説明

連続鋳造用ノズルおよびその製造方法

【課題】耐熱衝撃性、耐食性に優れた連続鋳造用ノズルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機結合剤(バインダー)を含有した第1の原料が配合される。次いで、配合された第1の原料に対し圧力が加えられ、加圧された第1の原料が焼成される。焼成された第1の原料を粉砕することにより、アルミナ−カーボン質耐火性原料が生成される。当該アルミナ−カーボン質耐火性原料を5〜80質量%と有機質結合剤(バインダー)とを含有する第2の原料が配合され、配合された第2の原料が成形されることにより、連続鋳造用ノズルが構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋やタンディッシュの溶鋼流出部に装着される連続鋳造用ノズルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造用ノズルは、取鍋やタンディッシュの溶鋼流出部に装着され、流量制御や整流の目的に使用される。この連続鋳造用ノズルの損傷形態として、(1)溶鋼流による摩耗、(2)急激な熱衝撃による割れ、(3)割れからの外気吸引に起因する酸化脱炭に伴う溶損の助長、(4)溶鋼またはスラグによる化学的侵食、などがある。そのため、連続鋳造用ノズルには、優れた、耐摩耗性、耐熱衝撃性、耐酸化性、耐食性を具備することが求められ、連続鋳造用ノズルの使用条件に応じた、添加原料の選択および添加量の調整によりこれらの特性を満足する連続鋳造用ノズルが実現されてきた(例えば、特許文献1−8等参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1、2は、耐熱衝撃性向上を目的として、Al2330〜80質量%、ZrO210〜65質量%、SiO25〜25質量%の化学組成を有する低膨脹性の耐火性原料を10〜45質量%添加したスライドゲート用下部ノズルレンガを開示している。特許文献3、4は、耐蝕性維持、耐熱衝撃性向上を目的として、Al2380〜95質量%、SiO25〜20質量%の化学成分を有するAl23リッチのムライト耐火原料を10〜40質量%添加したスライドゲート用下部ノズルレンガを開示している。特許文献5、6は、耐食性、耐熱衝撃性向上を目的として、Al2350〜90質量%、ZrO210〜50質量%の化学組成を有する耐火性原料を10〜45質量%添加したスライドゲート用下部ノズルレンガを開示している。さらに、特許文献7、8は、耐熱衝撃性維持、耐食性向上を目的として、Al2335〜75質量%、MgO25〜65質量%の化学組成を有するアルミナ−マグネシアスピネル質原料を10〜70質量%添加したスライドゲート用下部ノズルレンガを開示している。
【0004】
一方、近年、地球環境的な観点から使用後耐火物のリサイクル化が求められており、使用後耐火物のリサイクルとともに、耐火物の特性向上を実現する技術も多数提案されている(例えば、特許文献9−13参照。)。
【0005】
例えば、特許文献9は、カーボン含有廃材原料を、カーボンを含有しないキャスタブル耐火物に再利用する技術を開示している。カーボン含有キャスタブル耐火物では、人工のピッチ粉やカーボンブラックとともに大量の酸化抑制剤を添加しなければならず材料コストが高くなる傾向にあったが、この技術では、カーボン含有廃材原料骨材を利用することで低材料コストを実現するとともに、耐食性向上を実現できるとしている。また、カーボンを含有しないキャスタブル耐火物にカーボン含有廃材原料を骨材として添加するため、使用中に廃材原料骨材の表層面に耐食性に影響を来さない程度の酸化現象が起こり、空隙が形成されて耐熱衝撃性が向上するとしている。なお、カーボン含有廃材原料骨材として、アルミナ−カーボン質のスライドゲートの使用後品を開示している。
【0006】
特許文献10は、使用済みのアルミナ−カーボン質耐火物をキャスタブル耐火物に再利用する技術を開示している。この技術では、結合材としてアルミナセメントを使用した場合、アルミナセメントに含まれるCaOが、微粒アルミナやシリカ微粉と反応して低融点物質を生成し、耐熱性および耐食性を低下させるが、結合材として自硬性の微粒子フェノール樹脂を用いることで、耐熱性と耐食性を向上できるとしている。
【0007】
特許文献11は、金属鋳造設備に使用されたアルミナ−カーボン質耐火物を粉砕して、キャスタブル耐火物の骨材として使用する技術を開示している。この技術では、撥水性シリコーンをミスト状に吹き付けながら該骨材を粉砕することで、吸水性の少ない骨材を得ることができ、キャスタブル耐火物を混練する際の水分量が安定するとしている。
【0008】
