説明

遊技機用電源装置及び遊技機

【課題】カバーのロック忘れと電源スイッチなどの操作部に対する不正アクセスの排除を、簡易な構造で実現する。
【解決手段】遊技機用電源装置9は、カバー92を回動可能、かつ、回動する軸方向に沿って移動可能に支持するヒンジ部90bと、カバー92を閉状態、かつ、軸方向に沿った下方側に付勢するねじりコイルバネ90aと、下方側に位置するカバー92の開状態への回動を妨げ、上方側に位置するカバー92の開状態への回動を許容する回動規制手段と、閉状態を除いた開状態において、カバー92をねじりコイルバネ90aによる下方側への付勢力に抗して上方側に保持する保持手段と、を備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大当りの当せん確率の設定変更に係る操作部等が設けられた遊技機用電源装置と、この遊技機用電源装置を備える遊技機に関し、特に、操作部に対する不正な操作を排除するカバーを設けた遊技機用電源装置とこの遊技機用電源装置を備える遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンやパチンコ機等の遊技機には、大当りなどの当りに当せんする当せん確率を操作によって変更する機能、いわゆる設定確率変更機能を備えるものがある。
【0003】
当せん確率を変更するための操作部の全部又は一部は、遊技機内各部に電源を供給する電源装置に配置され、例えば、電源スイッチや設定キースイッチなどがこれに該当する。そして、設定キースイッチ(シリンダ部)に対応する設定キーを挿入・回転し、オン状態とした後に、電源スイッチをオンすることで、遊技機を設定変更可能な状態にすることができるようになっている。
このような当せん確率の設定変更に係る操作部は、遊技機の施錠可能な前扉に覆われ、通常、操作不能となっている。しかしながら、近年、前扉の隙間などから、ピアノ線やセル等を挿入して、操作部にアクセスし、不正操作を行う行為が多発している。
【0004】
操作部に対するこのような不正アクセスを排除する目的で、従来から防御策が講じられている。
例えば、特許文献1には、遊技機用電源装置の操作部を、閉じる方向に付勢されたカバーで覆う技術が提案されている。この技術では、さらに手動操作によりカバーを開閉不能なロック状態にするロック機構を備えている。
また、特許文献2には、同じく閉じる方向に付勢されたカバーで操作部を覆う技術が提案され、この技術ではカバーを開状態から手を放すと自動的にロックするロック機構が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−65493号公報
【特許文献2】特開2008−228944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような技術では、以下のような弊害が生じていた。
特許文献1に記載のロック機構は、ロック操作を要するがため、カバーの閉め忘れを防止できなかった。
一方、特許文献2に記載のロック機構は、手を放すとカバーが自動的にロックされるため、閉め忘れを防止できるとともに、ロックを解除する操作を2アクションとすることで、解除操作を複雑にして不正アクセスを抑止できるものの、その分構造が複雑で部品点数が増え、製品コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、操作部を覆うカバーのロック解除に所定の操作を要求しつつ、手を放すと自動ロックするロック機構を簡易な構造で実現させて、防犯及び操作性の確保と製品コストの低減を両立させた遊技機用電源装置とこの遊技機用電源装置を備える遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の遊技機用電源装置は、所定の操作部と、この操作部を閉状態で操作不能に覆うカバーと、を備える遊技機用電源装置であって、前記カバーを回動可能、かつ、回動する軸方向に沿って移動可能に支持するヒンジ部と、前記カバーを閉状態、かつ、前記軸方向に沿った一方側に付勢する付勢手段と、前記一方側に位置する前記カバーの開状態への回動を妨げ、前記一方側と反対側となる他方側に位置する前記カバーの開状態への回動を許容する回動規制手段と、閉状態を除いた開状態において、前記カバーを前記付勢手段による前記一方側への付勢力に抗して前記他方に保持する保持手段と、を備え、前記カバーは、閉状態で前記付勢手段によって前記一方側に付勢されつつ、前記回動規制手段によって開閉不能なロック状態となり、前記他方側に移動させる外力と開方向に回動させる外力とを作用させると開状態となり、前記外力がなくなると、前記保持手段で保持されつつ、前記付勢手段によって閉方向に回動させられ前記ロック状態に戻る構成としてある。
【0009】
