説明

遊星歯車機構、駆動装置および画像形成装置

【課題】遊星歯車に噛み合う内歯車の位置決めの精度を向上させる。
【解決手段】ベアリング34の外輪は、一部が環状部材32の穴321から突出するように構成されている。そして、この突出した部分は、内歯車35の中空部355の一端を内側から支持する。ベアリング34の外輪に内歯車35の中空部355を直接、嵌め込むことで、これら(ベアリング34の外輪と内歯車35の中空部355)の間に他の部材を挟んだ場合に比べて、内歯車35の中心が、ベアリング34の外輪の中心に位置決めされる可能性が増す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構、駆動装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において感光体などの回転部材を高い精度で駆動することが求められる。特許文献1には、遊星歯車を支持する軸受の固定穴と遊星歯車側の軸受固定部にそれぞれ鍔部を設け、ラジアル軸受の外輪が支持側鍔部に、内輪が歯車側鍔部に挿入され、内輪が軸方向内側から外側に移動しないように位置決めする手段が記載されている。特許文献2には、ハウジングに内歯歯車の位置決め部と固定部を有し、位置決め部に内歯歯車と接する弾性体を有する構成が記載されている。特許文献3には、内歯車ブランクをインサートしてからギアケースをダイカスト鋳造することで固定し、内歯車ブランクの内周面に歯車加工を施すことが記載されている。特許文献4には、内歯歯車がハウジング内に圧入されるようにした撓み噛み合い式歯車装置が記載されている。特許文献5には、回転体が軸方向に離間し相対向する一対のテーパローラ軸受を介してケーシングに回転自在に支持され、かつ、入力軸が一対の軸受を介してケーシングに回転自在に支持される遊星歯車減速機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14039号公報
【特許文献2】特開2010−249170号公報
【特許文献3】特開2011−7215号公報
【特許文献4】特開2008−57702号公報
【特許文献5】特開2006−258270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、遊星歯車に噛み合う内歯車の位置決めの精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る遊星歯車機構は、太陽歯車と、穴を有する環状部材と、一端側において前記太陽歯車を回転可能に支持し、他端側において前記穴の中心が前記太陽歯車の軸線上に位置するように前記環状部材を支持する支持体と、一部が前記穴から突出するように当該穴に嵌め込まれた外輪と、当該外輪によって回転可能に支持された内輪とを有するベアリングと、中空部を有し、当該中空部の一部に内歯が設けられた内歯車であって、前記ベアリングの外輪のうち、前記穴から突出した部分によって内側から前記中空部の一端を支持されて位置決めされる内歯車と、前記内歯車および前記太陽歯車に噛み合い、前記太陽歯車の周りを自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車の軸を支持し、周縁部が前記ベアリングの前記内輪に固定されて、前記遊星歯車の公転により前記太陽歯車の軸を中心として回転するプレートとを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る遊星歯車機構は、請求項1に記載の態様において、前記内歯車は、前記太陽歯車の軸方向に沿った移動および当該軸を中心とした回転が制限されるように前記環状部材に固定されることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る遊星歯車機構は、請求項1または2に記載の態様において、前記内歯車は、樹脂により形成された、径方向に拡がるフランジ部を有し、前記フランジ部の一方の面は前記環状部材に固定され、他方の面は前記支持体に固定されていないことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る遊星歯車機構は、請求項1から3のいずれか1項に記載の態様において、前記遊星歯車は、異なる2つの歯車を同軸上に備え、前記2つの歯車の一方は前記太陽歯車に噛み合い、他方は前記内歯車に噛み合うことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る駆動装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載の遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構の前記太陽歯車を回転させるモータと、回転部材に、前記遊星歯車機構の前記プレートの回転力を伝達する伝達機構とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る画像形成装置は、請求項5に記載の駆動装置と、前記駆動装