特許文献12は、使用済スライドゲートプレートを粉砕せずに、溶融金属容器の湯あたり面に再利用する技術を開示している。
【0009】
特許文献13は、使用済みのアルミナ−カーボン質耐火物を粉砕して3mm以下の粒度とし、原料の一部として40〜80%使用した不焼成れんが耐火物を開示している。アルミナ・カーボン質使用済み耐火物の粉砕物(AC屑)を原料の一部としてアルミナを主体とした溶銑予備処理容器用の不焼成アルミナ・炭珪・カーボンれんがに使用することで、従来のAC屑を使用しない不焼成れんがと同等の耐用性および低材料コストを実現できるとしている。この技術では、使用済みのアルミナ−カーボン質耐火物は、単にフィラーとして使用されているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−277824号公報
【特許文献2】特開平6−277825号公報
【特許文献3】特開平6−099269号公報
【特許文献4】特開平6−099270号公報
【特許文献5】特開平7−284919号公報
【特許文献6】特開平7−284920号公報
【特許文献7】特開平7−308771号公報
【特許文献8】特開平7−308772号公報
【特許文献9】特開2001−335377号公報
【特許文献10】特開2002−201080号公報
【特許文献11】特開2003−137665号公報
【特許文献12】特開平11−028561号公報
【特許文献13】特開2005−281039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来技術には、以下の課題がある。すなわち、特許文献1−4が開示する技術では、いずれもSiO2高含有原料を使用しているため、SiO2添加量を増やしていくと、溶鋼中成分(例えばCaO)とSiO2とが反応して低融点物が生成される。その結果、耐食性が低下するため、スライドゲートとしての多数回の使用は困難である。また、特許文献5−8が開示する技術では、耐食性の向上は可能であるが、熱膨張率の低減効果が小さい。その結果、熱衝撃による割れが発生してしまう。このように、いずれの技術においても、高価な原料に見合うほどの耐用性向上効果が得られていない。
【0012】
一方、特許文献9−12が開示する技術では、使用済みのアルミナ−カーボン質耐火物をキャスタブル耐火物にリサイクルしたにとどまり、特許文献13が開示する技術においても、リサイクルにより生成した耐火物を、溶銑予備処理鍋の側壁ワーク材など構造用耐火物として適用したにとどまっている。すなわち、使用済ノズルプレートには組成の異なるものが混在しており、そのまま粉砕して耐火性原料として使用すると、不純物の混入により耐用性低下の原因となる。特に連続鋳造用ノズルなど、高い信頼性を要求される機能性耐火物に使用後のアルミナ−カーボン質耐火物を使用することは困難で、全く適用されていなかった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、第1に、耐熱衝撃性、耐食性に優れた連続鋳造用ノズルおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、第2に、使用済みの連続鋳造用ノズルの有効利用を図ることができる、連続鋳造用ノズルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者らは、使用済みの連続鋳造用ノズルの有効利用を鋭意研究し、以下の方法を選択することで、耐火物の耐用性を向上させることができることを見いだした。また、使用済みの連続鋳造用ノズルが存在しない状況下であっても、同等の耐用性を有する連続鋳造用ノズルを実現できることを見いだした。
【0015】
すなわち、本発明に係る連続鋳造用ノズルの製造方法では、まず、所定のアルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機質結合剤(バインダー)を含有した第1の原料が配合される。次いで、配合された第1の原料に対し圧力が加えられる。当該加圧は、成形による加圧であってもよい。そして、加圧された第1の原料が焼成される。続いて、焼成された第1の原料を粉砕することにより、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するこれらの各成分の質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%であるアルミナ−カーボン質耐火性原料が生成される。そして、当該アルミナ−カーボン質耐火性原料を5〜80質量%と有機質結合剤(バインダー)とを含有する第2の原料が配合され混練後成形することで、連続鋳造用ノズルが製造できる。
【0016】
