説明

遊星歯車機構、回転駆動装置、及び画像形成装置

【課題】ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構において、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえ耐久性に優れた小型で安価な遊星歯車減速機構を提供する。
【解決手段】駆動モータ軸141の出力軸119側の端部と1段目のキャリア115の回転軸近傍の部分との回転接触点に球体171を設け、これを介して回転が行われるように、第1接触部を構成している。また、太陽歯車116の出力軸119側の端部と2段目のキャリア118の回転軸近傍の部分との回転接触点に球体172を設け、これを介して回転が行われるように、第2接触部を構成している。そして、球体171及び球体172の外周面に、微少な潤滑剤保持部である凹部をいくつか形成し、この凹部にオイル又は低粘度グリースを充填して組み込むこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被回転体に回転駆動源の回転駆動力を変速して伝達する遊星歯車機構、この遊星歯車機構を備えた回転駆動装置、及びこれらを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定内歯歯車に噛み合う回転自在な複数の遊星歯車を保持し、出力軸又は太陽歯車と一体的に構成されたキャリア(以下、キャリアという)を、2段以上に組み合わせて高い変速比を獲得する遊星歯車機構が知られている。例えば、特許文献1には、固定内歯歯車と、太陽歯車と、これらに噛み合う遊星歯車とに、平歯車を用いた遊星歯車減速機構が記載されている。また、駆動トルク変動を抑制して回転精度を向上させるために、固定内歯歯車と、太陽歯車と、これらに噛み合う遊星歯車とに、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構も知られている。
【0003】
固定内歯歯車と、太陽歯車と、これらに噛み合う遊星歯車との歯形形状に、ハスバを用いると回転精度は向上するものの、各キャリアにはスラスト方向のベクトル力が作用する。このスラスト方向のベクトル力を、キャリア間又はキャリアとモータ軸間を部分接触させて伝達し、隣り合うキャリア間に適切なギャップを確保している。しかし、各接触部には大きな力が集中的に作用して摩耗が進行し、接触負荷の増加による運転効率低下と回転精度の劣化を招く。そして、最終的には摩耗が進行して、隣り合うキャリア間の適切なギャップ確保できなくなり、後段側のキャリアに接続されたキャリアピン止めと前段側のキャリアの回転側面等とが接触する。このような接触が生じると、過大な負荷が生じてしまい、回転負荷が増大するという問題を招いてしまう。ここで、上述したようなスラスト方向のベクトル力は、噛み合う歯車が平歯車で構成されるものでは作用しないので、このような摩耗による問題を招くことはない。
【0004】
従来、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構では、上述したような後段側のキャリアに接続されたキャリアピン止め等と前段側のキャリアの回転側面との接触による摩耗を防ぐために、次のように構成することが多かった。各キャリアにそれぞれ回転自在に支持する玉軸受けを設け、この軸受け部にスラスト力を作用させて、後段側のキャリアに接続されたキャリアピン止め等と前段側のキャリアの回転側面とが直接接触しない構成とすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各キャリアに玉軸受けを設けると、遊星歯車機構のサイズやコストがアップしてしまうという問題がある。また、玉軸受けによる回転方向以外の方向の移動が規制されるため、各キャリアを回転速度変動を抑制した高精度回転が可能な浮動支持とすることができなくなってしまう。一般に出力軸を回転支持するとき、玉軸受けの場合の嵌めあい公差ガタは1μm〜10μm程度、滑り軸受けの場合の嵌めあい公差ガタは10μm〜50μm程度として、出力軸のラジアル方向ガタ量を規制する。一方、浮動支持の場合は、さらにそれ以上のラフ公差である100〜150μm程度のガタを与える。このガタにより被回転体の駆動軸を挿入する出力軸を有したキャリアにおいて、スムースで支障のない程度の位置ずれを許容する量とできる。すなわち、被回転体の回転軸の偏芯や、被回転体の回転軸と遊星歯車機構の出力軸を接続する継ぎ手機構による締結精度、被回転体の回転軸と出力軸との同軸性や真直性の誤差を、軸受けで支持する場合よりも多く許容できる。また、遊星歯車の精度バラツキ(回転偏芯や歯型精度のバラツキ)があって、浅い噛み合いに対して深い噛み合いになる等の状況でも、浮動支持部分の自由度により歯車の噛み合い抵抗が発生しない。このように抵抗が発生しないので、出力軸は、自由度を持った回転が行われることになる。上述したように、軸受けで支持する場合よりも同軸性や真直性の誤差等を多く許容できるとともに、自由度を持った回転を行なうことができるので、回転速度変動を抑制した高精度回転が可能である。また、各キャリアを浮動支持することで、回転精度の確保できるとともに、ボールベアリング等の玉軸受けを用いないことによる、小型化とコストダウンとが可能である。
【0006】
このように優れたキャリアの浮動支持を適用するために、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構で、単に玉軸受けを用いない構成とすると、上述したようにスラスト方向のベクトル力が作用して、キャリア間又はキャリアとモータ軸間の各接触部で磨耗が生じてしまう。このような接触部での磨耗が進行すると、上述したように接触負荷の増加による運転効率低下と回転精度の劣化を招くといった問題や、キャリアピン止めと各キャリアの回転側面等とが接触して過大な負荷が生じ、回転負荷が増大するという問題を招いてしまう。
【0007】
このような問題を防止して、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構で、キャリアを浮動支持するためには、各キャリアに生じるスラスト方向のベクトル力を、玉軸受けを用いずに、モータ軸等に伝達するとともに、各接触部での摩耗を防ぐ必要がある。また、各キャリア回転軸の、被回転体の駆動軸やモータ軸に対する自由度を、各接触部で、浮動支持の作用効果を発揮できる程度に確保する必要がある。
【0008】
そこで、発明者らは、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構において、キャリア間又はキャリアとモータ軸とを球体を介して接続してスラスト方向のベクトル力をモータ軸等に伝達し、各キャリアを浮動支持できないか検討した。また、各接触部での磨耗を抑制して耐久性を高められないか検討した。
【0009】
なお、キャリアと太陽歯車間に球体を設ける点が、後述する本発明と共通する発明が、特許文献2に記載されている。しかし、この文献では、球体である鋼球に関して、後段側キャリアと前段側のキャリアに締結されたピニオン軸との間に鋼球を設け、ピニオン軸が鋼球によって支持されている旨、記載されているのみである。そして、各キャリアは、それぞれの円周端をボールベアリングかなる軸受けによって回転支持されているので、各キャリアのラスト方向への移動規制は、それぞれのボールベアリングからなる軸受けで行われているものと考えられる。したがって、鋼球によるピニオン軸の支持が、どの方向の移動を、どのように規制するものであるか不明であるが、各キャリアは浮動支持されていないものと考えられる。また、この文献の固定内歯歯車及び遊星歯車の相当が、ハスバ歯車によるか平歯車による記載も無い。そして、本発明が課題とする、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構における、各キャリアの浮動支持、及びスラスト方向のベクトル力を各接触部分に磨耗を生じさせることなくモータ軸等に伝達することに関して、一切記載も示唆もない。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、次のような遊星歯車機構、この遊星歯車機構を備えた回転駆動装置、及びこれらを備えた画像形成装置を提供することである。ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構において、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえ耐久性に優れた小型で安価な遊星歯車減速機構である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の遊星歯車機構の発明は、ハスバで構成される遊星歯車を複数配置したキャリアを変速比に応じて多段で有する遊星歯車機構において、前記キャリアを浮動支持し、回転時に各キャリアに生じるスラスト方向移動力の合力が、入力側太陽歯車であるモータ軸側に作用するように、各歯車の歯形のねじれ角と前記モータ軸の回転方向とを設定し、各キャリアの回転中心近傍の回転接触部、及びキャリアとモータ軸との回転接触部に、球体と、該球体の保持部とを設け、前記球体又は前記保持部のいずれかに潤滑剤を保持可能な構造を有したことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車機構において、球体の保持部は、接触するキャリア間、又はキャリアとモータ軸間で、それぞれの回転中心軸上で、球体を挟み込むように設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、球体の全周には、微少な凹部を有し、該凹部にオイル又はグリースが充填させられて回転することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の遊星歯車機構において、微少な凹部に、オイルを含浸させて保持させることのできるオイル吸収体を挿入し、固定していることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、球体の保持部は、保持する球体と同一の曲率の凹形状部であり、前記凹形状部の表面には微少な凹溝が形成され、該凹溝にオイル又はグリースが充填させられて回転することを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、球体の保持部は、保持する球体の半径(R)より浅い深さの凹形状部であり、球体が接触する両方のキャリア、又はモータ軸に、対称に形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の回転駆動装置の発明は、請求項1乃至6のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、最終段のキャリアの回転中心と同軸に設けられ、被回転体の回転軸と結合されて回転駆動力を伝達する継ぎ手部を有した出力軸と、前記被回転体の回転軸と前記出力軸とが結合された状態で、前記最終段のキャリアに、モータ軸側へのスラスト力を生じさせるバネ部材と、を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の回転駆動装置の発明は、被回転体を回転駆動する回転駆動装置において、被回転体に回転駆動源の回転駆動力を変速して伝達する機構として、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の画像形成形成装置の発明は、複数の回転体を備えた画像形成形成装置において、複数の回転体の内、少なくともいずれか1つの回転体の回転駆動に、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構、又は請求項8に記載の回転駆動装置を用いることを特徴とするものである。
本発明は、回転時に各キャリアに生じるスラスト方向移動力の合力が入力側太陽歯車であるモータ軸側に作用するように、各歯車の歯形のねじれ角とモータ軸の回転方向とを設定しているので、各キャリアに生じるスラスト方向の力を全てモータ軸で受けれる。このように受けれるので、各キャリアを、ボールベアリング等の玉軸受けや滑り軸受けで回転支持しない浮動支持にできる。また、各キャリアを浮動支持して、ボールベアリング等の玉軸受けや滑り軸受けを省略できるので、遊星歯車機構のコストダウンとユニットサイズの小型化を行なうことができる。さらに、回転接触部に球体を介在させることにより、回転自由度のある構成にできるので、浮動支持の効果を発揮し、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえる。また、球体又は保持部のいずれかに潤滑剤を保持できるので、球体とその保持部により回転接触部の応力を分散させつつ、各接触領域に潤滑剤を介して回転させることが可能であり、長時間にわたる摩耗のない回転支持が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、各キャリアを、ボールベアリング等の玉軸受けや滑り軸受けで回転支持しない浮動支持とすることができ、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえるとともに、各接触領域での長時間にわたる摩耗のない回転支持が可能である。よって、ハスバ歯車を用いた遊星歯車機構において、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえ耐久性に優れた小型で安価な遊星歯車減速機構、この遊星歯車機構を備えた回転駆動装置、及びこれらを備えた画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図。
【図2】キャリアを浮動支持し、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構の例の説明図。
【図3】ハスバ歯車の歯に加わる力と、力の方向を示した説明図。
【図4】実施例1の遊星歯車減速機構の説明図。
【図5】遊星歯車減速機構の関係する部材の位置をずらした説明図。
【図6】1段目キャリアと2段目キャリアとの間の球体の保持部の説明図。
【図7】球体に設ける潤滑剤保持部の例の説明図。
【図8】実施例2の球体に設ける潤滑剤保持部の例の説明図。
【図9】実施例3の球体保持部に設ける潤滑剤保持部の例の説明図。
【図10】実施例4の遊星歯車減速機構の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、電写真方式の画像形成装置であるカラー対応のMFP機(以下、複合機という)の感光体ドラムの回転駆動装置の遊星歯車減速機構に適用した実施形態の例について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図である。図2は、キャリアを浮動支持し、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構の例の説明図、図3は、ハスバ歯車の歯に加わる力と、力の方向を示した説明図である。図4は、実施例1の遊星歯車減速機構の説明図、図5は、遊星歯車減速機構の関係する部材の位置をずらした説明図、図6は、1段目キャリアと2段目キャリアとの間の球体の保持部の説明図である。図7は、球体に設ける潤滑剤保持部の例の説明図、図8は、実施例2の球体に設ける潤滑剤保持部の例の説明図、図9は、実施例3の球体保持部に設ける潤滑剤保持部の例の説明図、図10は、実施例4の遊星歯車減速機構の説明図である。
【0015】
まず、本実施形態の複合機の構成及び動作について説明する。この複写機は、図1に示すように、主に次のものから構成されている。画像形成装置本体であり画像を作像する作像部100、作像部100を載置する給紙テーブル200、作像部100上に取り付けられたスキャナ300、及びスキャナ300上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400である。
【0016】
スキャナ300では、原稿照明用光源やミラーなどを搭載した第一走行体303と、複数の反射ミラーを搭載した第二走行体304とが往復移動するのにともなって、コンタクトガラス301上に載置された原稿の読取り走査が行われる。第二走行体304から送り出される走査光は、結像レンズ305によってその後方に設置されている読取りセンサ306の結像面に集光せしめられた後、読取りセンサ306によって画像信号として読込まれる。
