説明

遊技場用椅子

【課題】作業者の遊技機の搬出・搬入作業時の負担を軽減しつつ、搬出・搬入作業の効率化を図ることができる遊技場用椅子を提供する。
【解決手段】遊技場用椅子1は、遊技場において遊技者が遊技時に着座するものであり、遊技者が着座する腰掛け部2と、その腰掛け部2に着座した際に遊技者の背中と対面する背もたれ部3を有する。背もたれ部3は、遊技者が腰掛け部2に着座した際にその遊技者の背中が対面する側と反対側に遊技機30を搬送可能とする搬送部が設けられている。そして、その背もたれ部3を腰掛け部2の着座面に配置しつつ搬送部を鉛直上方に向けた状態で遊技機30を搬送可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技場用椅子に関するものであり、特に遊技機の取り付け・取り外し作業の前後の障害とならない遊技場用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機やスロット機等が遊技できる遊技場においては、各島(列)の遊技機取付部に複数の遊技機が隙間なく並べられており、遊技者がその遊技機に向き合って着座できる位置に椅子が床等に対して一体的に固定されている。
また、各椅子には、背もたれが設けられ、遊技機を正面視した際に、その背もたれの一部(主に上部側)は遊技機に重なる位置に配されている。即ち、遊技場に設置された椅子は、背もたれが遊技機に対向した状態である。
【0003】
ところで、遊技場においては、遊技者の興味を引くため、新しい遊技機の導入(所謂新台入れ替え)や、既設の遊技機の配置換え等の作業が頻繁に行われる。この作業は、主に既に遊技機取付部に設置された遊技機を取り外す搬出作業と、遊技機取付部に新たに設置する搬入作業とがある。そして、従来より、この搬出作業と搬入作業においては、遊技場に設けられた椅子により、作業効率の低下を強いられていた。
【0004】
即ち、遊技場の椅子は、床に一体的に固定されており、移動させることができないため、椅子たる障害物を避けつつ、重量物たる遊技機の搬出や搬入作業を行う必要があった。具体的には、パチンコ機やスロット機等の遊技機は、重量が25〜35kg程あり、その遊技機の搬出・搬入作業の際には、遊技機を椅子の背もたれの高さ以上の位置に持ち上げる必要があった。これは、作業者にとってかなりの重労働であった。
【0005】
そこで、特許文献1には、背もたれを座面側に折りたたむことができる遊技場用椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−23143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、遊技機は、大当たり等の演出動作が行われるモニターや、その様々な演出を制御する制御装置を備えた精密装置であるため、遊技機の搬出作業や、搬入作業においては、かなりの慎重作業が強いられる。特に、作業者は、取り付け時や取り外し時に、重量物たる遊技機を抱えて定位置を保持した状態が長期化してしまう場合が発生する。これにより、作業者の体力を著しく消耗させてしまうため、搬出・搬入の対象遊技機が多いほど、作業時間が長期化し作業効率の低下が顕著となる。
【0008】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、作業者の遊技機の搬出・搬入作業時の負担を軽減しつつ、搬出・搬入作業の効率化を図ることができる遊技場用椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、遊技機が設置された遊技場で使用され、前記遊技機の前に設置されて遊技者が遊技時に着座する遊技場用椅子において、遊技者が着座する腰掛け部と、遊技者が前記腰掛け部に着座した際に当該遊技者の背中と対面する背もたれ部を有し、背もたれ部は、腰掛け部に着座した遊技者の背中が対面する側と反対側に被搬送物を搬送可能とした搬送手段が設けられ、腰掛け部の着座面に背もたれ部を対向させて搬送手段を上方に向けた状態で、被搬送物の搬送を可能とすることを特徴とする遊技場用椅子である。
【0010】
本発明の遊技場用椅子は、背もたれ部に搬送手段を設け、その背もたれ部を腰掛け部の着座面に配置して搬送手段を鉛直上方に向けた状態で、被搬送物を搬送できるような構成とされている。即ち、搬送手段を上方(被搬送物を上から載置できる方向)に向けることで、実質的に背もたれ部が倒れた状態にすることができるため、先に説明したように、遊技機の搬出・搬入の作業時に背もたれ部が障害となることがない。また、この状態の搬送手段の上に被搬送物を載置すれば、作業者は被搬送物を抱える必要がなく、さらにその状態でその遊技機の搬出又は搬入作業を行うことが可能となる。従って、本発明の遊技場用椅子によれば、背もたれ部が遊技機の搬出・搬入作業の際に障害となることがなく、さらに搬出・搬入作業の補助機能を有するため、作業者の負担を軽減できる。これにより、搬出・搬入作業の対象遊技機が多い場合であっても、作業効率を低減させることがない。
