説明

進行作動玩具

【課題】簡単な構造でありながら、玩具ボディを載置面に沿う方向に安定姿勢で進行させることのできる進行作動玩具を提供する。
【解決手段】玩具ボディ10は、下部ボディ10Bと上部ボディ10Aを備えた構成とし、下部ボディ10Bに、載置面2に設置される複数の脚部11A,11Bを設ける。下部ボディ10Bには駆動体であるゼンマイばね17を設け、ゼンマイばね17による回転部に上部ボディ10Aを連結する。上部ボディ10Aの重心Gを軸芯に対して偏心させ、重心Gを水平方向に旋回させる。1つの脚部11Bの載置面2との接触抵抗を、残余の2つの脚部11Aの載置面2との接触抵抗よりも充分に小さくする。上部ボディ10Aの重心Gが水平方向に旋回すると、接触抵抗の小さい脚部11Bのある方向にずれ動くようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゼンマイばね等の駆動体の動力によって床や机等の載置面上を進行する進行作動玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床や机等の載置面上を進行する進行作動玩具として、車輪によって玩具ボディを走行させるものの他、玩具ボディに振動付与手段を設け、載置面上に接地する脚部に、振動付与手段の振動を伝達することによって玩具ボディを進行させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の進行作動玩具は、駆動体であるゼンマイばねと、そのゼンマイばねによって鉛直方向に旋回する偏心ウェイトが玩具ボディに設けられ、玩具ボディの下端に、載置面上に接する弾性を有する複数の脚部が延設されている。この進行作動玩具の場合、ゼンマイばねの力によって偏心ウェイトが鉛直方向に旋回すると、その旋回に伴う振動が弾性を有する脚部に伝達され、脚部が載置面上を小刻み跳ねて玩具ボディを不規則な方向に進行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−343767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の進行作動玩具においては、偏心ウェイトを鉛直方向に旋回させて上下方向の振動を脚部に伝達する構造とされているため、玩具ボディが上下に大きく揺れて姿勢が不安定になり易いうえ、駆動体(ゼンマイばね)の動力を載置面に沿う進行方向に効率良く作用させることができない。
【0006】
そこでこの発明は、簡単な構造でありながら、玩具ボディを載置面に沿う方向に安定姿勢で進行させることのできる進行作動玩具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る進行作動玩具では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、駆動体の動力によって載置面上を進行する進行作動玩具において、前記載置面上に置かれる接地部と、この接地部に支持される玩具ボディと、この玩具ボディに設けられ、前記駆動体の動力によって水平方向に旋回する偏心ウェイトと、を備え、前記偏心ウェイトの旋回に伴う遠心力により、前記玩具ボディを前記載置面に沿わせて移動させることを特徴とするものである。
これにより、駆動体の動力によって偏心ウェイトが水平方向に旋回すると、偏心ウェイトの旋回に伴う遠心力が玩具ボディに水平に作用し、その結果、玩具ボディが接地部とともに載置面に沿うように移動することになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る進行作動玩具において、前記接地部は、前記載置面との接触抵抗が、前記偏心ウェイトの回転中心回りに不均一に設定されていることを特徴とするものである。
これにより、偏心ウェイトの水平方向の旋回に伴う遠心力が玩具ボディに水平方向に作用すると、偏心ウェイトの回転中心回りにおいて、接地部の接触抵抗の大きい領域では載置面から大きな抗力を受け、接地部の接触抵抗の小さい領域では載置面から受ける抵抗が小さくなる。このため、玩具ボディは、接地部の接触抵抗の小さい方向に向かって進行することになる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る進行作動玩具において、前記接地部は、前記玩具ボディから延出する複数の脚部によって構成され、前記載置面に対する一部の脚部の接触抵抗が他の脚部の接触抵抗に比較して小さく設定されていることを特徴とするものである。
