説明

遊戯板の障害釘の高さ検査装置および検査方法と遊戯盤

【課題】遊戯盤に植設される釘は植設される位置、および高さが所定の範囲内でなければならない。しかし、所定の高さより高い釘を見つける方法は、すでに開示されているが、所定の高さより低い釘を高速にしかも釘にダメージを与えることなく見つけるのに、適した方法はなかった。
【解決手段】前記遊戯盤を所定の速度で搬送する移送手段と、前記遊戯盤の垂直方向に視軸が配置された第1のラインセンサと、視軸が前記第1のラインセンサの視軸から所定の角度傾き、かつ前記視軸が前記第1のラインセンサの視軸と交わる交線が、前記遊戯盤の前記釘の頭と同じ高さに配置される第2のラインセンサと、前記釘の頭を前記第1のラインセンサが撮影した地点と前記第2のラインセンサが撮影した地点の間の距離に基づいて、前記釘の高さを算出する制御装置を有する検出する検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊戯盤製造時における検査装置に関するものであり、障害釘の基盤面からの高さおよび位置の検出を画像処理を用いて行う検査方法および検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ等に用いる遊戯機械では、遊戯盤の表面に障害釘を数多く植設させ、上方から落下させた鉄製の遊戯球の跳ね返りと、遊戯盤に設けた孔によって入賞を競う。この場合、植設させた障害釘の調整によって、入賞率が変わることが知られている。しかし、障害釘の調整を、製品完成後行うか否かに係らず、遊戯盤に植設される障害釘は、遊戯盤の表面からの高さと角度が高い精度で植設されている必要がある。
【0003】
従って、遊戯盤の製造においては、高い精度で障害釘を植設する装置だけでなく、完成後の障害釘を検査する検査装置も利用される。例えば、特許文献1(特開2002−078872号公報)では、遊戯盤上に植設された障害釘を検査用のゲートでなぞりながら障害釘の高さ等を検査する装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−159395号公報)では、障害釘が植設された遊戯盤上から圧力センサを押しあて、その圧力によって、障害釘の有無を調べる検査装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3(特開2006−020861号公報)では、圧力センサを押しあてた時に障害釘が曲がる点を課題として、障害釘が配置された遊戯盤の側方から光をあて、その光を検出することで、規格以上の高さの釘の有無を調べる検査装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4(特開2009−011606号公報)では、障害釘が配置された遊戯盤の斜め上方から光をあて、上方から撮影するラインセンサの画像情報に基づいて、釘の配置位置を調べる検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−078872号公報
【特許文献2】特開2003−159395号公報
【特許文献3】特開2006−020861号公報
【特許文献4】特開2009−011606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遊戯盤に植設される釘は、位置および高さが許容範囲内になければならない。ここで、高さについては、規格された高さより高い場合だけでなく、低い場合も製品としては、不良製品となる。したがって、規格高さより低い場合も発見し、修正することができるようにしなければならない。しかし、所定の高さより低い釘を発見するのは、従来行われている方法では、容易ではなかった。
【0009】
特許文献1の方法であれば、植設された個々の釘にゲートをタッチさせるので、釘毎に高さを判断できることができる可能性が高い。しかし、全ての釘にゲートを接触させなければならず、検査時間がかかるという課題がある。また、高速に検査しようとすると、ゲートと釘の接触速度が高くなり、検査対象である釘が曲がることも考えられる。
【0010】
特許文献2および3は、物理的若しくは光学的な走査を行うため、周囲から飛び出た釘を発見することは容易であると考えられる。しかしながら、これらの方法では、規格高さより高い釘を発見することはできても、規格高さより低い釘を発見することはできないし、まして、その釘の位置や、どの程度低いのかを知ることもできない。周囲に多くの釘が存在するからである。
【0011】