【0017】
作像部100には、潜像担持体としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーに対応した感光体ドラム40Y、40M、40C、40Bkが設けられている。各感光体ドラム40の周囲には現像装置70、帯電装置85、感光体クリーニング装置86等の電子写真プロセスを実行する各手段が配置され、これによって画像形成ユニット38(Y,M,C,Bk)が形成されている。また、各画像形成ユニット38は、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。各画像形成ユニット38は4つ並列に設けられており、タンデム型画像形成部20を形成している。ここで、各画像形成ユニット38の構成は使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一でああるので以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。
【0018】
また、各画像形成ユニット38内には、感光体ドラムユニット150を有している。図2、4に示すように、感光体ドラムユニット150のドラムホルダー154に保持された感光体ドラム40のドラム駆動軸151は、ドラムホルダー154の片側に設けられた軸孔から、その先端が外部に出るように設けられている。また、この画像形成ユニット38の装着時には、感光体ドラム40のドラム駆動軸151の先端に形成された外歯ギヤ153が、詳しくは後述する回転駆動装置である駆動モジュール105の出力軸119の内歯ギヤに噛み合うこととなる。この駆動モジュール105は、遊星歯車減速機構110と駆動モータ140とを備えている。そして、感光体ドラム40は、そのドラム駆動軸151の外歯ギヤ153と、駆動モジュール105の出力軸119の内歯ギヤが噛み合うことで、駆動モジュール105に備えた駆動モータ140により回転駆動されることとなる。
【0019】
そして、各画像形成ユニット38の現像装置70においては、それぞれ上記4色のトナーを含んだ現像剤が用いられる。現像装置70は、現像剤担持体である現像ローラ71が現像剤を担持、搬送して、感光体ドラム40との対向位置において、感光体ドラム40上の潜像を現像する。
【0020】
タンデム型画像形成部20の上部には、画像情報に基づいて感光体ドラム40をレーザ光又はLED光により露光して潜像を形成する露光装置31が設けられている。
【0021】
また、タンデム型画像形成部20の感光体ドラム40と対向する下方位置には、無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト15が配置されている。中間転写ベルト15は支持ローラ34、支持ローラ35及び二次転写バックアップローラ36によって支持されている。中間転写ベルト15を介して感光体ドラム40と相対する隣接位置には、感光体ドラム40上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト15に転写する一次転写装置62が配置されている。
【0022】
中間転写ベルト15の下方には、中間転写ベルト15表面に重ね合わせて形成されたトナー像を、給紙テーブル200の給紙カセット44から搬送されてくるシートPに一括転写する二次転写装置19が配置されている。二次転写装置19は、二次転写ローラ23と、この二次転写ローラ23を中間転写ベルト15に接離可能に支持する接離機構(不図示)とを備えている。二次転写装置19は中間転写ベルト15を介して二次転写バックアップローラ36に二次転写ローラ23を押し当て、中間転写ベルト15上のトナー像をシートPに転写する。
【0023】
中間転写ベルト15の表面に残留するトナーを取り除くために中間転写ベルトクリーニングユニット90が設けられている。中間転写ベルトクリーニングユニット37は、例えばファーブラシやウレタンゴムで形成されたクリーニングブレードを中間転写ベルト15に当接させて、中間転写ベルト15に付着している二次転写残トナーを掻き取る。
【0024】
二次転写装置19に隣接するように定着装置60が設けられており、定着装置60はシートP上の画像を定着する。定着装置60は、内部に熱源としてのヒータが組み込まれた加熱ローラ66と、この加熱ローラ66に押し当てられる加圧ローラ67とから主として構成されている。
【0025】
二次転写装置19及び定着装置60の下方には、シートPを反転する反転装置28が配置されている。反転装置28は、シートPの両面に画像を記録すべくシートPを反転させる。
【0026】
次に、上記構成の画像形成装置の動作について説明する。図1の原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス301上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。この状態で、操作パネル上のスタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス301上へと移動した後、第一走行体303および第二走行体304を走行させる。また、コンタクトガラス301上に原稿をセットしたときは直ちにスキャナ300が駆動し、第一走行体303および第二走行体304を走行させる。そして、第一走行体303で光源から光を照射するとともに原稿面からの反射光を受ける。この反射光を第二走行体304に向けて反射し、第二走行体304のミラーで反射光を更に反射して結像レンズ305を通して読取りセンサ306に入射させ、読取りセンサ306で原稿内容を読取る。
【0027】
また、操作パネル上のスタートスイッチを押すことによって、駆動モータ(不図示)を駆動させて、支持ローラ34、支持ローラ35、二次転写バックアップローラ36の1つを回転駆動し、他の2つの支持ローラを従動回転させる。このように回転させることで、中間転写ベルト15を回動させる。同時に、各画像形成ユニット38において、帯電装置85によって感光体ドラム40を一様に帯電させる。そして、スキャナ300の読取り内容に応じて露光装置31からレーザやLED等による書込み光を照射して帯電した各感光体ドラム40上に静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体ドラム40に現像装置70からトナーを供給し、静電潜像を可視像化し、各感光体ドラム40上にそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の単色画像を形成する。単色画像を順次一次転写装置62によって中間転写ベルト15上に重なるように一次転写し、中間転写ベルト15上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体ドラム40の表面は、感光体クリーニング装置86によって残留トナーを除去し、除電装置(不図示)で除電して再度の画像形成に備える。
【0028】
操作パネル上のスタートスイッチを押すことにより、また給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク43に多段に設けられた給紙カセット44の1つからシートPを繰り出す。繰り出したシートPを、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に挿入し、搬送ローラ対47で搬送して作像部100内の給紙路48に導き、レジストローラ対49に突き当てて停止させる。次に、中間転写ベルト15上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ対49を回転し、中間転写ベルト15と二次転写装置19との間にシートPを送り込み二次転写装置19で転写してシートP上にカラー画像を転写する。
【0029】
二次転写ローラ23を通過した未定着トナー像を担持したシートPを、定着装置60へ搬送し、定着装置60で熱と圧力とを加えて転写画像を定着する。画像定着後のシートPは、切換爪55で切り換えて排出ローラ対56によって排出し、排紙トレイ57上にスタックされるか、切換爪55で切り換えて反転装置28に導入される。反転装置28に導入したシートPは、反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録され、その後、排出ローラ対56で排紙トレイ57上に排出される。このとき、画像転写後の中間転写ベルト15上に残留する残留トナーを中間転写ベルトクリーニングユニット90で除去し、タンデム型画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0030】