この連続鋳造用ノズルの製造方法では、一旦加圧され、かつ焼成(加熱)されたアルミナ−カーボン質耐火性原料が配合される。このアルミナ−カーボン質耐火性原料は、加圧により緻密化しているため、成形後に得られる連続鋳造用ノズルは、耐食性に優れている。また、このアルミナ−カーボン質耐火性原料は、焼成により熱膨張特性が安定しているため、成形後に得られる連続鋳造用ノズルは、耐熱衝撃性に優れている。なお、本明細書において、連続鋳造用ノズルには、ノズルプレートが含まれる。
【0017】
連続鋳造用ノズルは、上記成形された第2の原料を焼成することにより、焼成耐火物として得ることも可能である。さらに、上記アルミナ−カーボン質耐火性原料は、最大粒子径が20mm以下であることが好ましい。
【0018】
また、第1の原料を加圧することで得られる非焼成耐火物を、連続鋳造用ノズルとして使用することにより上述の焼成が実施され、使用済みの当該連続鋳造用ノズルを上述の粉砕工程に投入してもよい。同様に、第1の原料を加圧、焼成することで得られる焼成耐火物を、連続鋳造用ノズルとして使用し、使用済みの当該連続鋳造用ノズルを上述の粉砕工程に投入することもできる。この構成では、連続鋳造用ノズルとしての使用により、熱膨張特性が極めて安定しているアルミナ−カーボン質耐火性原料が配合されるため、耐熱衝撃性に優れた連続鋳造用ノズルを実現できる。また、実使用により加熱がなされるため、粉砕前の焼成工程に特別な費用を要することがなく、また、加圧も、実使用のために加圧(成形)がなされているため、粉砕前の加圧工程に特別な費用を要することもない。加えて、使用済みの連続鋳造用ノズルの有効利用を図ることもできる。
【0019】
一方、他の観点では、本発明は、連続鋳造用ノズルを提供することも可能である。すなわち、本発明に係る連続鋳造用ノズルは、アルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機質結合剤を含有した原料を、加圧および焼成した後、粉砕することにより生成されたアルミナ−カーボン質耐火性原料を、5〜80質量%含有する。なお、アルミナ−カーボン質耐火性原料は、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するこれらの各成分の質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐用性に優れた連続鋳造用ノズルおよびその製造方法を提供することができる。また、第2に、使用済みの連続鋳造用ノズルの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る連続鋳造用ノズルは、所定のアルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機質結合剤(バインダー)を含有した第1原料を、加圧および焼成した後、粉砕することにより生成された、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するこれらの各成分の質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%であるアルミナ−カーボン質耐火性原料を、5〜80質量%含有することを特徴とする。
【0022】
まず、アルミナ−カーボン質耐火性原料について説明する。当該アルミナ−カーボン質耐火性原料は、加圧や焼成を経て、仮に不焼成耐火物または焼成耐火物としても使用が可能な状態になったものを粉砕することにより得られる。当該アルミナ−カーボン質耐火性原料は、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンを含有する。
【0023】
アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するAl23の質量比は、70〜98%が好ましい。98%よりも高くなると、熱膨張率が大きくなり割れが発生するため好ましくない。また、70%未満になると、溶融金属に対する耐食性が低下するため好ましくない。
【0024】
アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するZrO2の質量比は、1〜20%が好ましい。20%よりも高くなると、ZrO2の熱膨張のヒステリシスによる割れが発生するため好ましくない。また、1%未満になると、溶融金属に対する耐食性が低下するため好ましくない。
【0025】
アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するCの質量比は、1〜10%が好ましい。10%よりも高くなると、れんが組織が粗雑になり、溶鋼に対する耐食性が低下すること、また使用時の酸化脱炭による組織が脆弱化するため好ましくない。また、1%未満になると、耐熱衝撃性の向上効果が得られないため好ましくない。
