説明

遊技機用のソレノイドアクチュエータ

【課題】 小型化を図ることが出来るとともに、高い磁力特性を安定して発揮することができる遊技機用のソレノイドアクチュエータを提供する。
【解決手段】 遊技機に内装されて使用される遊技機用ソレノイドアクチュエータ10であって、ボビンの外周面上に巻線を巻いてなる2個の第1及び第2コイル11,12が、同じ極性の磁極26N,26Sが同じ向きで揃うように、並列に配設されており、磁性材料からなるヨーク13が第1及び第2コイル11,12を、各コイルの磁極26N,26S同士を繋ぐように連結しているとともに、第2コイル12の中には、電磁力によって可動するプランジャー16が通されており、第1コイル11の中には、電磁鋼からなる薄板を複数枚積層したうえでプレス加工によって所定形状に成形したコア15が通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機やパチスロ機等といった遊技機において、アタッカーなどの役物、打球発射装置、玉送り装置等として使用される遊技機用のソレノイドアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような遊技機においては、種々の電子部品が搭載されており、このような電子部品の中でもソレノイドは遊技の進行に伴って遊技状態を変化させる等のために多用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−181082号公報
【特許文献2】特開2006−055577号公報
【特許文献3】特開2007−229200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のソレノイドは性能が安定しておらず、例えばパチンコ玉の打球発射装置等のような高出力を要求する部品として使う場合に問題がある。
すなわち、従来のソレノイドは、鉄板や鋼板を切削等することによってコア(鉄芯)を製造しているが、このようなコアは、個々の性能にばらつきがあり、ソレノイドの磁場の大きさにもばらつきが生じてしまう。
また、高出力とするべくソレノイドの磁場を大きくするには、ソレノイドに通電する電流を高くする、あるいは巻線の巻数を増やすことが必要となる。しかし、ソレノイドは、電流を高めるに従い、また巻線の巻数が増すに従い発生する熱も高くなり、熱振動による磁気モーメントのゆらぎまたは反転によって磁束が減少する現象(高温減磁)が発生することでその性能を低下させてしまう。加えて、巻数を増したソレノイドはサイズが大きなものとなるため、狭小な遊技機内部への装着が難しくなる。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、小型化を図ることが出来るとともに、高い磁力特性を安定して発揮することができる遊技機用のソレノイドアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の遊技機用のソレノイドアクチュエータの発明は、遊技機に内装されて使用される遊技機用ソレノイドアクチュエータであって、略筒状に形成されて内部に孔を有するボビンの外周面上に巻線を巻いてなるコイルの複数個が、同じ極性の磁極が同じ向きで揃うように、並列に配設されており、磁性材料からなるヨークが該複数個のコイルを、各コイルの磁極同士を繋ぐように連結しているとともに、複数個のうち何れか1個のコイルにおいてボビンの孔には、電磁力によって可動するプランジャーが通されており、上記プランジャーが通されたコイルを除く他のコイルにおいてボビンの孔には、電磁鋼からなる薄板を複数枚積層したうえでプレス加工によって所定形状に成形したコアが通されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊技機用のソレノイドアクチュエータの発明において、上記複数個のコイルは、相互に直列方式で電気的に接続されており、隣接するもの同士で巻線の巻き方向が反対とされていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の遊技機用のソレノイドアクチュエータの発明において、上記複数個のコイルのうち上記コアが通されるコイルにおいて、上記ボビンには孔として四角孔が形成されており、該四角孔には、四角柱状に形成された上記コアが圧入されるように構成されているとともに、該四角孔の各角部には断面円弧状の拡張孔が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
