説明

遊技機

【課題】入賞口に対する不正行為として、電波を用いた不正行為と、紐付き遊技球を用いた不正行為との両方を発見可能な遊技機を提供する。
【解決手段】始動入賞口52に入賞した遊技球Pを島設備側に排出する球通路33を備える。球通路33は、遊技球Pを保持する保持部35を有して回転駆動される回転体34を備える。保持部35は、遊技球Pの保持を検知する保持球検知センサを備える。保持球検知センサは、保持部35に遊技球Pが保持されている間だけ保持信号を出力し、遊技球Pの保持時間を測定可能にする。回転体34はそ回転角度が測定され、始動入賞球検知センサ53から始動入賞信号が出力した場合の回転角度が求められる。保持部35の遊技球Pが保持球検知センサで検知され、遊技球Pの保持時間が規定時間以上で、さらに始動入賞信号が出力した場合の回転体34の回転角度が有効範囲内の場合に入賞を有効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ店などの遊技場に設置して使用される遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所謂デジパチと呼ばれるパチンコ遊技機は、例えば、液晶ディスプレイ等からなる可変表示装置を備え、この可変表示装置に、遊技球の始動入賞口への入賞に基いて、変動表示ゲームを表示するようになっている。変動表示ゲームは、パチンコ遊技機内部の制御装置で大当たりまたははずれが抽選で決定されるようになっている。変動表示ゲームが大当たりになると、所謂アタッカが開放されて、遊技者が多くの賞球(払い出される遊技球)を獲得可能になる。
【0003】
始動入賞口は、一般的に大当たりを除く通常時に最も多く遊技球が入賞する入賞口であり、他の入賞口より遊技球の入賞時に払い出される賞球(遊技球)の数が少なく設定されている。しかし、上述のように始動入賞口への遊技球の入賞に基いて変動表示ゲームが開始されることになり、始動入賞口への遊技球の入賞は、デジパチにおいて最も重要な要素である。遊技球が始動入賞口に入賞すると、この始動入賞口に設けられた始動入賞球検知センサからパチンコ遊技機の主制御装置に始動入賞信号が入力される。この際に主制御装置で、大当たり、はずれや大当たりの種類等を抽選で決定するための乱数が取得され、この乱数に基づく抽選結果に基いて、大当たりまたははずれの変動表示ゲームが行われる。
【0004】
そのため、始動入賞口は、不正行為の対象になり易い。例えば、始動入賞口に流入した遊技球を検知する上述の始動入賞球検知センサに対して不正行為が行われる場合がある。1つには、始動入賞検知センサのそばで始動入賞球検知センサの誤作動を起こさせる電波を出力する方法がある。この電波により始動入賞検知センサが誤作動して遊技球を検知していないのに、上述の始動入賞信号を出力する場合がある。
【0005】
また、紐や細いワイヤを付けた球をガラス扉を僅かに開放するなどして始動入賞口等が設けられている遊技領域に侵入させ、始動入賞口に流入させるとともに、始動入賞球検知センサの位置で、紐を操作して遊技球を上下させることにより、紐の付いた遊技球を複数回に渡って検知させて、始動入賞球検知センサから多くの始動入賞信号を出力させる方法がある。なお、これらの不正行為は、必ずしも始動入賞口だけに行われるものではなく、始動入賞口より賞球数の多い入賞口に対して賞球の払い出しを目的として行われる場合もある。
【0006】
このような不正行為の防止対策として、例えば、通常の球検知センサに加えて、入賞した遊技球により回転させられるとともにこの回転を検知可能な回転体を設け、球検知センサから入賞信号が出力しても、回転体が回転しない場合には、例えば、上述の電波による不正行為の可能性が高く、また、遊技球に紐が付いていることにより回転体が回転し難い状態になっている可能性もある。この場合には、例えば、始動入賞信号の主制御装置への入力を無効とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、球検知センサに加えて、パチンコ遊技機の作動中に回転駆動されて回転し続ける回転体を設け、紐付きの球が流入してきた際に、回転体に紐が絡んで回転体の回転が停止した場合に、不正行為が行われていると判定する遊技機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、回転しているスプロケット状の回転体の外周の凹部に遊技球を順次保持させるとともに排出させて、遊技球を賞球として払い出す払出装置では、払い出された遊技球を球検知センサで検知して、払い出された遊技球数を確認している。すなわち、スプロケット状の回転体の回転角度で払い出される遊技球の数が決まるが、回転している回転体の外周の凹部に遊技球が保持されない場合もあり得るので、球検知センサで検知した遊技球数が払い出すべき遊技球数より少ない場合に、回転体の回転角度を増やして確実に払い出すべき数の遊技球を払い出すようになっている。
【0009】
ここで、電波等により球検知センサを誤作動させて、球を検知しているにも関わらず、球検知を示す信号を出力しないようにさせると、遊技球を払い出しているのにも関わらず、遊技球が検知されないことから、回転体の回転角度が増加されて回転体が回り続け、多くの遊技球が不正に払い出されてしまう。そこで、回転体の回転角度から予想される遊技球の払出数と、球検知センサで検知される遊技球数との間に差が生じた場合に、エラーにすることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−102426号公報
【特許文献2】特開2001−300031号公報
【特許文献3】特開2011−110124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1の遊技機では、球検知センサに加えて、遊技球の有無を判定するための回転体を用いることにより、上述の電波により球検知センサを誤作動させても、回転体が回転せず、不正を検知することが可能になる。しかし、紐付きの球を用いた場合に、回転体を回転させることも不可能ではなく、状況によっては、不正が検知できない虞がある。
【0012】
また、特許文献2の遊技機では、回転駆動されている回転体に紐付きの遊技球の紐を絡ませて回転体の回転を止めさせる構成なので、紐を用いない電波での不正行為では、回転体が回り続けることになり、不正を検知できない。
【0013】
また、特許文献3の遊技機の払出装置では、タンクに貯留された遊技球がスプロケット状の回転体に至る位置まで溜められた状態で、回転体が回転すると所定回転角度毎に遊技球が1個払い出される構成であり、散発的に入賞する遊技球を検知する入賞口の構造とかなり異なる。したがって、払出装置における不正防止方法を、入賞口における不正行為の対策に応用することが困難である。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、入賞口(入球口)に対する不正行為として、電波を用いた不正行為と、紐付き遊技球を用いた不正行為との両方を発見可能な遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の遊技機は、遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技盤の前記遊技領域に設けられ、当該遊技領域を流下する遊技球が流入可能な入球口と、
