説明

遊技機

【課題】メダル払出口から筐体内の装置への不正アクセスや、メダル払出口以外からメダル払出装置の排出口への不正アクセスを防止することのできる遊技機の提供を目的とする。
【解決手段】スロットマシン1は、前扉12によって開閉される筐体11の内部に設置され、メダルを払い出すメダル払出装置2、及び、前扉12に設けられ、払い出されたメダルをメダル払出口13まで落下移動させる移動経路31を形成するメダル返却シュート3を有し、メダル払出装置2の排出口23及びメダル払出装置2の入口33に、ラビリンス手段としての排出口用凸状部24及び入口用凸状部34を設けた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関し、特に、遊技媒体を払い出す払出手段の排出口及び遊技媒体用シュートの入口に、ラビリンス手段を設けた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技場には、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機が設置されている。
遊技機から払出された遊技媒体は、現金などの有価価値を有する景品と交換することができるため、遊技機に不正を働いて、遊技機から遊技媒体を窃取する不正行為が後を絶たない。
近年、スロットマシンなどの遊技機に対して行われる不正行為が問題となっており、特に、メダルが払い出される移動経路などを介した不正行為が深刻化している。
【0003】
(従来のスロットマシン)
次に、従来のスロットマシンの移動経路などについて、図面を参照して説明する。
図8は、従来のスロットマシンの前扉を開いた状態の概略外観斜視図を示している。
図8において、従来のスロットマシン101は、前面に開口した箱状の筐体11、及び、筐体11の前面開口を開閉自在に覆う前扉12を備えている。このスロットマシン101は、筐体11の内部に、制御部16、ドラムユニット17及びメダル払出装置102などが設けられ、また、前扉12の裏面に、メダルセレクタ15、メダル投入ガイド151及びメダル返却シュート103などが設けられている。
【0004】
なお、スロットマシン101は、ドラムユニット17の複数のリールを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。また、遊技を実施するための構成などについては、後述する特許文献1のスロットマシンとほぼ同様としてある。
【0005】
メダル払出装置102は、メダル払出装置本体120及びホッパー121などを有しており、ホッパー121には、遊技媒体としてのメダル(図示せず)が貯留されている。また、メダル払出装置本体120は、ホッパー121内のメダルを一枚ずつ排出口123から排出する回転ディスク(図示せず)、及び、この回転ディスクを回転させる駆動手段(図示せず)などを備えている。さらに、メダル払出装置102は、図9に示すように、排出口123の下方かつ正面方向に傾斜する斜面125、及び、この斜面125の左右両側をガイドする側方ガイド126を有する滑り台部124が突設されている。また、前扉12が閉められた状態において、滑り台部124の先端側の部分は、メダル返却シュート103の入口133(すなわち、入口用凸状部134)に入り込んでいるので、メダルは、確実に移動経路131に落下する。
このメダル払出装置102は、スロットマシン遊技において入賞すると、入賞内容に応じた所定枚数のメダルを、排出口123から排出する。
【0006】
メダル返却シュート103は、入口133や出口(図示せず)などの形成された樋状あるいは管状の部材であり、メダル払出装置102から払い出されたメダルをメダル払出口(図示せず。なお、上記メダル返却シュート103の出口は、このメダル払出口に連通している。)まで落下移動させる移動経路131を有している。また、入口133の周縁部に、矩形環状の入口用凸状部134が形成されている。
【0007】
なお、メダル返却シュート103は、過投入となる場合、メダルセレクタ15によって振り分けられた返却メダルをメダル払出口まで落下移動させる過投入防止用移動経路(図示せず)を有している。また、過投入とならない場合、メダル投入口に投入されたメダルは、メダルセレクタ15及びメダル投入ガイド151を経由して、メダル払出装置102のホッパー121に貯留される。
【0008】
このように、スロットマシン101の内部では、メダル返却シュート103によって、メダル払出口からメダルセレクタ15及びメダル払出装置102まで連通するメダル移動経路(すなわち、過投入防止用移動経路及び移動経路131)が形成されている。したがって、メダル払出口から不正な器具や道具(適宜、不正具と略称する。)を挿入することにより、メダル返却シュート103を介してメダル払出装置102などへのアクセスが可能であり、不正にメダルを払い出させたり、メダル投入なしにゲームを行わせるといった不正行為が行われることがある。
