説明

遊技機

【課題】メダルの投入を偽装する不正行為によりメダルが投入されたと誤認識することを防止可能なメダル識別装置を有する遊技機を提供する。
【解決手段】遊技機100は、遊技機本体101と、遊技機本体101内に収容されたメダル識別装置(1、106)と、遊技機本体101内に収容された主制御回路110とを有する。遊技機100において、メダル識別装置(1、106)は、メダルが流下する通路6を形成する筺体2と、通路6の一部を撮影範囲とするように配置され、その撮影範囲の画像を生成する撮像部4と、画像から、通路内に挿入された物体が写っている領域を抽出し、その領域の外形形状がメダルの外形形状と一致する場合にメダルが投入されたと判定し、その判定結果を主制御回路110へ出力する制御回路51とを有する。主制御回路110は、メダルが投入されたことを表す判定結果を受け取ると遊技の開始を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メダルの投入を偽装する不正行為をメダルの投入として誤検出することを防止可能なメダル識別装置を有する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回胴遊技機などの遊技機には、有価価値を持つメダルが投入されると、そのメダルに応じて遊技者が遊技できる回数などを決定するために、投入されたメダルを識別するメダル識別装置が搭載されている。このようなメダル識別装置では、例えば、メダル識別装置内のメダルの通路に沿って、メダルが通過したことを検知するセンサが複数設けられる。各センサは、例えば、発光ダイオードなどの光源と、フォトダイオードなどの受光素子とを有し、その光源と受光素子とが、通路を挟んで対向し、光源からの光が受光素子に達するように設置される。そのため、メダルが光源と受光素子の間を通る瞬間だけ、メダルによって光源からの光が遮られ、その結果として受光素子により検知される受光量が低下することで、このセンサはメダルが通過したことを検知できる。さらに、メダル識別装置は、各センサがメダルが通過したことを検知した順番により、メダルの通過方向を検出できる。
【0003】
しかし、近年、いわゆるクレマンと呼ばれる器具を用いて、メダルの投入を偽装する不正行為が問題となっている。この治具は、メダル識別装置のメダル投入口から挿入可能な板状の治具であり、先端に複数の発光ダイオードを有する。そして治具の手元側のスイッチを操作することにより、各発光ダイオードが、メダルが複数のセンサ間を通り抜ける時間と同程度の間隔で順番に明滅する。これにより、この治具は、メダル識別装置にメダルが投入されたと誤認識させる。このような不正行為を防止するために、センサの投光素子点灯時に、これと同期制御される受光部が受光しているか否かを判定する第1判定部と、センサの投光素子消灯時に受光部が受光していないか否かを判定する第2判定部とを備え、第1及び第2判定部により複数回の適正な受光/遮光であると判定された時、受光信号を出力する一方、第2判定部により投光素子消灯時に受光部が受光していると判定された時、次のタイミングで投光素子を点灯させないようにした投入メダル選別装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術でも、投光素子の発光タイミングと同期して、不正行為用の治具の発光ダイオードを明滅させると、不正行為によるメダルの投入の偽装を完全に防止することができないおそれがあった。また、不正行為には、正規のメダルに紐を取り付け、その紐の一端を保持したままそのメダルをメダル投入口に投入し、メダル識別装置がメダルを識別した後に、紐を引いてメダルをメダル投入口から取り出す行為も知られている。しかし、特許文献1に開示された技術では、このような不正行為を防止することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、メダルの投入を偽装する不正行為によりメダルが投入されたと誤認識することを防止可能なメダル識別装置を有する遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、遊技機本体と、遊技機本体内に収容されたメダル識別装置と、遊技機本体内に収容された主制御回路とを有する遊技機が提供される。この遊技機において、メダル識別装置は、メダルが流下する通路を形成する筺体と、通路の一部を撮影範囲とするように配置され、その撮影範囲の画像を生成する撮像部と、画像から、通路内に投入された物体が写っている領域を抽出し、その領域の外形形状がメダルの外形形状と一致する場合にメダルが投入されたと判定し、その判定結果を主制御回路へ出力する制御回路とを有する。
また主制御回路は、メダル識別装置の制御回路から、メダルが投入されたことを表す判定結果を受け取ると遊技の開始を許可する。
【0008】
この遊技機において、メダル識別装置の制御回路は、物体の外形形状がメダルの外形形状と一致しない場合、不正行為が行われたと判定し、その判定結果を主制御回路へ出力することが好ましい。そして主制御回路は、不正行為が行われたことを表す判定結果を受け取ると、不正行為を通報することが好ましい。
【0009】
またこの遊技機において、メダル識別装置の撮像部は、所定の時間間隔ごとに撮影範囲を撮影した画像を生成し、メダル識別装置の制御回路は、異なる時間に撮影された第1の画像及び第2の画像のそれぞれから通路内に投入された物体が写っている領域上の特定点を検出し、第1の画像上の特定点と第2の画像上の特定点間の距離を第1の画像が撮影された時刻と第2の画像が撮影された時刻との差で割ることによってその物体の移動方向及び移動速度を推定し、推定された移動方向が通路を流下するメダルの移動方向と一致しないか、あるいは推定された移動速度が、通路を流下するメダルの移動速度の基準範囲に含まれなければ、不正行為が行われたと判定し、その判定結果を主制御回路へ出力することが好ましい。そして主制御回路は、不正行為が行われたことを表す判定結果を受け取ると、不正行為を通報することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る遊技機は、メダルの投入を偽装する不正行為によりメダルが投入されたと誤認識することを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態による遊技機に搭載されるメダル識別装置の概略上面図である。
