説明

連鎖球菌のための流加培養法

【課題】連鎖球菌のための流加培養法の提供。
【解決手段】本発明は、細菌培養の分野にあり、そして具体的には、流加培養における連鎖球菌株からの細菌性莢膜多糖類の産生を改善するための培養条件の最適化に関する。本発明の一実施形態において、連鎖球菌が流加培養で増殖される、連鎖球菌を培養するためのプロセスを提供する。好ましくは、連鎖球菌はGBSである。流加培養は、一定体積フェド−バッチまたは可変体積フェド−バッチのいずれかであり得る。一定体積流加培養において、制限された基質が、該培養物を希釈することなく供給される(例えば、濃縮された液体もしくはガスを使用して、または透析を使用することによって)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、細菌培養の分野にあり、そして具体的には、細菌性莢膜多糖類の産生を改善するための培養条件の最適化に関する。
【背景技術】
【0003】
莢膜多糖類(cps)は、種々の細菌性疾患に関与する重要な免疫原である。この特徴のために、それらはワクチンの設計において重要な成分である。それらは、特に担体タンパク質へ連結される場合、免疫応答を誘発することにおいて有用であるとわかった[1]。典型的に、莢膜多糖類は、複合培地(complex medium)におけるバッチ培養(B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、流加培養(インフルエンザ菌)、または連続培養(B群連鎖球菌およびLactobacillus rhamnosus)を使用して作製される[2〜7]。大抵の研究は、増殖速度、栄養レベルおよび代謝濃度が、インキュベーションの間に変化する、バッチ培養系を使用した。このような系において、1つの因子の変化は、増殖に関連する他の因子の変化を生じさせる。連続培養は、研究者が、バッチ培養増殖の間に相互依存的であるパラメータ(例えば、増殖速度、栄養および産物濃度、ならびに細胞密度)を分離および規定することを可能にする。連続培養の間、新鮮な培地が、一定の速度で培養物へ添加され、そして細胞および培地は、一定の培養物体積を維持する速度で除去される。連続培養は、莢膜多糖類産生について好ましく、そのとき、それは条件に依存性であるとわかった[参考文献8(非特許文献1)]。
【0004】
B群連鎖球菌(GBS、S.agalactiae)について、細胞増殖速度が、莢膜多糖類産生を調節する主要な因子であると報告された。さらに、III型莢膜多糖類の産生は、増殖制限栄養と独立して生じることが示された。遅い時間(t=2.6または11時間)よりもむしろ速い(0.8、1.4または1.6時間)質量倍増時間(mass
doubling time)[t]に細胞が保持された場合、より高い比収率(specific yields)(約90mg/gDWまで)が得られた[参考文献8〜10(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)]。しかし、連続培養は、菌株安定性問題およびコンタミネーションを起こす傾向がある。さらに、連続培養は、培地および栄養の連続供給に起因していくぶん高価である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Paolettiら、Infect.Immunol.(1996)64:1220−1226
【非特許文献2】Rossら、J.Bact.(1999)181:5389−5394
【非特許文献3】Paolettiら、J.Infect.Dis.(1999)180:892−895
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上記で言及される連続培養に伴う問題を克服するために、莢膜多糖類の高収率産生についての連続培養の代替法を見出す必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、流加培養、即ち、有限体積の新鮮な培地への細胞の接種によって開始され、かつ、該細胞が増殖した後に単回収穫によって終了される培養であって、最初の栄養源が使い尽くされた時点で追加の栄養が該培養へ添加される培養を使用して、高収率のcpsが任意の連鎖球菌株について得られ得ることを発見した。このような高収率は、連続培養を使用して得られるものに匹敵するかまたはそれよりもよい。さらに、本明細書中に開示される方法は、連続培養の安定性およびコンタミネーション問題を起こす傾向がない。
【0008】
本発明は、連鎖球菌が流加培養で増殖される、連鎖球菌を培養するためのプロセスを提供する。好ましくは、連鎖球菌はGBSである。流加培養は、一定体積フェド−バッチ(fed−batch)または可変体積フェド−バッチのいずれかであり得る。一定体積流加培養において、制限された基質(limiting substrate)が、該培養物を希釈することなく供給される(例えば、濃縮された液体もしくはガスを使用して、または透析を使用することによって)。可変体積流加培養において、体積は、基質供給に起因して、発酵時間にわたって変化する。連鎖球菌からcpsを産生する方法において、本発明は、フェド−バッチにおいて連鎖球菌を培養するという改善を提供する。
【0009】
連鎖球菌のある株は、典型的にそれらが培養において低レベルのcpsしか産生しない点で、cpsの「悪いプロデューサー(bad producers)」であることが知られている。このような悪いプロデューサーの例としては、GBS株DK21および2603が挙げられる。しかし、本明細書中に開示される方法を使用すると、高レベルのcpsが、このような「悪いプロデューサー」からでさえ得られ得る。したがって、本発明は、流加培養において連鎖球菌を培養することを含む、連鎖球菌の株からのcps収率を増加させるためのプロセスを提供し、ここで、バッチまたは連続培養条件下で、該株は、<30mg cps/g DW(例えば、<10mg cps/g DW)を産生する。
【0010】
好ましくは、本発明は、高収率の莢膜多糖類が産生される、流加培養で連鎖球菌を培養する方法を提供する。好ましくは、cpsの収率は、10mg/gDW(細菌の乾燥重量1g当たりのmg cps)またはそれ以上(例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200またはそれ以上)であり、そしてより好ましくは>30mg/gDWである。好ましくは、培養培地からの、cpsの収率は、10mg/Lまたはそれ以上(例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300またはそれ以上)である。より好ましくは、培養培地からのcpsの収率は、50mg/Lまたはそれ以上(例えば、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650またはそれ以上)である。したがって、本発明の方法は、連続培養と比較して、単位体積当たり遥かに高い収率でのcpsの産生を可能にする。ある場合において、単位体積当たりの収率は、連続培養を使用して産生されるものの2倍であり得、または2倍を超え得る。
【0011】
全体的な培養プロセスは、特定の段階(バッチ、フェド−バッチ、および炭素供給)へ分割され得、これらはさらに再分割され得る。最初に、バッチ培養が開始され、この間、培養倍増速度(μ)は増加し、低倍増時間(t)が達成される。次いで、tは、産生のために必要とされる値を得るまで、第1フェド−バッチ段階(FB1)の間、増加し得る。次いで、この倍増速度は、第2フェド−バッチ段階(FB2)の間、一定レベルで維持され得る。次いで、炭素供給(GF)が通常開始され、これはtの増加を生じさせ、何故ならば、培地の非栄養要求性であるが制限的である成分が次第に枯渇されるためである。最初のバッチ段階は、細菌が増殖を開始しそして低tを達成することを可能にする。フェド−バッチ段階および炭素供給段階は、高速でのCPSの産生を可能にする。フェド−バッチ段階は、それらが使い尽くされるので、栄養を培養物へ提供する。炭素供給段階は、追加の炭素源を提供するのみであり、したがって他の栄養が制限的となる。
【0012】
高収率は、フェド−バッチ段階の間、低tで細菌を培養することによって、維持され得る。好ましくは、この低tは、特に、第2フェド−バッチ段階(FB2)の間中、維持される。好ましくは、tは、80分以下、好ましくは60分以下(例えば、58、56、54、52、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、38、36、34、32、30、25、20、15以下)である。好ましくは、tは、約45分(0.75時間)(例えば、0.1〜1.0時間)である。tは、温度および酸素濃度等の当該分野において公知の方法を使用することによって、または栄養レベルを制限することによって、調節され得る。
【0013】
当業者が理解するように、tは、多数の制限的因子のいずれか1つによって制御され得る。一般的に、所望のtが達成されるまで細菌は自由に増殖され(「バッチ」段階)、その後、制御機構が開始され該tが維持される(「フェド−バッチ」段階)。好ましくは、自由増殖段階の間、炭素供給は制限的因子ではない。しかし、いったん所望のtが達成されると、炭素の供給(好ましくないが)を含む多数の制限的因子のいずれか1つが、増殖を制限するためおよび所望のtで培養を維持するために使用され得る。
【0014】
cps産生の間炭素レベルを維持するために、炭素源濃度がpH依存性供給を使用することによって維持されることが好ましい。このような供給は、培養の開始から、または特定のtが達成されたときにのみ、開始され得る。しかし、供給が培養の開始時に開始される場合、炭素源が増殖の制限的因子となることを回避するために、供給速度は、消費速度よりも高く維持されなければならない。培地中における炭素源濃度が低下すると、代謝が減少しそしてpHが上昇する。培養物のpHが特定の閾値pH(pHc)を超えて上昇すると、炭素源が培地へ添加される。炭素源供給は、培養物のpHが該pHc値未満に低下する場合に、停止される。好ましくは、pHcは、ほぼ中性、例えば6〜8(例えば、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9または8.0)である。好ましくは、pHcは、6.9〜7.5.である。好ましくは、pHcは、pH7.2である。
【0015】
本発明はまた、連鎖球菌から高収率のcpsを産生する方法を提供し、ここで、該培養は、連鎖球菌が45分のtで培養される段階を含む。
【0016】
本発明はさらに、培地中において連鎖球菌の流加培養を開始すること、および該培養のpHをモニタリングし、その結果、pHが閾値を超えて上昇する場合、炭素源を該培地へ添加し、そしてpHが該閾値未満に低下する場合、該炭素源供給を停止することを含む、連鎖球菌を培養するための方法であって、連鎖球菌のtが60分以下(例えば、58、56、54、52、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、38、36、34、32、30、25、20、15以下)に維持される方法を提供する。好ましくは、tは、約45分(0.75時間)(例えば、0.6〜1.2時間)である。好ましくは、閾値pH(pHc)は、上述に規定される通り、例えば約pH7.2である。
【0017】