【0009】
このため、上記の不正行為を防止するための様々な技術や、本発明に関連する様々な技術が提案されている。
たとえば、特許文献1には、メダル返却シュートが、メダルセレクタからメダル払出口までの間に、メダル経路のメダル移動方向を変化させるクランク部を少なくとも二以上備える構成としたスロットマシンの技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、コインホッパーとコイン排出台の接合境界面で両者の外方から両者に係合する排出ガイドを設け、該排出ガイドを介してコインホッパーとコイン排出台を連結するコイン払出し装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−237637号公報
【特許文献2】特開2004−141381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来のスロットマシン101は、図9に示すように、前扉12の閉められた状態において、移動経路131と筐体11の内部(ここでは、筐体11の内部であって、メダル返却シュート103及びメダル払出装置102の外側の空間)とを連通する連通経路に対して、ポイントC1やポイントC1´において、不正侵入方向を一回方向転換させることにより、不正具(不正行為者が操作する針金などの不正な器具や道具)が侵入することができた。
すなわち、前扉12の正面下部中央に設けられたメダル払出口から不正具が挿入され、筐体11内の装置(電源装置18や主基板(図示せず)など)に不正にアクセスできないようにしたり、メダル払出口以外(たとえば、前扉12と筐体11との隙間など)から不正具が挿入され、メダル払出装置102の排出口123(ホッパー出口とも呼ばれる。)に不正なアクセスができないようにする不正行為防止手段を施す必要があった。
【0013】
また、スロットマシン101は、営業時間中に、前扉12が開けられ、補給用ジョッキを用いてメダルが補給され、再び、前扉12が閉められる。この際、従業員は、迅速かつ手際よく補給作業を行う必要があり、特に、前扉12を、スムーズにかつ確実に閉める必要がある。すなわち、上記の不正行為防止手段を設けた場合であっても、前扉12を、スムーズにかつ確実に閉める必要がある。
【0014】
なお、特許文献1に記載された技術は、メダルセレクタからメダル払出口までの間の経路(過投入防止用移動経路とも呼ばれる。)に対して有効であるものの、遊技媒体を払い出す払出手段の排出口及び遊技媒体用シュートの入口に対しては、さらに、不正行為防止手段を施す必要があった。
また、特許文献2に記載された技術は、矩形環状の凸状部の形成された排出ガイドを備えているものの、上記の課題を解決するは不可能な技術であった。
【0015】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、遊技媒体の払出口から筐体内の装置への不正アクセスや、遊技媒体の払出口以外から遊技媒体を払い出す払出手段の排出口への不正アクセスを防止することのできる遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の遊技機は、扉によって開閉される筐体の内部に設置され、遊技媒体を払い出す払出手段、及び、前記扉に設けられ、払い出された前記遊技媒体を機外と通じる払出口まで落下移動させる移動経路を形成する遊技媒体用シュートを有する遊技機において、前記払出手段の排出口及び前記遊技媒体用シュートの入口に、前記移動経路と前記筐体の内部とを遮るように、前記払出手段の排出口の周縁に形成された環状の排出口用凸状部、及び、前記遊技媒体用シュートの入口の周縁に形成された環状の入口用凸状部を有し、前記扉が閉められると、前記入口用凸状部が前記排出口用凸状部に嵌入される構成としてある。また、本発明の遊技機は、前記入口用凸状部が前記排出口用凸状部に嵌入される代わりに、前記扉が閉められると、前記排出口用凸状部が前記入口用凸状部に嵌入される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の遊技機によれば、遊技媒体の払出口(たとえば、スロットマシンにおいては、メダル払出口)から筐体内の装置への不正アクセスや、遊技媒体の払出口以外から遊技媒体を払い出す払出手段(たとえば、スロットマシンにおいては、メダル払出装置)の排出口への不正アクセスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの概略正面図を示している。
