説明

連続的重合法

本発明の主題は、ビニルエステル、エチレン及び場合により更なるコモノマーを基礎とするポリマーをその水性ポリマー分散液の形で又は水中に再分散可能なポリマー粉末において、ラジカルにより開始した連続的なエマルション重合及び場合によりこれにより得られたポリマー分散液の乾燥を用いて製造する方法において、エマルション重合を、
少なくとも1の前接続された熱交換器、及び
少なくとも2の相前後して接続した撹拌槽圧力反応器を含むカスケード中で、熱交換器から去る場合の変換率が全重合変換率の少なくとも10%であるように実施することを特徴とする、製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルエステル、エチレン及び場合により更なるコモノマーを基礎とする、保護コロイド安定化されたポリマーを、連続的なエマルション重合及び場合によりこれにより得られた水性ポリマー分散液の乾燥を用いてその水性ポリマー分散液の形で又は水中に再分散可能なポリマー粉末において製造する方法に関する。
【0002】
保護コロイド安定化されたポリマーは、特にその水性分散液又は水中に再分散可能なポリマー粉末の形において種々の適用、例えばコーティング剤又は接着剤として様々な基材のために使用される。保護コロイドとして通常はポリビニルアルコールが使用される。ポリビニルアルコールの使用は努力する価値のあるものであり、というのはこれは低分子量化合物(乳化剤)により安定化されている系に比較して自体で強度(例えばタイル接着剤における付着引張値)に寄与するからである。再分散可能な粉末の製造のためのモノマーとしてこれまで有利にはビニルエステル及びエチレンが使用され、というのはアクリラートコポリマー又はスチレンアクリラートコポリマーの安定化はポリビニルアルコールによって容易には実施されないからである。
【0003】
この分散液の製造は典型的にはバッチ式又はチャージ方法におけるエマルション重合により行われる。この方法様式は、高い柔軟性により優れ、したがって有利には装置中で大きな生成物多様性でもって生じることができる。さらにこの工程様式は、連続的プロセスに比較して方法技術的に顕著により要求が少ない。欠点は、連続プロセスに比較してチャージプロセスの顕著により少ない経済性である。
【0004】
連続プロセスはしたがって、少ない生成物多様性の場合に、高い生産能力を有する装置のための正しい選択である。連続的なエマルション重合での核となる問題は、新規のラテックス粒子の恒久的な核形成のための正しい条件の調節である。所望される装置構成は撹拌槽カスケードであり、というのはこの種の反応器は既にバッチ運転式で使用され、したがって連続的なプロセスのために少ない経済的変更のみをもって使用可能であるからである。通常は、多かれ少なかれ強力に明らかとなる生成物特性及び方法パラメーターの変動が見られ、これは極端な場合には使用可能な生成物を生じないか又は装置の損傷を生じる可能性がある。
【0005】
US−A2703794は乳化剤および場合により水と混合可能な有機溶剤の存在下に酢酸ビニルおよびエチレンを連続的にエマルション重合させるための方法を記載しており、その際、水、乳化剤、モノマーおよび開始剤を同時にかつ連続的に計量供給する。このプロセスは種ラテックスを用いずにただ1つの圧力反応器中で実施される。著しい反応器壁付着および粒度の揺れが欠点である。
【0006】
US−A3551396中には、モノマーおよび水を連続的に循環中に供給することによる、ループ型反応器中で酢酸ビニルホモポリマー分散液を製造するための方法が記載されており、その際、付加的なモノマーおよび開始剤は継続的に配量導入され、かつ生じたポリマーは継続的に反応器から取り出される。この重合は種ラテックスを用いずにただ1つの圧力反応器中で実施される。
【0007】
DE−A2555142には、複数の連続して接続された重合反応器中でエマルション重合法によりエチレン系不飽和モノマーのポリマーを製造するための連続的方法が記載されている。このために第1の反応器に、水、開始剤、一部のモノマーおよび他の助剤からなる予備エマルションを装入し、得られた分散液を第2の反応容器に供給し、次いで、モノマーの残分割合を供給し、かつ最後に、最後の反応容器中で更なる開始剤を付加することにより分散液を完全に重合させる。反応器カスケードの最後に得られるポリマー分散液の冷却のために熱交換器を配置する。
【0008】
DE−A2456576には、モノマー、乳化剤、還元剤および水からなる予備エマルションの製造のための冷却可能な撹拌オートクレーブ、主重合のための反応器および後重合のための管からなる装置構成が記載されている。重合はレドックス開始剤系の存在下に実施され、その際、還元剤が高い過剰で使用され、酸化剤が反応器中に計量供給される。モノマーをその濃度が規定の限界値を上回らないように計量供給する。この方法の欠点は、僅かな装置可動性をもたらす迅速な壁付着物形成である。この原因は殊に、生成物の著しく振幅する特性である。
【0009】
US−A4164489には、同様に連続して供給される種ラテックスを使用することを特徴とする、酢酸ビニル−エチレン分散液の連続的製法が記載されている。欠点は、この種が、この目的のために特別に製造しなければならない独自の生成物(低い粒度、約200nm)であり、その際、望ましくない処方成分、例えば乳化剤が生成物中に連行される。
【0010】
EP−A 1174445及びEP−A 1323752には少なくとも2個の相前後して接続された圧力反応器中における酢酸ビニル−エチレン分散液の連続的な製造方法が記載され、その際この重合はレドックス開始在系を用いて開始され、そして還元成分は少なくとも部分的に第1の圧力反応器に供給される。