発酵は、手動で制御され得、またはコンピュータもしくは他の機械によって自動化され得る。ある実施形態において、pHは、コンピュータ上においてモニタリングされる。さらなる実施形態において、コンピュータは、炭素源供給速度を制御および/または調節し、セットポイント付近にpHを維持する(pHは、必要に応じて、アルカリ、例えばNaOHもしくはNHOH、または酸の添加によって調節される)。さらなる実施形態において、コンピュータは、炭素源供給速度を制御および/または調節し、セットポイント付近にpHを維持する。さらなる実施形態において、コンピュータは、酸素供給速度(および/または、撹拌、通気、背圧、もしくはこれらのパラメータの組み合わせ)を制御および/または調節し、セットポイント付近にpHを維持する。他の変数(例えば、窒素濃度および温度、しかしこれらに限定されない)もまた、コンピュータを使用してモニタリングおよび制御され得る。
【0018】
さらなる実施形態は、溶存酸素含有量および/または炭素源濃度をコンピュータでモニタリングする。この適用におけるコンピュータの使用は、特に、記載されるように機能する全ての必要なプログラム、コントローラ、デバイスを含むように意図される。コンピュータは、コンピュータ支援デバイスの一部を形成し得る。
【0019】
好ましくは、本発明はまた、培養における細菌の増殖を制御するための制御アルゴリズムであって、該培養物のpHがモニタリングされ、その結果、pHがpHcを超えて上昇する場合、該培養物に炭素源が供給され、そして該pHがpHc未満に低下する場合、供給が停止する、制御アルゴリズムを提供する。好ましくは、培養は流加培養である。好ましくは、細菌は連鎖球菌である。該アルゴリズムはまた、他のパラメータ(例えば、炭素源濃度、温度、酸素飽和度、および窒素濃度、しかしこれらに限定されない)を制御し得る。
【0020】
培養に続いて、細菌は、cpsを精製しそしてそれを担体タンパク質へ複合体化するためのさらなる処理工程を受け得る。したがって、本発明は、a)流加培養において連鎖球菌を培養すること、およびb)該細菌からcpsを精製することを含む方法を提供する。該方法は、工程c)前記莢膜糖類を担体タンパク質へ複合体化し、タンパク質−糖類複合体を得ることをさらに含み得る。精製されたcpsは、薬学的調製物を調製するために、さらなる処理工程を受け得る。このような工程の例は、下記に与えられる。
【0021】
連鎖球菌
連鎖球菌は、S.agalactiae(GBS)、S.pyogenes(GAS)、S.pneumoniae(肺炎球菌)およびS.mutansから選択され得る。あるいは、連鎖球菌は、S.thermophilusまたはS.lactisであり得る。使用される連鎖球菌がGBSである場合、好ましくは、選択される血清型は、1a、1b、3、4または5である。好ましくは、使用されるGBSの株は、O90(1a)、7357(1b)、H36b(1b)、DK21(2)、M781(3)または2603(5)である。使用される連鎖球菌がS.pneumoniaeである場合、好ましくは、選択される血清型は、4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fの1つ以上、または全てである。血清型1もまた、好ましくは選択され得る。好ましくは、選択される血清型は、1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fの1つ以上、または全てである。
【0022】
本発明の方法を使用して産生される培養物は、均質(即ち、連鎖球菌の単一の種または株からなる)であってもよく、または不均質(即ち、連鎖球菌の2以上の種または株を含む)であってもよい。好ましくは、培養物は均質である。
【0023】
使用される連鎖球菌は、野生型株であってもよく、または遺伝子的に修飾されてもよい。例えば、それは、非天然莢膜多糖類または異種多糖類を産生するように;あるいは収率を増加するように、修飾され得る。
【0024】
増殖培地
連鎖球菌種の増殖を維持するために好適である任意のタイプの液体増殖培地が使用され得る。好ましい培地としては、複合培地、例えば、Columbiaブロス、LB、Todd−Hewitt、GC培地、血液ブロスもしくは脳心臓浸出物(brain−heart infusion);半規定培地(semi−defined media)、例えば、MCDM;連鎖球菌についての化学的に規定された培地、例えば、M1、MC、FMC[11]、もしくはC−48[12];ならびに必要な栄養要求性成分を含有する真核細胞株の増殖用に構成された培地、例えば、RPMI、使用済み培地(spent medium)、McCoy’sおよびEagle’sが挙げられる。典型的な培地は、酵母抽出物を含有する。培地の濃度を増加させることによって、より高いODが達成され得、cpsのより高い体積的産生が得られる。したがって、増殖培地は、炭素源、窒素源、硫黄源を含み、そしてさらに、抗生物質剤および消泡剤の1以上を含み得る。典型的な抗生物質としては、カナマイシン、アンピシリンおよびテトラサイクリンが挙げられる。抗生物質は、抗生物質耐性遺伝子を含有する特定の細菌を選択するためのおよび/またはグラム陽性細菌(例えば、連鎖球菌)を選択するための、選択圧(selection pressure)を与えるために使用され得る。したがって、これは、所望のcpsを発現する細菌についての選択圧を維持するために使用され得る。例えば、抗生物質アズトリアナム(aztrianam)は、グラム陰性細菌に対して有効であるが、グラム陽性細菌に対して有効ではない。消泡剤は、当該分野において公知であり、そして鉱油、医療的油(medical oil)、高度に処方された(highly formulated)ポリシロキサングリコールコポリマー、シリコーン化合物およびエマルジョン、オキシアルキル化化合物、鉱油/合成ブレンド、グリコール/エステルブレンド等を含み得る。
【0025】
培養はまた、脂質(例えば、長鎖脂肪酸、例えばリノール酸またはオレイン酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、プリンおよびピリミジン、ビタミンおよび増殖因子、アミノ酸(L−および/またはD−形態)ならびに/あるいは化学元素または無機イオン(例えば、Fe、K、Mg、Mn、Ca、Co、Cu、Pおよび/またはZn)等の、増殖に必須である種々の他の因子の添加を必要とする。
【0026】
増殖培地がウシ血清アルブミン等の動物から得られた添加物を含有する場合、これらは、培地および最終的にcpsのコンタミネーションを回避するために、感染性海綿状脳症を含まない供給源から得られるべきである。
【0027】
炭素源
使用される炭素源のタイプは、重要ではない。好ましくは、主要な炭素源は、グルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、イヌリン、グリセロール、植物油(例えば、大豆油)、炭化水素、アルコール(例えば、メタノールおよびエタノール)、有機酸(例えば、アセテート)からなる群より選択される。より好ましくは、炭素源は、グルコース、グリセロール、ラクトース、フルクトース、スクロースおよび大豆油から選択される。用語「グルコース」は、グルコースシロップ、即ち、グルコースオリゴマーを含むグルコース組成物を含む。炭素源は、固体または液体として、培養物へ添加され得る。好ましくは、炭素源は、過剰供給(overfeeding)を生じ得る細胞に対する浸透ストレス(osmotic stress)を回避するように制御される。これは、最初のバッチ培養へ、発酵の期間の間必要とされる全ての炭素源を添加しないことによって、通常達成される。炭素源はまた、増殖制限および色素産生を生じさせ得る枯渇を回避するように制御される[13]。
【0028】
窒素源
使用される窒素源のタイプは、重要ではない。好ましくは、窒素源は、尿素、水酸化アンモニウム、アンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウム)、他のニトレート、アミノ酸(例えば、グルタメートおよびリジン)、酵母抽出物、酵母自己溶解物、酵母窒素塩基、タンパク質加水分解物(ペプトン、カゼイン加水分解物、例えばトリプトンおよびカザミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない)、大豆ミール、Hy−Soy、トリプシン大豆ブロス(tryptic soy broth)、綿実ミール、麦芽エキス、トウモロコシ浸出液、および糖蜜から選択される。より好ましくは、窒素源は、水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選択される。最も好ましくは、窒素源は、水酸化アンモニウムである。窒素源としての水酸化アンモニウムの使用は、水酸化アンモニウムがpH制御剤としてさらに機能し得るという利点を有する。硫酸アンモニウムおよび/またはリン酸アンモニウムが窒素源として使用される場合、微生物の硫黄および/またはリン要求の少なくとも一部が満たされ得る。
【0029】
リン供給源
上述されるように、リンが、増殖培地へ添加され得る。リンは、塩の形態であり得、特に、それは、リン酸塩(例えば、上述されるリン酸アンモニウム)またはポリリン酸塩として添加され得る。ポリリン酸塩が使用される場合、それは、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸ガラスの形態であり得る[14]。このようなリン酸ガラスは有用であり、何故ならば、それらの溶解性は、混合時に沈殿を生じさせることなく、濃縮された栄養培地が調製され得るようなものであるためである。
【0030】
他の変数
培養の温度は、30〜45℃に(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44℃に)維持される。好ましくは、温度は、約37℃である。したがって、培養物を含有する容器を加熱または冷却し、一定の培養温度が維持されることを確実にすることが、必要であり得る。温度は、tを制御するために使用され得、したがって、所定の培養プロセスについて、温度は、異なる段階(即ち、バッチ段階、フェド−バッチ段階、および炭素供給段階)で異なり得る。
【0031】
培養の酸素供給は、制御され得る。酸素は、空気、富化された酸素、純酸素、またはそれらの任意の組み合わせとして供給され得る。酸素濃度をモニタリングする方法は、当該分野において公知である。酸素は、特定の供給速度で送達され得、または培養の溶存酸素含有量を測定し、そして一定の溶存酸素含有量を維持するという意図を持ってそれに応じて供給することによって、要求に応じて送達され得る。
【0032】
撹拌または通気の速度もまた制御され得る。これは、栄養および酸素が、培養物が含有されているバイオリアクターの周りに移送されることを確実にする。栄養溶液および個々の細胞間の相対速度は、約0.5m/秒(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0m/s)であるべきである。
【0033】
上述されるように、培養物のpHは、酸またはアルカリの添加によって制御され得る。pHは典型的に培養の間に低下するので、好ましくはアルカリが添加される。好適なアルカリの例としては、NaOHおよびNHOHが挙げられる。
【0034】
これらの変数の全ては、上述のように、コンピュータ、コンピュータ支援デバイス、または制御アルゴリズムによって制御され得る。
【0035】
これらの変数の変更は、培養のtを制御するために使用され得る。
【0036】
多糖類調製
細菌から莢膜糖類を調製するための方法は、当該分野において周知であり、例えば、参考文献15、16、17等を参照のこと。
【0037】
GBSについて、以下の方法が使用され得る(参考文献18も参照のこと)。
【0038】