【図2】本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの前扉を開いた状態の概略斜視図を示している。
【図3】本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、メダル払出装置の概略拡大正面図を示している。
【図4】本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、メダル返却シュートの概略拡大正面図を示している。
【図5】本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、前扉を閉じた状態における側面方向からの概略拡大断面図を示している。
【図6】図5のA−A断面図を示している。
【図7】図6のB−B断面図を示している。
【図8】従来のスロットマシンの前扉を開いた状態の概略外観斜視図を示している。
【図9】従来のスロットマシンの、前扉を閉じた状態における側面方向からの要部の概略拡大断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る遊技機の好ましい実施形態について、各図を参照して説明する。
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに本発明を適用した場合について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
[スロットマシン]
図1は、本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの概略正面図を示している。
また、図2は、本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの前扉を開いた状態の概略斜視図を示している。
図1、2において、本実施形態のスロットマシン1は、前扉12によって開閉される筐体11の内部に設置され、メダルを払い出すメダル払出装置2、及び、前扉12に設けられ、払い出されたメダルをメダル払出口13まで落下移動させる移動経路31を形成するメダル返却シュート3を有している。
【0021】
すなわち、スロットマシン1は、上述したスロットマシン101と比べると、メダル払出装置102の代わりにメダル払出装置2を有し、メダル返却シュート103の代わりにメダル返却シュート3を有する点などが相違する。
また、スロットマシン1は、メダル払出装置2の排出口23及びメダル返却シュート3の入口33に、移動経路31と筐体11の内部とを遮るように所定のラビリンス手段(本実施形態では、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34)を設けてある。
なお、本実施形態の他の構成は、上述したスロットマシン101とほぼ同様としてある。
【0022】
前扉12は、図1に示すように、正面中段の右側に、メダル投入口14が設けられ、また、正面下部の中央に、メダル払出口13が形成されている。
また、スロットマシン1は、制御部16が筐体11の上部奥側に取り付けられている。この制御部16は、スロットマシン1を制御するための主基板(図示せず)などを有している。さらに、メダル払出装置2の左側には、電源装置18が設置されている。また、スロットマシン1は、メダル払出装置2を前後方向に移動可能に案内する一対のガイドレール25を備えている。
【0023】
(メダル払出装置)
図3は、本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、メダル払出装置の概略拡大正面図を示している。
図3において、メダル払出装置2は、メダル払出装置本体20及びホッパー21などを有している。
ホッパー21は、上述したホッパー121とほぼ同様にメダルを貯留する容器であり、メダル払出装置本体20に着脱可能に取り付けられている。このホッパー21は、正面側下部に、メダルを排出するための細長い矩形状の排出口23が形成され、さらに、この排出口23の周縁部に、矩形環状の排出口用凸状部24が形成されている。
また、本実施形態では、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34が、スロットマシン1の正面方向から見て、水平方向に対して所定の角度(α°)で傾いている。さらに、メダル払出装置2は、上述したように、一対のガイドレール25によって、移動可能に案内されており、左右方向にそれぞれ距離Hの遊びが発生している。傾けた効果や距離Hとの関係などについては、後述する。
【0024】
