説明

連続脱気貯留式水処理装置

【課題】真空脱気装置におけるポンプの吸込側に発生する真空損失水頭と、ポンプの内部に発生するキャビテイション損失に起因する装置の大型化と、使用する水ポンプに要求される仕様の過大強化を解消する。
【解決手段】共通の真空脱気機構と、共通の水ポンプと、個別の脱気機構を備えた脱気処理タンクと脱気貯留タンクとを連動して脱気処理時間を短縮し、それぞれのタンク水面に複数の小球からなる遮断層を浮遊させて気相と液相とを遮断し、配水に際してタンク内を大気圧に戻す手段により、常時、普通ポンプの利用可能な装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純物理的手段により水溶液中の揮発性気体を脱気し、その脱気状態を維持したまま貯留又は送水することを可能にする、連続脱気貯留式水処理装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、化学工場、一般産業工場、その他食品工場等から脱気水、つまり、水から揮発性ガスを脱気し、溶存ガスのない、特に溶存酸素の少ない水の供給についての要求が急増している。これをトン数の面から分類すると、その要求規模別は、毎時(2t〜10t),(11t〜50t),(100t〜500t)のように、ユーテリゼイシヨンの利用面は多岐にわたり、特に工場のプロセスラインからの要求は、100t/h量以上の要求が多く、大容量処理の可能な脱気装置と脱気後の脱気状態を継続して維持し、連続供給に応えるシステム装置の要望が増加している。
【0003】
しかし、上述のように、水から揮発性ガスを脱気することについての要望は古くからあったが、一般的に水に溶解しているガスには窒素、酸素、炭酸ガスその他塩素等が溶解しているに過ぎないものの、実際には脱気技術的対応の困難さから、その要求は未だ容易に満たされているとは言えない。
【0004】
例えば、従来より、大量の水を脱気処理する工場等では、中空糸膜脱気処理の装置が使用されているが、この場合、中空糸膜を通過する酸素により水中の不純物が酸化され、微細な膜目を詰まらせるために、膜モジュールの交換頻度が多くなる不利益性がり、そのための費用の膨張に加え、不要になった交換膜モジュールの膨大なゴミの処理について、環境保全の面からも問題を生じている。
【0005】
また、酒をタンクローリに詰め、窒素等の不活性ガスを封入して輸送する化学的処置では、酒の味に影響を及ぼす等の不利益性も生じている。さらに、ボイラー給水の前処理として、水中に不活性ガスを注入する方法はよく知られているが、この方法では、その時点の水温と気圧に依存して水中の溶存酸素量が変化するため、適量な窒素量を的確に把握して注入処理する監視管理にHACCP上の問題点が指摘されている。
【0006】
また、真空状態に減圧したタンク内の水溶液から揮発性のガスを脱気処理し、その他の未電解金属塩を振動電磁界によりイオン解離させる処理と組合せ、ミネラル成分を非附着性物質として、析出除去する手段も特許文献1〜7等により知られている。
【0007】
【特許文献1】特公平2−11319号公報
【特許文献2】特公平2−12640号公報
【特許文献3】特公平6−38959号公報
【特許文献4】特開平9−299709号公報
【特許文献5】特開2000−325702号公報
【特許文献6】特開2001−246363号公報
【特許文献7】特開2003−181447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来における溶存酸素の脱気方法としては、中空糸膜脱気、或いは、窒素ガス封注入方式、その他ヒドラジン等の薬物処理等の方法があるが、薬物処理の実状は、PRTR法、又はHACCPの面からも常時監視して、その都度適切な処置を講ずる必要が重要事項であり、また、膜脱気方式でも、膜の交換費用と不要になった膜廃棄物のゴミ処理費用、更に薬物の廃水処理と、その管理費用等、何れもトータルコストアップの面に課題が生じ、環境整備の進展を阻んでいる。
【0009】