次に、本実施形態の特徴部である、遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105について、実施例を挙げて説明する。ここで、各画像形成ユニット38に対応する駆動モジュール105の構成は、対応する各画像形成ユニット38で使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一であある。したがって、以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。また、各実施例では、同一の部材には、同一の符号を付して説明する。まず、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構でキャリアを浮動支持し、回転時に各キャリアに生じるスラスト方向移動力の合力をモータ軸側に作用するように、各歯車の歯形のねじれ角とモータ軸の回転方向とを設定する、各実施例に共通する構成について説明する。
【0031】
本実施形態の複合機や、プロダクション・プリンタ等の感光体ドラムを駆動するのに用いられる減速機構には、感光体ドラムの回転角速度の速度変動率は0.15〜0.2%P−P(ピーク・ツー・ピーク)以下が求められる。そこで、図2に示すような、固定内歯歯車111を有する2段型の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105を用いている。この駆動モジュール105では、上記速度変動率以下に、速度変動率を抑えるため、各キャリアを浮動支持し、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構110としている。
【0032】
図2に示すように、遊星歯車減速機構110とその駆動源である駆動モータ140とは、遊星歯車減速機構110のモータ側エンドプレート135と、駆動モータ140のハウジングとがネジ(不図示)で締め付け固定される。このように固定されて、遊星歯車減速機構110と駆動モータ140とは駆動モジュール105を形成している。この駆動モジュール105は、別途支持されて回転するドラム駆動軸151と連結されて感光体ドラム40の正確な回転を行う。ドラム駆動軸151と、遊星歯車減速機構110の出力軸119とは、装置本体への組付け性や、メンテナンス時の交換性を考慮すると、このように分割構成して形成し、いずれかの箇所で結合して回転駆動させる必要がある。
【0033】
遊星歯車減速機構110は、主に、次のものを有している。その内周面の一部に内歯の歯車部112が形成された固定内歯歯車111と、1段目の遊星歯車114と、1段目のキャリア115とを有している。また、1段目のキャリア115に接続された1段目の出力軸でもある2段目の太陽歯車116と、2段目の遊星歯車117と、2段目のキャリア118とを有している。そして、2段目のキャリア118に接続された2段目の出力軸である出力軸119を有している。この出力軸119には、ドラム駆動軸151の外歯ギヤ153と噛み合う内歯ギアが形成されている。また、固定内歯歯車111の駆動モータ140側の内周面端部には、モータ側エンドプレート135が固定され、固定内歯歯車111の出力軸119側の端部には、出力軸側エンドプレート136が固定される。また、出力軸側エンドプレート136には、出力軸119を通す出力軸孔120が形成されており、この出力軸孔120の感光体ドラムユニット150側には突起部132が形成されている。この突起部132が、装置本体の本体側取り付け側板160(以下、側板160という)に形成された孔に嵌め合わされて位置決めの後、ネジ止め(不図示)されることになる。また、この遊星歯車減速機構110では各キャリアを浮動支持するため、出力軸孔120の内周面と出力軸119の外周面には、適切なギャップが設定されている。
【0034】
駆動モータ140は、遊星歯車減速機構110側に回転駆動力を伝達する駆動モータ軸141を有しており、この駆動モータ軸141には外歯ギアが形成され、遊星歯車減速機構110の1段目の太陽歯車113として機能する。この駆動モータ軸141を通すため、遊星歯車減速機構110のモータ側エンドプレート135には、その中心に駆動モータ孔(不図示)が太陽歯車113の外歯ギアと十分なギャップを持って形成されている。
【0035】
遊星歯車減速機構110の各キャリアによる遊星歯車の保持は、各遊星歯車を回転自在の保持するキャリアピンと、キャリアと、キャリアから離れた側の端部に設けられた円盤状のキャリアピン押さえで行なわれる。また、キャリアピン押さえには、各遊星歯車に噛み合う太陽歯車を通すための孔が形成されている。この孔の径には、固定内歯歯車111の歯車部112と各遊星歯車の噛み合い誤差等により、キャリア中心軸にズレや傾きが生じても、太陽歯車に接触しないように、十分なギャップが設定されている。
【0036】
また、1段目のキャリア115に設けたキャリアピン押さえ133と、モータ側エンドプレート135との間には、キャリア115の回転軸にズレや傾きが生じた際にも、接触しないだけのギャップL1を設定している。すなわち、キャリア115の回転軸にズレや傾きが生じても、キャリアピン押さえ133のモータ側外周がモータ側エンドプレート135の側面に接触しないだけのギャップL1を設定している。同様に、2段目のキャリア118に設けたキャリアピン押さえ134と、1段目のキャリア115との間には、キャリア118やキャリア115の回転軸にズレや傾きが生じた際にも、接触しないだけのギャップL2を設定している。すなわち、各キャリアの回転軸にズレや傾きが生じても、キャリアピン押さえ134のモータ側外周が1段目のキャリア115側面に接触しないだけのギャップL2を設定している。
【0037】
また、図2図中、ドラム駆動軸151と、遊星歯車減速機構110の出力軸119とは着脱自在とするため、スプライン継手けで結合するように構成している。固定内歯歯車111と遊星歯車とは、噛み合い回転時の精度を確保するために平歯車ではなく、ハスバ歯車によって行っている。このような噛み合い回転を行う場合、ハスバ歯車のねじれ方向とねじれ角、及び回転方向の設定により、次のように各遊星歯車を支持するキャリアに、ハスバ歯車を用いることで生じるスラスト力を作用させることが多い。各遊星歯車を支持するキャリアには、図2に矢印A、Bで示す出力軸119側から駆動モータ軸141側へ向かうスラスト力(以下、モータ軸側へのスラスト力という)を作用させる。すると、2段目の太陽歯車116には矢印Cで示す駆動モータ軸141側から出力軸119側へ向かうスラスト力(以下、出力軸側へのスラスト力という)が作用する。そして、これらのスラスト力の合力は、最終的に駆動モータ140の駆動モータ軸141に作用することとなる。このようにスラスト力が作用するため、これらのスラスト力が作用する各部材の接触部では、遊星歯車減速機構110稼動時には常に高圧力下での回転が行われることとなり、その結果、接触部での摩耗が極端に進行することになる。具体的には、キャリア115の回転軸近傍側面と駆動モータ軸141のハスバを形成していないモータ軸端面137との接触部(以下、第1接触部という)での磨耗が進行する。また、キャリア118の回転軸近傍側面と太陽歯車116に設けた突出部の突出部端面138との接触部(以下、第2接触部という)での磨耗も進行する。
【0038】
各接触部での磨耗が過度に進行すると、キャリアピン押さえ133とモータ側エンドプレート135に設けたギャップL1や、2段目のキャリア118に設けたキャリアピン押さえ134と1段目のキャリア115ギャップL2が確保できなくなる。そして、各キャリアピン押さえの駆動モータ140側外周と、キャリア115側面又はモータ側エンドプレート135側面に接触してしまう。このように接触すると、回転負荷が増大して回転速度変動及び騒音が発生する。
【0039】
