説明

進入口の施工方法および進入口

【課題】進入口を三階建て以上の建物の傾斜面側に容易に取り付けることができる進入口の施工方法および進入口を提供することを目的とする。
【解決手段】上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に、予め組み立てられた状態の進入口30を仮に取り付けておき、上階建物ユニット10bを設置した後に、この上階建物ユニット10bから進入口30を取り外すとともに傾斜面4側に移動させ、建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置する。これにより、上階建物ユニットの設置と同時に、進入口も、建物の三階以上の階に運搬できるとともに、進入口を、三階以上の階で組み立てる必要が無くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三階建て以上の建物の傾斜面側に設けられる進入口および進入口の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三階建て以上の建物のうち、三階以上の階で高さ31メートル以下の部分には、火災時に消防隊が消火活動に使用するための非常用進入口、または、この非常用進入口に代わる代用進入口を設けることが義務付けられている。
従来、このような非常用進入口(以下、進入口)を備えた台形箱状の建物ユニットを用いて三階建て以上の建物を建築する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のような台形箱状の建物ユニットを用いることによって、法律で定められた斜線制限に対応する建物の傾斜面側に進入口を確実に設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−203119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、台形箱状の建物ユニットを用いなければならない分、コストや作業手間が増加する場合があり、台形箱状の建物ユニットを用いずに三階建て以上の建物を建築したいという要望があった。
ところが、台形箱状の建物ユニットを用いないとなると、現場にて、進入口を三階以上の階に運搬したり、組み立てを行ったりしなければならない。このため、かえって作業手間が増えてしまい、施工性の向上を図れない場合がある。
【0005】
本発明の課題は、進入口を三階建て以上の建物の傾斜面側に容易に取り付けることができる進入口の施工方法および進入口を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、進入口30の施工方法であって、例えば図1〜図10に示すように、複数の下階建物ユニット10a…を並設して建物1の下階2を形成し、
その後、上階建物ユニット10bを、前記複数の下階建物ユニット10a…よりも上方で、かつ複数の下階建物ユニット10a…のうち建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aよりも内側に設置し、さらに、この上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間に傾斜面材20を架け渡して傾斜面4を形成することによって、建物1の三階以上の階である上階3を形成するに際し、
前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に、予め組み立てられた状態の進入口30を仮に取り付けておき、
前記上階建物ユニット10bを設置した後に、この上階建物ユニット10bから前記進入口30を取り外すとともに前記傾斜面4側に移動させ、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記上階建物ユニット10bを、前記複数の下階建物ユニット10a…よりも上方で、かつ複数の下階建物ユニット10a…のうち建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aよりも内側に設置するのと同時に、この上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に仮に取り付けられた前記進入口30も、建物1の三階以上の階3に運搬することができる。さらに、前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bから取り外すとともに前記傾斜面4側に移動させ、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置するようにして取付作業を行うので、三階以上の階3で進入口30を組み立てる必要が無くなり、この進入口30を、前記上階建物ユニット10bから前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に付け替えるだけで済む。これによって、前記進入口30を三階建て以上の建物1の傾斜面4側に容易に取り付けることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図4〜図10に示すように、請求項1に記載の進入口30の施工方法において、
前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面に、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40を設置した後に、前記上階建物ユニット10bを設置することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記上階建物ユニット10bを設置する前に、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面に設置しておくので、前記上階建物ユニット10bを設置してから、前記進入口30の取付作業に取り掛かることができる。すなわち、前記進入口30は、前記上階床パネル40に取り付けられるため、この進入口30が運搬される前に上階床パネル40が設置されていれば、この進入口30を、設置場所を間違えることなく前記上階床パネル4の所定の位置に取り付けることができる。
また、前記上階床パネル40を足場として、前記進入口30の取付作業を行うことができるので、この進入口30の取付作業を安全に行うことができる。
