遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法
【課題】遊具設置後の一貫した管理体制を確立することの可能な遊具管理装置を提供する。
【解決手段】電子タグ5Aの付された各種遊具5に関する遊具管理情報80を遊具5ごとに記憶する遊具データベース11Bと、遊具管理プログラム11Aを実行することにより遊具データベース11Bに記憶された遊具管理情報80に基づいて作業指示情報90を生成する制御部10と、制御部10が生成した作業指示情報90を、電子タグ5Aへのアクセスが可能な端末装置4へ送信する通信部12とを備える。
【解決手段】電子タグ5Aの付された各種遊具5に関する遊具管理情報80を遊具5ごとに記憶する遊具データベース11Bと、遊具管理プログラム11Aを実行することにより遊具データベース11Bに記憶された遊具管理情報80に基づいて作業指示情報90を生成する制御部10と、制御部10が生成した作業指示情報90を、電子タグ5Aへのアクセスが可能な端末装置4へ送信する通信部12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、団地や、公園、公共施設などに設置された遊具(例えば、ブランコや滑り台)を管理するための遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子化、都市化に伴い、子供の発育に対する「遊びの価値」が見直されつつある。子供は遊びを通じて自らの限界に挑戦し、これにより身体的、精神的、社会的な面などを成長させ、自らの創造性や主体性を向上させていくものと考えられている。
【0003】
子供らの遊びには欠かせないブランコや滑り台などの遊具は、団地や、公園、公共施設などに設置されているが、このような場所への遊具の設置は、主に、地方自治体および所轄官庁や、これらから委託された企業およびNPOなどによって行われており、設置された遊具の管理もこれらの者によって行われている。ここで、遊具の管理とは、一般に固定資産としての管理を指しており、固定資産の管理に必要な情報は、これらの者により管理されている書類やパソコンなどに保管されているのが一般的である(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−202501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遊具は、日本工業規格などの諸規格に沿った材料および加工がなされているが、恒常的に屋外に設置されているため、設置してから間もないものであっても、強度不足の虞のある不良個所を有する遊具が多数見受けられる。しかし、遊具を管理する者は、遊具を固定資産としてしか考えておらず、上記のような実態を正確には把握していないため、補修等の必要な遊具が何らの手当てもなされずに放置されている。その結果、遊具による事故が頻繁に起こっており、地域の住民はそのような事故が発生して初めて、そのような実態を知ることとなる。
【0006】
実際、神奈川県内だけでも緊急点検の必要がある遊具を設置している箇所が6600を超えていると言われており、日頃行われる遊具の点検方法や点検結果を踏まえたメンテナンスなど、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することが急務となっている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することの可能な遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遊具管理装置は、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を遊具ごとに記憶するデータベースと、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成する作業指示情報生成手段と、作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信する送信手段とを備えたものである。
【0009】
本発明の遊具管理プログラムは、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を遊具ごとにデータベースに記憶させるステップと、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成するステップと、その生成された作業指示情報を、記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信するステップとをコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0010】
本発明の遊具管理方法は、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を格納するためのデータベースを有する遊具管理装置と、各種遊具にそれぞれ付された記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置とを用意し、遊具管理装置から端末装置に作業指示情報を送信するように構成したものである。遊具管理装置の側では、遊具管理情報を遊具ごとにデータベースに記憶し、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成すると共に、その生成された作業指示情報を端末装置へ送信する。一方、端末装置の側では、遊具管理装置から送信された作業指示情報を受信し、その受信した作業指示情報を出力する。
【0011】
ここで、「遊具」とは、屋外に設置されているブランコや滑り台などの構造物のことであり、例えば、団地や、公園、公共施設などに設置された、人による管理の必要な構造物を指している。「記憶媒体」とは、例えば、電子タグや、2次元コードなどの、遊具に付することの可能な小さな記録媒体のことである。「電子タグ」は、RFID(Radio Frequency Identification)タグや、IC(Integrated Circuit)タグなどの総称であり、「2次元コード」は、文字や数字などのデータを二次元の図形パターンとして所定の表面に刻印・印刷した暗号である。「端末装置」とは、例えば、各種遊具を診断する業者(遊具診断業者)の保有する情報処理装置のことである。「遊具管理情報」とは、各種遊具の特徴を特定することの可能な情報であり、例えば、識別子と、遊具の種類、設置場所、設置日、診断日、診断項目および診断結果を示す情報とを含むものである。「診断結果」とは、各種遊具の状態を特定することの可能な情報であり、例えば、目視、触診、聴診などによって得られた情報や、振動による非破壊検査によって得られた情報を含むものである。また、「作業指示情報」とは、例えば、遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて生成されるものであり、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報を含むものである。
【0012】
本発明の遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法では、各種遊具の遊具管理情報の管理が遊具管理装置のデータベースを用いて行われる。具体的には、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報が生成され、その生成された作業指示情報が端末装置へ送信される。
【0013】
例えば、遊具管理装置では、遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて個々の遊具に対して行うべき作業内容が決定され、その決定された作業内容は作業指示情報として端末装置へ送信され、端末装置に出力される。遊具診断業者は、例えば、この出力された作業指示情報を基に個々の遊具の手入れや診断などを行う。このように、遊具診断業者は、遊具管理装置からの作業指示情報に基づいて作業を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法によれば、各種遊具の遊具管理情報の管理を遊具管理装置のデータベースを用いて行うようにしたので、遊具診断業者は遊具管理情報から送信されてきた作業指示情報に基づいて作業を行うことができる。これにより、遊具の管理を日常的に適切に行うことが可能となるので、例えば、地面と接している部分が腐食していたり、シロアリなどによる虫食いにより内部に空洞ができていて、そのうち破断する虞のある遊具など、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをなくすることが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となるだけでなく、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る遊具管理方法が適用される遊具管理システムを表したものである。この遊具管理システムは、遊具5(図5参照)を管理するシステムであり、遊具管理業者Aによって使用される遊具管理装置1と、遊具診断業者Bによって使用される遊具診断システム100とを含む情報ネットワークシステムとして構築されたものである。
【0017】
遊具管理業者Aは、遊具5の手入れから診断、補修までの業務を、遊具管理装置1を用いて一元的に管理する管理者のことである。遊具診断業者Bは、遊具管理業者A(遊具管理装置1)からの指示に基づいて、遊具5を健全に保つために通常行われる定型作業などを行う業者のことである。
【0018】
図2は、図1の遊具管理装置1の機能構成を表したものである。この遊具管理装置1は、制御部10と、記憶部11と、通信部12と、表示部13と、入力部14とを備えている。制御部10は、記憶部11、通信部12、表示部13および入力部14とそれぞれ接続されている。なお、制御部11は本発明の「作業指示情報生成手段」あるいは「危険判定手段」の一具体例に対応し、通信部12は本発明の「送信手段」あるいは「受信手段」の一具体例に対応する。
【0019】
制御部10は、プログラムの命令を解釈し、実行するためのもので、例えば、CPU(Central Processing Unit )を含んで構成されている。記憶部11には、遊具管理プログラム11Aと、遊具データベース11Bとが記憶されている。
【0020】
遊具管理プログラム11Aは、遊具5を管理するための一連の手順を制御部10に実行させるためのものであり、遊具データベース11Bは、個々の遊具5に関する遊具管理情報80を整理、統合し、検索しやすくしたファイルである。この遊具管理情報80は、例えば、図3(A)に示したように、各種遊具5の特徴を特定することの可能な情報、具体的には、識別子81、管理者82、遊具の種類83、設置場所84、設置日85および診断情報86を含んでいる。
【0021】
ここで、識別子81は、個々の遊具5を識別するためのものであり、数字、文字、記号等の少なくとも1つまたはそれらを組み合わせた固有符号である。管理者82は、その遊具5を管理する者を特定するためのものであり、例えば、その遊具5を管理する者の識別番号や、氏名などを含んで構成されている。なお、管理者82には、実際に遊具5を管理している者の他、遊具5の所有者なども含まれる。遊具の種類83とは、ブランコや滑り台などの構造物の種類のことであり、特に、屋外に設置されている構造物を対象としている。設置場所84とは、遊具5が設置されている場所を特定するためのものであり、例えば、識別番号や、所在地(○○県○○市○○町○○団地○○号棟前など)などを含んで構成されている。設置日85とは、遊具5が設置された日を指しており、例えば、平成○○年○月○日などを含んで構成されている。診断情報86とは、各種遊具5の状態を特定することの可能な情報、例えば、遊具5の状態を検査、診断した診断日86Aや、診断項目86B、目視、触診、聴診などによって得られた主観情報86C、非破壊検査によって得られた客観情報86D、客観情報86Dなどに基づいて得られた遊具5の診断結果86Dを含むものである。診断結果86Dとは、例えば、遊具5の特定部位の交換の必要性について診断した結果などを含むものである。
【0022】
通信部12は、通信網を介して端末装置4と相互に通信可能となっており、例えば、遊具管理装置1において生成された作業指示情報90(後述)を端末装置4の通信部43(後述)へ送信すると共に、端末装置4において読出部46(後述)から読み出された識別子21および入力部14から入力された報告情報を受信するようになっている。
