説明

遅延推定装置、遅延推定方法、及び遅延推定プログラム

【課題】プローブ装置を配置することなく、ネットワーク内の任意のパケット転送装置間の往復遅延時間を測定することができる。
【解決手段】第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第2の時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第3の時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第4の時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延推定装置、遅延推定方法、及び遅延推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
NGN(Next Generation Network;次世代ネットワーク)におけるIP電話サービスや地上波デジタル放送のIPネットワークにおける再放送(映像配信サービス)等、IPネットワークにおいて様々なサービスが提供されている。IPネットワークの通信品質の低下は、音声や画像の乱れ等を引き起こし、サービス品質の低下をもたらすことから、ネットワーク全体の通信品質を把握し、管理することが重要となる。
IPネットワークの通信品質を示すパラメータの1つとして、例えば、非特許文献1に記載のパケットの遅延時間がある。遅延時間を測定するためには、例えば非特許文献2のようなプローブ装置をIPネットワーク内に複数配置し、各プローブ装置においてパケットの通過時刻を測定し、通過時刻の差を計算することでプローブ間の通信品質の遅延を測定することが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ITU-T Recommendation Y.1540, [online],[2011/06/06 検索], インターネット<URL:http://www.itu.int/itu-t/recommendations/rec.aspx?id=9270>
【非特許文献2】QoS モニタシステム Gigabit QoS プローブ IQ2000, 横河技報 Vol.49 No.2( 2005 ), [online], [2011/07/21 検索], インターネット< URL : http://www.yokogawa.co.jp/rd/pdf/tr/rd-tr-r04902-007.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような装置を利用して測定する場合、測定したい区間の両端にプローブ装置を配置する必要がある。ネットワーク内の任意の区間を測定するためには非常に多くの装置を配置する必要があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、プローブ装置を配置することなく、ネットワーク内の任意のパケット転送装置間の往復遅延時間を測定することができる遅延推定装置、遅延推定方法、及び遅延推定プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第2の時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第3の時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第4の時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出部を備えることを特徴とする遅延推定装置である。
【0007】
(2)また、本発明の一態様は、上記の往復遅延推定装置において、前記第1のパケット転送装置において複数の第1の所定の時刻各々に前記第1のフローについて伝送された第1パケット数と、前記第2のパケット転送装置において複数の第2の所定の時刻各々に前記第1のフローについて伝送された第2パケット数を取得するフロー情報取得部と、
一の前記第1パケット数に対応するパケットが前記第2のパケット転送装置を通過した時刻の第1推定値を、前記一の第1パケット数と複数の前記第2パケット数と前記複数の第2のパケット数に対応する前記第2の所定の時刻とに基づき算出する、または、一の前記第2パケット数に対応するパケットが前記第1のパケット転送装置を通過した時刻の第2推定値を、前記一の第2パケット数と複数の前記第1パケット数と前記複数の第1のパケット数に対応する前記第1の所定の時刻とに基づき算出する時刻算出部と、を備え、 前記往復遅延算出部は、前記一の第1パケット数に対応するパケットを前記第1のパケットとし、前記一の第1パケット数に対応する前記第1の所定の時刻を前記第1の時刻とし、前記第1推定値を前記第2の時刻として前記推定を行う、または、前記一の第2パケット数に対応するパケットを前記第1のパケットとし、前記一の第2パケット数に対応する前記第2の所定の時刻を前記第2の時刻とし、前記第2推定値を前記第1の時刻として前記推定を行うことを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明の一態様は、上記の往復遅延推定装置において、前記時刻算出部は、前記一の第1パケット数と前記第2のパケット数のうちの1つとの差と、前記1つの第2パケット数を含む2つの前記第2パケット数の差との比を用いて、前記2つの第2パケット数に対応する2つの前記第2の所定の時刻の差を比例配分して、前記第1推定値を算出することを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明の一態様は、上記の往復遅延推定装置において、前記第1の時刻と前記第3の時刻は、特定のフローの最初のパケットを前記第1のパケット転送装置が転送した時刻を基準としており、前記第2の時刻と前記第4の時刻は、特定のフローの最初のパケットを前記第2のパケット転送装置が転送した時刻を基準としていることを特徴とする。
【0010】
(5)また、本発明の一態様は、往復遅延推定装置における方法において、往復遅延算出部が第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出過程を有することを特徴とする遅延推定方法である。
【0011】
