説明

進捗管理支援装置、進捗管理支援方法、および進捗管理支援プログラム

【課題】プロジェクトの進捗を管理するバッファ管理グラフにおいて、現実に即した、より有用な消費率の閾値を定める。
【解決手段】進捗管理支援装置が、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎の消費率を記憶し、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎の消費率を記憶し、失敗プロジェクトの消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、成功プロジェクトの消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出してバッファ管理グラフを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産活動における進捗管理を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェア開発のような生産活動における進捗を管理するプロジェクト管理手法として、設計、開発、テスト等の工程毎に余裕期間であるバッファを含む期間を割り当て、工程毎に割り当てた期間が経過すると次の工程に進むように管理するものがある。この場合、例えば、工程毎に割り当てられた期間内において早く作業が終了したとしても、各工程の作業者は余裕期間が経過するまで次工程に進まないことなどにより、生産活動が効率良く進まない場合があると考えられる。
【0003】
そこで、TOC(theory of constraints、制約条件の理論)と呼ばれる基本原理を適用してプロジェクトを管理するCCPM(Critical Chain project management)が提案されている。CCPMでは、各工程にバッファを含めず、プロジェクト全体のバッファを全工程の後に定めて進捗を管理する。ここでは、例えば、図9に示すようなバッファ管理グラフによりプロジェクトの進捗を管理する。バッファ管理グラフでは、例えば、x軸をプロジェクト全体に対して定められたバッファの消費率とし、y軸をプロジェクト全体の進捗率として、進捗率に応じた消費率を示す折れ線グラフを書き込んでいく。バッファ管理グラフには、予め定められた消費率の閾値を示す2つの線により、安全ゾーンと注意ゾーンと危険ゾーンとの3つのゾーンが構成される。これにより、折れ線グラフが安全ゾーンから注意ゾーンに入ったときには、プロジェクトの進捗に遅れが出ており、進捗に対して注意すべきことがわかる。また、折れ線グラフが危険ゾーンに入ったときには、進捗の遅れが深刻であり、何らかの対策を打つべきことがわかる。非特許文献1には、このようなCCPMに基づく進捗管理を支援するプロジェクトマネージメントツールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“TOC−CCPM”、[online]、[平成23年5月10日検索]、インターネットURL:http://www.toc-ccpm.net/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッファ管理グラフにおいて安全ゾーンと注意ゾーンと危険ゾーンとを分割する2つの消費率の閾値を示す線は、予め定められたものであり、どのようなプロジェクトに対しても一定であった。これでは、現実の様々なプロジェクトに対して適切に進捗を管理できない場合があると考えられる。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、プロジェクトの進捗を管理するバッファ管理グラフにおいて、現実に即した、より有用な消費率の閾値を定める進捗管理支援装置、進捗管理支援方法、および進捗管理支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸をプロジェクトの進捗率として、進捗率に応じた消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、進捗率に応じた消費率に注意が必要であることを表す消費率の第1の閾値を示す第1の線と、第1の閾値を超え、進捗率に応じた消費率が危険であることを表す消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれるバッファ管理グラフを出力する進捗管理支援装置であって、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、失敗プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、成功プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出する消費率閾値算出部と、消費率閾値算出部による算出結果に基づいて、バッファ管理グラフを生成するバッファ管理グラフ生成部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、管理対象のプロジェクトの特性を示す情報の入力を受け付ける入力部を備え、成功プロジェクト記憶部と失敗プロジェクト記憶部とには、プロジェクト毎に、プロジェクトの特性を示す情報が対応付けられて記憶され、消費率閾値算出部は、入力部に入力された特性に対応するプロジェクトに対応付けられた消費率を失敗プロジェクト記憶部から読み出し、読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、入力部に入力された特性に対応するプロジェクトに対応付けられた消費率を成功プロジェクト記憶部から読み出し、読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、プロジェクトの特性には、プロジェクトの難易度を示す情報が含まれることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、プロジェクトの特性には、プロジェクトに対して定められたバッファである余裕期間が含まれることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸をプロジェクトの進捗率として、進捗率に応じた消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、進捗率に応じた消費率に注意が必要であることを表す消費率の第1の閾値を示す第1の線と、第1の閾値を超え、進捗率に応じた消費率が危険であることを表す消