説明

遊星差動歯車減速機、および画像形成装置

【課題】遊星歯車やキャリアに撓み、傾き、ねじれなどが生ずることなく、低振動、低騒音で、かつ高効率であり、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供する。
【解決手段】モータ軸(入力軸)17に設けた太陽歯車21と、その太陽歯車に噛み合う遊星歯車22と、その遊星歯車を自転自在にかつ太陽歯車まわりに公転自在に支持するキャリア23と、遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車24と、その固定内歯歯車と異なる歯数を有し、固定内歯歯車と同様に遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車25とが備えられており、可動内歯歯車の回転中心に出力軸13が設けられている。かかる遊星差動歯車減速機20において、固定内歯歯車24の歯数が可動内歯歯車25の歯数より少なくなっているとともに、遊星歯車22が可動内歯歯車25と噛み合う歯幅領域Bで、太陽歯車21が遊星歯車22に噛み合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小型モータなどの駆動源に直結し、入力軸から入力した駆動源の回転を減速して出力軸から出力する遊星差動歯車減速機に関する。および、そのような遊星差動歯車減速機を介して駆動源の回転を減速して像担持体に伝達する、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機などの画像形成装置に関する。特にそのうち、帯電・光書込み・現像・転写・クリーニングなどの電子写真プロセスを繰り返して像担持体上に順次トナー画像を形成し、そのトナー画像を逐次転写して用紙・カード・OHPフィルムなどの記録材に記録を行う電子写真式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型軽量で高減速比であり、大トルク伝達が可能な減速機として、一般的に遊星差動歯車減速機が知られている。この種の遊星差動歯車減速機では、入力軸に設けた太陽歯車と、その太陽歯車に噛み合う遊星歯車と、その遊星歯車を自転自在にかつ太陽歯車まわりに公転自在に支持するキャリアと、遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、その固定内歯歯車と異なる歯数を有し遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車とが備えられており、可動内歯歯車の回転中心に出力軸が設けられて、入力軸の回転が減速して出力軸から出力される構成になっている。
【0003】
このような構成になっていることから、太陽歯車で駆動する遊星歯車が太陽歯車のまわりを1回転するときに、固定内歯歯車に対して可動内歯歯車が、その歯数差分の角度しか回転しないようになっている。そこで、歯数差をわずかにすれば、高減速比で、大トルク伝達が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−255517号公報
【特許文献2】特開2003−194158号公報
【特許文献3】特開平5−321987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の遊星差動歯車減速機には、遊星歯車がそれとかみ合う太陽歯車と固定内歯歯車と可動内歯歯車の3つの部材から力を受けることにより、遊星歯車に撓みや傾きが生じ、また遊星歯車を支持しているキャリアにも遊星歯車が受けた力によってねじれや傾きが発生するという問題があった。
【0006】
例えば特許文献1に記載されているような構成とすると、図8に示すように、可動内歯歯車噛み合い部K1では、遊星歯車1に、太陽歯車から受ける力aと可動内歯歯車から受ける力cとが逆向きに加わるから、遊星歯車1を傾ける力が相殺されるものの、固定内歯歯車噛み合い部K2では、太陽歯車から受ける力aと固定内歯歯車から受ける力bとが同じ方向に働くから、遊星歯車1を傾ける大きな力が加わって、遊星歯車1にねじれや、図中鎖線で示すような傾きを生ずることとなる。
【0007】
また、例えば特許文献2に記載されているような構成とすると、図7に示すように、可動内歯歯車噛み合い部K1では、可動内歯歯車から受ける力cと相殺していた太陽歯車から受ける力aがなくなるとともに、固定内歯歯車噛み合い部K2では、遊星歯車1に、同様に太陽歯車から受ける力aと固定内歯歯車から受ける力bとが同じ方向に働くから、やはり遊星歯車1を傾ける大きな力が加わって、遊星歯車1の撓み、ねじれ、傾きをさらに増大させることとなる。
【0008】
そして、遊星歯車1やキャリアに撓み、傾き、ねじれなどが生じると、遊星歯車1と噛み合う太陽歯車、固定内歯歯車、可動内歯歯車が片当たりを起こし、振動、騒音が発生し、太陽歯車の入力から可動内歯歯車の出力までの回転伝達精度や伝達効率が悪くなるという問題があった。
【0009】
