用いた陽電子放射断層撮影法(positron emission tomography:PET)は、血流、血液量および腫瘍代謝を定めることができる。軟性S状結腸鏡検査などの内視鏡検査技術を用いてIFPを測定できる。さまざまな抗体による腫瘍生検の染色も腫瘍脈管構造の変化を評価できる。たとえばPECAM、CD34またはフォン・ウィルブランド因子などに対する抗体を用いて脈管を視覚化することによって、腫瘍面積のマイクロメートル平方当りの脈管数、すなわちMVDを定めることができる。PECAMおよびα平滑筋アクチンまたはNG2に対する抗体による腫瘍生検の二重染色は、脈管の周細胞被覆度を評価できる。
【0116】
本明細書に記載される方法は、第1の薬剤の投与後に腫瘍脈管構造をモニタリングして、腫瘍脈管構造に変化が起こったことが示されるときに第2の薬剤の投与を開始するステップを含んでもよい。たとえば、いくつかの局面においては、Tie1外部ドメイン結合剤(例、DX−2240またはDX−2220)の投与の開始後に対象における腫瘍脈管構造がモニタリングされてもよい。腫瘍脈管構造の変化が示されるときにVEGF拮抗薬(例、ベバシズマブ)の投与が開始されてもよい。
【0117】
Tie1外部ドメイン結合剤
本発明に従って有用なTie1外部ドメイン結合剤は、Tie1のエピトープ(例、ヒトTie1外部ドメイン)に結合する。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はTie複合体の形成を増加させる。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はTie1のチロシンリン酸化を増加させる。いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤は、細胞の表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0118】
例示的なTie1外部ドメイン結合タンパク質は以前に開示されており(例、米国特許第5,955,291号および米国特許出願公開第2005/0136053号、第2006/0024297号、および第2006/0057138号、特に米国出願公開第2006/0057138号の図7〜39および実施例28〜30を参照)、それらは
【0119】
【化2−1】
【0120】
【化2−2】
を含む。抗体E3およびその変形(例、DX−2220、DX−2240)ならびにM0044−B08は、Tie複合体形成、Tie1チロシンリン酸化、および細胞表面からのTie1のダウンモジュレーションを誘導する。
【0121】
当該技術分野において公知の技術を用いて、付加的または代替的なTie1外部ドメイン結合タンパク質が単離されてもよく、その技術は、免疫化動物(例、マウス)または表示ライブラリの選択から単離されたB細胞から作成されたハイブリドーマからのモノクローナル抗体生成を含む。Tie1外部ドメイン結合剤を同定するために有用な表示ライブラリは、ペプチド(例、構造化ペプチド、たとえばジスルフィド結合によって拘束されたペプチドなど;例、米国特許出願公開第2006/0084113号を参照)または抗体(例、Fab;例、Hoetら、2005、Nat.Biotech.23(3):344−48を参照)を表示してもよい。Tie1外部ドメイン(またはその部分、たとえばEGFドメイン、フィブロネクチン反復、またはIgスーパーファミリードメイン(例、Ig様C2タイプ2ドメイン)など)を用いて、Tie1外部ドメインに結合する表示ライブラリの構成員を同定してもよい。たとえば、Tie1外部ドメインが組換えによって発現され、支持に付着され、次いで表示ライブラリ(例、抗体を表示するファージライブラリ)と混合されてもよい。Tie1外部ドメイン標的に結合するライブラリの構成員は、次いで単離されてさらに特徴付けされる。こうした技術は当該技術分野において公知であり、米国特許出願公開第2006/0057138号に記載されている。
【0122】
付加的/代替的なTie1外部ドメイン結合剤の活性は、さまざまなアッセイを用いてアッセイされてもよく、そのアッセイは米国特許出願公開第2006/0057138号の実施例2に記載されるTie1/EpoRキメラBaF3細胞アッセイを含む。付加的なアッセイは、管形成アッセイ(例、Jones M Kら、1999、Nature Medicine、5:1418−1423)、Tie1のTie1外部ドメイン結合剤に誘導されるチロシンリン酸化の測定(例、アミノ酸約1117におけるモチーフYVNのチロシンのリン酸化)、およびインビボモデル(例、腫瘍異種移植片または同所性腫瘍移植)を含む。
【0123】
Tie1外部ドメイン結合抗体は、抗体の可変領域を1つまたはそれ以上の生殖細胞系配列により近付けるために変更されてもよい。たとえば、抗体はたとえばフレームワークまたはCDR領域などに1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むことによって、基準生殖細胞系配列により近付けられてもよい。Vkappaに対する例示的な生殖細胞系基準配列は以下を含む:O12/O2、O18/O8、A20、A30、L14、L1、L15、L4/18a、L5/L19、L8、L23、L9、L24、L11、L12、O11/O1、A17、A1、A18、A2、A19/A3、A23、A27、A11、L2/L16、L6、L20、L25、B3、B2、A26/A10、およびA14。たとえば、Tomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−3などを参照。HC可変ドメインに対する生殖細胞系基準配列は、特定の限界構造、たとえばH1およびH2高度可変ループ中の1〜3構造などを有する配列に基づいていてもよい。以下の文献に記載されるとおり、免疫グロブリン可変ドメインの高度可変ループの限界構造は、その配列から推測できる:Chothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799−817;Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776−798);およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14(18):4628−38。1〜3構造を有する例示的な配列は以下を含む:DP−1、DP−8、DP−12、DP−2、DP−25、DP−15、DP−7、DP−4、DP−31、DP−32、DP−33、DP−35、DP−40、7−2、hv3005、hv3005f3、DP−46、DP−47、DP−58、DP−49、DP−50、DP−51、DP−53、およびDP−54。
【0124】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤はアプタマーである。本明細書において用いられる核酸「アプタマー」という用語は、少なくとも5ヌクレオチドの内部非二重核酸構造を含むコンフォーメーションを有する核酸分子を示す。アプタマーは、自己相補性の領域を有する1本鎖核酸分子であってもよい。
【0125】
選択されたアプタマーを標準的な核酸増幅手順によって回収できるため、アプタマーはインビトロでスクリーニングできる。この方法は、たとえばその後の一連の選択などにおいて、選択されたアプタマーをプールに分け、プール中の各アプタマーをフルオロフォアなどの検出可能なラベルで修飾することによって向上できる。ラベルの特性を機能的に変えるアプタマーを有するプールを同定できる。こうしたプールを繰り返し分割して再分析することによって、所望の特性を有する個々のアプタマーを同定できる(例、Jhaveriら、Nature Biotechnol.18:1293を参照)。
【0126】
加えて、アプタマーをインビボの活性に対してスクリーニングできる。たとえば、混合された核酸を発現ベクターにクローニングし、そのベクターを細胞に導入してもよい。発現された混合核酸から得られるRNAアプタマーの生物活性をスクリーニングできる。活性を有する細胞を単離して、その選択されたRNAアプタマーに対する発現ベクターを回収できる。
【0127】
治療的オリゴマー(例、アプタマー)の重要な特徴は、投与されたオリゴマーのバックボーンの設計である。いくつかの実施形態において、バックボーンはインビボにおいて安定なヌクレオシド間結合を含有し、たとえばホスホジエステル結合を攻撃するヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対してオリゴマーが耐性であるように構成される。同時に、オリゴマーが標的DNAまたはRNAにハイブリダイズする能力は保持される(Agarwal,K.L.ら(1979)Nucleic Acids Res.6:3009;Agarwal,S.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA、85:7079)。代替のヌクレオシド間結合を用いて変更されたオリゴヌクレオチドを構築できる。これらの例示的な結合のいくつかがUhlmann,E.およびPeyman,A.(1990)Chemical Reviews、90:543−584に記載されている。これらの中には、メチルホスホン酸塩(リンに結合した酸素の1つがメチルに置換されている);ホスホロチオエート(これらの酸素のうち1つを硫黄が置換する)およびさまざまなアミド化(NH2または有機アミン誘導体、たとえばモルホリデートまたはピペラジデート(piperazidates)などが酸素を置換する)がある。これらの置換は安定性を高める。WO91/15500号はさまざまなオリゴヌクレオチド類似体を教示し、その類似体においてはヌクレオチド間結合の1つまたはそれ以上が硫黄に基づく結合に置換えられており、その結合は典型的にはスルファミン酸ジエステルであり、これはホスホジエステルによって等配電子および等電位である。WO89/12060号も同様に、スルフィド、スルホキシドおよびスルホンを含有する結合を開示する。WO86/05518号は、立体規則性ポリマーの3’,5’結合の変形を示唆する。米国特許第5,079,151号は、2’,5’ホスホジエステル結合を介して1本鎖DNAに結合する分岐RNAのmsDNA分子を開示する。米国特許第5,264,562号は、式−−Y’CX’2Y’−−の結合の変形を記載し、ここでY’は独立にOまたはSであり、各X’は安定化置換基であって独立に選択される。モルホリノ型ヌクレオチド間結合は米国特許第5,034,506号に記載されており、いくつかの場合には相補標的配列に対するオリゴマーの親和性を増加させる。米国特許第5,264,562号および第5,596,086号は、標的RNAおよびDNAに対する強力なハイブリダイゼーションが可能な、変更されたヌクレオシド結合を有する変更オリゴヌクレオチドを開示する。
【0128】
VEGF拮抗薬剤
本発明において用いるためのVEGF拮抗薬剤は、VEGF経路拮抗薬である。VEGF経路拮抗薬は、VEGFの阻害剤(例、VEGF−A、−B、または−Cの阻害剤、たとえばベバシズマブなど)、VEGF発現のモジュレータ(例、INGN−241、経口テトラチオモリブデート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノクリスタル分散、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、Veglin)、VEGF受容体の阻害剤(例、KDRまたはVEGF受容体III(Flt4)の阻害剤、たとえば抗KDR抗体など、VEGFR2抗体、たとえばCDP−791、IMC−1121Bなど、VEGFR2遮断薬、たとえばCT−322など)、VEGFR3抗体、たとえばhF4−3C5など、VEGFR発現のモジュレータ(例、VEGFR1発現モジュレータSirna−027)、またはVEGF受容体下流シグナリングの阻害剤を含む。
