説明

遊星ボールミル

【課題】ミルポットに作用する遠心力をミルケーシングで受けるようにして、運転時、ミルケーシング内のミルポットを安定させる。
【解決手段】回転軸2と一体回転する上下回転テーブル3、4に対して、回転軸2の周りに自転可能にミルケーシング5が複数支持され、内面下部にテーパ部5dを有するミルケーシング5内に、フランジ6bを有するミルポット6がすき間をもって嵌め合わせて収納される。その収納状態でミルポット6がテーパ部5d上に支持され、ミルケーシング5とミルポット6の間に上方から楔7が挿入され、ミルポット6のフランジ6bがミルケーシングの上端部に対してすき間をもって植え込みボルト21、ナット21aで固定されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転軸の周囲に配置した複数のミルポットを公転させながら自転させ、ミルポット内の原料を粉砕ボールで粉砕する遊星ボールミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原料の粉砕には回転軸の周囲に配置した複数のミルポットを公転させながら自転させる遊星ボールミルが使用されている。この遊星ボールミルとしては、回転軸と一体回転する上下の回転テーブルに、筒状のミルケーシングを回転軸回りに軸受により回転可能に支持し、そのミルケーシング内にミルポットを収納するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された遊星ボールミルは、回転軸に対して同軸上に固定した太陽歯車に、ミルケーシングに固定した遊星歯車を噛み合わせ、その遊星歯車を内歯歯車に噛み合わせている。駆動力により回転軸を回転させることで、ミルケーシングとともにミルポットを公転させながら自転させて、ミルポット内の原料を粉砕ボールで粉砕する。
【0004】
また、ミルポット内への原料を投入、またはミルポット内から処理物の取り出しを容易にするため、ミルケーシングからミルポットを着脱可能としている。このとき、そのミルポットの着脱を容易にする必要から、ミルポットをミルケーシングに対してすき間をもって嵌め合わせ、収納している。
【0005】
さらに、ミルポットをミルケーシングに対して一体回転させるため、ミルポットの上部に押さえ金具を介してノブ付きのボルトを取り付け、ミルケーシングの下端部の上下方向の嵌め込みピンとで、ミルポットを上下方向に挟むように固定されている。
【0006】
上記のほか、図7に示すように、ミルポット42を筒状のミルケーシング41内にすき間tをもって収納し、ミルポット42の上部に形成したフランジ43を、ミルケーシング41に形成したつば部44に対して、植込みボルト45、ナット46により固定するようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−146698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、遊星ボールミルの運転時、ミルケーシング内においてミルポットに遠心力が作用する。ここで、特許文献1に開示されたミルポットは、ミルケーシングにすき間をもって嵌められ、ノブ付きボルトと嵌め込みピンで上下方向に固定されているのみである。従って、ミルポットに遠心力が作用すると、遠心力が作用する方向には固定されていないため、ミルポットはミルケーシング内で安定しない。
【0009】
この状態では、ミルポットに作用する遠心力を押さえ金具を介してノブ付きボルトで受けることとなるため、運転中、ノブ付きボルトには常時曲げ応力とせん断応力が繰り返し負荷され、ノブ付きボルトの寿命が短くなるという問題があった。
【0010】
また、図7に示すミルポット42は、ミルケーシング41の内周面に対してすき間tを有し、その上部において、フランジ43とつば部44とが固定されているのみで、遠心力が作用する方向には固定されていない。このため、このミルポット42に遠心力が作用すると、前述の場合と同様に、運転時、フランジ43を介して、植込みボルト45にも常時曲げ応力とせん断応力が繰り返し負荷されて、植込みボルト45の寿命が短くなるという問題があった。
【0011】
この問題を解決するために、ボルトの径を大きくし、強度を大きくすることが考えられる。しかし、高速に公転させるミルケーシング等を支持する軸受の負担を軽減するため、各部材の重量を軽く設計する必要があり、重量の増す大径のボルトを使用することが難しい。