また、上記の特許文献に示されるような、真空脱気方式では、薬物を使用する脱気方式とは違って衛生面の問題はないが、生活給水の水処理、ビル建物等の維持管理等では、水中の溶存酸素が大気圧と水温との関係、あるいは季節によって変化するので、その違いに的確に対応して管理することは困難で難しいという問題がある。
【0010】
さらに、真空負圧にした状態のタンクの内部から、脱気状態を維持しながらその脱気水を取り出すときには、ポンプの吸い込み側に真空による大きな損失水頭があるために、その損失水頭に見合う水頭分だけ、タンクを持ち上げないとポンプは吸い込むことができないため、水タンクを高所に配置する等の、装置全体の構成に大きなスペースを必要とするという問題点があった。
【0011】
そのうえ、真空負荷がポンプ内に造るキャビテイションに起因する損失を補うため、標準より大型の高揚程ポンプの選定を必要とする等の問題があるため、ポンプを選定するうえで適正なポンプを見つけるのがなかなか困難で、大量水の処理に困難性を生ずることから、それらの問題を解決して、小型から大型まで手軽に適応できるような経済的価値のある装置の出現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような従来における溶存酸素の脱気方法の問題点に鑑み、薬注処理や中空糸膜などの濾過膜、あるいは不活性ガスその他薬品等などを使用することなく、ごく一般的なポンプを用いて効果的に小型装置から大容量装置にいたるまでの脱気を可能にする装置の提供を目的としたものである。
【0013】
本発明に係る連続脱気貯留式水処理装置は、そのための具体的手段として、タンク内に貯留された処理水の水面に、複数の小球を積層状に浮遊させた遮断層を設け、前記タンク内を真空負圧状態とし、同タンク内へ所定量の処理水を噴射脱気処理を与えながら給水し、処理水の水面に浮遊させた前記小球遮断層により気相と液相との接触を遮断して、脱気処理された水の脱気状態を維持し、かつ、同タンク内に所定量の脱気処理水が貯留されると、前記タンク内に大気が導入されることで、水面上に浮遊させた小球遮断層が、タンク内処理水の水面へ空気中の酸素が混入することを防止しつつ、ポンプの吸込み側に真空損失水頭を生ずることなしに、前記脱気処理水のタンク外への移送を容易にすることを特徴としている。
【0014】
水を脱気処理するタンクは、原水タンクから給水される処理水を吸引して噴射する噴射装置と、脱気処理タンク内における気相と液相とを遮断するための、水面に浮かべた複数の小球の積層からなる遮断層とを備える1次側脱気処理タンクと、この1次側脱気処理タンクと連動するように組み合わされて、前記処理タンク内で処理された水を送り込んで、ユーザーに配水されるまでの間、処理水の脱気状態を維持しながら貯留する同構造の2次側真空脱気貯留タンクとにより構成されることが好ましい。
【0015】
前記の処理タンクと貯留タンクとの間には、原水タンクから処理水を処理タンク内へ圧送し、あるいは処理タンク内で脱気した処理水を貯留タンクへ送り込むための送水ポンプと、両タンク内を負圧にするための真空ポンプとを備え、さらに、前記送水ポンプの吸引側に給水と循環のポートを備える1次側方向切替弁と、送水ポンプの吐出側には循環と送水のポートを備える2次側切替弁とを備えている。
【0016】
さらに、作業工程で脱気を必要とする工程時には各タンク内を真空状態とし、脱気を完了し送水を必要とする工程時には各タンク内を大気圧状態に瞬時に切替えるための、水位計と連動して作動する締切電磁弁と圧力制御弁をそれぞれのタンクに備えており、処理タンク内の脱気水を貯留タンク内へ送水するために、2次側方向切替弁の送水ポートと貯留タンクの噴射装置とが配管により接続されていることを特徴としている。
【0017】
1次側脱気処理タンク内を所定の真空負圧状態として、同タンク内に噴射脱気処理を伴って給水される原水の設定量が満たされると、水位計と連動する圧力制御弁の作動により処理タンク内が大気圧に戻され、水面に積層状に浮遊させた複数の小球からなる遮断層が緊密に気相と液相とを遮断して水面を加圧することで、処理タンクから貯留タンクへ脱気水を容易に移送させ、さらに、貯留タンクから配水する場合にも、同タンク内を大気圧に戻し、水面に浮遊させた小球の遮断層により気相と液相を遮断して、脱気水に脱気状態を維持しつつユーザへ大気圧下での送水を可能ならしめることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の脱気装置では、高真空に減圧されたタンク内に貯留する脱気水の表面に、複数の浮遊小球による遮断層を配置して、気相と液相との接触を遮断するため、タンク内が所定の設定水位に到達するまでの給水脱気時の間、これらの積層状に浮遊させた小球遮断層が、その各小球の下方の水面部で気体と液体とを遮断して気体の再溶解を防止し、脱気処理された処理水の性能を適正に維持向上させることができる。