【0129】
例示的なVEGFの阻害剤は、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、NEOVASTAT(登録商標)、AE−941、VEGFトラップ、およびPI−88を含む。
【0130】
例示的なVEGF受容体拮抗薬は、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害剤を含む。4−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)フェニルアミノ]ピリミジン−5−カルボニトリル(JNJ−17029259)は、脈管内皮成長因子受容体2(vasucular endothelial growth factor receptor−2:VEGF−R2)の経口的に利用可能な選択的ナノモル阻害剤である5−シアノピリミジンの構造的クラスの1つである。付加的な例は以下を含む:PTK−787/ZK222584(AstraZeneca)、SU5416、SUl1248(Pfizer)、およびZD6474([N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチルピペリジン−4−イル)メトキシ]キナゾリン−4−アミン])、バンデタニブ、セディラニブ、AG−013958、CP−547632、E−7080、XL−184、L−21649、およびZK−304709。他のVEGF拮抗薬剤は、広範な特異性のチロシンキナーゼ阻害剤、たとえばSU6668(例、Bergers,B.ら、2003、J.Clin.Invest.111:1287−95を参照)、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バタラニブ、AEE−788、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、SU−14813、XL−647、XL−999、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、OSI−930、およびTKI−258などである。同様に有用なのは、細胞表面におけるVEGF受容体をダウンレギュレートする薬剤、たとえばフェンレチニドなど、およびVEGF受容体下流シグナリングを阻害する薬剤、たとえばスクアラミンなどである。
【0131】
タンパク質生成
標準的な組換え核酸法を用いて、Tie1外部ドメイン結合タンパク質およびタンパク質のVEGF拮抗薬剤を発現できる。たとえば、SambrookおよびRussell、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州(2001)、およびAusubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」(Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、ニューヨーク州(1989)などに記載される技術を参照されたい。一般的に、結合タンパク質をコードする核酸配列は、核酸発現ベクター中にクローニングされる。タンパク質が複数のポリペプチド鎖を含むときには、各々の鎖が発現ベクター、たとえば同じベクターまたは異なるベクターの中にクローニングされて、同じ細胞または異なる細胞において発現されてもよい。抗体を生成するための方法も以下に提供される。
【0132】
いくつかの抗体、たとえばFabなどは、たとえばE.coli細胞などのバクテリア細胞において生成されてもよい。たとえば、表示実体とバクテリオファージタンパク質(またはその断片)との間に抑制可能な終止コドンを含むファージ表示ベクター中の配列によってFabがコードされているとき、ベクター核酸は終止コドンを抑制できないバクテリア細胞に混合され得る。この場合、Fabは遺伝子IIIタンパク質に融合されずに培地に分泌される。
【0133】
抗体は真核細胞においても生成できる。実施形態の1つにおいて、抗体(例、scFvの抗体)は、酵母細胞、たとえばPichia(例、Powersら(2001)J Immunol Methods.251:123−35を参照)、Hanseula、またはSaccharomycesなどにおいて発現される。
【0134】
実施形態の1つにおいて、抗体は哺乳動物細胞において生成される。クローン抗体またはその抗原結合断片を発現させるために好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary:CHO細胞)(dhfr−CHO細胞を含み、これはUrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216−4220に記載され、DHFR選択可能マーカ、たとえばKaufmanおよびSharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されるものなどとともに用いられる)、リンパ性細胞系、たとえばNS0骨髄腫細胞、SP2細胞、COS細胞、HEK 293T細胞など、およびトランスジェニック動物、たとえばトランスジェニック哺乳動物などからの細胞を含む。たとえば、この細胞は乳房上皮細胞である。
【0135】
組換え発現ベクターは、免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、付加的な配列、たとえば宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例、複製の発端)、および選択可能マーカ遺伝子などを有していてもよい。選択可能マーカ遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照)。たとえば典型的には、選択可能マーカ遺伝子はベクターが導入された宿主細胞に、たとえばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカ遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase:DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞においてメトトレキサート選択/増幅とともに用いる)およびneo遺伝子(G418選択に対するもの)を含む。別の例示的な発現系は、Lonza Group Ltd.CHより入手可能なグルタミンシンターゼ(glutamine synthase:GS)ベクター系である(例、Clarkら(2004)BioProcess International、2(4):48−52;Barnesら(2002)Biotech Bioeng.81(6):631−639を参照)。
【0136】
抗体またはその抗原結合部分の組換え発現の例示的な系においては、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウムを介したトランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内では、抗体重鎖および軽鎖の遺伝子の各々がエンハンサ/プロモータ調節因子(例、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの、たとえばCMVエンハンサ/AdMLPプロモータ調節因子またはSV40エンハンサ/AdMLPプロモータ調節因子など)に適切につながれることによって、遺伝子の高レベルの転写を起こす。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も有しており、それによってメトトレキサート選択/増幅を用いてベクターでトランスフェクションされたCHO細胞を選択することが可能になる。選択された形質転換体宿主細胞を培養して抗体重鎖および軽鎖を発現させ、培地からインタクトな抗体を回収する。標準的な分子生物学技術を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクションし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養して培地から抗体を回収する。たとえば、いくつかの抗体はプロテインAまたはプロテインGによるアフィニティクロマトグラフィによって単離できる。
【0137】
コドンの使用頻度は宿主細胞のコドンの偏りに適合されてもよく、たとえばCHO細胞に対してはCricetulus griseus遺伝子のコドンの偏りに適合されてもよい。加えて、可能なときにはGC含有量が非常に高い(>80%)領域または非常に低い(<30%)領域を回避してもよい。最適化プロセスにおいては、以下のシス作用配列モチーフが回避された:内部TATAボックス;chi部位およびリボソームのエントリ部位;ATリッチまたはGCリッチな配列伸長;ARE、INS、CRS配列因子;反復配列およびRNA二次構造;ならびに(潜在的な)スプライスドナーおよびアクセプタ部位、分岐点。効率的な終止を確実にするために2つの停止コドンが用いられてもよい。配列のコドン最適化は、Sharp,P.M.、Li,W.H.、Nucleic Acids Res.15(3)、1987に従って評価されてもよい。標準的なコドン適合指標(codon adaptation index:CAI)が用いられてもよい。稀少コドンは、0〜40の品質クラスを有するコドンを含む。
【0138】
コドン改変(例、コドン最適化)した配列を用いて抗体を生成してもよい。例示的な方法は、抗体をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を提供して、その細胞中で核酸を発現させる、すなわちたとえば細胞をそのタンパク質が発現される条件下に維持するなどのステップを含む。抗体をコードする核酸は、哺乳動物発現ベクター、たとえば細胞に導入されるベクターなどに与えられてもよい。細胞はヒト以外の哺乳動物細胞、たとえばCHO細胞などであってもよい。
【0139】
Fcドメインを含む抗体に対しては、抗体生成系はFc領域がグリコシル化された抗体を合成することが好ましい。たとえば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメインのアスパラギン297においてグリコシル化される。このアスパラギンは二分岐型のオリゴ糖による修飾のための部位である。このグリコシル化は、Fcγ受容体および補体Clqに介されるエフェクタ機能に必要であることが示されている(BurtonおよびWoof(1992)Adv.Immunol.51:1−84;Jefferisら(1998)Immunol.Rev.163:59−76)。好ましい実施形態において、Fcドメインは、アスパラギン297に対応する残基を適切にグリコシル化する哺乳動物発現系において生成される。Fcドメインは、他の真核生物翻訳後修飾を含んでもよい。
【0140】
