説明

遊覧自動車

【課題】蒸気機関車としての外観、動作においてリアリティを有した、タイヤ走行式の遊覧自動車を提供する。
【解決手段】客車両4を牽引して、軌条のない路上をタイヤを回転駆動させて自走する遊覧自動車において、蒸気機関車を模倣した外観を有し、後方に運転手室11を設けた車両本体12を備え、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21で前タイヤ18を隠蔽し、後タイヤ19の回転駆動に伴って、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21の連結竿24を前後上下に往復運動させながら、擬似動輪20を回転させる構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客が乗った客車両を牽引して、軌条のない路上をタイヤで自走する遊覧自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遊覧自動車は、遊園地やテーマパーク等において広く導入されている。そのような先行技術の例として、次の特許文献1には、蒸気機関車の外観を模した自走車両で複数の客車を牽引するものが記載されている。
【0003】
また、次の非特許文献1には、野外イベント等で利用する目的で、蒸気機関車のような外観に改造された改造自動車が記載されている。
【0004】
また、次の非特許文献2には、蒸気機関車の外観を模し、軌条上を走行する児童用の乗り物玩具が記載されている。これは玩具ではあるが、その車輪には、実際の蒸気機関車の場合と同様に、連結竿が取り付けられ、走行時には前後に動くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−306244号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://slcar.v.wol.ne.jp/
【非特許文献2】http://www.nonaka-world.co.jp/contents/electric_car/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昔から、小児、児童等の間では、蒸気機関車は人気があり、上記のような遊覧自動車、改造自動車、あるいは乗り物玩具等が開発、市販されている。
【0008】
しかしながら、この種の自走車両や改造自動車では、軌条なしで路上をタイヤで走行するため、操舵時には前タイヤが丸見えになっている。そのため、蒸気機関車らしさに欠けるという問題があった。
そこで本発明は、蒸気機関車として、より現物に近い外観を持たせるために開発され、提案された、タイヤ走行式の遊覧自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、客車両を牽引して、軌条のない路上をタイヤで自走する遊覧自動車において、蒸気機関車を模倣した外観を有し、後部に運転手室を設けた車両本体と、前記車両本体の左、右側に振り分けて対設された、操舵可能な前タイヤ、動輪形ホイルカバーが装着された後タイヤ、前タイヤと後タイヤとの間あるいは後タイヤの後方に配置された擬似動輪と、連結竿を有し、該連結竿を前記動輪形ホイルカバーまたは前記擬似動輪に露見させた状態でクランク連結して、前記前タイヤよりも前記車両の外側位置に配設された蒸気シリンダ形フェンダーカバーと、前記擬似動輪と前記動輪形ホイルカバーとを連動して回転させる回転連結機構とを備え、前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーとで前記前タイヤの上方を少なくとも隠蔽しており、前記後タイヤの回転駆動に伴って、前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーの連結竿を前後運動させながら、前記擬似動輪を回転させる構成にしている。
【0010】
前記遊覧自動車は、煙発生装置を更に備え、前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーは、煙発生装置で発生させた白煙を外部に噴出させる構成にしてもよい。煙発生装置は、実際に蒸気を発生させる構成でなくても、ドライアイス(登録商標)の煙や、近時において舞台やコンサートなどで使用されている白煙を発生させるようなものであってもよく、後者のものは、構成も簡易で安全面からも望まれている。
【0011】
また、前記煙発生装置は、少なくとも車両の発進、加速時に伴って、白煙を噴出させる構成にしてもよい。
【0012】
前記運転手室には、前記白煙を噴出させる操作部が設けられた構成にしてもよい。
【0013】