【0023】
ここで、上記した作業指示情報90は、遊具データベース11Bに記憶されている遊具の種類83、設置場所84および診断情報86に基づいて生成される情報であり、図3(B)に示したように、例えば、通常作業指示情報91および特別作業指示情報92を含んでいる。通常作業指示情報91とは、遊具5を健全に保つために通常行われる定型作業に関する情報、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報のことである。特別作業指示情報92とは、遊具5に不良が発見された際に行われる定型作業に関する情報、例えば、腐食防止剤の塗布や、補強部材の設置、遊具5の使用を不能にする部材の設置などの作業に関する情報のことである。これらの作業手順などについては後述する。
【0024】
図4は、図1の遊具診断システム100の概略構成を表したものである。この遊具診断システム100は、振動発生装置2、振動検知装置3および端末装置4(遊具診断装置)を備えている。
【0025】
振動発生装置2は、通信部21、振動制御部22および振動発生部23を有している。
【0026】
ここで、通信部21は、遊具診断装置4からの振動発生信号(後述)を受信するためのものであり、例えば、アンテナおよび通信用ICなどを含んでいる。
【0027】
振動制御部22は、受信した振動発生信号に対応した振動条件で振動発生部23を振動させる制御を行うためのものであり、例えば、制御用ICなどを含んでいる。この振動制御部22は、例えば、振動発生部12の振動周波数を所定の周波数帯内で連続的にまたは飛び飛びに変化させる制御を行うようになっている。
【0028】
振動発生部23は、振動源および固定部を含んで構成されている。この振動源は、振動制御部22からの制御信号に応じて所定の周波数帯内の任意の振動周波数で振動することが可能となっており、少なくとも振動発生装置2の取付面(被診断対象と固定部とが互いに接する面)と交差する方向に振動し、被診断対象に振動源の振動を与えることができるようになっている。このような振動源として、例えば、数100Hzから数10kHzまで振動可能なモータが挙げられる。また、固定部は、振動源の振動を最小限のロスで被診断対象に伝達すると共に振動源を被診断対象に固定するためのものであり、振動発生装置2の取付面を被診断対象と密着させることの可能な材料、例えば、両面テープや、(被診断対象が金属の場合には)マグネットなどからなる。
【0029】
振動検知装置3は、通信部31、信号処理部32および振動検知部33を有している。
【0030】
ここで、通信部31は、遊具診断装置4へ電気信号(後述)を送信するためのものであり、例えば、アンテナおよび通信用ICなどを含んでいる。
【0031】
信号処理部32は、電気信号に対して所定の信号処理を施すためのものであり、例えば、信号処理用ICなどを含んでいる。
【0032】
振動検知部33は、振動検知素子および固定部を含んで構成されている。この振動検知素子は、振動発生装置2が被診断対象に与えた振動のうち振動検知部33にまで伝播してきた振動を検知するためのものであり、少なくとも振動検知装置3の取付面(被診断対象と固定部とが互いに接する面)と交差する方向の振動を検知することができるようになっている。振動検知素子は、例えば、圧電型の加速度センサ、心音センサ、コンデンサマイクロフォンからなり、振動検知部33にまで伝播してきた振動を、振動の伝播方向や大きさに応じた電気信号に変換するようになっている。また、固定部は、被診断対象の振動を最小限のロスで振動検知素子に伝達すると共に振動検知素子を被診断対象に固定するためのものであり、振動検知装置3の取付面を被診断対象と密着させることの可能な材料、例えば、両面テープや、(被診断対象が金属の場合には)マグネットなどからなる。
【0033】
遊具診断装置4は、制御部41、記憶部42、通信部43、表示部44、入力部45、読出部46および書込部47を有している。なお、読出部46および書込部47については、図示のように端末装置4本体に有線接続するのではなく、端末装置4本体とは別体のハンディータイプのリーダライタユニットとして構成すると共に、このリーダライタユニットと端末装置4本体との間を無線通信路により接続するようにしてもよい。
【0034】
ここで、制御部41は、プログラムの命令を解釈し、実行するためのもので、例えば、CPUを含んで構成されている。
【0035】
記憶部42には、端末プログラム42A、遊具診断プログラム42Bおよび基準データ42Cが記憶されている。端末プログラム42Aは、遊具5に付された電子タグ5A(図1参照)へのデータアクセスや遊具管理装置1との間の通信を行うための一連の手順を制御部41に実行させるためのものである。なお、これらの一連の手順の詳細については後述する。また、遊具診断プログラム42Bは、遊具診断のための一連の手順を制御部41に実行させるためのものである。なお、この一連の手順の詳細についても後述する。基準データ42Cは、所定の安全基準を満たす遊具の部材(例えば、柱)から得られた計測データ(レファレンスデータ)と、遊具の部材の交換の要否の判断に用いる閾値データとを含んでいる。この計測データには、遊具の種類(例えば、滑り台、ブランコ)、遊具の材料(例えば、木材、金属、樹脂、コンクリート)、遊具の部位(例えば、柱、梁)ごとのデータが含まれている。閾値データについても、遊具の種類、材料、部位ごとのデータが含まれている。
【0036】
上記した電子タグ5Aは、情報を自由に読み書きすることが可能なメモリIC(図示せず)と、無線アンテナ(図示せず)とを含んで構成された微小なチップであり、端末装置4の読出部46および書込部47との間で所定の周波数の電磁波を利用した通信を行うことにより、メモリIC内の情報を読み出したり、メモリIC内に情報を書き込んだりすることができるようになっている。遊具5に付された個々の電子タグ5Aには、上記した遊具管理情報80が記憶されている。
【0037】
電子タグ5Aは、設置のし易さや設置後のいたずら防止を考慮すると、立っている大人の目線よりも高い箇所、例えば、地表からの高さが2mぐらいの箇所に設けられていることが好ましい。なお、この電子タグ5Aは、入力された情報を先に記録されている情報に追加して記録すると共に、一度書き込んだ情報を削除することができない機構を有していることが好ましい。これにより、電子タグ5Aに記録された情報が誤って消去されたり、改ざんされる虞がなくなる。
【0038】
このように、一旦取り付けられた電子タグ5Aが遊具5から外されたり、遊具5に記録された情報が改ざんされることのないようにすることにより、トレーサビリティに係る情報の信頼性を確保することが可能となる。
【0039】
通信部43は、通信網を介して遊具管理装置1と相互に通信可能となっており、例えば、端末装置4において読出部46(後述)から読み出された識別子21および入力部14から入力された報告情報を遊具管理装置1の通信部12へ送信すると共に、遊具管理装置1において生成された作業指示情報90を受信するようになっている。また、この通信部44は、振動発生装置2および振動検知装置3とも相互に通信可能となっており、振動発生装置2に振動発生信号を送信したり、振動検知装置3からの電気信号を受信したりすることが可能となっている。
【0040】
表示部44は、例えば、制御部41におけるプログラムの実行結果(例えば、診断結果)を表示したり、制御部41におけるプログラムの実行に際して情報入力を支援するための表示をするためのものであり、例えば、液晶ディスプレイからなる。
【0041】
入力部45は、制御部41におけるプログラムの実行に際して情報を入力するためのものであり、例えば、キーボードやマウスからなる。
【0042】
図5は、図4の遊具診断システム100を、被管理対象であると共に被診断対象でもある遊具5の診断に用いた際の様子を模式的に表したものである。図6は、図5の破線で囲まれた部分を拡大して表したものである。
【0043】
図5、図6では、振動発生装置2および振動検知装置3は、取り扱いの容易性および計測の安定性を確保するなどの目的で、帯状の固定ベルト6に取り付けられており、固定ベルト6と共に診断ベルト7を構成している。ここで、固定ベルト6は、振動発生装置2および振動検知装置3を被診断対象である固定柱51(後述)に密着固定した際に、振動発生装置2および振動検知装置3が固定柱51を間にして互いに対向するように調整可能な構造となっている。
【0044】
被診断対象である遊具5は、図5に示したように、所定の部材で構成された椅子50と、遊具5を地面に固定する複数の固定柱51と、椅子50を中空に支持する梁52と、固定柱51および梁52のぐらつきを防止する小梁53,54と、固定柱51、梁52および小梁53,54を連結する留め具55と、椅子50を揺動可能に梁52と連結する鎖56とを備えた木製のブランコである。
【0045】
この遊具5では、固定柱51の両端部(上端部51Aおよび下端部51C)や、梁52および小梁53,54の両端部が外部に露出しており、さらに、固定柱51の下端51Cは地面と接している。また、留め具55が固定柱51、梁52および小梁53,54に打ち込まれており、椅子50を揺動可能に支持する鎖56を固定する部材(図示せず)が梁52に打ち込まれている。
【0046】
ここで、固定柱51、梁52および小梁53,54の両端部や、これらに留め具55や固定部材が打ち込まれている箇所は、通常、外部環境の影響を受けて劣化し易く、長年の使用により、これらの箇所には、遊具5の強度を低下させる不良(ひび、割れ、腐敗など)が生じ易い。特に、固定柱51の下端部51Cは地面と接しているので、遊具5の中で最も不良の生じやすい部位と言える。また、図7に例示したように、例えば、固定柱51には、一般的に節51Dが存在しており、節51Dの周囲51Eには水が溜まりやすく、節51Dの周囲51Eが腐り易い。また、図示しないが、シロアリなどによる虫食いによって遊具51のいたるところに空洞が生じている可能性がある。
【0047】
このように、遊具5には、遊具5の強度を低下させる様々な不良が様々な部位に生じる可能性があり、遊具5の日常的な点検、診断において、目視、触診、聴診などで確認する主観的な手法を用いるだけでは、遊具5による事故が起こる前に遊具5の危険性を的確に把握することは極めて困難であると言える。そこで、遊具5に少しでも危険の兆候が見られたら、すぐに遊具5の使用を中止したり、撤去したりするという手法も考えられる。しかし、そのようにした場合には、実際には、遊具5による事故が発生する可能性が全くないか、ほとんどないにも拘わらず、遊具5の使用中止や撤去を行ってしまっている可能性が高く、極めて不経済である。また、遊具5の部材を分解したり削ったりし、腐食割れの深さや強度などを高度な精密機器を用いて詳細に検査することも考えられる。しかし、そのようにした場合には、検査の度に、遊具5の部材を分解したり削ったりするので、検査によって遊具5に不良の原因を与えてしまう虞があるだけでなく、コストや手間がかかり過ぎて、日常的に検査を行うことができないという問題がある。また、検査の度に遊具5が長期間使えなくなり、遊具5としての役割を十分に果たすことができなくなる虞がある。
【0048】
一方、本実施の形態の遊具診断システム100では、これらの問題を一挙に解決することが可能であり、有用性の極めて高いものであると言える。以下、この遊具診断システム100の動作について説明する。
【0049】
図8は、本実施の形態の遊具診断システム100おける遊具診断の手順を表したものである。この図では、遊具診断システム100を用いる遊具診断業者B、遊具診断装置4、振動発生装置2および振動検知装置3の相互間のやり取りをわかりやすくするために、遊具診断業者B、遊具診断装置4、振動発生装置2および振動検知装置3ごとに流れを示した。
【0050】
遊具診断を行うにあたって、まず、遊具診断業者Bが診断ベルト7を遊具5に設置する(ステップS101)。例えば、図2に示したように、固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cに診断ベルト7を巻き付ける。このとき、振動発生装置2と振動検知装置3が固定柱51にしっかりと密着するように診断ベルト7を巻き付ける。
【0051】