トランスジェニック動物によって抗体が生成されてもよい。たとえば、米国第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法を記載する。導入遺伝子は、乳汁特異的プロモータと、目的の抗体をコードする核酸と、分泌のためのシグナル配列とを含むように構築される。こうしたトランスジェニック哺乳動物のメスによって生成される乳汁中に、目的の抗体が分泌される。抗体は乳汁から精製されてもよいし、いくつかの適用に対しては直接使用されてもよい。
【0141】
たとえば天然の、ヒトの、または部分的にヒトの免疫グロブリン座による、たとえば動物を用いた免疫化によって、Tie1外部ドメインに結合する抗体を生成することも可能である。こうした抗体はあらゆるアロタイプであってもよく、たとえばa,zアロタイプ、fアロタイプ、または非Aアロタイプであってもよい。非ヒト抗体を変更してヒト免疫グロブリン配列に対する置換を含ませてもよく、その置換はたとえば特定の位置におけるコンセンサスヒトアミノ酸残基であってもよく、その特定の位置はたとえば以下の位置の1つまたはそれ以上(好ましくは少なくとも5、10、12個、またはすべて)であってもよい:(軽鎖の可変ドメインのFRにおける)4L、35L、36L、38L、43L、44L、58L、46L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、73L、85L、87L、98L、および/または(重鎖の可変ドメインのFRにおける)2H、4H、24H、36H、37H、39H、43H、45H、49H、58H、60H、67H、68H、69H、70H、73H、74H、75H、78H、91H、92H、93H、および/または103H(Kabat番号付けに従う)。たとえば米国第6,407,213号を参照されたい。
【0142】
医薬組成物
Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤は典型的に、本発明の方法において医薬組成物として投与される。薬剤の「医薬組成物」とは、医薬的に許容できる担体とともに調合された薬剤である。医薬組成物は、(例、インビボイメージングのために)ラベルされた結合タンパク質および治療的組成物を包含する。
【0143】
本明細書において用いられる「医薬的に許容できる担体」は、生理的に適合性のあらゆるすべての溶剤、分散媒、コーティング、抗菌性および抗真菌性の薬剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮の投与(例、注射または注入による)に対して好適である。投与の経路によっては、酸の作用および化合物を不活性化し得るその他の自然条件から化合物を保護するために、結合タンパク質が材料に被覆されていてもよい。
【0144】
「医薬的に許容できる塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、かついかなる望ましくない毒物的影響も与えない塩を示す(例、Berge,S.M.ら(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。こうした塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、無毒性の無機酸、たとえば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに無毒性の有機酸、たとえば脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、たとえばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに無毒性の有機アミン、たとえばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0145】
医薬組成物はさまざまな形であってもよい。その形は、たとえば液体、半固体および固体などの用量形、たとえば液体溶液(例、注射および注入可能な溶液)、分散または懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソームおよび座薬などを含む。好ましい形は、投与および治療的適用の意図されるモードによって異なる。タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤に対する典型的な好ましい調合物は、注射または注入可能な溶液の形、たとえばヒトに抗体を投与するために用いられる組成物と同様の組成物などの形である。こうしたタンパク質の薬剤に対する好ましい投与モードは、典型的に非経口的(例、静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内)である。いくつかの実施形態において、タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、静脈内注入によって、たとえば30、20、10、5、または1mg/min未満の速度で、約1mg/m2から100mg/m2、または7mg/m2から25mg/m2の用量に達するように投与されるか、または注射によって投与される。他の実施形態において、タンパク質のTie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0146】
本明細書において用いられる「非経口的投与」および「非経口的に投与される」という言葉は、腸内投与および局所的投与以外の、通常は注射による投与のモードを意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外、および胸骨内の注射および注入を限定的でなく含む。
【0147】
Tie1外部ドメイン結合剤および/またはVEGF拮抗薬剤は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に対して好適なその他の規則的な構造として調合されてもよい。滅菌された注射可能な溶液は、必要量の薬剤を、必要に応じて上記に列挙された成分の1つまたは組合せとともに適切な溶剤中に組込み、その後ろ過滅菌することによって調製できる。一般的に、分散液は、基本的な分散培地および上記に列挙された成分のうちの必要な他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を組込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過された溶液から活性成分およびあらゆる付加的な所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適当な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用などによって維持できる。たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物に含ませることによって、注射可能な組成物の吸収を延長させることができる。
【0148】
投与の経路および/またはモードは、所望の結果によって変動する。特定の実施形態においては、活性化合物が、化合物の急速な放出を防ぐ担体、たとえば移植片を含む徐放性調合物、およびマイクロカプセルに入れられた送達系などとともに調製されてもよい。生分解性の生体適合性ポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などが用いられてもよい。こうした調合物を調製するための多くの方法が特許されるか、または一般的に公知である。たとえば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1978を参照されたい。
【0149】
特定の実施形態において、結合タンパク質は、たとえば不活性の希釈剤または同化できる可食担体などによって経口投与されてもよい。化合物(および所望であれば他の成分)は、硬いかまたは軟らかいシェルゼラチンカプセルに封入されても、圧縮して錠剤にされても、対象の飲食物に直接組み込まれてもよい。経口の治療的投与に対しては、化合物が賦形剤とともに組み込まれて、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形で用いられてもよい。本明細書に記載される化合物を非経口投与以外の手段で投与するためには、化合物の不活性化を防ぐ材料で化合物を被覆するか、または化合物をその材料とともに投与する必要があり得る。
【0150】
医薬組成物は、当該技術分野において公知の医療デバイスによって投与されてもよい。たとえば、好ましい実施形態においては、たとえば米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号、または第4,596,556号などに開示されるデバイスなどの、針のない皮下注射デバイスによって医薬が投与されてもよい。移植片およびモジュールの例は、以下を含む:制御された速度で投薬を施すための埋め込み可能なマイクロ注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を通じて薬を投与するための治療的デバイスを開示する米国特許第4,486、194号;薬を正確な注入速度で送達するための薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬物送達のための可変流埋め込み可能注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;複数チャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号;および、浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号。もちろん、多くのその他のこうした移植片、送達系およびモジュールも公知である。
【0151】
特定の実施形態において、本明細書に記載される結合タンパク質は、インビボでの適切な分布を確実にするように調合されてもよい。たとえば、血液脳関門(blood−brain barrier:BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。治療的タンパク質が(所望のときに)BBBを横断することを確実にするために、そのタンパク質をたとえばリポソームなどに調合してもよい。リポソームを製造する方法については、たとえば米国特許第4,522,811号、第5,374,548号、および第5,399,331号などを参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送される1つまたはそれ以上の部分を含むことによって、標的とする薬物送達を増強してもよい(例、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。
【0152】
最適な所望の応答(例、治療的応答)を与えるために投与計画が調整される。たとえば、単一のボーラスが投与されてもよいし、ある期間にわたっていくつかの分割された用量が投与されてもよいし、治療状況の緊急性によって示されるとおりに用量が比例的に減少または増加されてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために、非経口組成物を用量単位の形に調合することが特に有利である。本明細書において用いられる用量単位の形とは、処置される対象に対する単位用量として適した物理的に別個の単位を示す;各単位は、必要な医薬担体に関連して望ましい治療効果を生じるように算出された、予め定められた量の活性化合物を含有する。用量単位の形に対する仕様は、以下によって規定され、かつそれらに直接的に依存してもよい:(a)活性化合物の一意の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感度の処置に対するこうした活性化合物の調合の技術分野において固有の制限。
