説明

遊技機のヒンジ機構

【課題】第1ヒンジ機構および第2ヒンジ機構を、着脱作業をできる限り低下させることなく簡単な構成にできるようにする。
【解決手段】上側の第1ヒンジ機構WH1は軸部123を有した開閉側ヒンジ部材121および軸部と係合する軸受部113を有したベース側ヒンジ部材111からなり、外枠1に対して前枠2を嵌合軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続する。上側の第2ヒンジ機構TH1は、ガラス扉5に上下にスライド変位可能に軸支された上側ピン部材323と、開閉側ヒンジ部材の下面に形成された上側ピン受容穴128とからなり、下側の第2ヒンジ機構は、前枠の側部下部に固定されて上方に突出する下側ピン部材と、ガラス扉の側部下部に下面側に開口して形成された下側ピン受容穴とからなり、上側ピン部材を上側ピン受容穴と係合させるとともに、下側ピン部材を下側ピン受容穴と係合させて、前枠に対してガラス扉をヒンジ接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の側部上下に設けられベース部材に対して開閉部材を揺動開閉自在に
ヒンジ接続させる上下一対のヒンジ機構における一方のヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなヒンジ機構は種々の遊技機に用いられており、その一例として、パチンコ
機や雀球遊技機等における外枠と前枠との間に設けられるヒンジ機構があげられる。パチ
ンコ機のヒンジ機構は、外郭方形の枠状に形成された固定保持用の外枠と、外枠の開口面
域を覆う開閉搭載用の前枠との間を繋いで互いの正面左側上下に設けられており、前枠に
種々の遊技構成部品が取り付けられて構成される遊技機本体が、外枠に対して一体的に横
開き開閉可能にヒンジ接続されるようになっている。
【0003】
ところで、パチンコ機は新機種投入時に遊技者の注目を集めて高い稼働率を発揮する一
方、一定期間を経過すると遊技者が他の新台に移動して稼働率が低下する。このため遊技
施設では、長期間にわたって稼働率が高い機種(いわゆるヒット機種)を除いて比較的短
い周期で新機種と交換する新台入れ替えが行われる。このとき遊技施設の遊技島に釘打ち
固定された外枠を取り外して新たな外枠を設置するのは、時間的にも費用的にも効率的で
ないことから、もとの外枠をそのまま流用して遊技機本体を交換する交換形態が利用され
る。
【0004】
このため、パチンコ機のヒンジ機構には、外枠と前枠とを相対揺動自在に連結させる機
能だけでなく、外枠と前枠とを容易に連結し分離できる機能が求められる。一方、パチン
コ機が遊技島に設置され遊技に供された状態では、外枠と前枠とのヒンジ接続が簡単に外
れてしまうようでは問題であり、連結状態を強固に保持する機能が求められる。
【0005】
このようなことから、パチンコ機のような遊技機に用いられるヒンジ機構では、軸ピン
と軸孔との嵌合を基本としたヒンジ機構が多く用いられており、これに着脱を容易化する
ための構造や、連結状態を強固に保持するための構造などが付加されて構成されている。
例えば、前枠側ヒンジ部材の板状部にヒンジピンを固着し、外枠側ヒンジ部材の板状部に
ヒンジピンと係合するピン受容孔を形成するとともに、ピン受容孔に係合したヒンジピン
を保持するロックレバーやロックネジ等のロック機構を設けて、連結状態を保持するよう
に構成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47555号公報(第3〜5頁、第5〜8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような従来のヒンジ機構は、連結状態を保持するために付加さ
れる部品点数が多く、ヒンジ機構の構造も複雑になり、部材コストや組立工数が増大して
遊技機の生産コストを上昇させてしまうという問題があった。また一般に、ヒンジ機構を
連結状態に保持するロックレバーやロックネジが遊技機の前方から操作可能に配設される
ため、遊技者が故意にロックを解除して悪戯をしたり不正行為を行う場合もあり、このよ
うな行為に対して強固に連結を保持する抗力と、遊技機本体を着脱する際の良好な作業性
とを両立させることが難しいという問題があった。
【0008】
また、パチンコ機においては、前枠の前面にガラス扉も前枠と同様にヒンジ機構を介し
て開閉自在に取り付けられる構成となっている。このように外枠と前枠とを開閉自在に連
結する第1ヒンジ機構と、前枠にガラス扉を連結する第2ヒンジ機構を備える遊技機にお
いては、両ヒンジ機構は近接配置される構成となることが多く、両者の構成および配置が
複雑化しやすいため、これをできる限り簡単な構成とすることが求められる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたものであり、外枠と前枠とを開閉自在に連
結する第1ヒンジ機構および前枠にガラス扉を連結する第2ヒンジ機構を、外枠に対する
前枠の着脱作業をできる限り低下させことなく、これらヒンジ機構を簡単な構成とするこ
とができるような遊技機のヒンジ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本発明に係るヒンジ機構は、ベース部材と、前記ベース部材の前
面に設けられ、左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構により前
記ベース部材の前面に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材と、前記第1開閉部
材の前面に設けられ、前記第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒ
ンジ機構により前記第1開閉部材に対して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材