【0011】
本発明の遊技場用椅子は、背もたれ部と腰掛け部は、ヒンジ構造を用いて接合されており、背もたれ部は、ヒンジ部を基準に、腰掛け部に対して近接・離反方向に回動可能であることが望ましい。(請求項2)
【0012】
請求項3に記載の発明は、搬送手段は、複数の回転可能なボールを有し、被搬送物を背もたれ部の平面に沿っていずれの方向にも搬送可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技場用椅子である。
【0013】
かかる構成によれば、搬送手段として回転可能なボールが採用されているため、被搬送物の搬送方向が制限されない。これにより、遊技機を抱えることなく搬出・搬入作業を行うことができると共に、被搬送物たる遊技機を搬送手段に載置した後であっても、遊技機を持ち上げることなく所定の位置に合わせつつ搬出・搬入作業を行うことが可能である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、搬送手段は、複数のローラを有し、被搬送物を背もたれ部の平面に沿った方向且つ遊技機が設置される側に対して近接・離反方向に搬送可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技場用椅子である。
【0015】
かかる構成によれば、搬送手段としてローラが採用されているため、被搬送物を一定の方向に容易に搬送することができる。即ち、本発明によれば、被搬送物を遊技機が設置される側に対して近接・離反する方向に搬送できるため、被搬送物たる遊技機を抱えることなく搬入・搬出作業を行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、遊技機は、遊技機の外郭とほぼ同じ開口面積を有した遊技機取付部に設置されるものであって、前記搬送手段は、その天部の位置が、遊技機取付部の開口底部の位置とほぼ同じ鉛直方向の位置となるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の遊技場用椅子である。
【0017】
かかる構成によれば、遊技機(被搬送物)を遊技機取付部から取り外して搬出作業を行う場合に、その遊技機を鉛直方向に殆ど移動させることなく、ほぼ水平方向に移動させることで搬送手段に載置することができる。また、遊技機取付部に遊技機を取り付ける搬入作業を行う場合であっても、遊技機を鉛直方向に殆ど移動させることなく、搬送手段に載置した遊技機を搬送手段に沿って搬送することで遊技機取付部に搬入することができる。即ち、遊技機を遊技機取付部から取り外したり、遊技機取付部に取り付けたりする前後で、遊技機を鉛直方向に持ち上げたり、下ろしたりする作業が必要最小限に軽減されるため、作業者の負担を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の遊技場用椅子では、背もたれ部に搬送手段を設け、その搬送手段に遊技機を載置して搬出・搬入作業を行うことができるため、作業者の負担を抑制でき、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る遊技場用椅子を示す斜視図である。
【図2】図1の遊技場用椅子を示す分解斜視図である。
【図3】図2のA方向から見た背もたれ部の斜視図である。
【図4】図1に示す背もたれ部のA−A断面図である。
【図5】図1の遊技場用椅子を示す側面図である。
【図6】図1の遊技場用椅子の背もたれ部を腰掛け部側に折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【図7】図6の状態の遊技場用椅子で遊技機が搬送されている状況を示す説明図である。
【図8】別の実施形態に係る遊技場用椅子を示す斜視図である。(ローラ)
【図9】さらに別の実施形態に係る遊技場用椅子を示す斜視図で、(a)は背もたれ部が着座可能位置である状態を示し、(b)は背もたれ部が搬送可能位置である状態を示している。(分離型)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る遊技場用椅子1について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下左右の関係は通常の取付位置を基準とする。
【0021】