【0011】
Petrocelli et. al.(Polym. Sci. Eng., 80, 544)も、種ラテックスの使用下での方法を記載している。この方法でも、微細状の、(粒度約200nm)の乳化剤安定化された分散液が使用される。この種ラテックス法の主旨は、小さいサイズの新規ラテックス粒子の導入であり、これは次いで、重合の過程で所望の粒度に成長する。内部の新規の核形成は種ラテックスにより妨げられるものである。
【0012】
生産能力を高めるための更なる選択肢としては熱交換器とバッチ反応器との組み合わせが文献中に記載されている。この場合にはバッチ反応器及び熱交換器を循環において連結させることが説明され、反応器からの冷却性媒体は熱交換器中に導通され、ここから再度反応器中に導入される。外部熱交換器の更なる冷却力は、重合時間の減少のために利用されることができる。この原理の欠点は、このプロセスを効率的に維持するために、大量の物質量が高い速度で熱交換器を通じて輸送されなくてはならないことである。この輸送工程のために必要なポンプは、この輸送すべき媒体のための、相応する強力なエネルギー負荷及び剪断負荷を有する高出力ポンプである。
【0013】
EP−A 834518には、重合を外部冷却循環を有する反応器中で進行させ、この際、生成物を損なわないために強制的に剪断の乏しいポンプを使用しなくてはならない、不連続的重合方法が記載される。
【0014】
WO−A 03/006510には、外部冷却循環を有する重合反応器中での不連続的重合方法が記載され、この際、生成物を剪断を介して損なわないために重合バッチは剪断の乏しい円柱状の又はループ状の膜ポンプを用いて回路中にポンプする。
【0015】
WO−A 02/59158には、外部冷却循環を有する反応器における重合方法が記載され、この際重合バッチは循環してポンプされ、モノマーの少なくとも部分量が外部循環中に配量導入されなくてはならない。
【0016】
分散されたポリマー粒子を有する大容量のバッチをポンプ輸送しなくてはならない不連続的重合方法での欠点は、このポンプを用いて導入された剪断力のためにコアギュレーションしやすいことである。
【0017】
本発明の課題は、連続的プロセス実施のさいの振動及び外部冷却を用いた方法の高い機械的負荷を回避する、ビニルエステル−エチレン−コポリマー分散液の製造のための経済的におよび技術的に改善されたプロセスを開発することであった。この場合、所望の生成物の製造の際だけでなく、使用の際にも生じうる問題も考慮しなければならなかった。殊に、再分散粉末の主な使用分野であるモルタル特性を改善するためにその再分散粉末の形でポリマーを使用する場合、処方は一定の時間に亙り安定に維持されなければならず、かつその加工コンシステンシーは本質的に変化してはならない(粘度安定性もしくはセメント安定性)。コンクリートおよびモルタル工業ではさらに、機械的特性、例えば耐圧性、多孔性、これにより空孔含有率が重要な役割を果たしている。分散粉末で改良された水硬化性系は加えて、改良されていない系に比べてさらに良好な付着をもたらさなければならない。典型的なバッチ法からより経済的な連続法に移行する場合にも、これらの生成物特性の全てが保証されたままでなければならない。
【0018】
意外なことに、「連続重合」及び「熱交換器を介した外部冷却」の方法様式の組み合わせ、反応器前の熱交換器の配置では、この個々のプロセスのそれぞれの欠点が回避され、高経済性に運転されることができ、所望の特性を有する生成物を提供する方法が得られることができることが見出された。
【0019】
本発明の主題は、ビニルエステル、エチレン及び場合により更なるコモノマーを基礎とするポリマーをその水性ポリマー分散液の形で又は水中に再分散可能なポリマー粉末において、ラジカルにより開始した連続的なエマルション重合及び場合によりこれにより得られたポリマー分散液の乾燥を用いて製造する方法において、エマルション重合を、
a)少なくとも1の前接続された熱交換器、及び
b)少なくとも2の相前後して接続した撹拌槽圧力反応器
を含むカスケード中で、熱交換器から去る場合の変換率が全ポリマー変換率の少なくとも10%であるように実施することを特徴とする、製造方法である。
【0020】
本発明の配置により、純粋な撹拌槽カスケード中での連続的なプロセスの実施の振動の問題が、外部熱交換器の使用のさいの絶え間ない内部循環ポンプを通じた高い剪断負荷と同様に回避される。重合すべき物質混合物は、前接続された熱交換器中を要求される反応率まで進行し、引き続き撹拌槽カスケード中に入る。これは次いで典型的な意味合いにおいて更に駆動される。
【0021】
本発明による装置構成は、さらに、分散液[kg]/(時間[h]×反応器容積[l])で測定して、純粋な撹拌槽カスケード中での公知の連続的な重合に比較して顕著に高められた装置比出力を有する。
【0022】
使用される熱交換器は全ての公知の技術、例えばプレート熱交換器、管型熱交換器、管束型熱交換器、スパイラル熱交換器、スタティック混合機熱交換器を包含することができる。有利には管型熱交換器又は管束型熱交換器である。
【0023】
適した圧力反応器(撹拌槽)及び無加圧反応器(Drucklosreaktor)は相応して寸法決定した鋼反応器であり、これは慣用の撹拌ユニット、加熱系及び冷却系、測定装置及び制御装置、並びに出発材料又は生成物の供給又は排出のための導管を備えていることができる。
【0024】