【0012】
そこで、この発明の課題は、ミルポットに作用する遠心力をミルケーシングで受けるようにして、運転時、ミルケーシング内のミルポットを安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明は、回転軸と一体回転する回転テーブルと、その回転テーブルの前記回転軸の周りに自転可能に複数支持される筒状のミルケーシングと、そのミルケーシング内にすき間をもって嵌め合わせて収納される底部を有する筒状のミルポットとを備えた遊星ボールミルにおいて、前記ミルケーシングは、その内面下部に下方に向かって内側に傾斜するテーパ部を有し、前記ミルポットは、前記ミルケーシング内への収納状態で前記テーパ部上に支持され、前記収納状態で前記ミルケーシングと前記ミルポットの間に挿入される楔と、前記ミルポットを前記テーパ部に押し付ける押し付け部材とを備えたものとしたのである。
【0014】
このようにすると、ミルケーシング内のミルポットは、上部が楔により、下部がミルケーシングのテーパ部により支持される。この支持によって、運転中、ミルポットに作用する遠心力を楔とミルケーシングのテーパ部とで受けることができる。
【0015】
前記ミルポットとしては、そのミルポットの中心軸と前記ミルケーシングの回転中心が合致する状態で前記ミルケーシングに固定されたものとすることができる。このようにすると、ミルケーシングの回転中心にミルポットの中心軸が合致するため、ミルケーシングの回転(自転)が安定する。
【0016】
また、前記楔が周方向に3箇所以上挿入され、その楔により、前記ミルポットがそのミルポットの中心軸と前記ミルケーシングの回転中心が合致する状態で、前記ミルケーシングに固定されるようにしてもよい。
【0017】
一方、前記ミルポットとしては、前記ミルポットの外周面の少なくとも一部が前記ミルケーシングの内周面に接する状態で、前記ミルケーシングに固定され、前記楔により、前記ミルケーシングの内周面に前記ミルポットの外周面の一部が押し付けられるようにすることもできる。
【0018】
この場合、楔と、ミルポットが接触するミルケーシングの内周面の接触部分とで、ミルポットをミルケーシングに対して確実に固定することができる。
【0019】
さらに、前記ミルポットとしては、外向きのフランジを有し、前記収納状態で、そのフランジが前記ミルケーシングの上端部に対して上下方向のすき間をもって位置するものであり、前記押し付け部材が前記フランジを前記ミルケーシングの上端部に対して前記すき間をもって締め付けるねじ部材であるものとすることもできる。
【0020】
このようにすると、ねじ部材の締め付けにより、フランジを介してミルポットをミルケーシングのテーパ部に押し付け、かつフランジをミルケーシングの上端部に固定することができる。
【0021】
さらに、前記ミルポットとしては、その下端部に下方に向かって内側に傾斜する傾斜部を有し、その傾斜部と前記ミルケーシングのテーパ部とが、前記ミルケーシングの回転中心に対して同じ傾斜角を有するものとすることができる。
【0022】
このミルポットをミルケーシングに収納すると、その傾斜部とテーパ部とが面接触して、ミルケーシングのテーパ部に対するミルポットの座りが良くなり、ミルポットがより安定する。また、ミルポットに作用する遠心力を受けるテーパ部の面積が大きくなるので、ミルポットの下部が安定して、より高速運転に対応することが可能となる。
【0023】
また、前記ミルケーシングとしては、前記楔を挿入する凹部を有し、この凹部は前記収納状態でのミルポットの外周面に臨む内面と、前記ミルケーシングの回転中心とのなす角度が前記楔のくさび角と同じに形成されるようにしてもよい。
【0024】
このように凹部を形成すると、この凹部に挿入した楔は、ミルポットの外周面に臨む内面がミルポットの外周面に対向する。このため、楔はミルポットの外周面に接する上下方向の範囲が大きくなり、くさび効果が増大する。
【0025】