また、特許文献4では、植設された位置を特定することはできるが、上記の文献同様、規格の高さより低い釘については、検査することができない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、遊戯盤に植設された障害釘の位置と遊戯盤の表面からの高さが所定範囲内に入っているか否かを検出可能な検査装置に係るものである。より具体的には、
遊戯盤を所定の速度で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記遊戯盤の搬送方向と直角であって、
前記遊戯盤の垂直方向に沿って視軸が配置された第1のラインセンサと、
前記第1のラインセンサと平行に配置され、視軸が前記第1のラインセンサの視軸から所定の角度傾き、かつ視野が前記第1のラインセンサの視野と交わる交線が、前記遊戯盤の釘の頭と同じ高さに配置される第2のラインセンサと、
前記釘の頭を前記第1のラインセンサが撮影した地点と前記第2のラインセンサが撮影した地点の間の距離に基づいて、前記釘の高さを算出する制御装置を有する検査装置である。
【0013】
また、本発明の検査装置は、釘を照らすライトを有している。
【0014】
また、本発明の検査装置は、
前記制御装置は、
前記遊戯盤に植設される釘の位置を示すマップ情報を有し、
前記第1のラインセンサが前記釘の頭を撮影した位置と、前記マップ情報を比較することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の検査装置は、
前記算出した前記釘の高さ若しくは前記釘の植設位置を表示する表示手段を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の検査装置は、
前記遊戯盤のIDコードを取得するIDコード取得手段と、
前記IDコードおよび、前記算出した前記釘の高さおよび前記釘の植設位置を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記制御装置は、前記IDコードに基づいて、過去に行った検査結果との比較結果を求めることを特徴とする。
【0017】
また本発明の検査方法は、
釘が植設された遊戯盤を移送する工程と、
前記移送中の遊戯盤の前記釘を、前記遊戯盤の法線方向および前記法線方向に対して所定角度傾斜した方向から前記釘を撮影する工程と、
前記法線方向および傾斜した方向から前記釘を撮影した地点間の距離に基づいて、前記釘の高さを求める検査方法である。
【0018】
また本発明の遊戯盤は、
釘が表面に植設され、
個々の遊戯盤を識別できるIDコードが印刷されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の検査装置および検査方法は、遊戯盤を法線方向から撮影する第1のラインセンサとその視軸に対して視軸が傾いて固定された第2のラインセンサによって遊戯盤に植設された釘を撮影し、それぞれのラインセンサが釘を見た地点間の距離に基づいて釘の高さの高低を算出するので、植設された釘にダメージを与えない。
【0020】
また画像データ処理に基づいて判断するため、処理が高速に行うことができる。また、画像処理に基づき、個々の釘について所定高さとの差を求めるため、所定高さより低い釘も発見することができる。
【0021】
さらに、釘を照射するライトを有するので、遊戯盤表面と比較して釘の頭の輝度を高くすることができる。そのため、画像処理において、遊戯盤表面の模様が識別の精度を低下させることがない。
【0022】
また、遊戯盤を法線方向から撮影するので、遊戯盤のどの位置に釘が植設されているかを算出することができる。したがって、予め植設される釘の位置情報を有することで、正しい位置に釘が植設されたか否かを検査することができる。
【0023】
また、本発明の検査装置は、画像データに基づき検査を行うので、検査結果を表示する表示手段を有することもできる。従って、遊戯盤上の、どの釘が規格から外れたかを視覚的に認識することができる。
【0024】
また、本発明の遊戯盤は、個々の遊戯盤を識別するIDコードが印刷されているので、最初の検査の時に不良品と判定され、修正後再度検査を行う際には、前の検査結果と比較することができるので、不良個所が完全に修復されたか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の検査原理を説明する図である。
【図2】図1の側面からの拡大図である。
【図3】釘が高い場合の検査原理を示す図である。
【図4】釘が低い場合の検査原理を示す図である。
【図5】検査装置の構成を示す図である。
【図6】検査装置の全体処理のフローを示す図である。