前記入球口に流入した遊技球を前記遊技盤の背面側で外部に排出させる球通路とを備える遊技機において、
前記球通路に設けられ、当該球通路の所定区間を通過する遊技球の通過時間を遅延させる遅延手段と、
前記所定区間を通過する遊技球を検知する遅延通過検知手段と、
前記遅延通過検知手段に検知された遊技球の前記所定区間を通過する際の通過時間を計測する遅延時間計測手段と、
前記遅延通過検知手段により前記所定区間の通過が検知され、かつ、前記遅延時間計測手段により通過時間が計測された遊技球であり、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が設定された規定時間以上の場合に、前記入球口に入球した遊技球が前記入球口に正規に入賞したと判定し、かつ、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が前記規定時間未満の場合に前記入球口に入球した遊技球が前記入球口に不正に入賞したと判定する正規入賞判定手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、入球口から入球して球通路を通過する遊技球が所定区間を通過する際の通過時間を遅延させる遅延手段が設けられている。また、遊技球が所定区間を通過することを検知されるとともに、所定区間の通過する際の通過時間が計測されるようになっている。
【0017】
入球口に普通に入球した遊技球は、所定区間を通過する速度が遅延手段により遅くされ、例えば、遅延させられた際の速度で所定区間を通過するのに所定の通過時間が必要になる。
このように遅延手段で遅延させられた状態で所定区間を通過する遊技球は、検知されるとともに所定区間の通過時間が検知される。
【0018】
この際に所定区間を遊技球が通過するのに上述の通過時間が必要になるが、ここでは、この通過時間より少し短い規定時間が設定されている。
したがって、遅延手段に遅延させられた状態の遊技球が所定区間を通過するには、規定時間以上かかることになり、通過時間が規定時間以上の遊技球は、正常に所定区間を通過した遊技球になる。
【0019】
一方、紐付きの遊技球が入球した場合には、紐の操作により遊技球が行きつ戻りつさせられるので、所定区間の通過時間が遅延手段により遅延させられた時間ではなく、紐で操作された時間になる可能性が高く、通常は、遅延手段に遅延させられていない遊技球の通過時間に近い時間になると思われる。この場合に、所定区間を通過する遊技球の通過時間は、不正行為を行うものが、通常の遅延されない遊技球の速度を想定して操作する可能性が高く、通過時間が規定時間より短くなり、不正行為が疑われることになる。この場合には、不正行為発生の可能性有りと判定されることになる。
【0020】
また、電波による不正行為の場合には、所定区間を遊技球が通過していないのに、例えば、所定区間の通過を検知する通過検知手段の誤作動が生じるか、また、ここでは記載されていない入賞球検知センサの誤作動により、遊技球が入球口に流入していないのに、所定区間の通過や入賞が検知される場合が有りうる。
【0021】
しかし、この場合に、基本的に通過時間が計測されない。また、入賞球検知センサと、通過検知手段としての通過球センサとが異なるメーカの製品で異なる仕様の場合に、入賞球検知センサが誤作動しても通過検知手段が誤作動しない場合もあり得る。すなわち、入賞球検知センサでは遊技球を検知しているのに通過検知手段では遊技球を検知していない可能性がある。
【0022】
これらのことから、電波で不正行為を行った場合に、入賞球検知センサは、入賞球を検知したことを示す信号を出力していても、通過検知手段が遊技球を検知しなかったり、所定区間の通過時間が計測できなかったりすることによって、電波による不正も検知される。
すなわち、例えば、入賞球検知センサを、通過検知手段等と別に備える場合に、入賞検知センサから入賞を示す信号が出力されても、通過検知手段に遊技球が検知されない場合、通過時間が計測されない場合、通過時間が規定時間より短い場合に、不正と判断することによって、基本的に紐付き遊技球による不正と、電波による不正との両方を検知することができる。
【0023】
請求項2に記載の遊技機は、前記遅延手段は、外周に遊技球が1つずつ流入可能で、流入した遊技球を保持可能な複数の保持部が周方向に並んで形成されるとともに所定速度で一定に回転駆動されている回転体であり、
前記保持部は、遊技球が流入可能な角度から遊技球を排出可能な角度まで回転する間だけ遊技球を保持することにより遊技球の通過時間を遅延させ、
前記正規入賞判定手段は、前記遅延通過検知手段に検知されるとともに、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が前記規定時間以上で、かつ、前記遊技球が前記所定区間を通過した後に所定地点を通過する際の当該遊技球を保持していた前記保持部の所定位置からの回転角度が所定回転角度範囲内になっている場合に、前記入球口に入球した遊技球が正規に入賞したと判定することを特徴とする
【0024】
遅延手段が遊技球を保持して所定速度で回転する回転体とされている。この回転体では、複数の保持部を有するが、各保持部毎に、遊技球を受け入れる角度範囲と、遊技球を排出する角度範囲とが略決まっており、保持部から遊技球が排出された際の角度が対応する保持部によって決まっているので、例えば、保持部から遊技球が排出されて所定地点を通過する際の回転角度も所定範囲内に入っていることになる。
したがって、保持部から排出された遊技球が所定地点を通過した際の当該保持部に対する回転角度が所定範囲内ならば入賞を正規のものとする。なお、所定地点の通過に用いられる球検知センサを入球口の遊技球の入賞を検知する入賞球検知センサとしてもよい。
【0025】
ここで、紐付きの遊技球を用いた不正行為では、上述のように紐(ワイヤ)の操作により回転体の回転速度に関係なく遊技球が動かされる可能性があり、遊技球が遅延通過検知手段に検知されても、紐の操作により上述のように遅延させられずに、入賞球検知センサに検知される可能性がある。この場合には、遊技球が一旦保持された可能性のある保持部の回転角度が所定角度になる前に所定地点を通過する可能性がある。なお、入賞球検知センサの位置によっては、所定地点を通過しない可能性もある。
【0026】
また、電波による不正行為の場合には、回転体の回転角度に関係なく、入賞球検知センサから遊技球の検知を示す信号が出力されることになり、例えば、所定地点の通過を検知するサンセに入賞求検知センサを用いた場合に、遊技球の所定地点の通過を示す信号の出力時に回転体の回転角度がどうなっているかは、確率の問題になり、所定角度範囲が狭い場合に、不正と判定される確率が高くなり、かつ、電波による不正行為を繰り返すたびに不正と判定される確率が高くなる。