また、例えば前記上階床パネル40のうち、前記進入口30の下端部を取り付ける部位(例えば床中間梁42)が露出するなどして分かる状態となっていれば、この上階床パネル40の特定の部位を、前記進入口30を取り付ける際の位置決めとして利用することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図4〜図10に示すように、請求項2に記載の進入口30の施工方法において、
前記上階床パネル40の上面のうち建物1の一側面1a側に、防水処理が施されたバルコニー5用の防水床46を設置した後に、前記進入口30を、前記上階床パネル40の上面に、前記防水床46の建物中央側縁部46aに沿って取り付けることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記進入口30を前記上階床パネル40の上面に取り付ける前に、前記防水床46を、前記上階床パネル40の上面のうち建物1の一側面1a側に設置しておくので、バルコニー5の床46を形成してから、このバルコニー5に面して配置される進入口30を設置できる。すなわち、前記進入口30はバルコニー5に面して配置されるため、この進入口30が設置される前にバルコニー5の防水床46が形成されていれば、この進入口30を、設置場所を間違えることなく前記上階建物ユニット10bの仮取付位置から移動させることができる。
そして、前記進入口30を、前記防水床46の建物中央側縁部46aに沿って取り付けるので、この防水床46の建物中央側縁部46aを位置決めとして利用することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図4〜図7に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の進入口30の施工方法において、
前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に仮に取り付ける際に、この進入口30の高さと、前記上階建物ユニット10bの高さとの差を補填する仮取付治具50を使用することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に仮に取り付ける際に、この進入口30の高さと、前記上階建物ユニット10bの高さとの差を補填する仮取付治具50を使用するので、前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bに確実に取り付けることができる。
また、前記仮取付治具50は、別の進入口の施工工事の際に使い回すことができるので、この仮取付治具50を製造に係るコストや手間を低減でき、好ましい。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図3〜図10に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の進入口30の施工方法で使用される進入口30であって、
前記建物1の上階3の壁に開口部31aを形成するとともに前記傾斜面材20を支持するための枠体31と、
前記枠体31の内側面に取り付けられるサッシ39と、を備える。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記進入口30を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置すれば、サッシ39の取付も同時に行うことができるので、三階以上の階3で前記進入口30を組み立てる必要が無くなり、前記進入口30を三階建て以上の建物1の傾斜面4側に容易に取り付けることができる。
また、前記枠体31によって、前記傾斜面材20のうち、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間の部分を支持できるので、この傾斜面材20の設置状態の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上階建物ユニットの側面の傾斜面側の部位に、予め組み立てられた状態の進入口を仮に取り付けておくことによって、上階建物ユニットを、複数の下階建物ユニットよりも上方で、かつ複数の下階建物ユニットのうち建物の一側面に配置された下階建物ユニットよりも内側に設置するのと同時に、この上階建物ユニットの側面の傾斜面側の部位に仮に取り付けられた進入口も、建物の三階以上の階に運搬することができる。さらに、進入口を、上階建物ユニットから取り外すとともに傾斜面側に移動させ、建物の一側面に配置された下階建物ユニットの上方に設置するようにして取付作業を行うので、三階以上の階で進入口を組み立てる必要が無くなり、この進入口を、上階建物ユニットから建物の一側面に配置された下階建物ユニットの上方に付け替えるだけで済む。これによって、進入口を三階建て以上の建物の傾斜面側に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】進入口が傾斜面側に取り付けられた三階建て以上の建物を示す断面図である。
【図2】建物ユニットの一例を示す斜視図である。
【図3】進入口を構成する枠体を示す図である。
【図4】進入口が仮に取り付けられた上階建物ユニットを示す図である。
【図5】進入口の枠体と仮取付治具との連結部分を示す図である。
【図6】図4とは異なる角度で見た場合の、進入口が仮に取り付けられた上階建物ユニットを示す図である。
【図7】進入口の枠体と上階建物ユニットとの連結部分を示す図である。
【図8】進入口の施工方法の一例を示す平面図である。
【図9】上階床パネルの上面に設置された進入口を示す図である。
【図10】図9において進入口の枠体によって支持された状態の傾斜面材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に示す建物1はユニット建物であり、複数の建物ユニット10(10a,10b,10c)等によって建物本体が構成されており、本実施の形態においては三階建てとされている。また、建物本体の上部には切妻形状の屋根が設けられており、屋根パネルである傾斜面材20によって構成されている。
建物1の三階には、前記傾斜面材20によって傾斜面4が形成されている。この傾斜面4は、法律で定められた斜線制限に対応するためのものである。さらに、この傾斜面4が形成される建物1の一側面1aが、道または道に通ずる幅員4メートル以上の通路その他の空地に面している。このため、この建物1の一側面1aの三階部分には、進入口30を設置することが、法律上、義務付けられている。また、この進入口30は、バルコニー5に面して設けられている。