【図2】メダル識別装置の概略背面図である。
【図3】図1のAA’で示された断面を矢印の方向から見た、メダル識別装置の概略断面図である。
【図4】図2のBB’で示された断面を矢印の方向から見た、メダル識別装置の概略断面図である。
【図5】メダル識別装置の回路ブロック図である。
【図6】(a)は、メダルの一部が撮像部の撮影範囲に含まれる場合のメダルの2値化画像の一例を示す図であり、(b)は、メダル全体が撮像部の撮影範囲に含まれる場合のメダルの2値化画像の一例を示す図である。
【図7】2値化画像と、メダルの中心点の算出及び円形度の評価に用いられるサンプル点の関係を示す図である。
【図8】メダル識別方法の動作フローチャートである。
【図9】本発明の一つの実施形態に係る回胴遊技機の概略斜視図である。
【図10】前面パネルを開いた状態における、本発明の一つの実施形態に係る回胴遊技機の概略斜視図である。
【図11】回胴遊技機の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しつつ、本発明の一つの実施形態による遊技機に搭載されるメダル識別装置について説明する。このメダル識別装置は、メダル識別装置内の通路を流下するメダルを連続的に撮影する撮像部を有し、その撮像部により生成された画像に写った被写体の外形形状が正規のメダルの外形形状とみなせるか否かでメダルが投入されたか否かを判定する。さらに、このメダル識別装置は、異なる時間に撮影された複数の画像に写っている被写体の位置を比較することで、メダルの移動方向及び移動速度を推定する。これにより、このメダル識別装置は、投入された正規のメダルに取り付けた紐を引いてメダルを取り出す不正行為によるメダルの計数を防止する。
なお、本実施形態では、メダルの外形形状は、略円形であるとする。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施形態による遊技機に搭載されるメダル識別装置1の概略平面図であり、図2は、メダル識別装置1の概略背面図である。図3は、図1のAA’で示された断面を矢印の方向から見た、メダル識別装置1の概略断面図である。図4は、図2のBB’で示された断面を矢印の方向から見た、メダル識別装置1の概略断面図である。また図5は、メダル識別装置1の回路ブロック図である。
メダル識別装置1は、筺体2と、光源3と、撮像部4と、制御基板5とを有する。光源3及び撮像部4は、筺体2内に収容されており、筺体2の外部に設けられた基板(図示せず)上に配置された制御基板5と信号線を介して接続されている。なお、制御基板5も、筐体2の内部に収容されていてもよい。さらに制御基板5は、メダル識別装置1が搭載される遊技機の主制御回路(図示せず)と信号線を介して接続され、その主制御回路へ、メダル投入を検知したことを表す信号または不正行為を検知したことを表す信号を出力する。
【0014】
筺体2は、例えば、図1に示されたu軸の方向が、回胴遊技機の前面と略平行となり、かつ図2に示されたw軸の方向が、回胴遊技機の縦方向と略平行となるように、回胴遊技機に取り付けられる。そこで、以下では、便宜上、u方向を幅方向と呼び、w方向を高さ方向と呼ぶ。また、図1に示されたv軸の方向を奥行き方向と呼ぶ。
【0015】
図1に示されるように、筺体2の上面には、メダル投入口2aが形成されている。メダル投入口2aは、筺体2の幅方向に沿って、メダルの直径に所定のオフセット(例えば、1mm〜2mm)を加えた長さを持ち、筺体2の奥行き方向に、メダルの厚さに所定のオフセット(例えば、0.5mm〜1mm)を加えた長さを持つ。
【0016】
図3に示されるように、筺体2は、メダルが流下する通路6をその内部に形成するとともに、光源3及び撮像部4を収容する。そのために、筺体2は、例えば、樹脂を成型することにより所望の形状となるように形成された複数の部品を組み合わせることにより構成される。あるいは、筺体2は、鉄、アルミニウム、銅などの金属により形成されてもよく、あるいは、金属により形成された部品と樹脂により形成された部品とが組み合わされていてもよい。
【0017】
筺体2内に形成された通路6は、筺体2の上端側では高さ方向に沿って形成され、途中で筺体2の幅方向に沿って湾曲した後、右下方へ向けて斜めに形成されている。そして通路6の上端はメダル投入口2aと直結し、一方通路6の下端は、筺体2の右端に形成されたメダル排出口2bと直結されている。そのため、メダル投入口2aから投入されたメダルは、矢印で示されるように、通路6に沿って筺体2内を流下した後、筺体2の右側のメダル排出口2bからメダル識別装置1の外に排出される。なお、この矢印で示される、メダルの流下方向を、以下では便宜上、順方向と呼び、逆にメダル排出口2bからメダル投入口2aへ向かう方向を、逆方向と呼ぶ。
通路6は、メダルがスムーズに流下可能なように、筺体2の幅方向及び高さ方向に沿って、メダルの直径に所定のオフセット(例えば、1mm〜2mm)を加えた長さを持ち、筺体2の奥行き方向に沿って、メダルの厚さに所定のオフセット(例えば、0.5mm〜1mm)を加えた長さを持つ。
なお、通路6の側面には、メダルとの接触面積を減らすために、メダルの流下方向の沿って複数の溝が形成されていてもよい。
【0018】