【0027】
上述の遅延通過検知手段による遊技球の検知、遅延時間計測時間により計測された時間が規定時間以上に加えて、所定地点を通過する際の遊技球を保持していた保持部の所定位置からの回転角度が所定角度範囲内ならば、不正行為ではなく、正規の遊技球の流入に基づく入賞と判定することができる。これらのことにより、確実に不正行為を判定することができる。この際に上述のように電波による不正行為と、紐付き遊技球による不正行為の両方を判定できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、入球口に対する電波を用いた不正行為と紐やワイヤの一端部が接続された遊技球である紐付き遊技球を用いた不正行為の両方を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るパチンコ遊技機の遊技盤を示す正面図である。
【図2】(a)〜(d)は前記パチンコ遊技機の始動入賞口の回転体を備える球通路を説明するための概略図である。
【図3】前記球通路の回転体を示す測面図である。
【図4】前記パチンコ遊技機の球通路に関する制御系を示すブロック図である。
【図5】前記パチンコ遊技機の主制御装置で行われる始動入賞口不正監視処理を示すフローチャートである。
【図6】前記始動入賞口不正監視処理における保持球検知センサ検知確認処理を示すフローチャートである。
【図7】前記パチンコ遊技機の始動入賞口の回転体を備える球通路の変形例を説明するための概略図である。
【図8】前記変形例の球通路に関する制御系を示すブロック図である。
【図9】前記パチンコ遊技機の始動入賞口の回転体を備える球通路の別の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施の形態のパチンコ遊技機は、所謂デジパチと呼ばれる種類のパチンコ遊技機としての基本的な構成を有するものである。
遊技盤1の盤面上の遊技領域2内には、その略中央部に可変表示装置(表示装置)3が設けられている。可変表示装置3は、例えば、液晶表示装置からなるもので、パチンコ遊技機の主制御装置14で行われる抽選における各種大当たりやはずれの結果を表示するものであり、抽選結果の表示に際し装飾図柄の変動表示ゲームを表示し、この変動表示ゲームのゲーム結果としての大当たりおよびはずれによって上述の抽選結果を報知する。
【0031】
遊技領域2の下部には、特図表示器4が設けられている。特図表示器4は、LED等の発光素子のセグメント表示装置からなる。例えば、セグメント表示装置は、6から8個程度の任意の形状のセグメントが任意の位置に配置されたものでよく、各セグメントの点灯および消灯を個別に制御できるようになっている。特図表示器4は、上述の変動表示時間だけ変動表示(一部のセグメントを点滅表示)した後に各セグメントの消灯と点灯の組合せからなる特図を停止表示する。
ここで、可変表示装置3で表示される変動表示ゲームと、特図表示器4で表示される変動表示ゲームは、同じ抽選結果に対応するゲームが略同時に行われるようになっている。なお、特図表示器4の前記点滅表示後に特図を停止表示する特図の変動表示ゲームを特図ゲームと称する。
【0032】
前記可変表示装置3の直下には、始動入賞口(入球口)52を備えた所謂電チューと呼ばれる普通変動入賞装置5が設けられている。
この普通変動入賞装置5は、開閉動作自在な1対の可動片51,51を備え、相対的に始動入賞口52に遊技球P(図2等に図示)が入賞し難くなるように可動片51,51が閉じた状態(閉状態)と、閉状態より遊技球Pが入賞し易くなるように可動片51,51が開いた状態(開状態)との間で変動するようになっている。
【0033】
始動入賞口52には、遊技球Pの入賞を検知する始動入賞球検知センサ53が設けられており、当該始動入賞球検知センサ53は、遊技球Pが始動入賞口52に入賞し、この入賞した遊技球Pを検知した際に主制御装置14に始動入賞信号を出力する。主制御装置14は、始動入賞信号の入力に基づいて特図ゲーム(変動表示ゲーム)の各大当たりおよびはずれを決める抽選を行う。なお、主制御装置14では、始動入賞信号が入力した場合に、後述の特図保留数が上限未満の場合に、上述の大当たりまたははずれを決める乱数と、大当たりの種類(特図ゲームの大当たりの際の停止図柄)を決める乱数と、変動表示ゲームの変動パターン(変動表示ゲームの演出のパターン)を決める乱数とを取得し、これらの乱数を用いた抽選で、大当たりまたははずれ、大当たりの場合の大当たりの種類、変動表示ゲームの変動パターンを決定する。
【0034】
また、可変表示装置3には、画面の周縁部分に後述の特図保留数の表示が行われる特図保留数表示領域31が設定されている。主制御装置14では、始動入賞球検知センサ53から始動入賞信号が入力した場合に、上限になる数値(たとえば4)の範囲内で特図保留数に1加算し、この始動入賞に基づいて特図ゲームおよび変動表示ゲームが開始される場合に、特図保留数から1減算する。この特図保留数が特図保留数表示領域31にマークの数として表示される。
【0035】
また、可変表示装置3の下方で、さらに普通変動入賞装置5の下方に、大入賞口61を有する特別変動入賞装置6が設けられている。この特別変動入賞装置6には、いわゆるアタッカとしての構成を有するもので、大入賞口61を開閉する可動扉62が備えられ、通常行われる通常遊技状態では、可動扉62が遊技球Pを大入賞口61に流入させないように立って閉じた閉状態とし、特図ゲームの結果が各大当たりになった場合に遊技球Pが流入し易いように前に倒れて開いた開状態になる。特別変動入賞装置6には、その大入賞口61に入賞した遊技球Pを検知する大入賞球検知センサ(図示略)が設けられている。
【0036】
可変表示装置3の左側方には、普通図柄(普図と略す)始動口(スルーチャッカー)7が設けられている。また、普図始動口7に対応して、普図始動口7内を通過した遊技球Pを検知する通過球検知センサ(図示略)が設けられ、通過球検知センサは遊技球Pを検知すると主制御装置14に通過球検知信号を出力する。当該通過球検知信号の入力に基づいて主制御装置14は、普通変動入賞装置5を開状態とする当たりと、普通変動入賞装置5を閉状態のままとするはずれとを抽選する普図抽選を行う。なお、この普図抽選の結果は、普図の変動表示ゲーム(以下、普図ゲーム)を普図表示装置8で表示することにより報知される。上述の普図表示装置8の下には、普図保留数表示ランプ9が設けられており、特図保留数と同様に求められる普図保留数が表示される。
【0037】
上述のように、普図ゲームが当たりになった場合に、普通変動入賞装置5が開放し、普通変動入賞装置5(始動入賞口)への遊技球Pの入賞率が高まり、特図ゲームの開始機会が増加するようになっている。また、遊技領域2の左側部には、複数の一般入賞口10,10が設けられている。また、一般入賞口10,10に対応して、一般入賞口10,10に入賞した遊技球Pを検知する一般入賞球検知センサ(図示略)がそれぞれ設けられている。