【図7】ブロック化を説明する図である。
【図8】検査の詳細なフローを示す図である。
【図9】IDコードを入れた遊戯盤を示す図である。
【図10】実施形態2の場合の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明を行う。なお、以下の説明は本発明の一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、変更することが可能である。
【0027】
(実施の形態1)
図1には、本発明の検査装置の原理を説明する。遊戯盤10は概ね四角形をしている板材である。表面には、色塗りによる装飾と、液晶等の表示手段を視認するための孔11が形成されている。また、表面には、真鍮性の釘12が多数本植設されている。釘12は、遊戯球が落下する際に落下方向を変えるための障害物で、障害釘とも呼ばれる。釘12が植設された遊戯盤10は、矢印13の方向に所定の速度で移送される。
【0028】
符号20は第1のラインセンサであり、視軸24が遊戯盤10の中心14に対して垂直方向に配設される。第1のラインセンサ20は、通常の広角レンズを搭載し、撮像素子がライン上に配置されたもの、若しくは撮像素子は2次元配置になっていても、特定のラインの画像情報を出力できる機能を有する。第1のラインセンサ20は少なくとも遊戯盤10の釘12が植設されている領域の幅15を視野に収める。したがって、遊戯盤10の釘12が植設されている領域の幅15は、ラインセンサの視野と言ってもよい。
【0029】
一方、符号22は、第2のラインセンサである。第2のラインセンサ22の視軸26は、第1のラインセンサ20の視軸24から所定角度28(例えば30度)傾いて配設される。傾ける方向は、どちらでもよいが、以下の説明では、遊戯盤10が移送される方向13と反対方向に傾斜させるものとする。また、第2のラインセンサ22の視野は、第1のラインセンサ20の視野と同じに設定する。
【0030】
図2は、図1を側方から見た図である。第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22のピントは、遊戯盤10に植設された釘12の頭に合わせる。つまり、釘12の高さは、遊戯盤10から所定の高さと決められているので、予め移送される遊戯盤10から釘12の高さh分だけ高い位置にピントを合わせておく。これによって、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22は、遊戯盤10上の所定の高さの交線16(図1参照)にピントが合わせられた状態に設定される。
【0031】
言い換えると、第1のラインセンサ20の視野と第2のラインセンサ22の視野の交線16は、遊戯盤10から所定の高さhの位置に固定される(図1参照)。図2では、釘12の頭の先端に紙面表から裏側に向かって交線16が形成される。図1では、釘12mの頭に第1のラインセンサ20および第2のラインセンサ22の視野が一致している。
【0032】
図3(a)を参照して、もし、所定の高さより高い釘17が遊戯盤10上にあったとする。遊戯盤10は所定の速度Vで移動しているので、まず、第2のラインセンサ22が時刻T1に釘17の頭を撮影することとなる。そして、時刻T2の時に第1のラインセンサ20が釘17の頭を撮影する。すなわち、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22は決められた釘12の高さhに視野をあわせているので、釘が所定の高さになければ、見える(撮影する)タイミングが第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22で異なる事となる。
【0033】
第1のサインセンサ20と第2のラインセンサ22の撮影の時間差(T2−T1)と、移送速度Vが分かっていると、釘17の高さ17hが所定の高さhと比較してどれくらい異なるか(Δh)を算出することができる。図3(b)は、それを示す模式図である。第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22の視軸のなす角度θは決まっている(例えば、ここでは30度)。一方、第1のラインセンサ20が見た位置と第2のラインセンサ22が見た位置の差(距離ΔL)は、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22の撮影の時間差(T2−T1)と、移送速度Vから(1)式のように求めることができる。
ΔL=(T2−T1)・V (1)