そこで、この発明の第1の目的は、遊星歯車やキャリアに撓み、傾き、ねじれなどが生ずることなく、低振動、低騒音で、かつ高効率であり、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することにある。
【0010】
この発明の第2の目的は、入力軸と固定内歯歯車の同軸度を出して、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することにある。
【0011】
この発明の第3の目的は、入力軸とキャリアの同軸度を出して、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することにある。
【0012】
この発明の第4の目的は、入力軸と可動内歯歯車の同軸度を出すとともに、入力軸の撓みを防止して、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することにある。
【0013】
この発明の第5の目的は、寿命を長くした小型の遊星差動歯車減速機を提供することにある。
【0014】
この発明の第6の目的は、遊星歯車やキャリアに撓み、傾き、ねじれなどが生ずることなく、低振動、低騒音で、かつ高効率であり、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、請求項1に記載の発明は、上述した第1の目的を達成すべく、
モータ軸等の入力軸に設けた太陽歯車と、その太陽歯車に噛み合う遊星歯車と、その遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、その固定内歯歯車と異なる歯数を有し、固定内歯歯車と同様に遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車とが備えられており、可動内歯歯車の回転中心に出力軸が設けられている遊星差動歯車減速機において、
固定内歯歯車の歯数が可動内歯歯車の歯数より少なくなっているとともに、
遊星歯車が可動内歯歯車と噛み合う歯幅領域で、太陽歯車が遊星歯車に噛み合わされていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、上述した第2の目的を達成すべく、請求項1に記載の遊星差動歯車減速機において、入力軸が、駆動源のボス部から突出されており、そのボス部にはめ合わせて固定内歯歯車が固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、上述した第3の目的を達成すべく、請求項1または2に記載の遊星差動歯車減速機において、遊星歯車を自転自在にかつ太陽歯車まわりに公転自在に支持するキャリアを有し、そのキャリアが、軸受を介して入力軸まわりに回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、上述した第4の目的を達成すべく、請求項1ないし3のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機において、入力軸の先端が、軸受を介して可動内歯歯車にはめ合わされてその可動内歯歯車の回転中心で回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、上述した第5の目的を達成すべく、請求項1ないし4のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機において、太陽歯車が直接噛み合わない側の固定内歯歯車と遊星歯車の噛み合い領域を転位させ、太陽歯車が噛み合う領域は通常の歯形形状のままで転位させない構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、上述した第6の目的を達成すべく、請求項1ないし5のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機を介して、モータ等の駆動源の回転が減速して感光体ドラム等の像担持体に伝達される構成となっていることを特徴とする、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機などの画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
入力軸に設けた太陽歯車と、その太陽歯車に噛み合う遊星歯車と、その遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、その固定内歯歯車と異なる歯数を有し、固定内歯歯車と同様に遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車とが備えられており、可動内歯歯車の回転中心に出力軸が設けられている遊星差動歯車減速機において、固定内歯歯車の歯数が可動内歯歯車の歯数より少なくなっている構成では、遊星歯車は固定内歯歯車と可動内歯歯車から両歯面を挟み込む方向に抗力を受けるとともに、固定内歯歯車と可動内歯歯車とのかみ合い位置が歯幅方向に異なっていることから、遊星歯車には歯幅方向にモーメントが働き、遊星歯車(軸方向)、軸、キャリアなどに撓みや傾きが発生しやすくなる。また、遊星歯車は、太陽歯車からは片歯面に力を受けている。