(6)また、本発明の一態様は、往復遅延推定装置のコンピュータに、第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出手順を実行させるための遅延推定プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プローブ装置を配置することなく、ネットワーク内の任意のパケット転送装置間の往復遅延時間を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る往復遅延推定システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るフロー情報について説明する説明図である。
【図3】本実施形態に係る往復遅延推定装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る取得情報テーブルの要素を示す図である。
【図5】本実施形態に係る往復遅延推定装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る情報収集処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る往復遅延推定処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係るフロー情報テーブルの一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る取得情報テーブルの一例を示す図である。
【図10】本実施形態に係るフロー情報テーブルの一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る取得情報テーブルの一例を示す図である。
【図12】本実施形態に係る取得情報テーブルの別の一例を示す図である。
【図13】本実施形態に係る遅延算出テーブルの別の一例を示す図である。
【図14】本実施形態に係る遅延算出テーブルの別の一例を示す図である。
【図15】本実施形態に係るフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。
【図16】本実施形態に係るパケット数情報と基準時刻情報の関係を示す図である。
【図17】本実施形態に係る非測定対象フローの情報を示す図である。
【図18】本実施形態に係るフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。
【図19】本実施形態に係るパケット数情報と基準時刻情報の関係を示す図である。
【図20】本実施形態に係る非測定対象フローの情報を示す図である。
【図21】本実施形態に係るフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。
【図22】本実施形態に係る非測定対象フローに関する情報を示す図である。
【図23】本実施形態に係る取得情報テーブルである。
【図24】本実施形態に係る取得情報テーブルの別の一例である。
【図25】本実施形態に係る遅延算出テーブルを示す図である。
【図26】本実施形態に係る遅延算出テーブルの別の一例を示す図である。
【図27】本実施形態に係る遅延算出テーブルの別の一例を示す図である。
【図28】本実施形態に係る取得情報テーブルを示す図である。
【図29】本実施形態に係る生成した遅延算出テーブルの一例を示す図である。
【図30】本実施形態に係る生成した遅延算出テーブルの別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の往復遅延推定システム1の概略構成図である。
図示する例では、往復遅延推定システム1は、往復遅延推定装置10、5個のパケット転送装置20−1〜20−5を含むネットワークを含んで構成される。以下、パケット転送装置20−1〜20−5を総称して、パケット転送装置20という。
【0015】
往復遅延推定装置10は、測定区間の両端にある2台の選択したパケット転送装置20(それぞれ、パケット転送装置ID−1、ID−2と呼ぶ)から、2台のパケット転送装置の両方を通過するパケットのフロー情報(以下、測定対象フロー情報と呼ぶ)を取得する。また、往復遅延推定装置10は、パケット転送装置ID−1、ID−2を通過する測定対象以外のフロー情報(以下、非測定対象フロー情報と呼ぶ)を取得する。
往復遅延推定装置10は、取得した測定対象フロー情報、及び非測定対象フロー情報に基づいて、後述する基準時刻情報を生成する。往復遅延推定装置10は、生成したパケット転送装置ID−1、ID−2の基準時刻情報に基づいてRTT(Round Trip Time;往復時間)を計算する。
【0016】
パケット転送装置20は、ルータやスイッチなどであり、パケットを転送する装置である。パケット転送装置20は、装置内を通過するパケットをフローとして認識し、フロー単位の情報を、ネットワークを介して往復遅延推定装置10に出力する機能を有する。出力される情報には、各フローが流れ始めてからのフローの生存時間を示すフロー時刻情報、および各フローが流れ始めてからフロー情報を出力するまでに転送処理されたパケット数情報が含まれている。
【0017】
パケット転送装置20からのフロー情報は、パケット転送装置20から往復遅延推定装置10に対して、設定された間隔で自動的に送信するようにしてもよい。これは、IPFIXまたはNetFlow等のプロトコルを用いる場合に相当する。 あるいは、往復遅延推定装置10からの取得要求に応じて、パケット転送装置20が情報を送信するようにしてもよい。この場合、例えば、OpenFlow等のプロトコルを用いる。
【0018】
なお、フロー情報の取得方法は、後述するように、パケット転送装置20に対して抽出したいフローの条件を指定することで、その情報のみを往復遅延推定装置10に出力するようにしてもよい。また、取得したフロー情報内に各フローを判別できる情報が含まれているので、往復遅延推定装置10は、各フローを判別できる情報を利用して特定のフローのみを抽出するようにしてもよい。なお、フローとは、送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、送信先ポート番号、送信元ポート番号、及びプロトコル等により決まる。
【0019】
図2は、フロー情報について説明する説明図である。以下では、測定を行う対象区間の両端にあるパケット転送装置をパケット転送装置ID−1(第1のパケット転送装置)、ID−2(第2のパケット転送装置)と呼ぶ。パケット転送装置ID−1からパケット転送装置ID−2へ向かうパケット(第1のパケット)に対応するフローのID(測定対象フロー)をFlowID−1(第1のフロー)と呼ぶ。FlowID−2、3は、パケット転送装置ID1を通過するパケットに対応するフロー(非測定対象フロー)情報である。FlowID−4及びFlowID−は、パケット転送装置ID−2を通過するパケットに対応するフロー(非測定対象フロー)情報である。なお、測定対象フロー以外であれば、パケット転送装置ID−1、ID−2の両方を通過するフローを非測定対象フローとしてもよい。