次に、遊具診断業者Bが遊具診断プログラム42Aの起動を遊具診断装置4に要求する(ステップS101)。例えば、表示部44に表示されているアイコンをマウスでクリックする。すると、遊具診断プログラム42Aが起動され(ステップS103)、遊具5の情報入力が要求される(ステップS104)。例えば、表示部44に入力フォームが表示される。
【0052】
次に、遊具診断業者Bは遊具5の情報(例えば、遊具5の種類、材料、診断ベルト7の設置部位など)を入力し、診断実行を要求する(ステップS105)。例えば、マウスやキーボードを用いて表示部44に表示された入力フォーム内の各項目(例えば、遊具5の種類、材料、診断ベルト7の設置部位など)を埋めたのち、診断実行ボタンをマウスでクリックする。
【0053】
すると、遊具診断装置4において、遊具5の入力情報に基づいて振動発生装置2の振動条件が決定され、その条件に対応する振動発生信号が出力される(ステップS106)。例えば、遊具5の種類としてブランコを、材料としてひのきを、診断ベルト7の設置部位として固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cが入力された場合には、1500Hzを中心とする所定の周波数帯内を連続的に掃印する動作を、上端部51A、中央部51B、下端部51Cの順に順次実行することを要求する振動発生信号が生成され、その振動発生信号が振動発生装置2に送信される。
【0054】
遊具診断装置4から送信された振動発生信号は振動発生装置2で受信され、その受信された振動発生信号に対応した振動条件で振動発信部21が振動させられる(ステップS107)。例えば、1500Hzを中心とする所定の周波数帯内を連続的に変化する振動が、上端部51A、中央部51B、下端部51Cの順に発生する。
【0055】
この振動発信部21での振動は、固定柱51の内部を伝播し、固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cに設置されたそれぞれの振動検知部33において検知され、振動検知部33の配置された部位における振動の向きや大きさに応じた電気信号が振動検知装置3から出力される(ステップS108)。
【0056】
このとき、固定柱51の内部の伝播経路中に、遊具5の強度を低下させる不良が存在する場合には、そのような不良が無い場合とは異なる周波数分布の振動が振動検知部33において検知される。また、振動検知部33から電気信号に対して信号処理部32によって何らかの信号処理がなされたものが振動検知装置3から出力されてもよい。
【0057】
振動検知装置3から送信された電気信号は遊具診断装置4で受信され、その受信された電気信号に対して周波数分析(例えば、ウェーブレット変換)が行われ、計測データが導出される(ステップS109)。その後、得られた計測データと、あらかじめ用意された基準データ42Bとが対比され、固定柱51の状態が診断され、その診断結果が表示部44に出力される(ステップS110)。
【0058】
例えば、下端部51Cの振動発信部21を振動させたときに下端部51Cの振動検知部33で得られた電気信号に対して周波数分析をかけたときに得られた計測データが基準データから大きくずれている一方で、他の計測データが基準データとほぼ一致していた場合に、そのずれ量が所定の閾値を超えていなかったときには、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているものの、固定柱51を交換するほどの不良ではないと遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているが、固定柱51の交換は今のところ不要との診断結果が表示部44に表示される。その逆に、そのずれ量が所定の閾値を超えていたときには、固定柱51の下端部51Cに重大な不良が発生しており、固定柱51を交換する必要があると遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに生じた重大な不良により固定柱51の交換が必要との診断結果が表示部44に表示される。
【0059】
また、例えば、下端部51Cの振動発信部21を振動させたときに下端部51Cの振動検知部33で得られた電気信号に対して周波数分析をかけたときに得られた計測データが基準データから大きくずれている一方で、他の計測データが基準データとほぼ一致していた場合に、計測データを基準データで規格化し、規格化した後の計測データが所定の閾値を超えていなかったときには、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているものの、固定柱51を交換するほどの不良ではないと遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているが、固定柱51の交換は今のところ不要との診断結果が表示部44に表示される。その逆に、規格化した後の計測データが所定の閾値を超えていたときには、固定柱51の下端部51Cに重大な不良が発生しており、固定柱51を交換する必要があると遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに生じた重大な不良により固定柱51の交換が必要との診断結果が表示部44に表示される。
【0060】
このように、遊具診断システム100では、振動検知装置3から出力される、遊具5の所定の部位(固定柱51)の振動に応じた電気信号に対して周波数分析を行い、これにより得られた計測データと、あらかじめ用意された基準データ42Bとを対比して遊具5の所定の部位(固定柱51)の状態が診断される。つまり、本実施の形態では、遊具5の部材を分解したり削る必要がなく、高度な精密機器を用いる必要もない。また、主観的な判断を必要とせず、だれでも簡単に検査を行うことができる。これにより、定量的かつ客観的に遊具の日常的な安全評価をすることができる。
【0061】
続いて、図9ないし図12を参照して、本実施の形態の遊具管理装置1および端末装置4の動作について説明する。なお、説明の便宜上、(A)遊具5を固定資産として登録する手順、(B)遊具5を管理する手順に分けて説明する。ここで、図9ないし図12は、遊具管理装置1または端末装置4における動作の流れを、遊具管理業者A、遊具診断業者Bによる操作や処理と共に表したものである。
【0062】
(A:遊具5を固定資産として登録する手順、図9)
まず、遊具管理業者Aが、遊具管理装置1における遊具管理プログラム11Aの起動と、端末装置4における端末プログラム42Aの起動とを要求する(ステップS201)。すると、遊具管理プログラム11Aが制御部10によって立ち上げられると共に(ステップS202)、端末プログラム42Aが制御部41によって立ち上げられる(ステップS203)。次に、端末装置4に対して遊具5の固定資産としての登録を要求する(ステップS204)。すると、端末装置4の制御部41から遊具管理情報80の入力を要求される(ステップS205)。なお、端末プログラム42Aの立ち上げ時以外の任意の時に、遊具管理業者Aからの指示により遊具5の固定資産としての要求できるようにしてもよい。また、上記した一連の手続きを行うことのできる権限を、上記したように遊具管理業者Aに与えてもよいし、遊具診断業者Bに与えてもよい。
【0063】
次に、上記した一連の手続きを行うことのできる者(例えば、遊具管理業者A)は、遊具5の所定の箇所に電子タグ5Aを固定する。その後、その固定した電子タグ5Aに書き込むべき遊具管理情報80を入力部45に入力すると共に、書込部47をその電子タグ5Aに近づけたのち、書込コマンドを入力する(ステップS206)。すると、入力部45に入力した遊具管理情報80は、書込部47を介して電子タグ5Aに書き込まれると共に、通信網を介して遊具管理装置1に送信される(ステップS207)。
【0064】
その後、端末装置4から送信されてきた遊具管理情報80は、遊具管理装置1の制御部10によって、遊具5ごとにデータベース11Bに記憶される(ステップS208)。
【0065】
次に、遊具管理情報80を通信網上にアップロードすることを要求する(ステップS209)。すると、遊具管理情報80が遊具管理装置1によって通信網上にアップロードされる(ステップS210)。このようにして、遊具5が固定資産として登録される。このようにして、遊具5を管理するにあたっての準備が完了する。
【0066】
(B:遊具5を管理する手順、図10〜図12)
遊具管理業者Aが通信網上に公開された遊具5の遊具管理情報80にアクセスする(ステップS301)。すると、遊具管理装置1によって、遊具管理業者Aからの入力に応じて遊具管理業者Aに遊具管理情報80の提供が行われる(ステップS302)。
【0067】
遊具管理業者Aは、提供された情報をもとに定型作業を行う対象の遊具5を選択する(ステップS303)。すると、選択された遊具5の識別子81が遊具管理装置1の制御部10によって受け付けられる(ステップS304)。その後、データベース11Bに記憶された遊具管理情報80のうち、受け付けた識別子81に対応する遊具5の遊具管理情報80のうち遊具の種類83、遊具の設置場所84および診断情報86に基づいて作業指示情報90が生成される(ステップS305)。
【0068】
この作業指示情報90には、通常作業に関する手順が含まれており、必要に応じて特別作業に関する手順が含まれている。通常作業に関する内容としては、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報などが含まれている。特別作業に関する内容としては、例えば、腐食防止剤の塗布や、補強部材の設置、遊具5の使用を不能にする部材の設置などの作業に関する情報などが含まれている。
【0069】
次に、生成された作業指示情報90は、遊具管理装置1の制御部10によって、遊具診断業者Bの保有する端末装置4に送信されたのち(ステップS306)、遊具診断業者Bの保有する端末装置1Bによってそれぞれ受信されると共に、出力される(ステップS17)。遊具診断業者Bは、出力された作業指示情報90に基づいて作業を行う(ステップS308)。
【0070】
遊具診断業者Bは、所定の作業を行ったのち、遊具5に固定された電子タグ5Aに書込部47を近づけて、入力部45に登録要求コマンドを入力する(ステップS309)。すると、遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が電子タグ5Aに書き込まれる(ステップS310)と共に、遊具管理装置1に送信される(ステップS311)。ここで、作業内容には、診断作業によって新たに得られた診断情報86が含まれている。
【0071】
その後、送信された遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が遊具管理装置1によって受信されると共に、データベース11Bに記憶される(ステップS312)。
【0072】
続いて、データベース11Bにおいて更新された診断情報86と、その診断情報86に対応する遊具の種類83および設置場所84とに基づいて、その遊具5の危険度の高さが判定される(ステップS313)。ここで、危険度とは、例えば、節51Dの周囲51Eが腐っていたり、シロアリなどによる虫食いによって下端部51Cに空洞が生じていることにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞がどの程度あるかを、被害規模や事故発生時期などに基づいて数段階に分類されたものである。つまり、診断情報86と、その診断情報86に対応する遊具の種類83および設置場所84とを、過去の経験則や学術データなどに照らし合わせて被害規模や事故発生時期などを予測し、その予測結果に基づいて、危険度の大きさが判定される。
【0073】
この結果、危険度が高くないと判定されると、補修作業不要情報が生成され、それが作業指示情報90として端末装置4に送信され、逆に、危険度が高いと判定されると、遊具5の診断情報86に応じた補修作業指示情報が生成され、それが作業指示情報90として端末装置4に送信される(ステップS314)。
【0074】
その後、作業指示情報90が端末装置4によって受信されると共に、出力される(ステップS315)。遊具診断業者Bは、出力された作業指示情報90に基づいて作業を行う(ステップS316)。
【0075】
遊具診断業者Bは、所定の作業を行ったのち、遊具5に固定された電子タグ5Aに書込部47を近づけて、入力部45に登録要求コマンドを入力する(ステップS317)。すると、遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が電子タグ3に書き込まれる(ステップS318)と共に、遊具管理装置1に送信される(ステップS319)。ここで、作業内容には、補修作業の結果が含まれている。