これにより、偏心ウェイトの水平方向の旋回に伴う遠心力が玩具ボディに水平方向に作用すると、玩具ボディは、接触抵抗の小さい脚部のある側に向かって進行することになる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る進行作動玩具において、前記玩具ボディは、前記駆動体を保持する下部ボディと、この下部ボディの上方に設けられ前記駆動体の回転軸側に脱着可能に連結される上部ボディと、を備え、前記上部ボディは、重心位置が前記回転軸に対してずらして設定されることにより、前記偏心ウェイトを構成していることを特徴とするものである。
これにより、上部ボディを重心位置や重量の異なる別の上部ボディと交換することにより、異なる進行挙動や回転挙動を得ることが可能になる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る進行作動玩具において、前記上部ボディは、前記回転軸側に連結されるボディ本体と、このボディ本体に脱着可能に取り付けられる別体のウェイト部品と、を備えていることを特徴とするものである。
これにより、ウェイト部品を交換することにより、異なる進行挙動や回転挙動を得ることが可能になる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項4または5に係る進行作動玩具において、前記上部ボディと下部ボディの間には、前記上部ボディと下部ボディを連結した状態で前記下部ボディに対して前記上部ボディを上方に付勢する付勢手段と、前記上部ボディと下部ボディを連結状態に維持するロック手段と、が設けられ、前記ロック手段は、前記上部ボディ若しくは下部ボディの外周面から径方向に外側に突出するロック解除ボダンと、このロック解除ボタンの作動に連動し、このロック解除ボタンが突出状態のときに前記上部ボディと下部ボディを相互に固定し、このロック解除ボタンが押し込まれることによって前記上部ボディと下部ボディの相互の固定を解除する可動フックと、を備えていることを特徴とする。
これにより、二つの進行作動玩具を向かい合わせ、両進行作動玩具の上部ボディを駆動体の動力によって回転させると、両進行作動玩具が上部ボディを回転させつつ進行し、いずれか一方の進行作動玩具の上部ボディが他方の進行作動玩具のロック解除ボタンを押し込むと、押し込まれた進行作動玩具の可動フックが上部ボディと下部ボディの固定を解除する。この結果、ロック解除ボタンを押し込まれた進行作動玩具は、上部ボディが付勢手段の力によって上方に跳ね上がり、下部ボディから分離されることになる。また、このとき下部ボディには上部ボディの重心の偏心回転による遠心力が作用しなくなるため、下部ボディ側の進行作動はその時点で停止することになる。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6に係る進行作動玩具において、前記上部ボディには、ウェイト部品を兼ねる武器部品が径方向外側に突出して設けられ、この武器部品の延出端と前記ロック解除ボタンが同一高さに配置されていることを特徴とする。
これにより、二つの進行作動玩具を向かい合わせて対戦させた場合には、上部ボディの回転とともにウェイト部品を兼ねる武器部品が振り回され、武器部品の延出端が相手進行作動玩具のロック解除ボタンを押圧すると、相手進行作動玩具の可動フックが解除作動されることになる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、駆動体の動力によって偏心ウェイトを水平方向に旋回させ、偏心ウェイトの旋回に伴う遠心力によって玩具ボディを接地部とともに載置面に沿う方向に移動させるものであることから、簡単な構造でありながら、玩具ボディを載置面に沿う方向に安定姿勢で進行させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、接地部における載置面との接触抵抗が、偏心ウェイトの回転中心回りに不均一に設定されていることから、玩具ボディを接地部の接触抵抗の小さい目的方向に向けて安定的に進行させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、載置面に対する一部の脚部の接触抵抗が他の脚部の接触抵抗に比較して小さく設定されているため、玩具ボディを接触抵抗の小さい脚部のある側の目的方向に向けて安定的に進行させることができ、しかも、偏心ウェイトの回転中心回りの接