図3及び図4に示されるように、通路6の湾曲部の下方には、後述するように、撮像部4が通路6を通過するメダルMを撮影できるように、通路6よりも筺体2の背面側に空隙が生じている。そこで、この空隙においてメダルMが通路6から逸脱することを防止するために、通路6の湾曲部の下方において、通路6の上端と下端には、それぞれ、通路6よりも筺体2の背面側に、奥行き方向へのメダルの動きを規制するガイド部材7a、7bが配置されている。そしてガイド部材7aの下端とガイド部材7bの上端間の間隔は、メダルの直径よりも小さく、かつ、撮像部4がメダルMの大部分を撮影できるように、例えば、メダルMの直径よりも僅かに小さく、例えば、メダルMの直径から1mm〜2mmを引いた値となっている。
【0019】
図4に示されるように、光源3は、通路6のガイド部材7aと7bとの間に挟まれた区間に設定された、撮像部4の撮影範囲4aを通過するメダルMを照明するよう、その区間の近傍に、通路6よりも筺体2の正面側に配置される。さらに光源3は、撮影範囲4aを一様に照明可能なように、例えば、通路6の下端に沿って配置された一つまたは複数の発光ダイオード、あるいは蛍光灯といった発光素子と、発光素子からの光を通路6側へ拡散させて出射させる、板状の拡散シートとを有する。拡散シートは、例えば、アクリルあるいはポリカーボネートといった、光源からの光の波長に対して透明な材料により形成される。そして発光素子からの光は、発光素子と対向する拡散シートの下側端面から拡散シート内に入射し、その入射した光は、拡散シートの背面側、すなわち、筺体2の正面側に形成された凹凸によって拡散されて、拡散シートの正面側、すなわち、通路6と対向する面から通路6へ向けて出射する。
光源3は、メダル識別装置1が動作している間、通路6を照明する。あるいは、光源3は、撮像部4が撮影するタイミングだけ発光するように、制御基板5によって制御されていてもよい。
【0020】
なお、変形例によれば、拡散シートは、すりガラス状の半透明なシートであってもよい。この場合には、発光素子は、拡散シートの背面側に、すなわち、通路6に対向する拡散シートの面と反対側の面と対向するように配置されてもよい。また、光源3は、有機EL素子のように、面発光する発光素子、あるいは2次元アレイ状に配列された複数の発光素子を有してもよい。この場合には、発光素子が直接通路6を照明するように配置されてもよい。そして拡散シートは省略されてもよい。
【0021】
撮像部4は、通路6の一部に設定された撮影範囲4aを通過するメダルMを撮影し、そのメダルMの像が写った画像を生成する。そのために、撮像部4は、通路6の湾曲部の下方において、通路6を挟んで光源3と対向するように、筺体2内の通路6の背面側に配置される。そして撮像部4は、例えば、2次元状に配列されたCCDイメージセンサまたはC-MOSイメージセンサといったイメージセンサと、そのイメージセンサ上に撮影範囲4aに含まれる通路6の一部区間及びその区間を通過するメダルMの像を結像する撮像光学系とを有する。また撮像部4は、画像上でメダルMの外形形状を識別できるように、例えば、横320×縦240画素を有する。各画素の輝度値は、例えば、0〜255で表され、輝度値が大きいほど、輝度が高いことを表す。また、制御基板5による、後述するメダル識別処理を簡単化し、かつ、撮影範囲4a内に通路6ができるだけ長く含まれるように、撮影範囲4aの長手方向が通路6と略平行となるように、撮像部4は傾けて配置される。そのため、撮像部4により生成される画像上では、通路6の上端及び下端が、その画像の上端及び下端と略平行となる。
【0022】
撮像部4は、メダル識別装置1が動作している間、所定の時間間隔で撮影範囲4aを連続的に撮影する。所定の時間間隔は、例えば、メダル識別装置1に投入されたメダルが撮影範囲4aを通過している間に少なくとも1枚の画像が生成されるように、例えば、50msec〜100msec間隔に設定される。本実施形態では、メダルMが順方向に沿って流下している場合、連続的に撮影された複数の画像上で、メダルMの像は左から右へ移動する。撮像部4は、撮影する度に、生成した画像を制御基板5へ出力する。
【0023】
図5に示されるように、制御基板5は、制御回路51と、メモリ52とを有する。制御回路51は、例えば、プロセッサとその周辺回路とを有する。そして制御回路51は、撮像部4から受け取った画像を解析することにより、通路6を通過するメダルの外形形状、メダルの移動方向及び移動速度を検出する。またメモリ52は、例えば、不揮発性の読み出し専用の半導体メモリと、揮発性の読み書き可能な半導体メモリとを有する。そしてメモリ52は、制御回路51で実行されるメダル識別処理のプログラム、及び、メダル識別処理で用いられるパラメータ及びメダル識別処理の途中で算出される様々な中間計算値などを記憶する。またメモリ52は、撮像部4から受け取った画像のうち、最新の複数枚の画像、またはそれら画像を2値化することにより得られる複数枚の2値化画像を記憶してもよい。
【0024】
本実施形態では、光源3と撮像部4とが通路6を挟んで配置されている。そのため、メダルMが撮像部4の撮影範囲4a内に位置すると、メダルMが光源3から発した光を遮る。また、ガイド部材7a、7bも、光源3から発した光を遮る。そのため、画像上では、メダルMの像またはガイド部材7a、7bの像が写っている領域は暗くなり、その周囲は光源3からの光が撮像部4に届くので明るくなる。
【0025】
そこで制御回路51は、例えば、画像を受け取る度に、その画像を、予めメモリ52に記憶された所定の閾値Thよりも低い輝度値を持つ画素の集合をメダルMまたはガイド部材7a、7bが写っている被写体領域とし、一方、その閾値Th以上の輝度値を持つ画素の集合をメダルM及びガイド部材7a、7bが写っていない背景領域として2値化する。例えば、制御回路51は、2値化された画像上で、被写体領域に含まれる画素の値を'0'とし、一方、背景領域に含まれる画素の値を'255'とする。
閾値Thは、例えば、通路6を通るメダルを撮影した画像を予め取得し、その画像における被写体領域及び背景領域を特定した上で、被写体領域の輝度値の分布と、背景領域の輝度値の分布を求め、それらの二つの分布を判別分析することで二つの分布が最も分離する値として決定される。あるいは、閾値Thは、輝度値の取り得る最大値の1/4〜1/2の何れかの値、例えば、127に設定されてもよい。