また、メダル払出装置本体20は、ホッパー21内のメダルを一枚ずつ排出口231から排出する回転ディスク22、及び、この回転ディスク22を回転させる駆動手段(図示せず)などを備えている。このメダル払出装置本体20は、正面側上部に、メダルが微小距離の隙間を有する状態で通過することができるように、細長い矩形状の排出口231が形成されている。この排出口231は、上記の排出口23に連通する構造としてあり、排出口23の外形が排出口231の外形より大きいので、メダルは、スムーズかつ確実に、排出口23を通過することができる(図7参照)。
【0025】
また、本実施形態では、回転ディスク22は、水平方向に対して上述した所定の角度(α°)に対応して傾いている。すなわち、回転ディスク22の回転中心軸は、スロットマシン1の正面方向から見て、水平方向に対して、90°−α°だけ傾いている。これにより、メダルを所定の角度(α°)だけ傾けた状態で排出することができるので、排出口231及び排出口23を所定の角度(α°)だけ傾けて形成することができる。したがって、たとえば、排出口用凸状部24を、排出口23に対して均等な間隔でオフセットするように、排出口23の周縁に形成できるので、排出口23から排出口用凸状部24までの距離をほぼ同じにすることがでる。これにより、不要なスペースが形成されないので、不正具の侵入がより困難な構造とすることができ、また、小型化を図ることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、ホッパー21に、排出口用凸状部24を形成した構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、メダル払出装置本体20に排出口用凸状部24を形成してもよい。あるいは、ホッパー21及びメダル払出装置本体20に二つ割れ構造(たとえば、排出口用凸状部24がホッパー21及びメダル払出装置本体20の境界に沿って二つに分割され、ホッパー21及びメダル払出装置本体20に、分割された各部分が形成された構造)を有する排出口用凸状部24を形成してもよい。
【0027】
(メダル返却シュート)
図4は、本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、メダル返却シュートの概略拡大正面図を示している。
図4において、メダル返却シュート3は、移動経路31、過投入防止用移動経路32、入口33、入口用凸状部34、過投入防止用入口321及び出口35などの形成された樋状あるいは管状の部材である。
なお、図4に示すメダル返却シュート3は、前扉12に取り付けられた状態においては、スロットマシン1の背面方向から見たものである。
【0028】
出口35は、移動経路31を介して、出口35の右側上方に形成された入口33と連通しており、また、過投入防止用移動経路32を介して、出口35の左側上方に形成された過投入防止用入口321と連通している。これにより、メダル払出装置2から払い出されたメダルは、入口33及び移動経路31を経由して、出口35まで落下移動し、メダル払出口13から排出される。また、メダルセレクタ15からの返却メダルは、過投入防止用入口321及び過投入防止用移動経路32を経由して、出口35まで落下移動し、メダル払出口13から排出される。
【0029】
上記入口33は、排出口23の形状に対応した細長い矩形状としてあり、この入口33の周縁部に、矩形環状の入口用凸状部34が形成されている。また、入口用凸状部34は、排出口用凸状部24に挿入されるように、排出口用凸状部24より小さい形状としてあり、かつ、排出口用凸状部24と同様に、スロットマシン1の正面方向から見て、水平方向に対して所定の角度(α°)で傾いている。
【0030】
すなわち、本実施形態では、ラビリンス手段として、メダル払出装置2の排出口23の周縁に形成された環状の排出口用凸状部24、及び、メダル返却シュート3の入口33の周縁に形成された環状の入口用凸状部34を有し、前扉12が閉められると、入口用凸状部34が排出口用凸状部24に(所定の距離を有する状態で)嵌入される。このようにすると、図示してないが、入口用凸状部34の大きさ(あるいは、入口用凸状部34の先端部や内側形状の大きさ)を、メダルの通過に支障のない範囲で、さらに小さくすることもできる。すなわち、排出口用凸状部24が入口用凸状部34に嵌入される場合より、不正具の操作領域を狭めることができ、不正具の侵入を防止する性能が向上する。また、構造を単純化することができ、製造原価のコストダウンを図ることができる。
なお、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34の数は、通常、各一つであるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、少なくとも一方を二つ以上設けてもよい。すなわち、各凸状部を環状に幾重にも重ねたラビリンス手段とすることもできる。