次にそれぞれのラインセンサの視軸のなす角度θから観察された釘17の高さ17hと所定高さhの差Δhは、(2)式によって算出することができる。
Δh=ΔL/tanθ (2)
【0034】
一方、図4には、所定の高さより低い釘18があった場合について示す。この場合は、遊戯盤10の移送にともなって、第1のラインセンサ20が釘18の頭を時刻T1で撮影し、時刻T2に第2のラインセンサ22が釘18の頭を撮影する。釘18の高さ18hと所定高さhとの差Δhは、上記と同じ、(2)式で求めることができる(図4(b)参照)。すなわち、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22のどちらが先に釘の頭を撮影したかという点が、釘の頭が所定高さhより高いか低いかを決める基準となる。
【0035】
さらに、第1のラインセンサ20は、被検査物である遊戯盤10の法線方向から撮影している。したがって、被検査物の釘12の植設位置の情報があれば、釘12が正しい位置に植設されているか否かも判断することができる。
【0036】
なお、上記に説明したように、所定高さhと植設された釘の高さを求めるには、第1のラインセンサ20によって撮影された地点と、第2のラインセンサ22によって撮影された地点の間の距離ΔLとそれぞれのラインセンサの視軸の角度θがわかればよい。したがって、上述の説明のように、それぞれのラインセンサの撮影時刻の差と遊戯盤の移送速度から距離ΔLを求める方法だけでなく、撮影された地点の基準点からの距離を求め、その差から距離ΔLを求めてもよい。より具体的には、図3(a)および図4(a)において、それぞれのラインセンサが撮影した地点の位置情報P1およびP2の差(P2−P1)によってΔLを求めてもよい。
【0037】
また、上記で求めたのは、所定高さhと実際に植設された釘の高さの差Δhであるが、そもそも所定高さhは知られた値であるから、上記の検査原理および以下の検査装置においては、植設された釘の高さを算出しているともいえる。植設された釘の高さは、h±Δhで求めることができるからである。
【0038】
図5には、本発明の検査装置1の主要な要素の構成を示す。本発明の検査装置1では、被検査物である遊戯盤10を移送するための移送コンベア30と、コンベア30を駆動するモータ31と、移送されるコンベア30上の遊戯盤10を遊戯盤10の法線方向から撮影する第1のラインセンサ20と、第1のラインセンサ20の視軸24と角度θ(例えば30度)に交差する視軸26を有する第2のラインセンサ22と、釘12の頭を照らすライト32と、全体の動きを制御する制御装置50を有する。
【0039】
第1および第2のラインセンサはすでに説明した通りである。第1のラインセンサ20および第2のラインセンサ22は制御装置50と連結されている。制御装置50は、撮影指示の信号Csを出力することで、第1および第2のラインセンサに撮影をさせ、画像データDs(D1sとD2s)を出力させることができる。画像データDsは、制御装置50の指示によって出力させてもよいし、DMA(Direct Memory Access)によって、予め指定されたメモリにラインセンサが次々と出力するようにしてもよい。
【0040】
ライト32は、釘12の頭をラインセンサに認識しやすくさせるためのものである。ラインセンサが設置されている周囲の空間を暗くしてライト32を第2のラインセンサ22側から照らすことで、遊戯盤10の表面のデザインの部分の輝度が下がり、釘12の頭部分だけを光らせることができる。なお、ライト32は交線16もしくは釘12の頭を照らす照明手段である。
【0041】
コンベア30および駆動モータ31は、釘12が植設された遊戯盤10を所定の位置に固定し、ラインセンサの下を所定の速度Vで移送させる。つまり、コンベア30および駆動モータ31および駆動モータ31を制御する制御装置50は、移送手段である。
【0042】
遊戯盤10の移送速度や移送位置の情報は釘12の高さの測定精度を決めるための重要な情報である。したがって、コンベア30には、遊戯盤10を固定する固定チャック若しくは遊戯盤を固定するステージ等を設けても良い。遊戯盤10にダボ孔が設けられている場合は、この孔を用いれば、より容易に遊戯盤10を固定することができる。これらを遊戯盤10の固定手段34と呼ぶ。
【0043】
また、遊戯盤10がコンベア30のどの位置を通過しているかを知るために、コンベア30には、ポテンショメータなどの位置測定器36が設けられていても良い。位置測定器36は、固定手段34がコンベア30のどの位置にいるかという位置情報を適宜出力することができる。位置測定器36も移送手段に含めてよい。