【0020】
図3は、往復遅延推定装置10の構成の一例を示す概略構成図である。往復遅延推定装置10は、フロー情報取得部101、時刻算出部102、往復遅延算出部103及びDB(データベース)104を含んで構成される。
【0021】
フロー情報取得部101は、パケット転送装置20からフロー情報を取得する。ここでフロー情報とは、当該フロー情報を生成するまでに該パケット転送装置を通過した該フローのパケット数と、該フローの最初のパケットを転送してから当該フロー情報を生成するまでの経過時間であるフロー時刻情報とを含む情報である。フロー情報取得部101は、取得したフロー情報各々のフロー時刻情報を、パケット転送装置20毎に特定のフローのフロー時刻情報(基準時刻情報)に置き換え、パケット数と基準時刻情報とを対応付けて取得情報テーブルに記憶させる。このとき、置き換えるフロー時刻情報として、該フロー情報と同時に取得したフロー情報のうち、特定のフローのフロー時刻情報を用いる。
【0022】
時刻算出部102は、フロー情報所得部がDBに記憶させた取得情報テーブルを参照して、特定のパケットのパケット転送装置ID−1とパケット転送装置ID−2との通過時刻を算出する。例えば、時刻算出部102は、パケット転送装置ID−1のパケット数P1(一の第1パケット数)と基準時刻情報T1とを、取得情報テーブルから取得し、該パケット数P1に対応するパケットA1(該フローのパケットのうち、パケット数番目のパケット)のパケット転送装置ID−1の通過時刻を、該基準時刻情報T1とする。さらに、時刻算出部102は、このパケット数P1に加えて、パケット転送装置ID−2のパケット数と基準時刻情報との複数の組(パケット数P2、P3、基準時刻情報T2、T3)を取得情報テーブルから取得し、これらを用いて、さきのパケットA1のパケット転送装置ID−2の通過時刻(第1推定値)を算出する。
この算出には、パケット転送装置ID−1のパケット数P1とパケット転送装置ID−2のパケット数P2との差と、パケット転送装置ID−2のパケット数P2とP3(複数の第2パケット数)との差との比を用いて、基準時刻情報T2とT3(第2の修訂の時刻)との差を比例配分して、パケットA1がパケット転送装置ID−2を通過した時刻を算出する。時刻算出部102は、これら算出した時刻を、パケット数と対応付けて、遅延算出テーブルに記憶させる。時刻算出部102は、同様にしてパケット転送装置ID−2のパケット数P4に対応するパケットがパケット転送装置ID−1を通過した時刻を算出する。これらを、パケット転送装置ID−1からD−2へのフローと、逆のパケット転送装置ID−2からID−1へのフローとについて行う。
【0023】
往復遅延算出部103は、遅延算出テーブルを参照して、パケット転送装置ID−1、ID−2間の往復の遅延を算出する。例えば、往復遅延算出部103は、遅延算出テーブルを参照して、パケット転送装置ID−1からID−2へのフロー(第1のフロー)のパケットA2(第1のパケット)が、パケット転送装置ID−2を通過した時刻(第2の時刻)とパケット転送装置ID−1を通過した時刻(第1の時刻)との差と、パケット転送装置ID−2からID−1へのフロー(第2のフロー)のパケットA3(第2のパケット)が、パケット転送装置ID−1を通過した時刻(第3の時刻)とパケット転送装置ID−2を通過した時刻(第4の時刻)との差との和をとり、パケット転送装置ID−1、ID−2間の往復の遅延を算出する。
【0024】
DB104には、フロー情報取得部101から入力されたフロー情報テーブル及び取得情報テーブル格納されている。DB104には、時刻算出部102から入力された遅延算出テーブルが格納されている。
【0025】
図4は、本実施形態に係る取得情報テーブルの要素を示す図である。図示するように、取得情報テーブルは、パケット転送装置20に一意に定められた転送装置ID、フロー情報に一意に定められたフローID、フロー情報から抽出したパケット数情報、及び基準時刻情報の各要素からなるテーブルである。
【0026】
図5は、本実施形態に係る往復遅延推定装置10の処理を示すフローチャートである。
(ステップS1)フロー情報取得部101は、ネットワークからフロー情報を取得する。フロー情報取得部101は、フロー情報から、パケット数情報、及び基準時刻情報を紐付けた取得情報を生成し、取得情報テーブルに記録する(フロー情報取得処理)。フロー情報取得部101は、予め定めた一定の時間おきに、予め定めた回数のフロー情報取得動作を行う。その後ステップS2に進む。
(ステップS2)時刻算出部102は、取得情報テーブルに基づいて、遅延算出テーブルを生成する。往復遅延算出部103は、遅延算出テーブルに基づいて、RTTの推定を行う。
なお、ステップS1とステップS2は同時に行ってもよい。
【0027】
図6は、本実施形態に係るステップS1の処理を示すフローチャートである。
(ステップS101)フロー情報取得部101は、指定回数もしくは指定時間に達するまでステップS102〜S109の処理を繰り返す。
(ステップS102)フロー情報取得部101は、ネットワークから、往復遅延を測定したい区間の両端に位置するパケット転送装置(つまり、パケット転送装置ID−1、ID−2)から測定対象フロー情報及び非測定対象フロー情報を取得する。その後ステップS103に進む。
(ステップS103)フロー情報取得部101は、測定対象フロー情報からパケット数情報を、非測定対象フロー情報からフロー時刻情報を抽出する。その後ステップS104に進む。
【0028】
(ステップS104)フロー情報取得部101は、基準時刻情報を取得するために用いる非測定対象フロー情報を選定済みであるか否かを判定する。選定済みであると判定された場合(Yes)は、ステップS107に進む。選定済みでないと判定された場合(No)はステップS105に進む。
(ステップS105)フロー情報取得部101は、パケット転送装置ID−1、ID−2における基準時刻情報として利用する基準時刻フロー情報を選定する。その後ステップS106に進む。
(ステップS106)フロー情報取得部101は、基準時刻情報として利用するフロー情報からフロー時刻情報を抽出し、抽出したフロー時刻情報を基準時刻情報とする。その後ステップS109に進む。
【0029】