【0022】
しかし、請求項1に記載の発明によれば、遊星歯車が可動内歯歯車と噛み合う歯幅領域で、太陽歯車が遊星歯車に噛み合わされているので、遊星歯車が太陽歯車から受ける力による歯幅方向のモーメントと、可動内歯歯車から受ける抗力によるモーメントとが打ち消し合う方向に働き、歯の片当たりの原因となる遊星歯車(軸方向)、入力軸、キャリアなどの撓みや傾きやねじれなどの発生を防ぎ、低騒音、低振動で、かつ高効率であり、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、入力軸が、駆動源のボス部から突出されており、そのボス部にはめ合わせて固定内歯歯車が固定されているので、駆動源のボス部を介して入力軸と固定内歯歯車の同軸度を出して、一層、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、遊星歯車を自転自在にかつ太陽歯車まわりに公転自在に支持するキャリアを有し、そのキャリアが、軸受を介して入力軸まわりに回転自在に支持されているので、軸受を介して入力軸とキャリアの同軸度を出して、一層、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、入力軸の先端が、軸受を介して可動内歯歯車にはめ合わされてその可動内歯歯車の回転中心で回転自在に支持されているので、軸受を介して入力軸と可動内歯歯車の同軸度を出すとともに、入力軸の先端を支持することでその撓みを防止して、一層、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を提供することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、太陽歯車が直接噛み合わない側の固定内歯歯車と遊星歯車の噛み合い領域を転位させ、太陽歯車が噛み合う領域は通常の歯形形状のままで転位させない構成されているので、太陽歯車からの力は通常歯形形状で構成される遊星歯車領域で受けることにより耐久性を向上し、寿命を長くした小型の遊星差動歯車減速機を提供することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、画像形成装置において、請求項1ないし5のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機を介して駆動源の回転が減速して像担持体に伝達される構成となっているので、遊星歯車やキャリアに撓み、傾き、ねじれなどが生ずることなく、低振動、低騒音で、かつ高効率であり、高精度駆動伝達可能な小型の遊星差動歯車減速機を用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図9には、画像形成装置の一例であるタンデム方式の電子写真式カラー複写機における全体概略構成を示す。
図中符号100は複写機本体、200はそれを載せる給紙テーブル、300は複写機本体100上に取り付けるスキャナ、400はさらにその上に取り付ける自動原稿搬送装置(ADF)である。
【0029】
複写機本体100には、中央に、無端ベルト状の中間転写ベルト5を設ける。そして、図示するように、例えば3つの支持ローラ44・45・46に掛け回して図中時計まわりに回転搬送可能に張り渡す。この図示例では、3つのうち第2の支持ローラ45の左に、画像転写後に中間転写ベルト5上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置47を設ける。
【0030】
また、3つのうちの第1の支持ローラ44と第2の支持ローラ45間にほぼ水平に張り渡した中間転写ベルト5上には、その張り渡し方向に沿って、イエロ(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の4つの作像手段48Y,48C,48M,48Bkを横に並べて配置してタンデム作像装置50を有する。個々の作像手段48は、ドラム状の感光体ドラム1Y,1C,1M,1Bkのまわりに、帯電手段、現像手段、1次転写手段6、クリーニング手段、除電手段などを備えてなる。
【0031】
さて、図9に示すように、タンデム作像装置50の上には、さらに光書込み手段51を設ける。
【0032】
一方、中間転写ベルト5の張り渡し領域の下方には、2次転写装置52を備える。2次転写装置52は、図示例では、2つのローラ53間に、無端ベルトである2次転写ベルト54を掛け渡して構成し、第3の支持ローラ46に押し当てて中間転写ベルト5上の画像を記録材に転写する。
【0033】
2次転写装置52の横には、記録材上の転写画像を定着する定着装置8を設ける。この例の定着装置8は、無端ベルトである定着ベルト56に加圧ローラ57を押し当てて構成する。そして、全部でもよいが、図示例ではその一部を、中間転写ベルト5の張り渡し領域の下方に入り込ませて備えてなる。
【0034】