【0044】
制御装置50は、移送手段およびラインセンサと接続されており、それぞれに指示信号を出し、また、それぞれの要素から情報を得ることができる。また、制御装置50には、メモリ手段52が接続されている。制御装置50には、全体を制御し、ラインセンサからの画像データDsを処理するためのプログラムが内蔵されている。また、予め遊戯盤10上の釘12の位置を示す「釘位置マップ」も記録されており、必要に応じて、植設される予定の釘の位置を参照することができる。
【0045】
また、制御装置50は内部に時計を有しており、それぞれのラインセンサに撮影の指示を出した時刻と、受け取った画像データに撮影時刻を付けた情報をメモリ手段52に記録することができる。また、適当な項目に基づいて過去に検査した情報を呼び出すこともできる。また、制御装置50はディスプレイ54にも接続されており、検査結果や過去の情報等を表示することができる。ディスプレイ54は表示手段である。
【0046】
次に本発明の検査装置1を用いた検査方法について説明する。まず、釘12を植設した遊戯盤10をコンベア30の固定手段34にセットする。これは手動で行っても良いし、自動的に行っても良い。遊戯盤10が移送コンベア30の固定手段34にセットされたら、制御装置50は駆動モータ31に始動信号Cdを送る。
【0047】
始動信号Cdを受けた駆動モータ31は所定の一定速度Vでコンベア30およびその固定手段34にセットされた遊戯盤10を移送させる。遊戯盤10がラインセンサの付近に来たら、制御装置50は第1および第2のラインセンサに撮影指示信号Csを送る。ラインセンサは、同時若しくはほとんど同時にシャッターを落とし、画像データDsを制御装置50に送る。この時には、制御装置50は、それぞれのラインセンサに対して画像データDsを送信するように指示してもよい。
【0048】
制御装置50は、撮影された時刻Tと共に、画像データDsを記録する。ここで、第1のラインセンサ20からの画像データDsを第1画像データD1sと呼び、第2のラインセンサ22からの画像データを第2画像データD2sと呼ぶ。
【0049】
制御装置50内には、予め遊戯盤10上の釘12の位置を示す「釘位置マップ」も記録されている。釘位置マップは、遊戯盤10上に座標軸を設定し、釘12の位置を座標情報で表したものである。制御装置50は、後述する処理フローによって、植設された釘12の高さと、植設された釘12の位置を検出し、釘位置マップの情報と比較することができる。
【0050】
したがって、本発明の検査装置1を用いることで、植設した釘12が所定高さより高い場合、低い場合だけでなく、植設した位置が予定していた場所と違う場合も検出することができる。これらの検査で決められた値に対して、許容範囲であった遊戯盤10は良品として取り出され、OK品の台39に置かれる。また、許容範囲でない釘があったら、遊戯盤10は不良としてNG品の台38に置かれ、その後他の処理(修正処理)に回される。
【0051】
次に制御装置50の行うデータ処理について処理フローを参照しながら詳説する。図6は、制御装置50の行う処理のフローの一例である。検査装置1がスタート(ステップS100)すると、終了判定(ステップS102)が行われる。すなわち、検査する遊戯盤10が無い、若しくは緊急停止の場合などである。終了の場合(ステップS102のY分岐)は、装置を停止する(ステップS103)。検査装置1の終了でない場合(ステップS102のN分岐)は、検査する遊戯盤10を固定手段34に固定し、移送を開始する(ステップS104)。
【0052】
続いて、1枚の遊戯盤10の検査の終了判定を行う(ステップS106)。終了していない場合(ステップS106のN分岐)は、第1ラインセンサ20と第2ラインセンサ22にデータ送信の指示を出す(ステップS108)。そして、読み込んだ画像データDsを2値化やブロック化といった処理を行う(ステップS110)。2値化は、画像データ中の画素毎のデータを1若しくは0(ゼロ)の何れかにする処理である。また、ブロック化は、ラインセンサからの1ライン画像データを数ライン分集めて釘の頭を1つの情報とする処理である。
【0053】
図7を参照して、釘12の頭は複数の画素で形成されるため、数ライン分の画像データを集めなければ、1つの釘12の頭にならない。図7(a)は個々のマス目が画素データDiであるとする。ここで黒丸は釘12の頭を表すとする。1つの釘12の頭を認識するために、複数ライン(ここでは3〜4ライン)にまたがる複数の画像データをその都度取り扱うのは算出方法が複雑になり、計算時間もかかる。
【0054】