なお、建物ユニット10cは、建物本体の一階を構成する一階建物ユニットであり、建物ユニット10aは二階を構成する下階建物ユニットであり、建物ユニット10bは三階を構成する上階建物ユニットである。
【0019】
ここで、前記建物ユニット10a,10b,10cは、図2に示すように、4本の柱11と、これらの柱11…の上端間どうしを結合する4本の天井梁12…と、柱11…の下端間どうしを結合する4本の床梁13…とを備えている。
4本の天井梁12…は、2本の長辺天井梁12a,12aおよび長辺天井梁12aより短い2本の短辺天井梁12b,12bによって構成されている。4本の床梁13は2本の長辺床梁13a,13aおよび長辺床梁13aより短い2本の短辺床梁13b,13bによって構成されている。なお、柱11は正方形筒状に形成されており、天井梁12と床梁13は、それぞれ断面コ字型に形成されている。
2本の長辺天井梁12a,12aには、複数の天井小梁14が架設されており、該天井小梁14は長辺天井梁12aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら天井小梁14の下面には天井板15が固定されている。
2本の長辺床梁13a,13aには、複数の根太16が架設されており、該根太16は長辺床梁13aの長手方向に所定間隔で設けられている。これら根太16の上面には床板17が固定されている。
なお、柱11の上端部と天井梁12の端部とは柱頭接合部材18によって接合され、柱11の下端部と床梁13の端部とは柱脚接合部材19によって接合されている。
また、このような建物ユニット10a,10b,10cが上下や前後左右に隣接して配置される場合には、図示しない位置決めピンや連結プレート、ボルト等によって適宜連結される。
【0020】
図1に示すように、複数の前記一階建物ユニット10c…を、基礎上に並設することによって、建物1の一階が形成されている。
本実施の形態において、これら複数の一階建物ユニット10c…は、長辺方向において2個分隣接して配置されるとともに、短辺方向において適当な間隔をあけて2個分離し置きされている。
また、離し置きされた一方および他方の一階建物ユニット10c,10c間に床板7を取り付けることで一階床を形成している。また、複数の一階建物ユニット10c…に、適宜、内壁面材が取り付けられたり、断熱材が壁内に設けられたりしている。
以上のようにして、建物1の一階が構成されている。すなわち、建物1の一階を構成するために、4つの一階建物ユニット10c…等が用いられている。
【0021】
図1に示すように、複数の前記下階建物ユニット10a…を、前記建物1の一階の上に並設することによって、建物1の二階が形成されている。
本実施の形態において、これら複数の下階建物ユニット10a…は、建物1の一階部分が、上述のように複数の一階建物ユニット10c…を離し置きして形成されているため、建物1の二階も同様に、長辺方向において2個分隣接して配置されるとともに、短辺方向において適当な間隔をあけて2個分離し置きされている。
また、離し置きされた一方の下階建物ユニット10aの長辺床梁13aおよび他方の下階建物ユニット10aの長辺床梁13aには、これら長辺床梁13a,13aに沿って支持梁6a,6aがそれぞれ固定されている。また、一方の下階建物ユニット10a側の支持梁6aと他方の下階建物ユニット10a側の支持梁6aとの間には、連結部材6が、支持梁6a,6aの長さ方向に適当な間隔をあけて複数架設されている。そして、これら複数の連結部材6…上面には、下階建物ユニット10aの床板17と面一となる床板6bが取り付けられている。これによって、二階床が形成されている。
また、複数の下階建物ユニット10a…には、適宜、内壁面材が取り付けられたり、断熱材が壁内に設けられたりしている。
以上のようにして、建物1の二階が構成されている。すなわち、建物1の二階を構成するために、4つの下階建物ユニット10a…や複数の連結部材6…等が用いられている。
【0022】
図1および図8に示すように、前記建物1の二階の上に、前記複数の前記上階建物ユニット10b…を並設するとともに、前記複数の上階床パネル40…を並設することによって、建物の三階が形成されている。
なお、建物1の三階3には、上述のように、建物1の一側面1aに傾斜面4を形成する必要がある。
傾斜面4の下方には、直方体状に形成された前記建物ユニット10を設置できないため、前記上階建物ユニット10bは、図1に示すように、屋根の棟部の下方に設置されている。なお、この屋根の棟部下方の場所は、二階2の離し置きされた一方および他方の下階建物ユニット10a,10a間の隙間の上方に位置している。このため、上階建物ユニット10bは、例えば図示しない支持プレートや支持梁等のような支持手段によって、前記一方および他方の下階建物ユニット10a,10a間の隙間の上方に支持されている。本実施の形態において、前記上階建物ユニット10bは、図8に示すように、長辺方向において2個分隣接して配置されている。
また、本実施の形態において建物の三階3は、図1に示すように、屋根形状に沿って天井板が設けられている。このような場合、前記長辺天井梁12a,12a間に架設される前記複数の天井小梁14…は、前記上階建物ユニット10bから取り外されている。さらに、この上階建物ユニット10bには、前記長辺天井梁12a,12aおよび前記短辺天井梁12b,12bの内側面に沿って補強天井梁12cが設けられており、これら長辺天井梁12a,12aおよび短辺天井梁12b,12bを補強している。
【0023】
また、前記上階床パネル40は、図8に示すように、前記建物の一側面1a側と、この一側面1aとは反対の他側面1b側とに2つずつ、それぞれ長辺方向において隣接して配置されている。また、これら複数の上階床パネル40…は、建物1の二階2の離し置きされた一方および他方の下階建物ユニット10a,10aの上面に設置されている。
この上階床パネル40は、4本の床梁41…と、床中間梁42と、根太43等を備えている。
4本の床梁41…は2本の長辺床梁41a,41aおよび長辺床梁41aより短い2本の短辺床梁41b,41bによって構成されている。
また、前記床中間梁42は、2本の前記短辺床梁41b,41bの中間付近において長辺方向に配置されている。また、この床中間梁42は、図8に示すように、端部が、前記短辺床梁41bに固定されており、下部が、二階2の下階建物ユニット10aの天井小梁14にボルト固定されている。なお、この床中間梁42は、前記進入口30の下端部が固定される部位とされている。