とを備えて構成される。そして、前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する
第1ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部およ
び前記開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ
部材と、前記ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部および前記ベー
ス側板状部に設けられ前記軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材
とからなり、前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる嵌合軸
を中心として互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開
閉部材が前記嵌合軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されている
。さらに、前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前
記第2開閉部材の側部上部に上下にスライド変位可能に軸支され上方に付勢された上側ピ
ン部材と、前記開閉側ヒンジ部材の下面に形成されるとともに前記上側ピン部材を受容し
てこれと回転可能に係合可能な上側ピン受容穴とからなり、前記上下一対の第2ヒンジ機
構のうちの下方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部下部に固定されて
上方に突出する下側ピン部材と、前記第2開閉部材の側部下部に下面側に開口して形成さ
れた下側ピン受容穴とからなり、前記上側ピン部材を前記上側ピン受容穴に下方から受容
してこれと回転自在に係合するとともに、前記下側ピン部材を前記下側ピン受容穴に下方
から受容してこれと回転自在に係合することにより、前記第1開閉部材に対して前記第2
開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、この状態において生
じる前記上側ピン部材の支持上面と前記上側ピン受容穴の下面との上下方向間隙が、前記
下側ピン部材と前記下側ピン受容穴との上下方向係合量より小さくなるように構成されて
いる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明のヒンジ機構は、ベース部材(例えば、外枠1)に対して第1開
閉部材(例えば、前枠2)を揺動開閉自在にヒンジ接続する上下一対の第1ヒンジ機構と
、第1開閉部材に対して第2開閉部材を揺動開閉自在にヒンジ接続する上下一対の第2ヒ
ンジ機構された第2開閉部材とを有して構成され、上側に位置する第1ヒンジ機構は、軸
部が軸受部と係合して軸部の中心を通って上下に延びる嵌合軸を中心として互いに回転可
能に係合することにより、ベース部材に対して第1開閉部材が嵌合軸を中心として揺動開
閉自在にヒンジ接続されるように構成されている。さらに、上側ピン部材を上側ピン受容
穴に下方から受容してこれと回転自在に係合するとともに、下側ピン部材を下側ピン受容
穴に下方から受容してこれと回転自在に係合することにより、第1開閉部材に対して第2
開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されているので、ヒンジ機構の構
成が簡単となる。
【0012】
また、このように、第1開閉部材に対して第2開閉部材が嵌合軸を中心として揺動開閉
自在にヒンジ接続された状態において生じる上側ピン部材の支持上面と上側ピン受容穴の
下面との上下方向間隙が、下側ピン部材と下側ピン受容穴との上下方向係合量より小さく
なるように構成されているので、第2開閉部材(実施形態におけるガラス扉5)を持ち上
げたとしても、上側ピン部材と上側ピン受容穴との係合は無論のこと、下側ピン部材と下
側ピン受容穴との係合が外れることがなく、不正操作を確実に防止できるという効果が得
られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るヒンジ機構を備えた遊技機の一例として示すパチンコ機の正面図である。
【図2】外枠に対して前枠(遊技機本体)を開放した状態を示す上記パチンコ機の正面図(遊技機本体の背面図)である。
【図3】枠上部ヒンジの概要を示す分解斜視図である。
【図4】枠下部ヒンジ機構の概要を示す分解斜視図である。
【図5】枠上部ヒンジ機構の平面図である。
【図6】枠上部ヒンジ機構の正面図である。
【図7】図6中のVII矢視方向の平断面図である。
【図8】前枠を開放した状態における図7と同様位置方向(VII矢視方向)の平断面図である。
【図9】図6中のIX矢視方向の側断面図である。
【図10】図9と同様位置方向(IX矢視方向)の枠下部ヒンジ機構の側断面図である。
【図11】枠上部ヒンジ機構の係合過程を説明するための説明図であり、このうち(a)図は係合初期、(b)図は係合後期における外枠側ヒンジ金具と前枠側ヒンジ金具の相対関係を示す図面(図7と同様高さ位置での平断面図)である。
【図12】図1中に付記するXII−XII矢視方向の側断面図であり、扉下部ヒンジ機構の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明を備え
た遊技機の代表例としてパチンコ機PMを図1および図2に示しており、まず、これらの
図面を参照しながらパチンコ機PMの全体構成について要約説明する。ここで、図1はパ
チンコ機PMの正面図、図2は外枠に対して前枠(遊技機本体)を開放した状態を示すパ
チンコ機PMの正面図(遊技機本体の背面図)である。
【0015】
パチンコ機PMは、外郭方形枠サイズに構成されて縦向きの固定保持枠をなす外枠1の
開口前面に、これに合わせた方形枠サイズに構成されて開閉搭載用の前枠2が互いの正面
左側に設けられた上下一対の枠ヒンジ機構WHを利用して前方に横開き開閉および着脱が