上述した2次転写装置52には、画像転写後の記録材をこの定着装置8へと搬送する記録材搬送機能も備えてなる。2次転写装置としては、後述する例のように、2次転写ローラ7を用いても良い。また、2次転写装置として、非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合は、記録材搬送機能を併せて備えることは難しくなる。
【0035】
さて、このような2次転写装置52および定着装置8の下には、上述したタンデム作像装置50と平行に、記録材の両面に画像を形成すべく記録材を反転する記録材反転装置58を備える。
【0036】
ところで、いまこのカラー複写機を用いてコピーをとるときは、自動原稿搬送装置400の原稿台60上に原稿をセットする。または、自動原稿搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス62上に原稿をセットし、自動原稿搬送装置400を閉じてそれで押さえる。
【0037】
そして、不図示のスタートスイッチを押すと、自動原稿搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス62上へと移動してから、スキャナ300を駆動し、第1走行体63および第2走行体64を走行する。そして、第1走行体63で光源からの光を原稿面で反射して第2走行体64に向け、その光を第2走行体64のミラーで反射して結像レンズ65を通して読取りセンサ66に入れ、原稿内容を読み取る。
【0038】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ44・45・46の1つを回転駆動して他の2つのローラを従動回転し、中間転写ベルト5を回転搬送する。同時に、個々の作像手段48でその感光体ドラム1を回転して各感光体ドラム1上にそれぞれ、ブラック・シアン・マゼンタ・イエロの単色画像を形成する。そして、中間転写ベルト5の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写ベルト5上に合成カラー画像を形成する。
【0039】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ72の1つを選択回転し、ペーパーバンク73に多段に備える給紙カセット74の1つから記録材を繰り出し、分離ローラ75で1枚ずつ分離して給紙路76に入れ、搬送ローラ77で搬送して複写機本体100内の給紙路78に導き、レジストローラ79に突き当てて止める。または、給紙ローラ80を回転して手差しトレイ81上の記録材を繰り出し、分離ローラ82で1枚ずつ分離して手差し給紙路83に入れ、同じくレジストローラ79に突き当てて止める。
【0040】
そして、中間転写ベルト5上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ79を回転し、中間転写ベルト5と2次転写装置52との間に記録材を送り込み、2次転写装置52で転写して記録材上にカラー画像を形成する。
【0041】
画像転写後の記録材は、2次転写装置52で搬送して定着装置8へと送り込み、定着装置8で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪85で切り換えて排出ローラ86で排出し、排紙トレイ87上にスタックする。または、切換爪85で切り換えて記録材反転装置58に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を形成して後、排出ローラ86で排紙トレイ87上に排出する。
【0042】
一方、画像転写後の中間転写ベルト5は、ベルトクリーニング装置47で、画像転写後に中間転写ベルト5上に残留する残留トナーを除去し、タンデム作像装置50による再度の画像形成に備える。
【0043】
図1には、図9に示すような電子写真式カラー複写機で使用されるタンデム作像装置50の別例の概略構成を示す。図1に示すタンデム作像装置50では、図9に示すタンデム作像装置50とは相違し、支持ローラ44・45・46とは別にテンションローラ88が備えられ、中間転写ベルト5に外側から押し当てられており、また2次転写装置として2次転写ローラ7が使用され、定着装置8が定着ローラ90と加圧ローラ91とで構成されている。その他は、ほとんど図9に示すタンデム作像装置50と同一構成である。このタンデム作像装置50では、乾式二成分現像剤を用いた乾式二成分現像方式が採用されており、図示しないスキャナ300から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。
【0044】
タンデム作像装置50には、図に示すように、ブラック・シアン・マゼンタ・イエロの各色用の4個の像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。これらの感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数の支持ローラ44・45・46に支持され、テンションローラ88で張力を付与された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並べて配置されている。また、個々の感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkのまわりには、それぞれ、帯電手段2Y,2M,2C,2Bk、各色対応の現像手段9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング手段4Y,4M,4C,4Bk、除電手段3Y,3M,3C,3Bkなどの電子写真プロセス手段がプロセス順に設置されている。