また、前記根太43は、前記床中間梁42と建物1の一側面1a側の長辺床梁41aとの間に架設されている。
また、前記建物1の一側面1a側の長辺床梁41aには、図4に示すように、三階3の外壁を構成する外壁材44が取り付けられている。さらに、この外壁材44の上端部と前記傾斜面材20の軒先側端部との間には軒天井24が設けられている。
また、この上階床パネル40の上面には床板45が設けられており、前記上階建物ユニット10bの床板17と連続して設けられている。さらに、本実施の形態においては、三階3の床面よりも一段低い床面として、前記下階建物ユニット10aの上面に床板15aが設けられている。この一段低い床面は、二階2と三階3との間に設けられる階段のステップとして利用されている。
【0024】
また、前記上階床パネル40の上面のうち建物1の一側面1a側には、図4および図9に示すように、防水処理が施されたバルコニー5用の防水床46が設置されている。なお、この防水床46は、両端部が、前記上階床パネル40の短辺床梁41bと根太43とに接合されている。
この防水床46は、床梁47と、立ち上がり48と、床板49とを備えている。床梁47は2本の長辺梁および2本の短辺梁によって構成されている。
立ち上がり48は、前記床梁47に沿って該床梁47の上面に立設されており、この立ち上がり48の内側に、水勾配が設定された前記床板49が設けられている。また、この床板49の水勾配の下方には排水口が設けられている。
また、この防水床46には、塩ビ防水シートが前記床板49および該床板49の周囲に設けられることによって防水処理が施されている。
なお、前記進入口30は、この防水床46の建物中央側縁部46aに沿って取り付けられている。より詳細には、この進入口30は、建物1の一側面1aとは反対側に位置する前記立ち上がり48の外側面に沿って取り付けられている。したがって、この防水床46の建物中央側縁部46aを、前記進入口30を取り付ける際の位置決めとして利用できる。このため、前記進入口30を容易かつ正確に取り付けることができる。
また、前記立ち上がり48のうち、建物1の一側面1a側に位置する部位の上面には、バルコニー5の壁を構成するバルコニー壁22が立設されている。
【0025】
なお、本実施の形態の建物1は、一階および二階において、短辺方向に隣り合う建物ユニット10(10a,10c),10(10a,10c)を、適当な間隔をあけて離し置きしたが、これに限られるものではなく、間隔をあける代わりに建物ユニット10(10a,10c)を設置してもよいものとする。つまり、複数の建物ユニット10(10a,10c)を、長辺方向にも短辺方向にも離し置きせずに、隙間なく並設することによって建物1の一階および二階を形成してもよいものとする。
また、例えば図8に示すように、長辺方向に長さの異なる建物ユニット10,10を用いて建物本体を構成してもよい。
【0026】
また、前記傾斜面4は、上述のように屋根を構成する傾斜面材20によって形成されている。
この傾斜面材20は、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間に架け渡されている。より具体的には、前記上階建物ユニット10bの長辺天井梁12aと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面に設置された上階床パネル40に立設される屋根束(図示せず)との間に架設されている。すなわち、この傾斜面材20の上部は、前記上階建物ユニット10bの長辺天井梁12aによって支持され、下部は、前記上階床パネル40および屋根束を介して前記下階建物ユニット10aによって支持されている。
なお、前記屋根束は、前記上階床パネル40の長辺方向に間隔をあけて複数立設されている。また、この屋根束は、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間に架け渡された傾斜面材20の下方の上階床パネル40だけに立設されるものではなく、建物1の三階3に並設される複数の上階床パネル40…の全てに必要な分だけ配置されており、屋根全体を支持しているものとする。
【0027】
また、前記傾斜面材20は、図9に示すように、枠材20aと、桟材20bと、母屋20cと、野地板20dと、断熱材20eとを備えている。
前記枠材20aは、複数本の枠材20aを縦横に組み立てられることによって前記傾斜面材20の外枠となる矩形枠を形成するものである。
前記桟材20bは、屋根の勾配方向に沿って、前記枠材20a…によって形成された矩形枠に複数組み付けられる。これら複数の桟材20b…は垂木として機能する。また、前記母屋20cは、屋根の棟方向に沿って、前記矩形枠に複数組み付けられている。
前記野地板20dは、前記枠材20a…で形成された矩形枠と、この矩形枠に組み付けられた複数の桟材20b…と母屋20cの上面に取り付けられている。
前記断熱材20eは、傾斜面材20の内部に充填されるものであり、具体的には、前記野地板20dと、傾斜面材20の室内側面に取り付けられる天井板との間に形成される空隙に充填されている。
なお、前記野地板20dのうち、前記バルコニー5に対応する箇所は開口部とされており、これによって、前記バルコニー5は、上方に向かって、かつ屋外に開放されている。また、前記複数の桟材20b…および複数の母屋20c…のうち、前記バルコニー5に面して設けられる桟材20bおよび母屋20cは、例えば後述する上部壁21や棟包み23等のようなカバー手段によって、適宜、覆われているものとする。
また、前記枠材20aや桟材20b、母屋20cには、後述する受け板部38のボルト孔38aに対応するボルト固定用のナットや、屋根束をボルト固定するためのナットが取り付けられている。
【0028】
そして、前記傾斜面材20の下方には、図1および図9に示すように、上端部が、この傾斜面材20に固定されるとともに、下端部が、前記床中間梁42に固定される前記進入口30が設けられる。
この進入口30は、図3および図9等に示すように、三階3の壁に開口部31aを形成するとともに前記傾斜面材20を支持するための金属製の枠体31と、この枠体31の内側面に取り付けられるサッシ39と、を備えた装置とされている。
前記枠体31は、正方形筒状に形成された2本の縦枠材32,32と、これら2本の縦枠材32,32の上端部間に架設される横枠材33と、下端部間に架設される横枠材35とによって矩形枠状に形成されている。この枠体31の内側に形成される開口部31aが、バルコニー5に面する建物1の三階3に設けられる壁の開口部として利用される。