【0153】
医薬組成物は、本明細書に記載される標的結合タンパク質の治療的有効量または予防的有効量を用いて調製されてもよい。組成物の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別および重量、ならびに結合タンパク質が個体において所望の応答を誘発する能力などの要素に従って変動し得る。加えて、治療的有効量においては、組成物のあらゆる毒性の効果または有害な効果を治療的に有益な効果が上回る。治療的有効量は、たとえば炎症または腫瘍の成長速度などの測定可能なパラメータを、処置されていない対象に比べて好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%阻害する。化合物がたとえば癌などの測定可能なパラメータを阻害する能力は、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系において評価できる。代替的には、組成物のこの特性は、当業者に公知のアッセイによって、インビトロ阻害など、化合物が阻害する能力を調べることによって評価できる。
【0154】
本発明の範囲内には、(a)Tie1外部ドメイン結合剤と、(b)VEGF拮抗薬剤と、(c)本明細書に開示される方法に従って使用するための指示書とを含むキットも存在する。治療的適用に対する指示書は、(a)癌または腫瘍性障害、(b)炎症性障害(例、慢性関節リウマチ)または眼性障害を有する患者において提案される用量および/または投与のモードを含む。このキットはさらに、1つまたはそれ以上の別個の医薬調製物における適切に調合された少なくとも1つの付加的な試薬、たとえば付加的な治療的薬剤など(例、細胞毒性化学療法剤)を含有してもよい。
【0155】
安定化および保持
いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、循環、たとえば血液、血清、リンパまたはその他の組織などにおける薬剤の安定化および/または保持を改善するような部分と物理的に結合される。
【0156】
たとえば、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、ポリマー、たとえば実質的に非抗原性のポリマー、たとえばポリアルキレン酸化物またはポリエチレン酸化物などに結合されてもよい。好適なポリマーは、重量によってかなり変動する。例示的なポリマーは、分子数平均重量が約200から約35,000、約1,000から約15,000、および2,000から約12,500の範囲のポリマーを含むが、その範囲はもっと高くてもよく(例、最大約500,000D)、いくつかの実施形態においては少なくとも約20,000D、または少なくとも約30,000D、または少なくとも約40,000Dである。選択される分子量は、得られるべき結合体の有効サイズ、ポリマーの性質(例、構造、たとえば直鎖または分岐鎖など)、および誘導体化の程度に依存し得る。
【0157】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の修飾のために有用なポリマーは、水溶性ポリマー、たとえば親水性ポリビニルポリマー、たとえばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどを含む。こうしたポリマーの限定的でないリストには、ポリアルキレン酸化物ホモポリマー、たとえばポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)またはポリプロピレングリコールなど、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー、およびそれらのブロックコポリマーが含まれ、ここでブロックコポリマーの水溶性は維持されるものとする。付加的な有用なポリマーには以下が含まれる:ポリオキシアルキレン、たとえばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー(Pluronics)など;ポリメタクリレート;カルボマー;糖モノマーのD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例、ポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびノイラミン酸を含む分岐または非分岐多糖類、そこにはホモ多糖類およびヘテロ多糖類、たとえばラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性ムコ多糖類の多糖サブユニット、たとえばヒアルロン酸などが含まれる;糖アルコールのポリマー、たとえばポリソルビトールおよびポリマンニトールなど;ヘパリンまたはヘパラン。
【0158】
たとえば細胞毒素、ラベル、または別のターゲティング剤、たとえば別の標的結合剤または無関係の薬剤など、他の化合物が同じポリマーに付着されてもよい。モノ活性化アルコキシ終端ポリアルキレン酸化物(polyalkylene oxides:PAO’s)、たとえばモノメトキシ終端ポリエチレングリコール(monomethoxy−terminated polyethylene glycols:mPEG’s);C1−4アルキル終端ポリマー;およびビス活性化ポリエチレン酸化物(グリコール)などを架橋に用いることができる。たとえば米国第5,951,974号などを参照されたい。
【0159】
ポリ(エチレングリコール)すなわちPEGの最も一般的な形は、ヒドロキシル基で終端された直鎖または分岐鎖ポリエーテルであり、次の一般的な構造を有する:
HO−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
PEGは、エチレン酸化物のアニオン開環重合によって合成でき、これは水酸化イオンのエポキシド環への求核性攻撃によって開始される。ポリペプチド修飾に対して特に有用なのは、モノメトキシPEGすなわちmPEGであり、これは次の一般的な構造を有する:
CH3O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH
さらなる解説としては、たとえばRobertsら(2002)Advanced Drug Delivery Reviews、54:459−476などを参照されたい。
【0160】
共有結合架橋を用いて標的結合剤(例、タンパク質)をポリマーに付着させてもよく、たとえばN末端アミノ基およびリジン残基にみられるイプシロンアミノ基、ならびにその他のアミノ基、イミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、水酸基またはその他の親水基への架橋などが用いられてもよい。ポリマーは、多機能(通常は二機能)架橋剤を用いることなく標的結合タンパク質に直接共有結合されてもよい。アミノ基への共有結合は、以下に基づく公知の化学作用によって達成される:シアヌル酸塩化物、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応性基(PEGアルコキシドにブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタールを加えたもの;PEGにDMSOおよび無水酢酸を加えたもの、または塩化PEGに4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシドを加えたもの、活性化スクシンイミジルエステル、活性化ジチオカルボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメート、またはP−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)。カルボキシル基は、カルボジイミドを用いてPEG−アミンを結合することによって誘導体化できる。スルフヒドリル基は、マレイミド置換PEG(例、アルコキシ−PEGアミンにスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレートを加えたもの)(WO97/10847号)またはShearwater Polymers,Inc.、ハンツヴィル、アラバマ州より商業的に入手可能なPEG−マレイミド)に結合することによって誘導体化できる。代替的には、たとえばPedleyら、Br.J.Cancer、70:1126−1130(1994)などに記載されるとおり、結合タンパク質上の遊離アミノ基(例、リジン残基上のイプシロンアミノ基)を2−イミノ−チオラン(トラウト試薬(Traut’s reagent))によってチオール化し、次いでPEGのマレイミド含有誘導体に結合させてもよい。
【0161】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤に付着され得る機能化されたPEGポリマーは、たとえばShearwater Polymers,Inc.(ハンツヴィル、アラバマ州)などから入手可能である。こうした商業的に入手可能なPEG誘導体は、たとえばアミノ−PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG−ヒドラジド、PEG−チオール、PEG−コハク酸塩、カルボキシメチル化PEG、PEG−プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシンイミジルコハク酸塩、PEGスクシンイミジルプロピオン酸塩、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジル炭酸塩、アミノ酸PEGのスクシンイミジルエステル、PEG−オキシカルボニルイミダゾール、PEG−ニトロフェニル炭酸塩、PEGトレシレート、PEG−グリシジルエーテル、PEG−アルデヒド、PEGビニルスルホン、PEG−マレイミド、PEG−オルトピリジル−ジスルフィド、ヘテロ官能基PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、およびPEGホスホリドなどを含む。これらのPEG誘導体を結合するための反応条件は、含まれるTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤、所望のPEG付加(PEGylation)の程度、および利用されるPEG誘導体によって変わり得る。PEG誘導体の選択に含まれるいくつかの因子は、以下を含む:所望の付着箇所(たとえばリジンまたはシステインR基など)、誘導体の加水分解安定性および反応性、結合の安定性、毒性および抗原性、分析に対する好適性など。あらゆる特定の誘導体の使用に対する特定の指示書は製造者から入手可能である。
【0162】
Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤とポリマーとの結合体は、たとえばゲルろ過またはイオン交換クロマトグラフィ、たとえばHPLCなどによって、未反応の出発材料から分離できる。結合体の非相同種は、同じやり方で個々に精製される。たとえば未反応のアミノ酸のイオン特性の違いなどによって、異なる種(例、1つまたは2つのPEG残基を含有する)の決定も可能である。たとえばWO96/34015号を参照されたい。