(ステップS107)フロー情報取得部101は、前回に選定済みのフロー情報が今回も取得できたか否かを判定する。取得できたと判定された場合(Yes)は、ステップS106に進む。取得できなかったと判定された場合(No)は、ステップS108に進む。
(ステップS108)フロー情報取得部101は、新たな基準時刻情報として利用する非測定対象フロー情報を選定し、前回に基準時刻情報として利用していたフロー情報を用いて後述するように補正処理を行い、基準時刻情報を生成する。その後ステップS109に進む。
(ステップS109)フロー情報取得部101は、転送装置ID、フローID、パケット数情報、及び基準時刻情報を取得情報テーブルとしてDB104に格納する。
【0030】
図7は、本実施形態に係るステップS2の処理を示すフローチャートである。
(ステップS201)時刻算出部102は、測定区間を通過する両方向の測定対象フロー情報に対してステップS202〜S206の処理を行う。
(ステップS202)時刻算出部102は、取得情報テーブル内のパケット数情報が小さい順にステップS203〜S206の処理を行う。
(ステップS203)時刻算出部102は、取得情報テーブルから、処理対象となっていない情報の中で、パケット数が最も小さい情報を抽出し、これを処理対象情報とする。
【0031】
(ステップS204)時刻算出部102は、ステップS203で抽出した処理対象情報の示す転送装置IDと異なる転送装置IDを持つ情報であって、処理対象情報のパケット数情報より小さく且つ最も処理対象情報のパケット数情報に近いパケット数情報を持つ情報(情報Aと呼ぶ)、及びステップS203で抽出した処理対象情報の示す転送装置IDと異なる転送装置IDを持つ情報であって、処理対象情報のパケット数情報より大きく且つ最も処理対象情報のパケット数情報に近いパケット数情報を持つ情報(情報Bと呼ぶ)を抽出する。その後ステップS205に進む。
(ステップS205)時刻算出部102は、情報A及び情報Bの2つの情報が抽出できたか否かを判定する。2つの情報が共に抽出できたと判定された場合(Yes)はステップS206に進む。2つの情報のうちどちらか一方でも抽出できなかったと判定した場合(No)はステップS203に戻る。
【0032】
(ステップS206)時刻算出部102は、抽出した情報A及び情報Bに基づいて、後述するようにパケット数情報と同一のパケット数情報に対する処理対象情報の基準時刻を推定し、遅延算出テーブルに格納する。
(ステップS207)往復遅延算出部103は、RTT推定の処理でパケット転送装置ID−1、ID−2のどちらの基準時刻情報を利用するかを選択する。その後ステップS208に進む。
(ステップS208)往復遅延算出部103は、ステップS207で選択した基準時刻情報に対応する遅延算出テーブル内の基準時刻情報を小さい順に並べ替え、ステップS209からステップS213の処理を繰り返す。
【0033】
(ステップS209)往復遅延算出部103は、遅延算出テーブル内から処理対象となっていない情報の中で、最も基準時刻情報が小さい情報を抽出し、これ処理対象情報とする。その後ステップS210に進む。
(ステップS210)往復遅延算出部103は、遅延算出テーブル内から、処理対象情報の基準時刻情報より大きく且つ差が最も小さい情報、及び処理対象情報の基準時刻情報より小さく且つ差が最も小さい情報を抽出する。往復遅延算出部103は、抽出した情報の中で、処理対象情報のフローIDと異なるフローIDを持つ情報を抽出する。ただし、上記の条件を満たす情報が2つ抽出できた場合は、最も差が小さい情報のみを抽出する。
(ステップS211)往復遅延算出部103は、ステップS210で情報を抽出できたか否かを判定する。抽出できたと判定された場合(Yes)はステップS212に進む。抽出できたと判定されなかった場合(No)は、ステップS209に戻る。
【0034】
(ステップS212)往復遅延算出部103は、処理対象情報と、ステップS210で抽出した情報(抽出情報と呼ぶ)とを用いてすでにRTTを推定したか否かを判定する。RTTを推定したと判定された場合(Yes)は、ステップS209に戻る。RTTを推定しなかったと判定された場合(No)は、ステップS213に進む。
(ステップS213)往復遅延算出部103は、後述するように、処理対象情報及び抽出情報からRTTを推定する。
【0035】
(フロー情報テーブルを用いた取得情報テーブルの生成)
図8は、本実施形態に係るフロー情報テーブルの一例を示す図である。図示する例では、フロー情報テーブルは、転送装置ID、フローID、フロー時刻情報、及びパケット数情報の各要素からなる2次元形式のテーブルである。図8で示すフロー情報テーブルは、ステップS101で表される繰返し処理をN回行った後のテーブルである。符号8aを付したデータは、転送装置IDがID−1、フローIDがFlowID−1、パケット数情報はP1(N)であることを示している。符号8bを付したデータは、転送装置IDがID−1、フローIDがFlowID−2、フロー時刻情報がTf2(N)であることを示している。符号8cを付したデータは、転送装置IDがID−1、フローIDがFlowID−3、フロー時刻情報がTf3(N)であることを示している。
【0036】
符号8dを付したデータは、転送装置IDがID−2、フローIDがFlowID−1,パケット数情報はP2(N)であることを示している。符号8eを付したデータは、転送装置IDがID−2、フローIDがFlowID−4、フロー時刻情報がTf4(N)であることを示している。符号8cを付したデータは、転送装置IDがID−2、フローIDがFlowID−5、フロー時刻情報がTf5(N)であることを示している。
このように、フロー情報テーブルには、測定対象フロー情報に対しては転送装置ID、フローID、及びパケット数情報が格納される。また、非測定対象フロー情報に対しては転送装置ID、フローID、及びフロー時刻情報が格納される。
【0037】
図9は、本実施形態に係る取得情報テーブルの一例を示す図である。図示する例では、取得情報テーブルは、転送装置ID、フローID、パケット数情報、及び基準時刻情報の各要素からなる2次元形式のテーブルである。符号9aを付したデータは、転送装置IDがID−1、フローIDがFlowID−1,パケット数情報はP1(N)、基準時刻情報はTf2(N)であることを示している。符号9bを付したデータは、転送装置IDがID−2、フローIDがFlowID−1、パケット数情報はP2(N)、基準時刻情報はTf4(N)であることを示している。
【0038】
図10は、本実施形態に係るフロー情報テーブルの一例を示す図である。図10で示すフロー情報テーブルは、ステップS101で繰返し処理がN+1回行われた後のテーブルである。