本実施形態の遊技場用椅子1は、図1に示すように、パチンコ機やスロット機等の遊技機30を遊技できる遊技場に設けられるもので、各遊技機30に対向する位置に1脚ずつ配される。即ち、遊技場用椅子1は、所望の遊技機30を遊技する際に着座するものである。
【0022】
遊技場用椅子1は、図1に示すように、腰掛け部2と、背もたれ部3と、背もたれ部3を腰掛け部2に対して相対的に回動できるように接続可能とした中間部材6と、脚部5により構成されている。
【0023】
腰掛け部2は、平面視した形状がほぼ正方形で、遊技者が着座した際に当該遊技者の尻部が当接する部分である。腰掛け部2は、図2に示すように、実際に遊技者の尻部が当接するクッション部15と、そのクッション部15を保持する底部側ベース部16とにより構成されている。
クッション部15は、衝撃を緩和するクッション性の高いスポンジ等の図示しない緩衝材を有し、その緩衝材を布地、革、又は合皮等の図示しない被覆部材で覆った構成とされている。なお、クッション部15の大きさは、後述する底部側ベース部16の底部側ベース空間17に嵌り込む程度の大きさとされている。
【0024】
底部側ベース部16は、樹脂の射出成形によって作られた部材である。具体的には、底部側ベース部16は、平面視した形状がほぼ正方形で、一面が開放された筐体である。より具体的には、底部側ベース部16は、腰掛け部2の底面側に位置する底面壁18と、その底面壁18を囲繞するように一体的に接合された側面壁20を有し、底面壁18と側面壁20とによって底部側ベース空間17が形成されている。即ち、底部側ベース部16は、底面壁18に対向する天面側の一面が開放されており、この開放された一面側から底部側ベース空間17にクッション部15が嵌め込まれる。なお、底部側ベース空間17に嵌め込まれたクッション部15は、接着剤等によって底部側ベース部材16に固定される。
また、底面壁18には、部座の厚み方向に貫通した複数の貫通孔33、35が設けられている。具体的には、貫通孔33は、後述する脚部5と接続する際に用いられるもので、底面壁18の中心側に配されており、貫通孔35は、後述する中間部材6を接続する際に用いられるもので、底面壁18の側面壁20側に配されている。
【0025】
背もたれ部3は、遊技者が着座した際に当該遊技者の背中をもたせかけることを可能とする部分であり、外観が、1つの大長方形部3aと2つの小長方形部3bを組み合わせた形状とされている。具体的には、2つの小長方形部3bは、大長方形部3aの短手側に配され、一定の間隔を空けて大長方形部3aに一体的に接合された構成とされている。
【0026】
背もたれ部3は、図2に示すように、クッション部21と、被搬送物を搬送可能な搬送部8と、クッション部21及び搬送部8を保持する背部側ベース部22とにより構成されている。
クッション部21は、前記した腰掛け部2におけるクッション部15とほぼ同じ構成を有しており、大きさは後述する背部側ベース部22に設けられた背部側ベース空間27に嵌り込む程度の大きさとされている。
【0027】
背部側ベース部22は、樹脂の射出成形によって作られた部材である。具体的には、背部側ベース部22は、大長方形部3aにおける一面が開放されたほぼ筐体状の部材である。より具体的には、図2、3に示すように、背部側ベース部22は、大長方形部3aが、部材の厚み方向に貫通した複数の開口34を有する有孔壁23と、その有孔壁23を囲繞するように一体的に接合された側面壁25とにより形成され、小長方径部3bが、短手側の側面壁25のうちの一方に一体的に接合された2つの回動規制片26により形成されている。
【0028】
即ち、背部側ベース部22は、有孔壁23と対向する一面側が開放されており、有孔壁23と側面壁25とによって背部側ベース空間27が形成されている。そして、前記したように、有孔壁23と対向する一面側からクッション部21が背部側ベース空間27に嵌め込まれる。なお、背部側ベース空間27に嵌め込まれたクッション部21は、接着剤等によって背部側ベース部33と後述する搬送部8に固定される。
また、背部側ベース部22の側面壁25には、後述する搬送部8を接続するための貫通した4つの貫通孔36が設けられている。具体的には、貫通孔36は、短手側の側面壁25に配されており、2の貫通孔36は回動規制片26側の側面壁25であって回動規制片26に挟まれた位置に配され、残りの2つの貫通孔36は前記側面壁25と対向する位置の側面壁25に配されている。
【0029】
背部側ベース部22の回動規制片26は、一定の厚みを備えた支持体であり、直線状の軸部材24を挿通可能な軸挿通孔40が設けられている。軸挿通孔40は、2つの回動規制片26に渡って軸部材24を挿通可能な位置に配されている。即ち、2つの回動規制片26に配されたそれぞれの軸挿通孔40の位置は、大長方形部3aと小長方径部3bの境界からほぼ同じ距離に配されている。換言すると、2つの軸挿通孔40は、一方の軸挿通孔40の孔を覗き込むと、他方の軸挿通孔40の孔が連通した状態に見える関係である。