【0026】
カーボン源は特には限定されないが黒鉛、カーボンブラック、コールタールピッチなど公知の原料が使用できる。また、アルミナ−カーボン質耐火性原料を構成する第1原料(上述の加圧や焼成を経る前の原料)には有機質結合剤が含まれる。有機質結合剤を含有する原料が非酸化性の雰囲気で焼成されると、カーボンが焼成体に残留する。上述のカーボン量にはこの有機質結合剤起因のカーボンが含まれる。有機質結合剤の種類は特には限定されないが、焼成後の残留カーボン量の多いフェノールレジンなどが使用できる。
【0027】
なお、必要に応じて、耐火性無機材料や金属原料が配合されてもよい。ここでは、耐火性無機材料に、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンは含まれない。耐火性無機材料としては、従来、骨材として用いられている各種酸化物、あるいはそれらの複合酸化物、炭化物、窒化物、硼化物および各種炭素類の中から1種あるいは2種以上を選択することができる。材質および粒度構成は使用条件に応じて、従来技術の範囲で任意に選定すればよい。また、金属原料としては、Al、Si、Al合金、Si合金、Al−Si合金、Mgを含有する合金等を使用することができる。
【0028】
アルミナ−カーボン質耐火性原料を得るため、上記第1原料は加圧される。特に限定されないが、例えば、150MPaの圧力でプレス成形により、当該加圧を実施することができる。このように、本発明において使用されるアルミナ−カーボン質耐火性原料は、一旦加圧されているため緻密化している。そのため、耐食性に優れた連続鋳造用ノズルを得ることが可能になる。当該加圧には、50〜300MPa程度の圧力が使用できる。300MPaよりも高くなると、れんが組織が緻密化し過ぎ、耐熱衝撃性の低下を招く。更にはれんが組織を構成する粗粒が成形時に破壊してしまうため好ましくない。また、50MPa未満になると、十分に緻密化せず耐食性向上効果が得られない。
【0029】
加圧された第1原料は、その後、焼成される。特に限定されないが、例えば、コークスブリーズ中で1300℃、3時間の処理により、当該焼成を実施することができる。このように、本発明において使用されるアルミナ−カーボン質耐火性原料は、一旦加熱されているため熱膨張特性が安定している。そのため、耐熱衝撃性に優れた連続鋳造用ノズルを得ることが可能になる。当該焼成には、800〜1650℃程度の温度、1時間以上の処理が使用できる。1500℃よりも高くなると、焼結現象が促進し、れんが組織が緻密化し、耐熱衝撃性が低下するため好ましくない。また、800℃未満あるいは1時間未満になると、熱膨張特性が安定せず耐熱衝撃性向上効果が得られない。
【0030】
焼成された第1原料は、その後、粉砕機により粉砕され、上述のアルミナ−カーボン質耐火性原料になる。当該アルミナ−カーボン質耐火性原料の最大粒子径は20mmであることが好ましく、さらに好ましくは3mm以下である。最大粒子径が20mmより大きいと、肉厚が比較的薄い連続鋳造用ノズルを製造する場合、成形金型への投入ができなくなり、また、偏析によりハンドリング強度不足になるからである。
【0031】
本発明の連続鋳造用ノズルを構成する原料(以下、第2原料という。)中のアルミナ−カーボン質耐火性原料の使用量は5〜80質量%であり、より好ましくは10〜60質量%であり、さらに好ましくは20〜50質量%である。アルミナ−カーボン質耐火性原料の使用量が80質量%より高いと成形が困難になるため好ましくない。また、5質量%未満になると、耐熱衝撃性、耐食性の向上効果が得られないため好ましくない。
【0032】
第2原料に配合される他の耐火性無機材料としては、従来から骨材として用いられている各種酸化物、あるいはそれらの複合酸化物、炭化物、窒化物、硼化物および各種炭素類の中から1種あるいは2種以上が選ばれ、材質および粒度構成は使用条件によって従来からの範囲で任意に選定すればよい。また従来知られている金属原料を添加することもできる。
【0033】
以上のようにして配合され、有機質結合剤(バインダー)を添加した第2原料を、混練後成形することで、連続鋳造用ノズルが製造できる。
【0034】
連続鋳造用ノズルは非焼成耐火物であってもよいし、焼成耐火物であってもよい。焼成は、例えば、コークスブリーズ中で1300℃、3時間の処理により実施することができる。
【0035】
ところで、このようなアルミナ−カーボン質耐火性原料として、使用済みの連続鋳造用ノズル(以下、使用済ノズルという。)を利用することも可能である。以下、使用済ノズルからアルミナ−カーボン質耐火性原料を生成する手順について説明する。
【0036】