重合は、少なくとも1の熱交換器及び少なくとも2の相前後して接続した加圧反応器(撹拌槽)を含むカスケード中で実施され、引き続き少なくとも1の無加圧反応器中で更に導通される。1又は複数の熱交換器の後の有利な装置構成は、2個の相前後して接続した加圧反応器及び1又は2個の引き続く無加圧反応器からなる。複数の無加圧反応器が使用される場合には、これは交互に(相並んで)もまた同様に相次いで前後して(直列で)運転されることができる。2より多くの加圧反応器を有するより高度なカスケードが使用できるが、しかしながらこれに関連した強力に上昇する装置の複雑性のために常には所望されない。
【0025】
全体の装置一連(熱交換器及び圧力反応器)中では導入される材料流の合計が流出する材料流の合計と同じであるようにプロセスが実施される。
【0026】
複数の無加圧反応器ではこれは有利には相並んで駆動され、相互に利用される。装置一連中での圧力は、相前後して接続した装置の最初のものから最後のものまでに減少する圧力勾配が生じるように調節され、これは圧力反応器カスケード中での材料流を保証する。最後の圧力反応器からこの後に接続する無加圧反応器中への材料輸送は圧力制御された弁を用いて又はポンプを用いて、この材料流が前接続された圧力反応器中に供給される程度に行われることができる。
【0027】
重合開始前に圧力反応器は、この容積の50〜80%がポリマー分散液で充填され、これはコポリマー組成、保護コロイドの種類及び量並びに粒径及び固形物含有量に関して重合の終生成物に相応する。これは、圧力反応器中にこの分散液がバッチ重合を用いて製造されるように行われるか又は圧力反応器が別個の製造された分散液で充填されるように行われることができる。
【0028】
引き続き熱交換器及び圧力反応器には、エチレン量が加えられ、この結果、熱交換器及び第1の圧力反応器中の圧力p1が有利には30〜80barで、そして最後の圧力反応器中の圧力p2が有利には10〜40barで重合され、但しp1>p2という条件付きである。このエチレン圧力は、相前後して接続された装置の第1のものから最後のものまでに減少する圧力勾配が生じるように制御される。有利には、2個の相前後して接続した装置間の圧力差は2〜40barである。これにより、装置間の圧力差は、連続的重合のさいに材料流のための駆動力として機能する。
【0029】
重合バッチの出発材料は、全部又は部分的に前接続された混合ユニット中で、例えば熱交換器前の予備エマルション反応器中で混合され、引き続き熱交換器並びに場合により圧力反応器に供給されることができる。
【0030】
モノマーは全体として熱交換器を介して計量供給されることができるか、又は、熱交換器及び圧力反応器で分配されることができる。有利には、全質量に対して50〜100質量%、特に70質量%より多くのビニルエステルモノマー及び場合により更なるコモノマーが熱交換器を通じて計量供給され、そして残りが後の圧力反応器中に計量供給されることが提案される。有利にはエチレンは少なくとも50質量%が熱交換器中に装入される。
【0031】
保護コロイドの割合は完全に前もって装入される、即ち前接続された混合ユニット、熱交換器中に装入されることも、また同様に部分的に第1の圧力反応器中に計量供給し、残りを更なる圧力反応器中に計量供給することもできる。有利には少なくとも70質量%の保護コロイドが前もって又は熱交換器中に供給され、特に有利には保護コロイドの割合は完全に前もって又は熱交換器中に供給される。
【0032】
重合を酸化成分及び還元成分からなるレドックス系を用いて開始し、その際この還元成分は有利には完全に熱交換器前で供給され、そして酸化成分は熱交換器前で供給され、そして全ての圧力反応器中に計量供給される。モノマー変換率は開始剤計量供給を用いて制御される。
【0033】
この計量供給は別個に(空間的及び時間的)に実施されるか、又は、計量供給すべき成分は全て又は部分的に予備乳化して計量供給されることができる。
【0034】
開始剤は全部計量供給され、この結果、連続的な重合が保証され、そしてこの重合の変換率は熱交換器からの流出のさいに≧10%、有利には≧15%、特に有利には≧20%である。この残りのモノマー混合物は引き続く撹拌槽カスケード中で所望される変換率まで重合される。有利には第1の圧力反応器中では、10〜20質量%の残留モノマー含有量まで、そして最後の圧力反応器中では≦5質量%の残留モノマー含有量まで重合され、それぞれこのモノマーの全質量に対する。
【0035】
熱交換器中の材料混合物の滞留時間twは、引き続くカスケード中での個々の反応器中での滞留時間tRと類似のオーダーにあり、相応して、必要とされる変換率を達成するための熱交換器の寸法を選択すべきである。有利には、滞留時間twは、0.8tR〜0.4tR、特に有利には0.4tR〜0.2tRにある。反応器系列の始めのみの反応成分の有利な供給は、より少ない全開始剤消費及び分散液フィルムのより良好な機械的特性を生じる。全体として有利には出発材料の計量供給速度は、圧力反応器カスケード中での平均滞留時間が個々の反応器につき全体で60〜180分間が生じるように調節される。
【0036】
圧力反応器中での重合の終了後には残留モノマー除去のために公知の方法を適用して無加圧反応器中で後重合され、一般的にはレドックス触媒により開始された後重合を通じて後重合される。無加圧反応器中ではしたがって、この両方の開始剤成分が最終的な調製のために必要な量で添加される。揮発性残留モノマーは、蒸留によっても、好ましくは減圧下に、及び場合により不活性な連行ガス(Schleppgas)、例えば空気、窒素又は水蒸気を導通するか又は導きながら(Ueberleiten)、除去されることができる。
【0037】