一般的に、少量の莢膜多糖類が、細菌増殖の間に培養培地中へ放出され、したがって、コンタミタンパク質および/または核酸のアルコール沈殿についての出発材料は、遠心分離された細菌培養物からの上澄みであり得る。しかし、より典型的には、前記出発材料は、莢膜を有する細菌自体(または、細菌ペプチドグリカンを含有する材料)を処理し、その結果、莢膜糖類が放出されることによって、調製される。
【0039】
莢膜多糖類は、化学的、物理的または酵素的処理を含む、種々の方法によって細菌から放出され得る。したがって、多糖類の水性調製物は、最初のタンパク質/核酸沈殿反応の前に、処理され得る。
【0040】
典型的な化学的処理は、塩基抽出[19](例えば、水酸化ナトリウムを使用する)であり、これは、莢膜糖類とペプチドグリカン骨格との間のホスホジエステル結合を切断し得る。しかし、塩基処理は莢膜糖類を脱Nアセチル化するので、後で、再Nアセチル化が必要となり得る。
【0041】
典型的な酵素的処理は、ムタノリシンおよびβ−N−アセチルグルコサミニダーゼの両方の使用を含む[20]。これらは、細菌ペプチドグリカンに作用し、本発明での使用のための莢膜糖類を放出するだけでなく、群特異的な(group−specific)炭水化物抗原の放出へ至る。代替的な酵素的処理は、II型ホスホジエステラーゼ(PDE2)での処理を含む。PDE2酵素は、水酸化ナトリウムと同一のホスフェートを切断し得(上記を参照のこと)、そして群特異的炭水化物抗原を切断することなしに、かつ、莢膜糖類を脱Nアセチル化することなしに、莢膜糖類を放出し得、したがって、続いての工程を単純化する。したがって、PDE2酵素は、莢膜糖類を調製することについての好ましい選択肢である。
【0042】
したがって、本発明のプロセスについて好ましい出発材料は、脱Nアセチル化された莢膜多糖類であり、これは、参考文献19に記載されるような塩基抽出によって得られ得る。したがって、別の好ましい出発材料は、連鎖球菌のPDE2処理の産物である。このような材料は、以下に記載の沈殿前に、濃縮(例えば、限外濾過)へ供され得る。
【0043】
アルコール沈殿およびカチオン交換
培養後に得られた連鎖球菌莢膜糖類は、一般的に、不純であり、そして細菌核酸およびタンパク質で汚染されている。これらのコンタミは、RNアーゼ、DNアーゼおよびプロテアーゼでの連続的な一晩の処理によって除去され得る。代替法として、これらのコンタミを酵素的に除去するよりもむしろ、アルコール沈殿が使用され得る。必要に応じて(例えば、塩基抽出後)、材料は、通常、沈殿前に中和される。
【0044】
コンタミ核酸および/またはタンパク質を沈殿するために使用されるアルコールは、好ましくは、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、2−メチル−プロパン−1−オール、2−メチル−プロパン−2−オール、ジオール等である。好適なアルコールの選択は、過度な負担なしに、実験的に試験され得、しかし、エタノールおよびイソプロパノール(プロパン−2−オール)等のアルコールが、フェノール等のアルコールよりもむしろ好ましい。
【0045】
アルコールは、好ましくは、多糖類懸濁液へ添加され、10%〜50%(例えば、約30%)の最終アルコール濃度が得られる。最も有用な濃度は、多糖類をも沈殿させることなく、コンタミの適切な沈殿を達成するものである。最適な最終アルコール濃度は、多糖類が得られる細菌血清型に依存し得、そして過度な負担なしに型通りの実験によって決定され得る。エタノール濃度>50%の場合の多糖類の沈殿が、観察された。
【0046】
アルコールは、純粋形態で添加されてもよく、または混和性溶媒(例えば、水)で希釈された形態で添加されてもよい。好ましい溶媒混合物は、エタノール:水混合物であり、好ましい比率は約70:30〜約95:5である(例えば、75:25、80:20、85:15、90:10)。
【0047】
前記糖類はまた、水性金属カチオンで処理される。一価および二価の金属カチオンが好ましく、そして二価のカチオン(例えばMg++、Mn++、Ca++等)が特に好ましく、何故ならばそれらは錯体形成でより有効であるためである。カルシウムイオンが特に有用であり、したがってアルコール混合物は、好ましくは、可溶性カルシウムイオンを含む。これらは、固体としてまたは水性形態として添加される、カルシウム塩の形態で、糖類/アルコール混合物へ添加され得る。カルシウムイオンは、好ましくは、塩化カルシウムの使用によって提供される。
【0048】
カルシウムイオンは、好ましくは、10〜500mMの最終濃度で、例えば約0.1Mで、存在する。最適な最終Ca++濃度は、前記多糖類が得られる連鎖球菌株および血清型に依存し得、そして過度な負担なしに型通りの実験によって決定され得る。
【0049】
コンタミタンパク質および/または核酸のアルコール沈殿後、莢膜多糖類が溶液中に残される。沈殿した材料は、任意の好適な手段によって、例えば遠心分離によって、多糖類から分離され得る。続いての工程においてフィルターを詰まらせ得る粒子(例えば、0.22μmよりも大きな直径を有する沈殿した粒子)を除去するために、上澄みは、精密濾過へ、そして特にデッド−エンド濾過(dead−end filtration)(垂直濾過(perpendicular filtration))へ供され得る。デッド−エンド濾過の代替法として、タンジェンシャル・マイクロフィルトレーション(tangential microfiltration)が使用され得る。
【0050】
ダイアフィルトレーション
ダイアフィルトレーションの工程は、タンパク質および/または核酸の沈殿後に、ならびに洗剤媒介沈殿前に、使用され得る。塩基抽出またはホスホジエステラーゼが莢膜糖類の放出のために使用される場合、このダイアフィルトレーション工程は特に有利であり、何故ならば、群特異的糖類もまた加水分解され、インタクトな莢膜糖類よりも遥かに小さなフラグメントが得られるためである。これらの小さなフラグメントは、ダイアフィルトレーション工程によって除去され得る。
【0051】
タンジェンシャル・フロー・ダイアフィルトレーション(tangential flow diafiltration)が典型的である。したがって、濾過膜は、莢膜多糖類を保持しながら群特異的抗原の加水分解産物の通過を可能にするものであるべきである。10kDa〜30kDaの範囲内のカットオフが典型的である。より小さなカットオフサイズが使用され得、何故ならば、群特異的抗原の加水分解フラグメントは、一般的に、約1kDa(5量体、8量体および11量体糖類)であるためであり、しかし、より高いカットオフが、有利なことに、莢膜糖類の損失へ至ることなしに他のコンタミの除去を可能にする。
【0052】
少なくとも5サイクル(例えば、6、7、8、9、10、11またはそれ以上)のタンジェンシャル・フロー・ダイアフィルトレーションが、通常、行われる。
【0053】
カチオン性洗剤処理 可溶性多糖類を沈殿させるための多くの技術が、当該分野において公知である。本発明によれば、前記糖類は、1以上のカチオン性洗剤を使用して、沈殿される。莢膜糖類および群特異的糖類の混合物をカチオン性洗剤で処理することは、莢膜糖類の優先的な沈殿へ至り、それによって、有利なことにそして好都合なことに、群特異的糖類によるコンタミネーションが最小限化される。
【0054】
本発明のプロセスにおける使用について特に好ましい洗剤は、テトラブチルアンモニウム塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、臭化物塩)である。臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)が、特に好ましい[21]。CTABはまた、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化セトリモニウム、CetavlonおよびCentimideとしても公知である。他の洗剤としては、臭化ヘキサジメトリンおよびミリスチルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0055】
洗剤媒介沈殿工程は、好ましくは、莢膜多糖類について選択的である。有利には、本発明は、前記糖類中のシアル酸残基と、例えば該シアル酸中のカルボキシル基を介して、相互作用するCTAB等の洗剤を使用する。したがって、洗剤は、優先的に、シアル酸含有莢膜糖類を、そして特に、混合集団内のより長い糖類を沈殿させ、したがって、その抗原的に重要なシアル酸がより早い処理段階において損傷されているかもしれない、多糖類によるコンタミネーションが最小限化される。
【0056】
再可溶化
沈殿後、前記多糖類(典型的に、カチオン性洗剤との複合体の形態)は、水性媒体またはアルコール性媒体中に、再可溶化され得る。水性再可溶化について、沈殿物中のCTAカチオンは、一般的に金属カチオンによって置換され;アルコール性再可溶化については、CTAカチオンは、一般的に保持される。水性またはアルコール性再可溶化の選択は、前記多糖類が得られるGBS血清型、およびこの段階で依然として存在するコンタミに依存し得る。例えば、色素が、沈殿したペレット中に時折存在し、そしてこれらは、アルコール性再可溶化、続いての炭素濾過によって効果的に除去され得る。
【0057】
再可溶化についての典型的な水性媒体は、金属カチオンを含む。一価および二価の金属カチオンが好ましく、そして二価の金属カチオン(例えば、Mg++、Mn++、Ca++等)が特に好ましい。カルシウムイオンが特に有用であり、したがって、再可溶化は、好ましくは、塩化カルシウムの使用によって提供される、Ca++を使用する。10〜500mM(例えば、約0.1M)のCa++濃度が好ましい。最適な最終Ca++濃度は、多糖類が得られる連鎖球菌血清型に依存し得、そして過度な負担なしに型通りの実験によって決定され得る。
【0058】
再可溶化についての典型的なアルコール性媒体は、エタノールに基づく。核酸および/またはタンパク質の沈殿のために使用されるのと同一のアルコールが使用され得るが、莢膜糖類の沈殿のために必要とされる濃度は、一般的により高く、例えば、アルコールは、好ましくは、70%〜95%(例えば、約70%、75%、80%、85%、90%または95%)の最終アルコール濃度を与えるように添加される。最適な最終アルコール濃度は、前記多糖類が得られる連鎖球菌血清型に依存し得る。高アルコール濃度を達成するために、そのとき、低水分含有量のアルコール、例えば96%エタノールを添加することが好ましい。
【0059】
再可溶化は、典型的に、室温で生じる。酸性条件は好ましくは回避され、そして再可溶化は、典型的に、約pH7で行われる。
【0060】
再可溶化された材料は、沈殿前の懸濁液と比較して、非常に精製されている。
【0061】
前記糖類を調製するための1つの好ましい方法は、上記に記載の低級アルコールを使用しての多糖類沈殿続いての該沈殿した多糖類の可溶化を含む。再可溶化後、前記多糖類は、コンタミを除去するためにさらに処理され得る。これは、僅かなコンタミネーションでさえが受理可能でない状況において(例えば、ヒトワクチン製造について)、特に重要である。これは、典型的に、1以上の濾過の工程、例えば、ディプス濾過(depth filtration)、使用され得る活性炭による濾過、サイズ濾過および/または限外濾過を含む。濾過されコンタミが除去されると、前記多糖類は、さらなる処理および/またはプロセッシングのために沈殿され得る。これは、好都合なことに、カチオンを交換することによって(例えば、カルシウムまたはナトリウム塩の添加によって)、達成され得る。
【0062】