【0030】
搬送部8は、図2に示すように、ほぼ板状の保持部10と、複数の公知のフリーボールベアリング11とによって構成されている。
保持部10は、断面形状が「コ」の字型の部材で、フリーボールベアリング11が固定されるベアリング側固定壁37と、そのベアリング側固定壁37に対してほぼ直交するように立設した2つのベース側固定壁38とを有する。即ち、2つのベース側固定壁38は、ベアリング側固定壁37の対向する端辺の位置に一体的に設けられている。
なお、ベアリング側固定壁37には、フリーボールベアリング11が固定される部材の厚み方向に貫通した複数の図示しないネジ孔が設けられ、ベース側固定壁38には、背部側ベース部22の側面壁25に設けられた貫通孔36に対向する位置に部材の厚み方向に貫通した貫通孔39が設けられている。
【0031】
フリーボールベアリング11は、ボール12と、そのボール12を回転可能に保持する筐体13を有している。具体的には、ボール12は大半が筐体13に保持されており、一部だけが筐体13の外部に露出している。即ち、ボール12の回転方向に外力が伝わると、そのボール12が回転して、ボール12に載置された被搬送物を移動させることができる。また、筐体13は、ベアリング側固定壁37に当接するフランジ部41を有し、そのフランジ部41には、ネジ等の固定手段が挿通される図示しないネジ孔が設けられている。
即ち、搬送部8は、図4に示すように、1つの保持部10に対して複数のフリーボールベアリング11を、ベアリング側固定壁37におけるベース側固定壁38の立設方向と反対側の面上に載置して、図示しないネジ孔を連通状態にしてネジ等の固定手段で固定して形成されている。そして、この搬送部8は、背部側ベース部22の背部側ベース空間27に配されて固定されている。具体的には、搬送部8は、背部側ベース部22の有孔壁23に設けられた開口34からフリーボールベアリング11の一部が露出するよう配されており、その状態で、搬送部8の貫通孔39と背部側ベース部22の貫通孔36にボルトが挿通されてナットによって固定されている。そして、その状態の背部側ベース空間27にクッション部21が配されて固定されている。即ち、背もたれ部3は、背部側ベース部22の背部側ベース空間27において、有孔壁23側から順番に搬送部8、クッション部21が配されて構成されている。
【0032】
中間部材6は、図2に示すように、断面形状がほぼ「L」字型の部材で、一方の突端側が腰掛け部2に固定され、他方の突端側が背もたれ部3を軸部材24を介して軸支可能なものとされている。具体的には、中間部材6は、部材幅(図2の奥行き方向の長さ)が前記した2つの回動阻止片26の間に形成された間隔とほぼ同じ大きさとされており、前記他方の突端側が背もたれ部3の前記間隔に挟まれるように配される部分である。即ち、中間部材6の他方の突端側には、部材の幅方向に貫通した軸挿通孔43が設けられている。そして、前記一方の端部側には、前記した底部側ベース部16の貫通孔35と連通し得る位置に部材の厚み方向に貫通する2つの貫通孔42が設けられている。
【0033】
脚部5は、腰掛け部2を遊技場の床面から所定の高さに維持できる支持部45と、その支持部の周方向に相対的に回転可能とする公知の回転機構を備えた回転部46とにより構成されている。この回転部46は、支持部45の一方の端部側に設けられている。そして、回転部46は、腰掛け部2に当接するフランジ部47を有し、そのフランジ部47にボルト等の固定手段が挿通される貫通孔48が設けられている。即ち、脚部5は、支持部45を遊技場の床に固定し、回転部46を腰掛け部2に固定することで、腰掛け部2を床面に対して相対的に回転させることが可能となる。
【0034】
次に、遊技場に設置された遊技場用椅子1の組み立て構造について説明する。
本実施形態に係る遊技場用椅子1は、図1に示すように、遊技機30の真正面に対向する位置に配されている。そして、遊技場の床面に脚部5の回転部46が位置する反対側の端部側(脚部5の他方の端部側)が固定されて設置されている。脚部5の回転部46が位置する端部側(脚部5の一方の端部側)は、腰掛け部2の底部に位置し、腰掛け部2と一体的に接続されている。具体的には、脚部5と腰掛け部2は、脚部5の貫通孔48と腰掛け部2の貫通孔33を連通した状態にされて、ボルト・ナット(固定手段)により接続されている。
【0035】