また、本発明の遊技機は、所定の操作部と、この操作部を閉状態で操作不能に覆うカバーと、を備える電源装置が設けられた遊技機であって、前記電源装置を上記の遊技機用電源装置とした構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遊技機用電源装置とこの遊技機用電源装置を備える遊技機によれば、カバーのロック忘れと操作部に対する不正アクセスの排除を、簡易な構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るスロットマシンの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスロットマシンの内部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置を左側から見た斜視図であり、カバー開状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置の左側から見た斜視図であり、カバー閉状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置の右側から見た斜視図とヒンジ部の拡大斜視図であり、カバーが閉状態であって下方側に位置する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置の右側から見た斜視図とヒンジ部の拡大斜視図であり、カバーが少し開いた開状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置に装着される、カバーが閉状態であって下方側に位置するカバーユニットを示し、(a)は、左側面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置に装着される、カバーが閉状態であって上方側に位置するカバーユニットを示し、(a)は、左側面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る遊技機用電源装置に装着されるカバーユニットを示し、カバー開状態の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の遊技機用電源装置と、これを備える遊技機について、各図を参照して説明する。
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに、本発明の遊技機用電源装置を適用した場合について説明する。
【0013】
[スロットマシン]
図1、図2に示すように、本実施形態のスロットマシン1は、複数のリール71a,71b,71cを回転させることによって遊技媒体(メダル)を獲得することができるとともに、予め6段階に分けて設定された大当りの当せん確率をいずれかの段階に設定変更可能な設定確率変更機能を備える回胴式遊技機である。
スロットマシン1は、必要な機械、装置等を収納する正面側が開口した筐体1bと、筐体1bの正面側を開閉可能に覆う前扉1aとで構成されている。
【0014】
前扉1aは、筐体1bにヒンジ1cを介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉1aに、メダルを投入するメダル投入口2、各リール71の回転を始動させるスタートレバー3や、回転している各リール71を停止させる3つの停止ボタン4a〜4c、押下操作により内部記憶(クレジット)されたメダルをゲームに投入するMAXBETボタン5aと1BETボタン5bなどの複数の操作手段や、設定確率が変更可能な状態においていずれかの段階数(1〜6)を表示し、それ以外の状態において払出メダル数を表示する払出枚数表示部6などが設けられて、スロットマシン1の正面部を構成している。
【0015】
また、前扉1aの裏面には、設定確率が変更可能な状態において、6段階に分かれた当せん確率のうちいずれかの段階を選択可能な選択スイッチが設けられ(不図示)、払出枚数表示部6に表示されたいずれかの段階数を視認しつつ、設定確率を選択できるようになっている。
【0016】
筐体1bの中央には、リール71a,71b,71cと、各リール71を回転可能に支持する図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等が設けられている。
また、筐体1bの下部には、メダルの貯留・払出しを行うメダル払出装置8と電源装置9が設けられ、筐体1bの後面上部には、基板ケース10が取り付けられている。
【0017】
電源装置9は、スロットマシン1内各部に適する電源を生成して供給する本発明に係る遊技機用電源装置として構成され、電源をON/OFF(入/切)する電源スイッチ9bなどの操作部が設けられている(図3参照)。
【0018】