【0019】
一方、タンク内が真空状態の時、脱気水の表面に浮遊させた小球遮断層は、水面に拘束されにくく、ルーズに浮いた状態で気体と液体とを遮断しているので、気体より重い脱気水は各小球間の隙間を通過してタンク内下方へ貯留されやすく、かつ、水中に含まれる揮発性気体の気化を自由にして、真空ポンプにより排気されやすい状態とする。
【0020】
また、本発明では、1次側脱気処理タンク及び2次側脱気貯留タンク内で脱気処理された水を、タンク外へ送水又は配水することが必要である旨の信号を圧力制御弁が受信すると、瞬時にタンク内へ大気が導入されて、タンク内の水面が大気で加圧され、水面に積層状に浮遊していた小球遮断層を緊密に水面へ圧着する。また、小球遮断層が、既に脱気処理を済ませていたタンク内処理水の水面へ空気中の酸素が混入することを防止するとともに、タンク内の水面が大気で加圧されることにより、送水または配水でポンプの吸い込み側に真空損失水頭を生じさせずに、脱気水のタンク外への移送を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明が実施されるための最良な形態としては、水を脱気処理するタンクが、原水タンクから給水される処理水を吸引して噴射する噴射装置と、脱気処理タンク内における気相と液相とを遮断するための、水面に浮かべた複数の小球の積層からなる遮断層とを備える1次側真空脱気処理タンクと、この1次側真空脱気処理タンクと連動するように組み合わされて、前記タンク内で処理された水を送り込んで、ユーザーに配水されるまでの間、処理水の脱気状態を維持しながら貯留する同構造の2次側脱気貯留タンクとにより構成されることが好ましい。
【0022】
また、処理タンク内の水面上に浮かべる複数の小球の積層からなる遮断層としては、ポリプロピレン製の中空の小球を用いることが好ましい。
【実施例】
【0023】
本発明に係る連続脱気貯留式水処理装置の好適な実施形態を図面に基づいて説明すると、この装置は、原水タンク10から供給される処理水を脱気処理するための1次側脱気処理タンク7と、1次側脱気処理タンク7で脱気された処理水を送り込んで、ユーザーに配水されるまでの間、処理水の脱気状態を維持しながら貯留するための同構造の2次側脱気貯留タンク17とにより基本的に構成される。
【0024】
前記1次側脱気処理タンク7の上端内側には、噴射ノズル8aを備えた噴射装置8、上端外側には圧力計を内蔵した圧力制御弁15、側面外部にはタンク7内が所定の水位に達した時と、水位が最低になった時とを電気信号として取出す電極式水位計9をそれぞれ備え、このタンク7内に送られる処理水の水面には、直径1〜4cm程度の、複数のポリプロピレン製の中空状小球25aを積層状に浮遊させた遮断層25が設けられている。
【0025】
また、前記2次側脱気貯留タンク17は、前記1次側脱気処理タンク7と隣接して配置される同じ構造のものであり、タンク17の上端内側に噴射ノズル18aを備えた噴射装置18、上端外側には圧力計を内蔵した圧力制御弁22、側面外部にはタンク17内が所定の水位に達した時と、水位が最低になった時とを電気信号として取出す電極式水位計19をそれぞれ備え、この貯留タンク17内に送られる処理水の水面には、前記処理タンク7の場合と同様に、複数のポリプロピレンなどの中空状小球25aを積層状に浮遊させた遮断層25が浮設されている。
【0026】
前記両タンク7,17の外側上方には、両タンク内を真空負圧にするための真空ポンプ12が配置されていて、1次側脱気処理タンク7の天板7aと前記真空ポンプ12との間には、締切電磁弁13を備えた排気管路14が接続されており、同様に2次側脱気貯留タンク17の天板17aと前記真空ポンプ12との間には、締切電磁弁20を備えた排気管路21が接続されている。