【0045】
そして、図示複写機でフルカラー画像を形成する場合は、まず、後述する感光体駆動装置12により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら、帯電手段2Yでドラム表面を一様に帯電した後、画像データに基づき図示しない光書込み手段51から光ビームLを照射して感光体ドラム1Y上にYの静電潜像が形成される。このYの静電潜像は、現像手段9Yにより、現像剤中のYトナーを付着することにより現像される。現像時には、現像手段9Yの現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加されて、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着される。
【0046】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転にともない、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。そして、この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面に、1次転写手段である1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加され、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像が中間転写ベルト5側に引き寄せられ、中間転写ベルト5上に1次転写される。
【0047】
以下、同様にして、画像データに基づき図示しない光書込み手段から光ビームL,L,LBkを照射して感光体ドラム1M,1C,1Bk上にそれぞれM,C,Bkの静電潜像が形成され、それらの静電潜像が各現像手段9M,9C,9Bkにより現像されてMトナー像、Cトナー像、Bkトナー像が形成され、それらのトナー像が1次転写ローラ6M,6C,6Bkにより、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合わされるように1次転写される。
【0048】
このように、中間転写ベルト5上に4色重ね合わされたフルカラートナー像は、中間転写ベルト5の回転にともない、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで、用紙・OHPフィルム等の記録材が搬送される。そして、この2次転写位置において、2次転写ローラ7により記録材の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界および2次転写位置での2次転写ローラ7の当接圧により、中間転写ベルト5上のフルカラートナー像が記録材上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された記録材は、定着装置8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0049】
図2には、図1に示すカラー複写機において、各感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkを駆動する感光体駆動装置の配置構成を示す。
図中符号10は、複写機本体内に対向して設置する一対の本体側板の一方である。本体側板10の外側には、取付ねじ等を用いて感光体駆動装置12が固定される。感光体駆動装置12の出力軸13は、本体側板10を貫通して本体側板10の内側に向け突出し、先端がカップリング14を介して感光体ドラム1のドラム軸15に連結され、感光体ドラム1の一端が支持されている。感光体ドラム1の他端は、一対の本体側板の図示しない他方で回転自在に支持されている。そして、感光体駆動装置12を駆動してその出力軸13を回すことにより、感光体ドラム1が回転されるようになっている。
【0050】
図3には、図2の感光体駆動装置12を拡大して示す。
感光体駆動装置12は、駆動源であるモータ16に遊星差動歯車減速機20を、組付けねじ等で連結して構成されている。モータ16は、遊星差動歯車減速機20の入力軸となるモータ軸17が、モータ16のボス部18から突出して形成されている。そして、遊星差動歯車減速機20を介してモータ16の回転が減速して感光体ドラム1に伝達される構成となっている。
【0051】