可能に取り付けられ、正面右側に設けられたダブル錠と称される施錠装置4を利用して常
には外枠1と係合連結された閉鎖状態に保持される。
【0016】
前枠2の前面側上部には、前枠2の上部前面域に合わせた方形状のガラス扉5が正面左
側に設けられた上下一対の扉ヒンジ機構THを利用して前方に横開き開閉および着脱可能
に組付けられ、正面右側に設けられた施錠装置4により前枠2の前面上部を覆う閉鎖状態
に保持される。
【0017】
前枠2の前面側下部には、前枠2の下部前面域に合わせた球皿ユニット6が正面左側に
設けられた球皿ヒンジ機構を利用して横開き開閉および着脱可能に組付けられ、施錠装置
4に付帯して構成されたロック機構により前枠2の前面下部を覆う閉鎖状態に保持される
。球皿ユニット6の下側には、球皿ユニット6に貯留しきれない遊技球を貯留するための
下球皿7、及び遊技球の発射操作を行う発射ハンドル8が取り付けられている。
【0018】
ガラス扉5の背後には、遊技盤10の外形寸法よりも幾分大きめの枠形状に形成された
収容枠2aが設けられており、ここに、所定のゲージ設定で構成された遊技盤10が着脱
可能に収容保持され、常には閉鎖保持されるガラス扉5を通して正面の遊技領域PAを遊
技者に臨ませている。
【0019】
前枠2の裏面側には、遊技球を貯留する球貯留タンク31、タンクレール32、球払出
装置33、球払出通路34などの球処理機構を有する上部裏セット盤30aと、電源基板
36や球払出制御基板37などの回路基板を着脱可能に装備する下部裏セット盤30bと
が、それぞれ後方に横開き開閉可能にヒンジ接続されるとともに、各部に配設された回路
基盤や電子部品、装飾ランプ等の各機器が図示省略するコネクタケーブルで接続されてパ
チンコ機が作動可能に構成される。
【0020】
パチンコ機PMは、前枠2、ガラス扉5および球皿ユニット6がともに閉止され施錠さ
れた状態で遊技に供され、球皿ユニット6の上球皿に遊技球を貯留させて発射ハンドル8
を回動操作することにより遊技が開始される。発射ハンドル8が回動操作されると、上球
皿に貯留された遊技球が打球発射装置により1球ずつ遊技領域PAに打ち出され、以降パ
チンコゲームが展開される。
【0021】
このように概要構成されるパチンコ機PMにあって、前枠2が上下一対の枠ヒンジ機構
WHにより外枠1に対して横開き開閉および着脱可能に取り付けられ、また、ガラス扉5
が扉ヒンジ機構THにより前枠2に対して横開き開閉および着脱可能に取り付けられてい
る。以下、これらのヒンジ機構について図面を追加参照しながら詳細に説明する。なお、
以下では、上下一対の枠ヒンジ機構WHのうち、上部に設けられたヒンジ機構を枠上部ヒ
ンジ機構WH1、下部に設けられたヒンジ機構を枠下部ヒンジ機構WH2という。また、
上下一対の扉ヒンジ機構THのうち、上部に設けられたヒンジ機構を扉上部ヒンジ機構T
H1、下部に設けられたヒンジ機構を扉下部ヒンジ機構TH2という。
【0022】
まず、図3〜図10の各図を参照しながら枠ヒンジ機構WHについて説明する。ここで
、図3は枠上部ヒンジ機構WH1の概要を示す分解斜視図、図4は枠下部ヒンジ機構WH
2の概要を示す分解斜視図、図5及び図6は枠上部ヒンジ機構WH1の平面図及び正面図
、図7は図6中のVII矢視方向の平断面図、図8は前枠2を開放した状態における図7と
同様位置方向(VII矢視方向)の平断面図、図9は図6中のIX矢視方向の側断面図、図1
0は図9と同様位置方向(IX矢視方向)の枠下部ヒンジ機構WH2の側断面図である。
【0023】
枠上部ヒンジ機構WH1は、外枠1の左上端角部に固定された外枠側ヒンジ金具110
と、前枠2の左上端角部に固定された前枠側ヒンジ金具120とから構成される。
【0024】
前枠側ヒンジ金具120は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部121と、このヒ
ンジプレート部121の先端部に上方に突出してカシメ固着された軸部123とを主体と
して構成される。ヒンジプレート部121の後端側には下向きに折り曲げられて前枠2の
後面に沿って下方に延びる固定辺部122が形成され、ここに前枠側の位置決めピンと嵌
合して前枠側ヒンジ金具120を位置決めするピン孔や、金具固定ネジを挿通させるネジ
挿通孔が形成されている。
【0025】
軸部123は、ヒンジプレート部121から上方に突出する円柱状をなし、その上端に
前枠2の閉鎖姿勢において斜め前後方向に延びるスリ割り状の割り溝125が形成されて
いる(図3、図7等を参照)。具体的には、軸部123は、例えば直径がφ12〜20mm
程度、ヒンジプレート部121上面からの突出高さが6〜12mm程度の円柱状をなし、上
端に幅4〜6mm程度、深さ3〜5mm程度の割り溝125が軸部上端に形成されている。
【0026】
割り溝125の前端側では、左右の溝壁面のうち一方(図7に示す前枠2の閉鎖姿勢に
おいて前側に位置する溝壁面)が溝幅外方に開き、外枠側ヒンジ金具110との係合を案
内する導入壁面127が形成されている。また軸部123の下部には、前枠側ヒンジ金具
120の下面側に開口して、後述する扉ヒンジ機構THのヒンジピン323を受容するピ
ン受容穴128が形成されている。
【0027】
前枠側ヒンジ金具120は、例えば板厚2.3〜3.2mm程度の鋼板を打ち抜き及び曲
げ成形して形成したヒンジプレート部121に、切削加工により上記形状に形成された軸
部123をカシメ固着することで一体に形成され、必要に応じてクロメート処理等の表面
処理を施して構成される。そして固定辺部122に形成されたピン孔を前枠2の裏面側上
端部に形成された位置決めピンに嵌合させることで前枠側ヒンジ金具120が位置決めさ
れ、固定辺部122のピン挿通孔を通して金具固定ネジを締め込むことによりネジ締結さ
れて、前枠側ヒンジ金具120が前枠2の左上端角部に位置決め固定される(図2を併せ
て参照)。
【0028】
前枠側ヒンジ金具120が前枠2に取り付けられると、ヒンジプレート部121が前枠