【0027】
1次側脱気処理タンク7の外側下方には、原水タンク10から供給される処理水を処理タンク7内へ送り込んで脱気処理したり、この処理タンク7内で脱気処理された水を2次側脱気貯留タンク17内へ送り込むための給水ポンプ1が配置されていて、この給水ポンプ1の1次側脱気処理タンク7側には、管路2aを介して1次側方向切替弁3が接続され、また、給水ポンプ1の2次側脱気貯留タンク17側には、管路2bを介して2次側方向切替弁5が接続されている。一方、2次側脱気貯留タンク17の外側下方には、ユーザー向けポンプ24がタンク底板17bと管路23を介して接続されている。
【0028】
前記1次側方向切替弁3の給水ポート3bは、原水タンク10と管路11により接続され、同じく1次側方向切替弁3の循環ポート3aは、前記処理タンク7の底板7bと管路4を介して接続されている。一方、2次側方向切替弁5の循環ポート5aは、1次側脱気処理タンク7内の上方に設けられた噴射装置8と管路6を介して接続され、この2次側方向切替弁5の送水ポート5bは、2次側脱気貯留タンク17内の上方に設けられた噴射装置18と管路16を介して接続されている。
【0029】
上記の構成において、真空ポート12を作動して、1次側脱気処理タンク7と2次側脱気貯留タンク17内が所定の真空圧に達すると、1次側方向切替弁3の原水タンク10に通ずる1次側方向切替弁3の給水ポート3bと、2次側方向切替弁5の循環ポート5aが同時に開き、送水ポンプ1が作動して、原水タンク10から処理水が管路11を通って送水ポンプ1の方向へ送り出される。
【0030】
その時、処理タンク7内は、処理水が貯留されていないので、このタンク7内に配置した複数の小球25aからなる遮断層25は、図に示したような中間部にではなく、タンク底板7bに接した最も低い25Aの位置に沈んでいる。また、1次側方向切替弁3は、給水ポート3bが開くことで循環ポート3aが閉じられるので、管路11から送られる処理水は、送水ポンプ1の方向へ送られる。
【0031】
また、2次側方向切替弁5は、循環ポート5aが開いて、送水ポート5bが閉じられるので、送水ポンプ1から送られる処理水は、管路6を通って1次側脱気処理タンク7内の上方に配置された噴射装置8へ送られ、噴射ノズル8aから処理タンク7内の内壁面に向けて噴射される。
【0032】
前記のように、1次側脱気処理タンク7内は、真空ポンプ12により減圧された負圧環境にあるため、噴射ノズル8aから高圧水が噴射されると、水中の揮発性ガスは瞬時に膨張して、噴射水の中で気泡となってタンク側壁面に衝突するため、気泡が圧縮されて押し潰され破壊される。その時、気泡内は高温になって気化が進み、水から分離して真空ポンプ12によってタンク外へ排出され、脱気処理が進行する。
【0033】
一方、気体を分離した水は、小球の遮断層25の下にもぐり込み、脱気水となって処理タンク7内に一時貯留される。この遮断層25は、複数の小球25aが水面に隙間なく寄り集まって浮遊し、形状が自由に変形する構成体なので、水面に拘束されにくく、ルーズに浮いた状態で気体と液体とを遮断することになるので、気体より重い脱気水は、各小球間の隙間を通過してタンク7内下方へ貯留されやすく、かつ、水中に含まれる揮発性気体の気化を自由にして、真空ポンプ12により排気されやすい状態をつくることができる。
【0034】
上記のようにして、1次側脱気処理タンク7内に、図で示したような、タンク容量のほぼ1/2程度のような水位25Bまで処理水が貯留されると、水位計9がその水位を検知し、真空ポンプ12に通ずる管路14の締切電磁弁13を閉じて、処理タンク7内の真空排気を遮断し、同時に処理タンク7の外部上方に設けた圧力制御弁15が開いて、設定した圧力までになるまで空気を処理タンク7内へ導入する。
【0035】
また、処理タンク7内の処理水が所定の水位25Bに達すると、水位計9の検知により、1次側方向切替弁3の給水ポート3bが閉じて循環ポート3aが開き、さらに、2次側方向電磁弁5の循環ポート5aが閉じられて、2次側脱気貯留タンク17に通ずる送水ポート5bが開かれる。そのため、1次側脱気処理タンク17内の脱気された処理水が、管路16を通って処理タンク17の噴射装置18へ送られることになる。