【0076】
その後、送信された遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が遊具管理装置1によって受信されると共に、データベース11Bに記憶される(ステップS320)。このようにして、各種遊具5が管理される。
【0077】
このように、本実施の形態の遊具管理システムによれば、各種遊具5の遊具管理情報80の管理を遊具管理装置1のデータベース11Bを用いて行うようにしたので、遊具診断業者Bは遊具管理情報1から送信されてきた作業指示情報90に基づいて作業を行うことができる。これにより、熟練従事者でない者であっても遊具5の診断業務に容易に参加したり従事したりすることが可能となる。
【0078】
また、遊具5の管理を適切に行うことが可能となるので、例えば、節51Dの周囲51Eが腐っていたり、シロアリなどによる虫食いによって下端部51Cに空洞が生じていることにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをなくすることが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となるだけでなく、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することができる。
【0079】
特に、診断情報86が更新される度に、遊具5の危険度を判定し、補修作業指示情報を作業指示情報90として端末装置4に送信するようにした場合は、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具の安全性の診断や、危険個所の補修を速やかに行うことが可能となるので、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをほぼ完全になくすることが可能となる。
【0080】
その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がなくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となる。
【0081】
以上、上記実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、特定の遊具診断業者Bだけが端末装置4を保有していたが、地域の住民が読み出し専用に設定された端末装置4を常備するようにしてもよい。その場合は、地域の住民は、その地域に設置された遊具5が、いつ設置されたものなのか、どのような状態なのかなどをいつでも確認することが可能となる。これにより、地域の住民が遊具診断業者Bの活動状況や遊具5の安全性などを確かめることができる。また、地域の住民が読み出しだけでなく書き込みも可能に設定された端末装置4を常備するようにしてもよい。その場合は、地域の住民が遊具診断業者Bに代わって、地域の遊具5を管理することも可能となる。
【0083】
これにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、地域の住民が主体的に発見することができるので、遊具診断業者Bと合わせて2重チェックが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がより一層なくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、地域住民の安心・安全をより一層確保することが可能となる。
【0084】
また、このように、地域の住民に管理の一部を任せることにより、管理に係る費用を削減することも可能となり、加えて、地域の住民との間で遊具5に対する理解を深めることも可能となる。これにより、遊具5に関する地域の住民とのトラブルをなくすることも可能となる。さらに、遊具5の管理を通して、地域のつながりが深まるので、そのような地域での犯罪が低減することも期待できる。
【0085】
また、遊具5に付する記憶媒体を電子タグ5Aの代わりに、2次元コードとしてもよい。ただし、一旦生成された2次元コードは情報を読み出すことができても、書き込むことができないので、以下に示すような手順で情報の管理を行うことが必要となる。
【0086】
まず、2次元コードの付される遊具に関する遊具管理情報80の保管場所を示す情報、例えば、遊具データベース11BのURL(Uniform Resource Locator)の文字列を変換して生成した2次元コードを遊具5に付しておく。次に、遊具管理情報80を新規登録する場合や、更新する場合は、市販されている携帯電話を端末装置4として利用し、その携帯電話の2次元コード読み出し機能によって遊具5に付された2次元コードを解読すると共に解読したアドレスにアクセスし、例えば、アクセス先の遊具データベース11Bに遊具管理情報80の新規登録や更新を行う。また、遊具管理情報80を確認したい場合は、上記と同様に、携帯電話の2次元コード読み出し機能によって遊具5に付された2次元コードを解読すると共に解読したアドレスにアクセスし、例えば、アクセス先の遊具データベース11Bの遊具管理情報80を読み出す。
【0087】
これにより、上記実施の形態のような本システム専用の端末装置4を用意する必要がなくなるので、遊具管理システムの構築に要する費用や時間を大幅に削減することができる。また、携帯電話を端末装置4として利用することのできる手軽さから、地域の住民は、遊具管理業者1の活動状況や遊具5の安全性などをより一層容易に確かめることができ、また、遊具診断業者Bに代わって、地域の遊具5をより一層容易に管理することができる。その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がなくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、地域住民の安心・安全を確保することが可能となる。
【0088】
また、遊具5に付する記憶媒体として電子タグ5Aと2次元コードとを併設してもよい。これにより、予算や導入期間の都合などで上記実施の形態のような本システム専用の端末装置4を導入することの困難な遊具診断業者Bは、携帯電話を利用したシステムを選択することにより、低予算かつ短期間で本システムを導入することができる。このように、電子タグ5Aと2次元コードとを併設して本システムに柔軟性を持たせることにより、どのような遊具診断業者Bであっても本システムに容易に参加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態に係る遊具管理方法が適用される遊具管理システムの全体構成図である。
【図2】図1における遊具管理装置の概略構成図である。
【図3】図1の遊具データベースに含まれる遊具管理情報および作業支持情報について説明するための模式図である。
【図4】図1における遊具診断システムの全体構成図である。
【図5】図4における遊具診断システムを遊具に適用したときの様子を表す外観図である。
【図6】図5の破線で囲まれた部分の拡大図である。
【図7】図5の固定柱について説明するための概念図である。
【図8】図4の遊具診断システムの動作について説明するための流れ図である。
【図9】遊具管理システムの動作を説明するための流れ図である。
【図10】図9に続く動作を説明するための流れ図である。
【図11】図10に続く動作を説明するための流れ図である。
【図12】図11に続く動作を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0090】
1…遊具管理装置、2…振動発生装置、3…振動検知装置、4…遊具診断装置、5…遊具、5A…電子タグ、6…固定ベルト、7…診断ベルト、10,41…制御部、11…記憶部、11A…遊具管理プログラム、11B…遊具データベース、12…通信部、13…表示部、14…入力部、21,31,43…通信部、22…振動制御部、23…振動発生部、32…信号処理部、33…振動検知部、42…記憶部、42A…端末プログラム、42B…遊具診断プログラム、42C…基準データ、44…表示部、45…入力部、46…読出部、47…書込部、50…椅子、51…固定柱、51A…上端部、51B…中央部、51C…下端部、51D…節、51D…節の周囲、52…梁、53,54…子梁、55…留め具、55A…頭部、55B…軸部、55C…頂面、80…遊具管理情報、81…識別子、82…管理者、83…種類、84…設置場所、85…設置日、86…診断情報、86A…診断日、86B…主観情報、86C…客観情報、86D…診断結果、90…作業支持情報、91…通常作業支持情報、92…特別作業支持情報、100…遊具診断システム、A…遊具管理業者、B…遊具診断業者。
【技術分野】
【0001】
本発明は、団地や、公園、公共施設などに設置された遊具(例えば、ブランコや滑り台)を管理するための遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子化、都市化に伴い、子供の発育に対する「遊びの価値」が見直されつつある。子供は遊びを通じて自らの限界に挑戦し、これにより身体的、精神的、社会的な面などを成長させ、自らの創造性や主体性を向上させていくものと考えられている。
【0003】
子供らの遊びには欠かせないブランコや滑り台などの遊具は、団地や、公園、公共施設などに設置されているが、このような場所への遊具の設置は、主に、地方自治体および所轄官庁や、これらから委託された企業およびNPOなどによって行われており、設置された遊具の管理もこれらの者によって行われている。ここで、遊具の管理とは、一般に固定資産としての管理を指しており、固定資産の管理に必要な情報は、これらの者により管理されている書類やパソコンなどに保管されているのが一般的である(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−202501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、遊具は、日本工業規格などの諸規格に沿った材料および加工がなされているが、恒常的に屋外に設置されているため、設置してから間もないものであっても、強度不足の虞のある不良個所を有する遊具が多数見受けられる。しかし、遊具を管理する者は、遊具を固定資産としてしか考えておらず、上記のような実態を正確には把握していないため、補修等の必要な遊具が何らの手当てもなされずに放置されている。その結果、遊具による事故が頻繁に起こっており、地域の住民はそのような事故が発生して初めて、そのような実態を知ることとなる。
【0006】
実際、神奈川県内だけでも緊急点検の必要がある遊具を設置している箇所が6600を超えていると言われており、日頃行われる遊具の点検方法や点検結果を踏まえたメンテナンスなど、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することが急務となっている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することの可能な遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遊具管理装置は、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を遊具ごとに記憶するデータベースと、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成する作業指示情報生成手段と、作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信する送信手段とを備えたものである。
【0009】
本発明の遊具管理プログラムは、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を遊具ごとにデータベースに記憶させるステップと、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成するステップと、その生成された作業指示情報を、記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信するステップとをコンピュータに実行させるようにしたものである。
【0010】