2の上面に沿って前後に延びるとともに、その前端部が前枠2から幾分前方に突出して配
設され、軸部123に形成された割り溝125が前枠2の前後面に対して斜め前後方向に
延びて配設される。本実施例では、この割り溝125の形成角度を前枠2の前後面に対し
て30度の角度位置に設定した構成例を示している(図7及び図8を参照)。
【0029】
外枠側ヒンジ金具110は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部111と、このヒ
ンジプレート部の前端部に設けられ軸部123の外周面と係合する軸受部113、軸受部
113と繋がって後方に延び後部が開放されたガイド部114、軸受部113の後方に位
置してヒンジプレート部111に設けられ割り溝125の溝幅に合わせた外幅寸法で下向
きに突出する保持突起115、などを主体として形成される。
【0030】
軸受部113は、ヒンジプレート部111の前端側の周辺が下向きに曲げ起こされて、
下方に開く半円筒状に形成されており、円筒内周面の径が軸部123の外径よりもわずか
に大きめに設定されている。軸受部113を形成する円筒状壁面に繋がって後方に延びる
左右の側壁面のうち、右側の側壁面は軸部123の直径よりも幾分長く延びたのち後方部
分が切り欠かれて右側方に開く開放部116が形成される一方、左側の側壁面は切り欠か
れることなく左斜め後方に延び、軸部123を軸受部113に案内するガイド壁117が
形成されている。
【0031】
ガイド部114は、上記右側壁面の後方に形成された開放部116と、左側方を覆うガ
イド壁117とによってヒンジプレート部111の下面側に形成され、開放部116から
導入した軸部123を軸受部113に案内するように構成される。
【0032】
保持突起115は、軸受部113の後方に位置してヒンジプレート部111の下面側に
突出して設けられている。各図には、ヒンジプレート部111の一部を下向きに切り起こ
して舌片状の保持突起を形成した構成例を示しており、保持突起115の左右方向の中心
位置が軸受部113の軸心を通って前後に延びる軸線上に設定され、軸受部113の円筒
状壁面の内面と保持突起115の前面との対面間隔が、軸部123の直径よりもわずかに
大きめの間隔を隔てて設定されるとともに、保持突起115の左右方向の幅が割り溝12
5の溝幅に合わせて溝幅よりもわずかに小さめに設定され、保持突起115の突出高さが
割り溝125の溝底面に接触しない程度の高さに設定されている。
【0033】
外枠側ヒンジ金具110は、例えば板厚2.3〜3.2mm程度の鋼板をプレス成形して
形成され、必要に応じてクロメート処理等の表面処理を施して構成される。ヒンジプレー
ト部111の後部には、外枠1の左上端角部に合わせて直角に曲げ成形された固定辺部が
設けられており、この固定辺部を外枠1の左上端角部に突き当て配設することで外枠側ヒ
ンジ金具110が位置決めされ、上枠杆及び左枠杆にリベット締結することで外枠1の左
上端角部に固定される。
【0034】
こうして取り付けられた外枠側ヒンジ金具110と前枠側ヒンジ金具120とがヒンジ
接続されると、図8に示すように、前枠2を前方に60度開放した角度位置(以下、便宜
的に「着脱角度位置」という)において、前枠2とともに平面視時計廻りに回動した割り
溝125の方向が前後方向となり、軸部123の外周面に摺接していた保持突起115が
割り溝125の後方に位置整合して、軸部123と保持突起115との係合が解除される
。このため、この着脱角度位置で前枠2を後方に傾動させたときに、割り溝125が保持
突起115を受容して軸部123が軸受部113とガイド部114との間を移動し、外枠
側ヒンジ金具110と前枠側ヒンジ金具120との係脱を行うことができる。また図8に
示す前枠2の着脱角度位置から、前枠2を他の角度位置(閉鎖方向または開放方向)に揺
動させた状態では、保持突起115が軸部123の外周面と係合して軸部123を軸受部
113内に保持させ、前枠2が軸部123と軸受部113との嵌合軸CLを中心として揺
動開閉可能に支持される。
【0035】
なお、上記実施例では、保持突起115をヒンジプレート部111に切り起こし成形で
形成した例を示したが、例えば、割り溝125の溝幅に合わせた外径のピン状の突起部材
をヒンジプレート部111に下向きにカシメ固着し、あるいは割り溝125の溝幅に合わ
せた外面幅で下向きに突出する舌片状ないしブロック状の突起部材をヒンジプレート部1
11に溶着して保持突起を構成しても良い。
【0036】
一方、枠下部ヒンジ機構WH2は、外枠1の左側縁下部に固定された外枠側ヒンジ金具
210と、前枠2の左下端角部に固定された前枠側ヒンジ金具220とから構成される。
【0037】
外枠側ヒンジ金具210は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部211と、このヒ
ンジプレート部211の先端部に上方に突出して成型された円錐状の係合凸部213とを
主体として構成される。ヒンジプレート部211の後部は後方に延出されたうえ下向きに
屈曲され、外枠1における幕板の背面及び左枠杆の内面に沿って延びる固定辺部が形成さ
れている。
【0038】
係合凸部213は、例えば係合凸部の最大外径(ヒンジプレート部211上面位置での
外径)がφ15〜25mm程度、円錐面の傾斜角度が40〜60度程度に設定される。また
係合凸部213の形成位置は、この外枠側ヒンジ金具210を外枠1に取り付けたときに
、係合凸部213の中心軸線が、前述した枠上部ヒンジ機構WH1における嵌合軸CLの
軸線上に配設されるように設定されている。
【0039】
前枠側ヒンジ金具220は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部221と、このヒ
ンジプレート部221の先端部に下方に開いて成型された円錐状の係合凹部223とを主
体として構成される。係合凹部223は円錐状の内周面の傾斜角度が係合凸部213の外
周面の傾斜角度と同一角度に設定される一方、係合凹部223の最大内径(ヒンジプレー