好適なビニルエステルは1〜18個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステルである。有利なビニルエステルは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート及び、9〜11個の炭素原子を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)又はVeoVa10(登録商標)(Hexion社の商品名)である。酢酸ビニルが特に好ましい。前述のビニルエステルは一般的に、モノマーの全質量を基準として、30〜90質量%の量で共重合される。
【0038】
エチレンは一般的に、モノマーの全質量を基準として、1〜40質量%の量で共重合される。
【0039】
他の好適なコモノマーはアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、ビニルハロゲン化物、例えば塩化ビニル、オレフィン、例えばプロピレンの群からのものである。好適なメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは1〜15個のC原子を有する非分枝鎖または分枝鎖のアルコールのエステル、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノルボルニルである。アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが有利である。コモノマーは場合により、モノマーの全質量を基準として、1〜40質量%の量で共重合される。
【0040】
場合により、モノマー混合物の全質量を基準として、更なるモノマー(補助モノマー)0.05〜10質量%がさらに共重合されることができる。補助モノマーの例は、エチレン系不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン系不飽和のカルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、好ましくはアクリルアミド及びアクリロニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル、及びジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸、エチレン系不飽和スルホン酸もしくはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。さらなる例は、前架橋性コモノマー、例えばエチレン系多不飽和コモノマー、例えばジビニルアジパート、ジアリルマレアート、アリルメタクリラート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドのエステル、N−メチロールメタクリルアミドのエステル及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。適しているのは、エポキシド官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリラート及びグリシジルアクリラートでもある。更なる例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−およびメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−シラン、ビニルトリアルコキシシランおよびビニルメチルジアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基として例えば、メトキシ−、エトキシ−およびエトキシプロピレングリコールエーテル基が含有されていてよい。ヒドロキシ−またはCO−基を有するモノマー、例えばメタクリル酸−およびアクリル酸−ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−またはヒドロキシブチルアクリレートまたは−メタクリレートならびに化合物、例えばジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートまたはメタクリレートを挙げることもできる。
【0041】
有利には、酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%とのコモノマー混合物;ならびに
酢酸ビニルとエチレン1〜40質量%およびカルボン酸基中に1〜18個のC原子を有するビニルエステルの群からの1種以上の更なるコモノマー、例えばプロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、9〜11個のC原子を有するα−分枝鎖カルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9、VeoVa10、VeoVa111〜50質量%とのコモノマー混合物;および
酢酸ビニル、エチレン1〜40質量%および有利には、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖または分枝鎖アルコールのアクリル酸エステル、ことにはアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシル1〜60質量%の混合物;および