楔を挿入した状態で固定するために、前記楔を前記ミルケーシングに対する固定部材を有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、この発明の遊星ボールミルは、ミルケーシング内のミルポットの上部が楔により支持され、下部がミルケーシングのテーパ部により支持されるので、運転中にミルポットに作用する遠心力を楔とミルケーシングのテーパ部とで受けて、ミルポットをミルケーシング内で安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態の遊星ボールミルを示す縦断面図
【図2】同上のミルケーシングとミルポットとの分解斜視図
【図3】同上のミルケーシングとミルポットとを示す縦断面図
【図4】(a)図3のA−A線における断面図、(b)同上のミルケーシングとミルポットとを示す上面図
【図5】この発明の他の実施形態のミルケーシングとミルポットとを示す縦断面図
【図6】図5のB−B線における断面図
【図7】従来の遊星ボールミルのミルケーシングとミルポットとを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明に係る遊星ボールミルの一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
この遊星ボールミルは、図1、2に示すように、ミルフレーム1に縦方向に回転自在に取り付けられた回転軸2と、その回転軸2と一体回転する上下一対の回転テーブル3、4と、各回転テーブル3、4の回転中心に対して同心円上に回転可能に支持された筒状のミルケーシング5と、各ミルケーシング5内に収納されるミルポット6と、ミルケーシング5とミルポット6の間に上方から挿入される楔7とを備えている。
【0029】
回転軸2は、下部に取り付けられたプーリ8を介して回転駆動し、ミルフレーム1の上部に形成された筒状のハウジング部9内に縦向きに上下の軸受10、10により回転可能に支持されている。また、回転軸2の上端部には太陽歯車12が一体回転するように固定されている。
【0030】
上下一対の回転テーブル3、4は円板状をなし、太陽歯車12よりも下方で、回転軸2に対して同心状となるように一体回転可能に固定されている。上回転テーブル3に、その回転中心に対して同心円上に180°の位相で貫通孔13が2箇所に形成され、下回転テーブル4にも同様の貫通孔14が形成されている。
【0031】
上下回転テーブル3、4の貫通孔13、14に軸受15、16がそれぞれ固定され、軸受15、16によりミルケーシング5が回転可能に支持されている。各ミルケーシング5の外周には遊星歯車17が固定されており、その遊星歯車17が図示しない内歯歯車と、回転軸2の太陽歯車12に噛み合わされている。駆動力によりプーリ8を介して回転軸2を回転させることで、各ケーシング5がその内部のミルポット6とともに、回転軸2の周りを公転しながら自転するようになっている。
【0032】
図2、3に示すように、ミルケーシング5は円筒状をなし、上端部に肉厚のつば部5aが形成されている。つば部5aは内面上端部に凹部11が3箇所に等間隔に形成されている。各凹部11は上方が開放し、ミルケーシング5の回転中心Pに対する直角断面(横断面)の形状が矩形をなしている。
【0033】
凹部11の内面のうち、ミルケーシング5内のミルポット6の外周面に臨む内面11aが下方に向かって内側に傾斜している。また、その内面11aと、ミルケーシング5の回転中心Pとのなす角度βが、楔7のくさび角αと同じ角度に形成されている。
【0034】
つば部5aの上面において、隣り合う凹部11の間に2箇所のミルポット固定用のねじ穴5bが、凹部11の外側に楔固定用のねじ穴5cが形成されている。
【0035】
ミルケーシング5の内面下部には、下方に向かって内向きに傾斜するテーパ部5dが形成されている。テーパ部5dは、ミルケーシング5の内面下部の全周に形成されており、ミルケーシング5内に収納されるミルポット6を支持する。この実施形態では、テーパ部5dは、ミルケーシング5の内面下部の全周に形成されているが、ミルポット6を支持可能であれば、周方向に間欠的に形成してもよい。
【0036】
ミルケーシング5の外周部には、冷却フィン18が上下の回転テーブル3、4の間に取り付けられている(図1参照)。運転時、冷却フィン18がミルケーシング5からの熱を放出して、ミルケーシング5を冷やすことができる。冷却フィン18は、一般に熱伝導性の良いアルミニウム系材料で形成され、フィンの高さやピッチの異なるものを適宜に交換可能となっている。
【0037】