ト部221下面位置での内径)が係合凸部の最大外径(ヒンジプレート部211上面位置
での外径)よりも幾分小さめに設定されている。
【0040】
このため、係合凸部213と係合凹部223とを係合させたときに、係合凸部213の
円錐外周面と係合凹部223の円錐内周面とが相互に面接触して共通の軸心まわりに相対
摺動可能に連結されるとともに、上下のヒンジプレート部211,221の間に所定間隔
が形成され、ヒンジプレート同士の直接接触による摺動抵抗が生じないようになっている
(図10を参照)。
【0041】
ヒンジプレート部221の後部は後方に延出されたうえ上向きに折り曲げられて前枠2
の後面に沿って上方に延びる固定辺部222が形成され、ここに前枠側の位置決めピンと
嵌合して前枠側ヒンジ金具220を位置決めするピン孔や、金具固定ネジを挿通させるネ
ジ挿通孔が形成されている。
【0042】
外枠側ヒンジ金具210及び前枠側ヒンジ金具220は、例えば板厚2.3〜3.2mm
程度の鋼板を、それぞれ所定の展開形状に打ち抜くとともに、ヒンジプレート部211,
221の各先端側に、それぞれ係合凸部213及び係合凹部223をエンボス成型し、ヒ
ンジプレート部の後部に固定辺部を曲げ成形することで各一体に形成され、必要に応じて
クロメート処理等の表面処理を施して構成される。
【0043】
そして、外枠側ヒンジ金具210は、固定辺部を幕板と左枠杆とが交わる外枠1の左下
内周角部に突き当てて配設することで位置決めされ、左枠杆側の固定辺部をリベット締結
し幕板側の固定辺部をネジ締結することで外枠側ヒンジ金具210が外枠1の左下側角部
に位置決め固定される。また前枠側ヒンジ金具220は、固定辺部222に形成されたピ
ン孔を前枠2の裏面側下端部に形成された位置決めピンに嵌合させることで位置決めされ
、固定辺部のピン挿通孔を通して金具固定ネジを締め込むことによりネジ締結されて、前
枠側ヒンジ金具220が前枠2の左下端角部に位置決め固定される(図2を参照)。
【0044】
こうして外枠側ヒンジ金具210及び前枠側ヒンジ金具220がそれぞれ取り付けられ
ると、ともに円錐状に成型された係合凸部213と係合凹部223との嵌合を利用して枠
下部ヒンジ機構WH2が嵌脱自在に構成され、嵌合状態では相互に係合する円錐面の作用
により前枠側ヒンジ金具220が係合凸部の中心軸まわりに回転摺動自在に配設され、こ
れにより前枠2が外枠1に対して揺動開閉自在にヒンジ接続される。なお、係合凸部及び
係合凹部は、相互に係合する円錐面を有していれば良く、例えば上端面が閉鎖した載頭円
錐形状(断面視ハット状)であってもよい。
【0045】
さて次に、以上のように構成される枠上部ヒンジ機構WH1及び枠下部ヒンジ機構WH
2からなる枠ヒンジ機構WHの作用について説明する。
【0046】
まず、外枠1と前枠2とが分離された状態から上下のヒンジ機構WH1,WH2をヒン
ジ連結させるには、作業者は前枠2の左右側縁を把持して持ち上げ支持し、枠下部ヒンジ
機構WH2に着目する。そして前枠2を幾分開いた角度姿勢で外枠側ヒンジ金具の係合凸
部213に前枠側ヒンジ金具の係合凹部223を概略位置合わせし、係合凹部223を係
合凸部213に覆い被せるようにして、外枠側ヒンジ金具210に前枠側ヒンジ金具22
0を嵌合接続させる。
【0047】
ここで、枠下部ヒンジ機構WH2では、嵌合接続すべき係合凸部213と係合凹部22
3とがともに円錐状に形成されている。このため、係合凸部213と係合凹部213との
位置合わせは、両者の円錐面が部分的に係合する程度の概略的な位置合わせで良く、あと
は円錐外周面と円錐内周面との案内作用により自動調心されて、相互の軸心が一致する方
向に嵌合する。従って、前枠2に多くの遊技部品が組付けられて重量物となった遊技機本
体を外枠1に連結させる場合のように、荷重を支持しながら微妙な位置合わせを行い難い
ような場合であっても、外枠側ヒンジ金具210と前枠側ヒンジ金具220とを簡単にヒ
ンジ連結させることができる。
【0048】
こうして外枠側ヒンジ金具210と前枠側ヒンジ金具220とが係合されると、遊技機
本体の荷重が外枠側ヒンジ金具210に支持され、この状態で前枠2を前後左右に傾動さ
せることができるようになる。そこで、今度は枠上部ヒンジ機構WH1に着目し、枠下部
ヒンジ金具WH2を支点として前枠2を傾動させ、前枠側ヒンジ金具120の軸部123
を外枠側ヒンジ金具110の開放部116からガイド部114に進入させる。
【0049】
次いで図11(a)(b)に枠上部ヒンジ機構WH1の係合過程を示すように、ガイド部1
14に進入させた軸部123の外周面をガイド壁117に当接させ、前枠2を前方に15
〜60度程度開いた角度姿勢で、軸部123をガイド壁117に沿って斜め前方に移動さ
せる。すると軸部123の上端に形成された割り溝125が軸部とともにガイド壁117
に沿って斜め前方に移動し、溝の前端側に保持突起115を受容する(図11(a)を参照
)。ここで、割り溝125の前端側には、ガイド壁117側の溝壁面が溝幅の広がる方向
に開いて導入壁面127が形成されており、(a)図からも明らかなように、前枠2の開放
角度について厳密な角度位置の調整を要することなく、広い角度範囲で保持突起115を
受容し、受容した保持突起を割り溝125の中央に向けて案内するようになっている。
【0050】
保持突起115が導入壁面127の後部(割り溝125の狭小部)まで進入したら、前
枠の開き角を前述した着脱角度位置に合わせ、この角度位置で前枠2を前方に傾動させる
。すると、図11(b)に示すように、割り溝125が保持突起115を受容しながら前方
に移動するとともに、軸部123が左右の側壁に案内されながら前方に移動し、図8に示
したように、軸部123が軸受部113内に嵌入する。
【0051】
ここで、前枠2を前方に開いた状態では、遊技機本体の荷重が、枠下部ヒンジ機構WH
2を支点として前枠2を前方に傾動させる方向、すなわち軸部213が軸受部113の円
筒支持面に押し付けられる方向にモーメントとして作用する。このため、軸部123が軸