前記糖類を調製するための別の好ましい方法は、CTAB添加、遠心分離、および上澄みの回収を含む。それは、追加の回のCTABでの沈殿、遠心分離、および上澄み回収を含み得、ペーストが得られる。ペーストは、塩化カルシウムとブレンドされ得、均質な懸濁液が得られる。懸濁液は遠心分離され得、そして上澄みが、例えばデカンテーションによって回収され得る。糖類は、限外濾過によって処理され得る。次いで、塩化マグネシウムが添加され得、pHが7.2〜7.5へ(例えば、水酸化ナトリウムを使用して)調節され得、そしてヌクレアーゼが添加される。次いで、エタノールが、核酸およびタンパク質を沈殿させるために添加され得る。沈殿した物質は、遠心分離によって除去され得る。上澄み中の糖類は、回収され、そしてエタノールを添加することによって沈殿され得る。次いで、糖類は、乾燥され、次いで酢酸ナトリウム溶液に溶解され得る。
【0063】
前記多糖類は、好ましくは、複合体化の準備ができている、乾燥粉末として最終的に調製される。
【0064】
複合体調製
細菌の培養および莢膜多糖類の調製後、該糖類は、担体タンパク質へ複合体化される。一般的に、担体への糖類の共有的複合体化は、糖類の免疫原性を増強させ、何故ならば、それは、それらを、T独立性抗原からT依存性抗原へ変換し、したがって免疫記憶についてのプライミング(priming)を可能にするためである。複合体化は、小児用ワクチンについて特に有用であり[例えば、参考文献22]、そして周知の技術である[例えば、参考文献23〜31において概説される]。
【0065】
好ましい担体タンパク質は、細菌毒素またはトキソイド、例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドである。ジフテリア毒素のCRM197突然変異体[32〜34]が、特に好ましい担体であり、ジフテリアトキソイドも同様である。他の好適なタンパク質としては、髄膜炎菌(N.meningitidis)外膜タンパク質[35]、合成ペプチド[36、37]、熱ショックタンパク質[38、39]、百日咳タンパク質[40、41]、サイトカイン[42]、リンホカイン[42]、ホルモン[42]、成長因子[42]、種々の病原体由来抗原からの複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質[43]、例えば、N19[44]、インフルエンザ菌由来のプロテインD[45、46]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[47]、ニューモリシン(pneumolysin)[48]、鉄取り込みタンパク質[49]、C.difficile由来のトキシンAまたはB[50]、GBSタンパク質(下記を参照のこと)[51]等が挙げられる。
【0066】
前記担体への結合は、好ましくは、例えば、担体タンパク質中のリジン残基、またはアルギニン残基の側鎖中の、−NH基を介してである。糖類が遊離のアルデヒド基を有する場合、これは、担体中のアミンと反応し、還元的アミノ化により複合体が形成され得る。このような複合体は、前記糖類中の酸化ガラクトース(これからアルデヒドが形成される)および前記担体または前記リンカー中のアミンを関与させる還元的アミノ化を使用して作製され得る。結合はまた、例えば、システイン残基の側鎖中の、−SH基を介してであり得る。
【0067】
例えば担体抑制の危険性を減らすために、1以上の担体タンパク質を使用することが可能である。したがって、異なる担体タンパク質が、異なる連鎖球菌株または血清型について使用され得、例えば、GBS血清型Ia糖類はCRM197へ複合体化され得る一方、血清型Ib糖類は破傷風トキソイドへ複合体化され得る。特定の糖類抗原について1以上の担体タンパク質を使用することも可能であり、例えば、血清型III糖類は2つのグループ内にあり得、あるものはCRM197へ複合体化され、そして他のものは破傷風トキソイドへ複合体化される。しかし、一般的に、全ての糖類について同一の担体タンパク質を使用することが好ましい。
【0068】
単一の担体タンパク質が、2以上の糖類抗原を保有し得る[52、53]。例えば、単一の担体タンパク質は、血清型IaおよびIb由来の糖類へ複合体化されているかもしれない。この目的を達成するために、異なる糖類が、複合体化反応の前に混合され得る。しかし、一般的に、各血清群について別個の複合体を有することが好ましく、異なる糖類は複合体化後に混合される。前記別個の複合体は、同一の担体に基づき得る。
【0069】
過剰量のタンパク質(例えば、1:5)から過剰量の糖類(例えば、5:1)までの糖類:タンパク質比(w/w)を有する複合体が好ましい。1:2〜5:1の比が好ましく、1:1.25〜1:2.5の比も同様である。1:1〜4:1の比もまた好ましい。より長い糖類鎖では、重量過剰の糖類が典型的である。一般的に、本発明は、複合体が連鎖球菌(好ましくは、担体へ結合されたS.agalactiae莢膜糖類部分)を含む複合体を提供し、ここで、糖類:担体の重量比は、少なくとも2:1である。
【0070】
組成物は、少量の遊離の担体を含み得る。所定の担体タンパク質が本発明の組成物中に遊離形態および複合体化形態の両方で存在する場合、複合体化されていない形態は、好ましくは、全体として組成物中の担体タンパク質の総量の5%以下であり、そしてより好ましくは、2重量%未満で存在する。
【0071】
必要に応じて任意の好適なリンカーを用いて、任意の好適な複合体化反応が使用され得る。
【0072】
前記糖類は、典型的に、複合体化の前に、活性化または官能化される。活性化は、例えば、シアニル化(cyanylating)試薬、例えば、CDAP(例えば、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート[54、55等])を含み得る。他の好適な技術は、カルボジイミド、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン(norborane)、p−ニトロ安息香酸、N−ヒドロキシスクシンイミド、S−NHS、EDC、TSTUを使用する;参考文献29の導入もまた参照のこと。
【0073】
リンカー基を介しての連結は、任意の公知の手順、例えば、参考文献56および57に記載の手順を使用して、作製され得る。連結の1タイプは、前記多糖類の還元的アミノ化を含み、得られたアミノ基とアジピン酸リンカー基の一方の末端とをカップリングし、次いでアジピン酸リンカー基の他方の末端へタンパク質をカップリングする[27、58、59]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[60]、ニトロフェニル−エチルアミン[61]、ハロゲン化ハロアシル[62]、グリコシド結合[63]、6−アミノカプロン酸[64]、ADH[65]、C〜C12部分[66]等が挙げられる。リンカーを使用することの代替法として、直接連結が使用され得る。前記タンパク質への直接連結は、例えば参考文献67および68に記載されるような、前記多糖類の酸化、続いての該タンパク質での還元的アミノ化を含み得る。
【0074】
前記糖類中へのアミノ基の導入(例えば、−NHで末端=O基を置換することによる)、続いてのアジピン酸ジエステル(例えば、アジピン酸N−ヒドロキシスクシンイミドジエステル)での誘導体化、および担体との反応含むプロセスが、好ましい。別の好ましい反応は、プロテインD担体でのCDAP活性化を使用する。
【0075】
複合体化後、遊離の糖類と複合体化された糖類とが分離され得る。疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル・ウルトラフィルトレーション(tangential ultrafiltration)、ダイアフィルトレーション等を含む、多くの好適な方法が存在する(参考文献69および70等も参照のこと)。
【0076】
本発明の組成物が解重合されたオリゴ糖を含む場合、解重合が、複合体化に先行すること、例えば前記糖類の活性化前であることが好ましい。
【0077】
1つの好ましい複合体化方法において、糖類は、アジピン酸ジヒドラジドと反応される。血清群Aについて、カルボジイミドがまた、この段階で添加され得る。反応期間後、水素化シアノホウ素ナトリウムが添加される。次いで、誘導体化された糖類が、例えば限外濾過によって、調製され得る。次いで、前記誘導体化された糖類は、担体タンパク質と(例えば、ジフテリアトキソイドと)混合され、そしてカルボジイミドが添加される。反応期間後、前記複合体が回収され得る。
【0078】
他の工程
上述の工程を含むのと同様に、本発明の方法は、さらなる工程を含み得る。例えば、本方法は、それらが細菌から調製された後しかし複合体化前に、莢膜糖類の解重合の工程を含み得る。解重合は、前記糖類の鎖長を短縮し、そしてGBSについてはよくないかもしれない。連鎖球菌、特にGBSについて、より長い糖類は、より短いものよりもより免疫原性である傾向にある[71]。
【0079】
複合体化後、複合体化されていない担体タンパク質のレベルが、測定され得る。この測定を行う1つの方法は、キャピラリー電気泳動[72](例えば、遊離溶液中において)、またはミセル界面動電(micellar electrokinetic)クロマトグラフィー[73]を含む。
【0080】
複合体化後、複合体化されていない糖類のレベルが、測定され得る。この測定を行う1つの方法は、HPAEC−PAD[69]を含む。
【0081】
複合体化後、複合体化されていない糖類から複合体化された糖類を分離する工程が、使用され得る。これらの糖類を分離するための1つの方法は、1つの成分を選択的に沈殿する方法を使用することである。溶液中の複合体化されていない糖類を例えばデオキシコレート処理によって残すために、複合体化された糖類の選択的沈殿が好ましい[69]。
【0082】
複合体化後、複合体の分子サイズおよび/またはモル質量を測定する工程が行われ得る。特に、分布が測定され得る。これらの測定を行う1つの方法は、多角度光散乱光度法および示差屈折による検出を伴うサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−MALS/RI)を含む[74]。
【0083】
複合体コンビネーション
個々の複合体は、任意の肺炎球菌血清群について、上述のように調製され得る。好ましくは、複合体は、1以上の血清群1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fについて調製される。次いで、多価混合物を提供するために、個々の複合体は混合され得る。
【0084】
選択された数の複合体を混合し、2価、3価、4価、5価、6価、7価または11価の混合物を提供することも可能である(例えば、1+3+4+5+6B+7F+9V+14+18C+19F+23F、4+6B+9V+14+18C+19F+23F、または1+4+6B+9V+14+18C+19F+23F等を混合する)。
【0085】
GBSについて、複合体は、好ましくは、1以上の血清型Ia、IbまたはIIIから調製される。
【0086】
複合体は、それらを緩衝化溶液へ個々に添加することによって混合され得る。好ましい溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(最終濃度10mMリン酸ナトリウム)である。最終混合物中の各複合体(糖類として測定)の好ましい濃度は、1〜20μg/ml、例えば5〜15μg/m、例えば約8μg/mlである。任意のアルミニウム塩アジュバントが、この段階で添加され得る(例えば、0.4〜0.5mg/mlの最終Al3+濃度を与えるため)。
【0087】
混合後、混合された複合体は、無菌濾過され得る。
【0088】
薬学的組成物