また、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34の突出量は、通常、数mmから十数mmである。
【0031】
次に、上記構成のスロットマシン1の効果などについて、図面を参照して説明する。なお、スロットマシン1の遊技動作などは、上述したように、特許文献1に記載されたスロットマシンとほぼ同様であり、その詳細な説明を省略する。
図5は、本発明の一実施形態にかかるスロットマシンの、前扉を閉じた状態における側面方向からの概略拡大断面図を示している。
図5において、スロットマシン1は、前扉12が閉められた状態であり、メダル返却シュート3の入口用凸状部34が、メダル払出装置2の排出口用凸状部24に入り込んでいる。
【0032】
次に、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34が、水平方向に対して所定の角度(α°)で傾いている効果などについて、図面を参照して説明する。
図6は、図5のA−A断面図を示している。
本実施形態では、図6に示すように、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34は、スロットマシン1の正面方向から見て、水平方向に対して所定の角度(α°)で傾いている。
【0033】
まず、上記の効果を理解しやすいように、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34を水平方向に形成した場合について説明する。
図示してないが、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34を水平方向に形成した場合(すなわち、α°=0°とした場合)、ポイントP1、P3における排出口用凸状部24と入口用凸状部34との距離は、Δであり、また、ポイントP2、P4における排出口用凸状部24と入口用凸状部34との距離は、Δである。
また、前扉12を開閉するための、ポイントP1、P2、P3、P4における排出口用凸状部24と入口用凸状部34とのクリアランスは、水平方向のクリアランスがΔであり、また、垂直方向のクリアランスがΔである。
【0034】
上記のΔ及びΔを小さくするほど、不正行為を行うための不正具の侵入を防止する性能を向上させることができる。ただし、スロットマシン1は、前扉12が、ヒンジを介して筐体11に回動可能に取り付けられており、上記ヒンジの取り付け誤差、また、ガイドレール25の取り付け誤差などに加え、上述したように、メダル払出装置2が、ガイドレール25に対して、動きうる余裕の空間として片側距離Hの遊びを有している。すなわち、上記の状況を考慮すると、Δ及びΔを、たとえば、0.数mmとすることは、現実的に不可能である。したがって、Δ及びΔを、たとえば、数mmに設定することにより、上記不正具の侵入を防止することができる。ただし、Δ及びΔをできるだけ小さくして、不正行為を行うための不正具の侵入を防止する性能を向上させることが要望される。
【0035】
上記要望に応えるために、本実施形態では、排出口用凸状部24及び入口用凸状部34は、スロットマシン1の正面方向から見て、水平方向に対して所定の角度(α°)で傾いている。
このようにすると、前扉12を開閉するための、ポイントP1、P3における排出口用凸状部24と入口用凸状部34とのクリアランスは、水平方向のクリアランスがΔ/sinα°となり、また、垂直方向のクリアランスがΔ/cosα°となる。
また、前扉12を開閉するための、ポイントP2、P4における排出口用凸状部24と入口用凸状部34とのクリアランスは、水平方向のクリアランスがΔ/cosα°となり、また、垂直方向のクリアランスがΔ/sinα°となる。
【0036】
すなわち、ポイントP1、P3における排出口用凸状部24と入口用凸状部34との水平方向のクリアランス(=Δ/sinα°)は、仮に、ヒンジの取り付け誤差やガイドレール25の取り付け誤差などが発生しないと仮定しても、距離Hより大きく設定され、ガイドレール25による遊びを吸収する。また、ポイントP2、P4における排出口用凸状部24と入口用凸状部34との水平方向のクリアランス(=Δ/cosα°)も同様に、仮に、ヒンジの取り付け誤差やガイドレール25の取り付け誤差などが発生しないと仮定しても、距離Hより大きく設定され、ガイドレール25による遊びを吸収する。
【0037】
ここで、好ましくは、所定の角度(α°)が、45°±所定の許容角度(β°)であるとよい。