【0163】
標的結合タンパク質は、安定化または保持機能を与えるタンパク質、たとえばアルブミン、たとえばヒト血清アルブミンなどに物理的に結合されてもよい。米国特許出願公開第2004/0171794号は、タンパク質を血清アルブミンに物理的に結合するための例示的な方法を記載する。例示的に、ヒトアルブミン配列またはその断片については、EP201 239号、EP322 094号、WO97/24445号、WO95/23857号を、特に米国特許出願公開第2004/0171794号のSEQ ID NO:18およびWO01/79480号に示されるようなヒトアルブミンの成熟形、または他の脊椎動物からのアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の類似物もしくは変形物、もしくはその断片を参照されたい。他の例示的なヒト血清アルブミンタンパク質は、以下の点突然変異の組の一方または両方を含んでもよい:Leu−407からAla、Leu−408からVal、Val−409からAla、およびArg−410からAla;またはArg−410からAla、Lys−413からGln、およびLys−414からGln(たとえば、米国特許出願公開第2004/0171794号のSEQ ID NO:18を参照しながら国際公開番号WO95/23857号を参照されたい)。
【0164】
使用の方法
本発明は、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤の投与を異なる時間に開始することによって、血管新生に関する障害の少なくとも1つの症状を改善するための方法を提供する。いくつかの局面においては、Tie1外部ドメイン結合剤が投与され、次いでVEGF拮抗薬が投与される。Tie1外部ドメイン結合剤は、VEGF拮抗薬剤の第1の投与前のある期間にわたって投与され、この期間はVEGF拮抗薬剤の第1の投与前の1日から最大35日(例、5、7、10、14、20、21、28または30日)間に及んでもよく、または腫瘍脈管構造の変化もしくは腫瘍成長が示されるときに投与されてもよい。この期間は、たとえば所与の処置サイクルに対するTie1外部ドメイン結合剤の第1の投与などに基づいて算出されてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態においては、対象は血管新生を低減させる必要があるか、またはそうであることが確認されている。たとえば、対象は腫瘍性障害、たとえば転移性癌などを有する。たとえば、対象は血管新生依存性の癌または腫瘍を有する。腫瘍は固形腫瘍であってもよく、たとえば直径が少なくとも1、2、3、5、8または10mmの腫瘍などであってもよい。実施形態の1つにおいて、固形腫瘍は低酸素の中心部を有する。この方法は、拮抗薬を投与する前に、対象を評価して対象内の固形腫瘍を検出するステップを含んでもよい。
【0166】
いくつかの実施形態において、Tie1外部ドメイン結合剤の投与は、VEGF拮抗薬剤の第1の投与後、継続されるが、他の実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤の投与は、VEGF拮抗薬剤投与の開始の際に中止される。
【0167】
いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置する(例、障害の症状を改善する)のに有効な量で投与される。他の実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置または予防するのに有効な量よりも少ない量で投与される。他の実施形態においては、VEGF拮抗薬剤は、単独で対象の血管新生を低減させるか、別様で対象の障害を処置または予防するのに有効な量よりも少ない量で投与される(例、VEGF拮抗薬剤がベバシズマブであって、障害が非扁平上皮の非小細胞肺癌であるとき、AVASTINの用量は15mg/kg未満である)。いくつかの実施形態においては、Tie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤は、相乗的に有効な量で投与される(例、単独で投与されたいずれかの化合物と比べたときに相乗効果をもたらす量)。
【0168】
Tie1外部ドメイン結合剤(例、本明細書に開示されるTie1外部ドメイン結合タンパク質)は、VEGF経路を標的とする薬剤(例、VEGF−A−結合抗体、たとえばベバシズマブなど)の活性を増強できる。したがって、癌の処置のための併用療法の1つにおいては、第2の療法はVEGF経路シグナリングを阻害する薬剤、たとえばVEGF−A−結合抗体(例、ベバシズマブ)などであり、この薬剤は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質の不在下で投与されるときのVEGF経路阻害剤の用量よりも少ない用量で投与される。たとえば、Tie1外部ドメイン結合タンパク質がVEGF拮抗薬(例、抗VEGF−A抗体)とともに併用療法に用いられるとき、VEGF拮抗薬の用量は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質と組合されずに投与されるときのVEGF拮抗薬の用量よりも少なくされてもよい(例、Tie1外部ドメイン結合タンパク質と組合されずに投与されるときのVEGF拮抗薬剤の用量よりも少なくとも10%、25%、40%、または50%少ない)。たとえば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))の用量は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質との併用療法において(ただし他の化学療法剤はなしで)投与されるときには、約15、13.5、11.25、9、または7.5mg/kg未満である。化学療法剤(例、ボーラス−IFL(イリノテカン(irinotecan)125mg/m2IV、5−フルオロウラシル500mg/m2IV、およびロイコボリン20mg/m2IV、6週間ごとに週1回4週間与えられる)、FOLFOX4(Day1(1日目):オキサリプラチン85mg/m2およびロイコボリン200mg/m2同時IV、次いで5−FU400mg/m2IVボーラスの後600mg/m2連続IV;Day2:ロイコボリン200mg/m2IV、次いで5−FU400mg/m2IVボーラスの後600mg/m2連続IV;2週間ごとに繰り返される)、または5−FU)と組合せて投与されるとき、ベバシズマブの用量は5mg/kgまたは10mg/kgのいずれかに低減される。したがって、併用時のベバシズマブの用量は、本明細書に開示されるようなTie1外部ドメイン結合タンパク質と組合せて与えられるときには、約10、9、7.5、6または5mg/kg未満(Tie1外部ドメイン結合タンパク質不在下のベバシズマブの用量が10mg/kgであるとき)、または、約5、4.5、3.75、3または2.5mg/kg未満(Tie1外部ドメイン結合タンパク質不在下のベバシズマブの用量が5mg/kgであるとき)に低減されてもよい。
【0169】
血管新生に関する障害は、腫瘍性疾患(例、固形腫瘍、腫瘍転移、および良性腫瘍、特に血液供給または血管新生を必要とする腫瘍性疾患);炎症性障害(例、慢性関節リウマチ、狼瘡、再狭窄、乾癬、移植片対宿主反応または多発性硬化症);眼性血管新生疾患、たとえば網膜障害(例、増殖性網膜症、たとえば糖尿病性網膜症、虚血性網膜症、または未熟児の網膜症など);脈絡膜新血管新生;水晶体新血管新生;角膜新血管新生;虹彩新血管新生;または結膜新血管新生、黄斑変性(例、年齢に関係する黄斑変性の湿潤および/または乾燥形)、角膜移植片拒絶、新生血管緑内障、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅など;Osler−Webber症候群;心筋血管新生;プラーク新血管新生;毛細管拡張症;血友病者関節;血管線維腫;および創傷肉芽形成を含むが、これらに限定されない。
【0170】
良性腫瘍は、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫を含むが、これらに限定されない。固形腫瘍は、悪性腫瘍、たとえば肉腫、腺癌、および癌腫など、さまざまな器官系の、たとえば肺、乳房、胃腸(例、結腸)、および尿生殖路(例、腎性、尿路上皮性細胞)、咽頭などを冒すものなど、ならびに悪性腫瘍を含む腺癌、たとえばほとんどの大腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌、肝癌、肺の非小細胞癌、小腸癌、食道癌、および膵癌などを含むが、これらに限定されない。処置可能な固形腫瘍のさらなる例は以下を含む:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃腸系癌腫、結腸癌、膵癌、乳癌、尿生殖系癌腫、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎臓細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、内分泌系癌腫、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽腫。
【0171】
血管新生に関する障害が腫瘍性障害であるとき、この障害の症状の改善とは、臨床的測定値(例、MRI、CT、診断的放射測定(例、骨スキャン)など)によって定められる腫瘍性障害の量(例、腫瘍サイズ)の消失、低減、安定化、または成長速度もしくは腫瘍の数(例、転移)の低減のことである。影響され得るその他のパラメータは、日常生活の活動性、たとえば痛みなど(例、視覚または数の尺度を用いて患者が報告する痛み)を含む。
【0172】
いくつかの実施形態においては、血管新生に関する障害とは、炎症性障害、たとえば慢性関節リウマチ、乾癬、リウマチ様もしくはリウマチ性の炎症性疾患など、またはその他の慢性炎症性障害、たとえば慢性喘息、動脈もしくは移植後のアテローム性動脈硬化症、および子宮内膜症などである。処置可能なその他の血管新生に関する障害は、調節解除された血管新生または望ましくない血管新生を有する障害、たとえば眼性新血管形成など、たとえば網膜症(糖尿病性網膜症および年齢に関係する黄斑変性を含む)、血管芽細胞腫、血管腫、および動脈硬化などを含む。
【0173】
乾癬は慢性の皮膚疾患であり、スケーリングおよび炎症によって特徴付けられる。乾癬が発症するとき、典型的には皮膚の部分が厚くなり、赤くなり、プラークと呼ばれる銀白色の鱗屑に覆われるようになる。乾癬はひじ、ひざ、頭皮、背中の下部、顔、手のひら、および足の裏に最もよく起こる。この疾患は、指の爪、足の爪、ならびに口および性器の内側の軟部組織も冒し得る。乾癬の人の約10%は、関節炎の症状を生じる関節の炎症を有する。静的医師包括評価(static Physician Global Assessment:sPGA)を用いて患者を評価でき、きれいなもの(clear)から非常に深刻なものまでの6つのカテゴリにわたるカテゴリスコアを受取る。このスコアはプラーク、スケーリングおよび紅斑に基づいている。本明細書の治療方法を用いて、これらの特徴の少なくとも1つの改善を達成できる。
【0174】