ミルポット6は、ミルケーシング5内に上方から嵌める円筒状のポット本体6aと、蓋19、底板20とからなる。ポット本体6aは、その外径がミルケーシング5の内径よりも小さく、その上部の外周部に外向きのフランジ6bが3箇所等間隔に形成されている。このポット本体6aの外径寸法により、ミルポット6はミルケーシング5内にすき間をもって嵌め合わされ収納される。
【0038】
また、ポット本体6aは、内面の上端部が上方に向かって内向きに傾斜し、上方の開口部がポット本体6aの内径よりも小径となっている。ポット本体6aの上面に、蓋固定用のねじ穴6cが形成され、ポット本体6aの外面の下端部には、下方に向かって内向きに傾斜する傾斜部6dが全周に形成されている。
【0039】
この傾斜部6dとミルケーシング5のテーパ部5dとは、ミルケーシング5の回転中心Pに対して同じ傾斜角(例えば、45度)に形成されている。このため、ミルポット6をミルケーシング5に収納すると、ミルポット6は、傾斜部6dをテーパ部5dに接触させながら、下方内向きに移動し、ミルケーシング5の回転中心Pとミルポット6の中心軸Qが合致する状態で、テーパ部5d上に支持される。
【0040】
テーパ部5d上のミルポット6は、傾斜部6dとテーパ部5dとが面接触し、ミルケーシング5の内周面に対してすき間bを有する状態で安定する。すき間bを有することにより、ミルポット6の収納、取り出し作業が容易となる。さらに、長期使用において、ミルポット6の表面に錆や傷による凹凸が生じた場合でも、スムーズに収納、取り出し作業を行うことができ、安定的な操業が可能となる。
【0041】
なお、ミルポット6としては、ミルケーシング5への収納状態で、テーパ部5d上に支持されるものであれば、傾斜部6dを形成せず、ミルポット6の外面の下端部を円筒面に形成してもよい。
【0042】
ポット本体6aの各フランジ6bは、ミルポット6のミルケーシング5内への収納状態で、ミルケーシング5のつば部5aに対して上下方向にすき間aをもって位置するようになっている(図3参照)。
【0043】
各フランジ6bの周方向両側には、貫通孔6eが形成されている。この貫通孔6eをミルポット固定用のねじ穴5bに一致させ、押し付け部材である植込みボルト21、ナット21aの締め付けにより、ミルポット6のフランジ6bがミルケーシング5の上端部(つば部5a)に対してすき間aをもって固定され、ミルポット6の傾斜部6dがミルケーシング5のテーパ部5dに押し付けられる。
【0044】
押し付け部材はミルポット6のフランジ6bをつば部5aに締め付けるねじ部材を採用することができる。ねじ部材としては、例えば、植込みボルト21を採用すると、ナット21aを外せば、植込みボルト21を外すことなく、ミルポット6をミルケーシング5から取り外すことが可能であり、作業性の点から好ましい。
【0045】
ミルポット6の蓋19は、ミルポット本体6aと同じ外径を有する円板状をなし、中央部分には、ミルポット本体6a上部開口部に嵌る突出部19aが形成され、突出部19aの外側に貫通孔19bが形成されている。
【0046】
蓋19の突出部19aがミルポット本体6aの上方の開口部に嵌められ、貫通孔19bを蓋固定用のねじ穴6cに一致させ、植込みボルト22、ナット22aによって蓋19がポット本体6aに固定される。
【0047】
ミルポット6の底板20は、中央に凹部を有する円板状をなし、外周面にねじ山が形成されている。このねじ山をポット本体6aの下方の開口部周縁に形成されたねじ溝に締め付けて、ポット本体6aの下方の開口部を閉塞する。
【0048】
楔7は、その長さ方向に対して直角断面の形状が矩形をなし、ミルケーシング5に対する固定片7aを有している。楔7のミルポット6側の側面7bが、ミルケーシング5の回転中心Pと平行に形成され、側面7bに向かい合う側面7cが下方に向かって側面7bへ接近するテーパ状に形成されている。側面7bと側面7cとにより形成される角度がくさび角αとなっている。
【0049】
楔7の固定片7aは、楔7の上部において側面7c側に突き出ており、貫通孔7dを有している。この貫通孔7dを楔固定用のねじ穴5cに一致させ、植込みボルト23、ナット23aによって、楔7がミルケーシング5のつば部5aに固定される。
【0050】