【0036】
処理タンク7内で脱気された処理水が、貯留タンク17内へ送水される時、処理タンク7内は大気圧に戻っているので、水面に浮遊して敷き詰められている多数の小球からなるる遮断層25は、大気圧を受けて水面に密着して、脱気処理された水と大気の接触を遮断し、大気中のガスが、脱気された処理水中に再び混入することを的確に防止する。また、処理タンク7内の処理水は、気相と液相とが遮断された状態で大気圧を受けるため、送水ポンプ1の吸引側に真空損失水頭を生ずることなく、貯留タンク17内へ円滑に送水することができる。
【0037】
貯留タンク17へ送水された水は、噴射装置18の噴射ノズル18aからタンク内側壁へ高圧噴射されることで、側壁面に衝突して圧縮され、残余の気体が分離されて良好な脱気水となり、水面に浮遊する小球遮断層25の間を通り抜けて、貯留タンク17内へ円滑に貯留される。
【0038】
このようにして、処理タンク7内の水が貯留タンク17内へ送られることで、処理タンク7内の水が所定の最低設定水位25Aに低下すると、水位計9が作動し、圧力制御弁15を閉じて大気の導入を遮断し、同時に締切電磁弁13を開いて真空引きを開始する。このようにして、圧力制御弁15の示す所定の真空圧に達すると、1次側方向切替弁3の循環ポート3aが閉じて、給水ポート3bが開き、同時に2次側方向切替弁5の循環ポート5aが開いて送水ポート5bが閉じることで、再び処理タンク7内での給水と脱気が開始される。
【0039】
一方、前記と同じ工程で、処理タンク7内の水が貯留タンク17内へ送られることで、貯留タンク17内の水が所定の水位25Dに達すると、水位計19がこの水位を検知して送水ポンプ1を停止し、貯留タンク17のオーバーフローを回避する。なお、この状態で、ユーザーポンプ24が起動されると、これと連動する圧力制御弁22が開いて、締切電磁弁20が閉じるため、貯留タンク17内は所定の大気圧となり、水面に浮遊する小球25aが大気圧を受けて水面へ密着することで大気を遮断し、脱気水は脱気状態を維持しながら配水される。
【0040】
上記のように、ユーザーポンプ24の起動により、貯留タンク17内の水が外部へ配水されている工程で、ユーザーポンプ24が停止すると、このポンプ24からの信号により圧力制御弁22が閉じられて、締切電磁弁20が開き、真空ポンプ12による真空引きにより貯留タンク17内が所定の真空圧となって、送水ポンプ1が運転を開始し、送水中の場合であれば、送水が再開されて、貯留タンクの設定水位25Dに達するまで、送水は継続される。そして遮断層25で覆われた設定水位25Dが水位計19により検知されると、処理タンク7側の圧力制御弁15が閉じられ、締切電磁弁13を開いて処理タンク7内を設定真空圧負圧に戻し、初期の給水工程に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の真空脱気装置は、気相と液相とを遮断する手段として、複数の小球を水面上に浮遊させるので、きわめて安価な費用で気相と液相との遮断を実現でき、しかも、これらの小球は真空中の水面にルーズに浮いた状態で遮断できるので、気体より重い脱気水を、これら小球間を通過して脱気状態で貯留できるという利点、また、小球層の上部空間を大気圧に戻すと、気圧により複数の小球が水面に密着して、気相との遮断が確実に得られるという利点、さらに、送水に際してタンク内を大気圧に戻すと、送水ポンプの吸引側に発生する真空損失水頭をなくすことができるので、在来の脱気装置のように、真空損失水頭分だけタンクを高く持ち上げたり、高性能のポンプを使用することによる設備費の無駄を解消できるので、きわめて利用性の高い装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る処理装置の好適な実施例の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1:送水ポンプ、
2a、2b:管路、
3:1次側方向切替弁、
3a:給水ポート、
3b:循環ポート、
4:管路、