遊星差動歯車減速機20は、入力軸であるモータ軸17に設けた太陽歯車21と、その太陽歯車21に噛み合う3つの遊星歯車22と、その遊星歯車22を自転自在にかつ太陽歯車21まわりに公転自在に支持するキャリア23と、遊星歯車22に噛み合う固定内歯歯車24と、その固定内歯歯車24と異なる歯数を有し、遊星歯車22に噛み合う可動内歯歯車25と、可動内歯歯車25を被って固定内歯歯車24にはめ付けるケース26とが備えられており、可動内歯歯車25の回転中心に、ケース26から突出して前述した出力軸13が設けられている。出力軸13は、可動内歯歯車25と一体成形で設けられていてもよいし、別部材でつくって可動内歯歯車25に組み付け固定することにより設けられていてもよい。
【0052】
太陽歯車21は、歯車噛み合い伝達の入力となるように、モータ軸17の先端側に取り付けて固定されている。遊星歯車22は、太陽歯車21のまわりに、この例では3個、等間隔に配置されている。もちろん3個に限るものではない。
【0053】
キャリア23には、中心孔28が設けられ、その中心孔28の外周縁に段差が形成されている。そして、中心孔28にモータ軸17が貫挿され、モータ軸17の基端に取り付けた軸受29および先端側に取り付けた軸受30に段差をはめ付けて、キャリア23がそれらの軸受29,30を介してモータ軸17のまわりに回転自在に支持されている。キャリア23は、各遊星歯車22の遊星歯車軸31の両端を支持することで、3つの遊星歯車22を自転自在にかつ太陽歯車21まわりに公転自在に支持してなる。
【0054】
固定内歯歯車24は、その中心孔にモータ16のボス部18をはめ合わせることによりモータ16に取り付け固定されている。可動内歯歯車25は、モータ軸17の先端に取り付けた軸受32にはめ合わされてモータ軸17を中心として回転自在に支持されている。ケース26は、固定内歯歯車24とともに遊星差動歯車減速機20の外枠を構成し、固定内歯歯車24の外周段差部にはめ付けて固定されるとともに、軸受33を介して出力軸13の根元を支持して出力軸13を外向きに突出する構成となっている。したがって、可動内歯歯車25は、モータ軸17とケース26で支持されながら回転することになる。
【0055】
そして、このようにモータ軸17先端を可動内歯歯車25で支持することによって、モータ軸17先端側に設けられた太陽歯車21が駆動するときに受ける抗力によるモータ軸17の撓みを防止することができる。また、モータ軸17を中心基準として太陽歯車21、キャリア23、固定内歯歯車24、可動内歯歯車25が取り付けられているので、各取付偏芯が抑えられて回転伝達精度を良くすることができる。
【0056】
この図示遊星差動歯車減速機20では、遊星歯車22は固定内歯歯車24と同時に可動内歯歯車25とも噛み合っており、可動内歯歯車25は固定内歯歯車24と歯数が異なり、その歯数差分の角度だけ、遊星歯車22の公転1回転ごとに回転するようになっている。そして、歯数の異なる固定内歯歯車24と可動内歯歯車25に遊星歯車22を同時に噛み合わせるためには、3つの歯車の少なくともいずれか1つを転位する必要がある。これについては、詳しくは後述する。
【0057】
図4には、太陽歯車21、遊星歯車22、固定内歯歯車24、可動内歯歯車25の噛み合い状態をモータ軸17の軸方向から見て示す。
図示するように、3個の遊星歯車22は、キャリア23で支持されて太陽歯車21のまわりに等分配置され、太陽歯車21と噛み合い、また同時に固定内歯歯車24と可動内歯歯車25の双方に内接して噛み合って組み込まれている。回転方向は固定内歯歯車24と可動内歯歯車25の歯数の大小関係で異なる。歯数が固定内歯歯車24<可動内歯歯車25の場合は、太陽歯車21(入力)と可動内歯歯車25(出力)の回転方向は同方向であり、固定内歯歯車24>可動内歯歯車25の場合は、太陽歯車21(入力)と可動内歯歯車24(出力)の回転方向は逆方向になる。また、その歯数の大小関係によって、遊星歯車22が可動内歯歯車25から受ける力の方向も逆方向になる。
【0058】
図5には、歯数が固定内歯歯車24<可動内歯歯車25の場合の遊星歯車22に働く力関係を模式的に示す。
Sを太陽歯車21の基礎円、その外周に位置する円Pを遊星歯車22の基礎円、またその外周の円弧のRを固定内歯歯車24の基礎円、Mを可動内歯歯車25の基礎円とすると、遊星歯車22の歯(歯面)に働く力の方向を各歯車の回転方向とともに方向矢印で示している。aが遊星歯車22が太陽歯車21から受ける力、bが固定内歯歯車24から受ける抗力、cが可動内歯歯車25から受ける抗力となる。
【0059】
図6には、図5に示す力関係を遊星歯車21の幅方向で示す。
この発明によれば、固定内歯歯車24の歯数が可動内歯歯車25の歯数より少なくなっている。このような構成とすると、遊星歯車22は固定内歯歯車24と可動内歯歯車25から両歯面を挟み込む方向に抗力を受け、遊星歯車22には、固定内歯歯車24から受ける力bおよび可動内歯歯車25から受ける抗力cが、各々図6に示すように加わる。そして、この発明によれば、図3に示すように、遊星歯車22が可動内歯歯車25と噛み合う歯幅領域Bで、太陽歯車21が遊星歯車22に噛み合わされている。よって、可動内歯歯車噛み合い部K1では、太陽歯車21から受ける力aは、cと同じ領域で逆方向に働いて互いに相殺されるとともに、固定内歯歯車噛み合い部K2では、遊星歯車1に固定内歯歯車24から受ける力bが働くのみであるから、遊星歯車1の撓み、傾き、ねじれを小さくすることができる。