基板ケース10には、上記の各操作手段からの信号に基づき、各リール71、メダル払出装置8などの各装置を制御することで、スロットマシン遊技の進行制御を行う、いわゆる主基板10aが収容されるとともに、キー操作によって設定確率が変更可能な状態にする設定キースイッチを備える設定キーユニット11が装着されている。
基板ケース10は、無色透明な合成樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成された二つのケースを備え、主基板10aはこれらのケースの間に挟まれるように収容されている。
【0019】
主基板10aは、CPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAMなどの記憶手段、I/OインターフェイスなどのIC部品、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどを備えるコンピュータとして構成されている。
ROMには、スロットマシン1を制御する制御プログラムやデータが記憶され、このデータには、ゲーム毎に行われる内部抽せんにおいて、乱数と比較される大当り抽せんデータテーブルが設定されている。
【0020】
大当り抽せんデータテーブルは、大当りとなるボーナス役、メダルが払出される小役、メダルを投入することなく次回遊技可能となる再遊技役(リプレイ)、ハズレなどの抽せん対象の当せん範囲が数値化されたデータテーブルで、スタートレバー3操作のタイミングで取得される乱数と比較され、この乱数の属する当せん範囲の抽せん対象に当せんするようになっている。すなわち、各抽せん対象の当せん範囲を変えることで、各抽せん対象の当せん確率が変化するデータテーブルとなっている。
【0021】
本実施形態のスロットマシン1では、ボーナス役や小役などの当せん範囲(当せん確率)が異なる6つの大当り抽せんデータテーブルがROMに記憶され、主基板10aは、電源スイッチ9bがON(入)されたときに設定キースイッチからON信号を受信すると、設定確率を変更可能な状態とする。この状態で、前述の選択スイッチを操作することで、任意のデータテーブルを選択できるとともに、スタートレバー3を操作することにより、選択した設定確率への変更が決定され、さらに設定キースイッチをOFFに戻すことで、以後この選択された大当り抽せんデータテーブルが内部抽せん時の参照テーブルとして用いられる。
【0022】
すなわち、電源装置9に設けられた電源スイッチ9a、設定キーユニット11に設けられた設定キースイッチ、選択スイッチ、スタートレバー3が、本発明の当せん確率の設定変更に係る操作部となっている。また、当せん確率の設定変更は、電源投入時のみ有効であることから、特に、電源スイッチ9aは、当せん確率の設定変更を行ううえで、重要な操作部と位置づけられている。
そこで、電源装置9は、この電源スイッチ9aを閉状態で操作不能に覆う本発明に係るカバー92を備えている(後述)。
【0023】
このような構成からなるスロットマシン1は、主基板10aにより、以下のように制御されてスロットマシン遊技が進行する。
まず、遊技者によりメダル投入口2からメダルが投入され、スタートレバー3が操作されると、主基板10aは、各リール71を回転させる制御を行うとともに、設定された大当り抽せんデータテーブルを参照してボーナスや小役等を抽せんする内部抽せんを行い、各停止ボタン4が押下操作されたタイミングに基づき、当せん結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール71の停止制御を行う。
また、主基板10aは、各リール71に停止表示される図柄の組合せを判定し、所定の図柄の組合せのときには、メダル払出装置8に対して所定数のメダルを払い出させる制御を行う。
【0024】
[電源装置]
次に、本発明に係る電源装置9の詳細な構成について図3〜図9を参照して説明する。
図3及び図4は、電源装置9を左側から見た斜視図であり、図3は、カバー92が開いた開状態を示し、図4は、カバー92が閉じた閉状態を示している。
各図に示すように、本実施形態の電源装置9は、鋼板を加工して筐体状に形成され、図示しない電源基板等が内蔵されている装置本体9aと、この装置本体9aに装着されたカバーユニット90とで構成され、設定変更に係る操作部の一つである電源スイッチ9bやその他の操作部が、カバーユニット90に囲まれるように配置されている。
その他の操作部としては、例えば、スロットマシン1の打止の有無を設定する打止有無スイッチ(図3〜図6中「打止め」に対応するスライドスイッチ)、メンテナンス時にメダルを回収するため、メダルをスロットマシン1の受け皿に自動的に払い出すか否かを設定する自動精算スイッチ(図3〜図6中「自動精算」に対応するスライドスイッチ)が設けられている。
【0025】
カバーユニット90は、台座91と、この台座91に開閉可能に支持されるカバー92とで構成され、装置本体9aにネジ9cで螺着されている。このカバーユニット90は、筐体1bの正面側開口に面するように装着されている(図2参照)。