使用済ノズルは、製鋼工場において回収される。使用済ノズルの材質は、鋳造する鋼種によって、ジルコニアを含有するアルミナ−カーボン質耐火性原料を主体とするもの、マグネシア−カーボン質耐火性原料を主体とするもの、ジルコニア−カーボン質耐火性原料を主体とするもの等、多種、多様である。そのため、本発明に適用可能な、ジルコニアを含有するアルミナ−カーボン質耐火性原料を主体とする使用済ノズルのみ選別する。さらに好ましくは、ジルコニア、シリカ、アルミナなどの成分が類似する使用済ノズルごとに分別することが好ましい。このような分別は、例えば、製鉄所にて使用済ノズルを、製造メーカごと、材質ごとに分別回収することにより実施可能である。運搬の容易性の観点では、メッシュパレットやフレコンバッグ等に回収することが好ましい。このように分別回収した使用済ノズルから、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対する質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%の範囲に属するもののみを選択して再利用する。
【0037】
使用済ノズルがノズルプレートである場合、背面シート、鉄フープがセットされているときは、背面シート、鉄フープは外して、ノズルプレート本体のみを回収する。背面シートは、ノズルプレート本体にボンドや両面テープで接着されているため、ヘラやハンマー、ワイヤーブラシ等を用いて除去する。鉄フープは、ノズルプレート本体の外周に焼き嵌めされているため、ガス溶断または機械的切断等により切断除去する。
【0038】
また、使用済ノズルは、通常、溶鋼との接触面に地金やスラグの付着がある。このような地金やスラグを除去するため、溶鋼通過孔の内側面はケレンにより除去する。ケレン作業は、例えば、ボーリングによるくり抜き、またはハンマーリングによる破壊によって実施できる。
【0039】
以上のようにして不要部を除去した、れんが組織が健全な使用済ノズルの部分のみを回収する。回収した使用済ノズルは、水分除去を目的として乾燥させる。乾燥温度は100℃〜500℃、より好ましくは150℃〜300℃である。乾燥温度が500℃より高いと、れんが組織の脱炭が始まるため好ましくない。また、乾燥温度が100℃未満であると水分除去が不十分になるため好ましくない。乾燥工程は上述の第2原料として配合されるまでに実施すればよいが、作業効率の観点から粉砕前に実施することが好ましい。
【0040】
粉砕は、粉砕機により実施可能である。粉砕後の粒度は上述の範囲内に調整される。粉砕により生成されたアルミナ−カーボン質耐火性原料は、磁選機により脱鉄することが好ましい。
【0041】
以上のようにして使用済ノズルから得られたアルミナ−カーボン質耐火性原料は、成形時に一旦加圧されているため緻密化しており、連続鋳造用ノズルとしての使用過程において一旦加熱されているため熱膨張特性が安定している。そのため、使用済ノズルから得られたアルミナ−カーボン質耐火性原料を使用することで、粉砕前の加圧工程や焼成工程に特別な費用を要することがなく、耐熱衝撃性、耐食性に優れた連続鋳造用ノズルを安価に製造することができる。
【0042】
なお、溶鋼の流量制御のために複数回使用され、破損した場合に漏鋼のような大事故が発生するような、極めて高い信頼性が要求される連続鋳造用ノズル部位の原料として使用する場合、ケレン作業および脱鉄は必ず実施する必要がある。また、例えば、ノズルプレートの下部に設置されるコレクターノズル(下部ノズル)のように、破損した場合でも、上部ノズルプレート閉鎖により漏鋼を回避できるような、信頼性の要求度が比較的低い連続鋳造用ノズル部位の原料として使用する場合、ケレン作業や脱鉄は省略可能である。
【0043】
以上のように、(a)使用済ノズルを組成別に分類回収、(b)使用済ノズルから不要部分を除去、(c)粉砕、を経て得られたアルミナ−カーボン質耐火性原料を使用することでも、新規な材料(バージン材料)を使用する場合と同様に、優れた耐用性を有する連続鋳造用ノズルを得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例および比較例を提示して、本発明の連続鋳造用ノズルを説明する。この実施例では、アルミナ−カーボン質耐火性原料として、粉砕した使用済連続鋳造用ノズルプレートを使用している。以下の表1に、アルミナ−カーボン質耐火性原料の化学成分および鉱物組成例を示す。
【0045】
なお、表1において、粒度「0−1mm」は、0mmより大きく1mm以下の粒子を意味する。粒度「1−2.5mm」は、1mmより大きく2.5mm以下の粒子を意味する。また、鉱物組成において「++」は含有量が多いことを意味し、「・」は「++」に次いで含有量の多いことを意味し、「tr」は微量を意味する。