地部の接触抵抗を、各脚部の設置位置や面積、個数等によって容易に管理することができることから、進行方向を容易に設定することが可能になる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、玩具ボディが、駆動体を保持する下部ボディと、偏心ウェイトを兼ねる上部ボディと、を備えた構成とされるとともに、上部ボディが駆動体の回転軸側に脱着可能に連結されていることから、上部ボディの交換によって異なる進行挙動や回転挙動を容易に得ることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、上部ボディが、駆動体の回転軸に連結されるボディ本体と、ボディ本体に脱着可能に取り付けられる別体のウェイト部品とを備えた構成されていることから、ウェイト部品の交換によっても異なる進行挙動や回転挙動を得ることができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、上部ボディと下部ボディの間に付勢手段とロック手段が設けられ、ロック手段が、径方向外側に突出するロック解除ボタンと、ロック解除ボタンが突出状態のときに上部ボディと下部ボディを相互に固定し、ロック解除ボタンが押し込まれたときに上部ボディと下部ボディの固定を解除する可動フックとを備えた構成とされているため、二つの進行作動玩具を、上部ボディを回転させつつぶつけ合い、ロック解除ボタンを押し合う対戦ゲームを行うことができる。そして、この発明によれば、高価な電子制御機器を用いない簡単な構造でありながら、ロック解除ボタンが押されたときに、上部ボディが分離して跳ね上がり、それと同時に進行を瞬時に停止させる挙動を得ることができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、二つの進行作動玩具を対戦させたときに、両進行作動玩具が上部ボディの回転とともに武器部品を振り回して進行し、一方の進行作動玩具の武器部品が相手進行作動玩具のロック解除ボタンを押し込むことによって相手進行作動玩具の可動フックを解除作動させることができるため、あたかも相手進行作動玩具の上部ボディを武器部品で切り落としたような挙動を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態の進行作動玩具の斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態の進行作動玩具の分解側面図である。
【図3】この発明の一実施形態の進行作動玩具の平面図(A)と側面図(B)を併せて記載した図である。
【図4】この発明の一実施形態の進行作動玩具の一部部品の組み付け状態を示す断面図である。
【図5】この発明の一実施形態の進行作動玩具の一部部品の組み付け状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の一実施形態の進行作動玩具の作動を示す平面図である。
【図7】この発明の一実施形態の進行作動玩具の作動を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図3は、この実施形態の進行作動玩具1の全体構成を示したものであり、図2は、進行作動玩具1を主な構成パーツに分解して示したものである。この進行作動玩具1は、戦国武将を模した人形型の玩具であり、人形の胴部及び頭部に相当する玩具ボディ10と、床や机等の載置面2上に置かれて玩具ボディ10を支持する3つの脚部11(接地部)を備えている。
【0023】
玩具ボディ10は、上部ボディ10Aを構成する第1ボディブロック12及び第2ボディブロック13と、下部ボディ10Bを構成する第3ボディブロック14及び第4ボディブロック15を備えている。第1ボディブロック12は人形の頭部に相当する部位を構成しており、第2ボディブロック13は人形の胸部に相当する部位を、第3,第4ボディブロック14,15は人形の上側腰部と下側腰部に相当する部位をそれぞれ構成している。胸部に相当する第2ボディブロック13には、ウェイトとしても機能する武器部品16(ウェイト部材)が脱着可能に取り付けられ、下側腰部に相当する第4ボディブロック15には上記の三つの脚部11が取り付けられている。
【0024】