置から回転力が伝達されて回転する前記回転部材を用いて、媒体上に画像を形成する画像形成部とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、請求項6に記載の態様において、前記画像形成部は、露光部に露光されて潜像を保持する感光体と、前記感光体に保持された潜像に現像剤を供給する現像剤供給部と、前記感光体に形成された現像像を媒体に転写する転写部と、前記転写部を通過するように前記媒体を搬送する搬送部とを用いて画像を形成し、前記回転部材は、前記感光体、前記現像剤供給部、前記転写部、前記搬送部のいずれかに含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の遊星歯車機構によれば、支持体に固定された環状部材の穴に嵌め込まれたベアリングの外輪によって内歯車の中空部の一端が内側から支持されて内歯車の位置決めがなされる構成を有さない場合と比べて、内歯車の位置決めの精度が向上される。
請求項2に記載の遊星歯車機構によれば、内歯車が太陽歯車の軸方向に沿った移動およびこの軸を中心とした回転が制限されるように環状部材に固定される構成を有さない場合と比べて、内歯車の位置が軸方向およびこの軸を中心とした回転方向に変動する可能性が抑制される。
請求項3に記載の遊星歯車機構によれば、内歯車が一方の面が環状部材に固定され他方の面が支持体に固定されていない樹脂製のフランジ部を有さない場合と比べて、プレートの位置が軸方向に変動する可能性が抑制される。
請求項4に記載の遊星歯車機構によれば、この構成を有さない場合と比べて、減速比が大きくなる。
請求項5に記載の駆動装置によれば、この構成を有さない場合と比べて、回転部材が高い精度で回転させられる。
請求項6、7に記載の画像形成装置によれば、この構成を有さない場合と比べて、媒体上に画像を形成する際に用いられる回転部材が高い精度で回転させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明する図である。
【図2】駆動装置の斜視図である。
【図3】図2と異なる方向から見た駆動装置の斜視図である。
【図4】駆動装置を図面左下側が入力側となるように示した分解斜視図である。
【図5】駆動装置を図面右下側が出力側となるように示した分解斜視図である。
【図6】支持体と内歯車との関係を説明するための図である。
【図7】太陽歯車の軸とネジ受けの中心とを通る面で駆動装置を切断した断面図である。
【図8】太陽歯車の軸とネジの中心とを通る面で駆動装置を切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態
1−1.全体構成
以下に本発明の実施形態に係る画像形成装置1を説明する。本明細書および図面においては、互いに直角に交わるX軸、Y軸およびZ軸で方向を表す。このX軸、Y軸およびZ軸で表されるXYZ座標系は右手系である。X軸はX成分を表し、X軸に沿ってX成分が増加する方向をX(+)方向、X軸に沿ってX成分が減少する方向をX(−)方向と呼ぶ。Y,Zについても同様とする。また、本明細書および図面においては、XY平面にあってZ軸から遠ざかる径方向をrとし、Z軸を中心とした回転角度をθとする極座標によって空間を表すこともある。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を説明する図である。図1には、Z(−)方向に沿って見たときの画像形成装置1内部の概略が示されている。供給部101は、用紙や封筒などの媒体を収容する容器を備える。この容器を画像形成装置1の筐体102に設置することで、容器内部に収容された媒体は供給可能になる。
搬送部103は、供給部101から媒体を1枚ずつ取り出して画像形成部104に搬送する。
【0016】
画像形成部104は、現像剤を用いた電子写真プロセスにより、媒体の表面に画像を形成する。具体的には、画像形成部104は、潜像を保持する感光体と、感光体を露光して潜像を保持させる露光装置と、感光体の潜像に現像剤を供給する現像剤供給部、および感光体に形成された現像像を媒体に転写する転写部を備える。この転写部は中間転写ベルトなどの中間転写体を含んだものであってもよい。現像剤は、例えば黒色のトナーを含む。画像形成部104は、媒体に画像を形成する画像形成部の一例である。搬送部103は、上述した転写部を通過するように媒体を搬送する。
【0017】
定着部105は、画像形成部104により媒体の表面に付着させられたトナーを加熱・溶融して、画像を媒体に定着させる。
排出部106は、定着部105により画像を定着させた媒体を補助部107とともに挟持して積載部108へ排出する。
積載部108は、排出部106が排出した媒体を積載して保持する。
【0018】
1−2.駆動装置の構成
上述した構成のうち、画像形成部104の感光体、現像剤供給部および転写部には、Z軸に沿った軸を中心として回転させる回転部材が使用されている。また、搬送部103、定着部105および排出部106にも回転部材が使用されている。画像形成装置1は、これらの回転部材を回転させるために駆動装置を用いる。以下、これらの構成のうち特に高精度が要求される感光体を駆動させる駆動装置2について説明する。