また、前記遊覧自動車は、前記煙発生装置の白煙の噴出時に噴出音を鳴動させる音響装置を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による遊覧自動車では、蒸気シリンダ形フェンダーカバーで前タイヤの接地側を除く上方を隠蔽しているので、前タイヤが丸見えにならない。また、後タイヤも動輪形ホイルカバーを大き目に形成すれば隠蔽できるので、より望ましい。
【0015】
更に、駆動輪である後タイヤを回転させたときには、後タイヤと装着一体となった動輪形ホイルカバーが回転し、更に、これとクランク連結された蒸気シリンダ形フェンダーカバーの連結竿が前後運動し、このとき、回転連結機構によって、擬似動輪も同時に回転する。したがって、見かけ上は、蒸気シリンダ形フェンダーの連結竿の往復運動が動輪形ホイルカバーや擬似動輪に伝達されて回転するように見えるので、従来の蒸気機関車を模した遊覧自動車では得られないリアル感が得られる。
【0016】
また、蒸気シリンダ形フェンダーカバーから白煙を噴出させたり、遊覧自動車の加速時、停車時などに噴出態様を変更できるようにしたり、煙突から煙を噴出させる構成にしたものでは、蒸気機関車として、よりいっそうリアル感が醸し出され、周囲の見物人の注意を引くことができる。
【0017】
更に、蒸気シリンダ形フェンダーから白煙を噴出させるのと同期して、蒸気噴出音も鳴動させる構成にしたものや、運転手室に、白煙の噴出や、噴出音を出力させるための操作部を設けたものでは、更にリアル感を増幅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係る遊覧自動車(先頭車両および客車両)の全体斜視図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ、本発明に係る遊覧自動車(先頭車両および客車両)の側面、および平面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ、本発明に係る遊覧自動車(先頭車両)の立面図、および背面図である。
【図4】煙発生装置と音響装置の制御系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
遊覧自動車は、図1、図2(a)、図2(b)に示すように、蒸気機関車の外観を模した先頭車両1が、複数台の客車両4を牽引して、軌条のない、イベント会場や遊園地内を路上走行するものであるが、道路交通法に従えば、路上運転も可能であることはいうまでもない。
【0020】
この例では、先頭車両1のみが機動力を有するが、動力源としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電気モータ等が利用でき、特に制限はない。また、各車両は安全のためブレーキを備えており、客車両4は、先頭車両1によってブレーキ制御される。なお、図2(b)では、客車両4の内部および底部を一部透視した状態で記載されている。
【0021】
先頭車両1は、蒸気機関車を模倣した外観形状で、前方には比較的大きなスカートバンパー15を設け、後方には運転手室11が設けられ、金属製の車両本体12として構成されている。ここに、スカートバンパー15は、歴史的には、野山の走行時に、放牧されている牛や馬などの家畜を轢いたり、巻き込んだりするのを防止するために設けているが、遊園地や路上を自走する場合に、子供や小動物を轢いたり、巻き込んだりしないようにする意味合いがある。
【0022】
図3(a)、図3(b)は、先頭車両1の前面、および背面図で、運転手室11には、一般の自動車やトラックと同様の風防ガラス、運転席、ハンドル、アクセル、ブレーキ、変速レバー等が設けられている。
【0023】
このような先頭車両1は、既存のトラック、バスなどを改造して製造されるが、四輪駆動自動車は、一般に駆動力が高く、超低速走行も可能なので、ベース車両として特に好適である。
【0024】
車両本体12の中央部には、擬似煙突13を備えたボイラ形ボンネット14が設けられ、その後方に運転手室11が配置されている。最前部に設けたスカートバンパー15は、前タイヤ18を前方から隠蔽するために設けられ、外気導入用の縦孔を複数設け、前照灯16等が設けられている。エンジン冷却用のラジエタやクラクションは、スカートバンパー15の奥に目立たないように配置されている。
【0025】
運転手室11の前方には、発車時等に鳴動させるベル17が設けられている。車両本体12の左右には、1組の前タイヤ18と、1組の後タイヤ19と、前タイヤ18と後タイヤ19との間に配置された1組の擬似動輪20とがあり、更に、前タイヤ18よりも外側位置に、前タイヤ18を側方から隠蔽するため、1組の蒸気シリンダ形フェンダーカバー21が設けられている。