【0046】
【表1】

【0047】
上述のアルミナ−カーボン質耐火性原料を使用して、表2に示す配合割合で配合物を作成し、所定量のバインダーを添加したものを混練、成形、乾燥、焼成することで連続鋳造用ノズルを製造した。この例では、耐火性無機材料として、アルミナ、ジルコニア含有原料(低膨張性)、金属アルミニウム粉末、金属シリコン粉末、カーボン粉末を使用している。また、バインダーには、フェノール樹脂を使用した。実施例1〜7および比較例1〜3では、アルミナ−カーボン質耐火性原料の配合割合にあわせて、アルミナの配合割合を変動させている。すなわち、アルミナ−カーボン質耐火性原料と耐火性無機材料との全量100質量%に対する、アルミナ−カーボン質耐火性原料とアルミナとを合算した配合割合は全て同一であり、他の耐火性無機材料の配合割合も全て同一である。なお、バインダーは、アルミナ−カーボン質耐火性原料と耐火性無機材料との全量100質量%に対して外掛けで5質量%を添加している。
【0048】
各実施例1〜7、各比較例1〜3について、耐食性、耐熱衝撃性、耐酸化性の試験を実施し、各項目についての評価結果を表2中に示している。
【0049】
溶損量は、普通鋼およびミルスケール(酸化鉄)を浸食剤として使用した回転侵食試験法により、還元雰囲気、1650℃で4時間にわたり試験を行った後、サンプルを切断して浸食寸法を測定し、比較例1の浸食寸法を100としたときの浸食寸法を指数化して評価している。指数が小さいほど、高耐食性であることを示す。
【0050】
耐熱衝撃性は、30×30×230mmの試片を、1550℃の溶銑中へ90秒間浸漬し、浸漬前後の弾性率の低下率により評価している。低下率が低いほど、高耐熱衝撃性であることを示す。
【0051】
耐酸化性は、大気中において、900℃で3時間にわたり加熱し、加熱前後の重量減少率により評価している。「◎」は、重量減少がないことを示し、「○」は、実用上許容できる重量減少を示し、「×」は、実用上許容できない重量減少を示している。
【0052】
【表2】

【0053】
表2から理解できるように、耐食性については、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って溶損が少なくなっている。すなわち、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って耐食性が向上することが理解できる。また、耐熱衝撃性については、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って弾性率低下率が小さくなっている。すなわち、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って耐熱衝撃性も向上することが理解できる。さらに、耐酸化性については、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って重量減少が大きくなっている。すなわち、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って耐酸化性は低下することが理解できる。
【0054】
そして、各実施例1〜7では、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加量が5質量%未満である比較例1、2に比べて、明らかに、耐食性向上効果および耐熱衝撃性向上効果が得られており、また、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加量が80質量%を超える比較例3に比べて優れた耐酸化性が得られている。すなわち、本発明に係る各実施例1〜7は、耐食性、耐熱衝撃性、耐酸化性の各特性に対して総合的に優れているといえる。
【0055】
また、上述のアルミナ−カーボン質耐火性原料を使用して、表3に示す配合割合で配合物を作成し、所定量のバインダーを添加したものを混練、成形、乾燥、焼成することで連続鋳造用ノズルプレートを製造した。この例では、耐火性無機材料として、アルミナ、ジルコニア含有原料(高耐食性および低膨張性)、金属アルミニウム粉末、金属シリコン粉末、カーボン粉末を使用している。また、バインダーには、フェノール樹脂を使用した。表2中の実施例1〜7および比較例1〜3と同様に、実施例11〜17および比較例11〜13では、アルミナ−カーボン質耐火性原料と耐火性無機材料との全量100質量%に対する、アルミナ−カーボン質耐火性原料とアルミナとを合算した配合割合は全て同一であり、他の耐火性無機材料の配合割合も全て同一である。また、バインダーは、アルミナ−カーボン質耐火性原料と耐火性無機材料との全量100質量%に対して外掛けで5質量%を添加している。