【0019】
駆動装置2は、図1に示した画像形成部104の感光体のZ(+)方向に配置され、Z軸に並行な軸を中心としてこの感光体を回転させる。駆動装置2の「入力側」とは、駆動力が加えられる方向であり、Z(+)方向の側である。駆動装置2の「出力側」とは、伝達機構を介して感光体に回転運動を伝達する方向であり、Z(−)方向の側である。
【0020】
図2は、駆動装置2の斜視図である。図3は、図2と異なる方向から見た駆動装置2の斜視図である。駆動装置2は、遊星歯車機構3とモータ4とを具備する。また、駆動装置2は、出力される運動を上述した画像形成部104の感光体に伝達する伝達機構(図示せず)を具備する。
【0021】
図4は、駆動装置2を図面左下側が入力側となるように示した分解斜視図である。図5は、駆動装置2を図面右下側が出力側となるように示した分解斜視図である。駆動装置2の遊星歯車機構3は、太陽歯車31、環状部材32、支持体33、ベアリング34、内歯車35、遊星歯車36、およびプレート37を具備する。
【0022】
なお、コストダウンおよび異音防止のため、本実施形態における内歯車35および遊星歯車36の材質にはいずれも樹脂が用いられているが、これらの材質は樹脂に限定されるものではない。また、太陽歯車31、内歯車35および遊星歯車36は、回転精度を向上させるために、より噛み合い率が高いはすば歯車であることが望ましいが、本実施形態に示すように平歯車であってもよい。
【0023】
一方、本実施形態における太陽歯車31、環状部材32、支持体33、ベアリング34およびプレート37については、位置決めの精度を確保するために、材質に金属が用いられている。ただし、これらの材質も金属に限定されるものではない。
【0024】
太陽歯車31は、一端が駆動装置2のモータ4に繋がっており、モータ4よって回転させられる。環状部材32は、円形の穴321を有する部材である。支持体33は、一端側において太陽歯車31を回転可能に支持する。この一端側とは、すなわち入力側(Z(+)方向)である。また、支持体33は、他端側において、環状部材32の穴321の中心が太陽歯車の軸線上に位置するように環状部材32を支持する。この他端側とは、すなわち、出力側(Z(−)方向)である。支持体33は、例えばネジ止めによって環状部材32をZ(−)方向に固定する。
【0025】
ベアリング34は、外輪と内輪、およびこれらを互いに滑らせるための複数個のボールを備える。ベアリング34の外輪は、一部が環状部材32の穴321から突出するようにこの穴321に嵌め込まれている。
【0026】
内歯車35は、中空部355を有し、この中空部355のZ(+)方向の側に内歯が設けられている。内歯車35の中空部355のZ(−)方向の側の一端は、ベアリング34の外輪のうち、環状部材32の穴321から突出した部分によって内側から支持され位置決めされる。
【0027】
また、内歯車35は、径方向に拡がるフランジ部351を有する。このフランジ部351は、Z(−)方向の面が環状部材32に固定されている。例えば、環状部材32には周縁に沿って複数のネジ穴が設けられている。そしてフランジ部351にも環状部材32のネジ穴に対応する位置に貫通穴353が設けられている。フランジ部351の貫通穴353と環状部材32のネジ穴とが合うようにこれらを配置し、ネジ354をフランジ部351の貫通穴353に通して環状部材32の対応するネジ穴に嵌め込むことで、フランジ部351は、環状部材32に固定される。これにより、内歯車35は、太陽歯車31の軸方向に沿った移動およびその軸を中心とした回転が制限される。
【0028】
一方、内歯車35のZ(+)方向の面(すなわち、環状部材32に固定された面ではない面)は、支持体33に固定されていない。つまり、支持体33は自身のZ(−)方向において環状部材32を固定する。そして、環状部材32は、自身のZ(+)方向において内歯車35のフランジ部351を固定する。しかし、支持体33は、内歯車35を直接固定しない。支持体33と内歯車35との関係については、後述する。
【0029】
遊星歯車36は、内歯車35および太陽歯車31に噛み合い、太陽歯車31の周りを自転しながら公転する。遊星歯車36は、遊星歯車機構3に3つ備えられており、それぞれには後述する軸371を収容する軸孔361を有する。
【0030】
また、遊星歯車36は、軸が共通で径の異なる2つの歯車を有している。大歯車362には、太陽歯車31が噛み合い、大歯車362よりも径が小さい小歯車363には、内歯車35が噛み合っている。
【0031】
プレート37は、円形のプレートであって、周縁部がベアリング34の内輪に固定されている。具体的には、ベアリング34の内側にプレート37が圧入され、ベアリング34の内輪にプレート37の周縁部が密着する。ベアリング34の外輪と内輪とは、上述した複数個のボールを介して互いに滑るため、内輪に固定されたプレート37は、ベアリング34の外輪によって回転可能に支持される。
【0032】