また、腰掛け部2には、中間部材6が一体的に接続されている。即ち、中間部材6は、貫通孔42が位置する端部側(一方の端部側)が腰掛け部2の底面壁18に当接するように位置しており、中間部材6の貫通孔42と腰掛け部2の貫通孔35が連通した状態にされて、ボルト・ナットにより接続されている。そして、中間部材6の軸挿通孔43が位置する端部側には、背もたれ部3が中間部材6に対して相対的に回動可能に接続されている。即ち、背もたれ部3の軸挿通孔40と中間部材6の軸挿通孔43を連通状態にして軸部材24が挿通されてヒンジ構造が形成されている。具体的には、背もたれ部3は、遊技者が腰掛け部2に着座した際に、クッション部21が当該遊技者の背中と対向する位置(着座可能位置)と、搬送部8がほぼ鉛直上方に向く位置(搬送可能位置)に変更可能とされているため、背もたれ部3は、腰掛け部2側を内側と定義すれば、クッション部21が内側に位置し、搬送部8が外側に位置するように中間部材6に対して軸支されている。
【0036】
なお、背もたれ部3を着座可能位置にした際に、その状態を維持可能にすると共に挿通された軸部材24の脱落を防止する転倒・脱落防止部材44が設けられている。
ここで、転倒・脱落防止部材44について説明すると、転倒・脱落防止部材44は、金属、樹脂等で形成されており、断面形状が、長方形の筒体の一部が欠落した形状で、長手方向端部が双方ともほぼ「コ」字型とされている。即ち、転倒・脱落防止部材44は、長手方向両端部が背もたれ部3の回動阻止片26を囲み込むように装着されている。また、回動阻止片26には、図示しない係止部があり、転倒・脱落防止部材44はその係止部に係止されることで装着性が高められている。
【0037】
次に、本実施形態に係る遊技場用椅子1の使用方法について説明する。
本実施形態の遊技場用椅子1は、遊技場に新たな遊技機を搬入して遊技機の設置箇所たる開口状の遊技機取付部50に取り付けたり(以下、搬入作業と称す)、既存の遊技機を遊技機取付部50から取り外したり(以下、搬出作業と称す)する際に特徴的機能を発揮し、それ以外の際には、通常の椅子としての機能を発揮する。換言すれば、本実施形態では、背もたれ部3を着座可能位置にするか、搬送可能位置にするかで使用方法が異なる。
【0038】
即ち、通常の椅子として機能させる場合は、図1、5に示すように、背もたれ部3を遊技機30に対向させて、着座可能位置にした状態で使用する。この状態においては、背もたれ部3の回動阻止片26が、図5に示すように、腰掛け部2に当接するため、この状態から背もたれ部3が腰掛け部2に対してさらに離反する方向に回動することはない。即ち、遊技者が腰掛け部2に着座して、背もたれ部3に背中を押し当てたとしても、回動阻止片26がその外力に対向するため、遊技者が背中側から転倒するようなことはない。さらに、本実施形態の遊技場用椅子1には、転倒・脱落防止部材44が回動阻止片26に装着されているため、背中側に加えて、腰掛け部2側に回動することもない。
【0039】
一方、本実施形態の特徴的機能を発揮させる場合は、転倒・脱落防止部材44を回動阻止片26から離脱させ、図6、7に示すように、背もたれ部3を腰掛け部2側に回動させて両者を当接させて、搬送可能位置にした状態で使用する。この状態においては、図6に示すように、搬送部8のフリーボールベアリング11が鉛直上方に向かって背もたれ部3から露出しているため、被搬送物をフリーボールベアリング11上に載置することができる。即ち、被搬送物たる遊技機30を遊技機取付部50に対して近接・離反する方向に移動させることができる。これにより、搬送する遊技機30を取り付ける際の作業負担が軽減される。また、本実施形態では、搬送部8にフリーボールベアリング11を採用しているため、遊技機取付部50に対して近接・離反する方向だけでなく、遊技機取付部50に対して左右方向の成分を含んだ方向に移動させることができる。これにより、遊技機30を持ち上げることなく、遊技機30の位置の調整を行うことができる。即ち、取り付けの際においては、遊技機取付部50の開口位置に合わせて移動させることができ、取り外しの際においては、台車などの位置に合わせて移動させることができる。
【0040】
また、この状態のフリーボールベアリング11の鉛直方向最上部と床面からの鉛直高さHは、遊技機取付部50の開口下端側と床面からの鉛直高さLとほぼ等しいため、搬送部8から遊技機取付部50に移動させたり、遊技機取付部50から搬送部8に移動させる作業が容易である。即ち、搬送部8と遊技機取付部50との間で、遊技機30を鉛直上下方向に変位させる動作をする必要が殆どないため、作業者に殆ど負担を与えることがない。これにより、遊技機30の搬出・搬入作業時の作業効率を向上させることができる。
【0041】