なお、この進入口30は、下端部が前記床中間梁42に固定されるため、この床中間梁42を、前記進入口30を取り付ける際の位置決めとして利用できる。このため、前記進入口30を容易かつ正確に取り付けることができる。
【0029】
前記縦枠材32の下端部には、この縦枠材32を挟んで両側にボルト孔が形成されたベースプレート32aが設けられている。このベースプレート32aの縦枠材32を挟んで両側にはそれぞれボルト孔が形成されており、縦枠材32を所定の箇所に固定するためのボルトを挿入できるようになっている。
また、縦枠材32の上端部は、前記傾斜面材20の傾斜角度に対応した角度に斜めに形成されており、さらに、この上端部には、前記傾斜面材20を受ける受け板部38が取り付けられている。この受け板部38は、斜めに形成された縦枠材32の上面よりも広く、かつ上方に延出している。この受け板部38の延出部分には複数のボルト孔38a…が形成されており、傾斜面材20を受け板部38に固定するためのボルト38bを挿入できるようになっている。また、この受け板部38の延出部分の下面と縦枠材32との間には、この受け板部38の延出部分の下面と縦枠材32とに沿って三角形状の補強リブ38dが取り付けられており、前記傾斜面材20をより確実かつ安定的に支持できるようになっている。
また、縦枠材32の上端部には、前記横枠材33を取り付けるためのブラケット34が取り付けられている。このブラケット34にはボルト孔が形成されており、前記横枠材33を固定するためのボルト34aを挿入できるようになっている。
また、縦枠材32の下端部には、前記横枠材35を取り付けるためのブラケット36が取り付けられている。このブラケット36にはボルト孔が形成されており、前記横枠材35を固定するためのボルト36aを挿入できるようになっている。
また、縦枠材32には、前記サッシ39の側端部が取り付けられる断面視L字型の取付板部37が取り付けられている。この取付板部37は、前記縦枠材32の長さ方向に沿って設けられ、かつ前記ブラケット34とブラケット36との間に位置している。
なお、これらブラケット34と、ブラケット36と、取付板部37は、枠体31の開口部31a側面に設けられている。
【0030】
また、前記横枠材33は、下面板33aと、この下面板33aの一側縁から上方に突出する突出板部33bと、下面板33aの他側縁から上方に突出する突部33cとを備えている。前記突出板部33bは、前記突部33cよりも高さが高く設定されている。
さらに、前記下面板33aの上面には、前記サッシ39を枠体31に取り付けるために用いられるサッシアンカー(図示せず)が固定されるサッシアンカー用ナット33dが適当に間隔をあけて設けられている。また、このナット33dが設けられる位置の下面板33aには、このナット33dの孔に対応する孔が形成されているものとする。
また、前記下面板33aの下面には、この下面板33aの両端部に、進入口30自体を吊り上げるための吊り治具(図示せず)を取り付けるための吊りナット33e,33eが設けられている。また、吊りナット33eが設けられる位置の下面板33aには、この吊りナット33eの孔に対応する孔が形成されているものとする。
また、この横枠材33の両端部には、前記2本の縦枠材32,32の両端部に取り付けられたブラケット34,34に当接する取付プレート33f,33fが取り付けられている。取付プレート33f,33fには、前記ブラケット34,34に形成されたボルト孔に対応するボルト孔が形成されている。そして、これら取付プレート33fのボルト孔とブラケット34のボルト孔にボルト34aが挿入され、このボルト34aにナット34bが螺合されることによって取付プレート33fが前記ブラケット34に固定されている。これによって、横枠材33を前記2本の縦枠材32,32に取り付けることができる。
【0031】
また、前記横枠材35は、いわゆるC形鋼であり、開放面が下方に向けられるようにして設けられている。
この横枠材35の上面板35aの下面には、前記サッシ39を枠体31に取り付けるために用いられるサッシアンカー(図示せず)が固定されるサッシアンカー用ナット35bが適当に間隔をあけて設けられている。また、このナット35bが設けられる位置の上面板35aには、このナット35bの孔に対応する孔が形成されているものとする。
また、この横枠材35の両端部には、前記2本の縦枠材32,32の両端部に取り付けられたブラケット36,36に当接する取付プレート35c,35cが取り付けられている。取付プレート35c,35cには、前記ブラケット36,36に形成されたボルト孔に対応するボルト孔が形成されている。そして、これら取付プレート35cのボルト孔とブラケット36のボルト孔にボルト36aが挿入され、このボルト36aにナット36bが螺合されることによって取付プレート35cが前記ブラケット36に固定されている。これによって、横枠材35を前記2本の縦枠材32,32に取り付けることができる。
また、この横枠材35の両端部の下面と前記取付プレート35c,35cとの間には、それぞれ、この横枠材35の両端部の下面と前記取付プレート35c,35cとに沿って三角形状の補強リブ35d,35dが取り付けられている。これによって、前記枠体31自体をより確実かつ安定的に支持できるようになっている。
【0032】
前記サッシ39は、サッシ枠に、ガラスが嵌め込まれた複数の窓サッシが取り付けられた引き違い窓とされている。そして、このサッシ39の両側端部が、前記2本の縦枠材32,32の取付板部37,37に取り付けられている。また、上端部が、前記サッシアンカー用ナット33dに固定されたサッシアンカーを介して前記横枠材33に取り付けられており、下端部が、前記サッシアンカー用ナット35bに固定されたサッシアンカーを介して前記横枠材35に取り付けられている。
なお、本実施の形態のサッシ39の複数の窓サッシは、一つの窓サッシをスライドさせて開口部31aを開放させたときに、開口幅が75cm以上、開口高さが120cm以上となるように設定されている。また、開口下端部が、三階3の床面から80cm以下となるように設定されている。すなわち、法律で定められた基準を満たすように設定されているものとする。
【0033】