受部113内に嵌入すると、モーメントに抗して前枠2を後方に傾動させない限り、軸部
213と軸受部113との嵌合状態が保持される。
【0052】
そして、軸部123と軸受部とが嵌合した状態で、前枠2を着脱角度位置から他の角度
位置(閉鎖方向または開放方向)に揺動させると、軸部123の前方の外周面が軸受部1
13の円筒状の内周面と係合し、軸部123の後方の外周面が保持突起115の前面と係
合して軸部123を軸受部113内に保持させ、外枠側ヒンジ金具110と前枠側ヒンジ
金具120のヒンジ接続が外れないように規制する(図7を参照)。嵌合状態における軸
部123の上面とヒンジプレート部111の下面との隙間は、枠下部ヒンジ機構WH2に
おける係合凸部213と係合凹部223の嵌合高さよりも小さく設定されており、上下の
枠ヒンジ機構のヒンジ接続が外れないようになっている(図9及び図10を参照)。
【0053】
こうして上下の枠ヒンジ機構WH1,WH2をヒンジ接続させた状態では、枠下部ヒン
ジ機構WH2の円錐状の係合凸部213と係合凹部223との嵌合により前枠2を含む遊
技機本体の荷重が支持され、枠上部ヒンジ機構WH1の軸受部113と軸部123との嵌
合及び保持突起115の存在により前後左右方向への傾動が規制されて、前枠2が上下の
枠ヒンジ機構WH1,WH2の共通した嵌合軸CL廻りに回動自在に支持される。
【0054】
一方、枠ヒンジ機構WHのヒンジ接続を解除して前枠2を外枠1から分離させる場合に
は、上記連結時と逆の手順を行えば良い。すなわち、前枠2を開放して開放角度位置に設
定し(図8)、前枠2の上部を後方に傾動させて軸部123をガイド部114の後方に移
動させ(図11(b))、保持突起115と割り溝125との係合を解除させた状態で枠下
部ヒンジ機構WH2を支点として前枠2を右傾させ、軸部123を開放部116から導出
して外枠側ヒンジ金具110と前枠側ヒンジ金具120との係合を解除する。そして前枠
2を斜め上方に引き上げて係合凸部213から係合凹部223を浮き上がらせ、枠下部ヒ
ンジ機構の外枠側ヒンジ金具210と前枠側ヒンジ金具120との係合を解除する。これ
により上下の枠ヒンジ機構WH1,WH2のヒンジ接続が解除され、外枠1と前枠2とが
分離される。
【0055】
従って、以上説明したような枠上部ヒンジ機構WH1によれば、軸部123の上端に割
り溝125を形成し、外枠側ヒンジ金具に軸受部113と保持突起115を形成する簡明
な構成で前枠2を容易に着脱でき、かつ前枠2を閉止させた状態ではヒンジ接続を強固に
保持させるヒンジ機構を提供することができる。また、外枠側ヒンジ金具のヒンジプレー
ト部111を下向きに切り起こして保持突起115を形成することにより、外枠側ヒンジ
金具110のプレス成型時に保持突起115を一体的に形成することができ、部品点数を
増加させることなく、極めて簡明な構成で上記効果を備えたヒンジ機構を得ることができ
る。
【0056】
また枠下部ヒンジ機構WH2によれば、係合凸部213と係合凹部223とが、ともに
円錐状に形成されているため、たとえ前枠2が大型かつ重量物であり微妙な位置合わせが
行い難いような場合であっても、円錐外周面と円錐内周面との案内作用及び自動調心作用
を利用して、外枠側ヒンジ金具210と前枠側ヒンジ金具220とを簡単にヒンジ接続さ
せることができる。また、従来のヒンジ機構のように軸ピンにヒンジ金具の端部をぶつけ
て曲げてしまったり、軸ピンに服や体を引っ掛けて傷つけたり遊技機を転倒させてしまう
ようなこともなく、軸ピンの突出に起因する問題を抑制することができる。さらに、係合
凸部213及び係合凹部223が各ヒンジプレート部に成型されているため、ヒンジ金具
のプレス成型時に一体的に形成することができ、部品点数を削減し、極めて簡明な構成で
上記効果を備えたヒンジ機構を提供することができる。
【0057】
さて次に、前枠2に対してガラス扉5を開閉自在に支持する扉ヒンジ機構THについて
、既に参照した図3、図6〜図9と、図12とを参照しながら説明する。ガラス扉ヒンジ
機構THは、扉上部ヒンジ機構TH1と扉下部ヒンジ機構TH2とからなり、ガラス扉5
の左端上下に設けられたいる。なお、図12は、図1中に付記するXII−XII矢視方向の断
面図であり、扉下部ヒンジ機構TH2の側断面図である。
【0058】
扉下部ヒンジ機構TH2は、前枠2の左側縁中間部に固定された前枠側ヒンジ金具41
0と、ガラス扉5の左下端角部に固定された扉側ヒンジ金具420とから構成される。
【0059】
前枠側ヒンジ金具410は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部411と、このヒ
ンジプレート411の先端部に上方に突出してカシメ固着されたヒンジピン413とを主
体として構成される。ヒンジプレート部411の後部は下向きに屈曲されて前枠2の前面
に沿って延びる固定辺部412が形成され、ここに前枠側の位置決めピンと嵌合して前枠
側ヒンジ金具410を位置決めするピン孔や、金具固定ネジを挿通させるネジ挿通孔が形
成されている。
【0060】
ヒンジピン413の配設位置は、固定辺部412を前枠前面に位置決め固定したときに
、ヒンジピン413の中心軸線が、前述した枠ヒンジ機構WHの嵌合軸CLと同一軸上に
なるように設定されている。ヒンジピン413の上端部は先細テーパ状に面取りされて扉
側ヒンジ金具のピン受容孔423との嵌合を容易化するとともに、ヒンジピン413の基
端部には扉側ヒンジ金具のヒンジプレート部421を支持する円環状の支持面が形成され
ており、ガラス扉5を開閉する際の摺動抵抗を低減した構成になっている。
【0061】
前枠側ヒンジ金具410は、例えば板厚1.6〜2.3mm程度の鋼板を、所定の展開形
状に打ち抜き固定辺部を曲げ成形するとともに、ヒンジプレート部411の先端側に直径
φ3〜5mm程度、突出高さ5〜8mm程度のヒンジピン413をカシメ固着し、必要に応じ
てクロメート処理等の表面処理を施して構成される。なお、本実施例では、前枠側ヒンジ