第4ボディブロック15は、円筒状の周壁を有し、その周壁の回りにほぼ等間隔に3つの脚部11が延設されている。脚部11は、3つのうちの2つ11A,11Aは同構造とされ、残余の一つ11Bは構造が異なっている。構造の同じ二つの脚部11Aは、硬質樹脂製の脚部本体11Aaの先端部にゴム製の接地タイヤ11Abが取付けられた構造とされ、残余の一つの脚部11Bは硬質樹脂によって一体に形成され、先端部側の面積の小さい平坦な端面11Bbで設置面2上に置かれるようになっている。脚部11A,11Aと11Bとは、載置面2に対する接触抵抗が異なり、二つの脚部11A,11Aの接触抵抗は残余の脚部11Bの接触抵抗よりも大きくなっている。
【0025】
また、第4ボディブロック15の内部には、駆動体であるゼンマイばね17が収容されている。ゼンマイばね17は、ケーシング内に回転軸18(以下、説明の便宜上、必要に応じて「ゼンマイばね17の回転軸18」と呼ぶ。)とともに収容され、人が回転軸18を回すことによって回転方向の弾発力を蓄積し、その弾発力を解放することによって回転軸18の回転が得られるようにケーシング内に組み込まれている。ゼンマイばね17の回転軸18は、第4ボディブロック15の軸芯部に鉛直方向に沿って配置されている。回転軸18の一端側には、第4ボディブロック15の上面から上方に突出する断面略D字状の連結軸19が同軸に取り付けられ、回転軸18の他端側にはバランスウェイト20が取り付けられている。
【0026】
図4,図5は、第3ボディブロック14と第2ボディブロック13の詳細を示す図である。
第3ボディブロック14は、略筒状の周壁の一部に平坦面21が設けられるとともに、軸芯位置の下面に、第4ボディブロック15の上面から突出した連結軸19と結合されるD字状の嵌合孔22が設けられている。平坦面21は、第3ボディブロック14の上面側から一定厚みを残して段差状に肉抜きされ、それによって梁状の挟持部23が形成されている。そして、第3ボディブロック14の上面のうちの、軸芯部を挟んで挟持部23と相反する側の領域には、係止突起24と略方形状の開口25が隣接して設けられている。係止突起24は開口25よりも軸芯部側に配置され、係止突起24には開口25側に臨む爪26が設けられている。爪26の上面には、先端側が下方に傾斜するガイド斜面26aが設けられている。
また、第3ボディブロック14の上面のうちの、挟持部23と係止突起24の間の領域には、図2に示すように、スプリング27によって上方に付勢された一対の付勢ボタン28(付勢手段)が設けられている。この付勢ボタン28は、第3ボディブロック14と第2ボディブロック13が組み付けられたときに、第2ボディブロック13の下面に押圧されて押し下げられる。
【0027】
第2ボディブロック13は、軸芯位置の上面に断面D字状の嵌合突起29が設けられるとともに、下面側の軸芯位置から径方向外側に離間した位置に、略L字状の固定フック30が一体に延設されている。固定フック30は下方に向かって延出し、屈曲した先端部が第3ボディブロック14の梁状の挟持部23に対して下方から係止されるようになっている。また、第2ボディブロック13には、第2ボディブロック13と第3ボディブロック14を連結状態でロックするためのロックユニット31(ロック手段)が組み付けられている。ロックユニット31は、第2ボディブロック13の下面に設けられた略方形状の開口32を通して下方に延出する略L字状の可動フック33と、第2ボディブロック13の側面から外側に突出するロック解除ボタン34と、可動フック33とロック解除ボタン34を連結するとともに第2ボディブロック13内にスライド可能に収容されるユニット胴部35と、を備え、図4に示すように、ユニット胴部35がスプリング36によってロック解除ボタン34を外側に突出させる方向に付勢されている。また、ユニット胴部35は、ロック解除ボタン34の押し込み操作によってスプリング36の力に抗して変位し、このとき可動フック33を同時に同方向に変位させる。可動フック33の先端側の爪37は固定フック30と対向する側に屈曲しており、その爪37の下面には、先端側が上方に傾斜するガイド斜面37aが設けられている。
【0028】
第2ボディブロック13を第3ボディブロック14と結合する場合は、図4,図5に示すように、固定フック30の先端部を第3ボディブロック14側の挟持部23の下面に引っ掛け、その状態で第2ボディブロック13を付勢ボタン28の付勢力に抗して第3ボディブロック14の上面に押し付ける。こうして、第2ボディブロック13が押し付けられると、可動フック33の爪37のガイド斜面37aが係止突起24の爪26のガイド斜面26aに当接し、両ガイド斜面26a,37aによるガイド作用によってロックユニット31のユニット胴部35がスプリング36の力に抗して変位する。こうしてユニット胴部35が変位すると、可動フック33の爪37が係止突起24の爪26を乗り越えたところで、ユニット胴部35がスプリング36の力によって初期位置方向に再び戻り、そこで両爪37,26が相互に係合される。この結果、第2ボディブロック13と第3ボディブロック14は一体に結合される。なお、第2ボディブロック13と第3ボディブロック14は、こうして一体に結合されると、両者の軸芯が合致するように設定されている。