酢酸ビニル30〜75質量%、ラウリン酸ビニルまたは9〜11個のC原子を有するα−分枝鎖カルボン酸のビニルエステル1〜30質量%ならびに1〜15個のC原子を有する非分枝鎖または分枝鎖アルコールのアクリル酸エステル、ことにはアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシル1〜30質量%を有し、さらにエチレン1〜40質量%を含有する混合物;
ならびに酢酸ビニル、エチレン1〜40質量%および塩化ビニル1〜60質量%を有する混合物が有利であり;その際、
これらの混合物はさらに、前記の量で前記の補助モノマーを含有してよく、かつ質量%での表示はそれぞれ100質量%まで加算される。
【0042】
コモノマーのモノマー選択もしくは質量割合の選択は一般に、−50℃〜+50℃、有利には−20℃〜+30℃のガラス転移温度Tgが生じるように行う。ポリマーのガラス転移温度Tgは公知の方法で、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。TgはFox式によっても近似的に予め算出することができる。Fox T. G.(Bull. Am.Physics Soc. 1, 3, page 123(1956))によると、1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+...+xn/Tgnが当てはまり、この際、xnはモノマーnの質量分(質量%/100)であり、かつTgnはモノマーnのホモポリマーのケルビンでのガラス転移温度である。ホモポリマーのTg値はPolymer Handbook 2nd Edition(J. Wiley & Sons, New York(1975))に記載されている。
【0043】
重合はエマルション重合法により行い、その際、重合温度は一般に40〜100℃、有利には60〜90℃である。重合の開始はエマルション重合で慣用のレドックス開始剤組み合わせを用いて行う。好適な酸化開始剤の例はペルオキソ二硫酸のナトリウム−、カリウム−およびアンモニウム塩、過酸化水素、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ二リン酸カリウム、ペルオキソピバリン酸t−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドおよびアゾビスイソブチロニトリルである。ペルオキソ二硫酸のナトリウム−、カリウム−およびアンモニウム塩ならびに過酸化水素が有利である。前述の開始剤は一般的に、モノマーの全質量を基準として、0.01〜2.0質量%の量で使用される。
【0044】
好適な還元剤はアルカリ金属およびアンモニウムの亜硫酸塩および亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸ナトリウム、スルホキシル酸の誘導体、例えば亜鉛またはアルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシラート、例えばナトリウムヒドロキシメタンスルフィナート(Brueggolit)および(イソ−)アスコルビン酸である。ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネートおよび(イソ−)アスコルビン酸が有利である。還元剤量は有利には、モノマーの全質量に対して0.015〜3質量%である。
【0045】
分子量を調節するために、重合の間に調節性物質を使用することができる。調節剤を使用する場合、これらを通常、重合させるべきモノマーに対して0.01〜5.0質量%の量で使用し、かつ反応成分と別々に、または予め混合して計量供給する。このような物質の例はn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロパノールおよびアセトアルデヒドである。有利には、調節性物質を使用しない。
【0046】
有利には保護コロイドの存在下で重合される。好適な保護コロイドは、部分けん化されたポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアセタール;水溶性の形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体;タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイネート、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシル官能性コモノマー単位とのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びその水溶性コポリマー;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマー;カチオン性ポリマー、例えばポリ−DADMACである。
【0047】
好適な保護コロイドは部分けん化または完全けん化されたポリビニルアルコールである。加水分解度80〜95モル%および4%濃度水溶液でヘプラー粘度1〜30mPas(20℃でのヘプラーによる方法、DIN53015)を有する部分けん化されたポリビニルアルコールが特に有利である。加水分解度80〜95モル%および4質量%濃度の水溶液でヘプラー粘度1〜30mPasを有する部分けん化され、疎水性に変性されたポリビニルアルコールも特に有利である。この例は、酢酸ビニルと疎水性コモノマー、例えば酢酸イソプロペニル、ピバル酸ビニル、ヘキサン酸ビニルエチル、5または9〜11個のC原子を有する飽和α−分枝鎖モノカルボン酸のビニルエステル、ジアルキルマレイナートおよびジアルキルフマラート、例えば、マレイン酸ジイソプロピルおよびフマル酸ジイソプロピル、塩化ビニル、ビニルアルキルエーテル、例えばビニルブチルエーテル、オレフィン、例えばエテンおよびデセンのような疎水性コモノマーとの部分けん化されたコポリマーである。疎水性単位の割合は有利には、部分けん化されたポリビニルアルコールの全質量に対して0.1〜10質量%である。前記のポリビニルアルコールの混合物も使用することができる。