そこで、釘12の頭を1つのデータとして扱うために複数ラインの複数列毎の画像データを1つのデータとしてまとめる処理を行う。この処理を行うことで、釘12の位置を遊戯盤10上の1つの座標として読み替える事ができる。
【0055】
図7(b)は、2値化を行った結果で、1画素を1若しくはゼロとした結果である。図7(c)はブロック化を行った結果であり、複数の画素データDiを合わせて1つのデータとし、釘12の位置を縦列と横列の座標(i、j)で表せるようにしたものである。
【0056】
再び図6を参照して、次に第1および第2のラインセンサからの画像データ比較する(ステップS112)。なお、ここでは、第1のラインセンサの画像データ(第1画像データ)をZといい、第2のラインセンサの画像データ(第2画像データ)をθと呼ぶ。Zおよびθは、元々はラインセンサの画素分のデータ(例えば8000画素)であるが、2値化およびブロック化によって図7で示したように複数の画素データが1つのデータとなっている。
【0057】
従って、Zおよびθは、1×N個のデータである。図7(c)を参照するとZおよびθは、点線の1ラインのデータ21である。ステップS112の詳細については、図8を参照して後ほど詳説する。このステップS112の処理によって、第1若しくは第2のラインセンサが釘12を見た際には、正しい位置に植設されているか、所定の高さになっているか、所定の範囲からずれているならどれくらいずれているか、といった検査結果を得る事ができる。
【0058】
ステップS112を終えたら、その結果を記録(ステップS114)する。記録されるデータは、予め決められた位置若しくは高さに植設されなかった釘12と、決められた位置からの誤差を記録すればよいが、全ての検査データを記録してもよい。そして、終了判定(ステップS102)に戻る。
【0059】
次にステップS106の判定でY分岐に移った場合を説明する。これは、1枚の遊戯盤10の検査が終わった場合の処理である。この場合は、ステップS114で記録されたデータ中にNG品があるか否かを確認する(ステップS116)。NG品が有る場合(ステップS116のY分岐)は、NG品の台38(図5参照)に遊戯盤10を移載する(ステップS118)。NG品は別途人の手によって修正作業が行われる。NG箇所がなければ(ステップS116のN分岐)、OK品の台39(図5参照)に載置する(ステップS120)。そして、処理を終了判定(ステップS102)に戻る。
【0060】
なお、記録されたデータは後から再確認することができるようにするのが好ましい。特にNG品とされた遊戯盤を人の手によって修正する場合は、どの釘がどれくらい規格からずれているのかを知ることで、修正の手間は軽減されるからである。再確認の方法は、ディスプレイ54(図5参照)上に表示する方法や、プリントアウトする方法など適宜選択することができる。
【0061】
次に図8を参照して、ステップS112のZθ比較の処理を詳説する。2値化およびブロック化を経た画像データは1列のデータ(図7(c)参照)となっているので、これをi個のデータとする。つまり第1のラインセンサ20および第2のラインセンサ22からの画像データ(ブロック化後)のk番目のデータ(ただし、k≦i)は、Z(k)、θ(k)と表される。なお、図8では「(k)」は省略している。
【0062】
ステップS112の処理に入ると、まず終了判定(ステップS202)が行われる。ここで「Ie」は、データの総数iを表す。1行の画像データの処理が終わったならば(ステップS202のY分岐)、処理をメインの処理に戻す(ステップS203)。
【0063】
終わっていない場合は、kを1つ進めて(図示せず)、Z(k)とθ(k)のデータの値を見る。釘12が見えた場合は、この画像データを1としてあるので、Z(k)とθ(k)が共に正であるか否かを確認する(ステップS204)。
【0064】
共に正である場合(ステップS204のY分岐)は、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22が同時にしかも同じ場所に釘12を見たことを意味する。ここでさらにZ(k)が所定の位置に配置されているか否かを確認する(ステップS206)。ここで、Wは、釘12が植設される予定の領域であり、予め「釘位置マップ」として記録されている。
【0065】
この場合は、第1のラインセンサ20からのデータだけで判断してよい。釘12が所定の範囲の領域に存在していれば(ステップS206のY分岐)、OK品として記録し(S208)、所定の領域になければ(ステップS206のN分岐)、NG品として記録する(S210)。その後処理は、ステップS202に戻る。