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれるバッファ管理グラフを出力し、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、を備える進捗管理支援装置の進捗管理支援方法であって、失敗プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、成功プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出するステップと、算出結果に基づいて、バッファ管理グラフを生成するステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸をプロジェクトの進捗率として、進捗率に応じた消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、進捗率に応じた消費率に注意が必要であることを表す消費率の第1の閾値を示す第1の線と、第1の閾値を超え、進捗率に応じた消費率が危険であることを表す消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれるバッファ管理グラフを出力し、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、を備える進捗管理支援装置のコンピュータに、失敗プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、成功プロジェクト記憶部から読み出した消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出するステップと、算出結果に基づいて、バッファ管理グラフを生成するステップと、を実行させる進捗管理支援プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎の消費率を記憶し、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎の消費率を記憶し、失敗プロジェクトの消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出し、成功プロジェクトの消費率に基づいて、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値と第2の閾値とを算出してバッファ管理グラフを生成するようにしたので、プロジェクトの進捗を管理するバッファ管理グラフにおいて、現実に即した、より有用な消費率の閾値を定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による進捗管理支援装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による進捗管理支援装置が出力するバッファ管理グラフの例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による成功プロジェクト記憶部に記憶されるデータ例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による失敗プロジェクト記憶部に記憶されるデータ例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるプロジェクト成功率算出部が算出するプロジェクト成功率の例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による消費率閾値算出部に記憶される算出式の例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による事前処理の動作例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態によるバッファ管理グラフ生成処理の動作例を示すフローチャートである。
【図9】CCPMによるバッファ管理グラフの例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による進捗管理支援装置10の構成例を示すブロック図である。進捗管理支援装置10は、CCPMに基づくバッファ管理グラフを生成するコンピュータ装置である。図2は、進捗管理支援装置10が出力するバッファ管理グラフの例を示す図である。バッファ管理グラフは、二次元グラフにおける一軸(ここでは、x軸)を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率(%)とし、他軸(ここでは、y軸)をプロジェクトの進捗率(%)として、進捗率に応じた消費率の値を示す折れ線グラフが書き込まれる。以下、単に消費率というときはこのようなバッファ消費率のことをいい、単に進捗率というときはこのようなプロジェクト進捗率のことをいう。
【0016】
また、バッファ管理グラフには、進捗率に応じた消費率に注意が必要であることを表す消費率の第1の閾値を示す第1の線(符号A)と、第1の閾値を超え、進捗率に応じた消費率が危険であることを表す消費率の第2の閾値を示す第2の線(符号B)とが含まれる。このような第1の線と第2の線とにより、危険ゾーンと注意ゾーンと安全ゾーンとが構成される。危険ゾーンは赤色、注意ゾーンは黄色、安全ゾーンは緑色に塗り潰すことにより、より視覚的にゾーンの区別ができるようにしても良い。ここで、進捗率が100%である場合における第1の線上の点をaとし、進捗率が100%である場合における第2の線上の点をbとし、進捗率が0%である場合における第1の線上の点(x切片)をcとし、進捗率が0%である場合における第2の線上の点(x切片)をdとする。本実施形態の進捗管理支援装置10は、このような4点を実績プロジェクトに基づいて定めることにより、現実に即した、より有用な消費率の閾値を定める。
【0017】
このため、進捗管理支援装置10は、成功プロジェクト記憶部11と、失敗プロジェクト記憶部12と、プロジェクト登録部13と、プロジェクト成功率算出部14と、入力部15と、消費率閾値算出部16と、バッファ管理グラフ生成部17と、出力部18とを備えている。
【0018】