【0038】
また、特別変動入賞装置6の下方の遊技領域2の最下端部には、いずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球Pを遊技領域2の外部になる遊技盤1裏面に排出させるアウト口12が設けられている。また、遊技盤1の前面には、遊技球Pの流下方向を規制するとともに流下方向を転換する遊技釘81(一部だけ図示)や風車(図示略)等の流下規制転換部材が設けられている。
【0039】
ここで、始動入賞口52には、図2(a)〜(c)に示すように、遊技盤1を貫通する球通路33が連通している。球通路33は、始動入賞口52に入賞した遊技球Pを島設備側に排出するための通路であるが、この実施形態においては、始動入賞口52および始動入賞球検知センサ53に対する不正行為の発生を検知するため(不正行為の監視のため)の機構が球通路33に設けられている。
【0040】
球通路33の始動入賞口52の近傍には、球通路33における入賞した遊技球P(入賞球)の移動速度(流下速度)を遅延させる遅延手段としてのスプロケット状の回転体34を有する。この回転体34は、スプロケット状に複数の歯状の突出部の間に遊技球Pを保持する凹部である複数の保持部35が外周面側に周方向に一列に並んで設けられている。これら保持部35は、回転体34の外周面に、互いに等間隔に設けられている。
また、各保持部35は、保持部35が上または斜め上を向いた状態で遊技球Pを受け入れ可能であり、かつ、保持部35が水平より所定角度以上になるように下を向いた場合に、保持部35から遊技球Pを排出可能になっている。
【0041】
この実施形態では、回転体34に例えば8つの保持部35が設けられているが、例えば、保持部は8つ以上であっても8つ以下であってもよい。球通路33は、回転体34の部分で、回転体34を向く側の部分が開放された状態になっており、この球通路33の開放された状態の部分に回転体34の外周部が入り込むようになっている。また、球通路33の開放部分では、球通路33が屈曲するように曲げられ、開放部分の上流側と下流側で傾斜方向が左右逆になっている。
【0042】
この開放部分では、上述のように、回転体34の保持部35を有する外周部分が、球通路33内に入り込んだ状態になることによって、保持部35への遊技球の受け入れと排出とが可能になっている。また、回転体34は、回転駆動手段(例えば、ステッピングモータ等の回転角度を制御可能なモータや、センサにより回転角度を計測可能なモータ)により一定速度で回転させられている。この際の回転体の回転速度は、回転体が無い従来の球通路を流下する遊技球Pの速度に対して、明らかに遅い速度で、例えば、1/2以下の速度等とされている。ここでは、保持部35に遊技球を受け入れる角度から遊技球を排出する角度まで45度以上回転するのに1秒より多くかかるようになっている。
【0043】
なお、遊技球Pの速度が遅くなるのは、基本的に、回転体の保持部35に流入する際から、回転体の保持部35から流出する際までの所定区間における速度になる。この所定区間の直線距離を遊技球Pが流下した際の速度に対して、上述のように所定速度で回転する回転体34の保持部35に保持されて移動する際の速度が遅延させられる。
【0044】
遊技球Pの所定区間の移動は、まず、図2(a)に示すように、始動入賞口52に、連通する球通路33の上流から流下する遊技球Pが、回転体34の真上方向に対して例えば中心線が略67.5度を向いた保持部35に流入して保持される。なお、中心線が67.5度になる前の保持部には、回転体34の歯状の突出部が邪魔して遊技球が流入できない状態になっている。
次いで、図2(b)に示すように、回転体34が回転することにより保持部35の上述の角度が略112.5度になった際に、保持部35から遊技球Pが球通路33の下流側に排出される。
【0045】
次いで、図2(c)に示すように、球通路33の回転体34より下流に排出された遊技球が始動入賞球検知センサ53に検知される。その後、図2(d)に示すように遊技球Pは、球通路33により島設備側に排出される。
この回転体34には、図3に示すように、保持部35に遊技球Pが保持される場合に保持部35に保持された遊技球Pを検知する保持球検知センサ(遅延通過検知手段)36が設けられている。
【0046】
この保持球検知センサ36は、例えば、当該保持球検知センサ36が設けられた1つの保持部35に遊技球Pが保持される際から遊技球Pが排出されるまで遊技球(保持球)を検知していることを示す保持信号を出力する。この場合に保持信号の立ち上がりが保持部35への遊技球Pの保持開始を示し、保持信号の立ち下がりが保持部35からの遊技球Pの排出を示すことになる。また、保持信号が出力されてから終了するまでの時間が保持部35に遊技球Pが保持されている時間、すなわち、所定区間を遊技球が遅延させられた状態で通過してうる通過時間になる。
【0047】
また、保持球検知センサ36は、例えば、光学式センサであり、発光部37から照射される光線(レーザでも可)を受光部38で受光するものであるが、ミラー(リフレクタ)を用いて発光部37と受光部38を同じ側に設けてもよい。また、光学式センサ以外のセンサを用いてもよく、接触式センサや近接センサ等を用いてもよい。
【0048】
また、球通路33の回転体34より下流側には、上述の始動入賞球検知センサ53が設けられている。この始動入賞球検知センサ53に検知されて始動入賞球検知センサ53から始動入賞信号が出力されることによって、始動入賞口52への遊技球Pの入賞が確定することになる。しかし、この例では、後述の3つの条件が成立した場合に、遊技球Pが正規に始動入賞したものとされ、それ以外は、不正行為の可能性があるものとして、エラーと判定され、エラーの報知が行われる。
【0049】
また、回転体34に対してその回転角度を検知する回転角センサ40が設けられている。この回転角センサ40は、例えば、回転体34を回転駆動するモータに備えられた磁気式等のセンサやロータリエンコーダであっても良いし、回転体34の回転角度を直に測定するものであってもよい。例えば、図3に示すように、回転体34は、この実施形態において8つの保持部35を備えており、保持部35は、*1から*8まであることになる。また、ここでは、回転体34の一周を8分割しており、回転体34の回転角度として、歯状の各突出部の中心線に0〜7の回転角度を示す番号を付している。また、時計回りで45度の位置を原点としている。なお、原点位置、回転角度を示す番号等は、任意に設定することができる。
【0050】
この回転角センサ40により、上述の保持球検知センサ36が遊技球Pを検知した際、すなわち、保持信号が立ち上がった際(遊技球P保持時)の回転体34の回転角度と、始動入賞球検知センサ53で遊技球Pが検知された際、すなわち、始動入賞信号が出力された際(始動入賞信号の出力時)の回転体34の回転角度を求めるようになっている。