また、プレート37には、入力側(Z(+)方向)において、3つの軸371が設けられている。軸371は、太陽歯車31の軸線上からずれた位置にそれぞれ設けられている。これら軸371は、各遊星歯車36の軸孔361に収容される。軸孔361の内周と軸371の側面とは互いに滑るため、軸371は各遊星歯車36を回転可能に支持する。プレート37は、遊星歯車36の公転により太陽歯車31の軸を中心として回転する。
【0033】
プレート37は、出力側(Z(−)方向)において、自身の回転中心に出力軸372を有する。この出力軸372はプレート37の回転に伴って回転するため、この出力軸372に接続された伝達機構は、プレート37の回転運動を、画像形成部104の感光体に伝達する。画像形成部104の感光体は、回転させられて、画像形成に用いられる。
【0034】
ここで、ベアリング34の外輪は、一部が環状部材32の穴321から突出するように構成されている。そして、この突出した部分は、内歯車35の中空部355の一端を内側から支持する。この理由は、ベアリング34の外輪の位置によって内歯車35の位置を決めるためである。つまり、ベアリング34の外輪に内歯車35の中空部355を直接、嵌め込むことで、これら(ベアリング34の外輪と内歯車35の中空部355)の間に他の部材を挟んだ場合に比べて、公差の累積を減らすことができるので、内歯車35の中心軸とプレート37の中心軸を高い精度で合わせることができるためである。
【0035】
1−3.支持体と内歯車との関係
図6は、支持体33と内歯車35との関係を説明するための図である。図6(a)には、支持体33を出力側(Z(−)方向)から見た斜視図が示されている。図6(b)には、環状部材32に固定され、遊星歯車36と噛み合わさった内歯車35を入力側(Z(+)方向)から見た斜視図が示されている。
【0036】
図6(a)に示すように、支持体33は、Z(−)方向の面に段差がある。具体的には、4箇所の凸部331があり、凸部331よりもZ(+)方向に位置する4つの凹部332がある。凸部331には、ネジ受け333やピン334が設けられている。ネジ受け333は、中空部に雌ネジが設けられた円筒部材であり、ピン334は、棒状の部材であり、いずれも凸部331からZ(−)方向に突出している。
【0037】
図6(b)に示すように、内歯車35のフランジ部351において、Z(+)方向の面を面352と呼ぶ。フランジ部351には、複数の貫通穴353が設けられており、この一部には、Z(+)方向から環状部材32に向けてネジ354が貫通している。ネジ354は、貫通穴353を貫通して環状部材32に設けられたネジ穴(図6において図示せず)に締結される。他の貫通穴353は、支持体33の凸部331から突出したネジ受け333やピン334を貫通させる。ピン334の先端は、環状部材32に設けられた窪みに当たり、支持体33に対して環状部材32を位置決めする。ネジ受け333は、環状部材32に設けられた穴を通してZ(−)方向から差し込まれるネジ322を受ける。このネジ322がネジ受け333と締結されることで環状部材32は、支持体33に固定される。
【0038】
以上のように、環状部材32が支持体33に固定され、内歯車35のフランジ部351が環状部材32に固定されると、フランジ部351の面352と、支持体33の凸部331との間には隙間が開く。図7は、太陽歯車31の軸とネジ受け333の中心とを通る面で駆動装置2を切断した断面図である。図7(a)には、駆動装置2の全体の断面図が示されており、図7(b)には、図7(a)に示した領域R7を拡大した断面図が示されている。図7に示したように、ネジ受け333(又はピン334)は、凸部331から突出する長さが、フランジ部351のZ軸方向の長さ(厚み)よりも長くなるように形成されている。そして、環状部材32のZ(+)方向の面にフランジ部351のZ(−)方向の面が密着しているので、フランジ部351の面352と、支持体33の凸部331には隙間D1が生じる。
【0039】
また、図8は、太陽歯車31の軸とネジ354の中心とを通る面で駆動装置2を切断した断面図である。図8(a)には、駆動装置2の全体の断面図が示されており、図8(b)には、図8(a)に示した領域R8を拡大した断面図が示されている。図8に示したように、フランジ部351のネジ354は、そのネジ頭の部分だけ面352からZ(+)方向に突出しており、この位置に対応するように、支持体33には凹部332が設けられている。そして、凹部332のZ(+)方向の深さは、ネジ354のネジ頭よりも深いため、図8に示すように、凹部332とネジ354との間には隙間D2が生じる。つまり、ここでもフランジ部351と支持体33との間には隙間が開く。つまり、内歯車35は、支持体33によって直接、Z軸方向の移動を制限されていない。
【0040】
フランジ部351を含めて内歯車35は樹脂により形成されているため、金属で形成された他の部材に比べて形状の精度が低い。従来では、支持体と環状部材の間に内歯車を挟んで固定される場合があった。この構成では、支持体のモータ固定面と環状部材の平行度が樹脂で形成された内歯車Z方向二面の平行度に依存するため、精度が出ない。この場合、太陽歯車、遊星歯車、内歯車の中心軸に傾きが生じるため、バックラッシの不均一や歯面の片当たりによって回転精度や摩耗による歯車寿命が悪化する可能性がある。