たとえば、α°=45°とした場合、前扉12を開閉するための、ポイントP1、P3における排出口用凸状部24と入口用凸状部34とのクリアランスは、水平方向のクリアランスが約1.41×Δ(=Δ/sin45°)となり、また、垂直方向のクリアランスが約1.41×Δ(=Δ/cos45°)となる。同様に、前扉12を開閉するための、ポイントP2、P4における排出口用凸状部24と入口用凸状部34とのクリアランスは、水平方向のクリアランスが約1.41×Δ(=Δ/cos45°)となり、また、垂直方向のクリアランスが約1.41×Δ(=Δ/sin45°)となる。このように、水平方向や垂直方向に対するクリアランス(前扉12を開閉する際の遊び幅とも呼べる。)を拡張することができる。
【0038】
すなわち、前扉12などの構造によって、前扉12をスムーズにかつ確実に閉めるための水平方向及び垂直方向のクリアランスが設定されるが、この際、本実施形態のスロットマシン1は、上記のα°=0°とした場合より、水平方向や垂直方向の遊び幅(通常、水平方向の遊び幅が重要とされる。)を確保しつつ、排出口用凸状部24と入口用凸状部34との距離を小さく設定することができ、その分、不正行為を行うための不正具の侵入を防止する性能を向上させることができる。
【0039】
また、所定の角度(α°)は、45°に限定されるものではなく、45°±所定の許容角度(β°)である。この所定の許容角度(β°)は、通常、15°である。このようにしても、本実施形態の上記効果をほぼ得ることができる。
なお、前扉12などの構造によっては、通常、垂直方向のクリアランスより水平方向のクリアランスを大きくする必要がある。したがって、Δ及びΔは、前扉12などの構造に応じて設定される。
また、前扉12の回動中心線(図示せず)は、図2に示すように、微小角度(通常、数°)だけ後方に傾いているが、ここでは、水平面に対して垂直であるとしても、特に支障はないものとする。
【0040】
次に、ラビリンス手段としての排出口用凸状部24及び入口用凸状部34の効果などについて、図面を参照して説明する。
図7は、図6のB−B断面図を示している。
図7において、入口用凸状部34は、所定の距離(長手方向には、距離Δであり、短手方向には、距離Δである。)を有する状態で、排出口用凸状部24に嵌入されている。
なお、通常、入口用凸状部34の先端面は、ホッパー21の表面に当接しない構成としてあり、このようにすると、当接による破損などを防止することができる。
【0041】
本実施形態のラビリンス手段によれば、移動経路31から筐体11の内部に、不正行為を行うための不正具を侵入させる場合、二点鎖線の不正侵入方向で示すように、ポイントC1及びポイントC2において、不正侵入方向を二回方向転換する必要があり、不正具の侵入を防止することができる。すなわち、メダル払出口13から不正具を挿入し、筐体11内の装置(電源装置18、主基板など)に不正にアクセスするといった不正行為を効果的に防止することができる。
【0042】
また、メダル払出口13以外(たとえば、前扉12と筐体11との隙間など)から不正具を挿入し、メダル払出装置2の排出口23(あるいは、排出口231)に不正にアクセスするといった場合も、上記とほぼ同様に、ポイントC1及びポイントC2において、不正侵入方向を二回方向転換する必要があり、不正行為を効果的に防止することができる。
なお、“移動経路と筐体の内部とを遮るように”とは、移動経路31と筐体11の内部とを連通させる連通経路において、不正侵入方向を二回以上方向転換する状態となるようにといった意味である。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のスロットマシン1によれば、不正行為を行うための不正具の侵入を防止する性能を向上させた状態で、メダル払出口13から筐体11内の装置への不正アクセスや、メダル払出口13以外からメダル払出装置2の排出口23への不正アクセスを防止することができ、さらに、前扉12を、スムーズにかつ確実に閉めることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、排出口用凸状部24や入口用凸状部34を傾けて形成した構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、上述したように、排出口用凸状部24や入口用凸状部34を傾けることなく(すなわち、α°=0°として)形成した場合であっても、ラビリンス手段として機能することができ、メダル払出口13から筐体11内の装置への不正アクセスや、メダル払出口13以外からメダル払出装置2の排出口23への不正アクセスを防止することができる。
【0045】