慢性関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:“RA”)は、主に関節の痛み、腫れ、凝り、および機能の損失をもたらす慢性の炎症性疾患である。RAは、しばしば滑膜、すなわち保護嚢を生成している関節を囲む膜において始まる。RAに罹患している多くの個体においては、白血球が循環から滑膜に侵入して、継続的な異常炎症(例、滑膜炎)を起こす。その結果、滑膜に炎症が起こり、暖気、赤み、腫れおよび痛みがもたらされる。軟骨中のコラーゲンが徐々に破壊され、関節空間を狭くするために最終的に骨が損傷する。この炎症は患部領域におけるびらん性の骨損傷をもたらす。このプロセスの間に、滑膜の細胞は異常に生育および分裂し、通常は薄い滑膜を厚くするために、結果として関節が腫れ、腫脹性の触感となる。RAはさまざまな臨床的測定値によって評価できる。いくつかの例示的な特徴は、総シャープスコア(total Sharp score:TSS)、シャープびらんスコア、およびHAQ障害指数を含む。本明細書の治療方法を用いて、これらの特徴の少なくとも1つの改善を達成できる。
【0175】
本明細書において用いられる、障害を処置する(例、障害の少なくとも1つの症状を改善する)のに有効なTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の量、または「治療的有効量」とは、対象への単一または複数用量投与の際に、本明細書に記載されるような障害を有する対象の治癒の延長、緩和、軽減、または改善が、こうした処置の不在下に予測されるものよりも有効となるようなTie1外部ドメイン結合剤またはVEGF拮抗薬剤の量を示す。いくつかの場合において、治療的有効量は、結合剤がヌードマウスモデル中の異種移植片の腫瘍サイズを未処置の対照マウスよりも低減させる能力を評価することによって確認できる。本明細書において用いられる、腫瘍またはその他の新生物の「成長を阻害する」とは、その成長および転移を遅らせるか、中断させるか、抑制するか、止めることを示しており、必ずしも新生物の成長の完全な排除を示すものではない。
【0176】
本明細書に記載される抗体の治療的有効量に対する例示的で非限定的な範囲は0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。標的結合抗体は、30、20、10、5、または1mg/min未満の速度で静脈内注入によって投与されて、約1mg/m2から100mg/m2または約5mg/m2から30mg/m2の用量に達してもよい。分子量が抗体よりも小さいTie1外部ドメイン結合剤およびVEGF拮抗薬剤に対しては、適切な量が比例的に小さくなり得る。なお、用量値は緩和されるべき状態のタイプおよび深刻度によって変動してもよい。さらに、あらゆる特定の対象に対する特定の用量計画は、個体の要求、および組成物を投与するかまたはその投与を管理する人物による専門家の判断に従って、時間とともに調整されるべきであり、本明細書に示される用量範囲は単なる例示であって、特許請求される組成物の範囲または実施を制限することは意図されていないことが理解されるべきである。
【0177】
処置され得る対象はヒトおよびヒト以外の動物を含む。たとえば、ヒトとは異常な細胞増殖または細胞分化によって特徴付けられる障害を有するヒトの患者であってもよい。「ヒト以外の動物」という用語は、すべての脊椎動物、たとえば非哺乳動物(たとえばニワトリ、両生類、爬虫類など)および哺乳動物、たとえばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ブタなどを含む。
【0178】
Tie1外部ドメイン結合剤、VEGF拮抗薬剤およびその他の薬剤(例、細胞毒性の化学療法剤)を投与する方法は、「医薬組成物」にも記載されている。用いられる分子の好適な用量は、対象の年齢および重量ならびに使用される特定の薬物に依存する。
【0179】
併用療法
本明細書に開示される処置方法は、以下を含むがそれに限定されない1つまたはそれ以上の付加的な処置様式と組合せて用いられてもよい:手術;放射線療法、および化学療法。
【0180】
本明細書に開示される方法を参照して、「組合せ(併用)(combination)」という用語は、同じ患者を処置するために1つまたはそれ以上の付加的な薬剤または療法を用いることを示し、ここではその薬剤または療法の使用または作用の時間が重複している。付加的な薬剤または療法は、Tie1外部ドメイン結合タンパク質および/またはVEGF拮抗薬剤が投与されるのと同時に投与されてもよいし、あらゆる順番で逐次投与されてもよい。逐次投与とは異なる時間に与えられる投与のことである。1つの薬剤と別の薬剤との投与の間の時間は、数分、数時間、数日、または数週間であってもよい。
【0181】
付加的な薬剤または療法は、別の抗癌剤または抗癌療法であってもよい。抗癌剤の非限定的な例は、たとえば抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、分裂抑制剤、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害できる薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、放射線、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体(裸の(naked)抗体、抗毒素および放射結合体(radioconjugates)を含む)などを含む。特定のクラスの抗癌剤の例は以下に詳細に与えられる:抗チューブリン/抗微小管、例、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、タキソテール;トポイソメラーゼI阻害剤、例、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ドキソルビシン、エトポシド、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、テニポシド、アムサクリン、エピルビシン、メルバロン(merbarone)、塩酸ピロキサントロン;代謝拮抗物質、例、5−フルオロウラシル(5−fluorouracil:5−FU)、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、シタラビン/Ara−C、トリメトレキセート、ゲムシタビン、アシビシン、アラノシン、ピラゾフリン、N−ホスホルアセチル−L−アスパレート(N−Phosphoracetyl−L−Asparate)=PALA、ペントスタチン、5−アザシチジン、5−アザ2’−デオキシシチジン、ara−A、クラドリビン、5−フルオロウリジン、FUDR、チアゾフリン、N−[5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸;アルキル化剤、例、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシンC、BCNU=カルムスチン、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、クロラムブシル、プリカマイシン、ダカルバジン、リン酸イホスファミド、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、ウラシルマスタード、ピポブロマン、4−イポメアノール;他の作用機構を介して作用する薬剤、例、ジヒドロレンペロン、スピロムスチン、およびデシペプチド(desipeptide);生物学的応答変更子、例、抗腫瘍応答を高めるためのもの、たとえばインターフェロンなど;アポトーシス剤、たとえばアクチノマイシンDなど;および抗ホルモン、たとえば抗エストロゲン、たとえばタモキシフェンなど、またはたとえば抗アンドロゲン、たとえば4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオナニリドなど。
【0182】
併用療法は、他の療法の副作用を低減させる薬剤の投与を含んでもよい。その薬剤は、抗癌処置の副作用を低減させる薬剤であってもよい。たとえば、その薬剤はロイコボリン(例、5−フルオロウラシルと組合せる)であってもよい。併用療法は、他の療法の投与の頻度を低減させる薬剤の投与を含んでもよい。その薬剤は、他の療法の抗癌効果が減少した後の腫瘍の成長を減少させる薬剤であってもよい。
【0183】
以下の実施例は限定的なものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0184】
実施例1:例示的なTie1外部ドメイン結合抗体配列
以下は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変ドメインの例示的な配列である:
806C−M0044−B08
【0185】
【化3】
【0186】
【化4】
DX−2220は、全長IgG1生殖細胞系ヒト抗Tie1抗体E3bである。DX−2220の配列は次のとおりである:
【0187】
【化5】
【0188】
【化6】
【0189】
【化7】
実施例2:DX−2240の配列:生殖細胞系FアロタイプE3抗体
DX−2240(軽、重−可変、定常)。
【0190】
【化8】
【0191】
【化9】
軽鎖は任意に以下のシグナル配列をさらに含んでもよい:
【0192】
【化10】
(SEQ ID NO:14)。重鎖は任意に以下のシグナル配列をさらに含んでもよい:
【0193】
【化11】
(SEQ ID NO:15)。
【0194】
実施例3:膵癌異種移植片モデルにおけるTie1外部ドメイン結合タンパク質およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
DX−2240およびベバシズマブ(抗VEGF抗体)またはソラフェニブ(マルチキナーゼ阻害剤)の組合せの抗腫瘍活性を、ヒト腫瘍異種移植片モデルにおいてテストした。皮下BxPC−3腫瘍を有する宿主ヌードマウス(nu/nu)から採取されたBxPC3(ヒト膵癌細胞系)腫瘍断片を、メスのヌードマウス(実験動物)の皮下に移植して腫瘍を形成させた。マウスは腫瘍サイズによってペアマッチングされ、腫瘍が約100mm3に達したとき(腫瘍移植の約18日後)にさまざまな処置グループにランダムに入れられた。これらの動物は表1に示される処置グループに分類された(「開始」は処置を開始した日を示す)。示された投与開始日および投与計画において、DX−2240は20mg/kgでの腹膜内(intraperitoneal:IP)注射によって投与され;ベバシズマブは10mg/kgでのIP注射によって投与され、ソラフェニブは60mg/kg(合計9用量に対して)で経口投与され、対照IgG(パリビズマブ、DX−2240と同じアイソタイプの抗体)は20mg/kgでのIP注射によって投与された。付加的な正の対照グループ(グループ13)が含まれており、これらの動物には合計4用量にわたる40mg/kg Q3dでのゲムシタビンが投与された。
【0195】
【表1】
腫瘍サイズは、カリパスを用いて3日から4日ごとに評価された。結果は図2〜4のグラフにまとめられている。腫瘍体積データ(mm3)を表2に示す。
【0196】
【表2】
単一の薬剤として、DX−2240、ベバシズマブおよびソラフェニブはすべて、対照に比べて腫瘍サイズを低減した。DX−2240の投与後、day10にベバシズマブの投与を開始した結果、腫瘍サイズ低減の相乗的改善がもたらされ、薬物の同じ組合せでベバシズマブの投与をday20に開始しても相乗的改善の傾向が示された。特に、DX−2240およびベバシズマブの逐次投与によって、腫瘍成長の速度が減少したために、10日または20日のDX−2240前処置を有するグループ(すなわちグループ3および4)における安定な腫瘍および退縮の数が対照IgGおよびベバシズマブのグループ(グループ6および7)よりも増加したことが注目された。表3は算出された腫瘍成長速度を示す。