【0026】
図6(a)は、メダルの一部が撮像部4の撮影範囲4aに含まれる場合の2値化画像の一例を示す図であり、図6(b)は、メダル全体が撮影範囲4aに含まれる場合の2値化画像の一例を示す図である。
図6(a)及び図6(b)において、2値化画像600上で黒い領域が被写体領域610であり、一方、白い領域が背景領域620である。2値化画像600の上端近傍及び下端近傍には、それぞれ、2値化画像600の上端及び下端に略平行で、垂直方向に所定の幅を持つ、ガイド部材7a、7bの像611、612がそれぞれ写っている。そして図6(a)では、2値化画像600の左端にメダルの像613が写っており、メダルの像613の右側のエッジは2値化画像600上に写っているものの、メダルの像の左側のエッジは、2値化画像600には写っていない。一方、図6(b)では、メダルの像614の左右両方のエッジが確認できる。ただし、メダルの上端近傍及び下端近傍は、ガイド部材7a、7bで隠されるため、図6(a)及び図6(b)の何れにおいても、メダルの像613、614の上端及び下端は、ガイド部材7a、7bの像611、612により見えなくなっている。なお、以下では、便宜上、2値化画像上でガイド部材7a、7bの像に挟まれた、通路6に投入されたメダルなどの物体が写っている被写体領域の一部を、メダル候補領域と呼ぶ。
【0027】
次に、制御回路51は、順次得られる複数の画像を2値化したものの中から、メダル全体が写っている可能性がある2値化画像、すなわち、メダル候補領域全体を含む2値化画像をメダル検出候補画像として抽出する。本実施形態ではメダルは円形形状を有しているので、撮像部4の撮影範囲4a内にメダル全体が含まれている場合には、上側のガイド部材7aの像の下端Y1から下側のガイド部材7bの像の上端Y2の中間付近の高さにおいて、水平方向におけるメダル候補領域の幅が最も広くなり、かつ、メダル候補領域の左端と右端の両方が2値化画像上に写る。
そこで制御回路51は、例えば、垂直方向の座標がY1からY2までの範囲内の各水平ラインにおいて、メダル候補領域の右端及び左端のエッジを検出するために、2値化画像の左端から右端へ順に、次式に従って水平方向のエッジ強度ex,yを求める。
【数1】


ただし、Px,yは、2値化画像の水平方向の座標x、垂直方向の座標yの画素の値を表す。なお、2値化画像の左端の水平方向の座標値は0であり、右端の座標値はW(ただし、W>0)である。また2値化画像の上端の垂直方向の座標値は0であり、下へ行くほど垂直方向の座標値は大きくなる。
【0028】
上記のように、2値化画像では、メダル候補領域の輝度値は、背景領域の輝度値よりも小さい値に設定されているので、2値化画像上でex,y > 0となる位置がメダル候補領域の右端のエッジ点であり、一方、ex,y < 0となる位置がメダル候補領域の左端のエッジ点である。そこで、各ラインにおいて、左側から順に、エッジ強度ex,yが負となる位置と、エッジ強度ex,yが正となる位置の両方が検出されると、制御回路51は、その2値化画像にはメダル候補領域全体が写っている。そこで制御回路51は、その2値化画像をメダル検出候補画像とする。なお、メダルの一部だけが写っている場合には、図6(a)に示されるように、メダル候補領域は、2値化画像の左端または右端に接しているので左端または右端のエッジ点が検出されない。
【0029】
本実施形態では、メダルは略円形の外形形状を持つ。そのため、メダル検出候補画像では、メダル候補領域は略円形となる。一方、いわゆるクレマンと呼ばれる不正行為用の治具は、その治具の先端が撮像部4に達するところまで挿入されても、他端がメダル投入口から外へ出るほどの長さを持つ板状となっている。そのため、画像上では、治具が写ったメダル候補領域の形状は円形とならない。またその板状の部材がアクリル板のような透明な部材で形成されていたとしても、画像上では、治具に設けられた光源及びその駆動回路基板に相当する部分がメダル候補領域となる。そのため、メダル検出候補画像上でも、メダル候補領域の形状は、円形とは異なる形状となる。
【0030】
そこで、制御回路51は、メダル候補領域の外形形状がメダルの外形形状と一致する場合には、メダルが投入されたと判定し、一方、メダル候補領域の外形形状がメダルの外形形状と一致しなければ、不正行為が行われたと判定する。そこで、制御回路51は、メダル候補領域が円形であると仮定したときのメダル候補領域の中心の座標を求める。そして制御回路51は、その中心座標からメダル候補領域の任意のエッジまでの距離が、メダルの半径に相当するか否かで、メダル候補領域にメダルが写っているか否か判定する。
【0031】
図7は、メダル候補領域の中心点の算出及び円形度の評価に用いられるエッジ点の関係を示す図である。
一般に、円周上の任意の3点から、円の中心の座標を求めることができることが知られている。そこで、本実施形態では、メダル検出候補画像700上のメダル候補領域701の下端(すなわち、下側のガイド部材7bの像の上端)より1画素だけ上の水平ラインにおける、メダル候補領域701の左端のエッジ点A1と、メダル候補領域701の上端(すなわち、上側のガイド部材7aの像の下端)より1画素だけ下の水平ラインにおける、メダル候補領域701の右端及び左端のエッジ点A2、A3が、メダル候補領域701の中心B0の座標(XB0,YB0)を求めるために用いられる。なお、メダル候補領域701の中心B0の座標 を求めるために、A1〜A3以外に、メダル候補領域のエッジ上の任意の3点が用いられてもよい。また、メダル候補領域の外形形状が真円に近いか否かを調べるために、メダル候補領域701の4個のエッジ点B1〜B4が用いられる。エッジ点B1〜B4は、中心B0の算出に利用されたエッジ点と異なり、かつ、ガイド部材に隠れない(すなわち、垂直方向座標がY1からY2の範囲内に含まれる)メダル候補領域のエッジ点であればよい。ただし、エッジ点B1〜B4のうちの少なくとも一つは、メダル候補領域の左端側のエッジ点であり、他の少なくとも一つは、メダル候補領域の右端側のエッジ点であることが好ましい。これにより、制御回路51は、メダル候補領域の左右両側の外形形状を調べることができるので、先端が半円状に形成された治具が通路6に挿入されても、その治具をメダルと誤認識することを防止できる。