【0066】
ステップS204でZ(k)とθ(k)が共に正でなければ(N分岐)、さらにZ(k)が正かどうか(釘で有るか否か)を調べる(ステップS212)。ここでZ(k)が正である場合(ステップS212のY分岐)は、第1のラインセンサ20が釘12を見たことを意味する。そこで、釘12は正しい位置に植設されているか否かを判断する(ステップS214)。これはステップS206の判断と同じである。もし、所定の位置に植設されていなければ(ステップS214のN分岐)、NG品として記録し(ステップS216)、ステップS202に戻る。
【0067】
釘12が所定の位置にあれば(ステップS214のY分岐)、同じk番目の行で、第2のラインセンサ22が見たという記録があるか否かを調べる(ステップS218)。つまり、第1のラインセンサ20で釘12を見た時に、それより時間的に前に第2のラインセンサ22が釘12を撮影している(見ている)か否かを確認する。図8では「θrec?」と表示したが、現在より前に読み込んだ画像データ中のθ(k)に釘を見た記録があるかという意味である。
【0068】
もし第2ラインセンサ22がまだ釘12を撮影して(見て)いなければ(ステップS218のN分岐)、第1のラインセンサ20が先に釘12を見たということになり、これは釘12の頭が低い場合である。この場合は、第1のラインセンサ20の画像データで釘12を見たという点を記録し(ステップS220)、ステップS202に戻る。
【0069】
ステップS218で、第2のラインセンサ22が先に釘12を見ている場合(ステップS218のY分岐)は、釘12が所定高さより高い場合であり、第1のラインセンサ20と第2のラインセンサ22が釘12を見た時刻が分かるので、移送速度から2つのラインセンサが釘12を見た距離ΔLを求めることができる。もちろん、位置測定器36からの情報に基づいてΔLを求めてもよい。
【0070】
このΔLが許容される範囲である場合(ステップS222のY分岐)は、OK品として記録し(ステップS224)、ステップS202に戻る。許容範囲内でなければ(ステップS222のN分岐)、(2)式に基づいてΔhを算出(ステップS226)し、記録したうえで、ステップS202に戻る。この時のΔhは所定高さより高い場合を表す。許容される範囲を示す「ε」は、設計事項として適宜決めることができる。
【0071】
ステップS212に戻って、N分岐の場合を説明する。このステップの次には、θ(k)が正か否か(釘があるか否か)を確認する(ステップS230)。もし、θ(k)も正でなければ(ステップS230のN分岐)、第1のラインセンサ20も第2のラインセンサ22も釘12を見なかったということなので、それを記録し、ステップS202に戻る。
【0072】
第2のラインセンサ22が釘12を見ていれば(ステップS230のY分岐)、同じk番目の行で第1のラインセンサ20が釘12を見ているか否かを確認する(ステップS232)。まだ第1のラインセンサ20が釘12を見ていなければ(ステップS232のN分岐)、この釘12は第2のラインセンサ22が先に見た釘であるので、所定高さより高い釘である。そこで、θ(k)を記録し(ステップS234)、ステップS202に戻る。
【0073】
第1のラインセンサ20がすでにこの釘12を見ている場合(ステップS232のY分岐)は、この釘12は所定高さより低い釘である。2つのラインセンサの見た時刻の差と移送速度から2つのラインセンサの見た位置の距離ΔLを求め、これが許容範囲内か否かを判断する(ステップS236)。許容内であるなら(ステップS236のY分岐)、OK品であることを記録し(ステップS224)、ステップS202に戻る。
【0074】
許容範囲内でなければ(ステップS236のN分岐)、(1)式より所定高さとの差Δhを求め、記録して(ステップS238)、ステップS202に戻る。
【0075】
以上のように、第1および第2のラインセンサの画像データを時刻に基づいて比較することで、遊戯盤10に植設された釘12の位置が許容される範囲か否か、植設された釘の高さが所定高さより高いか低いか、また、その差はどの程度かを検査することができる。
【0076】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1によって、検査された結果NGとなった遊戯盤10を人手等を利用して修正した場合に、再度検査を行うことができる検査装置について説明する。
【0077】
装置としては、実施の形態1の場合と同じであるので、説明を省略する。本実施の形態を行う場合は、遊戯盤10に固有のIDを設定する必要がある。例えば、図9に示すように、QRコードの隣に、固有のIDマークを入れる。このIDマークはバーコードであってもよいし、数字であってもよい。