【0026】
台座91は、所定の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成された板状部材で、カバー92を回動可能、かつ回動する軸方向に沿って上下移動可能に支持する支軸911と、カバー92の係合片923と係合する係合部913と、電源スイッチ9b正面を外部に臨ませつつその側面を囲む囲いリブ914と、カバー92の外縁リブ92bが嵌入する凹部915とが形成されている。
この囲いリブ914は、電源スイッチ9bの操作端が操作により可動する範囲を超える高さで形成されている。また、凹部915上方には、カバー92を閉状態のまま軸方向に沿って上方側(他方側)に移動できるように、凹部915と面一で繋がるスペース915aを設けてある。
【0027】
また、台座91の右下部には、付勢手段の一例であるねじりコイルバネ90aを設けてある。このねじりコイルバネ90aは、支軸911を延長した軸に巻回されるとともに、その一端をカバー92に係止させている(図7〜図9参照)。このねじりコイルバネ90aは、カバー92を、閉状態かつ支軸911に沿って下方側(一方向側)に付勢させるように作用する。
このように、カバー92の閉方向への付勢手段と下方側への付勢手段をそれぞれ設けることなく、一のねじりコイルバネ90aによって双方を実現しているので、コストを低減させることができる。
【0028】
カバー92は、所定の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成された電源スイッチ9bを覆う凹状部材で、閉状態で電源スイッチ9b正面を覆う蓋部92aと、電源スイッチ9b側面を囲む外縁リブ92bと、支軸911に回動可能かつ回動する軸方向に沿って上下移動可能に遊嵌される軸受921と、係合部913と係合する係合片923と、カバー92を開状態にする際に操作する把手924とが形成されている。
【0029】
本実施形態では、支軸911と軸受921で、本発明に係るヒンジ部90bを構成し、このヒンジ部90bは、カバーユニット90の右側に位置するように形成されている。これにより、カバー92は、左側が開放する。一方、前扉1aは、左側にヒンジ1cを有するがため、右側が開放する(図2参照)。
このように、カバー92の開閉方向と前扉1aの開閉方向とを異ならせることで、双方を開状態とした場合でも、電源スイッチ9bへのアクセス経路が曲折することになり、不正な操作を困難にすることができる。
【0030】
このような構成により、電源スイッチ9bは以下のように不正なアクセスから保護される。
電源スイッチ9bを、例えばシーソー型スイッチとした場合、囲いリブ914は、シーソー型スイッチの操作端(三角形状の部位)の頂点より高く形成されているため、側方から異物を侵入させて電源スイッチ9bを操作する行為を阻止できる。
さらに、カバー92の閉状態では、凹部915に外縁リブ92bが嵌入されることから、カバー92側面からの異物の侵入経路はコの字状となるため、異物の侵入を困難にさせることができる。
【0031】
また、カバーユニット90は、係合片923と係合部913との係合により、カバー92を開閉不能にロックするスライド錠90cを備えている。
具体的には、スライド錠90cは係合片923と係合部913とで構成され、係合部913には、係合片923が嵌入する溝部913aと、係合片923を溝部913aにガイドするスロープ913bが設けられている。
【0032】
このような構成により、閉状態にあるカバー92は、図4に示すように、係合片923が溝部913aに嵌入することで(係合片923と係合部913とが係合)、カバー92が開閉不能にロックされる。
また、このロックは、閉状態において、溝部913aから係合片923が抜け出るまでカバー92を支軸911に沿って上方側(他方側)に移動させると(係合片923と係合部913とが非係合)、解除できる(図8参照)。
つまり、スライド錠90cは本発明に係る回動規制手段として動作し、閉状態であって支軸911に沿った下方側(一方側)にカバー92が位置するときには、係合片923と係合部913とが係合状態となり、カバー92の開方向への回動が妨げられるとともに、係合片923と係合部913とが非係合状態となるまで、カバー92を支軸911に沿って上方側(他方側)に移動させると、カバー92の開方向への回動が許容され、図3に示すように、カバー92を開状態とすることができる。
【0033】
また、カバー92は、ねじりコイルバネ90aにより下方側(一方側)に付勢されていることから、閉状態では常にロック状態となっている。従って、カバー92を開状態とするためには、ねじりコイルバネ90aによる付勢力に抗してカバー92を支軸911に沿って上方側(他方側)に移動させる外力を作用させなければならない。