【0026】
蒸気シリンダ形フェンダーカバー21は、前タイヤ18に被せ、前タイヤ18の接地側を除く上方を隠蔽して、全体が丸見えにならないものであればよい。また、後部には、客車両4を連結するための連結部22が設けられている。
【0027】
実施例では、前タイヤ18と、後タイヤ19と、擬似動輪20をいずれも1組宛設けているが、これらの数は増加させてもよい。
【0028】
前タイヤ18、後タイヤ19は、客車両4を牽引するのに駆動力が必要とされることから、いずれも駆動輪とするのが望ましいが、操舵は、本発明の構成上、前タイヤ18のみで行うことが望ましい。
【0029】
蒸気シリンダ形フェンダーカバー21は、車両本体12を前あるいは横から見たとき、水平な円柱状に見える外観になっているが、車両本体12の側方から前タイヤ18を隠蔽する形状、構造であれば円柱以外の形状でもよい。蒸気シリンダ形フェンダーカバー21の下部には開口が形成されており、前タイヤ18が左右に操舵されて、向きを変えられるように、充分な大きさになっている。
【0030】
擬似動輪20は、蒸気機関車の動輪を模した形状で、自在に回転できるように、地上との間に隙間を持たせて車両本体12に取り付けられている。
【0031】
後タイヤ19は、蒸気機関車の動輪を模した動輪形ホイルカバー23が一体的に装着されており、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21より露出させて形成した連結竿24が動輪形ホイルカバー23にクランク連結されている。
【0032】
また、動輪形ホイルカバー23、擬似動輪20は、連結竿25を回転連結機構として、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21に連結されているが、回転連結機構としては、擬似動輪20が動輪形ホイルカバー23に連動して回転するように、プーリとベルトなどを組み合わせて連結してもよい。
【0033】
ここに、連結竿25は見栄えを良くするためのもので、動輪形ホイルカバー23、擬似動輪20が、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21に対して自由に回転できるように、端部に可動部分を備えている。
【0034】
この図に示したように、動輪形ホイルカバー23、擬似動輪20を連結竿24、25によって蒸気シリンダ形フェンダーカバー21に連結すれば、走行時には、擬似動輪20と、動輪形ホイルカバー23とが、蒸気シリンダによって作動する動輪のように見えて、より蒸気機関車らしくなる。しかし、連結竿25の蒸気シリンダ形フェンダーカバー21側は、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21に直接連結せずに、その近傍の車両本体12に連結させてもよい。
【0035】
上記のような構造の連結竿24、25を用いた構成は、動作形態が非常にリアルであるが、その分、複雑なものになっている。より簡単な構成にする場合は、動輪形ホイルカバー23と、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21と間のみに連結竿24を設け、連結竿24を、動輪形ホイルカバー23の回転に連動させて運動させるようにして、擬似動輪20は、別途設けた回転機構によって回転させてもよい。この場合、連結竿24は、擬似動輪20に接続せずに、擬似動輪20の外側を通過させる態様であってもよい。
【0036】
回転機構としては、車両本体12の内部に、後タイヤ19の回転軸によるベルト駆動機構を設けてもよし、回転速度を制御できるモータを設けてもよい。それ以外の駆動機構としてもよいが、いずれにしても、擬似動輪20を動輪形ホイルカバー23と同様に回転させること、および、それらの回転に連動して運動する連結竿24、25があるということが、蒸気機関車らしさを演出する上で重要である。
【0037】
また、実施例では、更に蒸気機関車らしく見せるため、図4に示しているように、車両本体12の内部に、水タンク26と、その水タンク26に蓄えられた水を加熱して蒸発させる煙発生装置27とを備え、左右の蒸気シリンダ形フェンダーカバー21には、煙発生装置27で発生させた蒸気を外部に排出させる蒸気排出口28がそれぞれ設けられている。蒸気排出口28は、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21の下部等、目立たぬ場所に適宜設ければよい。
【0038】