【0078】
図10には処理フローを示す。図10のフローは、図6のフローとほぼ同じである。しかし、遊戯盤10から釘12だけではなく、IDコードを読み取る(ステップS130)。これはラインセンサを用いてもよいが、別途コード読み取り用のカメラを用意してもよい。検査のフロー(ステップS108乃至S114)は、実施の形態1の場合と同じである。検査が終了したら、過去に検査した検査データの有無を調べる(ステップS132)。これはメモリ手段52(図5参照)に記録した過去のデータから同じIDコードを有するデータがあるか否かを調べる。
【0079】
そして、同じIDコードのデータがあった場合(ステップS132のY分岐)は、今回の検査結果と比較し、それを表示手段54(図5参照)に表示する。これによって、前回修正した箇所が確かに修正されており、また、その他の欠陥箇所もないことを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の検査装置は、遊戯盤に植設された釘の高さを調べる際に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0081】
1 検査装置
10 遊戯盤
12 釘
13 移送方向
14 遊技盤の中心線
15 領域の幅(ラインセンサの視野)
16 視野の交線
20 第1のラインセンサ
22 第2のラインセンサ
24 第1のラインセンサの視軸
26 第2のラインセンサの視軸
30 コンベア
31 駆動モータ
32 ライト
34 固定手段
36 位置測定器
38 NG品の台
39 OK品の台
50 制御装置
52 メモリ手段
54 ディスプレイ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯盤を所定の速度で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記遊戯盤の搬送方向と直角であって、
前記遊戯盤の垂直方向に沿って視軸が配置された第1のラインセンサと、
前記第1のラインセンサと平行に配置され、視軸が前記第1のラインセンサの視軸から所定の角度傾き、かつ視野が前記第1のラインセンサの視野と交わる交線が、前記遊戯盤の釘の頭と同じ高さに配置される第2のラインセンサと、
前記釘の頭を前記第1のラインセンサが撮影した地点と前記第2のラインセンサが撮影した地点の間の距離に基づいて、前記釘の高さを算出する制御装置を有する検査装置。
【請求項2】
前記釘を照らすライトを有する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記遊戯盤に植設される釘の位置を示すマップ情報を有し、
前記第1のラインセンサが前記釘の頭を撮影した位置と、前記マップ情報を比較する請求項1または2の何れかの請求項に記載された検査装置。
【請求項4】
前記算出した前記釘の高さ若しくは前記釘の植設位置を表示する表示手段を有する請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載された検査装置。
【請求項5】
前記遊戯盤のIDコードを取得するIDコード取得手段と、
前記IDコードおよび、前記算出した前記釘の高さおよび前記釘の植設位置を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記制御装置は、前記IDコードに基づいて、過去に行った検査結果との比較結果を求める1乃至4の何れか一の請求項に記載された検査装置。
【請求項6】
釘が植設された遊戯盤を移送する工程と、
前記移送中の遊戯盤の前記釘を、前記遊戯盤の法線方向および前記法線方向に対して所定角度傾斜した方向から前記釘を撮影する工程と、
前記法線方向および傾斜した方向から前記釘を撮影した地点間の距離に基づいて、前記釘の高さを求める検査方法。
【請求項7】
釘が表面に植設された遊戯盤であって、
前記遊戯盤を識別できるIDコードが印刷された遊戯盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31603(P2013−31603A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170007(P2011−170007)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(391010943)株式会社藤商事 (1,465)
【Fターム(参考)】