[作用]
本発明の遊技機用のソレノイドアクチュエータは、複数個のコイルが、同じ極性の磁極が同じ向きに揃えられた、つまり各コイルのN極、S極がそれぞれ同じ向きに揃えられた状態で、並列に配設されており、さらに各コイルの磁極同士が磁性材料からなるヨークで繋げられた構成を有している。このように複数個のコイルが、N極とS極を同じ向きに揃えた状態で、ヨークで繋がれた場合、複数個のコイル全体が一体的にまとまって一つの磁気回路を構成するため、磁束密度が高まり、大きな磁場を発生させることが出来るようになる。従って、通電する電流を高くしたり、巻線の巻数を増やしたりせずとも、大きな磁場を得ることが出来るとともに、コイルからの発熱も抑えることが出来るため、高温減磁の発生を抑えることが出来る。さらにコアは、その材料に、コアを磁化したときに失われる電気エネルギー(鉄損)が非常に小さい電磁鋼が使用されるとともに、切削等によることなくプレス加工で形成されているから、成型による内部応力の変化、形状の変形、切削や研磨による傷付き等を原因とする透磁率の低下を抑えることが出来るため、遊技機用のソレノイドアクチュエータが高い磁力特性を安定して発揮することができるようになる。
また複数個のコイルを相互に直列方式で電気的に接続した場合、例えばコイルが2個であればコイルが1個のものに比べて電気抵抗値が2倍になり、電流値が1/2倍になる等のように、ソレノイドアクチュエータ全体での電気抵抗値が増すことで電流値が低くなる。このため、電流値が高くなることによる発熱を避けることができ、高温減磁による性能低下を抑えることができる。
またプレス加工によってコアを形成する場合、コアの周縁角部にプレス加工による鋭利なバリが形成されてしまう。該バリは、コアのボビンの四角孔への圧入時に四角孔の内周面にダメージを与えたり、四角孔に対してコアを位置ずれさせたりするので、研磨や切削などして除去することが望ましいが、コアは、このような切削や研磨などによって透磁率が低下してしまう可能性が高い。本発明の遊技機用のソレノイドアクチュエータは、ボビンの四角孔の各角部に該バリを収容するための断面円弧状の拡張孔を設けたことにより、該バリを完全に除去せずともよく、コアの透磁率の低下を最小限に抑えることが可能であり、大きな磁場を維持することが出来る。
【0007】
[効果]
本発明によれば、小型化を図ることが出来るとともに、高い磁力特性を安定して発揮することができる遊技機用のソレノイドアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のソレノイドアクチュエータを示す(a)は平面図、(b)は正面図。
【図2】(a)は第1コイルのボビンを示す斜視図、(b)は第1コイルのコアを示す斜視図、(c)は第1コイルを示す正面図。
【図3】(a)は第2コイルのボビンを示す斜視図、(b)は第2コイルを示す正面図。
【図4】第1及び第2コイルをヨークに組み付ける状態を示す分解斜視図。
【図5】ソレノイドアクチュエータの磁気回路形成を示す(a)は作用図、(b)は概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1(a),(b)に示すように、実施形態の遊技機用ソレノイドアクチュエータ10(以下ソレノイド10と略す)は、第1コイル11と第2コイル12の2個のコイルを有している。第1コイル11及び第2コイル12は、2つのヨーク13の間に挟まれるようにして、互いに連結されている。また該2つのヨーク13は、ボルト14a及びナット14bによって接続固定されている。そして、第1コイル11の中にはコア15が通され、第2コイル12の中にはプランジャー16が通されている。
なお、この実施形態のソレノイド10は、遊技機(図示略)の打球発射装置として使用されるものであり、遊技機の打球発射部に内装され、該ソレノイド10から生じた電磁力によってプランジャー16を可動させることにより、該プランジャー16でパチンコ玉(図示略)を弾くように構成されている。
【0010】
上記第1コイル11とコア15の構成について説明する。
該第1コイル11は、第1ボビン21Aと、該第1ボビン21Aの外周面上に巻かれた巻線17とによって構成されている。