以上のような進入口30は、前記枠体31と前記サッシ39とが予め組み立てられた状態となっている。これによって、前記進入口30を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置すれば、サッシ39の取付も同時に行うことができるので、三階以上の階3で前記進入口30を組み立てる必要が無くなり、前記進入口30を三階建て以上の建物1の傾斜面4側に容易に取り付けることができる。
また、前記枠体31によって、前記傾斜面材20のうち、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間の部分を支持できるので、この傾斜面材20の設置状態の安定性を向上させることができる。
【0034】
前記傾斜面材20と前記進入口30との間には、図9に示すように、前記上部壁21が設けられている。この上部壁21は、勾配桁21aと、合板21bと、サイディング21c等を備える。
勾配桁21aは、前記進入口30の上方に位置するとともに前記バルコニー5に面して設けられた母屋20cに取り付けられている。また、断面略三角形状に形成されており、前記バルコニー5側の面が垂直面とされている。
合板21bは、前記勾配桁21aの垂直面に取り付けられており、下端部は、前記横枠材33の突部33cのバルコニー5側面に当接している。また、この合板21bのバルコニー5側面には耐水シートが貼り付けられている。
サイディング21cは、耐水シートを介して、前記合板21bのバルコニー5側面に取り付けられている。
【0035】
また、図9に示すように、前記進入口30に対向して、前記バルコニー壁22が設けられている。このバルコニー壁22は、芯材パネル22aと、合板22bと、通気胴縁22c,22cと、サイディング22dと、受け部材22eと、下地材22f等を備える。
芯材パネル22aは、複数の芯材を縦横に組み立ててなる矩形枠状体であり、この芯材パネル22aの前記バルコニー5側面に、耐水シートが貼り付けられた合板22bが取り付けられている。そして、これら芯材パネル22aと合板22bとによって建築用壁パネルが構成されている。また、この合板22bの上端部は、前記芯材パネル22aの上端部よりも上方に突出している。
通気胴縁22c,22cは、耐水シートを介して、前記合板22bの上端部と下端部とに、横方向に取り付けられている。
サイディング22dは、前記通気胴縁22c,22cを介して、前記合板22bのバルコニー5側面に取り付けられている。
受け部材22eは、バルコニー壁22の上方に設けられる傾斜面材20を受けるものであり、前記合板22bの上端部に、下地材22fを介して取り付けられている。また、断面略くの字型に形成されており、前記傾斜面材20の母屋20cの下面に当接固定される面と、前記下地材22fに当接固定される面とを有する。
【0036】
前記バルコニー壁22の上端部には、このバルコニー壁22の上端部と、前記傾斜面材20の野地板20dに形成された開口部と、バルコニー5に面する母屋20cとを包んでカバーする前記棟包み23が設けられている。
この棟包み23は、例えば金属板を折曲加工することによって形成されており、前記母屋20cに取り付けられた下地材23aと、前記傾斜面材20の上面に取り付けられた下地材23bと、前記バルコニー壁22の上端部に取り付けられた下地材23cとに対して固定されている。なお、この棟包み23は、前記バルコニー壁22の手摺りとして機能する。
【0037】
次に、前記進入口30の施工方法について説明する。なお、建物1を構成する各建物ユニット10(10a,10b,10c)は、現場でクレーン等によって吊り上げながら所定の位置に設置される。
【0038】
まず、前記複数の一階建物ユニット10c…を、長辺方向において2個分隣接して配置するとともに、短辺方向において適当な間隔をあけて2個分離し置きするようにして、基礎上に並設することによって、建物の一階を形成する。
また、離し置きした一方および他方の一階建物ユニット10c,10c間に床板7を取り付けることで一階床を形成する。その他、適宜、内壁面材の施工を行ったり、断熱材の施工を行ったりする。
【0039】
続いて、前記複数の下階建物ユニット10a…を、長辺方向において2個分隣接して配置するとともに、短辺方向において適当な間隔をあけて2個分離し置きするようにして、前記建物1の一階の上に並設することによって、建物1の二階2を形成する。
また、離し置きした一方の下階建物ユニット10aの長辺床梁13aおよび他方の下階建物ユニット10aの長辺床梁13aに、前記支持梁6a,6aをそれぞれ固定する。さらに、これら支持梁6a,6a間に、前記複数の連結部材6を、前記支持梁6a,6aの長さ方向に適当な間隔をあけて複数架設する。そして、これら複数の連結部材6…上面に前記床板6bを取り付けて二階床を形成する。その他、適宜、内壁面材の施工を行ったり、断熱材の施工を行ったりする。
【0040】
続いて、建物1の三階3を形成する。
三階3を形成するにあたっては、まず、前記枠体31とサッシ39とが予め組み立てられた状態の進入口30を、前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に予め仮に取り付けておく。なお、前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位とは、前記進入口30の正規の取付位置と平行し、かつ前記上階建物ユニット10bのうち建物1の一側面1a側に位置する長辺天井梁12aおよび長辺床梁13aを指している。
なお、前記枠体31とサッシ39との組み立ては予め工場等で行われる。また、前記進入口30の前記上階建物ユニット10bへの仮取付も予め工場等で行われ、そのままの状態で輸送車両等により輸送される。
【0041】
また、前記進入口30を前記上階建物ユニット10bに借りに取り付けておく際には、この進入口30の高さと、前記上階建物ユニット10bの高さのとの差を補填する仮取付治具50を使用する。
このような仮取付治具50によって前記進入口30の高さと、前記上階建物ユニット10bの高さとの差を補填できるので、前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bに確実に取り付けることができる。
また、前記仮取付治具50は、別の進入口の施工工事の際に使い回すことができるので、この仮取付治具50を製造に係るコストや手間を低減できる。
【0042】
ここで、この仮取付治具50は、図4〜図7に示すように、治具本体51と、連結部52とを備える。
治具本体51は、2枚の側板と、これら両側板の一端部間に設けられる中央板とからなり、断面略凹型に形成されている。中央板が前記上階建物ユニット10bの長辺天井梁12aにボルト固定されている。