凹部11に挿入した楔7は、ミルポット6の外周面に臨む側面7bがミルポット6の外周面に対向し、側面7cが凹部11の内面11aに面接触する状態となる。このため、楔7のミルポット6の外周面に接する上下方向の範囲が大きくなり、くさび効果が大きくなる。
【0051】
ミルケーシング5内にミルポット6が収納されると、ミルケーシング5の回転中心Pとミルポット6の中心軸Qが合致する状態で、テーパ部5d上に支持される。このとき、各凹部11内に楔7が挿入され、ミルケーシング5のつば部5aに植込みボルト23、ナット23aにより固定されると、各楔7がミルポット6を周方向の3箇所から押し付ける。
【0052】
この状態で、ミルポット6のフランジ6bが、ミルケーシング5のつば部5aに対してすき間aをもって植込みボルト21、ナット21aによって固定されると、ミルポット6の傾斜部6dがミルケーシング5のテーパ部5dに押し付けられる。
【0053】
このようにミルポット6は、上部が楔7によりミルケーシング5に固定され、下部の傾斜部6dがテーパ部5dに押し付けられる。このため、遊星ボールミルの運転中、ミルポット6に作用する遠心力を、楔7とミルケーシング5のテーパ部5dとで受けることができ(図4の矢印参照)、ミルポット6がミルケーシング5内で安定する。
【0054】
ミルポット6がミルケーシング5内で安定すると、フランジ6bをつば部5aに固定する植込みボルト21に対して、曲げ応力とせん断応力が作用しなくなり、植込みボルト21の寿命が短くなることを防止することができ、植込みボルト21の交換が不要となる。
【0055】
また、ミルポット6の傾斜部6dがテーパ部5dに押し付けられているので、運転中、ミルポット6が内部のボールの運動により発熱し上下方向に熱膨張しても、押し付け状態が維持される。その結果、発熱するミルポット6をミルケーシング5に固定することができ、長時間の運転が可能となる。また、運転開始時等、発熱していないミルポット6も、押し付け状態が維持されて、ミルケーシング5に対して確実に固定される。
【0056】
この発明に係る遊星ボールミルの他の実施形態を図5、6に基づいて説明する。なお、以下においては、前述した一実施形態に係る遊星ボールミルとの相違点のみを述べ、同一に考えられる構成には同符号を用いて、その説明を省略する。
【0057】
この実施形態は、ミルケーシング5とミルポット6の間に楔7が2箇所に挿入され、ミルポット6の外周面の一部をミルケーシング5の内周面に接触させた状態で、ミルポット6のフランジ6bがミルケーシング5のつば部5aに固定されたものである。
【0058】
このミルケーシング5は、図6に示すように、凹部11が周方向に2箇所に形成され、各凹部11は、ミルケーシング5の回転中心Pを基準にして90度をなす位置に形成されている。なお、楔7を挿入する凹部11の位置は、図6に示す態様に限られず、楔7の挿入により、ミルケーシング5の内周面にミルポット6の外周面の一部が押し付けられる位置であればよい。
【0059】
また、ミルケーシング5は、収納されるミルポット6の傾斜部6dとテーパ部5dとが面接触し、かつミルポット6の外周面の一部がミルケーシング5の内周面に接触する状態で、ミルポット6をテーパ部5d上で支持するものである。
【0060】
ミルケーシング5内にミルポット6が収納されると、テーパ部5dと傾斜部6dとが面接触し、かつ、ミルポット6の外周面の一部がミルケーシング6の内周面に接触する。このとき、ミルケーシング5の回転中心Pとミルポット6の中心軸Qが平行となり、ミルポット6はミルケーシング5のテーパ部5d上に支持される。
【0061】
ミルケーシング5内にミルポット6を収納し、両凹部11に楔7を挿入することで、ミルポット6の外周面の一部がミルケーシング5の内周面の上端部からテーパ部5dにわたって押し付けられる(図5参照)。このため、遊星ボールミルの運転中、ミルポット6に作用する遠心力を楔7とミルケーシング5の内周面の上端部からテーパ部5dにわたる範囲とで受けることができる(図6の矢印参照)。これにより、上述の一実施形態の場合と同様に、運転中でのミルポット6がミルケーシング5内で安定する。
【符号の説明】
【0062】
1 ミルフレーム
2 回転軸
3 上回転テーブル
4 下回転テーブル
5 ミルケーシング
5a つば部
5b ねじ穴(ミルポット固定用)
5c ねじ穴(楔固定用)
5d テーパ部
6 ミルポット
6a ポット本体
6b フランジ