図2(a)に示すように、上記第1ボビン21Aは、その材料に絶縁体である合成樹脂が使用されており、筒部22と、該筒部22の両端に形成された2つのフランジ部23と、を有している。上記巻線17は、2つのフランジ部23の間で、筒部22の外周面上に巻き方向が一定になるようにして巻回される。
また該筒部22は、四角筒状に形成されており、その内部は上記コア15を挿通させるための四角孔24Aとされている。該四角孔24Aの各角部には、断面円弧状の拡張孔25が設けられている。
図2(b)に示すように、上記コア15は、電磁鋼からなる薄板15aを複数枚積層したうえでプレス加工することにより、四角柱状に形成されている。
図2(c)に示すように、プレス加工によって形成された上記コア15の側縁部にはバリ15bが形成されている。通常であれば、該バリ15bはコア15を第1ボビン21Aの四角孔24Aに通す際に該四角孔24Aの内周面を傷付けるので切削などして取り除くが、切削などによってコア15の表面が傷付くと透磁率の低下を招いてしまうため、該バリ15bによる該四角孔24Aの内周面の傷付きを防止するために上記拡張孔25が設けられている。すなわち、該コア15を第1ボビン21Aの四角孔24Aに通す際、該バリ15bは該四角孔24Aの内周面に接触することなく該拡張孔25に収容されているため、該バリ15bによる該四角孔24Aの内周面の傷付きが防止され、かつ該バリ15bの除去に伴う透磁率の低下が防止されている。
上記第1コイル11において、上記コア15は、上記第1ボビン21Aの四角孔24Aに圧入されているとともに、その両端を四角孔24Aから外部へ露出させており(図4参照)、このように外部へ露出した該コア15の両端が、それぞれ該第1コイル11の磁極26N,26Sとされる。また該第1コイル11では巻線17が、図2(c)中に矢印で示す時計回りで、正面側から奥側へ向かう(図1(a)中で下側から上側)螺旋状に巻回されている。
【0011】
上記第2コイル12の構成について説明する。
該第2コイル12は、概ね上記第1コイル11と同様の構成であり、異なる部分のみを説明する。図3(a)に示すように、該第2コイル12を構成する第2ボビン21Bは、筒部22が四角筒状に形成されているが、その内部は上記プランジャー16を挿入させるための丸孔24Bとされている。
上記第2コイル12において、上記プランジャー16は、上記ヨーク13を介して該第2ボビン21Bの外部から丸孔24Bへ挿入されており(図1(a)参照)、このようにプランジャー16が挿入される第2コイル12の両端が、それぞれ該第2コイル12の磁極26N,26Sとされる。また該第2コイル12では巻線17が、図3(b)中に矢印で示す反時計回りで、正面側から奥側へ向かう(図1(a)中で下側から上側)螺旋状に巻回されており、上記第1コイル11の巻方向と反対になっている。
【0012】
図4に示すように、上記ヨーク13は、鉄などの磁性材料を用いて長板状に形成されており、上記第1コイル11が取り付けられる箇所に四角形状の第1透孔13aが透設され、上記第2コイル12が取り付けられる箇所に円形状の第2透孔13bが透設されている。また該第1透孔13aと該第2透孔13bの間には、上記ボルト14aが挿通される挿通孔13cが透設されている。
第1コイル11及び第2コイル12は、上記ヨーク13への取り付けに際して、第1コイル11から伸びる巻線17の一端が、第2コイル12から伸びる巻線17の一端と繋がれることにより、相互に直列方式で電気的に接続されている。また上記ヨーク13の第1透孔13aにはコア15の端部が挿入され、上記ヨーク13の第2透孔13bにはプランジャー16が挿通される。そして、第1コイル11及び第2コイル12は、上記ヨーク13を介して互いの磁極26S(26N)が繋がるように、並列に配設されて連結される。
【0013】
図5(a)に示すように、ソレノイド10に通電すると、第1コイル11と第2コイル12は、それぞれ磁力を発生させる。該第1コイル11では電流が正面側から奥側(図5(a)中で下側から上側)へ向かって流れ、該第1コイル11に直列方式で接続された第2コイル12では電流が奥側から正面側(図5(a)中で上側から下側)へ向かって流れるが、上記したように第1コイル11と第2コイル12では巻線17の巻き方向が反対となっているため、第1コイル11と第2コイル12は、同じ極性の磁極26N,26Sが同じ向きで揃う。