【0029】
一方、第2ボディブロック13と第3ボディブロック14の結合を解除する場合には、ロックユニット31のロック解除ボタン34を第2ボディブロック13の外側から内側に押し込む。こうして、ロック解除ボタン34が押し込まれると、ユニット胴部35がスプリング36の力に抗して変位し、その変位に伴って可動フック33の爪37が係止突起24の爪26から外れる。こうして可動フック33の爪37が外れると、第2ボディブロック13が付勢ボタン28の付勢力によって第3ボディブロック14上から跳ね上げられる。
なお、ロック解除ボタン34の外側の端面は、第2ボディブロック13の軸芯を中心とする円弧を描く円弧面とされている。
【0030】
また、第2ボディブロック13の周壁のうちの、ロック解除ボタン34の配置される部位と相反する部位には、前述した武器部品16を挿入装着するための、武器装着溝38が設けられている。この武器装着溝38に装着される武器部品16には所定重さのウェイトが内蔵され、図3(A),(B)に示すように、武器部品16を第2ボディブロック13に装着したときに上部ボディ10Aの重心Gが軸芯Oに対して偏心するようになっている。したがって、ゼンマイばね17の回転力を受けて上部ボディ10Bが回転すると、上部ボディ10Aの偏心した重心Gが偏心ウェイトとして機能して水平方向に旋回する。
【0031】
ところで、人形の頭部に相当する第1ボディブロック12には、第2ボディブロック13の嵌合突起29が挿入されるD字状の嵌合孔39が設けられており、嵌合孔39を嵌合突起29に係合することで、第1ボディブロック12が第2ボディブロック13に同軸に結合されるようになっている。第1ボディブロック12は、人形の頭部と兜等の装備品に模した造形がなされてキャラクターを特色づけるための部分であるが、装備品の形や重さ、重量の偏りを変えることによって上部ボディ10Aの重心位置や慣性モーメントを同時に変えることができる。このため、第1ボディブロック12は予め複数種類用意しておき、適宜交換できるようにしておくことが望ましい。
また、図3中40は、第2ボディブロック13の上面の軸芯Oから離間した部位に設けられた備品装着孔である。この備品装着孔40には、ウェイトを内蔵した旗等の別の備品(ウェイト部品)を適宜挿入装着することができる。
【0032】
この進行作動玩具1で実際に遊ぶ場合には、玩具ボディ10を組み立てた状態において、例えば、下部ボディ10Aを一方の手で持ち、その状態で他方の手で上部ボディ10Bを所定方向に回転させることにより、第4ボディブロック15に内蔵されたゼンマイばね17に回転エネルギーを蓄積する。この状態で進行作動玩具1を載置面2上に置いて手を離すことにより、進行作動玩具1は動き始める。
【0033】
このとき、進行作動玩具1は、図3(A),(B)に示すように、武器部品16を振り回すように上部ボディ10Aが一定方向に回転し、上部ボディ10Aの重心Gが下部ボディ10Bの軸芯O回りに旋回するようになる。こうして上部ボディ10Aの重心Gが旋回すると、その旋回に伴って下部ボディ10Bに遠心力が作用する。このとき、玩具ボディ10は、ゴム製の接地タイヤ11Abで載置面2に接する2つの脚部11A,11Aのある領域では載置面2から遠心力Fに抗する大きな反力F´を得ることができるが、硬質樹脂製の端面11Bbで載置面2に接する脚部11Bのある領域では載置面2から遠心力Fに抗する充分な反力F´を得ることができない。このため、上部ボディ10Aの重心Gが旋回する際に重心Gの位置が脚部11Bに近づくと、脚部11Bのある方向(図3中の白抜き矢印で示す方向)に進行作動玩具1の全体がずれ動かされることになる。
したがって、この進行作動玩具1においては、武器部品16の振り回し作動(上部ボディ10Aの回転)とともに、全体が載置面2上を一定方向に摺足状に(安定姿勢で間欠的に)進行する。
【0034】
図6は、2つの進行作動玩具1,1を対戦させて遊ぶ場合の各進行作動玩具1の動きを示すものである。