【0048】
他の有利なポリビニルアルコールは、ポリマー類似反応、例えばビニルアルコール単位のC〜C−アルデヒド、例えばブチルアルデヒドとのアセタール化により得られる部分けん化された疎水化ポリビニルアルコールである。疎水性単位の割合は有利には、部分けん化されたポリビニルアルコールの全質量に対して0.1〜10質量%である。加水分解度は80〜95モル%、有利には85〜94モル%であり、ヘプラー粘度(DIN53015、ヘプラーによる方法、4質量%水溶液)は1〜30mPas、有利には2〜25mPasである。
【0049】
加水分解度85〜94モル%および4%水溶液でヘプラー粘度3〜15mPas(20℃でのヘプラーによる方法、DIN53015)を有するポリビニルアルコールが最も有利である。前記の保護コロイドは当業者に公知の方法で入手することができる。
【0050】
ポリビニルアルコールを一般に、モノマーの全質量に対して全部で1〜20質量%の量で、重合の際に添加する。
【0051】
本発明の方法では有利には、乳化剤を添加することなく重合させる。例外的に、場合によりモノマー量に対して1〜10質量%の乳化剤を使用することが有利であることもある。好適な乳化剤はアニオン性、カチオン性、さらに非イオン性乳化剤、例えばアニオン性界面活性剤、例えば8〜18個のC原子の鎖長を有するアルキルスルファート、疎水基中に8〜18個のC原子および40個までのエチレン−またはプロピレンオキシド単位を有するアルキル−またはアルキルアリールエーテルスルファート、8〜18個のC原子を有するアルキル−またはアルキルアリールスルホネート、一価アルコールまたはアルキルフェノールとスルホコハク酸とのエステルおよび半エステルあるいは非イオン界面活性剤、例えばエチレンオキシド単位8〜40個を有するアルキルポリグリコールエーテルまたはアルキルアリールポリグリコールエーテルである。
【0052】
本発明による方法を用いて得ることができる水性分散液は、30〜75質量%、好ましくは50〜60質量%の固形物含量を有する。水中に再分散可能なポリマー粉末の製造のためには、水性分散液は、場合により乾燥助剤としての保護コロイドの添加後に、例えば流動層乾燥、凍結乾燥又は噴霧乾燥により、乾燥される。好ましくは、分散液は噴霧乾燥される。噴霧乾燥はその場合に常用の噴霧乾燥設備中で行われ、その際にスプレーは、一流体ノズル、二流体ノズル又は多流体ノズルを用いて又は回転円板を用いて行われることができる。出口温度は、一般的に45〜120℃、好ましくは60〜90℃の範囲内で、装置、樹脂のTg及び所望の乾燥度に応じて選択する。
【0053】
通例、この乾燥助剤は、分散液のポリマー成分を基準として、3〜30質量%の全量で使用される。すなわち、乾燥装置の上流での保護コロイドの全量がポリマー割合に対して少なくとも3〜30質量%であることが望ましく;ポリマー割合に対して好ましくは5〜20質量%使用することを意味する。
【0054】
好適な乾燥助剤は、部分けん化されたポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアセタール;水溶性の形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体;タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイネート、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシル官能性コモノマー単位とのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びその水溶性コポリマー;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマー;カチオン性ポリマー、例えばポリ−DADMACである。有利には乾燥助剤としてポリビニルアルコールとして更なる保護コロイドが使用されない。
【0055】
ノズル噴霧の際に、しばしば、基本ポリマーを基準として、1.5質量%までの含量の消泡剤が好都合であることが判明している。ブロッキング安定性の改善による貯蔵可能性の向上のために、特に低いガラス転移温度を有する粉末の場合には、得られる粉末にブロッキング防止剤(凝結防止剤)を、ポリマー成分の全質量に対して好ましくは30質量%まで備えてよい。ブロッキング防止剤の例は、好ましくは10nm〜10μmの範囲内の粒度を有する炭酸Caもしくは炭酸Mg、タルク、石膏、ケイ酸、カオリン、メタカオリン、ケイ酸塩である。
【0056】
噴霧されるべき原料の粘度は、その固形物含有率を介して、<500mPasの値(20回転及び23℃でのブルックフィールド粘度)、好ましくは<250mPasが得られるように調節する。噴霧されるべき分散液の固形物含有率は、>35%、好ましくは>40%である。
【0057】
適用技術的特性を改善するために噴霧の際に、更なる添加物を添加することができる。有利な実施形態で含有される分散粉末組成物の更なる成分は例えば、顔料、充填剤、泡安定剤、疎水化剤である。
【0058】