一方、第1コイル11及び第2コイル12の各磁極26N,26Sは、上記ヨーク13によって繋がっているため、コア15、プランジャー16及び2つのヨーク13は、図5(b)に示すような環状コアCと同様の磁気回路を構成し、第1コイル11と第2コイル12は、該環状コアCの周面上で対向位置に、互いに対する巻方向が反対となるように巻回されたコイルと同様の機能を発揮する。
その結果、第1コイル11及び第2コイル12は、各磁極26N,26Sから発生した磁力が図5(a)中に点線で示したようにヨーク13に通されることで一体的にまとまり、一つの磁気回路として振る舞うことで、ソレノイド10の磁束密度を高め、大きな磁場を発生させる。
【0014】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限定されず、以下のように変更してもよい。
上記の実施形態ではコイルを2個としたが、同じ極性の磁極が同じ向きで揃う配置であれば、コイルを3個以上としてもよい。
また上記の実施形態では第1コイル11の奥側(図1(a)又は図5(a)中で上側)の巻線17と、第2コイル12の奥側(図1(a)又は図5(a)中で上側)の巻線17を繋いだが、第1コイル11の正面側(図1(a)又は図5(a)中で下側)の巻線17と第2コイル12の奥側の巻線17、あるいは第1コイル11の奥側の巻線17と第2コイル12の正面側(図1(a)又は図5(a)中で下側)の巻線17、を繋いでもよい。なお、この場合には第1コイル11と第2コイル12の巻線17の巻き方向を同じ方向とすれば、同じ極性の磁極が同じ向きで揃う。
またコイル同士は、必ずしも直列方式で電気的に接続する必要はなく、並列方式で電気的に接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の遊技機用のソレノイドアクチュエータによれば、電流量の増加や巻線の巻数の増加に依らずとも、大きな磁場を得ることが出来、高い磁力特性を安定して発揮することができるものであるから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
10 遊技機用ソレノイドアクチュエータ
11 第1コイル
12 第2コイル
13 ヨーク
15 コア
16 プランジャー
17 巻線
21A 第1ボビン
21B 第2ボビン
24A 四角孔
25 拡張孔
26N,26S 磁極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機に内装されて使用される遊技機用ソレノイドアクチュエータであって、
略筒状に形成されて内部に孔を有するボビンの外周面上に巻線を巻いてなるコイルの複数個が、同じ極性の磁極が同じ向きで揃うように、並列に配設されており、
磁性材料からなるヨークが該複数個のコイルを、各コイルの磁極同士を繋ぐように連結しているとともに、
複数個のうち何れか1個のコイルにおいてボビンの孔には、電磁力によって可動するプランジャーが通されており、
上記プランジャーが通されたコイルを除く他のコイルにおいてボビンの孔には、電磁鋼からなる薄板を複数枚積層したうえでプレス加工によって所定形状に成形したコアが通されている
ことを特徴とする遊技機用のソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
上記複数個のコイルは、相互に直列方式で電気的に接続されており、隣接するもの同士で巻線の巻き方向が反対とされている
請求項1に記載の遊技機用のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
上記複数個のコイルのうち上記コアが通されるコイルにおいて、上記ボビンには孔として四角孔が形成されており、該四角孔には、四角柱状に形成された上記コアが圧入されるように構成されているとともに、該四角孔の各角部には断面円弧状の拡張孔が設けられている
請求項1又は請求項2に記載の遊技機用のソレノイドアクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−29896(P2012−29896A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172336(P2010−172336)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(502209475)東洋工産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】