本発明の遊具管理方法は、記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を格納するためのデータベースを有する遊具管理装置と、各種遊具にそれぞれ付された記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置とを用意し、遊具管理装置から端末装置に作業指示情報を送信するように構成したものである。遊具管理装置の側では、遊具管理情報を遊具ごとにデータベースに記憶し、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成すると共に、その生成された作業指示情報を端末装置へ送信する。一方、端末装置の側では、遊具管理装置から送信された作業指示情報を受信し、その受信した作業指示情報を出力する。
【0011】
ここで、「遊具」とは、屋外に設置されているブランコや滑り台などの構造物のことであり、例えば、団地や、公園、公共施設などに設置された、人による管理の必要な構造物を指している。「記憶媒体」とは、例えば、電子タグや、2次元コードなどの、遊具に付することの可能な小さな記録媒体のことである。「電子タグ」は、RFID(Radio Frequency Identification)タグや、IC(Integrated Circuit)タグなどの総称であり、「2次元コード」は、文字や数字などのデータを二次元の図形パターンとして所定の表面に刻印・印刷した暗号である。「端末装置」とは、例えば、各種遊具を診断する業者(遊具診断業者)の保有する情報処理装置のことである。「遊具管理情報」とは、各種遊具の特徴を特定することの可能な情報であり、例えば、識別子と、遊具の種類、設置場所、設置日、診断日、診断項目および診断結果を示す情報とを含むものである。「診断結果」とは、各種遊具の状態を特定することの可能な情報であり、例えば、目視、触診、聴診などによって得られた情報や、振動による非破壊検査によって得られた情報を含むものである。また、「作業指示情報」とは、例えば、遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて生成されるものであり、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報を含むものである。
【0012】
本発明の遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法では、各種遊具の遊具管理情報の管理が遊具管理装置のデータベースを用いて行われる。具体的には、データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報が生成され、その生成された作業指示情報が端末装置へ送信される。
【0013】
例えば、遊具管理装置では、遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて個々の遊具に対して行うべき作業内容が決定され、その決定された作業内容は作業指示情報として端末装置へ送信され、端末装置に出力される。遊具診断業者は、例えば、この出力された作業指示情報を基に個々の遊具の手入れや診断などを行う。このように、遊具診断業者は、遊具管理装置からの作業指示情報に基づいて作業を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遊具管理装置、遊具管理プログラムおよび遊具管理方法によれば、各種遊具の遊具管理情報の管理を遊具管理装置のデータベースを用いて行うようにしたので、遊具診断業者は遊具管理情報から送信されてきた作業指示情報に基づいて作業を行うことができる。これにより、遊具の管理を日常的に適切に行うことが可能となるので、例えば、地面と接している部分が腐食していたり、シロアリなどによる虫食いにより内部に空洞ができていて、そのうち破断する虞のある遊具など、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをなくすることが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となるだけでなく、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る遊具管理方法が適用される遊具管理システムを表したものである。この遊具管理システムは、遊具5(図5参照)を管理するシステムであり、遊具管理業者Aによって使用される遊具管理装置1と、遊具診断業者Bによって使用される遊具診断システム100とを含む情報ネットワークシステムとして構築されたものである。
【0017】
遊具管理業者Aは、遊具5の手入れから診断、補修までの業務を、遊具管理装置1を用いて一元的に管理する管理者のことである。遊具診断業者Bは、遊具管理業者A(遊具管理装置1)からの指示に基づいて、遊具5を健全に保つために通常行われる定型作業などを行う業者のことである。
【0018】
図2は、図1の遊具管理装置1の機能構成を表したものである。この遊具管理装置1は、制御部10と、記憶部11と、通信部12と、表示部13と、入力部14とを備えている。制御部10は、記憶部11、通信部12、表示部13および入力部14とそれぞれ接続されている。なお、制御部11は本発明の「作業指示情報生成手段」あるいは「危険判定手段」の一具体例に対応し、通信部12は本発明の「送信手段」あるいは「受信手段」の一具体例に対応する。
【0019】
制御部10は、プログラムの命令を解釈し、実行するためのもので、例えば、CPU(Central Processing Unit )を含んで構成されている。記憶部11には、遊具管理プログラム11Aと、遊具データベース11Bとが記憶されている。
【0020】
遊具管理プログラム11Aは、遊具5を管理するための一連の手順を制御部10に実行させるためのものであり、遊具データベース11Bは、個々の遊具5に関する遊具管理情報80を整理、統合し、検索しやすくしたファイルである。この遊具管理情報80は、例えば、図3(A)に示したように、各種遊具5の特徴を特定することの可能な情報、具体的には、識別子81、管理者82、遊具の種類83、設置場所84、設置日85および診断情報86を含んでいる。
【0021】
ここで、識別子81は、個々の遊具5を識別するためのものであり、数字、文字、記号等の少なくとも1つまたはそれらを組み合わせた固有符号である。管理者82は、その遊具5を管理する者を特定するためのものであり、例えば、その遊具5を管理する者の識別番号や、氏名などを含んで構成されている。なお、管理者82には、実際に遊具5を管理している者の他、遊具5の所有者なども含まれる。遊具の種類83とは、ブランコや滑り台などの構造物の種類のことであり、特に、屋外に設置されている構造物を対象としている。設置場所84とは、遊具5が設置されている場所を特定するためのものであり、例えば、識別番号や、所在地(○○県○○市○○町○○団地○○号棟前など)などを含んで構成されている。設置日85とは、遊具5が設置された日を指しており、例えば、平成○○年○月○日などを含んで構成されている。診断情報86とは、各種遊具5の状態を特定することの可能な情報、例えば、遊具5の状態を検査、診断した診断日86Aや、診断項目86B、目視、触診、聴診などによって得られた主観情報86C、非破壊検査によって得られた客観情報86D、客観情報86Dなどに基づいて得られた遊具5の診断結果86Dを含むものである。診断結果86Dとは、例えば、遊具5の特定部位の交換の必要性について診断した結果などを含むものである。
【0022】
通信部12は、通信網を介して端末装置4と相互に通信可能となっており、例えば、遊具管理装置1において生成された作業指示情報90(後述)を端末装置4の通信部43(後述)へ送信すると共に、端末装置4において読出部46(後述)から読み出された識別子21および入力部14から入力された報告情報を受信するようになっている。
【0023】
ここで、上記した作業指示情報90は、遊具データベース11Bに記憶されている遊具の種類83、設置場所84および診断情報86に基づいて生成される情報であり、図3(B)に示したように、例えば、通常作業指示情報91および特別作業指示情報92を含んでいる。通常作業指示情報91とは、遊具5を健全に保つために通常行われる定型作業に関する情報、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報のことである。特別作業指示情報92とは、遊具5に不良が発見された際に行われる定型作業に関する情報、例えば、腐食防止剤の塗布や、補強部材の設置、遊具5の使用を不能にする部材の設置などの作業に関する情報のことである。これらの作業手順などについては後述する。
【0024】
図4は、図1の遊具診断システム100の概略構成を表したものである。この遊具診断システム100は、振動発生装置2、振動検知装置3および端末装置4(遊具診断装置)を備えている。
【0025】
振動発生装置2は、通信部21、振動制御部22および振動発生部23を有している。
【0026】
ここで、通信部21は、遊具診断装置4からの振動発生信号(後述)を受信するためのものであり、例えば、アンテナおよび通信用ICなどを含んでいる。
【0027】
振動制御部22は、受信した振動発生信号に対応した振動条件で振動発生部23を振動させる制御を行うためのものであり、例えば、制御用ICなどを含んでいる。この振動制御部22は、例えば、振動発生部12の振動周波数を所定の周波数帯内で連続的にまたは飛び飛びに変化させる制御を行うようになっている。
【0028】
振動発生部23は、振動源および固定部を含んで構成されている。この振動源は、振動制御部22からの制御信号に応じて所定の周波数帯内の任意の振動周波数で振動することが可能となっており、少なくとも振動発生装置2の取付面(被診断対象と固定部とが互いに接する面)と交差する方向に振動し、被診断対象に振動源の振動を与えることができるようになっている。このような振動源として、例えば、数100Hzから数10kHzまで振動可能なモータが挙げられる。また、固定部は、振動源の振動を最小限のロスで被診断対象に伝達すると共に振動源を被診断対象に固定するためのものであり、振動発生装置2の取付面を被診断対象と密着させることの可能な材料、例えば、両面テープや、(被診断対象が金属の場合には)マグネットなどからなる。
【0029】
振動検知装置3は、通信部31、信号処理部32および振動検知部33を有している。
【0030】
ここで、通信部31は、遊具診断装置4へ電気信号(後述)を送信するためのものであり、例えば、アンテナおよび通信用ICなどを含んでいる。
【0031】
信号処理部32は、電気信号に対して所定の信号処理を施すためのものであり、例えば、信号処理用ICなどを含んでいる。
【0032】
振動検知部33は、振動検知素子および固定部を含んで構成されている。この振動検知素子は、振動発生装置2が被診断対象に与えた振動のうち振動検知部33にまで伝播してきた振動を検知するためのものであり、少なくとも振動検知装置3の取付面(被診断対象と固定部とが互いに接する面)と交差する方向の振動を検知することができるようになっている。振動検知素子は、例えば、圧電型の加速度センサ、心音センサ、コンデンサマイクロフォンからなり、振動検知部33にまで伝播してきた振動を、振動の伝播方向や大きさに応じた電気信号に変換するようになっている。また、固定部は、被診断対象の振動を最小限のロスで振動検知素子に伝達すると共に振動検知素子を被診断対象に固定するためのものであり、振動検知装置3の取付面を被診断対象と密着させることの可能な材料、例えば、両面テープや、(被診断対象が金属の場合には)マグネットなどからなる。
【0033】
遊具診断装置4は、制御部41、記憶部42、通信部43、表示部44、入力部45、読出部46および書込部47を有している。なお、読出部46および書込部47については、図示のように端末装置4本体に有線接続するのではなく、端末装置4本体とは別体のハンディータイプのリーダライタユニットとして構成すると共に、このリーダライタユニットと端末装置4本体との間を無線通信路により接続するようにしてもよい。
【0034】
ここで、制御部41は、プログラムの命令を解釈し、実行するためのもので、例えば、CPUを含んで構成されている。
【0035】