水性ポリマー分散液および水中に再分散可能な保護コロイド安定化ポリマー粉末は、これらのために典型的な適用分野で使用することができる。例えば、場合により水硬化性結合剤、例えばセメント(ポルトランド−、アルミネート−、トラッス−、スラグ−、マグネシア−、ホスフェートセメント)、石膏および水ガラスと組み合わせて、例えば建築化学製品で、構造接着剤、殊にタイル用接着剤および完全熱保護接着剤(Vollwaermeschutzkleber)、プラスター、サーフェーサー、床用サーフェーサー、レベリング材(Verlaufsmassen)、シーリングスラリー、目地用モルタルおよび着色剤の製造のためである。さらにコーティング剤および接着剤のための結合剤として、またはテキスタイルおよび紙のためのコーティング剤もしくは結合剤としてである。
【0059】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために用いられるものである:
図1は、前接続された混合ユニットVEを予備エマルションの製造のために、管型熱交換器R1及び2個の撹拌槽圧力反応器R2及びR3並びに無加圧反応器R4を残留モノマー除去のために含有する反応器系を示す。実施例及び比較例においてはこの装置が次に説明するように寸法規定されている。熱交換器は、全体の管の長さ84m及び管の内径9mmを有する管型熱交換器であった;この熱交換器の体積はしたがって約5リットルであった。この両方の撹拌槽圧力反応器はそれぞれ約18リットルの体積、撹拌機及び冷却可能なジャケットを有した。全ての装置は80barまでの使用可能な圧力範囲に設計されていた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、前接続された混合ユニットVEを予備エマルションの製造のために、管型熱交換器R1及び2個の撹拌槽圧力反応器R2及びR3並びに無加圧反応器R4を残留モノマー除去のために含有する反応器系を示す図である。
【0061】
実施例:
予備エマルション反応器VE中で、88モル%の加水分解度及び4mPasのヘップラーによる粘度を有する20質量%のポリビニルアルコール溶液74kg、水98kgからなる水槽、並びに、酢酸ビニル182kg及びエチレン50kgからなる有機相を混合した。このpH値をギ酸50gを用いて4.0に調節し、Brueggolit230g並びに鉄アンモニウムスルファート20gを添加した。この混合物を65℃に加熱した。
【0062】
それぞれ18lの体積を有する反応器R2及びR3中に、酢酸ビニル83質量%、エチレン17質量%を有し、88モル%の加水分解度を有する、4mPasのヘップラーの粘度を有するポリビニルアルコール7質量%(コポリマーに対して)で安定化されている、酢酸ビニル−エチレン−コポリマーの水性分散液それぞれ15kgを装入した。貯蔵容器VEから、反応器系中に12kg/hの流速でこの均質化した混合物を送り込んだ。このためにこの混合物を、管型熱交換器R1中に導入し、この熱交換器を去った後に反応器R2中に導入し、そしてここから反応器R3中に導入した。反応器R3の後でこの分散液を圧力反応器R4中で放圧し、過剰なエチレンを分離した。
【0063】
管型熱交換器中へこの混合物が入る前に、開始剤カリウムペルスルファート(3質量%の水溶液)を、速度80g/hでの更なる計量供給を介して供給した。
【0064】
反応器R2中には、100kg/hのカリウムペルスルファート(3質量%の水溶液)を計量供給した。反応器R3中には、180kg/hのカリウムペルスルファート(3質量%の水溶液)を計量供給した。
【0065】
完成した分散液をポンプを用いて圧力反応器R3から無加圧反応器R4へと輸送し、ここで分散液10kgにつき50mlのt−ブチルヒドロペルオキシド(10質量%水溶液)及び50mlのBrueggolit(10質量%水溶液)を用いて後重合した。
【0066】
重合変換率はこの熱交換器を去るさいに約25%であり、反応器R2又はR3を去るさいに65%又は92%であった。重合を80時間にわたり実施した。
【0067】
固形物含有量53.1%、粘度160mPas(ブルックフィールド20、23℃で)、pH3.4、Tg−6℃及び粒径Dw1240nmを有する分散液を得た。この粒径分布は実験の期間にわたり安定であった。壁付着物形成は観察されなかった。
【0068】
250μmを超えるふるいでのふるい残留物は270ppm(mg/kg)であった。このK値は124であった。この自由な残留モノマーは<430ppmであった。この分散液はセメント中で安定であった。
【0069】
比較例:
EP−A 1174445の実施例1に応じた連続的重合を実施した。
【0070】
固形物含有量50.7%、粘度90mPas(ブルックフィールド20、23℃で)、pH3.8、Tg約−6℃及び粒径Dw1350nmを有する分散液を得た。この粒径分布は実験の期間にわたり安定であった。壁付着物形成は観察されなかった。
【0071】
250μmを超えるふるいでのふるい残留物は380ppm(mg/kg)であった。このK値は105であった。この自由な残留モノマーは<390ppmであった。この分散液はセメント中で安定であった。
【0072】
K値を介した分子量の比較:
K値をDIN EN ISO 1628−2に準拠して測定した。
【表1】

【0073】
不溶性割合の比較:
分散液から約300μm(乾燥)の層厚を有するフィルムを製造した。乾燥フィルムから約1g(正味重量A)の塊を酢酸エチル50ml中に溶解する。この溶液を6時間沸騰するまで加熱し、再度冷却する。この溶液から不溶性成分を濾別し、引き続き溶媒を蒸留により除去する。残留物(計量B)は、溶解性割合であり、重量分析により測定した。%における不溶性割合は、(A−B)/A×100から生じる。