本発明の方法によって調製された複合体は、薬学的に許容される担体と混合され得る。このような担体としては、該組成物を受容する個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘発しない任意の担体が挙げられる。好適な担体は、典型的に、大きな徐々に代謝された高分子、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、および脂質集合体(例えば、油滴またはリポソーム)である。このような担体は、当業者に周知である。ワクチンはまた、希釈剤、例えば、水、生理食塩水、グリセロール等を含有し得る。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等が存在し得る。無菌で発熱物質フリーのリン酸緩衝生理食塩水が、典型的な担体である。薬学的に許容される賦形剤の徹底的な議論は、参考文献75において入手可能である。
【0089】
組成物は、特に複数回用量形式で包装される場合、抗菌剤を含み得る。
【0090】
組成物は、洗剤、例えばTween(ポリソルベート)、例えばTween80を含み得る。洗剤は、一般的に、低レベル、例えば<0.01%で存在する。
【0091】
組成物は、張度を提供するために、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。10±2mg/mlの濃度のNaClが典型的である。
【0092】
組成物は、一般的に緩衝液を含む。リン酸緩衝液が典型的である。
【0093】
組成物は、特に凍結乾燥される場合、または凍結乾燥材料から再構築された材料を含む場合、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖類(例えば、スクロースもしくはトレハロース)を例えば約15〜30mg/ml(例えば25mg/ml)で含み得る。凍結乾燥用の組成物のpHは、凍結乾燥前に、約6.1へ調節され得る。
【0094】
複合体は、他の免疫調節剤と共に投与され得る。特に、組成物は、通常、ワクチンアジュバントを含む。本発明の組成物中に使用され得るアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
A.ミネラル含有組成物
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なミネラル含有組成物は、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩を含む。本発明は、無機塩、例えば、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩等[例えば、参考文献76の第8および9章を参照のこと]、あるいは異なる無機化合物の混合物を含み、前記化合物は任意の好適な形態(例えば、ゲル、結晶性、非晶質等)をとり、そして吸着が好ましい。ミネラル含有組成物はまた、無機塩の粒子として製剤化され得る[77]。
【0095】
特にインフルエンザ菌糖類抗原を含む組成物中において、リン酸アルミニウムが特に好ましく、そして典型的なアジュバントは、0.6mgAl3+/mlで含まれる、0.84〜0.92のPO/Alモル比を有する非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウムでの吸着が使用され得る;例えば1複合体1用量当たり50〜100μgAl3+。組成物中に2以上の複合体が存在する場合、全ての複合体が吸着される必要はない。
【0096】
B.オイルエマルジョン
本発明におけるアジュバントとして好適なオイルエマルジョン組成物としては、スクアレン−水エマルジョン、例えば、MF59[参考文献76の第10章;参照文献78もまた参照のこと](マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子へ製剤化された、5% スクアレン、0.5% Tween80、および0.5% Span85)が挙げられる。完全フロイントアジュバント(CFA)、および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、使用され得る。
【0097】
C.サポニン製剤[参考文献76の第22章]
サポニン製剤もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根においてそして花においてさえ見られる、ステロール配糖体およびトリテルペノイド配糖体の異種グループである。Quillaia saponariaモリナツリー(Molina tree)の樹皮由来のサポニンが、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサプリア(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライドベール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(ソープルート(soap root))から商業的に得られ得る。サポニンアジュバント製剤としては、精製された製剤、例えばQS21、ならびに液体製剤、例えばISCOMが挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販されている。
【0098】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製されている。これらの技術を使用して特定の精製された分画(QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cを含む)が同定された。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の製造方法は、参考文献79に開示されている。サポニン製剤はまた、ステロール、例えばコレステロールを含み得る[80]。
【0099】
サポニンおよびコレステロールの組み合わせは、免疫刺激性複合体(ISCOM)と呼ばれる独特な粒子を形成するために使用され得る[参考文献76の第23章]。ISCOMはまた、典型的に、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンを含む。任意の公知のサポニンが、ISCOM中において使用され得る。好ましくは、ISCOMは、1以上のQuilA、QHAおよびQHCを含む。ISCOMは、さらに参考文献80〜82に記載されている。必要に応じて、ISCOMは、さらなる洗剤を含まないかもしれない[83]。
【0100】
サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、参考文献84および85に見られ得る。
【0101】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造体は、一般的に、必要に応じてリン脂質と組み合わされたまたは配合されたウイルス由来の1以上のタンパク質を含有する。それらは、一般的に、非病原性、非複製性であり、そして一般的に天然のウイルスゲノムのいずれをも含有しない。ウイルスタンパク質は、組換えで作製され得るか、または全ウイルスから単離され得る。ビロソームまたはVLPにおける使用に好適なこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアまたはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、コートタンパク質)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)から誘導されたタンパク質が挙げられる。VLPは、参考文献86〜91にさらに議論されている。ビロソームは、例えば参考文献92にさらに議論されている。
【0102】
E.細菌性または微生物性誘導体
本発明における使用に好適なアジュバントとしては、細菌または微生物誘導体、例えば、腸内細菌リポ多糖類(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体が挙げられる。
【0103】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスノリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6つのアシル化された鎖を有する3−脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。3−脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態は、参考文献93に開示されている。3dMPLのこのような「小粒子」は、0.22μm膜を通って無菌濾過されるに十分に小さい[93]。他の非毒性LPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣物、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えばRC−529[94、95]が挙げられる。
【0104】
リピドA誘導体としては、大腸菌由来のリピドAの誘導体、例えばOM−174が挙げられる。OM−174は、例えば参考文献96および97に記載されている。
【0105】
本発明におけるアジュンバントとしての使用に好適な免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含有するヌクレオチド配列(グアノシンへリン酸結合によって結合された非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含有するオリゴヌクレオチドおよび二本鎖RNAもまた、免疫刺激性であると示された。
【0106】
CpGは、ヌクレオチド修飾/アナログ、例えばホスホロチオエート修飾を含み得、そして二本鎖または一本鎖であり得る。参考文献98、99および100は、可能なアナログ置換、例えば2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでのグアノシンの置換を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献101〜106においてさらに議論されている。
【0107】
CpG配列は、TLR9、例えばモチーフGTCGTTまたはTTCGTTへ指向され得る[107]。CpG配列は、Th1免疫応答を誘発するために特異的であり得(例えば、CpG−A ODN)、またはそれは、B細胞応答を誘発するためにより特異的であり得る(例えば、CpG−B ODN)。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献108〜110に議論されている。特に、CpGは、CpG−A ODNである。
【0108】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識についてアクセス可能であるように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、「イムノマー(immunomers)」を形成するようにそれらの3’末端で結合され得る。例えば、参考文献107および111〜113を参照のこと。
【0109】