記憶部42には、端末プログラム42A、遊具診断プログラム42Bおよび基準データ42Cが記憶されている。端末プログラム42Aは、遊具5に付された電子タグ5A(図1参照)へのデータアクセスや遊具管理装置1との間の通信を行うための一連の手順を制御部41に実行させるためのものである。なお、これらの一連の手順の詳細については後述する。また、遊具診断プログラム42Bは、遊具診断のための一連の手順を制御部41に実行させるためのものである。なお、この一連の手順の詳細についても後述する。基準データ42Cは、所定の安全基準を満たす遊具の部材(例えば、柱)から得られた計測データ(レファレンスデータ)と、遊具の部材の交換の要否の判断に用いる閾値データとを含んでいる。この計測データには、遊具の種類(例えば、滑り台、ブランコ)、遊具の材料(例えば、木材、金属、樹脂、コンクリート)、遊具の部位(例えば、柱、梁)ごとのデータが含まれている。閾値データについても、遊具の種類、材料、部位ごとのデータが含まれている。
【0036】
上記した電子タグ5Aは、情報を自由に読み書きすることが可能なメモリIC(図示せず)と、無線アンテナ(図示せず)とを含んで構成された微小なチップであり、端末装置4の読出部46および書込部47との間で所定の周波数の電磁波を利用した通信を行うことにより、メモリIC内の情報を読み出したり、メモリIC内に情報を書き込んだりすることができるようになっている。遊具5に付された個々の電子タグ5Aには、上記した遊具管理情報80が記憶されている。
【0037】
電子タグ5Aは、設置のし易さや設置後のいたずら防止を考慮すると、立っている大人の目線よりも高い箇所、例えば、地表からの高さが2mぐらいの箇所に設けられていることが好ましい。なお、この電子タグ5Aは、入力された情報を先に記録されている情報に追加して記録すると共に、一度書き込んだ情報を削除することができない機構を有していることが好ましい。これにより、電子タグ5Aに記録された情報が誤って消去されたり、改ざんされる虞がなくなる。
【0038】
このように、一旦取り付けられた電子タグ5Aが遊具5から外されたり、遊具5に記録された情報が改ざんされることのないようにすることにより、トレーサビリティに係る情報の信頼性を確保することが可能となる。
【0039】
通信部43は、通信網を介して遊具管理装置1と相互に通信可能となっており、例えば、端末装置4において読出部46(後述)から読み出された識別子21および入力部14から入力された報告情報を遊具管理装置1の通信部12へ送信すると共に、遊具管理装置1において生成された作業指示情報90を受信するようになっている。また、この通信部44は、振動発生装置2および振動検知装置3とも相互に通信可能となっており、振動発生装置2に振動発生信号を送信したり、振動検知装置3からの電気信号を受信したりすることが可能となっている。
【0040】
表示部44は、例えば、制御部41におけるプログラムの実行結果(例えば、診断結果)を表示したり、制御部41におけるプログラムの実行に際して情報入力を支援するための表示をするためのものであり、例えば、液晶ディスプレイからなる。
【0041】
入力部45は、制御部41におけるプログラムの実行に際して情報を入力するためのものであり、例えば、キーボードやマウスからなる。
【0042】
図5は、図4の遊具診断システム100を、被管理対象であると共に被診断対象でもある遊具5の診断に用いた際の様子を模式的に表したものである。図6は、図5の破線で囲まれた部分を拡大して表したものである。
【0043】
図5、図6では、振動発生装置2および振動検知装置3は、取り扱いの容易性および計測の安定性を確保するなどの目的で、帯状の固定ベルト6に取り付けられており、固定ベルト6と共に診断ベルト7を構成している。ここで、固定ベルト6は、振動発生装置2および振動検知装置3を被診断対象である固定柱51(後述)に密着固定した際に、振動発生装置2および振動検知装置3が固定柱51を間にして互いに対向するように調整可能な構造となっている。
【0044】
被診断対象である遊具5は、図5に示したように、所定の部材で構成された椅子50と、遊具5を地面に固定する複数の固定柱51と、椅子50を中空に支持する梁52と、固定柱51および梁52のぐらつきを防止する小梁53,54と、固定柱51、梁52および小梁53,54を連結する留め具55と、椅子50を揺動可能に梁52と連結する鎖56とを備えた木製のブランコである。
【0045】
この遊具5では、固定柱51の両端部(上端部51Aおよび下端部51C)や、梁52および小梁53,54の両端部が外部に露出しており、さらに、固定柱51の下端51Cは地面と接している。また、留め具55が固定柱51、梁52および小梁53,54に打ち込まれており、椅子50を揺動可能に支持する鎖56を固定する部材(図示せず)が梁52に打ち込まれている。
【0046】
ここで、固定柱51、梁52および小梁53,54の両端部や、これらに留め具55や固定部材が打ち込まれている箇所は、通常、外部環境の影響を受けて劣化し易く、長年の使用により、これらの箇所には、遊具5の強度を低下させる不良(ひび、割れ、腐敗など)が生じ易い。特に、固定柱51の下端部51Cは地面と接しているので、遊具5の中で最も不良の生じやすい部位と言える。また、図7に例示したように、例えば、固定柱51には、一般的に節51Dが存在しており、節51Dの周囲51Eには水が溜まりやすく、節51Dの周囲51Eが腐り易い。また、図示しないが、シロアリなどによる虫食いによって遊具51のいたるところに空洞が生じている可能性がある。
【0047】
このように、遊具5には、遊具5の強度を低下させる様々な不良が様々な部位に生じる可能性があり、遊具5の日常的な点検、診断において、目視、触診、聴診などで確認する主観的な手法を用いるだけでは、遊具5による事故が起こる前に遊具5の危険性を的確に把握することは極めて困難であると言える。そこで、遊具5に少しでも危険の兆候が見られたら、すぐに遊具5の使用を中止したり、撤去したりするという手法も考えられる。しかし、そのようにした場合には、実際には、遊具5による事故が発生する可能性が全くないか、ほとんどないにも拘わらず、遊具5の使用中止や撤去を行ってしまっている可能性が高く、極めて不経済である。また、遊具5の部材を分解したり削ったりし、腐食割れの深さや強度などを高度な精密機器を用いて詳細に検査することも考えられる。しかし、そのようにした場合には、検査の度に、遊具5の部材を分解したり削ったりするので、検査によって遊具5に不良の原因を与えてしまう虞があるだけでなく、コストや手間がかかり過ぎて、日常的に検査を行うことができないという問題がある。また、検査の度に遊具5が長期間使えなくなり、遊具5としての役割を十分に果たすことができなくなる虞がある。
【0048】
一方、本実施の形態の遊具診断システム100では、これらの問題を一挙に解決することが可能であり、有用性の極めて高いものであると言える。以下、この遊具診断システム100の動作について説明する。
【0049】
図8は、本実施の形態の遊具診断システム100おける遊具診断の手順を表したものである。この図では、遊具診断システム100を用いる遊具診断業者B、遊具診断装置4、振動発生装置2および振動検知装置3の相互間のやり取りをわかりやすくするために、遊具診断業者B、遊具診断装置4、振動発生装置2および振動検知装置3ごとに流れを示した。
【0050】
遊具診断を行うにあたって、まず、遊具診断業者Bが診断ベルト7を遊具5に設置する(ステップS101)。例えば、図2に示したように、固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cに診断ベルト7を巻き付ける。このとき、振動発生装置2と振動検知装置3が固定柱51にしっかりと密着するように診断ベルト7を巻き付ける。
【0051】
次に、遊具診断業者Bが遊具診断プログラム42Aの起動を遊具診断装置4に要求する(ステップS101)。例えば、表示部44に表示されているアイコンをマウスでクリックする。すると、遊具診断プログラム42Aが起動され(ステップS103)、遊具5の情報入力が要求される(ステップS104)。例えば、表示部44に入力フォームが表示される。
【0052】
次に、遊具診断業者Bは遊具5の情報(例えば、遊具5の種類、材料、診断ベルト7の設置部位など)を入力し、診断実行を要求する(ステップS105)。例えば、マウスやキーボードを用いて表示部44に表示された入力フォーム内の各項目(例えば、遊具5の種類、材料、診断ベルト7の設置部位など)を埋めたのち、診断実行ボタンをマウスでクリックする。
【0053】
すると、遊具診断装置4において、遊具5の入力情報に基づいて振動発生装置2の振動条件が決定され、その条件に対応する振動発生信号が出力される(ステップS106)。例えば、遊具5の種類としてブランコを、材料としてひのきを、診断ベルト7の設置部位として固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cが入力された場合には、1500Hzを中心とする所定の周波数帯内を連続的に掃印する動作を、上端部51A、中央部51B、下端部51Cの順に順次実行することを要求する振動発生信号が生成され、その振動発生信号が振動発生装置2に送信される。
【0054】
遊具診断装置4から送信された振動発生信号は振動発生装置2で受信され、その受信された振動発生信号に対応した振動条件で振動発信部21が振動させられる(ステップS107)。例えば、1500Hzを中心とする所定の周波数帯内を連続的に変化する振動が、上端部51A、中央部51B、下端部51Cの順に発生する。
【0055】
この振動発信部21での振動は、固定柱51の内部を伝播し、固定柱51の上端部51A、中央部51B、下端部51Cに設置されたそれぞれの振動検知部33において検知され、振動検知部33の配置された部位における振動の向きや大きさに応じた電気信号が振動検知装置3から出力される(ステップS108)。
【0056】
このとき、固定柱51の内部の伝播経路中に、遊具5の強度を低下させる不良が存在する場合には、そのような不良が無い場合とは異なる周波数分布の振動が振動検知部33において検知される。また、振動検知部33から電気信号に対して信号処理部32によって何らかの信号処理がなされたものが振動検知装置3から出力されてもよい。
【0057】
振動検知装置3から送信された電気信号は遊具診断装置4で受信され、その受信された電気信号に対して周波数分析(例えば、ウェーブレット変換)が行われ、計測データが導出される(ステップS109)。その後、得られた計測データと、あらかじめ用意された基準データ42Bとが対比され、固定柱51の状態が診断され、その診断結果が表示部44に出力される(ステップS110)。
【0058】
例えば、下端部51Cの振動発信部21を振動させたときに下端部51Cの振動検知部33で得られた電気信号に対して周波数分析をかけたときに得られた計測データが基準データから大きくずれている一方で、他の計測データが基準データとほぼ一致していた場合に、そのずれ量が所定の閾値を超えていなかったときには、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているものの、固定柱51を交換するほどの不良ではないと遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているが、固定柱51の交換は今のところ不要との診断結果が表示部44に表示される。その逆に、そのずれ量が所定の閾値を超えていたときには、固定柱51の下端部51Cに重大な不良が発生しており、固定柱51を交換する必要があると遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに生じた重大な不良により固定柱51の交換が必要との診断結果が表示部44に表示される。
【0059】
また、例えば、下端部51Cの振動発信部21を振動させたときに下端部51Cの振動検知部33で得られた電気信号に対して周波数分析をかけたときに得られた計測データが基準データから大きくずれている一方で、他の計測データが基準データとほぼ一致していた場合に、計測データを基準データで規格化し、規格化した後の計測データが所定の閾値を超えていなかったときには、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているものの、固定柱51を交換するほどの不良ではないと遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに何らかの不良が発生しているが、固定柱51の交換は今のところ不要との診断結果が表示部44に表示される。その逆に、規格化した後の計測データが所定の閾値を超えていたときには、固定柱51の下端部51Cに重大な不良が発生しており、固定柱51を交換する必要があると遊具診断装置4によって判断され、固定柱51の下端部51Cに生じた重大な不良により固定柱51の交換が必要との診断結果が表示部44に表示される。