図10では、図8で示したN回目の繰返し処理におけるフロー情報テーブルと比較して、フローIDがFlowID−4の情報が失われている。これは、このフローが終了したことを示している。図9で示したように、フローIDがFlowID−4のフロー情報を基準時刻フロー情報として選択していたが、FlowID−4のフロー時刻情報をN+1回目の基準時刻情報として利用することができない。そこで、N回目におけるFlowID−4とFlowID−5におけるフロー時刻情報の差を求め、この差を用いてFlowID−5におけるフロー時刻情報をこれまで利用していたFlowID−4のフロー時刻情報に換算する。
N回目におけるFlowID−4とFlowID−5におけるフロー時刻情報の差は、「Tf5(N)−Tf4(N)」であることを利用すると、N+1回目における換算後の基準時刻情報は、「Tf5(N+1)−(Tf5(N)−Tf4(N))」と表すことができる。
【0039】
図11は、本実施形態に係るN+1回目の繰返し処理において生成される取得情報テーブルの一例を示す図である。図示するように、符号11aを付したデータでは、フローIDがFlowID−2のフロー情報が存在するため、そのフロー時刻情報であるTf2(N+1)が基準時刻情報となる。一方、符号11aを付したデータでは、フローIDがFlowID−4のフロー情報がなくなったため、第N回目の繰返し処理で取得したTf4(N)、Tf5(N)と、第N+1回目の繰返し処理で取得したTf5(N+1)とを用いて基準時刻情報を生成している。
【0040】
図12は、本実施形態に係る取得情報テーブルの一例を示す図である。この図では、フローIDが同一である情報のみを抽出し、パケット数情報が小さい順に並べ替えられている。このとき、処理対象となっていない情報の中で、最もパケット数情報の小さい情報を処理対象情報とする。つまり、符号12aを付した情報が処理対象情報となる。
処理対象情報が符号12aを付した情報であるとき、パケット数情報Pより小さいパケット数情報を持つ情報が存在しない。つまり、ステップS205において2つの情報が抽出できなかったため、次に小さいパケット数情報を持つ符号12bを付した情報を処理対象情報とする。
【0041】
符号12bを付した情報が処理対象情報であるとき、これよりパケット数情報が小さい情報が存在するが、この情報の転送装置IDは、処理対象情報の転送装置IDと同一であるため、異なる転送装置IDを持つ情報が存在しない。つまり、ステップS205において2つの情報が抽出できなかったため、次に小さいパケット数情報を持つ符号12cを付した情報を処理対象情報とする。
符号12cを付した情報が処理対象情報であるとき、転送装置IDが異なり、且つパケット数情報が小さい情報(符号12bを付した情報)及び転送装置IDが異なり、且つパケット数情報が大きい情報(符号12dを付した情報)が存在する。つまり、ステップS205において2つの情報が抽出できた。従って、ステップS206に進み、基準時刻情報を推定する。
【0042】
基準時刻情報がTのときのパケット数情報はP、基準時刻情報がTのときのパケット数情報はPであることから、時間(T−T)に(P−P)個のパケットが転送装置IDがID−1をもつパケット転送装置ID−1を通過したことになる。つまり、パケット1個当たりの経過時間は、「(T−T)/(P−P)」で表される。したがって、転送装置IDがID−1をもつパケット転送装置ID−1においてP個目のパケットが通過した基準時刻TP3は式1を用いて求めることができる。
【0043】
【数1】

【0044】
続いて符号12dを付した情報が処理対象情報となる。符号12dを付した情報に対しては、符号12cを付した情報及び符号12eを付した情報がステップS204における条件を満たし、ステップS205の条件を満たす。従って、ステップS206に進み、パケット転送装置ID−2においてP個目のパケットが通過した基準時刻Tp4を式2を用いて求めることができる。
【0045】
【数2】

【0046】
(遅延算出テーブルの生成)
図13は、本実施形態に係る遅延算出テーブルの一例を示す図である。図示する例では、遅延算出テーブルは、フローID、パケット数情報、転送装置IDがID1をもつパケット転送装置ID−1の基準時刻情報、及び転送装置IDがID2をもつパケット転送装置ID−2の基準時刻情報の各要素からなる2次元形式のテーブルである。
符号13aを付した情報は、フローIDがFlowID−1でパケット数情報がPであるときのパケット転送装置ID−1の基準時刻情報がTp3と推定され、パケット転送装置ID−2の基準時刻情報がTであることを示している。
符号13bを付した情報は、フローIDがFlowID−1でパケット数情報がPであるときのパケット転送装置ID−1の基準時刻情報がTであり、パケット転送装置ID−2の基準時刻情報がTp4と推定されることを示している。
【0047】
(遅延算出テーブルを用いたRTTの推定)
図14は、本実施形態に係る遅延算出テーブルの一例を示す図である。本図では、FlowID−1は、転送装置IDが、ID−1からID−2のパケット転送装置20へ向けたフローを示す。また、FlowID−2は、転送装置IDが、ID−2からID−1のパケット転送装置20へ向けたフローを示す。本遅延算出テーブルは、ステップ208においてパケット転送装置ID−1の基準時刻情報の小さなものから順に並べ替えを行った後の遅延算出テーブルである。以下では、特に記載のない場合は、パケット転送装置ID−1の基準時刻情報を単に基準時刻情報と呼ぶ。
まず、ステップS209において、符号14aを付した情報が処理対象情報として選択される。この処理対象情報より基準時刻情報が小さな情報はなく、この処理対象情報より大きい基準時刻情報を持ち且つその差が最も小さい情報は符号14bを付した情報となる。符号14bを付した情報のフローIDは、処理対象情報のフローIDと異なるため、抽出されることとなる。
処理対象情報(符号14aを付した情報)と符号14bを付した情報とでは、RTT推定処理は行われていないことから、この2つの情報を用いて、式3によりRTTを計算する。
【0048】
【数3】

【0049】
次に処理対象情報となるのは、符号14bを付した情報である。このとき、処理基準時刻情報より大きく且つ差が最も小さい情報は符号14cを付した情報であるが、フローIDが同一であるため抽出されない。処理対象情報の基準時刻情報より小さく且つ差が最も小さい情報は符号14aを付した情報である。これはフローIDが異なるため抽出されることになる。しかしながら、処理対象情報と符号14aを付した情報を利用したRTT推定処理は既に実施済みであることから、RTT推定処理は行われない。次に、符号14cを付した情報が処理対象情報となる。このとき、符号14dを付した情報は、処理対象情報より大きく、且つ最も差が小さく、フローIDも異なる。また、処理対象情報と符号14dを付した情報とを利用してRTT推定処理は行われていないため、以下の式4によりRTTを算出する。