ここで、参考として図3に、ハスバ歯車の歯に加わる力と、力の方向を示す。まず、図3(a)を用いて、ハスバ歯車の歯型部に加わる力を説明する。図3(a)は、ハスバ歯車の1つの歯に加わる力を図示した説明図である。図3(a)の歯面に垂直な断面図に示すように、ハスバ歯車の歯面に対して垂直な力(Fn)を作用させると、垂直な力(Fn)は歯面に垂直な断面における円周力F1と半径方向力Frに分解される。次にこの歯面に垂直な断面における円周力F1は、基準円に接する平面図に示すように、次の式(1)、(2)で求められる、接線力Ftと軸方向力Fxに分解される。
Ft = F1 cosβ ・・・ (1)
Fx = F1 sinβ ・・・ (2)
【0040】
次に、図3(b)を用いて、ハスバ歯車の歯型部に加わる力の方向について説明する。図3(b)は、ハスバ歯車の伝達系における駆動歯車(小歯車)と、被動歯車(大歯車)についての、ねじれ方向と駆動歯車の回転方向に基づく、各歯車に作用する力の方向を示した図を表に記載したものである。ここで、図3(b)での駆動歯車(小歯車)を本実施形態の遊星歯車114及び遊星歯車117として、被動歯車(大歯車)を本実施形態の固定内歯歯車111の歯車部112として適用できる。また、この表で着目すべきことは、本実施形態の遊星歯車114及び遊星歯車117に相等する駆動歯車(小歯車)に働く軸方向の力(Fx1)の方向と、この駆動歯車の回転方向と、各歯車のねじれ方向と、本実施形態の固定内歯歯車111の歯車部112に相等する被動歯車(大歯車)に働く軸方向の力(Fx2)の方向である。
【0041】
本実施形態における各歯車のねじれ方向と、回転方向を、駆動モータ140側から固定内歯歯車111の歯車部112側を視た場合を基準にして、図3(b)図中時計方向の回転を’右回転’とする。また、図3(b)図中奥に行くに従い時計回転に傾斜して行くねじれの方向を’右ねじれ’とする。そして、図3(b)図中回転軸の奥側から手前側へ向かうスラスト力を、’モータ軸側へのスラスト力’とする。ここで、感光体ドラム40のドラム駆動軸151、及び駆動モータの駆動モータ軸141の回転方向を’右回転’させるものとして説明する。
【0042】
駆動モータ軸141を’右回転’させて、1段目の遊星歯車114に図2図中矢印Aで示すモータ軸側へのスラスト力であるFx2を生じさせるには、図3(b)の(A−R)に示すように、各歯車のねじれ方向を設定して遊星歯車114を’左回転’させる。すなわち、駆動歯車である駆動モータ軸141の1段目の太陽歯車113として機能する歯形部を’右ねじれ’にし、被駆動歯車である遊星歯車114を’左ねじれ’にして、遊星歯車114を、その自転軸であるキャリアピンに対して’左回転’させる。また、遊星歯車114は、キャリアピンに対して’左回転’されると、固定内歯歯車111の歯車部112に嵌め合い、’右回転’に公転することとなる。そして、複数の遊星歯車114をキャリアピンで保持する1段目のキャリア115は’右回転’し、このキャリア115に固定された2段目の太陽歯車116も’右回転’することとなる。
【0043】
’右回転’する2段目の太陽歯車116で、2段目の遊星歯車117に図2図中矢印Bで示すモータ軸側へのスラスト力であるFx2’を生じさせるには、図3(b)の(A−R)に示すように、各歯車のねじれ方向を設定して遊星歯車114を’左回転’させる。すなわち、駆動歯車である2段目の太陽歯車116を’右ねじれ’にし、被駆動歯車である遊星歯車117を’左ねじれ’にして、遊星歯車117を、その自転軸であるキャリアピンに対して’左回転’させる。また、遊星歯車117は、キャリアピンに対して’左回転’されると、固定内歯歯車111の歯車部112に嵌め合い、’右回転’に公転することとなる。そして、複数の遊星歯車117をキャリアピンで保持する2段目のキャリア118は’右回転’し、このキャリア118に固定された出力軸119も’右回転’することとなる。
【0044】
また、各歯車に発生するスラスト力は、出力軸119側の負荷トルクに対して、減速比から、Fx2<Fx1’,Fx2’の関係になる。そして、’右回転’する2段目の太陽歯車116には、図2図中矢印Cで示す出力軸側へのスラスト力であるFx1’が作用する。このFx1’は、2段目の遊星歯車117に作用するモータ軸側へのスラスト力であるFx2’と方向が逆向きで発生し、かつ強さが等しい(Fx1=Fx2’)。このため、第2接触部では、遊星歯車減速機構110稼動時には常にキャリア118の回転軸近傍側面と太陽歯車116に設けた突出部の突出部端面138とが押し合い高い圧力が生じる。
【0045】
そして、高圧力で押し合うキャリア118の回転軸近傍側面と太陽歯車116に設けた突出部の突出部端面138とは、一体の状態で、1段目の遊星歯車114に生じたモータ軸側へのスラスト力であるFx2によって、駆動モータ軸141側へ移動する。この移動により、第1接触部では、遊星歯車減速機構110稼動時には常に1段目のキャリア115の回転軸近傍側面が、1段目の太陽歯車113として機能する駆動モータ軸141の出力軸側のモータ軸端面137に押圧されて圧力が生じる。
【0046】
上述したように、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構110では、遊星歯車減速機構110稼動時には常に、各接触部で圧力が生じ、高圧力下での回転が行われることとなり、その結果、接触部での摩耗が極端に進行することになる。そして、各接触部での磨耗が過度に進行すると、接触部での回転負荷は増大し、回転速度変動及び騒音が発生する。
【0047】
そこで、本発明では、ハスバにより発生するスラスト力が一方向に向かうことを利用しつつ、接触部における回転抵抗を増加させることなく、かつ長時間の回転を続けてもその特性を維持させることのできる、遊星歯車減速機構の回転摺動部の構成を考案した。次に本発明を適用した遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105について、実施例を挙げて説明する。
【0048】
(実施例1)
本実施形態の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105の、第1の実施例である実施例1を説明する。本実施例では、上述した共通の構成例での不具合を解消するため、遊星歯車減速機構110内の各接触部に球体を設け、この球体又はその保持部に潤滑剤を保持可能な構成を備ええることとした。他の構成・動作等は、上述した共通の構成例と同様であるので、同様な構成・動作等については適宜省略して説明する。
【0049】
図4に示すように、本実施例では、駆動モータ軸141の出力軸119側の端部と1段目のキャリア115の回転軸近傍の部分との回転接触点に球体171を設け、これを介して回転が行われるように、第1接触部を構成している。また、太陽歯車116の出力軸119側の端部と2段目のキャリア118の回転軸近傍の部分との回転接触点に球体172を設け、これを介して回転が行われるように、第2接触部を構成している。そして、共通の構成例と同様に1段目のキャリア115、2段目のキャリア118には、それぞれキャリアピンを介して矢印A(Fx2)、B(Fx2’)で示すスラスト力が作用し、太陽歯車116に矢印C(Fx1’)で示すスラスト力が作用する。
【0050】
より具体的な構成は、部材位置をずらした図5に示すように、第1接触部では、駆動モータ軸141の出力軸119側の端部に設けた球体保持部173と、1段目のキャリア115の回転軸近傍に形成した球体保持部174とで両側から球体171を挟み込むように係合している。球体保持部173及び球体保持部174は、球体171とほぼ同一の曲率で形成される凹形に形成されるとともに、それぞれの部材の回転軸芯上設けられ、数十μm〜0.1mm程度のガタ分を持っており、球体171と軽く係合して支持されつつ回転する。また、第2接触部では、太陽歯車116の出力軸119側の端部に設けた球体保持部175と、2段目のキャリア118の回転軸近傍に形成した球体保持部176とで両側から球体172を挟み込むよう係合している。球体保持部175及び球体保持部176も第1接触部と同様に、球体172とほぼ同一の曲率で形成される凹形に形成されるとともに、それぞれの部材の回転軸芯上設けられ、数十μm〜0.1mm程度のガタ分を持っており、球体172と軽く係合して支持されつつ回転する。