更に、煙発生装置27は、実際の蒸気機関車のように蒸気を吐き出さなくても、白煙を発生させるものであればよい。例えば、発進時や加速時等にタイミングを調整して、白煙を自動的に排出させる、あるいは速度計32に連動させる等により、走行状況に応じて、吐き出す白煙量を調節する機能を持たせるとよい。なお、白煙は、蒸気シリンダ形フェンダーカバー21からだけでなく、擬似煙突13から排出させてもよい。
【0039】
また、運転手室11には、手動操作によって白煙を排出させるための操作部29を設けてもよい。そのような操作部29があれば、運転手が操作部29を操作することで周囲の見物人の注意を引くように、停車中、適宜に蒸気を排出させられる。
【0040】
また、スピーカ30を備えた音響装置31を設け、それによって、白煙を排出させるのと同期して、排出音を鳴動させてもよい。排出音は、例えば「シュゥゥゥ」、「シュシュ」等、予め複数種類を準備しておき、速度や負荷に応じて、選択的に再生出力させればよい。音響装置31は、白煙の排出音の波形データを電子的、あるいは磁気的に記憶する記憶部31aと、記憶部31aから読み出した波形データを増幅してスピーカ30から出力させる増幅回路31bとで構成される。再生出力は、蒸気の排出に同期させれば、よりリアルになる。
【0041】
客車両4は、上述のように動力源はなく、ブレーキのみを備えた車両であるが、前タイヤ41、後タイヤ42は、それぞれ台車43に取り付けられており、台車43が向きを変えることで、前方の車両に追随する。先頭車両1と同じ軌跡で走行させるために、台車43の向きは、先頭車両1に設けたコンピュータ等によって制御するのが望ましい。客車両4の車体44は箱型で、その内部には、複数の客席45と、乗務員用の車掌席46と、制御盤47とが設けられている。
【符号の説明】
【0042】
1 先頭車両
4 客車両
11 運転手室
12 車両本体
15 スカートバンパー
18 前タイヤ
19 後タイヤ
20 擬似動輪
21 蒸気シリンダ形フェンダーカバー
23 動輪形ホイルカバー
24、25 連結竿
26 水タンク
27 煙発生装置
28 排出口
29 操作部
31 音響装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
客車両を牽引して、軌条のない路上をタイヤで自走する遊覧自動車において、
蒸気機関車を模倣した外観を有し、後部に運転手室を設けた車両本体と、
前記車両本体の左、右側に振り分けて対設された、操舵可能な前タイヤ、動輪形ホイルカバーが装着された後タイヤ、前タイヤと後タイヤとの間あるいは後タイヤの後方に配置された擬似動輪と、
連結竿を有し、該連結竿を前記動輪形ホイルカバーまたは前記擬似動輪に露見させた状態でクランク連結して、前記前タイヤよりも前記車両の外側位置に配設された蒸気シリンダ形フェンダーカバーと、
前記擬似動輪と前記動輪形ホイルカバーとを連動して回転させる回転連結機構とを備え、
前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーで前記前タイヤの少なくとも上方を隠蔽し、
前記後タイヤの回転駆動に伴って、前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーの連結竿を前後運動させながら、前記擬似動輪を連動して回転させる構成にした、遊覧自動車。
【請求項2】
請求項1において、
煙発生装置を更に備え、
前記蒸気シリンダ形フェンダーカバーは、煙発生装置で発生させた白煙を外部に噴出させる構成にしている、遊覧自動車。
【請求項3】
請求項2において、
前記煙発生装置は、少なくとも車両の発進、加速時に伴って、白煙を噴出させる構成にしている、遊覧自動車。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記運転手室には、前記白煙を噴出させる操作部が設けられた構成にしている、遊覧自動車。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかにおいて、
前記煙発生装置の白煙噴出時に噴出音を鳴動させる音響装置を更に備えている、遊覧自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−35816(P2012−35816A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180379(P2010−180379)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【特許番号】特許第4750216号(P4750216)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(510220312)有限会社クレイズ (1)
【Fターム(参考)】