遊技球P保持時の回転角度から始動入賞信号出力時の回転角度を引くことにより、遊技球Pが保持された所定位置から遊技球Pが所定地点を通過した際の回転体34の回転角度を求めるようになっている。
【0051】
図4は、パチンコ遊技機の制御系の始動入賞口52の始動入賞に関する部分のブロック図である。なお、このブロック図では、後述のフローチャートで示す始動入賞口不正監視処理で用いられる装置のみを図示している。図4に示す主制御装置14は、例えば、各入賞口への遊技球の入賞に基いて払い出すべき遊技球の数を決めたり、上述のように変動表示ゲームに関する乱数を取得して、変動表示ゲームの演出、変動表示ゲームの大当たりまたははずれ、大当たりの場合の大当たりの種類を抽選で決定する処理を行うものである。なお、遊技球の払い出しや、可変表示装置3における変動表示ゲーム等の表示等は、主制御装置14から図示しない副制御装置や払出制御装置にコマンドを送ることによって、副制御装置や払出制御装置で実施される。
【0052】
主制御装置14には、始動入賞信号を出力する始動入賞口52の始動入賞球検知センサ53と、回転体34の各保持部35(*1〜*8)に設けられている8つの保持球検知センサ36(第1〜第6保持球検知センサ(遅延通過検知手段))と、回転体34の回転角度を検知する回転角センサ40とが接続されている。
【0053】
始動入賞球検知センサ53からは、始動入賞口52に遊技球が入賞して遊技球が検知された際に、始動入賞信号が主制御装置14に出力される。また、各保持部35に設けられた保持球検知センサ36は、保持部35に遊技球が保持された際に保持信号を主制御装置14に出力する。なお、この保持信号は、保持部35から遊技球が排出されるまで継続する。回転角センサ40は、常時、回転体34の回転角度を出力するようになっており、例えば、始動入賞信号が入力した際や、保持信号が入力された際等の回転体34の回転角度を特定可能になっている。
【0054】
このような始動入賞口52における不正行を監視するための構成においては、始動入賞口への遊技球の入賞(主制御装置14への始動入賞信号の入力)が不正ではない正規の始動入賞と判定するために3つの条件を設定している。
第1の条件は、始動入賞球検知センサ53で遊技球Pが検知される(始動入賞信号の出力される)前に、保持球検知センサ36で遊技球Pが検知されている(保持信号が出力されている)ことである。保持球検知センサ36で検知された遊技球Pは、回転体34の保持部35に保持されているので、回転体34の一定速度での回転により、所定区間を通過することになり、保持球検知センサ36は、所定区間を通過する遊技球Pを検知する遅延通過検知手段になる。なお、保持球検知センサ36で遊技球Pが検知された場合には、その後に始動入賞球検知センサ53で遊技球Pが検知されることになる。
【0055】
ここで、電波を用いた不正行為により、始動入賞球検知センサ53を誤作動させて始動入賞球信号を出力させた場合に、遊技球Pを検知していない保持球検知センサ36が誤作動しなければ、保持球検知センサ36から保持信号が出力されないことになる。この場合に、主制御装置14に、保持信号が入力せずに、始動入賞信号が入力する場合にエラーとして判定できる。
【0056】
また、紐付き遊技球Pを用いた不正行為においては、例えば、最初に紐付き遊技球Pを始動入賞球検知センサ53の位置まで移動させる際には、紐付き遊技球Pが回転体34の保持部35に保持されて始動入賞球検知センサ53まで移動し、始動入賞球検知センサ53で検知されるが、その後、紐を操作して始動入賞球検知センサ53に遊技球Pを検知させる際には、保持球検知センサ36に検知されることなく、始動入賞球検知センサ53に検知されることになる。始動入賞球検知センサ53を上から下に紐付き遊技球Pを検知させた後に、下から上に紐付き遊技球Pを戻す際に、始動入賞球検知センサ53に検知されるが、この際には、回転体34の保持球検知センサ36に検知されることがない。
【0057】
第2の条件は、回転体34に保持されている時間、すなわち、保持球検知センサ36からの保持信号が出力されている時間が設定された規定時間以上であることである。この回転体34に保持されている時間とは、回転体34に保持されてから排出されるまでの所定区間を遊技球Pが通過する際の通過時間である。この所定区間を遊技球Pが通過する時間は、回転体34の回転速度に依存するものである。上述のように、通常の遊技球の流下速度より回転体34の回転速度が遅いため、始動入賞口52から正規ルートとして回転体34に保持されて運ばれた遊技球は、上述の回転体34の遊技球Pの保持開始位置である例えば67.5度から遊技球Pの排出位置である例えば112.5度までの移動時間が長いものになっており、この回転体34の約45度の回転にかかる時間より少しだけ短い時間が規定時間とされている。
【0058】
この場合に、電波による不正の場合は、基本的に保持部35の保持球検知センサ36に遊技球が検知されず、通過時間の測定もできず、二つ目の条件が成立しない。また、保持球検知センサ36が、始動入賞球検知センサ53と略同時に誤作動した場合に、保持球検知センサ36から出力される保持信号の出力時間は、不正行為を行うものの操作にもよるが、短いものになる可能性が高い。この場合には、通過時間が規定時間以下になり、不正行為が行われている可能性有りになる。
【0059】
また、紐付き遊技球を用いた場合には、上述のように紐付き球を上下動させると、保持球検知センサ36に検知されない場合があり、この場合に通過時間が測定されない。紐で釣られた遊技球が保持部35に入って保持球検知センサ36に検知される可能性がある。この場合は、不正行為の操作者の操作にもよるが、基本的には、紐付き遊技球を大きく移動させないので、回転体34より上流側に紐付き遊技球が移動せず、通常、遊技球Pが保持部35に流入する回転角度より大きな回転角度(例えば、上述の67.5度より大きな角度)で保持部35に保持される。したがって、保持部35に保持されている時間が短くなる。これは、上述の回転体34において遊技球を保持してから排出するまでの時間に略等しい規定時間より短くなり、2つ目の条件を満たすことができない。
【0060】
第3の条件は、遊技球Pを保持部35に保持した際(所定位置)から遊技球Pを排出し、排出した遊技球が始動入賞球検知センサ53に検知される(所定地点に至った際)までの回転角度が所定角度範囲内になっていることである。この角度は、基本的に45度より大きい角度であり、例えば、45度から90度もしくは45度から135度である。
【0061】
また、図3に示される回転体34の0から7の位置を回転体34に対して固定として回転体34とともに回転する位置とし、図3において向かって右になる位置(時計回りに真上から90度の位置、他の角度位置でもよい)にある番号が示す位置で有効か無効かを判定してもよい。
【0062】