成功プロジェクト記憶部11には、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される。図3は、成功プロジェクト記憶部11に記憶されるデータ例を示す図である。図に示すように、成功プロジェクト記憶部11には、プロジェクトを識別するプロジェクトID(Identifier)に対応付けて、そのプロジェクトのプロジェクト特性と、プロジェクト完了時点における消費率とが記憶される。プロジェクト特性には、例えば、開発規模、難易度、見積期間、実績期間、バッファ(余裕期間)などが含まれる。開発規模は、プロジェクトの開発規模を示す値であり、例えば、ソースコードのステップ数(キロステップ)である。難易度は、プロジェクトの難易度を示す値であり、例えば、難易度が高い順にA、B、C等の値が対応付けられる。見積期間は、プロジェクトを開始する際に見積もった開発期間であり、例えば、人日により示される。実績期間は、プロジェクトが完了するまでの実際の開発期間であり、例えば、人日により示される。バッファ(余裕期間)は、プロジェクトを開始する際に見積もられたバッファの期間であり、例えば、人日により示される。この他にも、プロジェクトの特性として、例えば、開発に使用するプログラム言語、開発したシステムが稼働するコンピュータ装置の台数、開発の依頼元の業種等のデータが含まれるようにしても良い。
【0019】
失敗プロジェクト記憶部12には、実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、プロジェクト完了時点における消費率が記憶される。図4は、失敗プロジェクト記憶部12に記憶されるデータ例を示す図である。図に示すように、失敗プロジェクト記憶部12には、プロジェクトを識別するプロジェクトIDに対応付けて、そのプロジェクトのプロジェクト特性と、プロジェクト完了時点における消費率とが記憶される。各データの内容は、成功プロジェクト記憶部11に記憶された同名のデータと同様である。
【0020】
プロジェクト登録部13は、実績プロジェクトのデータを、成功プロジェクト記憶部11と失敗プロジェクト記憶部12とに記憶させる。例えば、プロジェクト登録部13は、CSV(Comma Separated Values)形式により記述された大量の実績プロジェクトのデータが含まれるファイルを読み込む。実績プロジェクトには、成功プロジェクト記憶部11および失敗プロジェクト記憶部12において説明したデータと同様のデータ項目のデータが含まれる。プロジェクト登録部13は、読み込んだ実績プロジェクトの消費率が100%以下であるか否かを判定し、100%以下であればその実績プロジェクトを成功プロジェクト記憶部11に記憶させ、100%以下でなければその実績プロジェクトを失敗プロジェクト記憶部12に記憶させる。
【0021】
プロジェクト成功率算出部14は、成功プロジェクト記憶部11および失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトに基づいて、難易度毎のプロジェクト成功率を算出する。図5は、プロジェクト成功率算出部14が算出するプロジェクト成功率の例を示す図である。
ここで、最大プロジェクト成功率とは、(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている成功プロジェクトのうち、消費率が100%以下である成功プロジェクトのデータ件数)/(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている実績プロジェクトの件数+失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトの件数)によって算出される。
最小プロジェクト成功率とは、(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている成功プロジェクトのうち、消費率が0%である成功プロジェクトのデータ件数)/(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている実績プロジェクトの件数+失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトの件数)によって算出される。プロジェクト成功率算出部14は、このように算出したプロジェクト成功率を、自身の記憶領域に記憶させる。本実施形態では、このように、プロジェクト成功率算出部14がプロジェクト成功率を算出する例を説明するが、これらプロジェクト成功率は、ユーザが独自に設定し、入力される値が記憶されるようにしても良い。
【0022】
入力部15は、バッファ管理グラフにより管理する、これから開始する管理対象のプロジェクトの特性を示す情報の入力を受け付ける。入力部15は、例えば、キーボードやマウス等の入力デバイスである。プロジェクトの特性には、上述したように、プロジェクトの難易度や、プロジェクトに対して定められたバッファである余裕期間等が含まれる。
【0023】
消費率閾値算出部16は、プロジェクト成功率算出部14によって算出されたプロジェクト成功率に基づいて、難易度毎の閾値の算出式を判定し、判定した算出式を自身の記憶領域に記憶させる。図6は、消費率閾値算出部16に記憶される算出式の例を示す図である。
ここで、μは、進捗率が100%である時点における消費率の期待値であり、以下式によって算出される。
μ=(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている実績プロジェクトの最小消費率+最頻消費率×4+最大消費率)/6
【0024】
σは、進捗率が100%である時点における消費率の標準偏差であり、以下式によって算出される。
σ=(成功プロジェクト記憶部11に記憶されている実績プロジェクトの最小消費率−最大消費率)/6
【0025】
μ´は、進捗率が0%である時点における消費率の期待値であり、以下式によって算出される。
μ´=((失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトの最小消費率−100)+(最頻消費率−100)×4+(最大消費率−100))/6
【0026】
σ´は、進捗率が0%である時点における消費率の標準偏差であり、以下式によって算出される。
σ´=((失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトの最小消費率−100)−(最大消費率−100))/6
αは、進捗率が0%である時点における消費率のデフォルト値である。このデフォルト値は、成功プロジェクト記憶部11および失敗プロジェクト記憶部12に記憶されている実績プロジェクトにおいて使用された消費率である。
【0027】