【0051】
そして、上述した共通の構成例と同様に、第2接触部では、遊星歯車減速機構110稼動時には常にキャリア118の回転軸近傍側面と太陽歯車116に設けた突出部の突出部端面138とが押し合い高い圧力が生じ、球体172を挟み込み支持することとなる。また、第1接触部では、遊星歯車減速機構110稼動時には常に1段目のキャリア115の回転軸近傍側面が、1段目の太陽歯車113として機能する駆動モータ軸141の出力軸側のモータ軸端面137に押圧されて圧力が生じ、球体171を挟み込み支持することとなる。このように、各接触部の球体保持部では、噛み合いにハスバを用いることにより、矢印A、Bで示したスラスト力、及び矢印Cで示したスラスト力が、モータ軸方向に作用するので、各球体は脱落することなく安定した位置で回転できる。
【0052】
また、第2接触部では、図6に示すように各遊星歯車の噛み合いのバックラッシュから、若干の傾きが2段目のキャリア118に発生しても、キャリア118の側面部分と、太陽歯車116の出力軸119側の周端部とが接触しないように構成している。具体的には、太陽歯車116に設けた球体保持部175では、保持する球体172の半径r2よりも、球体保持部175の凹部の深さをt2だけ浅くしている。そして、キャリア118の球体保持部176も対称になるよう構成している。このように第2接触部を構成することで、キャリア118の側面と、太陽歯車116の出力軸119側の側面との適切なギャップを設定し、キャリア118の側面部分と、太陽歯車116の出力軸119側の周端部とが接触しないように構成している。また、図示していないが、第1接触部も同様に、駆動モータ軸141に設けた球体保持部173では、保持する球体171の半径r1よりも、球体保持部173の凹部の深さをt1だけ浅くしている。そして、キャリア115の球体保持部174も対称になるよう構成している。このように第1接触部を構成することで、キャリア115の側面と、駆動モータ軸141の出力軸119側の側面との適切なギャップを設定し、キャリア115の側面部分と、駆動モータ軸141の出力軸119側の周端部とが接触しないように構成している。
【0053】
第1接触部で各球体保持部に設定するそれぞれのギャップ(t1)は、図4に示す1段目のキャリア115に設けたキャリアピン押さえ133と、モータ側エンドプレート135との間に設定した、ギャップL1を確保できる適切なものとしている。また、第2接触部で各球体保持部に設定するそれぞれのギャップ(t2)も、図4に示す2段目のキャリア115に設けたキャリアピン押さえ134と、1段目のキャリア115との間に設定した、ギャップL2を確保できる適切なものとしている。したがって、各キャリアに微少な偏角が生じた場合においても、回転時における、各キャリアピン押さえと、キャリア115又はモータ側エンドプレート135との直接接触は生じない。
【0054】
また、各球体保持部に所定のギャップ(t1、t2)を設定することで、各キャリアは、それぞれに保持する球体を回転の支点として、それぞれに有する遊星歯車と固定内歯歯車111の歯車部112の噛み合いに準じて回転する。このように回転するので、無理な回転噛み合いが発生しない。また、接触面積が近似で、同一材料で構成される両部品の面圧が等価となるため、摩耗の偏りが発生しない。また、プラスチックの成形時においては、アンダーカット(型から取り出せない形)にならずに加工ができる。
【0055】
ここで、球体171及び球体172は、金属、又はキャリアを構成する樹脂よりも高硬度の樹脂材料の、樹脂ボールを使用する。例えばキャリアはPOM(ポリアセタール樹脂)材料の成形品として作るので、各球体の硬度は、ロックウェルRスケール120か、それ以上ということになる。互いに摺動する部材間の運転耐久による、摩耗の少ない条件は、両者間に硬度差を設けることが重要である。また、各球体と、それぞれの球体保持部が摺動する部分に潤滑剤として、オイル又はグリース(基油であるオイルに増粘剤を添加したものを意図)を介在させて、摺動する面の摩擦抵抗を下げ、負荷がかかって回転する場合でも摩擦抵抗が増加しないようにしている。本実施例では、各摺動部に使用するグリースとして、基油に合成炭化水素油を用い、増粘剤にリチウム石けんを用いた、市販の樹脂潤滑グリース、又は固体潤滑剤添加グリースを用いた。
【0056】
また、第1接触部及び第2接触部にそれぞれ球体171、172を介在させて、遊星歯車減速機構110を稼動させる効果としては、次のような効果もある。2つのキャリア体、あるいはキャリア体とモータ軸が接触して回転し、両者の軸心が同軸にならない場合(偏角が生じている場合)でも、球体を介在させた連結ならば、接触点の微少移動が行われて、ほぼ均一な回転力を維持することができる。
【0057】
また、各接触部に球体と球体保持部を設けて摺動部分に潤滑剤を介在させても、この遊星歯車減速機構を備えた複合機の運転時間が長時間に渡る場合や、高温度下での運転の場合には、潤滑剤の枯渇が早く起きて摩耗が促進され、運転寿命も短くなる。そこで、本実施例では、各接触部の球体と球体保持部との摺動部分に介在させる潤滑剤を、運転時間が長時間に渡る場合や、高温度下での運転の場合でも、その枯渇を防ぎ、運転寿命を長くするため、各摺動部分に潤滑剤を保持する構成を設けることとした。
【0058】
本実施例では、潤滑剤を保持する構成として、球体171及び球体172の外周面に、微少な潤滑剤保持部である凹部をいくつか形成し、この凹部にオイル又は低粘度グリースを充填して組み込むこととした。凹部に低粘度グリースことにより、回転遠心力と環境を含む回転時摩擦熱の両方の効果により、極、少量ずつ接触部界面にグリースを供給することが可能となる。本実施例では、図7(a)に示すように、ゴルフボールに形成されているような円形でなだらかな凹みを有した凹部181を、球体171及び球体172の外周面の全周に複数形成することとした。また、図7(b)に示すように、球体171及び球体172の外周面から球体の中心方向に、円柱状の凹部183を設けても良い。
【0059】
また、本実施例では、樹脂製の球体に対する、凹部に充填する低粘度のグリースの例としては、商品名:プラスガード(協同油脂株式会社 製)とした。そして、形成する球体は樹脂成型品、又は鉄系や銅系の金属粉末を加圧し焼成する方法、いわゆる焼結金属で行う。各キャリアとの硬度の関係は、球体を基準として両側からキャリアの圧力を受けて摺動するので、摩耗が最少となる様な考慮が必要である。その観点から、硬さの関係は、球体>キャリアとする。機械部品の一般的な摩耗試験においても、摩耗量を最少とするには、上述したように接触する2物体に適当な値の硬度差を設けることが、重要とされている。また、各球体に設けるそれぞれの凹部の加工方法としては、各球体が金属の場合は転造により真円を形成した後に、これに外周を規制させて保持しつつ、小径の硬球を高圧力で加圧して圧痕として形成することが出来る。また、樹脂材料の場合はレーザー光での溶射による方法もある。
【0060】
このように各球体の外周面に潤滑剤保持部を設け、各球体とそれぞれの球体保持部との接触部界面に潤滑剤を極、少量ずつ供給することで、各摺動部分における摩擦抵抗を低下させた摩耗量の少ない接触回転を、長期間に亘り安定して行なうことが可能となる。
【0061】
(実施例2)
本実施形態の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105の、第2の実施例である実施例2を説明する。本実施例は、上述した実施例1とは、各接触部に球体と球体保持部との摺動部分に潤滑剤を保持する構成に係る点のみが異なる。他の構成・動作等は、上述した共通の構成例と同様であるので、同様な構成・動作等については適宜省略して説明する。
【0062】
本実施例の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105では、各接触部に球体と球体保持部との摺動部分に潤滑剤を保持する構成として、各球体に設ける凹部に、潤滑剤であるオイルを含浸させ保持できるオイル吸収体を挿入することとした。各球体に設ける凹部に、オイル吸収体を挿入することで、上述した実施例1の各球体に凹部を設けるだけの構成よりも、各球体とそれぞれの球体保持部との接触部界面に粘度の低いオイルを長期間に亘り安定して供給できるというものである。つまり、実施例1で説明した潤滑剤保持部である凹部の、オイル保持効果を上げるというものである。