この場合に、*1で示される保持部35から遊技球Pが排出されて始動入賞球検知センサ53に検知された場合には、有効角度範囲が1〜3になり、*2で示される保持部35から遊技球Pが排出された場合には、有効角度範囲が2〜4になり、*3で示される保持部35から遊技球が排出された場合には、有効角度範囲が3〜5になる。それ以降の保持部35も、これらと同様に有効角度範囲を設定することができ、*4が4〜6、*5が5〜7、*6が6〜8、*7が7〜1、*0が0〜2になる。
【0063】
3つ目の条件では、始動入賞信号が主制御装置14に入力した際に、所定速度で回転している回転体34が所定の回転角度範囲になっている必要がある。また、この際に、始動入賞球検知センサ53で検知される遊技球が保持されていた保持部35が特定されている必要がある。したがって、上述の条件1を満たしている必要がある。
この場合に、例えば、電波による不正行為で、保持球検知センサ36も誤作動して保持信号を出力したことにより、1つめの条件が成立してしまっても、回転体34の回転角度に関係なく、保持信号と始動入賞球信号が主制御装置14に入力することになることから、
その際に、回転体34の回転角度が所定の角度範囲になっている可能性が低くなる。
【0064】
始動入賞球検知センサ53から始動入賞信号が主制御装置14に入力した場合に、上述の3つ条件が全て成立していれば、始動入賞口52に遊技球が入賞したものとして、上述の変動表示ゲームが開始の契機(権利)が付与されるとともに、始動入賞信号の入力に対応して上述の3つの乱数が取得される。
【0065】
一方、上述の3つの条件のうちのいずれか1つでも成立しない場合には、不正行為の疑いがあるということによってエラーと判定することになる。なお、電波や紐付き遊技球を用いた始動入賞口52に対する不正行為は、一回だけ始動入賞球検知センサ53を作動させただけでは、あまり意味がなく、何回も不正行為を繰り返して、変動表示ゲームを多く行なおうとするとともに、遊技球の入賞に基づく遊技球を得ようとすることになる。
【0066】
したがって、不正行為が行われたのにも関わらず、たまたま3つの条件が全て成立してしまうようなことがあっても、複数回不正行為が行われば必ず3つの条件の少なくとも1つが不成立になって不正行為が発覚することになる。
【0067】
主制御装置14では、図5および図6のフローチャートを参照して主制御装置14で行われる始動入賞口不正監視処理を説明する。この始動入賞口不正監視処理は、4m秒毎に繰り返し行われる処理である。
まず、図5に示すように、回転体34の各保持部35に設けられた8つの保持球検知センサ36に対応する値Xに初期値として1をセットする(ステップS1)。なお、Xは、例えば、図3において、1が*1の保持球検知センサ36(保持部35)を示し、2が*2の保持球検知センサ36(保持部35)を示し、3が*3の保持球検知センサ36(保持部35)を示し、その後も同様に対応して、最終的に8が*8の保持球検知センサ36(保持部35)を示すものになっている。
次に保持球検知センサ検知確認処理を実施する(ステップS2)。
【0068】
この保持球検知センサ検知確認処理は、8つの保持球検知センサ36の全てについて行われるものであり、1つの保持球検知センサに対して保持球検知センサ検知確認処理を行った後にXに1を加算する(ステップS3)。
次に、Xが上限値9になっているか否かを判定する(ステップS4)。これは8つの保持球検知センサに対して保持球検知センサ検知確認処理を行った後にステップS3でさらにXに1加算すると9になることに基づくものである。
【0069】
ここで、始動入賞口不正監視処理における保持球検知センサ検知確認処理を説明する。
図6に示すように、保持球検知センサ検知確認処理では、遊技球検知フラグ領域に記億されている値が1か否かを確認する(ステップS20)。この遊技球検知フラグ領域に記億されるフラグとしての1は、保持球検知センサ36からの保持信号が入力し、かつ、保持信号の入力から規定時間としての1秒が経過した際に、セットされるものである。なお、フラグがセットされていない場合に遊技球検知フラグ領域に記億される値は0になっている。
【0070】
この遊技球検知フラグ領域に記億される値が1か否かを判定し(ステップS21)、1でない場合には、保持球検知センサ36からの保持信号が入力しているか否かを確認する(ステップS22)。なお、保持球検知センサ36からの保持信号は、保持部35に遊技球が保持されている間オンのまま維持される。すなわち、保持信号が入力し続ける。
ここでは、保持信号が立ち上がったタイミングか否かを判定し(ステップS23)、保持信号の入力が開始している場合には、検知時間計測用タイマ領域に記億されている値を更新する(ステップS24)。すなわち、検知時間計測用タイマ領域に記億されている値に1を加算する。ここでは、0から1になる。・
【0071】
なお、上述のように始動入賞口不正監視処理は、4m秒毎に繰り返し行われるので、検知時間計測用タイマ領域に記億される値に4m秒を乗算した値がタイマの時間になり、250が1秒に対応する。
【0072】
次に、1加算された検知時間計測用タイマ領域を読み出して確認する(ステップS25)。読み出されて確認された検知時間計測用タイマ領域に記億されている値が250(1秒)以上か否かを判定する(ステップS26)。上述のように250が1秒に対応し、この1秒が上述の規定時間に対応する。ここで、1秒は、保持部35に保持された遊技球が回転体34の回転により保持部35から排出されるまでに要する時間より僅かに短いである。したがって、保持部35に遊技球Pが保持されて保持球検知センサ36に検知された場合に、保持信号が少なくとも1秒は出力されることになる。
【0073】
検知時間計測用タイマ領域の値が250以上の場合には、遊技検知フラグ領域にフラグがセットされていることを示す1を記億する(ステップS27)。
次に、遊技検知フラグの有効時間を計測するタイマとして、遊技球検知有効時間タイマ領域に500(2秒)を記億する(ステップS28)。
【0074】
遊技球検知有効時間タイマ領域に記億された500は、上述のように4m秒の処理毎にカウントダウンされるので、2秒に相当する。上述のように保持部35に保持された遊技球は、1秒より少し長い時間で排出され、その下流側に設けられた始動入賞球検知センサ53に検知されることになる。この場合に、例えば、保持信号が入力してから1秒経過した時点から、例えば、1秒程度で始動入賞球検知センサ53に遊技球が検知される(始動入賞信号が入力される)場合に、2秒しても遊技球が検知されない(始動入力信号が入力されない)場合に、例えば、保持球検知センサ36の誤作動等のエラーがあったものとして、遊技検知フラグをリセットするようになっている。
【0075】
次に、検知時間計測用タイマ領域に0を記億し、検知時間計測用タイマをリセットする(ステップS29)。