連結部52は、前記治具本体51の下端部と、前記枠体31の2本の縦枠材32,32の上端部に設けられた受け板部38,38とを連結している。この連結部52は、図5に示すように、2枚の側板部53,53と、当接板部54と、補強板部55とを有する。
前記側板部53は、治具本体51側端部が斜めに形成されている。また、前記当接板部54は、前記受け板部38に当接するものであり、前記2枚の側板部53,53の枠体31側端部間に一体に架設されている。
また、この当接板部54には孔が形成されるとともに、この穴に対応する位置にナット54bが固定されており、ボルト54aによって当接板部54と前記受け板部38とが連結される。
前記補強板部55は、前記当接板部54の傾斜方向下端部と前記2枚の側板部53,53の縁部とに沿って一体形成されるものであり、連結部52自体の剛性を高めることができる。
また、このような仮取付治具50は、前記縦枠材32,32の下端部に接合され、これら縦枠材32,32を支持する支持プレート56とセットで使用される。
この支持プレート56は、図7に示すように、アングル材であり、一方の板は前記縦枠材32のベースプレート32aにボルト・ナットで固定されており、他方の板は前記上階建物ユニット10bの長辺床梁13aに接合されている。
【0043】
続いて、前記建物1の二階2の上に、前記複数の上階床パネル40…を並設する。すなわち、離し置きされた一方の下階建物ユニット10aと他方の下階建物ユニット10aの上に前記上階床パネル40を設置する。特に、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面には、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40が設置される。
【0044】
続いて、前記建物1の二階2の上に、前記複数の上階建物ユニット10b…を並設する。すなわち、前記上階建物ユニット10bを、図示しない前記支持手段によって支持するようにして、前記一方の下階建物ユニット10aと他方の下階建物ユニット10aとの間の隙間の上方に配置する。つまり、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面に、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40を設置した後に、前記上階建物ユニット10bを設置することになる。
この時、前記上階建物ユニット10bを設置すると同時に、前記上階建物ユニット10bの傾斜面4側の部位に仮に取り付けられた進入口30も、建物1の三階3に運搬される。また、前記進入口30を構成する枠体31の縦枠材32,32の下端部に設けられたベースプレート32a,32aの一側面1a側端部は、図4に示すように、前記上階床パネル40の長辺床梁41aの上面に載せられている。
そして、このように前記上階建物ユニット10bを設置する前に、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上面に設置しておくので、前記上階建物ユニット10bを設置してから、前記進入口30の取付作業に取り掛かることができる。すなわち、前記進入口30は、前記上階床パネル40に取り付けられるため、この進入口30が運搬される前に上階床パネル40が設置されていれば、この進入口30を、設置場所を間違えることなく前記上階床パネル4の所定の位置に取り付けることができる。また、前記上階床パネル40を足場として、前記進入口30の取付作業を行うことができるので、この進入口30の取付作業を安全に行うことができる。
【0045】
続いて、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40の上面のうち建物1の一側面1a側に、図9に示すように、防水処理が施されたバルコニー5用の防水床46を設置する。
なお、この防水床46を設置する工程は、本実施形態のように前記上階建物ユニット10bを設置した後でもよいし、前記上階建物ユニット10bを設置する前でもよい。また、予め工場等で前記上階床パネル40に前記床梁47を接合した状態とし、前記立ち上がり48および床板49を、前記上階建物ユニット10bの設置前や設置後に、前記床梁47に取り付けるようにしてもよい。
そして、このように前記進入口30を前記上階床パネル40の上面に取り付ける前に、前記防水床46を、前記上階床パネル40の上面のうち建物1の一側面1a側に設置しておくので、バルコニー5の床46を形成してから、このバルコニー5に面して配置される進入口30を設置できる。すなわち、前記進入口30はバルコニー5に面して配置されるため、この進入口30が設置される前にバルコニー5の防水床46が形成されていれば、この進入口30を、設置場所を間違えることなく前記上階建物ユニット10bの仮取付位置から移動させることができる。
【0046】
続いて、前記上階建物ユニット10bに仮取り付けされた進入口30を、前記上階建物ユニット10bから取り外すとともに前記傾斜面4側、すなわち、建物1の一側面1a側に移動させ、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置する。
この時、この進入口30は、前記防水床46の建物中央側縁部46aに沿って取り付けるようにする。また、この進入口30の下端部のベースプレート32a,32aを、前記上階床パネル40の床中間梁42の上面にボルト・ナットによって固定するようにする。
【0047】
続いて、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間に傾斜面材20を架け渡して傾斜面4を形成する。すなわち、屋根パネルである前記傾斜面材20を複数用いて建物本体の上部に屋根を形成することによって、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40の上方に、前記傾斜面4を形成することができる。この時、前記複数の傾斜面材20は、図示しない前記複数の屋根束によって支持された状態となっている。
なお、建物本体の上部に屋根を形成することによって、前記上階建物ユニット10bの中央部の上方には屋根の棟部が位置し、建物1の一側面1aおよび他側面1bよりも外側には屋根の軒先部が位置する状態となる。また、前記傾斜面材20の野地板20dの上面には屋根材が取り付けられている。また、前記進入口30の下端部が取り付けられる上階床パネル40の上方には、野地板20dに開口部が形成された傾斜面材20が配置された状態となる。