なお、各エッジ点A1〜A3及びB1〜B4は、例えば、それらエッジ点の垂直座標における水平ラインに沿って、メダル検出候補画像の左端または右端から順に、(1)式に従ってエッジ強度を求めてそのエッジ強度が0以外となる位置として求められる。
【0032】
制御回路51は、例えば、次式に従ってメダル候補領域の中心B0の座標(XB0,YB0)を求める。
【数2】


ただし、(XAi,YAi)(i=1,2,3)は、エッジ点Aiの座標を表す。
【0033】
その後、制御回路51は、次式に従って、メダル候補領域の中心B0からメダル候補領域601の4個のエッジ点B1〜B4までの距離と、メダルの半径との差の絶対値を真円度誤差ηBn(n=1,2,3,4)として求める。
【数3】


ただし、(XBn,YBn)は、エッジ点Bnの座標を表す。またRmは、メダル検出候補画像上でのメダルの半径に相当する画素数を表す。真円度誤差ηBn(n=1,2,3,4)が小さいほど、メダル候補領域の形状がメダルの外形形状と一致している。
【0034】
制御回路51は、エッジ点B1〜B4についての真円度誤差ηBnを、それぞれ、閾値ηAと比較する。そしてエッジ点B1〜B4の全てについて、真円度誤差ηBnが閾値ηA以下であれば、制御回路51は、メダル候補領域にメダルが写っていると判定する。一方、エッジ点B1〜B4の一つ以上について、真円度誤差ηBnが閾値ηAよりも大きければ、制御回路51は、メダル候補領域に写っている物体はメダルでないと判定する。なお、閾値ηAは、例えば、メダルの直径が25mmである場合、0.5mmに相当するメダル検出候補画像上での画素数に設定される。
なお、真円度誤差ηBnを求めるエッジ点の数は、4点に限られず、少なくとも1点あればよい。そして真円度誤差ηBnを求めるエッジ点の数が多いほど、制御回路51は、メダル候補領域がメダルの外形形状に近いか否かを正確に調べることができる。
【0035】
制御回路51は、メダル候補領域に写っている物体がメダルであると判定した場合、メダルの移動方向及び移動速度を推定する。そのために、制御回路51は、メダル検出候補画像に写っているメダル候補領域の位置と、メダル検出候補画像と時間的に前後して生成された他の画像におけるメダル候補領域の位置のずれを求める。
【0036】
本実施形態では、制御回路51は、メダルが写っていると判定されたメダル検出候補画像におけるメダル候補領域上の特定点と、メダル検出候補画像よりも前、あるいはメダル検出候補画像よりも後に撮影された画像から作成された2値化画像上でのその特定点の位置の差を求める。
【0037】
例えば、再度図6(a)及び図6(b)を参照すると、特定点は、メダル候補領域の最も右側のエッジ点C1に設定される。制御回路51は、例えば、上側のガイド部材7aの像の下端Y1と下側のガイド部材7bの像の上端Y2との間の中心付近の複数の水平ラインにおいて、それぞれ、メダル候補領域の右側のエッジ点を求め、そのうちの最も右側に位置するエッジ点をエッジ点C1とする。なお、各水平ラインにおけるメダル候補領域の右側のエッジ点は、上記のように、例えば、(1)式に従って算出されたエッジ強度が正となる点として検出される。
なお、特定点は、メダル候補領域の最も左側のエッジ点であってもよい。また、メダルの半分以上が写る画像が複数得られている場合には、特定点は、(2)式に従って算出されるメダル候補領域の中心B0であってもよい。
【0038】
制御回路51は、例えば、次式に従って、異なる時間に撮影された二つの画像からそれぞれ生成された2値化画像から検出された特定点の移動距離を、その二つの画像の撮影時間間隔で割ることにより、メダルの移動速度Vを推定する。
【数4】


ここでXc1,t1は、時刻t1に撮影された画像から作成された2値化画像における特定点C1の水平座標を表し、Xc1,t2は、時刻t2(ただし、t2 > t1)に撮影された画像から作成された2値化画像における特定点C1の水平座標を表す。なお、これら二つの画像のうちの何れが、メダル検出候補画像に対応していてもよい。dは、画像上の1画素に相当する距離(mm単位)を表す。そしてΔtは、撮影時間間隔を表す。
(4)式に従って推定された、メダルの移動速度Vの符号は、メダルの移動方向を表している。本実施形態では、移動速度Vが正であれば、メダルは順方向に移動していると推定され、逆に、移動速度Vが負であれば、メダルは逆方向に移動していると推定される。
【0039】
制御回路51は、推定された移動方向がメダルが通路6を流下する順方向と一致するか否か、及び、推定された移動速度が、メダルが実際に通路6を流下する際の移動速度の取り得る範囲である基準範囲に含まれているか否かを判定する。そして制御回路51は、推定された移動方向がメダルが通路6を流下する順方向と一致し、かつ、推定された移動速度が基準範囲に含まれていれば、メダルは正規に投入されたと判定する。一方、制御回路51は、推定された移動方向がメダルが通路6を流下する順方向と一致しないか、または、推定された移動速度が基準範囲から外れていれば、不正行為が行われたと判定する。
そのような判定を行うために、制御回路51は、例えば、メモリ52に予め記憶された、移動方向と移動速度の組と、正常・不正などの判定結果との関係を表す参照テーブルを参照することにより、推定された移動方向及び移動速度から、正常にメダルが投入されたのか、あるいは、メダルに取り付けた紐を引いて投入したメダルを取り出す不正行為が行われたのかを判定する。以下に、そのような参照テーブルの一例を示す。