【0050】
【数4】

【0051】
以下同様にしてテーブル内の全ての情報に基づいてRTTを計算する。
【0052】
[具体例]
次に、具体的な実施例を図面を参照しながら説明する。
ここでは、測定区間の両端に位置するパケット転送装置20を識別する転送装置IDをそれぞれ「ID−1」「ID−2」とし、この2つのパケット転送装置20の両方を通過する測定対象フローのフローID を「FlowID−1」とする。また、パケット転送装置「ID−1」を通過する非測定対象フローのフローIDを「FlowID−2」、パケット転送装置「ID−2」を通過する非測定対象フローのフローIDを「FlowID−3」および「FlowID−4」とする。
【0053】
(第1回目の情報収集)
フロー情報取得部101は、測定区間の両端のパケット転送装置20から、FlowID−1からFlowID−4までの全てのフローに関するフロー時刻情報およびパケット数情報を取得する。
図15は、第1回目に取得したフロー毎のフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。なお、括弧で示した情報は、取得情報テーブルへの情報追加に関係のない情報(処理の説明においては「−」で示した情報)であることを示している。
図16は、パケット数情報と基準時刻情報の関係を示す図である。また、図17は、非測定対象フローの情報を示す図である。
【0054】
ここで、パケット転送装置ID−1における基準時刻情報として利用するフローをFlowID−2、パケット転送装置ID−2における基準時刻情報として利用するフローをFlowID−3とする。このとき、取得情報テーブルには転送装置毎に測定対象フローであるFlowID−1に関するフロー時刻情報およびパケット数情報と、各転送装置における基準時刻情報として転送装置毎に決めた非測定対象フローのフロー時刻情報を格納する。
つまり、転送装置ID−1については、測定対象フローFlowID−1のパケット数情報「2780」と、基準時刻情報として利用する非測定対象フローFlowID−2のフロー時刻情報「627」を格納する。また、転送装置ID−2については、測定対象フローFlowID−2のパケット数情報「2420」と、基準時刻情報として利用する非測定対象フローFlowID−3のフロー時刻情報「232」を格納する。
【0055】
(第2回目の情報収集)
図18は、第2回目に取得したフロー毎のフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。1回目と同様にしてFlowID−1からFlowID−4までの全てのフローに関するフロー時刻情報およびパケット数情報を取得したところ、各パケット転送装置20における基準時刻情報として利用しているFlowID−2及びFlowID−3が共に存在していることから、引き続きこの情報を基準情報として利用する。
図19は、第2回目の情報収集後のパケット数情報と基準時刻情報の関係を示す図である。また、図20は、第2回目の情報収集後の非測定対象フローの情報を示す図である。
このとき、各パケット転送装置における基準時刻情報として利用しているフローFlowID−2およびFlowID−3が共に存在していることから、引き続きこの情報を基準時刻情報として利用する。このとき、1 回目と同様にして取得情報テーブルに情報追加を行う。
また、転送装置毎に非測定対象フロー全てのフロー時刻情報を保持する。
【0056】
(第3回目の情報収集)
図21は本実施形態に係る第3回目に取得したフロー毎のフロー時刻情報およびパケット数情報を示す図である。第3回目に取得したデータにはパケット転送装置ID−2が使用していた非測定対象フローFlowID−3が存在しなくなったため、パケット転送装置ID−2に対する基準時刻情報として利用するフローをFlowID−3からFlowID−4へと変更する。
【0057】
利用するフローを変更した場合、新たなフローの基準時刻情報を、これまで取得情報テーブルに格納してきた基準時刻情報に合わせるための補正処理が必要となる。補正処理は保持していた転送装置毎に非測定対象フローの情報を利用する。
図22は、パケット転送装置ID−2の非測定対象フローについて保持していた情報を示す図である。
つまり、FlowID−3におけるフロー時刻情報「283」とFlowID−4におけるフロー時刻情報「67」が同じ時刻であることから、このフロー時刻情報の差を利用して補正処理を行う。つまり、3回目におけるパケット転送装置の基準時刻情報は以下のようになる。
100−(67−283)=316
この計算によりFlowID−3が存在していたとしたときにFlowID−3から得られるであろうフロー時刻情報を求めたことになる。
図23は、この補正結果を利用してパケット転送装置ID−2に対する取得情報テーブルを追加した図である。
本例では、情報取得回数を3回としていたため、これで情報取得処理は終了する。
【0058】
(遅延算出テーブルの生成)
ここでは、転送装置IDがID−1のパケット転送装置と、転送装置IDがID−2のパケット転送装置の間のRTTを推定する。往復遅延算出部103は、「ID−1→ID−2」の向きに流れるFlowID−1のフローと、「ID−2→ID−1」の向きに流れるFlowID−2のフローからRTTを推定する。
図24は、取得情報テーブルからFlowID−1のフローのみを選択し、パケット数情報が示すパケット数について上り順となるよう並び替えた図である。処理対象となっていないパケット数情報が最小の情報は、符号24aを付した情報であり、これが最初に処理対象情報となる。
【0059】
処理対象となっていないパケット数情報が最小の情報は符号24aを付した情報であり、これが最初の処理対象情報となる。このとき、処理対象情報のパケット数情報より小さな値を持つ情報は存在しないため、次にパケット数情報が小さい符号24bを付した情報が処理対象情報となる。
符号24bを付した情報が処理対象情報であるとき、転送装置IDが異なり、かつ処理対象情報のパケット数情報より小さなパケット数情報を持つ情報(符号24aを付した情報)、および転送装置IDが異なり、かつ処理対象情報のパケット数情報より大きなパケット数情報を持つ情報(符号24cを付した情報)が抽出できる。処理対象情報は転送装置IDがID−1の情報であり、またパケット数情報は「325」であるため、ここではID−2の転送装置におけるパケット数が「325」のときの基準時刻情報T325(ID-2)を先に示した式1により推定する。