上記実施形態では、搬送部8がフリーボールベアリング11を有する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図8に示すように、フリーボールベアリング11に換えて、筒状のローラ51を有する構成であっても構わない。即ち、この構成によれば、被搬送物たる遊技機30が載置される正味の面積が広くなるため、遊技機30の安定性を確保しつつ遊技機取付部50の近接・離反方向に移動させることができる。
また、公知のフリーボールベアリング11に換えて、一定の強度を備えた単なる球体を備えたものであっても構わない。即ち、金属や樹脂などにより形成された球体を、その球体が回転可能に保持される保持部材に複数設けて搬送部を構成するものであっても構わない。
【0042】
上記実施形態では、背もたれ部3が腰掛け部2と相対的に回動する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、背もたれ部が腰掛け部に対して着脱可能な構成であっても構わない。即ち、図9に示すように、背もたれ部54と腰掛け部55を中間部材53を介してネジやボルト・ナット等の固定手段で接続した構成である。この構成によれば、背もたれ部54の固定手段を離脱することで腰掛け部55から背もたれ部54を分離できる。そして、分離された背もたれ部54を、搬送部56が鉛直上方を向くように腰掛け部55に載置することで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、この構成では、背もたれ部54と腰掛け部55が分離した状態であるため、遊技機30の搬送時に背もたれ部54が腰掛け部55に対して移動してしまう不具合が考えられるが、背もたれ部54と腰掛け部55の間にゴム等の摩擦係数が高いシート状の図示しない摩擦シート等を挟んでおくことで、その不具合を防止することができる。
【0043】
上記実施形態では、搬送可能状態において、フリーボールベアリング11の鉛直方向最上部と床面からの鉛直高さHと、遊技機取付部50の開口下端側と床面からの鉛直高さLとがほぼ等しい関係とされていたが、本発明はこれに限定されず、鉛直高さHと鉛直高さLは若干ずれた関係であっても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1 遊技場用椅子
2 腰掛け部
3 背もたれ部
6 中間部材
8 搬送部(搬送手段)
11 フリーボールベアリング
12 ボール
51 ローラ
53 中間部材
54 背もたれ部
55 腰掛け部
56 搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機が設置された遊技場で使用され、前記遊技機の前に設置されて遊技者が遊技時に着座する遊技場用椅子において、
遊技者が着座する腰掛け部と、遊技者が前記腰掛け部に着座した際に当該遊技者の背中と対面する背もたれ部を有し、
背もたれ部は、腰掛け部に着座した遊技者の背中が対面する側と反対側に被搬送物を搬送可能とした搬送手段が設けられ、
腰掛け部の着座面に背もたれ部を対向させて搬送手段を上方に向けた状態で、被搬送物の搬送を可能とすることを特徴とする遊技場用椅子。
【請求項2】
背もたれ部と腰掛け部は、ヒンジ構造を介して接合されており、
背もたれ部は、ヒンジ部を基準に、腰掛け部に対して近接・離反方向に回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の遊技場用椅子。
【請求項3】
搬送手段は、複数の回転可能なボールを有し、被搬送物を背もたれ部の平面に沿っていずれの方向にも搬送可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技場用椅子。
【請求項4】
搬送手段は、複数のローラを有し、被搬送物を背もたれ部の平面に沿った方向且つ遊技機に対して近接・離反方向に搬送可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技場用椅子。
【請求項5】
遊技機は、遊技機の外郭とほぼ同じ開口面積を有した遊技機取付部に設置されるものであって、
前記搬送手段は、その天部の位置が、遊技機取付部の開口底部の位置とほぼ同じ鉛直方向の位置となるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の遊技場用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−70988(P2012−70988A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218915(P2010−218915)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】