細菌ADP−リボシル化毒素およびその無毒化された誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、前記タンパク質は、大腸菌(大腸菌熱不安定性腸毒素「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)から誘導される。粘膜アジュバントとしての無毒化されたADP−リボシル化毒素の使用は、参考文献114に記載されており、そして非経口アジュバントとして参考文献115に記載されている。前記毒素またはトキソイドは、好ましくは、AおよびBサブユニットの両方を含む、ホロトキシン(holotoxin)の形態である。好ましくは、Aサブユニットは、無毒化突然変異を含有し;好ましくは、Bサブユニットは突然変異されていない。好ましくは、前記アジュバントは、無毒化されたLT突然変異体、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192である。アジュバントとしてのADP−リボシル化毒素およびその無毒化された誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)の使用は、参考文献116〜123に見られ得る。アミノ酸置換についての数的参照は、好ましくは、参考文献124(これは、参照によりその全体が本明細書中に具体的に組み込まれる)に記載のADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアライメントに基づく。
【0110】
F.ヒト免疫調節剤
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なヒト免疫調節剤としては、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[125]等)[126]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。好ましい免疫調節剤は、IL−12である。
【0111】
G.生物接着剤および粘膜接着剤
生物接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好適な生物接着剤としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[127]または粘膜接着剤(例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る[128]。
【0112】
H.微粒子
微粒子もまた、本発明におけるアジュバントとして使用され得る。生分解性かつ非毒性である物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトン等)とポリ(ラクチド−コ−グリコリド)とから形成された、微粒子(即ち、直径が約100nm〜約150μm、より好ましくは、直径が約200nm〜約30μm、および最も好ましくは直径が約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、それは、必要に応じて、負電荷表面(例えば、SDSを有する)または正電荷表面(例えば、カチオン性洗剤(例えば、CTAB)を有する)を有するように処置される。
【0113】
I.リポソーム(参考文献76の第13および14章)
アジュバントとしての使用に好適なリポソーム製剤の例は、参考文献129〜131に記載されている。
【0114】
J.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤
本発明における使用に好適なアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる[132]。このような製剤としては、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[133]、ならびに少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤[134]がさらに挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0115】
K.ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP製剤は、例えば、参考文献135および136に記載されている。
【0116】
L.ムラミルペプチド
本発明におけるアジュバントとしての使用に好適なムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0117】
M.イミダゾキノロン化合物
本発明におけるアジュバントとしての使用のために好適なイミダゾキノロン(imidazoquinolone)化合物の例としては、参考文献137および138にさらに記載される、イミクアモド(imiquamod)およびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられる。
【0118】
本発明はまた、上記に同定される1以上のアジュバントの局面の組み合わせを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明に使用され得る:(1)サポニンおよび水中油型エマルジョン[139];(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)[140];(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[141];(5)例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンと3dMPLとの組み合わせ[142];(6)10% スクアレン、0.4% Tween80TM、5% プルロニック(pluronic)ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含む、SAF(サブミクロン乳濁液にマイクロフルイダイズされるか、またはより大きな粒子サイズの乳濁液を作製するようにボルテックスされるかのいずれか)。(7)2% スクアレン、0.2% Tween 80、および以下:モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM))を含有する、RibiTMアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);ならびに(8)1種以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒素誘導体(例えば、3dPML)。
【0119】
免疫刺激剤として作用する他の物質が、参考文献76の第7章に開示されている。
【0120】
水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が、特に好ましく、そして抗原は、一般的にこれらの塩へ吸着される。リン酸カルシウムは、別の好ましいアジュバントである。
【0121】
前記組成物は、無菌および/または病原体フリーであり得る。組成物は、ヒトに対して等張であり得る。
【0122】
組成物は、バイアル中に提示されてもよく、またはそれらは、準備された−充填された注射器(ready−filled syringes)中に提示されてもよい。前記注射器は、針と共にまたは針無しで供給され得る。注射器は、単回用量の組成物を含み、一方、バイアルは、単回用量または複数回用量を含み得る。注射可能な組成物は、通常、液体溶液または懸濁液である。あるいは、それらは、注射前に、液体ビヒクル中の懸濁液または溶液のための固体形態(例えば、凍結乾燥化)で提示されてもよい。
【0123】
組成物は、単位用量形態または複数回用量形態で包装され得る。複数回用量形態について、バイアルは、プレ充填された注射器より好ましい。有効な投薬量は、慣用的に定められ得るが、注射用の組成物の典型的なヒト用量は、0.5mlの量を有する。
【0124】
組成物が使用前に即座に調製され(例えば、成分が、凍結乾燥形態で提示される場合)そしてキットとして提示される場合、該キットは、2つのバイアルを含み得るか、またはそれは、1つの準備された−充填された注射器および1つのバイアルを含み得、該注射器の内容物は、注射前に該バイアルの内容物を活性化するために使用される。
【0125】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原、ならびに、必要に応じて、任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」によって、単回用量でのまたは一連の一部としての、個体へのその量の投与が、治療または予防に有効であることが意味される。この量は、治療される個体の健康および身体的状態、年齢、治療される個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類等)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望の保護の程度、ワクチンの製剤、医学的状態の治療する医師の評価、および他の関連因子に依存して、変化する。前記量は、型通りの試行によって決定され得る比較的広い範囲に入り、そして各連鎖球菌複合体の典型的な量は、1複合体当たり1μg〜20μg(糖類として測定)であると予想される。
【0126】
したがって、本発明は、(a)上述の複合体を調製する工程;(b)該複合体と1以上の薬学的に許容される担体とを混合する工程を含む、薬学的組成物を調製する方法を提供する。
【0127】
本発明は、さらに、(a)上述の複合体を調製する工程;(b)該複合体と1以上の薬学的に許容される担体とを混合する工程;および(c)該複合体/担体混合物を容器(例えば、バイアルまたは注射器)中へ包装し医薬品を提供する工程を含む、医薬品を調製するための方法を提供する。注射器中への挿入は、工場または手術室において行われ得る。
【0128】
本発明はまた、糖類−タンパク質複合体から薬学的組成物を調製する方法であって、該複合体と薬学的に許容される担体とを混合する工程を含む方法を提供し、ここで、該複合体は、上述のプロセス複合体化方法によって調製されている。複合体化方法および混合工程は、異なる場所において(例えば、異なる国において)、異なる人々によって、非常に異なる時間で、行われ得る。
【0129】
本発明はまた、糖類−タンパク質複合体を医薬品へ包装するための方法を提供し、ここで、該複合体は、上述のプロセス複合体化方法によって調製されている。複合体化方法および包装工程は、異なる場所において(例えば、異なる国において)、異なる人々によって、非常に異なる時間で、行われ得る。
【0130】
薬学的使用
本発明はまた、患者へ組成物を投与することを含む、患者を治療する方法を提供する。患者は、彼ら自身疾患の危険があってもよく、または妊婦であってもよい(「母体免疫」)。患者は好ましくはヒトである。ヒトは、任意の年齢、例えば、<2歳、2〜11歳、11〜55歳、>55歳等であり得る。
【0131】
本発明はまた、治療における使用のための前記組成物を提供する。本発明はまた、疾患の治療のための医薬の製造における、前記組成物の使用を提供する。好ましくは、前記疾患は、インフルエンザまたは肺炎である。
【0132】
組成物は、一般的に、患者へ直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下に、腹腔内に、静脈内に、筋内に、または組織の間質腔へ)によって、または経直腸、経口、経膣、局所、経皮、鼻内、経眼、経耳、経肺または他の経粘膜投与によって達成され得る。筋内投与(例えば、大腿部または上腕への)が好ましい。注射は針(例えば、皮下注射針)を介してであり得るが、無針注射が代わりに使用されてもよい。典型的な筋内用量は、0.5mlである。