このため、前扉1aの隙間などから挿入するピアノ線やセル等の長物では、カバー92を上方側に移動させようとする力がうまくカバー92に伝達できないため、不正アクセスを抑止できる。
【0034】
次に、本発明に係る保持手段ついて図5、図6を用いて説明する。
図5及び図6は、電源装置9を右側から見た斜視図とヒンジ部90bの拡大斜視図であり、図5は、カバー92が閉状態であって下方側に位置する斜視図を示し、図6は、カバー92が少し開いた開状態を示す斜視図である。
各図に示すように、カバー92は、そのヒンジ部90b側に、支軸911と直交する方向に突出する回動片922を備え、支軸911は、回動片922と同方向に突出するガイド片912を備え、これらが開状態において以下のように係合して本発明の保持手段として動作する。
【0035】
具体的には、各図に示すように、ガイド片912には、閉状態であって下方側に位置する回動片922(裏面)と当接するとともに、閉状態であって上方側に位置する回動片922(裏面)と非当接となる当接面912aと、閉状態を除いた開状態であって上方側に位置する回動片922(底面:下方側壁面[一方向側壁面])と摺接する摺接面912bとが形成されている。
【0036】
このような構成により、閉状態であって下方側に位置するカバー92を上方側に移動させることで、回動片922(裏面)と当接面912aとを非当接状態にするとともに、カバー92を開方向に回動させることで(閉状態を除いた開状態)、図6に示すように、回動片922(底面)と摺接面912bとが摺接状態になる。
【0037】
この摺接状態(閉状態を除いた開状態)では、カバー92はねじりコイルバネ90aにより下方側に付勢されているものの、ガイド片912がこの付勢力に抗して回動片922を上方側に保持している(保持手段)。そのため、閉状態であって下方側に位置するカバー92を上方側に移動させる外力を作用させた後において、カバー92を開状態にするには、カバー92を開方向に回動させる外力のみを作用させればよいことが分かる。つまり、カバー92を上方側に移動操作した後は、開方向への外力のみでカバー92を開状態とすることができる。
【0038】
また、この摺接状態(閉状態を除いた開状態)では、カバー92はねじりコイルバネ90aにより閉方向に付勢されている。そのため、カバー92に作用させる外力をなくすと、カバー92は、ガイド片912が回動片922を上方側に保持したまま閉状態に戻るとともに、この閉状態で摺接状態が解除され、コイルバネ90aの下方側への付勢力により下方側に移動する。その結果、カバー92は、係合片923が溝部913aに嵌入されるロック状態となる。つまり、開状態でカバー92から手を放すと、カバー92は閉状態になるだけでなく、自動的にロック状態となる。
【0039】
なお、上記の実施形態におけるガイド片912の当接面912aと摺接面912bはほぼ直角で交わるように形成したが、これを円弧(R)で繋げることもできる。直角に交わると、下方側にあるカバー92を上方側に移動させた後、さらに開方向に回動させるときの操作経路は、直角となるが、円弧(R)で繋げると、操作経路が円弧を描くことから操作がスムーズとなり、店員などの遊技場係員による操作負担を軽減できる。
【0040】
また、上記の円弧(R)で繋げた場合において、開状態にあるカバー92から手を放すと、閉状態に至らないうちにカバー92が下方側に移動してしまい、係合片923が溝部913aに嵌入されないおそれが生じる。ところが、係合部913に形成したスロープ913bが、下方側に移動しようとする係合片923を下方側から保持し、係合片923を溝部913aにガイドするようになっている(第二の保持手段)。
このスロープ913bは、溝部913aに向かって上方に傾斜する傾斜面として形成され、係合片923はその底面がスロープ913bに摺接しながら溝部913aにガイドされる。
【0041】
さらに、ガイド片912と回動片922は、本発明に係る第二の回動規制手段として動作する。
具体的には、図5から明らかなように、閉状態であって下方側に位置する回動片922は、ガイド片912の当接面912aに当接している。
このため、閉状態であって下方側に位置するカバー92は、開方向への回動がガイド片912によって妨げられた状態、すなわち、ガイド片912と回動片922との係合により、カバー92は開閉不能なロック状態となっている(第二の回動規制手段)。
このロックは、スライド錠90cのロック解除と同様、カバー92を上方側に移動操作することで解除できる。
従って、スライド錠90cをなくしたとしても、閉状態にあるカバー92は、ガイド片912と回動片922との係合によりロック状態にあることが分かる。
このようにガイド片912と回動片922は、それぞれヒンジ部90bと支軸911に突設させただけの簡易な構造であるものの、保持手段のみならず回動規制手段としても動作するので、各々別設する必要がなく、コストの低減が図られる。