【表1】


例えば、表1において、移動速度についての0.5mm/ms以上かつ1.5mm/ms未満の範囲が基準範囲である。推定された移動方向が順方向(すなわち、V>0)であり、移動速度が1mm/msであれば、制御回路51は、上記の参照テーブルを参照することにより、正常にメダルが投入されたと判定する。一方、推定された移動方向が逆方向(すなわち、V<0)であれば、移動速度が1mm/msであれば、制御回路51は、上記の参照テーブルを参照することにより、不正行為が行われたと判定する。また、推定された移動方向が順方向(すなわち、V>0)であり、移動速度が0.2mm/msであれば、制御回路51は、上記の参照テーブルを参照することにより、何らかのエラーが生じたと判定する。なお、参照テーブルには、エラーと判定する移動速度の範囲が含まれていなくてもよい。この場合には、移動速度が基準範囲から外れると、直ちに不正行為が行われたと判定される。
【0040】
制御回路51は、メダルが正常に投入されたか、不正行為が行われたか、あるいはエラーが生じたかの判定結果を、上位の制御装置(図示せず)へ出力する。
【0041】
図8は、制御回路51により実行されるメダル識別処理の動作フローチャートである。制御回路51は、撮像部4から画像を受け取る度に、このメダル識別処理を実行する。
制御回路51は、画像を2値化する(ステップS101)。そして制御回路51は、2値化画像からメダル候補領域を抽出する(ステップS102)。そして制御回路51は、2値化画像上にメダル候補領域全体が含まれるか否か判定する(ステップS103)。メダル候補領域全体が含まれていなければ、制御回路51は、メダル識別処理を終了する。ただし、メダル候補領域の一部が2値化画像に含まれていれば、すなわち、メダル候補領域があり、かつ、メダル候補領域が2値化画像の右端または左端に接していれば、制御回路51は、メダルの移動速度及び移動方向を求める際に利用できるよう、その2値化画像及びその2値化画像の元の画像の取得時刻をメモリ52に記憶する。
【0042】
ステップS103にて、2値化画像上にメダル候補領域全体が含まれる場合、制御回路51は、メダル候補領域の外形形状はメダルの外形形状と一致するか否か判定する(ステップS104)。メダル候補領域の外形形状はメダルの外形形状と一致しなければ、制御回路51は、通路6内にメダル以外の物が投入されたと判定する。そして制御回路51は、不正行為を遊技機の主制御回路へ通知する(ステップS109)。
【0043】
一方、メダル候補領域の外形形状はメダルの外形形状と一致すれば、制御回路51は、通路6に正規のメダルが投入されたと判定する。そして次に、制御回路51は、2枚の画像上でメダル候補領域の特定点を検出する(ステップS105)。なお、2枚の画像のうちの一つは、メダル検出候補画像とすることができ、他方は、例えば、メモリ52に記憶されている、メダル候補領域の一部を含む2値化画像とすることができる。
【0044】
制御回路51は、特定点間の距離をその2枚の画像の撮影時間間隔で割ることでメダルの移動方向及び移動速度を推定する(ステップS106)。そして制御回路1は、推定された移動方向は順方向かつ移動速度は基準範囲内か否か判定する(ステップS107)。
推定された移動方向は順方向かつ移動速度は基準範囲内であれば、制御回路51は、正規のメダル投入を遊技機の主制御回路へ通知する(ステップS108)。一方、推定された移動方向は逆方向、あるいは移動速度が基準範囲外であれば、制御回路51は、不正行為を遊技機の主制御回路へ通知する(ステップS109)。
ステップS108またはS109の後、制御回路51は、メダル識別処理を終了する。なお、制御回路51は、ステップS105にて、既に取得されている画像のうちで一つしか特定点を検出できない場合には、その後に撮像部4から画像を受け取った時点で、その最新の画像の2値化、メダル候補領域の検出及びステップS105以降の処理を実行してもよい。
【0045】
以上に説明してきたように、このメダル識別装置は、メダル識別装置内に投入された物体を撮影した画像に基づいて、その物体の外形形状がメダルの外形形状と一致するか否かによって、メダルが投入されたか否かを判定する。そのため、このメダル識別装置は、外形形状がメダルの外形形状と異なる、複数の光源を取り付けた不正行為用の治具を誤ってメダルと識別することを防止できる。またこのメダル識別装置は、複数の画像にそれぞれ写っているメダルの特定点の移動量から、メダルの移動方向及び移動速度を推定する。そのため、このメダル識別装置は、投入されたメダルに取り付けた紐を引いて投入されたメダルをメダル識別装置から取り出す不正行為も検知することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば、制御回路は、メダル候補領域の中心及び真円度誤差を求める代わりに、次式に従って、メダル候補領域の外形の円形度Cを、メダル候補領域の外形形状を表す特徴量として算出してもよい。
【数5】


ここでSは、メダル候補領域の面積(すなわち、メダル候補領域に含まれる画素数)を表し、Lは、メダル候補領域の周囲長(すなわち、メダル候補領域の外縁に位置する画素数)を表す。この変形例では、制御回路は、2値化画像上での上側ガイド部材の下端を、メダル候補領域の上端と推定し、下側ガイド部材の上端をメダル候補領域の下端と推定してもよい。そして制御回路は、円形度Cが所定の閾値(例えば、0.9)以上であれば、メダル候補領域の外形形状がメダルの外形形状と一致すると判定し、逆に円形度Cがその閾値未満であれば、メダル候補領域に写っている物体はメダルでないと判定してもよい。
【0047】