5:二次側方向切替弁、
5a:循環ポート、
5b:送水ポート、
6:管路、
7:1次側脱気処理タンク、
7a:タンク天板、
7b:タンク底板、
8、18:噴射装置、
9、19:電極式水位計、
10:原水ポンプ、
11:管路、
12:真空ポンプ、
13、20:締切電磁弁、
14、21:排気管路、
15、22:圧力制御弁、
16:管路、
17:2次側脱気貯留タンク、
17a:タンク天板、
17b:タンク底板、
19:電極式水位計、
23:管路、
24:ユーザー向けポンプ、
25:小球遮断層、
25a:小球、
25A:処理タンク内最低水位と小球遮断層の位置、
25B:処理タンク内所定位置と小球遮断層の位置、
25C:貯留タンク内最低水位と小球遮断層の位置、
25D:貯留タンク内所定位置と小球遮断層の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に貯留された処理水の水面に、水に浮かぶ複数の小球の積層からなる遮断層を浮遊させて、前記タンク内を真空負圧状態とし、同タンク内へ所定量の処理水を噴射脱気処理を与えながら給水し、処理水の水面に浮遊させた前記小球遮断層により気相と液相との接触を遮断して、脱気処理された水の脱気状態を維持し、かつ、同タンク内に所定量の脱気処理水が貯留されると、前記タンク内に大気が導入されることで、水面上に浮遊させた小球遮断層が、タンク内処理水の水面へ空気中の酸素が混入することを防止しつつ、ポンプの吸込み側に真空損失水頭を生ずることなしに、前記脱気処理水のタンク外への移送を容易にすることを特徴とする連続脱気貯留式水処理装置。
【請求項2】
水を脱気処理するためのタンクが、原水タンクから給水される処理水を吸引して噴射する噴射装置と、水面に気相と液相とを遮断するための、水に浮遊する複数の小球の積層からなる遮断層とを備える1次側脱気処理タンクと、この1次側脱気処理タンクと連動するように組み合わされて、前記処理タンク内で処理された水を送り込んで、ユーザーに配水されるまでの間、処理水の脱気状態を維持しながら貯留する同構造の2次側脱気貯留タンクとにより構成され、
前記の処理タンクと貯留タンクとの間には、原水タンクから処理水を1次側脱気処理タンク内へ圧送し、あるいは1次側脱気処理タンク内で脱気した処理水を2次側脱気貯留タンクへ送り込むための送水ポンプと、両タンク内を負圧にするための真空ポンプとを備え、さらに、前記送水ポンプの吸引側に給水と循環のポートを備える1次側方向切替弁と、送水ポンプの吐出側には循環と送水のポートを備える2次側切替弁とを備えており、
さらに、作業工程で脱気を必要とする工程時には各タンク内を真空状態とし、脱気を完了し送水を必要とする工程時には各タンク内を大気圧状態に瞬時に切替えるための、水位計と連動して作動する締切電磁弁と圧力制御弁をそれぞれのタンクに備えており、処理タンク内の脱気水を貯留タンク内へ送水するために、2次側方向切替弁の送水ポートと貯留タンクの噴射装置とが配管により接続されている請求項1の連続脱気貯留式水処理装置。
【請求項3】
1次側脱気処理タンク内を所定の真空負圧状態として、同タンク内に噴射脱気処理を伴って給水される原水の設定量が満たされると、水位計と連動する圧力制御弁の作動により処理タンク内が大気圧に戻され、水面に積層状に浮遊させた複数の小球が密着して気相と液相とを遮断し、水面を加圧することで、処理タンク内から貯留タンクへ脱気水を容易に移送させ、さらに、2次側脱気貯留タンクから配水の場合にも、同タンク内を大気圧に戻し、水面に浮遊させた小球遮断層により気相と液相を遮断して、脱気水に脱気状態を維持しつつユーザへ大気圧下の送水を可能ならしめる請求項1の連続脱気貯留式水処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−21326(P2007−21326A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205307(P2005−205307)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000217480)
【出願人】(597039331)
【Fターム(参考)】