【0063】
本実施例では、実施例1で説明した図7(a)に示す、一旦加工された凹部181に、図8(a)に示すように、半球状の発泡性ゴム材料182を挿入して、凹部181の底部に固定している。この発泡性ゴム材料182に流動性の高いオイルを浸透させて、保持させておくことにより、回転時あるいは環境温度が上昇した時に、僅かな染み出し効果が起こり、表面に析出したオイルが接触界面に供給される。また、発泡性ゴム材料182の脱落を防ぐため凹部181に挿入した時点で接着材により接着固定させる。発泡性ゴム材料182は、平均気孔径が15〜50μm程度、気孔率が50〜80%程度で構成され、脱気装置内での含侵によって行われる。
【0064】
また、各球体がPOM等で成形され、オイル吸収体の付着強度が確保できない場合は、図7(b)に示すに、凹部183に固定用の深穴184を設ける。そして、オイル吸収体である発泡性ゴム材料185に形成した深穴184に嵌め合わされる嵌合部186を圧入し、この圧入部分における両者間の挿入抵抗を大きくし、発泡性ゴム材料185の抜け止めを行う。また、発泡性ゴム材料185に形成した嵌合部186の圧入方向先端部を略円錐状に形成し、深穴184に圧入しやすいように形成している。
【0065】
一方、画像形成装置である複合機自体が大型なもので、それにともない、遊星歯車減速機構110も大きく球体の径も大きい場合で、各凹部の容積を大きく取れるものに対しては、次のようにオイルを保持することも可能である。各凹部に挿入する材料として発泡性ゴム材料を用いるのではなく、フェルト材(小さな加工は困難)を用いて、その毛細管現象によってオイルを保持することも可能である。
【0066】
(実施例3)
本実施形態の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105の、第3の実施例である実施例3を説明する。本実施例は、上述した実施例1、2とは、各接触部に球体と球体保持部との摺動部分に潤滑剤を保持する構成に係る点のみが異なる。他の構成・動作等は、上述した共通の構成例と同様であるので、同様な構成・動作等については適宜省略して説明する。
【0067】
本実施例の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105では、各接触部に球体と球体保持部との摺動部分に潤滑剤を保持する構成として、各球体に潤滑剤保持部を設けるのではなく、逆に各球体保持部側に潤滑剤保持部を設けている。
【0068】
例えば、使用する球体として、汎用の金属ボール(ボールベアリング用など)を用いることを考えれば、球体としての表面精度は高く、硬度も高硬度で、コスト的にも非常に安くメリットが大きい。そこで、これを使用できるように、実施例1、2とは逆に球体保持部側に、潤滑剤保持部を設けることとした。
【0069】
各球体保持部側に潤滑剤保持部を設ける構成としては、例えば、図9に示すように、第2太陽歯車116に設けた球体保持部176に、その底部から放射状に伸びる極、細い凹溝187を設けている。この形状であれば、樹脂成形加工する場合でも容易に実現できる。このように球体保持部176を構成することで、球体保持部176で保持する球体172側には凹形状(凹部)を形成不要となる。したがって、グリースを保持する部材を、球体172から、球体保持部176に変えることにより、全周が平滑な球体172を使うことが可能である。
【0070】
(実施例4)
本実施形態の遊星歯車減速機構110を備えた駆動モジュール105の、第4の実施例である実施例4を説明する。本実施例は、上述した実施例1乃至3とは、感光体ドラム40のドラム駆動軸151と出力軸119とを結合した状態で、出力軸119を有した最終段のキャリア118にモータ軸側へのスラスト力を生じさせるバネ部材191を設けたことに係る点のみ異なる。他の構成・動作等は、上述した共通の構成例と同様であるので、同様な構成・動作等については適宜省略して説明する。
【0071】
本実施例の遊星歯車減速機構110では、図10に示すように、感光体ドラム40のドラム駆動軸151と出力軸119とを結合した状態で、出力軸119を有した2段目のキャリア118にモータ軸側へのスラスト力を生じさせるバネ部材191を設けている。具体的には、次のようにバネ部材191を設けている。出力軸119には、感光体ドラム40のドラム駆動軸151先端に設けた外歯ギヤ153が噛み合う内歯ギアが形成されており、ドラム駆動軸151との着脱自在なスプライン継手を構成している。このスプライン継手の雌側、すなわち出力軸119の内歯ギアの内壁の形状を、出力軸119と一体に形成された2段目のキャリア118のモータ軸側へ、本実施例のキャリア厚では、その厚さを1/3程度モータ軸方向へ掘るように延伸してバネ部材保持部190を形成する。このバネ部材保持部190のモータ軸側面(底部)に、バネ部材191の一端側を固定する。
【0072】
このバネ部材191は、感光体ドラムユニット150が装置本体に装着され、感光体ドラム40のドラム駆動軸151と出力軸119とを結合し位置決めされた状態では、ドラム駆動軸151の先端面で、バネ部材保持部190のモータ軸側面側に押圧される。このバネ部材191が押圧されて、図10に矢印Dで示すモータ軸側へのスラスト力であるバネ力(Fs)が生じる。このバネ力により、遊星歯車減速機構110は、確実にモータ軸側へのスラスト力を作用させて、各接触部に介在する球体を確実に支持しながら回転を行なうことができる。したがって、遊星歯車減速機構110は、安定した回転を行なうことができる。
【0073】
以上、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。回転時に各キャリアに生じるスラスト方向移動力の合力が入力側の太陽歯車113である駆動モータ軸141側に作用するように、各歯車の歯形のねじれ角とモータ軸の回転方向とを設定しているので、各キャリアに生じるスラスト方向の力を全て駆動モータ軸141で受けれる。このように受けれるので、各キャリアを、ボールベアリング等の玉軸受けや滑り軸受けで回転支持しない浮動支持にできる。また、各キャリアを浮動支持して、ボールベアリング等の玉軸受けや滑り軸受けを省略できるので、遊星歯車減速機構110のコストダウンとユニットサイズの小型化を行なうことができる。さらに、各接触部にそれぞれ球体を介在させることにより、回転自由度のある構成にできるので、浮動支持の効果を発揮し、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえる。また、各球体に潤滑剤であるグリースやオイルを保持できるので、各球体とその球体保持部により各接触部の応力を分散させつつ、各接触領域に潤滑剤を介して回転させることが可能であり、長時間にわたる摩耗のない回転支持が可能である。よって、ハスバ歯車を用いた遊星歯車減速機構において、回転速度変動を抑制した高精度回転が行なえ耐久性に優れた小型で安価な遊星歯車減速機構110を提供できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。各接触部では、球体を挟み込むように2つの球体保持部が設けられており、それそれ保持する球体とほぼ同一の曲率で形成される凹形に形成されている。そして、それぞれの部材の回転軸芯上設けられ、数十μm〜0.1mm程度のガタ分を持って、球体と軽く係合して支持されつつ回転する。このように回転するので、回転中心位置を保持しやすく、スラスト方向の力が作用しても、集中でない比較的広い応力分布で支持されるため、安定回転が得られるとともに摩耗が少ない回転動作を行うことができる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。各球体の全周には、微少な凹部181や凹部183を有し、ここにオイル又はグリースが充填させられて回転する。これらの凹部にオイル又はグリースが溜まっており、運転時において、ここから回転接触部に僅かずつ供給されることにより、摩擦を下げて安定でかつ摩耗の極めて少ない回転動作を行うことができる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。