また、他の変形例によれば、制御回路は、画像に対して2値化処理を行わずに、直接エッジを検出することで、メダル候補領域を求めてもよい。この場合、制御回路は、画像に対して直接(1)式のように水平方向の近傍画素間演算を行ってエッジ強度を算出し、そのエッジ強度の絶対値が所定のエッジ強度閾値以上となる画素をメダル候補領域のエッジとしてもよい。なお、エッジ強度閾値は、例えば、画像の輝度値の最大値と最小値の差の1/5〜1/2に設定される。またこの例でも、被写体領域内の画素の輝度値の方が背景領域内の画素の輝度値よりも低いので、エッジ強度が正であれば、そのエッジ強度に対応する画素は、メダル候補領域の右側のエッジであり、エッジ強度が負であれば、そのエッジ強度に対応する画素は、メダル候補領域の左側のエッジである。
【0048】
さらに他の変形例によれば、制御回路は、撮像部の撮影範囲内に通路に投入された物体が存在しないときに撮影され、予め制御基板のメモリに記憶された参照画像と、撮像部から受け取った画像とで対応画素間の差分演算を行って、その差分値絶対値が所定の閾値以上となる画素の集合を、メダル候補領域として抽出してもよい。なお、所定の閾値は、例えば、輝度値の取り得る最大値の1/4〜1/2とすることができる。
【0049】
さらに他の変形例によれば、2値化画像に占めるメダル候補領域の面積、すなわち、メダル候補領域に含まれる画素数が、メダルの面積に相当する所定の面積閾値よりも大きい場合、制御回路は、不正行為が行われたと判定し、その旨を遊技機の主制御回路へ通知してもよい。
【0050】
さらに他の変形例によれば、撮像部の撮影範囲よりもメダル投入口側に、メダルの通過を検知するセンサが設けられていてもよい。このセンサは、例えば、通路を挟んで対向するように配置された光源と受光素子とを有する光学センサとすることができる。この場合には、制御回路は、センサがメダルを検知した後に、撮像部により撮影された画像のみを用いて、メダルが写っているか否か判定してもよい。そしてこの場合には、制御回路は、メダルの移動方向及び移動速度を推定せずに、メダル候補領域の外形形状がメダルの外形形状と一致すれば、正規にメダルが投入されたと判定してもよい。
【0051】
さらに他の変形例によれば、光源と撮像部は、通路に対して同一の側に配置されてもよい。この場合には、光源からの光は、メダルまたは光源が配置された側とは通路の反対側の側壁で反射されて撮像部に達することになる。一般に、メダルは金属製であり、光の反射率が高いので、この変形例では、画像上ではメダルが写っている領域に含まれる画素の輝度値は、メダルが写っていない領域に含まれる画素の輝度値よりも高くなる。なお、メダルが写っている領域に含まれる画素の輝度値とメダルが写っていない領域に含まれる画素の輝度値との差が大きくなるように、通路の側壁には、光源が発する波長の光に対して吸収性を持つ塗料が塗布されることが好ましい。
また、制御回路は、画像を被写体領域と背景領域に2値化する際、2値化閾値よりも輝度が高い画素の値よりも、2値化閾値以下の輝度値を持つ画素の値を高くすることで、上記の実施形態と同様の処理を行って、画像にメダルが写っているか否か、及びメダルの移動方向及び移動速度の推定を行える。
【0052】
図9は、本発明の実施形態または変形例によるメダル識別装置を備えた回胴遊技機100の概略斜視図である。また図10は、前面パネルを開いた状態における、回胴遊技機100の概略斜視図である。そして図11は、回胴遊技機100の回路ブロック図である。図9及び図10に示すように、回胴遊技機100は、遊技機本体である本体筺体101と、発光ドラム102a〜102cと、スタートレバー103と、ストップボタン104a〜104cと、前面パネル105とを有する。
また回胴遊技機100は、本体筺体101内に、前面パネル105の背面側に取り付けられたメダル識別装置106と、各種の制御回路などが収容された制御ボックス107と、主制御回路110からの制御信号に応じてメダルを一時貯留し、かつメダルを排出するためのメダル貯留・排出機構108を有する。
そして図11に示されるように、制御ボックス107内には、例えば、回胴遊技機100全体を制御する主制御回路110と、遊技の演出に関連する各部を制御する演出用制御回路111と、回胴遊技機100の各部に電力を供給する電源回路112などが収容されている。
【0053】
前面パネル105の前面の中央上部には開口105aが形成されており、その開口105aを通じて、発光ドラム102a〜102cが視認可能になっている。また開口105aの下側の枠105bの上面には、メダルを投入するための開口105cが形成されており、この開口105cとメダル識別装置106の上面に設けられたメダル投入口とが一致するように、メダル識別装置106が配置されている。なお、メダル識別装置106のメダル排出口は、メダル貯留・排出機構108と接続されており、メダル識別装置106から排出されたメダルは、メダル貯留・排出機構108に回収される。
【0054】
前面パネル105の下部には、下パネルとして、複数の発光ダイオードを含む装飾装置が設けられていてもよい。さらに、装飾装置の下方において、前面パネル105には、メダルを排出するためのメダル排出口105dが形成されている。そしてメダル排出口105dの下方には、排出されたメダルが落下することを防止するためのメダル受け皿105eが取り付けられている。また前面パネル105の左上端近傍及び右上端近傍にはスピーカ(図示せず)が取り付けられてもよい。
【0055】
発光ドラム102a〜102cは、演出用制御回路111からの制御信号に応じて、本体筺体101の前面に対して略平行かつ略水平な回転軸(図示せず)を回転中心として、それぞれ、別個に回転可能となっている。各発光ドラム102a〜102cの表面は、それぞれ、回転方向に沿って複数の略同一幅を持つ領域に区切られ、領域ごとに様々な図柄が描かれている。なお、発光ドラム102a〜102cの代わりに、液晶ディスプレイなどの表示装置が、その表示画面が開口105aを介して視認可能なように設けられてもよい。この場合、表示装置は、演出用制御回路111からの制御信号に応じて、複数のドラムを模擬的に示した画像を表示画面に表示させる。