【0060】
このように、遊具診断システム100では、振動検知装置3から出力される、遊具5の所定の部位(固定柱51)の振動に応じた電気信号に対して周波数分析を行い、これにより得られた計測データと、あらかじめ用意された基準データ42Bとを対比して遊具5の所定の部位(固定柱51)の状態が診断される。つまり、本実施の形態では、遊具5の部材を分解したり削る必要がなく、高度な精密機器を用いる必要もない。また、主観的な判断を必要とせず、だれでも簡単に検査を行うことができる。これにより、定量的かつ客観的に遊具の日常的な安全評価をすることができる。
【0061】
続いて、図9ないし図12を参照して、本実施の形態の遊具管理装置1および端末装置4の動作について説明する。なお、説明の便宜上、(A)遊具5を固定資産として登録する手順、(B)遊具5を管理する手順に分けて説明する。ここで、図9ないし図12は、遊具管理装置1または端末装置4における動作の流れを、遊具管理業者A、遊具診断業者Bによる操作や処理と共に表したものである。
【0062】
(A:遊具5を固定資産として登録する手順、図9)
まず、遊具管理業者Aが、遊具管理装置1における遊具管理プログラム11Aの起動と、端末装置4における端末プログラム42Aの起動とを要求する(ステップS201)。すると、遊具管理プログラム11Aが制御部10によって立ち上げられると共に(ステップS202)、端末プログラム42Aが制御部41によって立ち上げられる(ステップS203)。次に、端末装置4に対して遊具5の固定資産としての登録を要求する(ステップS204)。すると、端末装置4の制御部41から遊具管理情報80の入力を要求される(ステップS205)。なお、端末プログラム42Aの立ち上げ時以外の任意の時に、遊具管理業者Aからの指示により遊具5の固定資産としての要求できるようにしてもよい。また、上記した一連の手続きを行うことのできる権限を、上記したように遊具管理業者Aに与えてもよいし、遊具診断業者Bに与えてもよい。
【0063】
次に、上記した一連の手続きを行うことのできる者(例えば、遊具管理業者A)は、遊具5の所定の箇所に電子タグ5Aを固定する。その後、その固定した電子タグ5Aに書き込むべき遊具管理情報80を入力部45に入力すると共に、書込部47をその電子タグ5Aに近づけたのち、書込コマンドを入力する(ステップS206)。すると、入力部45に入力した遊具管理情報80は、書込部47を介して電子タグ5Aに書き込まれると共に、通信網を介して遊具管理装置1に送信される(ステップS207)。
【0064】
その後、端末装置4から送信されてきた遊具管理情報80は、遊具管理装置1の制御部10によって、遊具5ごとにデータベース11Bに記憶される(ステップS208)。
【0065】
次に、遊具管理情報80を通信網上にアップロードすることを要求する(ステップS209)。すると、遊具管理情報80が遊具管理装置1によって通信網上にアップロードされる(ステップS210)。このようにして、遊具5が固定資産として登録される。このようにして、遊具5を管理するにあたっての準備が完了する。
【0066】
(B:遊具5を管理する手順、図10〜図12)
遊具管理業者Aが通信網上に公開された遊具5の遊具管理情報80にアクセスする(ステップS301)。すると、遊具管理装置1によって、遊具管理業者Aからの入力に応じて遊具管理業者Aに遊具管理情報80の提供が行われる(ステップS302)。
【0067】
遊具管理業者Aは、提供された情報をもとに定型作業を行う対象の遊具5を選択する(ステップS303)。すると、選択された遊具5の識別子81が遊具管理装置1の制御部10によって受け付けられる(ステップS304)。その後、データベース11Bに記憶された遊具管理情報80のうち、受け付けた識別子81に対応する遊具5の遊具管理情報80のうち遊具の種類83、遊具の設置場所84および診断情報86に基づいて作業指示情報90が生成される(ステップS305)。
【0068】
この作業指示情報90には、通常作業に関する手順が含まれており、必要に応じて特別作業に関する手順が含まれている。通常作業に関する内容としては、例えば、目視、触診、聴診などによる確認作業などの主観的な作業に関する情報の他に、振動による非破壊検査などの客観的かつ定量客観的な作業に関する情報などが含まれている。特別作業に関する内容としては、例えば、腐食防止剤の塗布や、補強部材の設置、遊具5の使用を不能にする部材の設置などの作業に関する情報などが含まれている。
【0069】
次に、生成された作業指示情報90は、遊具管理装置1の制御部10によって、遊具診断業者Bの保有する端末装置4に送信されたのち(ステップS306)、遊具診断業者Bの保有する端末装置1Bによってそれぞれ受信されると共に、出力される(ステップS17)。遊具診断業者Bは、出力された作業指示情報90に基づいて作業を行う(ステップS308)。
【0070】
遊具診断業者Bは、所定の作業を行ったのち、遊具5に固定された電子タグ5Aに書込部47を近づけて、入力部45に登録要求コマンドを入力する(ステップS309)。すると、遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が電子タグ5Aに書き込まれる(ステップS310)と共に、遊具管理装置1に送信される(ステップS311)。ここで、作業内容には、診断作業によって新たに得られた診断情報86が含まれている。
【0071】
その後、送信された遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が遊具管理装置1によって受信されると共に、データベース11Bに記憶される(ステップS312)。
【0072】
続いて、データベース11Bにおいて更新された診断情報86と、その診断情報86に対応する遊具の種類83および設置場所84とに基づいて、その遊具5の危険度の高さが判定される(ステップS313)。ここで、危険度とは、例えば、節51Dの周囲51Eが腐っていたり、シロアリなどによる虫食いによって下端部51Cに空洞が生じていることにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞がどの程度あるかを、被害規模や事故発生時期などに基づいて数段階に分類されたものである。つまり、診断情報86と、その診断情報86に対応する遊具の種類83および設置場所84とを、過去の経験則や学術データなどに照らし合わせて被害規模や事故発生時期などを予測し、その予測結果に基づいて、危険度の大きさが判定される。
【0073】
この結果、危険度が高くないと判定されると、補修作業不要情報が生成され、それが作業指示情報90として端末装置4に送信され、逆に、危険度が高いと判定されると、遊具5の診断情報86に応じた補修作業指示情報が生成され、それが作業指示情報90として端末装置4に送信される(ステップS314)。
【0074】
その後、作業指示情報90が端末装置4によって受信されると共に、出力される(ステップS315)。遊具診断業者Bは、出力された作業指示情報90に基づいて作業を行う(ステップS316)。
【0075】
遊具診断業者Bは、所定の作業を行ったのち、遊具5に固定された電子タグ5Aに書込部47を近づけて、入力部45に登録要求コマンドを入力する(ステップS317)。すると、遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が電子タグ3に書き込まれる(ステップS318)と共に、遊具管理装置1に送信される(ステップS319)。ここで、作業内容には、補修作業の結果が含まれている。
【0076】
その後、送信された遊具診断業者Bの名称、作業内容および作業日時が遊具管理装置1によって受信されると共に、データベース11Bに記憶される(ステップS320)。このようにして、各種遊具5が管理される。
【0077】
このように、本実施の形態の遊具管理システムによれば、各種遊具5の遊具管理情報80の管理を遊具管理装置1のデータベース11Bを用いて行うようにしたので、遊具診断業者Bは遊具管理情報1から送信されてきた作業指示情報90に基づいて作業を行うことができる。これにより、熟練従事者でない者であっても遊具5の診断業務に容易に参加したり従事したりすることが可能となる。
【0078】
また、遊具5の管理を適切に行うことが可能となるので、例えば、節51Dの周囲51Eが腐っていたり、シロアリなどによる虫食いによって下端部51Cに空洞が生じていることにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをなくすることが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となるだけでなく、遊具設置後の一貫した管理体制を確立することができる。
【0079】
特に、診断情報86が更新される度に、遊具5の危険度を判定し、補修作業指示情報を作業指示情報90として端末装置4に送信するようにした場合は、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具の安全性の診断や、危険個所の補修を速やかに行うことが可能となるので、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、事故が発生するまで何もせずにそのまま放置することをほぼ完全になくすることが可能となる。
【0080】
その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がなくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、遊具で遊ぶ子供らの安心・安全を確保することが可能となる。
【0081】
以上、上記実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施の形態では、特定の遊具診断業者Bだけが端末装置4を保有していたが、地域の住民が読み出し専用に設定された端末装置4を常備するようにしてもよい。その場合は、地域の住民は、その地域に設置された遊具5が、いつ設置されたものなのか、どのような状態なのかなどをいつでも確認することが可能となる。これにより、地域の住民が遊具診断業者Bの活動状況や遊具5の安全性などを確かめることができる。また、地域の住民が読み出しだけでなく書き込みも可能に設定された端末装置4を常備するようにしてもよい。その場合は、地域の住民が遊具診断業者Bに代わって、地域の遊具5を管理することも可能となる。
【0083】
これにより、遊具で遊ぶ子供らに危険を及ぼす虞のある遊具を、地域の住民が主体的に発見することができるので、遊具診断業者Bと合わせて2重チェックが可能となる。その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がより一層なくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、地域住民の安心・安全をより一層確保することが可能となる。
【0084】
また、このように、地域の住民に管理の一部を任せることにより、管理に係る費用を削減することも可能となり、加えて、地域の住民との間で遊具5に対する理解を深めることも可能となる。これにより、遊具5に関する地域の住民とのトラブルをなくすることも可能となる。さらに、遊具5の管理を通して、地域のつながりが深まるので、そのような地域での犯罪が低減することも期待できる。
【0085】
また、遊具5に付する記憶媒体を電子タグ5Aの代わりに、2次元コードとしてもよい。ただし、一旦生成された2次元コードは情報を読み出すことができても、書き込むことができないので、以下に示すような手順で情報の管理を行うことが必要となる。
【0086】
まず、2次元コードの付される遊具に関する遊具管理情報80の保管場所を示す情報、例えば、遊具データベース11BのURL(Uniform Resource Locator)の文字列を変換して生成した2次元コードを遊具5に付しておく。次に、遊具管理情報80を新規登録する場合や、更新する場合は、市販されている携帯電話を端末装置4として利用し、その携帯電話の2次元コード読み出し機能によって遊具5に付された2次元コードを解読すると共に解読したアドレスにアクセスし、例えば、アクセス先の遊具データベース11Bに遊具管理情報80の新規登録や更新を行う。また、遊具管理情報80を確認したい場合は、上記と同様に、携帯電話の2次元コード読み出し機能によって遊具5に付された2次元コードを解読すると共に解読したアドレスにアクセスし、例えば、アクセス先の遊具データベース11Bの遊具管理情報80を読み出す。