ここで、十分な量の実績プロジェクトのデータが存在する場合、プロジェクトの完了時点における消費率のバラツキは正規分布すると考えられる。そこで、図5に示したような難易度毎の最大プロジェクト成功率(99.7%、95.5%、90%)に応じた算出式(μ+3σ、μ+2σ、μ+1.5σ)が判定できる。この算出式を、進捗率100%時点での第2の閾値(図2における点bの消費率)とする。また、難易度毎の最小プロジェクト成功率(95.5%、90%、68%)に応じた算出式(μ+2σ、μ+1.5σ、μ+1σ)が判定できる。この算出式を、進捗率100%時点での第1の閾値(図2における点aの消費率)とする。同様に、進捗率0%時点での第1の閾値(図2における点cの消費率)と、進捗率0%時点での第2の閾値(図2における点dの消費率)の算出式を、難易度毎に判定する。
【0028】
また、消費率閾値算出部16は、失敗プロジェクト記憶部12に記憶された消費率を読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する。そして、これらの値に基づいて、上述した算出式により、バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の消費率の第1の閾値(点c)と第2の閾値(点d)とを算出する。さらに、消費率閾値算出部16は、成功プロジェクト記憶部11に記憶された消費率を読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する。そして、これらの値に基づいて、上述した算出式により、バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の消費率の第1の閾値(点a)と第2の閾値(点b)とを算出する。
【0029】
この際、消費率閾値算出部16は、入力部15に入力された特性に対応する実績プロジェクトに対応付けられて失敗プロジェクト記憶部12に記憶された消費率を読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する。また、消費率閾値算出部16は、入力部15に入力された特性に対応する実績プロジェクトに対応付けられて成功プロジェクト記憶部11に記憶された消費率を読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する。
【0030】
バッファ管理グラフ生成部17は、消費率閾値算出部16による算出結果に基づいて、バッファ管理グラフを生成し、自身の記憶領域に記憶させる。すなわち、図2に示すように、消費率閾値算出部16に算出された消費率に応じた点aと点cとを結ぶ線を、安全ゾーンと注意ゾーンとを分割する第1の線とする。また、消費率閾値算出部16に算出された消費率に応じた点bと点dとを結ぶ線を、注意ゾーンと危険ゾーンとを分割する第2の線とする。
出力部18は、バッファ管理グラフ生成部17が生成したバッファ管理グラフを出力する。出力部18は、例えば、バッファ管理グラフを表示するディスプレイでも良いし、印刷して出力するプリンタでも良いし、その双方でも良い。
【0031】
次に、本実施形態による進捗管理支援装置10の動作例を説明する。図7は、進捗管理支援装置10による事前処理の動作例を示すフローチャートである。
まず、プロジェクト登録部13は、実績プロジェクトのデータが含まれるファイルを読み込み、成功プロジェクト記憶部11と失敗プロジェクト記憶部12とに実績プロジェクトを記憶させる(ステップS1)。プロジェクト成功率算出部14は、成功プロジェクト記憶部11に記憶された実績プロジェクトと失敗プロジェクト記憶部12に記憶された実績プロジェクトとを読み出し、図5に示したような難易度毎の最小プロジェクト成功率と最大プロジェクト成功率とを算出し、算出した最小プロジェクト成功率と最大プロジェクト成功率とを自身の記憶領域に記憶させる(ステップS2)。そして、消費率閾値算出部16は、プロジェクト成功率算出部14の記憶領域に記憶されている難易度毎の最小プロジェクト成功率と最大プロジェクト成功率とに基づいて、図6に示したような閾値の算出式を判定する(ステップS3)。そして、消費率閾値算出部16は、判定した算出式を自身の記憶領域に記憶させる。
【0032】
図8は、進捗管理支援装置10によるバッファ管理グラフ生成処理の動作例を示すフローチャートである。
ユーザは、これから開始するプロジェクトのスケジュールを立て、難易度や開発規模等のプロジェクト特性を決定する。入力部15は、ユーザからの特性の入力を受け付ける(ステップS11)。消費率閾値算出部16は、入力された特性に対応する実績プロジェクトを成功プロジェクト記憶部11から読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する。また、消費率閾値算出部16は、入力された特性に対応する実績プロジェクトを失敗プロジェクト記憶部12から読み出し、最小消費率と、最頻消費率と、最大消費率との値を算出する(ステップS12)。
【0033】
また、消費率閾値算出部16は、ステップS12において算出した値に基づいて、ステップS3において判定した算出式により、点a、点b、点c、点dの消費率の閾値をそれぞれ算出する(ステップS13)。バッファ管理グラフ生成部17が、消費率閾値算出部16が算出した閾値に基づいて、第1の線と第2の線とを付与したバッファ管理グラフを生成すると、出力部18は、生成されたバッファ管理グラフを出力する。
【0034】
また、進捗管理支援装置10は、管理対象のプロジェクトの進捗に応じて、このように生成したバッファ管理グラフに対する実績値の入力を行うことができる。例えば、進捗管理支援装置10は、プロジェクトの進捗に応じた進捗率と、消費したバッファの期間に応じた消費率との入力を受け付け、生成したバッファ管理グラフに実績値をプロットする。そして、例えば、実績値が注意ゾーンまたは危険ゾーンに存在すれば、そのことを示す警告を出力する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、過去にシステム開発を行ったプロジェクトの実績を集計し、実績に基づいて、新たなプロジェクトにおいて、進捗率に応じた消費率がどの程度であれば安全なのか(注意が必要なのか、危険なのか)を示す第1の線と第2の線との傾きを算出できる。また、プロジェクトの難易度や割り当てられたバッファ、開発規模等の特性に応じて、最適な消費率の閾値を算出できる。これにより、CCPMに基づくプロジェクト進捗管理において、バッファ消費量の妥当性を確認することができる。
【0036】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより進捗管理支援を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0037】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 進捗管理支援装置