【0074】
【表2】

【0075】
議論:
結果からは、本発明による方法によりより高い線形の分子量(K値)及びより少ない割合の架橋した、即ち、不溶性ポリマーが得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル、エチレン及び場合により更なるコモノマーを基礎とするポリマーを、その水性ポリマー分散液の形で又は水中に再分散可能なポリマー粉末で、ラジカルにより開始した連続的なエマルション重合及び場合によりこれにより得られたポリマー分散液の乾燥を用いて製造する方法において、エマルション重合を、
a)少なくとも1の前接続された熱交換器、及び
b)少なくとも2の相前後して接続した撹拌槽圧力反応器を含むカスケード中で実施し、熱交換器から去る際の変換率が全重合変換率の少なくとも10%であることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
熱交換器中での滞留時間twが0.8〜0.2反応器の滞留時間tRであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
重合開始前に圧力反応器はこの容積の50〜80%がポリマー分散液で充填され、これはコポリマー組成、保護コロイドの種類及び量並びに粒径及び固形物含有量に関して重合の終生成物に相応することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
重合バッチの出発材料を完全に又は部分的に前接続した混合ユニット中で混合し、引き続き熱交換器中に供給することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
圧力反応器に、熱交換器及び第1の圧力反応器中で30〜80barの圧力で、そして最後の圧力反応器中で10〜40barの圧力で重合するような量のエチレンを加え、かつ、このエチレンの圧力を制御して、第1から最後の相前後して接続した圧力反応器に減少する圧力勾配が生じることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
全質量に対して、ビニルエステルモノマー及び場合によりエチレンを除く更なるコモノマーの50〜100質量%を熱交換器中に計量供給し、この残りを後続の圧力反応器中に計量供給し、そしてエチレンを少なくとも50質量%熱交換器中に装入することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
保護コロイドの少なくとも70質量%を熱交換器前で又は熱交換器中に装入することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
開始剤を計量供給し、重合を、モノマーの全質量に対してそれぞれ、第1の圧力反応器中で≦20質量%の残留モノマー含有量まで、そして最後の圧力反応器中で≦5質量%の残留モノマー含有量まで実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
全部で60〜180分間の圧力反応器カスケード中の平均滞留時間で重合することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ガラス転移温度Tg−20℃〜+30℃を有するポリマーを製造することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
これにより得られる水性分散液を、場合により噴霧化助剤としての更なる保護コロイドの添加後に、噴霧乾燥を用いて乾燥することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1の前接続された熱交換器及び少なくとも2の相前後して接続した撹拌槽圧力反応器を含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法の実施のための装置。
【請求項13】
熱交換器に混合ユニットが前接続されていて、かつ、場合により撹拌槽圧力反応器後に無加圧反応器が配置されていることを特徴とする、請求項12記載の装置。
【請求項14】
熱交換器が管型熱交換器であることを特徴とする、請求項12又は13記載の装置。
【請求項15】
構造接着剤、プラスター、サーフェーサー、床用サーフェーサー、レベリング材料、シーリングスラリー、目地用モルタル及び着色剤における、場合により無機の水硬性結合剤と組み合わせた、処方成分としての請求項1から11までのいずれか1項記載の方法生成物の使用。
【請求項16】
コーティング剤及び接着剤のための結合剤としての請求項1から11までのいずれか1項記載の方法生成物の使用。
【請求項17】
テキスタイル及び紙のためのコーティング剤及び結合剤としての請求項1から11までのいずれか1項記載の方法生成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535924(P2010−535924A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520549(P2010−520549)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060502
【国際公開番号】WO2009/021930
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】