【0060】
【数5】

【0061】
図25は、パケット数情報とパケット転送装置ID−1、ID−2における基準時刻情報を示す遅延算出テーブルである。時刻算出部102は、得られたパケット転送装置ID−2におけるパケット転送装置ID−1と同数のパケット数における基準時刻情報を遅延算出テーブルに格納する。
【0062】
次の処理対象情報は符号24cを付した番目の情報となる。このとき、同様にして符号23bを付した情報および符号24cを付した情報が抽出できる。処理対象情報は転送装置IDがID−2の情報であり、またパケット数情報は「418」であるため、ここではID−1の転送装置におけるパケット数が「418」のときの基準時刻情報T418(ID−1)を先に示した式1により推定する。
【0063】
【数6】

【0064】
図26は、パケット数情報とパケット転送装置ID−1、ID−2における基準時刻情報を示す遅延算出テーブルである。パケット数情報が「418」のときの基準時刻情報が追加されている。
次に、符号24dを付した情報が処理対象となる。これまでと同様に、符号23dを付した情報の基準時刻情報が計算され、T511(ID−2)=126と求まる。
図27は、パケット数情報とパケット転送装置ID−1、ID−2における基準時刻情報を示す遅延算出テーブルである。パケット数情報が「511」のときの基準時刻情報が追加されている。
次の処理対象情報は、符号24eを付した情報であるが、処理対象情報のパケット数情報より大きなパケット数情報を持つ情報が存在しないため、遅延算出テーブルの生成処理は終了となる。
【0065】
次に、FlowID−1と逆方向のフローであるFlowID−2のフローについて、FlowID−1と同様の処理を行う。
図28は、取得情報テーブルからFlowID−2を含むフローのみを選択し、パケット数情報が示すパケット数が上り順となるよう並び替えた図である。FlowID−1のときと同様に、パケット数情報が最小である符号28aを付した情報は、これより小さな値を持つ情報は存在しないため、次にパケット数情報が小さい符号28bを付した情報が処理対象情報となる。以下同様にして、符号28bの情報が処理対象情報であるときは、ID−1におけるパケット数「107」に対する基準時刻情報を算出し、遅延時間テーブルに格納する。また、符号28cを付した情報が処理対象情報のときは、ID−2におけるパケット数「217」に対する基準時刻情報を算出し、遅延算出テーブルに格納する。
【0066】
符号28dを付した情報が処理対象情報のときは、これより大きいパケット数情報を持つ情報が存在しないため、遅延算出テーブルの生成は終了となる。
図29は生成した遅延算出テーブルを示す図である。本図では、FlowID−2を含むフローのみについて記載しているが、実際は、遅延算出テーブルにはFlowID−1について生成した基準時刻情報も同様に記載されている。
【0067】
(RTTの算出)
図30は、「ID−1→ID−2」の向きに流れるFlowID−1のフローと、「ID−2→ID−1」の向きに流れるFlowID−2のフローから生成した遅延算出テーブル(図27、図29参照)を、ID−1に対する基準時刻情報について、値の小さい順に並べ替えた図である。
最初は、符号30aを付した情報が処理対象情報となる。このとき、処理対象情報より基準時刻情報が小さい情報は無く、処理対象情報より大きくかつその差が最も小さい情報は符号30bを付した情報であり、これは処理対象情報とフローIDが同一である。つまり、符号30aを付した情報に対してRTTを推定するための情報が抽出できなかったこととなるため、次に基準時刻情報が小さい符号30bを付した情報が処理対象情報となる。符号30bを付した情報が処理対象情報であるとき、これより小さくかつフローIDが異なる基準時刻情報を持つ情報は存在しないが、処理対象情報の基準時刻情報より大きく差が最も小さい情報はフローIDが異なっていることから、符号30cを付した情報が抽出される。符号30cを付した情報は処理対象情報(符号30bを付した情報)とRTT算出を実施していないことから、この2つの情報を利用して、先に示した式によりRTTの推定を行う。
RTT=(123−13)+(14−94)=30
【0068】
つまり、ここでは、RTT=30であると推定できる。
次は3番目の情報が処理対象情報となる。処理対象情報の基準時刻情報より大きくかつ差が最も小さい情報は4番目の情報であり、これはフローIDが異なるため抽出される。また、処理対象情報の基準時刻情報より小さくかつ差が最も小さい情報は2番目の情報であり、これもフローIDが異なるため抽出される。つまり、この場合は2つの情報が抽出されたため、この2つの情報の中で基準時刻情報の差が小さい方である2番目の情報が最終的に抽出されることになる。3番目の情報が処理対象情報のとき、2番目の情報が抽出情報であり、この組み合わせで既にRTT推定を実施済みであることから、ここではRTT推定処理は実施せず、4番目の情報が処理対象情報となる。4番目の情報が処理対象情報であるとき、3番目と5番目の情報が共にフローIDが異なっていることから、2つとも抽出されるが、基準時刻情報の差から最終的には3番目の情報が抽出され、3番目の情報と4番目の情報を利用してRTT推定を実施していないことから、推定処理を行う。
RTT = (14−94) + (126−16) =30
【0069】
つまり、ここでは「RTT=30」であると推定できる。
次は5番目の情報が処理対象情報となる。以下同様にして、4番目の情報が抽出され、この間でのRTT推定は行われていないことから推定処理を実施し「RTT=30」であると推定できる。
ここでは、遅延の変化(ゆらぎ)やロスがない理想的な状態を例にRTT推定方法を示したが、実際はゆらぎ等が発生し、各推定計算において異なるRTT推定値が得られる可能性がある。そのときは、複数回のRTT推定値の平均を取ってRTT推定値としてもよい。
【0070】
このように、本実施形態によれば、往復遅延算出部103は、第1のパケット転送装置20−1と第2のパケット転送装置20−2との往路の遅延時間と復路の遅延時間との和をとって、往復の時間を算出する。これにより、第1のパケット転送装置と第2のパケット転送装置の時計が同期していないなど時間の基準が異なっていても、その時間のずれを相殺することができるため、往復遅延を測定することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、時刻算出部102は、取得情報テーブルを参照して、特定のパケットの第1のパケット転送装置と第2のパケット転送装置との通過時刻を算出する。