【0042】
以上のように構成された本実施形態に係るカバーユニット90のカバー92の開閉動作について図7〜図9を参照して説明する。
図7は、カバー92が閉状態であって下方側に位置するカバーユニット90を示し、(a)は、左側面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図であり、図8は、カバー92が閉状態であって上方側に位置するカバーユニット90を示し、(a)は、左側面図、(b)は、正面図、(c)は、右側面図である。また、図9は、カバー92が閉状態にあるカバーユニット90の右側面図である。
【0043】
図7に示すように、閉状態では、電源スイッチ9bはカバー92で操作不能に覆われ、不正なアクセスから保護されるようになっている。
カバー92は、ねじりコイルバネ90aにより、閉状態かつ下方側に付勢されていることから、なんら外力が加わらない限りこの閉状態を維持することになる。カバー92がこの閉状態かつ下方側に位置するときは、係合片923が溝部913aに嵌入されているのみならず、回動片922がガイド片912に当接しているため、カバー92の開方向への回動が妨げられている。すなわち、カバー92は開閉不能にロックされている。
【0044】
このような状態において、図8に示すように、把手924を摘んでカバー92にA方向(上方側)の外力を作用させると、係合片923が溝部913aから脱抜されるとともに、回動片922とガイド片912とが非当接状態となり、カバー92の開方向への回動が許容される。
【0045】
さらに、カバー92に開方向への外力を作用させると、図9に示すように、回動片922とガイド片912とが摺接状態となり、カバー92はねじりコイルバネ90aにより下方側に付勢されているものの、ガイド片912がこの付勢力に抗して回動片922を上方側に保持しているため、開方向に回動させる外力のみを作用させればカバー92を開状態にできるようになっている。なお、本実施形態の回動片922は、支軸911と接する面が弧状に凹設され、軸受としても動作するようになっている(図5参照)。
【0046】
開状態では、電源スイッチ9b正面が外部に露出される。店員などの遊技場係員はカバー92に開方向への外力を作用させたまま、電源スイッチ9bに対して当せん確率の設定変更操作に係るON/OFF操作を行うことができる。
【0047】
そして、この開状態でカバー92から手を放すと、カバー92はねじりコイルバネ90aの付勢力により閉状態に戻る。
このとき、カバー92は、ガイド片912により上方側に保持されつつ閉状態に戻り、この閉状態でガイド片912による保持が解除され、コイルバネ90aの下方側への付勢力により下方側に移動する。下方側への移動と同時に、係合片923が溝部913aに嵌入され、さらに回動片922がガイド片912に当接する当接状態となり、カバー92は再びロック状態に戻る。
このようにカバー92はなんら外力が作用しない状態では、常に閉状態かつロック状態に戻ることから、閉め忘れのみならずロック忘れも防止できる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る電源装置9によれば、ロック忘れと操作部に対する不正アクセスの排除を、簡易な構造で実現できる。
【0049】
以上、本発明の遊技機用電源装置と、この遊技機用電源装置を備える遊技機について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る遊技機用電源装置と、この遊技機用電源装置を備える遊技機は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0050】
例えば、本実施形態では、本発明に係る保持手段を、回動片922とガイド片912とで構成したが、係止片923とスロープ913bとで構成することもできる。この場合、スロープ913bを係止片923の回動軌跡において常に下側に位置するように形成すれば足りる。
【0051】
また、本実施形態では、カバーの回動方向を水平方向としたが、鉛直方向としてもよい。この場合、カバーの軸方向に沿った移動方向は、左右方向となる。
また、本実施形態では、電源装置9に電源スイッチ9bのみを設けたが、設定キースイッチ、選択スイッチなどの当せん確率の設定変更に係るその他の操作部を電源装置に設け、これらを一のカバー92で全体を覆う、又は、独立した個々のカバー92でそれぞれを覆う構成とすることもできる。
【0052】