【0197】
【表3】
DX−2240とソラフェニブとの組合せによって腫瘍サイズのわずかな低減がもたらされたが、この効果は対照IgG/ソラフェニブの組合せよりも大きくはなかった。この結果は、ソラフェニブに対するこの腫瘍タイプの過敏性によるものかもしれない。DX−2240とともに投与されるときにいくつかの腫瘍タイプにおいて相乗効果を与えるようなソラフェニブの最適用量が存在することが予期される。
【0198】
実施例4:前立腺癌異種移植片モデルにおけるTie1外部ドメイン結合タンパク質およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
DU145前立腺癌細胞を無胸腺症nu/nuマウスの皮下に注射して腫瘍を形成させた。動物を9〜10匹のマウスのグループに分類し、次いでDX−2240(20mg/kgでのIP注射、Q2d)、アイソタイプ適合抗体の対照(A2、20mg/kgでのIP注射、Q2d)、ベバシズマブ(12mg/kgでのIP注射、Q5d)、DX−2240の20mg/kgのQ2d+ベバシズマブ(DX−2240の20mg/kgのQ2d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の20mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の20mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の10mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の10mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の5mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の5mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240の1mg/kgのQ4d+ベバシズマブ(DX−2240の1mg/kgのQ4d+ベバシズマブの12mg/kg、Q5d、day25に開始)、DX−2240+ソラフェニブ(DX−2240の20mg/kgでのIP注射、Q2d、ソラフェニブの100mg/kgの毎日の経口投与(PO)を9日間(QDx9)、day25および56に開始)、またはA2+ソラフェニブ(A2の20mg/kgでのIP注射、Q2d、ソラフェニブの100mg/kgのPO QDx9、day25および56に開始)で処置した。day34の後、DX−2240のみのグループおよびA2のみのグループのマウスに付加的な薬剤を与えたため、もはやこの実験に対する対照として利用できなくなった。週2回腫瘍体積を測定した。
【0199】
腫瘍体積のデータは図5および図6にまとめられている。図5に示されるとおり、このモデルにおけるDX−2240に続くソラフェニブの逐次投与は、腫瘍成長をかなり減少させ(その結果DX−2240およびソラフェニブの共投与の期間における腫瘍収縮がもたらされた)、この減少はより遅い時点(例、より大きな腫瘍サイズ)において相乗的であることが示された。このモデルはベバシズマブに対して高度に敏感であることが示された(ベバシズマブのみを12mg/kg、Q5dにて投与した結果、腫瘍収縮がもたらされた)ため、Tie1外部ドメイン結合剤(DX−2240)との逐次投与の相乗効果を観察することはできなかった。
【0200】
実施例5:膵癌モデルにおけるDX−2240およびVEGF拮抗薬剤の異なる投与スケジュールの評価
BxPC−3ヒト膵癌モデルにおけるDX−2240のスケジュール依存性の抗腫瘍活性を評価した。DX−2240およびベバシズマブをさまざまなスケジュールで共投与し、ベバシズマブおよび対照IgG(パリビズマブ)で共処置されたグループと活性を比較した。加えて、腫瘍脈管構造の変化およびネズミVEGFのあらゆる潜在的影響をα−マウスVEGF結合抗体を用いて調べた。
【0201】
メスのヌードマウス(nu/nu)を14グループに分けた。グループ1〜12の動物には、ヌードマウス宿主におけるSC成長腫瘍から採取したBxPC3腫瘍断片をトロカールによって皮下に移植した。グループ13〜14のマウスには、組織培養からの約1x107個のBxPC−3細胞を皮下注射した。注射された腫瘍が約104mm3のサイズに成長したとき(移植の約19日後)、および移植された腫瘍が約110mm3のサイズに成長したとき(移植の約22日後)、動物は腫瘍サイズによってペアマッチングされて処置グループおよび対照グループに分けられた。グループ1および2からの動物を用いて腫瘍脈管構造を評価した。グループ13および14からの動物を用いて、細胞注射から形成された腫瘍に対するDX−2240の効果を比較した。
【0202】
動物をペアマッチングした後(day1)に処置を開始した。すべてのグループの動物は重量によって投薬された(10ml/kg)。対照IgGおよびDX−2240はIP注射によって20mg/kgで投与され、ベバシズマブおよびラットα−マウスVEGF IgG抗体はIP注射によって10mg/kgで投与され、投与は3日おきに行なわれた。投与はday−3、1、5、6、10または20に開始された。表4にさまざまな投与スケジュールを示す。
【0203】
【表4】
個体およびグループの平均腫瘍体積をday1からday39まで週2回記録した。各グループに対する平均腫瘍体積を表5に示し、図7にまとめている。
【0204】
【表5】
上記の実施例3に記載される研究の結果と一致して、図8に示されるとおり、この研究においてもDX−2240の投与に続いてベバシズマブの投与をday10またはday20に開始することによって、対照グループに比べて腫瘍サイズ低減の相乗的改善が得られることが示された。図9に示されるとおり、対照IgGまたはDX−2240をday1に、ベバシズマブをday1またはday5に開始した共投与のグループは、腫瘍成長阻害に顕著な差を示さなかった。
【0205】
α−マウスVEGF抗体を加えることによって、DX−2240/ベバシズマブ処置動物(グループ12)における腫瘍成長阻害が減少したが、DX−2240/ベバシズマブの組合せはそれでもなお対照IgG/ベバシズマブの組合せ(グループ11)に比べて腫瘍成長を減少させた。細胞注射によって形成された腫瘍(グループ13および14)は、類似の測定腫瘍体積(約400mm3)において評価された移植腫瘍に比べてDX−2240/ベバシズマブの組合せに対する敏感度が低かった。しかし、注射された腫瘍が体積終点に達したときにこの敏感度の低下が残ったかどうかは明らかでない。
【0206】
腫瘍脈管構造の変化を定めるために、グループ1および2の各々から3匹の動物をランダムに選択して、day5、10、15および20に腫瘍および血清を含む破壊的サンプル収集を行なった。動物には150μLのビオチン化レクチン溶液をIV注射した(day5および15には注射なし)。5分後、動物には心臓内注射によってPBS中の1%パラホルムアルデヒド溶液が3分間灌流された。次いで腫瘍が回収されて灌流溶液中に置かれ、直ちに分析のために送られた。血液は心臓穿刺によって回収され、血清が抽出され、液体窒素中で急速冷凍されて−80℃にて保存された。レクチン染色研究のデータを表6および図10にまとめている。
【0207】
【表6】
DX−2240で処置した動物からの腫瘍は、対照動物からの腫瘍よりも少ないレクチン染色を示した。この結果から、DX−2240処置動物の機能的腫瘍脈管構造が少なくなっていたことが示唆される。
【0208】
実施例6:前立腺腫瘍モデルにおけるDX−2240およびソラフェニブの異なる投与スケジュールの評価
DU145ヒト前立腺腫瘍モデルにおけるDX−2240および対照IgG(パリビズマブ)による処置と比較したときの、さまざまなスケジュールにおけるDX−2240およびソラフェニブによる処置に対する腫瘍成長阻害を評価した。
【0209】
オスのヌードマウス(nu/nu)に、組織培養から採取したDU145細胞を皮下注射した(約1x107個の細胞/マウス)。腫瘍が約95mm3のサイズに成長したとき(注射の約7日後)、動物は腫瘍サイズによってペアマッチングされて処置グループおよび対照グループに分けられた。
【0210】
動物をペアマッチングした後(day1)に処置を開始した。対照グループおよび処置グループの動物は重量によって投薬された(10ml/kg)。DX−2240および対照IgG(パリビズマブ)はIP注射によって、day1から1日おきに17回の処置にわたって投与されるか、またはday1から4日おきに9回の処置にわたって投与された。ソラフェニブは、day15から1日1回、9回の処置にわたって経口的な胃管栄養法によって投与された。対照として供するために、対照IgGはday1から1日おきに17回の処置にわたって投与された。この研究に対する投与濃度およびスケジュールを表7に示す。個体およびグループの平均腫瘍体積をday1からday57まで週2回記録した。その結果を表8に示し、図11にまとめている。
【0211】
DX−2240およびソラフェニブで処置した動物は、対照IgG単独またはDX−2240単独で処置した動物に比べて腫瘍成長の低減を示した。特に、図12に示されるとおり、DX−2240(20mg/kg;Q2Dx17;day1)とソラフェニブ(100mg/kg;QDx9;day15)とを組合せて処置した動物は、対照IgGとソラフェニブとを共投与した動物に比べて、化合物の投与が中止された後も腫瘍成長の顕著な減少を示し続けた。
【0212】
【表7】
【0213】
【表8】
その他の実施形態は以下の請求項の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1日から35日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1、4、6、8、または10日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約2週間前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約10日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約20日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の薬剤の投与は、前記第2の薬剤の前記投与の後、継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の薬剤の投与は、前記第2の薬剤の前記投与の後、中止される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240またはDX−2220である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記VEGF拮抗薬はソラフェニブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記Tie1外部ドメイン結合剤または前記VEGF拮抗薬が、前記血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記Tie1外部ドメイン結合剤または前記VEGF拮抗薬が、前記血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記Tie1外部ドメイン結合剤および前記VEGF拮抗薬の各々が、前記血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記血管新生に関する障害は癌または腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記血管新生に関する障害は前立腺癌または膵癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記対象の腫瘍サイズの変化をモニタリングするステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