以上、本発明の遊技機について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る遊技機は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、図示してないが、入口用凸状部34の外周面に、矩形環状の弾性体(通常、ゴムなどからなる弾性体)を取り付け、この弾性体の先端部が、ホッパー21の表面と当接する構成としてもよい。このようにすると、移動経路31と筐体11の内部とを連通させる連通経路を遮ることができ、また、無理やり不正具を挿入すると、弾性体に傷が付くので、不正行為が行われようとしたことを察知することができる。
【0046】
また、図示してないが、スロットマシン1は、入口用凸状部34が排出口用凸状部24に嵌入される構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、前扉12が閉められると、排出口用凸状部24が入口用凸状部34に嵌入される構成としてもよい。このようにすると、メダル払出口13以外(たとえば、前扉12と筐体11との隙間など)から不正具を挿入し、メダル払出装置2の排出口231に不正にアクセスするといった場合、不正侵入方向を二回以上方向転換する必要があり、不正行為を効果的に防止することができる。
なお、かかる場合、排出口用凸状部24の外側に第二の排出口用凸状部24を設け、これらの間に、入口用凸状部34が挿入される構成としてもよい。このようにすると、メダル払出口13から不正具を挿入し、筐体11内の装置(電源装置18、主基板など)に不正にアクセスするといった不正行為をも効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、101 スロットマシン
2、102 メダル払出装置
3、103 メダル返却シュート
11 筐体
12 前扉
13 メダル払出口
14 メダル投入口
15 メダルセレクタ
16 制御部
17 ドラムユニット
18 電源装置
20、120 メダル払出装置本体
21、121 ホッパー
22 回転ディスク
23、123、231 排出口
24 排出口用凸状部
25 ガイドレール
31、131 移動経路
32 過投入防止用移動経路
33、133 入口
34、134 入口用凸状部
35 出口
124 滑り台部
125 斜面
126 側方ガイド
151 メダル投入ガイド
321 過投入防止用入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉によって開閉される筐体の内部に設置され、遊技媒体を払い出す払出手段、及び、前記扉に設けられ、払い出された前記遊技媒体を機外と通じる払出口まで落下移動させる移動経路を形成する遊技媒体用シュートを有する遊技機において、
前記払出手段の排出口及び前記遊技媒体用シュートの入口に、前記移動経路と前記筐体の内部とを遮るように、前記払出手段の排出口の周縁に形成された環状の排出口用凸状部、及び、前記遊技媒体用シュートの入口の周縁に形成された環状の入口用凸状部を有し、前記扉が閉められると、前記入口用凸状部が前記排出口用凸状部に嵌入されることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
扉によって開閉される筐体の内部に設置され、遊技媒体を払い出す払出手段、及び、前記扉に設けられ、払い出された前記遊技媒体を機外と通じる払出口まで落下移動させる移動経路を形成する遊技媒体用シュートを有する遊技機において、
前記払出手段の排出口及び前記遊技媒体用シュートの入口に、前記移動経路と前記筐体の内部とを遮るように、前記払出手段の排出口の周縁に形成された環状の排出口用凸状部、及び、前記遊技媒体用シュートの入口の周縁に形成された環状の入口用凸状部を有し、前記扉が閉められると、前記排出口用凸状部が前記入口用凸状部に嵌入されることを特徴とする遊技機。
【請求項3】
前記排出口用凸状部及び入口用凸状部が、矩形環状であり、かつ、水平方向に対して所定の角度で傾いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記払出手段が、遊技媒体としてのメダルを払い出す、回転ディスクを有するメダル払出装置であり、前記回転ディスクが、水平方向に対して前記所定の角度に対応して傾いていることを特徴とする請求項3に記載の遊技機。
【請求項5】
前記払出手段を移動可能に案内するガイドレールを備え、前記入口用凸状部と前記排出口用凸状部との間に、前記ガイドレールに対する前記払出手段の遊びを吸収可能なクリアランスを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183083(P2011−183083A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53959(P2010−53959)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】