各球体にもうける凹部181や凹部183には、オイルを含浸させ保持するできる、オイル吸収体である発泡性ゴム材料185を挿入して固定している。したがって、粘度の低いオイル、つまり流動性の高いオイルを、発泡性ゴム材料185に保持させて回転させることにより、回転時あるいは環境温度が上昇した時に、僅かな染み出し効果が起こりる。そして、表面に析出したオイルが接触界面に供給される。低摩擦で摩耗の無い運転を更に長時間にわたって行うことができる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。各球体の球体保持部は、それぞれ保持する球体と同一の曲率の凹部に形成されており、その内面に微少な凹溝187を形成し、ここにオイル又はグリースが充填させられて回転する。これらの凹溝187にオイル又はグリースが充填させられており、運転時において、ここから回転接触部に僅かずつ供給されることにより、摩擦を下げて安定でかつ摩耗の極めて少ない回転動作を行うことができる。また、保持する球体側に凹部を設ける必要はなく、汎用の金属ボール等を利用できる。そして、汎用の金属ボール等は、球体としての表面精度は高く、硬度も高硬度で、コスト的にも非常に安くメリットが大きい。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。各球体保持部は、保持する球体の半径Rより浅い深さの凹形状であり、対向して同じ球体に接触する両方の、キャリア118と太陽歯車116、又はキャリア115と駆動モータ軸141に対象形状で形成されている。このように各球体を介して、同形状の球体保持部材により支持させることにより、両方の球体保持部材にガタつきなくかつ、均一な加圧力を作用させつつ同軸上で回転支持させることができる。球体の半径Rより浅い深さの凹形状であることにより、成形加工時のアンダーカットを起こすことなく正確な曲率形成をすることができる。また、向かい合う球体保持部のギャップ(t)を確保して、若干の傾きがある時でも、例えば、キャリア118の側面部分と、太陽歯車116の出力軸119側の周端部とが接触しないように構成している。したがって、両者の接触による抵抗を発生することがない。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用効果を奏することができる。感光体ドラム40のドラム駆動軸151と出力軸119とを結合した状態で、出力軸119を有した最終段のキャリア118にモータ軸側へのスラスト力を生じさせるバネ部材191を設けた。このようにバネ部材191を設けるkじょとで、各接触部に介在する球体を確実に支持しながら回転を行なうことができる。したがって、遊星歯車減速機構110は、安定した回転を行なうことができる。
また、本実施形態の回転駆動装置である駆動モジュール105では、感光体ドラム40に駆動モータ140の回転駆動力を減速して伝達する機構として、上述したいずれかの遊星歯車減速機構110を備える。したがって、上述したいずれかの遊星歯車減速機構110と同様な作用効果を奏することができる。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機では、備える複数の回転体のい内、少なくとも感光体ドラム40の回転駆動に、上述したいずれかの遊星歯車減速機構110、又は上述した駆動モジュール105を備える。したがって、上述したいずれかの遊星歯車減速機構110、又は上述した駆動モジュール105と同様な作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0074】
40 感光体ドラム
105 駆動モジュール
110 遊星歯車減速機構
111 固定内歯歯車
112 1段目の歯車部
113 1段目の太陽歯車
114 1段目の遊星歯車
115 1段目のキャリア
116 2段目の太陽歯車
117 2段目の遊星歯車
118 2段目のキャリア
119 出力軸
120 出力軸孔
132 突起部
135 モータ側エンドプレート
136 出力軸側エンドプレート
137 モータ軸端面
138 突出部端面
140 駆動モータ
141 駆動モータ軸
150 感光体ドラムユニット
151 ドラム駆動軸
153 外歯ギヤ
154 ドラムホルダー
160 側板
171、172 球体
172 球体
173、174、175、176 球体保持部
181、183 凹部
182 発泡性ゴム材料
184 深穴
185 発泡性ゴム材料
186 嵌合部
187 凹溝
190 バネ部材保持部
191 バネ部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開2009−037198号公報
【特許文献2】特許第3877014号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハスバで構成される遊星歯車を複数配置したキャリアを変速比に応じて多段で有する遊星歯車機構において、
前記キャリアを浮動支持し、
回転時に各キャリアに生じるスラスト方向移動力の合力が、入力側太陽歯車であるモータ軸側に作用するように、各歯車の歯形のねじれ角と前記モータ軸の回転方向とを設定し、
各キャリアの回転中心近傍の回転接触部、及びキャリアとモータ軸との回転接触部に、球体と、該球体の保持部とを設け、
前記球体又は前記保持部のいずれかに潤滑剤を保持可能な構造を有したことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車機構において、
球体の保持部は、接触するキャリア間、又はキャリアとモータ軸間で、それぞれの回転中心軸上で、球体を挟み込むように設けられていることを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、
球体の全周には、微少な凹部を有し、該凹部にオイル又はグリースが充填させられて回転することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項3に記載の遊星歯車機構において、
微少な凹部に、オイルを含浸させて保持させることのできるオイル吸収体を挿入し、固定していることを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、
球体の保持部は、
保持する球体と同一の曲率の凹形状部であり、
前記凹形状部の表面には微少な凹溝が形成され、該凹溝にオイル又はグリースが充填させられて回転することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、
球体の保持部は、
保持する球体の半径(R)より浅い深さの凹形状部であり、
球体が接触する両方のキャリア、又はモータ軸に、対称に形成されていることを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、
最終段のキャリアの回転中心と同軸に設けられ、被回転体の回転軸と結合されて回転駆動力を伝達する継ぎ手部を有した出力軸と、
前記被回転体の回転軸と前記出力軸とが結合された状態で、
前記最終段のキャリアに、モータ軸側へのスラスト力を生じさせるバネ部材と、
を備えたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項8】
被回転体を回転駆動する回転駆動装置において、
被回転体に回転駆動源の回転駆動力を変速して伝達する機構として、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項9】
複数の回転体を備えた画像形成形成装置において、
複数の回転体の内、少なくともいずれか1つの回転体の回転駆動に、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構、又は請求項8に記載の回転駆動装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−229710(P2012−229710A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96643(P2011−96643)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】