ここで、ステップS23で、保持球検知センサ36から保持信号が入力していない場合には、ステップS29で、検知時間計測用タイマをリセットする。なお、基本的は、保持信号は1秒以上出力されるので、上述のように保持信号が入力してから1秒で検知時間計測用タイマをリセットしている場合に、既に、検知時間計測用タイマは、リセットされているが、誤作動等で検知時間計測用タイマがリセットされていない場合を考慮して、保持信号が入力していない場合には、検知時間計測用タイマをリセットする。
【0076】
また、ステップS26で、検知時間計測用タイマが250に達していない場合は、処理を終了し、処理ごとに検知時間計測用タイマが1だけカウントアップするので、検知時間計測用タイマ領域に記億される値が250になるのを待機する状態になる。
また、ステップS21で、既に遊技検知フラグ領域に1が記億されて、遊技球検知フラグが立っている場合には、ステップS30に移行する。
【0077】
ステップS30では、遊技球検知有効時間タイマ領域に記億された値から1を減算して更新記億する(ステップS30)。
次に、遊技球検知有効時間タイマ領域に記億されている値を読み出して確認する(ステップS31)。
【0078】
次に、確認した遊技球検知有効時間タイマ領域に記億されている値が0になって、有効時間が経過したか否かを判定する(ステップS32)。遊技球検知有効時間タイマ領域に記億されている値が0の場合には、遊技球検知フラグ領域に記億されている1の値を0に書き換えて、遊技球検知フラグをリセットする(ステップS33)。
【0079】
遊技球検知有効時間タイマ領域に記億されている値が0になっていない場合には処理を終了し、4m秒毎に遊技球検知有効時間タイマ領域に記億された値が1ずつ減算されて0になるのを待つ状態になる。ただし、始動入賞口不正監視処理におけるステップS6において、始動入賞球信号が入力した場合には、遊技球検知フラグがリセットされるので、ステップS30以降の処理は行われなくなる。すなわち、ステップS30以降の処理は、遊技球検知フラグがセットされてから有効時間内に始動入賞信号が入力しない場合にだけ、遊技球検知フラグをリセットする処理になる。
【0080】
また、この保持球検知センサ検知確認処理は、始動入賞口不正監視処理におけるステップS2から、ステップS4までの処理を繰り返し行うことにより、保持部35の数だけ行われることになり、各保持部35毎に遊技球検知フラグをセットするか否かを決定する処理になり、各保持部35(各保持球検知センサ36)毎に、遊技球検知フラグがセットされるか否かが決定される。したがって、遊技球検知フラグは、上述の各保持球検知センサ36に対応する各Xの値毎にセットされか否かが決定されている。
【0081】
ステップS4で、どの保持球検知センサ36かを示す値であるXが上限の9になった場合に、始動入賞口52の始動入賞球検知センサ53が遊技球を検知して始動入賞信号が入力したか否かを確認する処理(ステップS5)を行う。
この処理で、始動入賞信号の入力が確認されたか否かを判定し(ステップS6)、始動入賞信号が入力していない場合に処理を終了する。
【0082】
始動入賞信号が入力している場合には、上述の各保持球検知センサ36を示す値であるXに初期値として1をセットする(ステップS7)。
このXに対応する各保持球検知センサ36に遊技球検知フラグがセットされているか否かを判定することになる。
【0083】
すなわち、Xの値に対応する遊技球検知フラク領域に記億されている値が1か否かを確認する処理(ステップS8)を行う。この処理に基いて、遊技球検知フラフ領域に1がセットされているか、否かを判定する(ステップS9)。1がセットされていない場合には、上述のXの値に1加算して、この値をXとして更新記億する(ステップS10)。
【0084】
次に、Xの値が上述の上限値である9になっているか否かを判定し(ステップS11)、上限値でない場合には、再び、1加算された次のXに対応する遊技球検知フラグの有無を確認するために、ステップS8〜ステップS11の処理をXが上限値の9になるまで繰り返す。ここで、上限値になった場合に、ステップS9において、いずれの保持球検知センサ36に対しても遊技球検知フラグがセットされていなかったことになる。
【0085】
この場合に、始動入賞信号が入力したのにも関わらず、遊技球検知フラグがセットされていないことになる。ここで、遊技球検知フラグは、上述のように保持球検知センサ36で保持部35に遊技球が保持されたことが検知されている間に規定時間が経過するとセットされるものであり、始動入賞信号が入力した際に、遊技球検知フラグがセットされている場合には、上述の第1の条件と第2の条件が成立していることになる。
【0086】
それに対して、始動入賞信号が入力しているのにも関わらず遊技球検知フラグがセットされていない場合には、第1条件と第2条件との少なくとも1つが成立していないことになる。したがって、上述のようにXが上限まで達した場合には、不正の可能性ありと判定し、エラー処理を開始させる(ステップS16)。
【0087】
ここで、この遊技機においては、始動入賞口52に電チューとしての普通変動入賞装置5が設けられており、普通変動入賞装置5が開放している場合には、遊技球が連続して始動入賞口52に入賞し易い状態になっている。
【0088】
この場合に、回転体34の各保持部35は、遊技球を1個だけ保持するようになっており、球通路33の回転体34の上流側に複数の遊技球が並んだ状態の場合に、順次、隣接する保持部35に遊技球Pが保持されていく状態になる。
【0089】
この場合に、複数のXの値に対応して遊技球検知フラグがセットされる。この場合も、基本的に、先に始動入賞球検知センサ53に検知された遊技球、すなわち、より小さい値のXに対応してセットされた遊技球検知フラグに対して処理が行われ、その次の値になるXに対して遊技球検知フラグがセットされている場合に、次回以降の始動入賞口不正監視処理で、始動入賞信号が入力した際に行われることになる。
【0090】
ステップS8〜ステップS11を繰り返す処理のステップS9において、遊技球検知フラグ(領域に記億された値が1)がセットされていると判定された場合には、上述の回転角センサ40から入力されている回転体34の回転角度を取得する(ステップS12)。この際に上述の遊技球検知フラグが1になっているXが示す保持球検知センサ36(保持部35)を特定し、当該保持部35の原点位置に対する角度を特定する。
【0091】
なお、回転角度を特定された保持部35が遊技球を保持してから移動した相対的な角度としてもよいし、上述のように、各保持部35毎に有効になる回転体の絶対角度を設定して、所定の回転角度範囲内かを特定してもよい。
【0092】
そして、取得された回転体34の回転角度が有効範囲内に入っているかを確認する処理を行う(ステップS13)。この処理に基いて、取得された回転体34の回転角度が有効範囲内か否かを判定する(ステップS14)。有効範囲内の場合には、上述の第3の条件が成立することにより、第1から第3の条件が全て成立したものとして、従来と同様の始動入賞信号が入力した際の処理を開始させて(ステップS15)、処理を終了する。例えば、上述の変動表示ゲームにおける抽選用の乱数を取得する。