この場合、対戦者が進行作動玩具1をそれぞれ手で持って載置面2上で向かい合わせ、その状態で両対戦者が進行作動玩具1から手を離すことによって対戦が開始される。
こうして、対戦が開始されると、各進行作動玩具1は武器部品16を振り回しつつ、相手玩具方向に摺足状に進む。このとき、一方の進行作動玩具1の上部ボディ10Aが後ろに向いたタイミングで(ロック解除ボタン34が相手進行作動玩具1に対向したタイミングで)他方の進行作動玩具1が武器部品16を振り回すと、図6に示すように、他方の進行作動玩具1の武器部品16によって一方の進行作動玩具1のロック解除ボタン34が押され、その時点で勝負がつく。
【0035】
図7は、進行作動玩具1のロック解除ボタン34が対戦中に押されたときの状態を示すものである。
同図に示すように、ロック解除ボタン34が押されると、上部ボディ10A全体が下部ボディ10Bに対して上方に飛び上がり、上部ボディ10Aが下部ボディ10Bから分離される。そして、こうして上部ボディ10Aが分離されると、上部ボディ10Aによる遠心力が下部ボディ10Bに作用しなくなるため、瞬時に下部ボディ10Bと脚部11A,11Bの摺足状の作動が停止する。
【0036】
以上のように、この進行作動玩具1においては、ゼンマイばね17の動力によって上部ボディ10Aの重心Gを水平方向に旋回させ、上部ボディ10Aの重心Gの旋回に伴う水平方向の遠心力によって玩具ボディ10を脚部11A,11Bとともに載置面2に沿う方向に移動させるため、簡単な構造でありながら、玩具ボディ10を上下方向に大きく変動させることなく安定姿勢で進行させることができる。
【0037】
また、この進行作動玩具1においては、下部ボディ10Bに取り付けられる1つの脚部11Bの載置面2に対する接触抵抗が、他の2つの脚部11Aの接地面2に対する接触抵抗に比較して充分に小さく設定されているため、玩具ボディ1を脚部11A,11Bとともに確実に脚部11Aのある方向に間欠的に進行させることができる。
なお、進行作動玩具1の載置面2に対する接地部は、必ずしも多数の脚部11A,11Bに明確に分離する必要はなく、接触抵抗が軸芯回りで不均一に設定される構造であれば良いが、この実施形態のように接地部を複数の脚部11A,11Bで構成するようにした場合には、接地部の接触抵抗を、各脚部11A,11Bの設置位置や面積、個数等によって容易に管理することができるため、進行作動玩具1の進行方向を容易に設定できるという利点がある。
【0038】
また、この進行作動玩具1においては、玩具ボディ10が、ゼンマイばね17を保持する下部ボディ10Bと、偏心ウェイトを兼ねる上部ボディ10Aを備えた構成とされるとともに、上部ボディ10Aが下部ボディ10Bの回転駆動部(嵌合突起29)に対して脱着可能にされているため、上部ボディ10Aの交換によって異なる進行作動や回転挙動を容易に得ることができる。したがって、上部ボディ10Aに描かれた(或いは、形造られた)キャラクター特有の挙動を容易に作り出すことができる。
【0039】
さらに、この実施形態の進行作動玩具1の場合、上部ボディ10Aを構成する第2ボディブロック13に対して、ウェイト部品を兼ねる武器部品16が脱着可能に取り付けられているため、武器部品16を重さや長さの異なるものと交換することによっても、異なる進行挙動や回転挙動を得ることができる。したがって、進行作動玩具1の挙動に変化を与える特性を武器部品16に持たせることができる。
【0040】
また、この進行作動玩具1においては、下部ボディ10B側の第3ボディブロック14の上面に付勢ボタン28が設けられるとともに、上部ボディ10A側の第2ボディブロック13にロックユニット31が設けられ、ロックユニット31が、第3ボディブロック14側の係止突起24と係合される可動フック33と、第2ボディブロック13の外周側に突出するロック解除ボタン34と、可動フック33とロック解除ボタン34を連結するユニット胴部35を備えた構成とされているため、二つの進行作動玩具1,1を、上部ボディ10Aを回転させつつぶつけ合い、ロック解除ボタン34を押し合う対戦ゲームを行うことができる。そして、この進行作動玩具1では、高価な電子制御機器を用いない簡単な構造でありながら、ロック解除ボタン34が押されることで上部ボディ10Aが下部ボディ10Bから分離して跳ね上がり、それと同時に進行を瞬時に停止させる挙動を得ることができる。
【0041】