【0056】
各実施例11〜17、各比較例11〜13について、上述した耐食性、耐熱衝撃性、耐酸化性の試験を実施し、各項目についての評価結果を表3中に示している。
【0057】
【表3】

【0058】
表3から理解できるように、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加割合の増大に伴って耐食性が向上するとともに耐熱衝撃性が向上し、耐酸化性は低下する。そして、各実施例11〜17では、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加量が5質量%未満である比較例11、12に比べて、明らかに、耐食性向上効果および耐熱衝撃性向上効果が得られており、また、アルミナ−カーボン質耐火性原料の添加量が80質量%を超える比較例13に比べて優れた耐酸化性が得られている。すなわち、本発明に係る各実施例11〜17は、耐食性、耐熱衝撃性、耐酸化性の各特性に対して総合的に優れているといえる。
【0059】
なお、上記では、焼成耐火物についての実施例を示したが、同配合の不焼成耐火物であっても、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、従来品に比べて寿命向上と操業の安定化が期待できる、耐熱衝撃性、耐食性に優れた連続鋳造用ノズルを提供することができ、連続鋳造用ノズルおよびその製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機質結合剤を含有する第1の原料を配合する工程(a)と、
前記工程(a)において配合された第1の原料に対し圧力を加える工程(b)と、
前記工程(b)において加圧された第1の原料を焼成する工程(c)と、
前記工程(c)において焼成された第1の原料を粉砕することにより、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するこれらの各成分の質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%であるアルミナ−カーボン質耐火性原料を生成する工程(d)と、
前記工程(d)において生成された、アルミナ−カーボン質耐火性原料5〜80質量%と有機質結合剤とを含む第2の原料を配合する工程(e)と、
前記工程(e)において配合された第2の原料を成形する工程(f)と、
を有する、連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項2】
前記工程(f)において成形された第2の原料を焼成する工程(g)をさらに有する、請求項1記載の連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項3】
前記アルミナ−カーボン質耐火性原料の最大粒子径が20mm以下である、請求項1または2記載の連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)と工程(b)とを経ることにより生成される耐火物を、連続鋳造用ノズルとして使用することにより前記工程(c)が実施され、使用済みの当該連続鋳造用ノズルが前記工程(d)に投入される、請求項1から3のいずれか1項に記載の連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)から工程(c)を経ることにより生成される耐火物を、連続鋳造用ノズルとして使用し、使用済みの当該連続鋳造用ノズルが前記工程(d)に投入される、請求項1から3のいずれか1項に記載の連続鋳造用ノズルの製造方法。
【請求項6】
アルミナ、ジルコニア、カーボンおよび有機質結合剤を含有した原料を、加圧および焼成した後、粉砕することにより生成された、アルミナ、ジルコニアおよびカーボンの総量に対するこれらの各成分の質量比が、Al23:70〜98%、ZrO2:1〜20%、C:1〜10%であるアルミナ−カーボン質耐火性原料を、5〜80質量%含有する連続鋳造用ノズル。
【請求項7】
前記アルミナ−カーボン質耐火性原料の最大粒子径が20mm以下である、請求項6記載の連続鋳造用ノズル。
【請求項8】
前記アルミナ−カーボン質耐火性原料が、粉砕された使用済みの連続鋳造用ノズルである、請求項6または7記載の連続鋳造用ノズル。

【公開番号】特開2012−213796(P2012−213796A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81953(P2011−81953)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】