放射線療法または化学療法をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
術後補助療法を提供する方法であって、該方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を投与する前に投与するステップを含む、方法。
【請求項21】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の薬剤は、手術から48時間以内に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1日から35日前に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記VEGF拮抗薬はソラフェニブである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる方法であって、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
VEGF拮抗薬を投与されている対象における腫瘍の再増殖を阻害する方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、該VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を該対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記対象の腫瘍成長をモニタリングするステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
対象に化学療法剤または放射線を投与する頻度を減少させる方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項39】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記対象の腫瘍成長をモニタリングするステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、Tie2外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記第2の薬剤は、前記第1の薬剤の前記投与の後に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤と、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤と、請求項1に記載の方法に従って使用するための指示書とを含む、キット。
【請求項1】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1日から35日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1、4、6、8、または10日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約2週間前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約10日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約20日前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の薬剤の投与は、前記第2の薬剤の前記投与の後、継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の薬剤の投与は、前記第2の薬剤の前記投与の後、中止される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Tie1外部ドメイン結合剤は、DX−2240またはDX−2220である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記VEGF拮抗薬はソラフェニブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記Tie1外部ドメイン結合剤または前記VEGF拮抗薬が、前記血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記Tie1外部ドメイン結合剤または前記VEGF拮抗薬が、前記血管新生に関する障害を単独で処置するのに有効な量よりも少ない量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記Tie1外部ドメイン結合剤および前記VEGF拮抗薬の各々が、前記血管新生に関する障害を処置するために相乗的に有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記血管新生に関する障害は癌または腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記血管新生に関する障害は前立腺癌または膵癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記対象の腫瘍サイズの変化をモニタリングするステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
放射線療法または化学療法をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
術後補助療法を提供する方法であって、該方法は、腫瘍を除去するための手術を受けた対象に、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を投与する前に投与するステップを含む、方法。
【請求項21】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の薬剤は、手術から48時間以内に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、VEGF拮抗薬を含む第1の薬剤を、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤の投与の約1日から35日前に投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記VEGF拮抗薬はソラフェニブである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍脈管構造をVEGFの減少に対して感作させる方法であって、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
VEGF拮抗薬を投与されている対象における腫瘍の再増殖を阻害する方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤を、該VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を該対象に投与する前に該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記対象の腫瘍成長をモニタリングするステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
対象に化学療法剤または放射線を投与する頻度を減少させる方法であって、該方法は、Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を該対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項39】
前記Tie1外部ドメイン結合剤はDX−2240である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象の腫瘍脈管構造の変化をモニタリングするステップをさらに含み、腫瘍脈管構造が前記第1の薬剤の前記投与前と比較して何らかの変化を示すときに前記第2の薬剤が投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記対象の腫瘍成長をモニタリングするステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
血管新生に関する障害を処置する方法であって、該方法は、Tie2外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤およびVEGF拮抗薬を含む第2の薬剤を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項43】
前記第2の薬剤は、前記第1の薬剤の前記投与の後に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記VEGF拮抗薬はベバシズマブまたはソラフェニブである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
Tie1外部ドメイン結合剤を含む第1の薬剤と、VEGF拮抗薬を含む第2の薬剤と、請求項1に記載の方法に従って使用するための指示書とを含む、キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−506951(P2010−506951A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533500(P2009−533500)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081621
【国際公開番号】WO2008/048996
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506065987)ダイアックス コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/081621
【国際公開番号】WO2008/048996
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(506065987)ダイアックス コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】
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