【0041】
上述した駆動装置2において、環状部材32は、支持体33に直接固定されており、間に樹脂製の内歯車35を挟んでいない。したがって、上述した平行度の悪化が生じる可能性は抑制される。
【0042】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0043】
2−1.画像形成部
上述した実施形態において、画像形成部104は、現像剤を用いた電子写真プロセスにより、媒体の表面に画像を形成していたが、他のプロセスにより媒体に画像を形成してもよい。例えば、インクジェット方式などにより画像を形成してもよい。要するに、画像形成装置1において、駆動装置2によって回転させられる回転部材が用いられていればよい。
【0044】
2−2.歯数
太陽歯車31および内歯車35の歯数は、遊星歯車36の歯数の整数倍にすることが望ましい。これにより、太陽歯車31、内歯車35および遊星歯車36の3つを同時に噛み合わせることが容易になって、製造負荷が軽減される。
【符号の説明】
【0045】
1…画像形成装置、101…供給部、102…筐体、103…搬送部、104…画像形成部、105…定着部、106…排出部、107…補助部、108…積載部、2…駆動装置、3…遊星歯車機構、31…太陽歯車、32…環状部材、321…穴、322…ネジ、33…支持体、331…凸部、332…凹部、333…ネジ受け、334…ピン、34…ベアリング、35…内歯車、351…フランジ部、352…面、353…貫通穴、354…ネジ、355…中空部、36…遊星歯車、361…軸孔、362…大歯車、363…小歯車、37…プレート、371…軸、372…出力軸、4…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、
穴を有する環状部材と、
一端側において前記太陽歯車を回転可能に支持し、他端側において前記穴の中心が前記太陽歯車の軸線上に位置するように前記環状部材を支持する支持体と、
一部が前記穴から突出するように当該穴に嵌め込まれた外輪と、当該外輪によって回転可能に支持された内輪とを有するベアリングと、
中空部を有し、当該中空部の一部に内歯が設けられた内歯車であって、前記ベアリングの外輪のうち、前記穴から突出した部分によって内側から前記中空部の一端を支持されて位置決めされる内歯車と、
前記内歯車および前記太陽歯車に噛み合い、前記太陽歯車の周りを自転しながら公転する遊星歯車と、
前記遊星歯車の軸を支持し、周縁部が前記ベアリングの前記内輪に固定されて、前記遊星歯車の公転により前記太陽歯車の軸を中心として回転するプレートと
を具備することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
前記内歯車は、前記太陽歯車の軸方向に沿った移動および当該軸を中心とした回転が制限されるように前記環状部材に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車機構。
【請求項3】
前記内歯車は、樹脂により形成された、径方向に拡がるフランジ部を有し、
前記フランジ部の一方の面は前記環状部材に固定され、他方の面は前記支持体に固定されていない
ことを特徴とする請求項1または2に記載の遊星歯車機構。
【請求項4】
前記遊星歯車は、
異なる2つの歯車を同軸上に備え、
前記2つの歯車の一方は前記太陽歯車に噛み合い、他方は前記内歯車に噛み合う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構の前記太陽歯車を回転させるモータと、
回転部材に、前記遊星歯車機構の前記プレートの回転力を伝達する伝達機構と
を具備することを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動装置と、
前記駆動装置から回転力が伝達されて回転する前記回転部材を用いて、媒体上に画像を形成する画像形成部と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、露光部に露光されて潜像を保持する感光体と、前記感光体に保持された潜像に現像剤を供給する現像剤供給部と、前記感光体に形成された現像像を媒体に転写する転写部と、前記転写部を通過するように前記媒体を搬送する搬送部とを用いて画像を形成し、
前記回転部材は、前記感光体、前記現像剤供給部、前記転写部、前記搬送部のいずれかに含まれる
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24370(P2013−24370A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161946(P2011−161946)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】