ステップS14で、有効範囲外と判定された場合には、ステップS16として、不正の可能性ありとしてエラー処理を実行させる。
【0093】
このような遊技機にあっては、上述の第1〜第3の条件が全て成立している場合に、正規の始動入賞と判定するので、始動入賞球検知センサ53への不正行為による不正な始動入賞信号の入力が繰り返し行われた場合に、確実に不正行為を検出することができる。この際に、電波を用いた不正行為であっても、紐付き遊技球を用いた不正行為であっても、基本的に、紐のついていない通常の遊技球を直接始動入賞口52に流入させる不正行為以外は検出可能である。したがって、より確実に不正行為を防止することができる。
【0094】
上記実施形態では、回転体34の各保持部35毎に、回転体34と一体に回転するように保持部35に遊技球が流入してから排出されるまで遊技球を検知する遅延通過検知手段としての保持球検知センサ36を設けたが、図7および図8に示すように、球通路33の回転体34の上流側近傍に保持開始検知センサ42を設け、球通路33の回転体34の下流側近傍に保持終了検知センサ43を設けるものとしてもよい。
【0095】
ここで、保持開始検知センサ42から保持終了検知センサ43までが所定区間になり、この所定区間を移動する遊技球Pの速度が回転体34の回転速度に依存することによって遅延させられる。なお、遊技球Pは、球通路33において、保持開始検知センサ42に検知された直後に回転体34の保持部35に保持され、かつ、回転体34の保持部35から排出された直後に、保持終了検知センサ43に検知される。
【0096】
保持開始検知センサ42に遊技球が検知されることにより保持開始検知センサ42から保持開始信号が主制御装置14に入力し、保持終了検知センサ43に遊技球が検知されることにより保持終了検知センサ43から保持終了信号が主制御装置14に入力する。この際に、主制御装置14は、保持開始信号の入力と保持終了信号の入力に基いて、所定区間を通過する遊技球が検知されたものとして上述の第1の条件が成立したものとする。
【0097】
また、保持開始信号の入力から保持終了信号の入力までの経過時間を計測し、計測された経過時間を始動入賞口52に入賞した遊技球の所定区間の通過時間とする。この通過時間が予め設定された上述の規定時間以上になる場合に、上述の第2条件が成立したものとすることができる。
【0098】
また、回転角センサ40により、保持開始検知センサ42に遊技球が検知された際の回転体34の回転角度を求めることによって、遊技球Pが保持された保持部35を特定可能であり、これにより、始動入賞信号が主制御装置14に入力した際の、回転体34の回転角度が上述の有効範囲以内か否かを判定することが可能になる。これにより、第3の条件が成立したか否かを判定可能である。
したがって、図7および図8に示す構成においても、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
また、図4や図7に示す構成において、図9に示すように、始動入賞球検知センサ53を球通路33の回転体34の下側ではなく、上流側に設けてもよい。この場合には、不正か否かの判定が、始動入賞球検知センサ53に遊技球が検知された後に行われることになる。この場合に、主制御装置14において、始動入賞信号の入力に基いて上述の乱数の取得等の始動入賞信号入力時の処理が先に行われた後に、上述の第1〜第3の条件の成立が判定され、いずれかの条件が成立しない場合に、始動入賞の成立後にエラーが処理が開始されることになる。
【0100】
また、回転体34に遊技球が保持された際には、既に保持された遊技球に対応する始動入賞信号が入力しているので、第1の条件における始動入賞信号の入力と保持信号の入力は順番が逆になる。また、第3の条件を変更する必要があり、例えば、始動入賞信号が入力してから保持終了信号が入力するまでの回転体34の回転角度が所定範囲内か否かを判定するものとしてもよい。また、第3の条件の成立を正規な始動入賞信号入力の判定に用いないものとしてもよい。また、この不正行為の監視方法を、始動入賞口ではない入賞口に適用するものとしてもよい。この場合に始動入賞球検知センサ53に代えて、各入賞口の遊技球の入賞を検知するセンサを用いることになる。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0102】
14 主制御装置(遅延時間計測手段、正規入賞判定手段)
33 球通路
34 回転体(遅延手段)
35 保持部
36 保持球検知センサ(遅延通過検知手段)
40 回転角センサ
52 始動入賞口(入球口)
53 始動入賞球検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技盤の前記遊技領域に設けられ、当該遊技領域を流下する遊技球が流入可能な入球口と、
前記入球口に流入した遊技球を前記遊技盤の背面側で外部に排出させる球通路とを備える遊技機において、
前記球通路に設けられ、当該球通路の所定区間を通過する遊技球の通過時間を遅延させる遅延手段と、
前記所定区間を通過する遊技球を検知する遅延通過検知手段と、
前記遅延通過検知手段に検知された遊技球の前記所定区間を通過する際の通過時間を計測する遅延時間計測手段と、
前記遅延通過検知手段により前記所定区間の通過が検知され、かつ、前記遅延時間計測手段により通過時間が計測された遊技球であり、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が設定された規定時間以上の場合に、前記入球口に入球した遊技球が前記入球口に正規に入賞したと判定し、かつ、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が前記規定時間未満の場合に前記入球口に入球した遊技球が前記入球口に不正に入賞したと判定する正規入賞判定手段とを備えることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遅延手段は、外周に遊技球が1つずつ流入可能で、流入した遊技球を保持可能な複数の保持部が周方向に並んで形成されるとともに所定速度で一定に回転駆動されている回転体であり、
前記保持部は、遊技球が流入可能な角度から遊技球を排出可能な角度まで回転する間だけ遊技球を保持することにより遊技球の通過時間を遅延させ、
前記正規入賞判定手段は、前記遅延通過検知手段に検知されるとともに、前記遅延時間計測手段に計測された通過時間が前記規定時間以上で、かつ、前記遊技球が前記所定区間を通過した後に所定地点を通過する際の当該遊技球を保持していた前記保持部の所定位置からの回転角度が所定回転角度範囲内になっている場合に、前記入球口に入球した遊技球が正規に入賞したと判定することを特徴とする請求項1に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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