また、本実施形態では、当せん確率の設定変更に係る操作部である電源スイッチ9bのみをカバー92で覆う構成としたが、その他の操作部である、打止有無スイッチ(図3〜図6中「打止め」に対応するスライドスイッチ)、自動精算スイッチ(図3〜図6中「自動精算」に対応するスライドスイッチ)をカバー92で覆う構成とすることもできる。この場合、図3〜図9の各図において、これらのスイッチを被覆可能なように、カバー92を鉛直方向に拡張させても良いし、また、カバー92と別体の専用カバーを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、当せん確率の設定変更機能を有する遊技機に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 スロットマシン
1c ヒンジ
9 電源装置(遊技機用電源装置)
9b 電源スイッチ
90 カバーユニット
90a ねじりコイルバネ
91 台座
911 支軸(ヒンジ部)
912 ガイド片(保持手段)
913 係合部(スライド錠)
913a 溝部
913b スロープ
914 囲いリブ
915 凹部
92 カバー
92a 蓋部
92b 外縁リブ
921 軸受(ヒンジ部)
922 回動片(保持手段)
923 係止片(スライド錠)
924 把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作部と、この操作部を閉状態で操作不能に覆うカバーと、を備える遊技機用電源装置であって、
前記カバーを回動可能、かつ、回動する軸方向に沿って移動可能に支持するヒンジ部と、
前記カバーを閉状態、かつ、前記軸方向に沿った一方側に付勢する付勢手段と、
前記一方側に位置する前記カバーの開状態への回動を妨げ、前記一方側と反対側となる他方側に位置する前記カバーの開状態への回動を許容する回動規制手段と、
閉状態を除いた開状態において、前記カバーを前記付勢手段による前記一方側への付勢力に抗して前記他方側に保持する保持手段と、を備え、
前記カバーは、
閉状態で前記付勢手段によって前記一方側に付勢されつつ、前記回動規制手段によって開閉不能なロック状態となり、
前記他方側に移動させる外力と開方向に回動させる外力とを作用させると開状態となり、
前記外力がなくなると、前記保持手段で保持されつつ、前記付勢手段によって閉方向に回動させられ前記ロック状態に戻る
ことを特徴とする遊技機用電源装置。
【請求項2】
前記回動規制手段は、
閉状態であって前記一方側に位置する前記カバーと係合状態となるとともに、閉状態であって前記他方側に位置する前記カバーと非係合状態となるスライド錠からなる
請求項1記載の遊技機用電源装置。
【請求項3】
前記保持手段は、
前記カバーの軸部に形成され、前記軸方向と直交する方向に突出する回動片と、
前記ヒンジ部に形成され、閉状態を除いた開状態で前記回動片における前記一方側壁面と摺接するガイド片と、からなる
請求項1又は2記載の遊技機用電源装置。
【請求項4】
前記回動片と前記ガイド片は、第二の前記回動規制手段であり、
前記ガイド片は、
閉状態であって前記一方側に位置する前記回動片と当接して該回動片の回動を妨げ、閉状態であって前記他方側に位置する前記回動片と非当接となり該回動片の回動を許容する
請求項3記載の遊技機用電源装置。
【請求項5】
前記カバーの外縁に前記操作部を囲む外縁リブを形成するとともに、前記カバーが閉状態にあるときに、前記外縁リブが嵌る凹部を前記操作部の周囲に形成した請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊技機用電源装置。
【請求項6】
前記操作部を囲む囲いリブを設け、
囲いリブを、前記操作部における操作端より高く形成した請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊技機用電源装置。
【請求項7】
前記付勢手段は、一のねじりコイルバネからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の遊技機用電源装置。
【請求項8】
所定の操作部と、この操作部を閉状態で操作不能に覆うカバーと、を備える電源装置が設けられた遊技機であって、
前記電源装置は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の遊技機用電源装置であることを特徴とする遊技機。
【請求項9】
前記遊技機は、正面側が開口された箱状の筐体と、前記筐体の正面開口を開閉可能に覆う前扉と、を備えるスロットマシンであり、
前記電源装置は、
前記操作部が前記正面側を向くように前記筐体内に配置されるとともに、前記カバーが前記前扉の開閉方向と異なる方向に開閉するように設けられた請求項8記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−160873(P2011−160873A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24382(P2010−24382)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】