【0048】
また、この時、前記進入口30の縦枠材32,32の上端部に設けられた受け板部38,38によって、前記傾斜面材20を受けた状態となる。続いて、このように傾斜面材20を受けた受け板部38,38と、前記傾斜面材20の桟材20b,20bとをボルト38b・ナット38cによって固定する。
続いて、前記上部壁21や前記バルコニー壁22、前記棟包み23、前記軒天井24の施工を行ったり、前記傾斜面材20の室内側面に天井板を取り付けたり、前記断熱材20eの施工を行ったり、床の施工を行ったりして建物1の三階3を形成する。
なお、建物1の一側面1aおよび他側面1bを含む周側面には、前記外壁材44と同質の外壁材が、適宜取り付けられる。また、以上のようにして、前記進入口30の施工が行われる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、前記進入口30を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置した後に、前記傾斜面材20を設置するものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、前記傾斜面材20を、前記上階建物ユニット10bと、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aとの間に架け渡した後に、前記進入口30を、前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置してもよいものとする。
【0050】
なお、本実施の形態の進入口30の施工方法は、非常用進入口または代用進入口として使われる進入口30だけでなく、単なる出入り口として使われる開口部にも適用できるものとする。
すなわち、建物1の一側面1aとは異なる他の側面に非常用進入口を確保できれば、バルコニー5の出入り口として開口部を、建物1の傾斜面4側に取り付けたい時に、本実施の形態の進入口30の施工方法を適用することができる。
【0051】
本実施の形態によれば、前記上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に、予め組み立てられた状態の進入口30を仮に取り付けておくことによって、前記上階建物ユニット10bを、前記複数の下階建物ユニット10a…よりも上方で、かつ複数の下階建物ユニット10a…のうち建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aよりも内側に設置するのと同時に、この上階建物ユニット10bの側面の傾斜面4側の部位に仮に取り付けられた進入口30も、建物1の三階3に運搬することができる。さらに、前記進入口30を、前記上階建物ユニット10bから取り外すとともに傾斜面4側に移動させ、建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に設置するようにして取付作業を行うので、三階3で進入口30を組み立てる必要が無くなり、この進入口30を、前記上階建物ユニット10bから前記建物1の一側面1aに配置された下階建物ユニット10aの上方に付け替えるだけで済む。これによって、前記進入口30を、本実施の形態の三階建ての建物1の傾斜面4側に容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 建物
1a 一側面
2 下階
3 上階
4 傾斜面
10 建物ユニット
10a 下階建物ユニット
10b 上階建物ユニット
20 傾斜面材
30 進入口
31 枠体
39 サッシ
40 上階床パネル
50 仮取付治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の下階建物ユニットを並設して建物の下階を形成し、
その後、上階建物ユニットを、前記複数の下階建物ユニットよりも上方で、かつ複数の下階建物ユニットのうち建物の一側面に配置された下階建物ユニットよりも内側に設置し、さらに、この上階建物ユニットと、前記建物の一側面に配置された下階建物ユニットとの間に傾斜面材を架け渡して傾斜面を形成することによって、建物の三階以上の階である上階を形成するに際し、
前記上階建物ユニットの側面の傾斜面側の部位に、予め組み立てられた状態の進入口を仮に取り付けておき、
前記上階建物ユニットを設置した後に、この上階建物ユニットから前記進入口を取り外すとともに前記傾斜面側に移動させ、前記建物の一側面に配置された下階建物ユニットの上方に設置することを特徴とする進入口の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の進入口の施工方法において、
前記建物の一側面に配置された下階建物ユニットの上面に、前記進入口の下端部が取り付けられる上階床パネルを設置した後に、前記上階建物ユニットを設置することを特徴とする進入口の施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の進入口の施工方法において、
前記上階床パネルの上面のうち建物の一側面側に、防水処理が施されたバルコニー用の防水床を設置した後に、前記進入口を、前記上階床パネルの上面に、前記防水床の建物中央側縁部に沿って取り付けることを特徴とする進入口の施工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の進入口の施工方法において、
前記進入口を、前記上階建物ユニットの傾斜面側の部位に仮に取り付ける際に、この進入口の高さと、前記上階建物ユニットの高さとの差を補填する仮取付治具を使用することを特徴とする進入口の施工方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の進入口の施工方法で使用される進入口であって、
前記建物の上階の壁に開口部を形成するとともに前記傾斜面材を支持するための枠体と、
前記枠体の内側面に取り付けられるサッシと、を備えることを特徴とする進入口。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−96180(P2013−96180A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241801(P2011−241801)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)