さらに、この進行作動玩具1においては、上部ボディ10A側の第2ボディブロック13に径方向外側に突出するようにウェイトを兼ねる武器部品16が取り付けられ、その武器部品16の延出端とロック解除ボタン34が同一高さに配置されているため、二つの進行作動玩具1,1を対戦させたときに、武器部品16を振り回す進行作動玩具1が、武器部品16で相手進行作動玩具1のロック解除ボタン16を押し込むことによって、あたかも相手進行作動玩具1の上部ボディ10Aを武器部品16で切り落としたような挙動を得ることができる。
【0042】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、上部ボディ10Aを水平方向に回転させる(偏心ウェイトを水平方向に旋回させる)駆動体としてゼンマイばね17を用いたが、駆動体は必ずしもゼンマイばね17に限らず、ゼンマイ式以外のばねを用いる回転手段や、電動式のモータ等も用いることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…進行作動玩具
2…載置面
10…玩具ボディ
10A…上部ボディ(偏心ウェイト)
10B…下部ボディ
11A,11B(11)…脚部(接地部)
13…第2ボディブロック
16…武器部品(ウェイト部品)
17…ゼンマイばね(駆動体)
18…回転軸
28…付勢ボタン(付勢手段)
31…ロックユニット(ロック手段)
33…可動フック
34…ロック解除ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動体の動力によって載置面上を進行する進行作動玩具において、
前記載置面上に置かれる接地部と、
この接地部に支持される玩具ボディと、
この玩具ボディに設けられ、前記駆動体の動力によって水平方向に旋回する偏心ウェイトと、を備え、
前記偏心ウェイトの旋回に伴う遠心力により、前記玩具ボディを前記載置面に沿わせて移動させることを特徴とする進行作動玩具。
【請求項2】
前記接地部は、前記載置面との接触抵抗が、前記偏心ウェイトの回転中心回りに不均一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の進行作動玩具。
【請求項3】
前記接地部は、前記玩具ボディから延出する複数の脚部によって構成され、前記載置面に対する一部の脚部の接触抵抗が他の脚部の接触抵抗に比較して小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の進行作動玩具。
【請求項4】
前記玩具ボディは、前記駆動体を保持する下部ボディと、この下部ボディの上方に設けられ前記駆動体の回転軸に脱着可能に連結される上部ボディと、を備え、
前記上部ボディは、重心位置が前記回転軸に対してずらして設定されることにより、前記偏心ウェイトを構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の進行作動玩具。
【請求項5】
前記上部ボディは、前記回転軸側に連結されるボディ本体と、このボディ本体に脱着可能に取り付けられるウェイト部品と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載の進行作動玩具。
【請求項6】
前記上部ボディと下部ボディの間には、前記上部ボディと下部ボディを連結した状態で前記下部ボディに対して前記上部ボディを上方に付勢する付勢手段と、前記上部ボディと下部ボディを連結状態に維持するロック手段と、が設けられ、
前記ロック手段は、前記上部ボディ若しくは下部ボディの外周面から径方向に外側に突出するロック解除ボダンと、このロック解除ボタンの作動に連動し、このロック解除ボタンが突出状態のときに前記上部ボディと下部ボディを相互に固定し、このロック解除ボタンが押し込まれることによって前記上部ボディと下部ボディの相互の固定を解除する可動フックと、を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の進行作動玩具。
【請求項7】
前記上部ボディには、ウェイト部品を兼ねる武器部品が径方向外側に突出して設けられ、この武器部品の延出端と前記ロック解除ボタンが同一高さに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の進行作動玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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