【0060】
さて、歯数の異なる固定内歯歯車24と可動内歯歯車25に遊星歯車22を同時に噛み合わせるためには、3つの歯車の少なくともいずれか1つを転位する必要がある。しかし、歯車を転位すると、マイナス転位では歯元が細り、プラス転位では歯先が細り、何れも歯の強度が弱くなる。そこで、この発明では、太陽歯車21が直接噛み合わない側の固定内歯歯車24と遊星歯車22の領域を転位させ、太陽歯車21が噛み合う領域は通常の歯形形状のままで転位させない構成とする。そうすることによって、駆動力が大きく掛かる歯車の強度が維持され、耐久性を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】画像形成装置の一例であるタンデム方式の電子写真式カラー複写機におけるタンデム作像装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すカラー複写機において、各感光体ドラムを駆動する感光体駆動装置の配置構成図である。
【図3】図2の感光体駆動装置の拡大部分断面図である。
【図4】同感光体駆動装置の太陽歯車、遊星歯車、固定内歯歯車、可動内歯歯車の噛み合い状態をモータ軸の軸方向から見て示す図である。
【図5】同感光体駆動装置の遊星差動歯車減速機において、固定内歯歯車の歯数が可動内歯歯車よりも少ない場合に、遊星歯車に働く力関係を模式的に示す図である。
【図6】図5に示す力関係を遊星歯車の幅方向で示す斜視図である。
【図7】従来の遊星差動歯車減速機において、遊星歯車に働く力を遊星歯車の幅方向で示す斜視図である。
【図8】従来の別の遊星差動歯車減速機において、遊星歯車に働く力を遊星歯車の幅方向で示す斜視図である。
【図9】画像形成装置の一例であるタンデム方式の電子写真式カラー複写機における全体概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
1Y,1M,1C,1Bk 感光体ドラム(像担持体)
12 感光体駆動装置
13 出力軸
16 モータ(駆動源)
17 モータ軸(入力軸)
18 モータのボス部
20 遊星差動歯車減速機
21 太陽歯車
22 遊星歯車
23 キャリア
24 固定内歯歯車
25 可動内歯歯車
26 ケース
29 軸受
30 軸受
32 軸受
33 軸受
B 遊星歯車が可動内歯歯車と噛み合う歯幅領域
a 遊星歯車が太陽歯車から受ける力
b 固定内歯歯車から受ける抗力
c 可動内歯歯車から受ける抗力



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸に設けた太陽歯車と、その太陽歯車に噛み合う遊星歯車と、その遊星歯車に噛み合う固定内歯歯車と、その固定内歯歯車と異なる歯数を有し前記遊星歯車に噛み合う可動内歯歯車とが備えられており、前記可動内歯歯車の回転中心に出力軸が設けられている遊星差動歯車減速機において、
前記固定内歯歯車の歯数が前記可動内歯歯車の歯数より少なくなっているとともに、
前記遊星歯車が前記可動内歯歯車と噛み合う歯幅領域で、前記太陽歯車が前記遊星歯車に噛み合わされていることを特徴とする遊星差動歯車減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動歯車減速機において、
前記入力軸が、駆動源のボス部から突出されており、そのボス部にはめ合わせて前記固定内歯歯車が固定されていることを特徴とする遊星差動歯車減速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遊星差動歯車減速機において、
前記遊星歯車を自転自在にかつ前記太陽歯車まわりに公転自在に支持するキャリアを有し、
そのキャリアは、軸受を介して前記入力軸まわりに回転自在に支持されていることを特徴とする遊星差動歯車減速機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機において、
前記入力軸の先端が、軸受を介して前記可動内歯歯車にはめ合わされてその可動内歯歯車の回転中心で回転自在に支持されていることを特徴とする遊星差動歯車減速機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機において、
前記太陽歯車が直接噛み合わない側の前記固定内歯歯車と前記遊星歯車の噛み合い領域を転位させ、前記太陽歯車が噛み合う領域は通常の歯形形状のままで転位させない構成とされていることを特徴とする遊星差動歯車減速機。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載の遊星差動歯車減速機を介して駆動源の回転が減速して像担持体に伝達される構成となっていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19271(P2010−19271A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177661(P2008−177661)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】