11 成功プロジェクト記憶部
12 失敗プロジェクト記憶部
13 プロジェクト登録部
14 プロジェクト成功率算出部
15 入力部
16 消費率閾値算出部
17 バッファ管理グラフ生成部
18 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸を当該プロジェクトの進捗率として、当該進捗率に応じた前記消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、前記進捗率に応じた前記消費率に注意が必要であることを表す当該消費率の第1の閾値を示す第1の線と、当該第1の閾値を超え、前記進捗率に応じた前記消費率が危険であることを表す当該消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれる前記バッファ管理グラフを出力する進捗管理支援装置であって、
完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、
前記実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、
前記失敗プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出し、前記成功プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出する消費率閾値算出部と、
前記消費率閾値算出部による算出結果に基づいて、前記バッファ管理グラフを生成するバッファ管理グラフ生成部と、
を備えることを特徴とする進捗管理支援装置。
【請求項2】
前記管理対象のプロジェクトの特性を示す情報の入力を受け付ける入力部を備え、
前記成功プロジェクト記憶部と前記失敗プロジェクト記憶部とには、前記プロジェクト毎に、当該プロジェクトの特性を示す情報が対応付けられて記憶され、
前記消費率閾値算出部は、前記入力部に入力された前記特性に対応するプロジェクトに対応付けられた消費率を前記失敗プロジェクト記憶部から読み出し、読み出した当該消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出し、前記入力部に入力された前記特性に対応するプロジェクトに対応付けられた消費率を前記成功プロジェクト記憶部から読み出し、読み出した当該消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の進捗管理支援装置。
【請求項3】
前記プロジェクトの特性には、当該プロジェクトの難易度を示す情報が含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の進捗管理支援装置。
【請求項4】
前記プロジェクトの特性には、当該プロジェクトに対して定められたバッファである余裕期間が含まれる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の進捗管理支援装置。
【請求項5】
二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸を当該プロジェクトの進捗率として、当該進捗率に応じた前記消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、前記進捗率に応じた前記消費率に注意が必要であることを表す当該消費率の第1の閾値を示す第1の線と、当該第1の閾値を超え、前記進捗率に応じた前記消費率が危険であることを表す当該消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれる前記バッファ管理グラフを出力し、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、前記実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、を備える進捗管理支援装置の進捗管理支援方法であって、
前記失敗プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出し、前記成功プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出するステップと、
算出結果に基づいて、前記バッファ管理グラフを生成するステップと、
を備えることを特徴とする進捗管理支援方法。
【請求項6】
二次元グラフにおける一軸を、進捗状況の管理対象であるプロジェクト全体に対して定められた余裕期間であるバッファの消費率とし、他軸を当該プロジェクトの進捗率として、当該進捗率に応じた前記消費率の値が書き込まれるバッファ管理グラフであって、前記進捗率に応じた前記消費率に注意が必要であることを表す当該消費率の第1の閾値を示す第1の線と、当該第1の閾値を超え、前記進捗率に応じた前記消費率が危険であることを表す当該消費率の第2の閾値を示す第2の線とが含まれる前記バッファ管理グラフを出力し、完了した実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%以下である成功プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される成功プロジェクト記憶部と、前記実績プロジェクトのうち、プロジェクト完了時点における消費率が100%を超えた失敗プロジェクト毎に、当該プロジェクト完了時点における消費率が記憶される失敗プロジェクト記憶部と、を備える進捗管理支援装置のコンピュータに、
前記失敗プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が0%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出し、前記成功プロジェクト記憶部から読み出した前記消費率に基づいて、前記バッファ管理グラフにおいて進捗率が100%である場合の前記消費率の前記第1の閾値と第2の閾値とを算出するステップと、
算出結果に基づいて、前記バッファ管理グラフを生成するステップと、
を実行させる進捗管理支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−242857(P2012−242857A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108738(P2011−108738)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)