金具410が球皿ユニット6の上部ヒンジ金具を兼ねた構成となっており、ヒンジピンを
ヒンジプレート部411の上下に突出させた形態になっている。
【0062】
扉側ヒンジ金具420は、前後に延びる平板状のヒンジプレート部421と、このヒン
ジプレート421の先端部に、ヒンジピン413の軸径よりもわずかに大きめの内径で穿
設されたピン受容孔423とを主体として構成される。ヒンジプレート部421の後部は
上向きに折り曲げられてガラス扉5の背面に沿って上方に延び、ガラス窓の周囲を囲む窓
枠フレームの左枠杆部を形成する。左枠杆部にはガラス扉背面の位置決めピンと嵌合して
扉側ヒンジ金具420を位置決めするピン孔や、金具固定ネジを挿通させるネジ挿通孔が
形成されている。
【0063】
この左枠杆部の上端に扉上部ヒンジ機構TH1の扉側ヒンジ金具320が設けられてい
る。扉上部ヒンジ機構TH1は、前述した前枠側ヒンジ金具120と、ガラス扉5の左上
端角部に設けられた扉側ヒンジ金具320とから構成される。すなわち、パチンコ機PM
では、前枠側ヒンジ金具120が、枠上部ヒンジ機構のYH1の前枠側ヒンジ金具と、扉
上部ヒンジ機構THの前枠側ヒンジ金具との両方の機能を併せ持った構成になっている。
【0064】
扉側ヒンジ金具320は、上下平行に前方に延びるピン支持部321と、このピン支持
部321に上下に摺動変位可能に配設されたピン部材323、詳細図示省略するがピン部
材323を上方に付勢するコイルバネ、ピン部材323に嵌着されて上方に付勢されたピ
ン部材323の上端位置を規定するEリング325などから構成される。
【0065】
ピン支持部321は、前枠側ヒンジ金具120におけるヒンジプレート部121の直下
に位置する前記左枠杆部の上端部が前方にコの字状に折り曲げられて形成されており、上
下の支持辺には、扉下部ヒンジ機構TH2のピン受容孔423と同軸上に位置して、ヒン
ジピン323の軸径よりもわずかに大きめの内径のピン支持孔が穿設されている。ピン部
材323は上下に延びる係合軸部と、この係合軸部の下端がL字状に折り曲げられて形成
された操作軸部とからなり、係合軸部の上部にはEリング325を受容するリング溝が形
成されている。ピン部材323は、例えば直径φ3〜5mm程度のアルミ合金やステンレス
等の金属線材を加工成形して構成される。
【0066】
ピン部材323を上方に付勢するコイルバネは、例えばコの字状のピン支持部321の
内側に配設されてEリング325を上方に付勢する圧縮コイルバネやピン支持部321と
ヒンジピンの操作軸部との間に張り渡されて操作軸部を上方に付勢する引っ張りコイルバ
ネなど公知の付勢手段を用いることができる。これによりピン支持部321に上下に摺動
自在に支持されたピン部材323が常時上方に付勢され、Eリング325がピン支持部3
21の下面に当接する上動端部位置に配設される。なお、ピン支持部321にはEリング
325の下動端部位置を規定してピン部材323の抜け落ちを防止する下動規制片が設け
られている(不図示)。
【0067】
扉側ヒンジ金具320は、ピン部材323の操作軸部を迂回してガラス扉5の背面に沿
って下方に延び、前述した窓枠フレームの左枠杆部を形成する。すなわち、上下の扉側ヒ
ンジ金具320,420が窓枠フレームの左枠杆部に設けられ、窓枠フレームをガラス扉
5の背面側に突出成型された位置決めピンに嵌合させてネジ固定することで、上下の扉側
ヒンジ金具がガラス扉の左縁上下に配設されるようになっている。
【0068】
一方、前枠側ヒンジ金具120には、ピン部材323を受容するピン受容穴128が形
成されている。ピン受容穴128は、軸部123の軸心(すなわち嵌合軸CL上)に位置
し前枠側ヒンジ金具120の下面側に開口して形成されており、その内径はピン部材32
3の外径よりも幾分大きく、穴深さは上動端部位置にあるピン部材323の上端面の配設
位置よりも幾分深めに設定されている。
【0069】
このように構成される上下の扉ヒンジ機構TH1,TH2をヒンジ連結させるには、ガ
ラス扉5の左右側縁を把持して持ち上げ支持し、まず扉下部ヒンジ機構TH2に着目する
。そしてガラス扉5を幾分開いた角度姿勢で、扉側ヒンジ金具のピン受容孔423を前枠
側ヒンジ金具のヒンジピン413に位置合わせして嵌合させ、前枠側ヒンジ金具410と
扉側ヒンジ金具420とをヒンジ接続させる。
【0070】
扉下部ヒンジ機構TH2が連結されたら、今度は扉上部ヒンジ機構TH1に着目し、ピ
ン部材323の操作軸部に指を掛けて押し下げ、係合軸部がピン支持部321の上面から
大きく突出しない下動端部位置まで下動させる。次いでガラス扉5の上端側を傾動させて
扉側ヒンジ金具320を前枠側ヒンジ金具120の直下に位置させ、操作軸部への下向き
の操作力を解放する。そしてピン部材323の係合軸部とピン受容穴128とを位置合わ
せしてピン部材323の先端部をピン受容穴128に嵌入させる。
【0071】
ここで、ピン受容穴128が軸部123の軸心に形成されているため、ピン受容穴12
8の穴位置を外観から容易に想定し得るとともに、ピン部材323の先端とピン受容穴1
28の開口縁部にはともに円錐状の案内面が形成されており、ピン部材323を上方に付
勢するコイルバネの作用と相まって、ピン部材323とピン受容穴128とを容易に嵌合
させ得る構成になっている。
【0072】
そして、ピン部材323の先端部がピン受容穴128に嵌入すると、ピン部材323は
コイルバネのバネ力により上方に付勢されてEリング325がピン支持部321の下面に
当接した上動端部位置に配設され、ピン部材323の先端部がピン受容穴128の内部に
所定の嵌合深さを持って収容保持される。嵌合状態におけるピン支持部321の上面とヒ
ンジプレート部121の下面との隙間は、扉下部ヒンジ機構TH2におけるヒンジピン4
13の突出高さよりも小さく設定されており、ガラス扉5を上方に持ち上げても上下の扉
ヒンジ機構の接続が外れないようになっている(図9及び図12を参照)。
【0073】
こうして上下の扉ヒンジ機構TH1,TH2がヒンジ接続された状態では、枠下部ヒン