6c ねじ穴(蓋固定用)
6d 傾斜部
6e 貫通孔
7 楔
7a 固定片
7b、7c 側面
7d 貫通孔
8 プーリ
9 ハウジング部
10 軸受
11 凹部
11a 内面
12 太陽歯車
13、14 貫通孔
15、16 軸受
17 遊星歯車
18 冷却フィン
19 蓋
20 底板
21、22、23 植込みボルト
21a、22a、23a ナット
40 軸受
41 ミルケーシング
42 ミルポット
43 フランジ
44 つば部
45 植込みボルト
46 ナット
P ミルケーシングの回転中心
Q ミルポットの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(2)と一体回転する回転テーブル(3、4)と、その回転テーブル(3、4)の前記回転軸(2)の周りに自転可能に複数支持される筒状のミルケーシング(5)と、そのミルケーシング(5)内にすき間をもって嵌め合わせて収納される底部を有する筒状のミルポット(6)とを備えた遊星ボールミルにおいて、
前記ミルケーシング(5)は、その内面下部に下方に向かって内側に傾斜するテーパ部(5d)を有し、前記ミルポット(6)は、前記ミルケーシング(5)内への収納状態で前記テーパ部(5d)上に支持され、前記収納状態で前記ミルケーシング(5)と前記ミルポット(6)の間に挿入される楔(7)と、前記ミルポット(6)を前記テーパ部(5
d)に押し付ける押し付け部材とを備えたことを特徴とする遊星ボールミル。
【請求項2】
前記ミルポット(6)は、そのミルポット(6)の中心軸と前記ミルケーシング(5)の回転中心が合致する状態で、前記ミルケーシング(5)に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の遊星ボールミル。
【請求項3】
前記楔(7)が周方向に3箇所以上挿入され、その楔により、前記ミルポット(6)が、そのミルポット(6)の中心軸と前記ミルケーシング(5)の回転中心が合致する状態で、前記ミルケーシング(5)に固定されたことを特徴とする請求項2に記載の遊星ボールミル。
【請求項4】
前記ミルポット(6)は、前記ミルポット(6)の外周面の少なくとも一部が前記ミルケーシング(5)の内周面に接する状態で、前記ミルケーシング(5)に固定され、前記楔(7)により、前記ミルケーシング(5)の内周面に前記ミルポット(6)の外周面の一部が押し付けられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の遊星ボールミル。
【請求項5】
前記ミルポット(6)は外向きのフランジ(6b)を有し、前記収納状態で、そのフランジ(6b)が前記ミルケーシング(5)の上端部に対して上下方向のすき間をもって位置するものであり、前記押し付け部材が前記フランジ(6b)を前記ミルケーシング(5)の上端部に対して前記すき間をもって締め付けるねじ部材(21)であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の遊星ボールミル。
【請求項6】
前記ミルポット(6)は、その下端部に下方に向かって内側に傾斜する傾斜部(6d)を有し、その傾斜部(6d)と前記ミルケーシング(5)のテーパ部(5d)とが、前記ミルケーシング(5)の回転中心に対して同じ傾斜角を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の遊星ボールミル。
【請求項7】
前記ミルケーシング(5)は前記楔(7)を挿入する凹部(11)を有し、この凹部(11)は前記収納状態でのミルポット(6)の外周面に臨む内面と、前記ミルケーシング(5)の回転中心とのなす角度が、前記楔(7)のくさび角と同じに形成されたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の遊星ボールミル。
【請求項8】
前記楔(7)は、前記ミルケーシング(5)に対する固定部材を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の遊星ボールミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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