【0133】
本発明は、全身性および/または粘膜免疫を誘発するために使用され得る。
【0134】
投薬治療は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。複数回用量は、プライマリー(primary)免疫スケジュールおよび/またはブースター(booster)免疫スケジュールにおいて使用され得る。プライマリー用量スケジュールに、ブースター用量スケジュールが続くかもしれない。プライミング用量間の好適なタイミング(例えば、4〜16週)、およびプライミングとブースティングとの間の好適なタイミングは、型通りに決定され得る。
【0135】
細菌感染は、体の種々の領域に影響を与え、したがって、組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、組成物は、注射物質として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、調製され得る。注射前の液体ビヒクル中の、溶液、または懸濁液に好適な固体形態もまた、調製され得る(例えば、凍結乾燥化組成物)。組成物は、局所投与のために、例えば、軟膏剤、クリームまたは粉剤として調製され得る。組成物は、経口投与のために、例えば、錠剤またはカプセル剤として、あるいはシロップ剤(必要に応じて風味付けされる)として、調製され得る。組成物は、微細な粉末またはスプレーを使用して、経肺投与のために、例えば、吸入器として、調製され得る。組成物は、坐薬または膣坐薬として調製され得る。組成物は、経鼻、経耳または経眼投与のために、例えば、スプレー、ドロップ、ゲルまたはパウダーとして、調製され得る[例えば、参考文献143および144]。注射可能な組成物が好ましい。
【0136】
本発明の組成物のさらなる抗原成分
本発明の方法はまた、連鎖球菌複合体と1以上の下記のさらなる抗原とを混合する工程を含み得る:
− インフルエンザ菌B由来の糖類抗原[例えば、参考文献145の第14章]。
− 髄膜炎菌の血清群B由来の精製タンパク質抗原。
− 髄膜炎菌の血清群B由来の外膜調製物。
− A型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、不活性化ウイルス[例えば、146、147]。
− B型肝炎ウイルス由来の抗原、例えば、表面および/またはコア抗原[例えば、147、148]。
− ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド[例えば、参考文献145の第13章]。
− 破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド[例えば、参考文献145の第27章]。
− 百日咳菌由来の抗原、例えば、百日咳菌由来の線維状血球凝集素(FHA)および百日咳ホロトキシン(PT)(必要に応じてまた、ペルタクチンおよび/または凝集原2および3と組み合わされる)[例えば、参考文献149および150;参考文献145の第21章]。
− ポリオ抗原[例えば、151、152]、例えば、IPV[参考文献145の第24章]。
− 麻疹、おたふく風邪、および/または風疹抗原[例えば、参考文献145の第19、20および26章]。
− インフルエンザ抗原[例えば、参考文献145の第17章]、例えば、血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質。
− Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、153]。
− Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来のタンパク質抗原[例えば、154、155]。
− Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、155、156、157]。
− 黄色ブドウ球菌由来の抗原[例えば、158]。
組成物は、これらのさらなる抗原の1以上を含み得る。
【0137】
毒性タンパク質抗原は、必要に応じて、無毒化され得る(例えば、化学的および/または遺伝子的手段による百日咳毒素の無毒化[150])。
【0138】
ジフテリア抗原が組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含めることがまた好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含めることがまた好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含めることがまた好ましい。したがって、DTP組み合わせが好ましい。
【0139】
組成物中の抗原は、典型的に、各々少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するに十分である。
【0140】
本発明の免疫原性組成物中においてタンパク質抗原を使用することの代替法として、該抗原をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミド形態の、DNA)が使用され得る。
【0141】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩へ吸着される。
【0142】
組成物中に含めるために好ましい非連鎖球菌抗原は、B型インフルエンザ菌(Hib)から保護するものである。典型的に、これは、Hib莢膜糖類抗原である。b型インフルエンザ菌由来の糖類抗原は周知である。
【0143】
有利なことに、前記Hib糖類は、特に小児における、その免疫原性を増強するために、担体タンパク質へ共有結合される。一般的に多糖類複合体の、そして特にHib莢膜多糖類の、調製は、十分に実証されている。本発明は、任意の好適なHib複合体を使用し得る。好適な担体タンパク質は上記に記載されており、そしてHib糖類について好ましい担体は、CRM197(「HbOC」)、破傷風トキソイド(「PRP−T」)、および髄膜炎菌の外膜複合体(「PRP−OMP」)である。
【0144】
前記複合体の糖類部分は、多糖類(例えば、全長ポリリボシルリビトールリン酸(PRP))であり得るが、多糖類を加水分解しオリゴ糖(例えば、約1〜5kDaのMW)を形成することが好ましい。
【0145】
好ましい複合体は、アジピン酸リンカーを介してCRM197へ共有結合されたHibオリゴ糖を含む[159、160]。破傷風トキソイドもまた、好ましい担体である。
【0146】
Hib抗原の投与は、好ましくは、≧0.15μg/ml、そしてより好ましくは≧1μg/mlの抗PRP抗体濃度を生じさせる。
【0147】
組成物がHib糖類抗原を含む場合、それが水酸化アルミニウムアジュバントをさらに含まないことが好ましい。組成物がリン酸アルミニウムアジュバントを含む場合、Hib抗原は該アジュバントへ吸着されていてもよく[161]、またはそれは吸着されていなくてもよい[162]。吸着の防止は、抗原/アジュバント混合の間に正しいpH、ゼロ電荷の好適な点を有するアジュバント、および組成物中の種々の異なる抗原についての混合の好適な順番を選択することによって達成され得る[163]。
【0148】
本発明の組成物は、2以上のHib抗原を含み得る。Hib抗原は、例えば髄膜炎菌組成物による再構築のために、凍結乾燥され得る。したがって、Hib抗原は、髄膜炎菌複合体とは別に包装されてもよく、またはそれらと共に混合されてもよい。
【0149】
本発明の組成物中に含めるための他の非連鎖球菌抗原は、性感染病(STD)由来のものである。このような抗原は、STD、例えば、クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(例えば、HCV)、性器いぼ(genital warts)、淋病、梅毒および/または軟性下疳についての予防および治療を提供し得る[164]。抗原は、1以上のウイルス性または細菌性STDから誘導され得る。本発明における使用のためのウイルス性STD抗原は、例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および/または肝炎(HCV)から誘導され得る。本発明における使用のための細菌性STD抗原は、例えば、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)または大腸菌から誘導され得る。
【0150】
一般
用語「含む」は、「含む」および「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなってもよく、または追加のものを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0151】
数値xに関して用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0152】
用語「実質的に」は「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
連鎖球菌を流加培養で増殖する、連鎖球菌を培養するためのプロセス。
(項目2)
流加培養において連鎖球菌を培養する工程を含む連鎖球菌の株からのcps収率を増加させるためのプロセスであって、バッチまたは連続培養条件下で、該株が<10mg cps/g DWを産生する、プロセス。
(項目3)
流加培養において連鎖球菌を培養する方法であって、cpsの収率が>10mg cps/g DWである、方法。
(項目4)
前記培養がバッチ段階、続いてフェド−バッチ段階を有し、該フェド−バッチ段階の間、tが80分以下に維持される、項目1もしくは2に記載のプロセスまたは項目3に記載の方法。
(項目5)
前記tが45分に維持される、項目4に記載のプロセスまたは方法。
(項目6)
炭素レベルがpH依存性供給を使用して維持される、項目1〜5のいずれかに記載のプロセスまたは方法。
(項目7)
前記pH依存性供給が、セット−pHポイント(set−pH point)(pHc)によって制御され、ここで、培養物のpHが該pHcを超えて上昇する場合、炭素源が培地へ添加され、そして該培養物のpHが該pHc未満に低下する場合、炭素供給が停止される、項目6に記載のプロセスまたは方法。
(項目8)
前記pHcが6〜8である、項目7に記載のプロセスまたは方法。
(項目9)
前記pHcが7.2である、項目8に記載のプロセスまたは方法。
(項目10)
連鎖球菌が45分のtで培養される、連鎖球菌から高収率のcpsを産生する方法。
(項目11)
連鎖球菌を培養するための方法であって、該方法は、
培地中において連鎖球菌の流加培養を開始する工程、および
pHが閾値を超えて上昇する場合、炭素源を該培地へ添加し、そしてpHが該閾値未満に低下する場合、該炭素源供給を停止するように該培養物のpHをモニタリングする工程を含み、連鎖球菌のtが80分以下に維持される、方法。
(項目12)
培養における細菌の増殖を制御するための制御アルゴリズムであって、pHがpHcを超えて上昇する場合、培養物に炭素源が供給され、そしてpHが該pHc未満に低下する場合、供給が停止するように、該培養物のpHがモニタリングされる、制御アルゴリズム。
(項目13)
a)流加培養において連鎖球菌を培養する工程、およびb)該細菌からcpsを調製する工程を含む、方法。
(項目14)
c)前記莢膜多糖類を担体タンパク質へ複合体化し、タンパク質−糖類複合体を得る工程をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