ジ機構TH2のヒンジピン413とピン受容孔423との嵌合によりガラス扉5の荷重が
支持され、扉上部ヒンジ機構TH1のピン部材323とピン受容穴128との嵌合により
前後左右方向への傾動が規制されて、ガラス扉5が上下の扉ヒンジ機構TH1,TH2の
嵌合軸でありかつ前述した上下の枠ヒンジ機構WH1,WH2の嵌合軸でもある共通した
嵌合軸CL廻りに回動自在に支持される。なお、扉ヒンジ機構THのヒンジ接続を解除し
てガラス扉5を前枠2から取り外す場合には、上記連結時と逆の手順を行えば良く、この
操作は当業者であれば容易に理解することができるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
従って、以上説明したような扉ヒンジ機構THによれば、扉側ヒンジ金具320と前枠
側ヒンジ金具120とをヒンジ接続させたときに、ピン部材323の先端部が前枠側ヒン
ジ金具の軸部123の内部に収容され、ピン部材323の頭部が露出して配設されるよう
なことがない。従って扉ヒンジ機構THに対する不正行為を効果的に抑制することができ
る。またピン部材323の先端部が軸部123の内部に収容されるため、枠ヒンジ機構W
Hを連結・分離させる際に障害になるようなことがなく、良好な作業性を確保することが
できる。さらに、ピン受容穴128が前枠側ヒンジ金具120の軸部を利用して形成され
ているため、扉ヒンジ機構THを簡明且つ低廉に構成することができる。
【符号の説明】
【0075】
CL 嵌合軸
PM パチンコ機
TH 扉ヒンジ機構
TH1 扉上部ヒンジ機構
TH2 扉下部ヒンジ機構
WH 枠ヒンジ機構
WH1 枠上部ヒンジ機構
WH2 枠下部ヒンジ機構
1 外枠
2 前枠
5 ガラス扉
110 外枠側ヒンジ金具
111 ヒンジプレート部
113 軸受部
114 ガイド部
115 保持突起
120 前枠側ヒンジ金具
121 ヒンジプレート部
123 軸部
125 割り溝
127 導入壁面
128 ピン受容穴
210 外枠側ヒンジ金具
211 ヒンジプレート部
213 係合凸部
220 前枠側ヒンジ金具
221 ヒンジプレート部
223 係合凹部
320 扉側ヒンジ金具
323 ピン部材
410 前枠側ヒンジ金具
411 ヒンジプレート部
413 ヒンジピン
420 扉側ヒンジ金具
421 ヒンジプレート部
423 ピン受容孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材の前面に設けられ、左右いずれか一方の側部に設けられ
た上下一対の第1ヒンジ機構により前記ベース部材の前面に揺動開閉自在にヒンジ接続さ
れた第1開閉部材と、前記第1開閉部材の前面に設けられ、前記第1ヒンジ機構と同一側
の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により前記第1開閉部材に対して揺動開閉
自在にヒンジ接続された第2開閉部材とを備えてなる遊技機のヒンジ機構であって、
前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構は、前記第1開
閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部および前記開閉側板状部に上下方向
に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材と、前記ベース部材の側部
に固定されて前後に延びるベース側板状部および前記ベース側板状部に設けられ前記軸部
と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材とからなり、
前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる嵌合軸を中心とし
て互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開閉部材が前
記嵌合軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第2開
閉部材の側部上部に上下にスライド変位可能に軸支され上方に付勢された上側ピン部材と
、前記開閉側ヒンジ部材の下面に形成されるとともに前記上側ピン部材を受容してこれと
回転可能に係合可能な上側ピン受容穴とからなり、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの下方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第1開
閉部材の側部下部に固定されて上方に突出する下側ピン部材と、前記第2開閉部材の側部
下部に下面側に開口して形成された下側ピン受容穴とからなり、
前記上側ピン部材を前記上側ピン受容穴に下方から受容してこれと回転自在に係合する
とともに、前記下側ピン部材を前記下側ピン受容穴に下方から受容してこれと回転自在に
係合することにより、前記第1開閉部材に対して前記第2開閉部材が揺動開閉自在にヒン
ジ接続されるように構成されており、この状態において生じる前記上側ピン部材の支持上
面と前記上側ピン受容穴の下面との上下方向間隙が、前記下側ピン部材と前記下側ピン受
容穴との上下方向係合量より小さいことを特徴とする遊技機のヒンジ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−189152(P2011−189152A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110841(P2011−110841)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【分割の表示】特願2006−4616(P2006−4616)の分割
【原出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390031783)サミー株式会社 (5,279)
【Fターム(参考)】