【0087】
これにより、上記実施の形態のような本システム専用の端末装置4を用意する必要がなくなるので、遊具管理システムの構築に要する費用や時間を大幅に削減することができる。また、携帯電話を端末装置4として利用することのできる手軽さから、地域の住民は、遊具管理業者1の活動状況や遊具5の安全性などをより一層容易に確かめることができ、また、遊具診断業者Bに代わって、地域の遊具5をより一層容易に管理することができる。その結果、遊具で遊ぶ子供らに危険が及ぶ虞がなくなり、地域の住民が不安な気持ちで生活を送ることもなくなるので、地域住民の安心・安全を確保することが可能となる。
【0088】
また、遊具5に付する記憶媒体として電子タグ5Aと2次元コードとを併設してもよい。これにより、予算や導入期間の都合などで上記実施の形態のような本システム専用の端末装置4を導入することの困難な遊具診断業者Bは、携帯電話を利用したシステムを選択することにより、低予算かつ短期間で本システムを導入することができる。このように、電子タグ5Aと2次元コードとを併設して本システムに柔軟性を持たせることにより、どのような遊具診断業者Bであっても本システムに容易に参加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態に係る遊具管理方法が適用される遊具管理システムの全体構成図である。
【図2】図1における遊具管理装置の概略構成図である。
【図3】図1の遊具データベースに含まれる遊具管理情報および作業支持情報について説明するための模式図である。
【図4】図1における遊具診断システムの全体構成図である。
【図5】図4における遊具診断システムを遊具に適用したときの様子を表す外観図である。
【図6】図5の破線で囲まれた部分の拡大図である。
【図7】図5の固定柱について説明するための概念図である。
【図8】図4の遊具診断システムの動作について説明するための流れ図である。
【図9】遊具管理システムの動作を説明するための流れ図である。
【図10】図9に続く動作を説明するための流れ図である。
【図11】図10に続く動作を説明するための流れ図である。
【図12】図11に続く動作を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0090】
1…遊具管理装置、2…振動発生装置、3…振動検知装置、4…遊具診断装置、5…遊具、5A…電子タグ、6…固定ベルト、7…診断ベルト、10,41…制御部、11…記憶部、11A…遊具管理プログラム、11B…遊具データベース、12…通信部、13…表示部、14…入力部、21,31,43…通信部、22…振動制御部、23…振動発生部、32…信号処理部、33…振動検知部、42…記憶部、42A…端末プログラム、42B…遊具診断プログラム、42C…基準データ、44…表示部、45…入力部、46…読出部、47…書込部、50…椅子、51…固定柱、51A…上端部、51B…中央部、51C…下端部、51D…節、51D…節の周囲、52…梁、53,54…子梁、55…留め具、55A…頭部、55B…軸部、55C…頂面、80…遊具管理情報、81…識別子、82…管理者、83…種類、84…設置場所、85…設置日、86…診断情報、86A…診断日、86B…主観情報、86C…客観情報、86D…診断結果、90…作業支持情報、91…通常作業支持情報、92…特別作業支持情報、100…遊具診断システム、A…遊具管理業者、B…遊具診断業者。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を前記遊具ごとに記憶するデータベースと、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成する作業指示情報生成手段と、
前記作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、前記記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする遊具管理装置。
【請求項2】
前記遊具管理情報は、識別子と、遊具の種類、設置場所、設置日、診断日、診断項目および診断結果を示す情報とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具管理装置。
【請求項3】
前記作業指示情報は、前記遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて生成される
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項4】
前記作業指示情報は、通常作業指示情報および特別作業指示情報を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項5】
前記診断結果は、振動による非破壊検査によって得られた情報を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項6】
前記作業指示情報に基づいて更新された診断結果を示す情報を前記端末装置から受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した診断結果を示す情報と、その診断結果を示す情報に対応する遊具の種類、設置場所および設置日とに基づいて危険度を判定する危険判定手段と
を備え、
前記作業指示情報生成手段は、前記危険判定手段によって判定された危険度の高さに応じた作業指示情報を生成し、
前記送信手段は、前記作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、前記端末装置へ送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項7】
前記記憶媒体は、当該記憶媒体の付された遊具に関する遊具管理情報を記憶する電子タグおよび当該記憶媒体の付された遊具に関する遊具管理情報の保管場所を示す情報を記憶する2次元コードの少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具管理装置。
【請求項8】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を前記遊具ごとにデータベースに記憶させるステップと、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成するステップと、
その生成された作業指示情報を、前記記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする遊具管理プログラム。
【請求項9】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を格納するためのデータベースを有する遊具管理装置と、前記各種遊具にそれぞれ付された記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置とを用意し、
前記遊具管理装置において、
前記遊具管理情報を前記遊具ごとにデータベースに記憶し、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成し、
その生成された作業指示情報を前記端末装置へ送信し、
前記端末装置において、
前記遊具管理装置から送信された作業指示情報を受信し、
その作業指示情報を出力する
ことを特徴とする遊具管理方法。
【請求項1】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を前記遊具ごとに記憶するデータベースと、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成する作業指示情報生成手段と、
前記作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、前記記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする遊具管理装置。
【請求項2】
前記遊具管理情報は、識別子と、遊具の種類、設置場所、設置日、診断日、診断項目および診断結果を示す情報とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具管理装置。
【請求項3】
前記作業指示情報は、前記遊具の種類、設置場所、設置日および診断結果を示す情報に基づいて生成される
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項4】
前記作業指示情報は、通常作業指示情報および特別作業指示情報を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項5】
前記診断結果は、振動による非破壊検査によって得られた情報を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項6】
前記作業指示情報に基づいて更新された診断結果を示す情報を前記端末装置から受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した診断結果を示す情報と、その診断結果を示す情報に対応する遊具の種類、設置場所および設置日とに基づいて危険度を判定する危険判定手段と
を備え、
前記作業指示情報生成手段は、前記危険判定手段によって判定された危険度の高さに応じた作業指示情報を生成し、
前記送信手段は、前記作業指示情報生成手段が生成した作業指示情報を、前記端末装置へ送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の遊具管理装置。
【請求項7】
前記記憶媒体は、当該記憶媒体の付された遊具に関する遊具管理情報を記憶する電子タグおよび当該記憶媒体の付された遊具に関する遊具管理情報の保管場所を示す情報を記憶する2次元コードの少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具管理装置。
【請求項8】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を前記遊具ごとにデータベースに記憶させるステップと、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成するステップと、
その生成された作業指示情報を、前記記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置へ送信するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする遊具管理プログラム。
【請求項9】
記憶媒体の付された各種遊具に関する遊具管理情報を格納するためのデータベースを有する遊具管理装置と、前記各種遊具にそれぞれ付された記憶媒体へのアクセスが可能な端末装置とを用意し、
前記遊具管理装置において、
前記遊具管理情報を前記遊具ごとにデータベースに記憶し、
前記データベースに記憶された遊具管理情報に基づいて作業指示情報を生成し、
その生成された作業指示情報を前記端末装置へ送信し、
前記端末装置において、
前記遊具管理装置から送信された作業指示情報を受信し、
その作業指示情報を出力する
ことを特徴とする遊具管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−116571(P2009−116571A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288226(P2007−288226)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(507367769)ビーエムイー株式会社 (3)
【出願人】(505229195)株式会社エコム (6)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(507367769)ビーエムイー株式会社 (3)
【出願人】(505229195)株式会社エコム (6)
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