スタートレバー103は、前面パネル105の枠105bの前面に向かって左側に設けられている。また、枠105bの前面略中央には、ストップボタン104a〜104cが設けられている。ストップボタン104a〜104cは、それぞれ、発光ドラム102a〜102cに対応する。
【0056】
メダル識別装置106は、上記の実施形態または変形例によるメダル識別装置である。そしてメダルが開口105cを通じてメダル識別装置106のメダル投入口に投入されると、メダル識別装置106は、投入されたメダルが正規のものか否か判定し、正規のメダルであれば、その旨を主制御回路110へ出力する。そして主制御回路110は、投入されたメダルに応じて、遊技の回数などを決定し、回胴遊技機100が遊技を開始することを許可する。その後に、スタートレバー103が操作されると、スタートレバー103が操作されたことを示す信号が主制御回路110へ伝達される。そして主制御回路110は、演出用制御回路111に、発光ドラム102a〜102cの回転を開始させる。また演出用制御回路111は、発光ドラム102a〜102cの回転中、遊技者の興趣を高めるために、発光ドラム102a〜102cが停止しているときとは異なる効果音をスピーカを通じて出力させたり、装飾装置の発光ダイオードを明滅させたりしてもよい。
【0057】
その後、ストップスイッチ104a〜104cの何れかが押下されると、主制御回路110は、その押下されたスイッチから押下されたことを示す信号を受信し、その押下されたスイッチに対応する発光ドラムの回転を演出用制御回路111を介して停止させる。あるいは、主制御回路110は、発光ドラム102a〜102cのうち、回転を開始してから所定期間が経過するまでに、対応するストップスイッチが押下されなかった発光ドラムを、その所定期間経過後に、演出用制御回路111を介して停止させる。
そして全ての発光ドラムが停止した時点で、同一の図柄が全ての発光ドラムにわたって一列に並んでいると、主制御回路110は、その図柄に応じた所定枚数のメダルをメダル排出口を通じて排出する。またこの場合、演出制御回路111は、ドラムの回転時及び同一の図柄が全ての発光ドラムにわたって一列に並ばなかったときとは異なる効果音をスピーカを介して出力し、装飾装置の発光ダイオードをその最大輝度で点灯させてもよい。
【0058】
一方、メダル識別装置106は、投入されたメダルが、治具などにより偽装されたもの、あるいは、正規なメダルであっても逆方向へ移動するといった不正な動きをしたと判定した場合には、不正行為が行われた旨を主制御回路110へ通知する。そして主制御回路110は、例えば、回胴遊技機100が設置されたホールの管理システムへ、回胴遊技機100の識別番号とともに、不正行為が行われた旨を通知する。
【0059】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 メダル識別装置
2 筺体
2a メダル投入口
2b メダル排出口
3 光源
4 撮像部
5 制御基板
51 制御回路
52 メモリ
6 通路
7a、7b ガイド部材
100 回胴遊技機
101 本体筺体
102a〜102c 回転ドラム
103 スタートレバー
104a〜104c ストップボタン
105 前面パネル
106 メダル識別装置
107 制御ボックス
108 メダル貯留・排出機構
110 主制御回路
111 演出用制御回路
112 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機本体と、
前記遊技機本体内に収容されたメダル識別装置と、
前記遊技基本体内に収容された主制御回路と、
を有する遊技機であって、
前記メダル識別装置は、
メダルが流下する通路を形成する筺体と、
前記通路の一部を撮影範囲とするように配置され、当該撮影範囲の画像を生成する撮像部と、
前記画像から、前記通路内に投入された物体が写っている領域を抽出し、該領域の外形形状が前記メダルの外形形状と一致する場合にメダルが投入されたと判定し、該判定結果を前記主制御回路へ出力する制御回路と、
を有し、
前記主制御回路は、前記メダル識別装置の制御回路から、メダルが投入されたことを表す判定結果を受け取ると遊技の開始を許可する、
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記制御回路は、前記物体の外形形状が前記メダルの外形形状と一致しない場合、不正行為が行われたと判定し、当該判定結果を前記主制御回路へ出力し、
前記主制御回路は、不正行為が行われたことを表す判定結果を受け取ると、不正行為を通報する、請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記撮像部は、所定の時間間隔ごとに前記撮影範囲を撮影した画像を生成し、
前記制御回路は、異なる時間に撮影された第1の画像及び第2の画像のそれぞれから前記通路内に投入された物体が写っている領域上の特定点を検出し、前記第1の画像上の前記特定点と前記第2の画像上の前記特定点間の距離を前記第1の画像が撮影された時刻と前記第2の画像が撮影された時刻との差で割ることによって当該物体の移動方向及び移動速度を推定し、該推定された移動方向が前記通路を流下する前記メダルの移動方向と一致しないか、あるいは該推定された移動速度が、前記通路を流下する前記メダルの移動速度の基準範囲に含まれなければ、不正行為が行われたと判定し、当該判定結果を前記主制御回路へ出力し、
前記主制御回路は、不正行為が行われたことを表す判定結果を受け取ると、不正行為を通報する、請求項1または2に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75018(P2013−75018A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216632(P2011−216632)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】