これにより、パケット転送装置20が、個々のパケットの通過時間を出力することはできなくても、フロー情報取得部101が取得したパケット数とそれに対応するフロー時刻から、特定のパケットの通過時刻を推定して転送の遅延時間を算出できる。
【0072】
また、本実施形態によれば、フロー情報取得部101は、各パケット転送装置から取得したフロー情報のフロー時刻情報に代えて、特定のフローのフロー時刻情報を用いて基準時刻情報としている。これにより、往復遅延算出部103は、往復遅延をなるべく近い時刻における往路と復路の合計値とすることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態における往復遅延推定装置の一部、例えば、フロー情報取得部、時刻算出部、及び往復遅延算出部をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、往復遅延推定装置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0074】
また、上述した実施形態における往復遅延推定装置の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。往復遅延推定装置及び往復遅延推定装置の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0075】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・往復遅延推定システム、10・・・往復遅延推定装置、20、20−1〜20−5・・・パケット転送装置、101・・・フロー情報取得部、102・・・時刻算出部、103・・・往復遅延算出部、104・・・DB(データベース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第2の時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第3の時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する第4の時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出部を備えることを特徴とする遅延推定装置。
【請求項2】
前記第1のパケット転送装置において複数の第1の所定の時刻各々に前記第1のフローについて伝送された第1パケット数と、前記第2のパケット転送装置において複数の第2の所定の時刻各々に前記第1のフローについて伝送された第2パケット数を取得するフロー情報取得部と、
一の前記第1パケット数に対応するパケットが前記第2のパケット転送装置を通過した時刻の第1推定値を、前記一の第1パケット数と複数の前記第2パケット数と前記複数の第2のパケット数に対応する前記第2の所定の時刻とに基づき算出する、または、一の前記第2パケット数に対応するパケットが前記第1のパケット転送装置を通過した時刻の第2推定値を、前記一の第2パケット数と複数の前記第1パケット数と前記複数の第1のパケット数に対応する前記第1の所定の時刻とに基づき算出する時刻算出部と、
を備え、
前記往復遅延算出部は、前記一の第1パケット数に対応するパケットを前記第1のパケットとし、前記一の第1パケット数に対応する前記第1の所定の時刻を前記第1の時刻とし、前記第1推定値を前記第2の時刻として前記推定を行う、または、前記一の第2パケット数に対応するパケットを前記第1のパケットとし、前記一の第2パケット数に対応する前記第2の所定の時刻を前記第2の時刻とし、前記第2推定値を前記第1の時刻として前記推定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の遅延推定装置。
【請求項3】
前記時刻算出部は、前記一の第1パケット数と前記第2のパケット数のうちの1つとの差と、前記1つの第2パケット数を含む2つの前記第2パケット数の差との比を用いて、前記2つの第2パケット数に対応する2つの前記第2の所定の時刻の差を比例配分して、前記第1推定値を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の遅延推定装置。
【請求項4】
前記第1の時刻と前記第3の時刻は、特定のフローの最初のパケットを前記第1のパケット転送装置が転送した時刻を基準としており、前記第2の時刻と前記第4の時刻は、特定のフローの最初のパケットを前記第2のパケット転送装置が転送した時刻を基準としていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の遅延推定装置。
【請求項5】
遅延推定装置における方法において、
往復遅延算出部が第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出過程を有することを特徴とする遅延推定方法。
【請求項6】
往復遅延推定装置のコンピュータに、
第1のパケット転送装置から第2のパケット転送装置へ伝送される第1のフローの第1のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する第1の時刻と、前記第1のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケット転送装置から前記第1のパケット転送装置へ伝送される第2のフローの第2のパケットが前記第1のパケット転送装置を通過する時刻と、前記第2のパケットが前記第2のパケット転送装置を通過する時刻から前記第1のパケット転送装置と前記第2のパケット転送装置の間の往復遅延を推定する往復遅延算出手順
を実行させるための遅延算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−106305(P2013−106305A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250708(P2011−250708)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(397065480)エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 (187)
【Fターム(参考)】