項目14に記載の方法によって調製されたタンパク質−糖類複合体。
(項目16)
項目15に記載のタンパク質−糖類複合体を含む薬学的組成物。
(項目17)
前記複合体が、多価混合物であり、かつ、肺炎球菌の血清群1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fの1以上由来のcpsを含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18)
前記多価混合物が、以下の肺炎球菌血清群:
a)1+3+4+5+6B+7F+9V+14+18C+19F+23F、
b)4+6B+9V+14+18C+19F+23F、または
c)1+4+6B+9V+14+18C+19F+23F
由来のcpsを含む、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19)
項目1〜11のいずれか1項に記載の方法またはプロセスによって得られる、以下の肺炎球菌血清群:
a)1+3+4+5+6B+7F+9V+14+18C+19F+23F、
b)4+6B+9V+14+18C+19F+23F、または
c)1+4+6B+9V+14+18C+19F+23F
由来のcpsの多価混合物を含む、薬学的組成物。
(項目20)
前記複合体が、多価混合物であり、かつ、GBSの血清群Ia、IbまたはIIIの1以上由来のcpsを含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目21)
薬学的に許容される希釈剤または担体をさらに含む、項目16〜20のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目22)
アジュバントをさらに含む、項目16〜21のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目23)
a)項目14に記載の方法によって複合体を調製する工程、およびb)該複合体と1以上の薬学的に許容される担体または希釈剤とを混合する工程を含む、薬学的組成物を調製する方法。
(項目24)
c)工程b)の産物とアジュバントとを混合する工程をさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
d)前記複合体/担体混合物をバイアルまたは注射器等の容器中へ包装し、医薬品を得る工程をさらに含む、項目23または24に記載の方法。
(項目26)
バイアルまたは注射器中に包装された、項目16〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物を、使用指示書と共に含む、キット。
(項目27)
項目16〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与することを含む、患者を治療する方法。
(項目28)
治療における使用のための、項目16〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目29)
患者における免疫応答を惹起するための、医薬の製造における、項目16〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物の使用。
(項目30)
前記免疫応答が肺炎球菌に対して指向される、項目29に記載の使用。
(項目31)
肺炎の治療のための、医薬の製造における、項目16〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物の使用。
(項目32)
前記患者が2歳未満または55歳超である、項目29〜31のいずれか1項に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、異なる連続発酵の間および異なる増殖速度での、(A)1a型莢膜多糖類、(B)1b型莢膜多糖類および(c)3型莢膜多糖類の特異的(specific)産生を示す。特異的な莢膜多糖類値は、mg/gDWで表される。
【図2】図2は、体積的生産性が流加培養にわたってどのように増加するかを示す。
【図3】図3は、比生産性(specific productivity)が流加培養にわたってどのように減少しないかを示す。
【図4】図4は、最終のpH調節されたグルコース飢餓制御を伴う複合培地流加培養を示す。
【図5】図5は、グルコース供給のpH制御を示す。
【発明を実施するための形態】
【0154】
発明を実施するための形態
高比収率(specific yield)についての最適な増殖速度の確立
特異的莢膜多糖類産生についての最善の増殖速度を決定するために、多くの連続培養を種々の希釈で実行した。莢膜多糖類含有量を、シアル酸を定量するための化学薬品投与方法(chemical dosing method)を使用して測定した[165]。前記方法が複雑なサンプルに適用される場合、無莢膜突然変異株(COH1−13)を使用して、干渉を測定した[166]。シアル酸および精製莢膜多糖類をスパイクすることによって、前記方法を確認した。クロマトグラフィーによって、結果をまたクロス確認した(cross−validated)。
【0155】
1a型株O90は、遅いものよりも1.5倍より多い莢膜タンパク質を速い速度で産生することが示された(図1Aを参照のこと)。1b型株H36bを、株O90について使用したものよりもさらに速い増殖速度(<35分のt)で試験した。しかし、この非常に速い増殖速度は、45分のtで産生されるものよりも低い収率を生じさせた。試験した全ての株に関して、tを95分まで増加させることは、莢膜多糖類種率のさらなる低下を生じさせた。株7357bは、培養物倍増時間に関して同一のパターンを示したが、株H36bよりも血清型Ibの莢膜多糖類を70%より多く産生することができた(図1Bを参照のこと)。血清型3莢膜多糖類を、株M781を使用して産生した(図1C)。また、莢膜多糖類の最適な産生は、45分のtで生じ、一方、より速い(35分)およびより遅い(64分)増殖速度は、より低い莢膜多糖類収率を生じさせた。表1は、実験結果を要約する。45分(0.75時間)のtについての莢膜多糖類の平均収率は、t<0.6時間またはt>1時間で達成されるものとは統計的に異なることがわかった(不対(unpaired)スチューデントt検定を使用)。最適な収率は、0.6時間<t<1時間で生じた。
【0156】
【表1】

体積的生産性は、試験した連鎖球菌の全ての4つの株について、流加培養の種々の段階(バッチ、フェド−バッチ[FB]および炭素供給[GF])の間に増加した(図2)。複合培地供給の間、増加は、特異的な産物の増加に起因する。炭素供給(これは、この場合、グルコースである)の間の増加は、より高いバイオマス産生に起因する。
【0157】
同様に、比生産性(specific productivity)もまた、バッチ段階からフェド−バッチ(FB2)段階の終了まで増加することが示された(図3)。次いで、株O90および株735b(図3aおよびb)について、前記生産性は、FB2からpH調節された炭素供給段階(GF3)の終了まで一定のままであった。しかし、株M781および株2603(図3cおよびd)の生産性は、FB2からGF3まで増加し続けた。
【0158】
指数的供給を伴う流加培養
最終のpH制御されたグルコース供給を伴うフェド−バッチ
培養物は、OD>5.5へバッチ中において増殖され、この時点で、複合培地の指数的供給が、0.138h−1の希釈率(D)で開始した(FB1)。培養物がOD>7.5に達した際に、希釈率を1.08h−1へ増加した(FB2)。45分のtでの定常状態を、5Lの最終体積が達成されるまで維持した。この時点で、pH制御された炭素供給(GF)を、pH7.2で設定されたpHcで活性化し(これは、この場合、グルコース供給であった)、そして増殖をOD=16まで継続し、増殖速度は漸進的に減少した(図4を参照のこと)。
【0159】
種々の時点でのcps含有量の分析は、特異的なcps産生が、連続培養について見られたのと同一のレベルで、しかし遥かに速い培養密度で維持されることを示した。
【0160】
グルコース供給のpH制御
B群連鎖球菌は多くの酸代謝物を産生するので、最適な好気条件下でさえ(それはクレブス回路の一部を欠いているので)、前記株が制限なしで(即ち、グルコースの存在下で)増殖される場合、培養pHはpHc(ベースポンプ(base pump)は徐々にのみ活性化される)より下に低下する。グルコース濃度があるレベルより下に低下する場合、前記生物の代謝速度は減少され、そしてpHは7.2へ増加する(調節のセットポイント−pHc値)。
【0161】
制御アルゴリズムをプログラムし、pHがpHc値に達する場合にグルコース供給を開始し、そしてpHが下回る場合にそれを停止した(図5を参照のこと)。この場合、グルコース供給は、5Lの最終培養体積が達成されると、失速されただけであった(only
stalled)。
【0162】
直面する体積的生産性
O90のフェド−バッチ発酵は、体積的生産性(P)を倍増する方法を提供し、何故ならば、pH制御されたグルコース供給は高ODを可能にするためである。
【0163】
株DK21および株2603は、21までのOD(9.45gDW/L)を得た。両方とも、悪い莢膜多糖類プロデューサーであることが公知であるが、制御されたグルコース供給を伴うフェド−バッチは、それらの莢膜多糖類を得るための受理可能な解決法を提供する。したがって、高収率の莢膜多糖類が、流加培養を使用して産生され得、したがって連続培養に伴う問題を回避する。試験した異なる株およびそれぞれの収率の比較が、表2に見られ得る。特定の株について、体積的生産性を倍増することは、流加培養を使用して達成され得る。
【0164】
【表2】

実験をまた、フェドバッチ条件下で、150g/L酵母抽出物を含有する5×濃縮された複合媒体を使用して行った(「標準」培地は、たったの16.66g/Lの酵母抽出物を含有した)。発酵の結果は表3に示す。
【0165】
【表3】

これらの結果は、濃縮された培地の使用が、より高いODで、増殖を可能にすることを示しており、cpsの全般的により高い体積的産生を生じさせ、しかしより低い特異的産生(mg/g乾燥重量)を生じさせる。結果はまた、CJB11が2603Vよりもより高いODへ増殖され得たことを示し、血清型V cpsの商業的生産についてそれをより有用にする。
【0166】
本発明はほんの一例として記載されたこと、ならびに本発明の範囲および精神内にありながら修飾が行われ得ることが、理解される。
【0167】
参考文献(これらの内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)
【0168】
【化1】

【0169】
【化2】

【0170】
【化3】

【0171】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−187122(P2012−187122A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144067(P2012−144067)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2008−538455(P2008−538455)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(507238285)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (35)
【Fターム(参考)】